(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174386
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】空調システムの無除湿制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/02 20060101AFI20170724BHJP
F24F 11/04 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
F24F11/02 A
F24F11/02 102F
F24F11/02 102W
F24F11/04 F
【請求項の数】22
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-127278(P2013-127278)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-1359(P2015-1359A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉井 存
(72)【発明者】
【氏名】中田 達也
(72)【発明者】
【氏名】関口 圭輔
【審査官】
佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−061687(JP,A)
【文献】
特開2005−147490(JP,A)
【文献】
特開2012−122683(JP,A)
【文献】
特開2012−242041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
F24F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発器において冷媒を蒸発させ、吸込空気を冷却して室内に吹き出す空調機を備えた空調システムの制御装置であって、
前記空調機の吹出温度(To)を計測する温度センサ(S1)と、
前記空調機の吸込温度(Ti)を計測する温度センサ(S2)と、
蒸発器温度(Te)に関する温度を計測する温度センサ(S3)と、
前記吸込空気の湿度(Hi)を計測する湿度センサ(S4)と、
前記吸込温度(Ti)および前記湿度(Hi)に基づいて前記吸込空気の露点温度(Tw)を演算する制御部(9)と、
が設けられ、
前記制御部(9)は、
前記吹出温度(To)を、設定温度(Ts)以上、かつ、前記露点温度(Tw)より第一の余裕値(ε1)以上を維持し、又は/及び、
前記蒸発器温度(Te)を、前記露点温度(Tw)+第二の余裕値(ε2)以上を維持するように、
冷媒蒸発量を制御し、
前記第一の余裕値(ε1)を、
前記湿度(Hi)に対応してε1≧0の範囲で可変とし、かつ、
(a)前記吹出温度(To)≦前記露点温度(Tw)+ε1 の条件では、前記蒸発器温度(Te)が上昇方向となり、
(b)前記吹出温度(To)>前記露点温度(Tw)+ε1 の条件では、前記蒸発器温度(Te)が低下方向となる、
ように設定する制御を行うことを特徴とする空調システムの制御装置。
【請求項2】
蒸発器において冷媒を蒸発させ、吸込空気を冷却して室内に吹き出す空調機を備えた空調システムの制御装置であって、
前記空調機の吹出温度(To)を計測する温度センサ(S1)と、
前記空調機の吸込温度(Ti)を計測する温度センサ(S2)と、
蒸発器温度(Te)に関する温度を計測する温度センサ(S3)と、
前記吸込空気の湿度(Hi)を計測する湿度センサ(S4)と、
前記吸込温度(Ti)および前記湿度(Hi)に基づいて前記吸込空気の露点温度(Tw)を演算する制御部(9)と、
が設けられ、
前記制御部(9)は、
前記吹出温度(To)を、設定温度(Ts)以上、かつ、前記露点温度(Tw)より第一の余裕値(ε1)以上を維持し、又は/及び、
前記蒸発器温度(Te)を、前記露点温度(Tw)+第二の余裕値(ε2)以上を維持するように、
冷媒蒸発量を制御し、
第二の余裕値(ε2)を、
前記湿度(Hi)に対応して可変とし、かつ、(c)前記蒸発器温度(Te)≦前記露点温度(Tw)+ε2 の条件では、前記蒸発器温度(Te)が上昇方向となり、
(d)前記蒸発器温度(Te)>前記露点温度(Tw)+ε2 の条件では、前記蒸発器温度(Te)が低下方向となる、
ように設定する制御を行うことを特徴とする空調システムの制御装置。
【請求項3】
蒸発器において冷媒を蒸発させ、吸込空気を冷却して室内に吹き出す空調機を備えた空調システムの制御装置であって、
前記空調機の吹出温度(To)を計測する温度センサ(S1)と、
前記空調機の吸込温度(Ti)を計測する温度センサ(S2)と、
蒸発器温度(Te)に関する温度を計測する温度センサ(S3)と、
前記吸込空気の湿度(Hi)を計測する湿度センサ(S4)と、
前記吸込温度(Ti)および前記湿度(Hi)に基づいて前記吸込空気の露点温度(Tw)を演算する制御部(9)と、
が設けられ、
前記制御部(9)は、
前記吹出温度(To)を、設定温度(Ts)以上、かつ、前記露点温度(Tw)より第一の余裕値(ε1)以上を維持し、又は/及び、
前記蒸発器温度(Te)を、前記露点温度(Tw)+第二の余裕値(ε2)以上を維持するように、
冷媒蒸発量を制御し、
第一の余裕値(ε1)及び第二の余裕値(ε2)を、前記湿度(Hi)に対応して可変とし(但し、ε1≧0)、かつ、
(e)前記吹出温度(To)≦前記露点温度(Tw)+ε1、又は、前記蒸発器温度(Te)≦前記露点温度(Tw)+ε2 の条件では、前記蒸発器温度(Te)が上昇方向となり、
(f)前記吹出温度>前記露点温度(Tw)+ε1、かつ、前記蒸発器温度(Te)>前記露点温度(Tw)+ε2 の条件では、前記蒸発器温度(Te)が低下方向となる、
ように設定する制御を行うことを特徴とする空調システムの制御装置。
【請求項4】
前記空調システムが一次側冷水回路と二次側冷媒回路を備えた冷水−冷媒方式によるものであり、
前記制御部(9)は、前記一次側冷水回路に介装した冷水弁の開度制御により前記蒸発器温度(Te)を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空調システムの制御装置。
【請求項5】
前記空調システムが一次側冷水回路と二次側冷媒回路を備えた冷水−冷媒空調方式によるものであり、
前記制御部(9)は、前記二次側冷媒回路に介装した冷媒弁の開度制御により前記蒸発器温度(Te)の制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空調システムの制御装置。
【請求項6】
前記空調システムが直膨方式によるものであり、
前記制御部(9)は、圧縮機回転数制御、又は、膨張弁の開度制御により前記冷媒蒸発量の制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の空調システムの制御装置。
【請求項7】
前記蒸発器の下部のドレンパン内の水の有無を検知する水検知センサ(S21)がさらに設けられ、
前記制御部(9)の処理において、前記ドレンパン内の水検知有無に基づいて、前記第一の余裕値(ε1)および前記第二の余裕値(ε2)を変化させることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の空調システムの制御装置。
【請求項8】
前記空調システムが、冷房負荷に対応して前記空調機の送風ファン風量を可変とする変風量制御によるものであって、
前記送風ファンの回転数を計測するファン回転数検知センサ(S22)がさらに設けられ、
前記制御部(9)の処理において、前記送風ファン回転数に基づいて、前記第二の余裕値(ε2)を変化させることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の空調システムの制御装置。
【請求項9】
前記空調システムは、前記空調機としてアンビエント空調機とラック型空調機を備え、
前記制御部(9)の処理において、前記ラック型空調機の吹出温度(To)と前記アンビエント空調機の吹出温度(To’)の差に基づいて、前記第一の余裕値(ε1)および前記第二の余裕値(ε2)を変化させることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の空調システムの制御装置。
【請求項10】
前記空調システムが二重床下を介してアンビエント空調機の冷気を室内に供給するシステムであって、
前記制御部(9)の処理において、前記ラック型空調機の吹出温度(To)と前記アンビエント空調機の吹出温度(To’)の差のうちの「前記アンビエント空調機の吹出温度(To’)」に替えて、「二重床下温度(Tf)」を用いることを特徴とする請求項9記載の空調システムの制御装置。
【請求項11】
前記制御部(9)は、前記ラック型空調機の吹出温度(To)が二重床下温度(Tf)未満の場合には吹出温度(To)を上昇させる制御を行うことを特徴とする請求項8又は10に記載の空調システムの制御装置。
【請求項12】
蒸発器において冷媒を蒸発させ、吸込空気を冷却して室内に吹き出す空調機を備えた空調システムの制御方法であって、
吹出温度(To)を、設定温度(Ts)以上、かつ、吸込空気の露点温度(Tw)より第一の余裕値(ε1)以上を維持し、又は/及び、
蒸発器温度(Te)を、吸込空気の露点温度(Tw)+第二の余裕値(ε2)以上を維持するように、
冷媒蒸発量を制御し、
第一の余裕値(ε1)を、
前記吸込空気の湿度(Hi)に対応してε1≧0の範囲で可変とし、かつ、
(a)前記吹出温度(To)≦前記露点温度(Tw)+ε1 の条件では、前記蒸発器温度(Te)が上昇方向となり、
(b)前記吹出温度(To)>前記露点温度(Tw)+ε1 の条件では、前記蒸発器温度(Te)が低下方向となる、
ように設定することを特徴とする空調システムの無除湿制御方法。
【請求項13】
蒸発器において冷媒を蒸発させ、吸込空気を冷却して室内に吹き出す空調機を備えた空調システムの制御方法であって、
吹出温度(To)を、設定温度(Ts)以上、かつ、吸込空気の露点温度(Tw)より第一の余裕値(ε1)以上を維持し、又は/及び、
蒸発器温度(Te)を、吸込空気の露点温度(Tw)+第二の余裕値(ε2)以上を維持するように、
冷媒蒸発量を制御し、
第二の余裕値(ε2)を、
前記吸込空気の湿度(Hi)に対応して可変とし、かつ、
(c)前記蒸発器温度(Te)≦前記露点温度(Tw)+ε2 の条件では、前記蒸発器温度(Te)が上昇方向となり、
(d)前記蒸発器温度(Te)>前記露点温度(Tw)+ε2 の条件では、前記蒸発器温度(Te)が低下方向となる、
ように設定することを特徴とする空調システムの無除湿制御方法。
【請求項14】
蒸発器において冷媒を蒸発させ、吸込空気を冷却して室内に吹き出す空調機を備えた空調システムの制御方法であって、
吹出温度(To)を、設定温度(Ts)以上、かつ、吸込空気の露点温度(Tw)より第一の余裕値(ε1)以上を維持し、又は/及び、
蒸発器温度(Te)を、吸込空気の露点温度(Tw)+第二の余裕値(ε2)以上を維持するように、
冷媒蒸発量を制御し、
第一の余裕値(ε1)及び第二の余裕値(ε2)を、前記湿度(Hi)に対応して可変とし(但し、ε1≧0)、かつ、
(e)前記吹出温度(To)≦前記露点温度(Tw)+ε1、又は、前記蒸発器温度(Te)≦前記露点温度(Tw)+ε2 の条件では、前記蒸発器温度(Te)が上昇方向となり、
(f)前記吹出温度>前記露点温度(Tw)+ε1、かつ、前記蒸発器温度(Te)>前記露点温度(Tw)+ε2 の条件では、前記蒸発器温度(Te)が低下方向となる、ように設定することを特徴とする空調システムの無除湿制御方法。
【請求項15】
前記空調システムが一次側冷水回路と二次側冷媒回路を備えた冷水−冷媒方式によるものであり、
前記蒸発器温度(Te)の制御を、前記一次側冷水回路に介装した冷水弁の開度制御により行うことを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載の空調システムの無除湿制御方法。
【請求項16】
前記空調システムが一次側冷水回路と二次側冷媒回路を備えた冷水−冷媒空調方式によるものであり、
前記蒸発器温度(Te)の制御を、前記二次側冷媒回路に介装した冷媒弁の開度制御により行うことを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載の空調システムの無除湿制御方法。
【請求項17】
前記空調システムが直膨方式によるものであり、
前記冷媒蒸発量の制御を、圧縮機回転数制御、又は、膨張弁の開度制御により行うことを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載の空調システムの無除湿制御方法。
【請求項18】
請求項12乃至請求項17のいずれかにおいて、ドレンパン内の水検知有無に基づいて、前記第一の余裕値(ε1)および前記第二の余裕値(ε2)を変化させることを特徴とする空調システムの無除湿制御方法。
【請求項19】
請求項12乃至請求項17のいずれかにおいて、前記空調システムが、冷房負荷に対応して前記室内機の送風ファンの風量を可変とする変風量制御によるものであって、かつ、
前記送風ファンの回転数に基づいて、前記第二の余裕値(ε2)を変化させることを特徴とする空調システムの無除湿制御方法。
【請求項20】
請求項12乃至請求項17のいずれかにおいて、前記空調システムは、アンビエント空調機とラック型空調機を備えて成り、かつ、
前記ラック型空調機の吹出温度(To)と前記アンビエント空調機の吹出温度(To’)の差に基づいて、前記第一の余裕値(ε1)および前記第二の余裕値(ε2)を変化させることを特徴とする空調システムの無除湿制御方法。
【請求項21】
請求項20において、前記空調システムがアンビエント空調機の冷気を二重床下を介して室内に供給するシステムであって、かつ、
前記ラック型空調機の吹出温度(To)と前記アンビエント空調機の吹出温度(To’)の差のうちの「前記アンビエント空調機の吹出温度(To’)」に替えて「二重床下温度(Tf)」を用いることを特徴とする空調システムの無除湿制御方法。
【請求項22】
請求項19又は21において、さらに、
前記ラック型空調機の吹出温度(To)が二重床下温度(Tf)未満の場合には吹出温度(To)を上昇させる制御を行うことを特徴とする空調システムの無除湿制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空調システムの無除湿制御方法に関し、特にICT機器・装置類を収容するデータセンター空調に好適な空調システムの
制御装置および無除湿制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信機械室(データセンタ)において、ICT機器・装置類(以下、ICT機器と総称)を格納するサーバラックは、前面から冷気を吸込、内部の発熱部位(CPUやHDD等)を冷却して、上面又は背面から排気するタイプが多く、各ラックは同方向を向けて横一列に配置される。機械室内にはこのようなラック列が、隣接する列の吸気面と吸気面、排気面と排気面とを対向させて、複数列配置される。ここに、吸気面に挟まれた通路は二重床から冷気が供給されていることから、コールドアイルと呼ばれる。同様に、排気面に挟まれた通路はラックからの排気で温度が上がるため、ホットアイルと呼ばれる。
【0003】
このようなサーバラックの配置に対応して、機械室空調システムは、機械室全体を冷却する全体空調機(アンビエント空調機)と、ラック列内に局所空調機(タスク空調機)を配置して、ホットアイルの高温空気を吸気し、コールドアイルに空調機で冷却した低温空気を吹き出す構成としている。
通常、コールドアイルに直接冷気を供給するラック型空調機は、ICT機器近傍に置かれため、漏水や水飛びによるICT機器への結露リスクが高い。
本願出願人は、このような水リスクを回避するため、蒸発器温度を吸込空気の露点温度以上とし、圧縮機や冷水流量をコントロールする技術を提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−36501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無除湿制御は冷房能力の低下を伴うことから、温度上昇や温度変動が問題となる場合があり、可能な限りこの制御には入らないことが望ましいといえる。
また、蒸発器温度が露点温度以下であっても、相対湿度が低い場合には蒸発器コイル部に全く触れることなく通過する空気部分(バイパスファクター)において再蒸発現象が生じて、結露に至らないケースもある。
他方、水リスクの高い高湿度条件下で湿度変動があった場合には、制御追従ができず結露等発生する可能性もあるため、特に安全サイドの制御が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、データセンターにおける冷房能力確保と水リスク回避を両立可能な除湿制御技術を提供するものである。
本発明に係る空調システムの
制御装置および/または無除湿制御方法は、
(1)蒸発器において冷媒を蒸発させ、吸込空気を冷却して室内に吹き出す
空調機を備えた空調システムの
制御装置および/または制御方法であって、
吹出温度(To)を、設定温度(Ts)以上、かつ、吸込空気の露点温度(Tw)より第一の余裕値(ε1)以上を維持し、又は/及び、
蒸発器温度(Te)を
、露点温度(Tw)+第二の余裕値(ε2)以上を維持するように、
冷媒蒸発量を制御することを特徴とする。
なお、蒸発器温度(Te)は、例えば蒸発器入口冷媒温度の計測、蒸発器コイル表面温度の計測、冷媒圧力計計測値に基づく演算等により求めることができる。
【0007】
(2)上記発明において、前記第一の余裕値(ε1)を、
吸込空気
の湿度(Hi)に対応してε1≧0の範囲で可変とし、かつ、
(a)吹出温度(To)
≦露点温度(Tw)+ε1 の条件では、蒸発器温度(Te)が上昇方向となり、
(b)吹出温度
>露点温度(Tw)+ε1 の条件では、蒸発器温度(Te)が低下方向となる、ように設定することを特徴とする。
【0008】
(3)上記(1)の発明において、第二の余裕値(ε2)を、
吸込空気
の湿度(Hi)に対応して可変とし、かつ、
(c)蒸発器温度(Te)
≦露点温度(Tw)+ε2 の条件では、蒸発器温度(Te)が上昇方向となり、
(d)蒸発器温度(Te)
>露点温度(Tw)+ε2 の条件では、蒸発器温度(Te)が低下方向となる、ように設定することを特徴とする。
【0009】
(4)上記(1)の発明において、第一の余裕値(ε1)及び第二の余裕値(ε2)を、吸込空気
の湿度(Hi)に対応して可変とし(但し、ε1≧0)、かつ、
(e)吹出温度(To)
≦露点温度(Tw)+ε1、又は、蒸発器温度(Te)
≦露点温度(Tw)+ε2 の条件では、蒸発器温度(Te)が上昇方向となり、
(f)吹出温度
>露点温度(Tw)+ε1、かつ、蒸発器温度(Te)
>露点温度(Tw)+ε2 の条件では、蒸発器温度(Te)が低下方向となる、ように設定することを特徴とする。
【0010】
(5)上記各発明において、前記空調システムが一次側冷水回路と二次側冷媒回路を備えた冷水−冷媒方式によるものであり、
前記蒸発器温度(Te)の制御を、一次側冷水回路に介装した冷水弁の開度制御により行うことを特徴とする。
【0011】
(6)上記各発明において、前記空調システムが一次側冷水回路と二次側冷媒回路を備えた冷水−冷媒空調方式によるものであり、
前記蒸発器温度(Te)の制御を、二次側冷媒回路に介装した冷媒弁の開度制御により行うことを特徴とする。
【0012】
(7)上記各発明において、前記空調システムが直膨方式によるものであり、
前記冷媒蒸発量の制御を、圧縮機回転数制御、又は、膨張弁の開度制御により行うことを特徴とする。
【0013】
(8)上記各発明において、「吸込空気湿度(Hi)」に替えて、又は、これに加えて「
ドレンパン内の水検知有無」であることを特徴とする。
【0014】
(9)上記各発明において、前記空調システムが、冷房負荷に対応して前記室内機の送風ファン風量を可変とする変風量制御によるものであって、かつ、「吸込空気の湿度(Hi)」に替えて、又は、これに加えて「送風ファン
の回転数」であることを特徴とする。
【0015】
(10)上記各発明において、前記空調システムは、アンビエント空調機とラック型空調機を備
え、かつ、「吸込空気湿度(Hi)」に替えて、又は、これに加えて「ラック型空調機の吹出温度(To)とアンビエント空調機の吹出温度(To’)の差」であることを特徴とする。
【0016】
(11)上記発明において、前記空調システムがアンビエント空調機の冷気を二重床下を介して室内に供給するシステムであって、かつ、
「アンビエント空調機の吹出温度(To’)」に替えて、又は、これに加えて「二重床
下温度(Tf)」であることを特徴とする。
【0017】
(12)上記発明において、さらに、ラック型空調機の吹出温度(To)を、二重床下温度(Tf)以上に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上記各発明によれば、吹出温度(To)と吸込露点温度(Tw)の比較制御によりラック周囲結露を防ぐとともに、蒸発器温度(Te)と吸込露点温度(Tw)の比較制御により、吹出空気随伴による水とびや、蒸発器ドレンパンからの溢水・漏水リスクを回避することができる。
【0019】
水リスクの低い条件では制御余裕値ε1、ε2を低く設定することにより、無除湿制御に伴う能力低下、温度上昇の問題を低減できる。特に、第二の余裕値ε2を負にも設定できるため、再蒸発等の効果を考慮した制御が可能となる。
また、水リスクの高い条件では制御余裕値を高く設定することにより、安全側の制御ができ、ラック型空調機にとって重要な信頼性確保を担保できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第一の実施形態に係る空調システム1の構成を示す図である。
【
図2】余裕値テーブルAの内容を概念的に示す図である。
【
図3】余裕値テーブルA’の内容を概念的に示す図である。
【
図4】第一の実施形態における除湿制御運転フローを示す図である。
【
図5】第二の実施形態に係る空調システム20の構成を示す図である。
【
図6】余裕値テーブルB1の内容を概念的に示す図である。
【
図7】余裕値テーブルB2の内容を概念的に示す図である。
【
図8】第二の実施形態における除湿制御運転フローを示す図である。
【
図9】余裕値テーブルC1(ファン風量小)の内容を概念的に示す図である。
【
図10】余裕値テーブルC2(ファン風量大)の内容を概念的に示す図である。
【
図11】余裕値テーブルC3(ファン風量特大)の内容を概念的に示す図である。
【
図12】第三の実施形態における除湿制御運転フローを示す図である。
【
図13】第四の実施形態に係る空調システム40の構成を示す図である。
【
図14】余裕値テーブルDの内容を概念的に示す図である。
【
図15】第四の実施形態における除湿制御運転フローを示す図である。
【
図16】第五の実施形態における除湿制御運転フローを示す図である。
【
図17】第六の実施形態における除湿制御運転フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る無除湿運転制御方法の各実施形態について、
図1乃至17を参照してさらに詳細に説明する。重複を避けるため、各図において同一構成には同一符号を用いて示している。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0022】
(第一の実施形態)
本実施形態は上述の(1)の発明に係り、特に水リスク回避が求められるラック型空調機の無除湿制御の形態に関する。本実施形態では、ラック型空調機として冷水−冷媒方式の空調機を用いている。
図1を参照して、本実施形態に係る空調システム1は、情報通信機械室8内に収容される複数のサーバラック3を、アンビエント空調機4及び複数のラック型空調機5により冷却するシステムである。
【0023】
機械室8内部は、室内空間8
X、天井空間8
Y、二重床下空間8
Zの3つの空間に区画されている。アンビエント空調機4と天井空間8
Yとは、還気ダクト8hを介して結ばれている。
サーバラック3は同一モジュールで構成されており、これを横一列に並べることによりラック列3aが形成されている。サーバラック3の各段には、ラックマウントサーバ(以下、サーバ)3bが格納されている。ラック列3aを構成する各サーバラック3は、隣接する列の吸気面と吸気面、排気面と排気面が対向するように配置されており、これにより吸気側通路のコールドアイル9aと、排気側通路のホットアイル9bが形成されている。
【0024】
ラック型空調機5は、ラック列3aを構成する各サーバラック3と同一モジュールに形成され、高発熱サーバラックの近傍に配設されている。なお、同図では1台のみ表示しているが実際には各ラック列内の必要箇所に配置されている。
ラック型空調機5は、蒸発器5a、送風ファン5b、及び、蒸発器5aの直下に凝縮水貯留のためのドレンパン5c、を主要構成として備えている。ラック型空調機5は、冷房方式として一次側冷水回路6、冷媒ポンプユニット(NPU)8、二次側冷媒回路7を備えた冷水−冷媒方式を採用している。
【0025】
NPU8は、冷媒回路側の排熱を冷水回路側に放熱する凝縮器8b、凝縮冷媒液を一旦蓄える冷媒タンク8c、冷媒循環用の冷媒ポンプ8d、冷水供給量を制御する冷水弁
V1、を主要構成として備えている。
一次側冷水回路6は、冷水発生源である熱源機(図示せず)から冷水を循環供給する一次側冷水配管6a、NPU8内の凝縮器8b、バイパス配管6bにより冷水循環量を制御する冷水弁V1、により構成されている。
二次側冷媒回路7は、凝縮器8b、冷媒タンク8c、冷媒ポンプ8d、ラック型空調機5内の蒸発器5a、及び、これらを結ぶ冷媒配管8aにより構成されている。
【0026】
以上の構成により、二次側冷媒回路7においては、凝縮器8bにおいて冷水に放熱して凝縮した冷媒を冷媒タンク8cに一旦蓄え、さらに冷媒ポンプ8dによりラック型空調機5の蒸発器5aに搬送し、室内空気から蒸発潜熱を奪い蒸発した冷媒を凝縮器8bに戻す、という冷凍サイクルを構成している。
【0027】
アンビエント空調機4は、蒸発器4a及び送風ファン4bを主要構成として備えている。なお、図示を省略するがアンビエント空調機4についても、ラック型空調機5と同様に冷房方式として冷水−冷媒方式を採用している。
【0028】
以上の構成により、空調システム1におけるアンビエント空調機4及びラック型空調機5による室内冷却は以下の通り行われる。
アンビエント空調機4については、還気ダクト8hを介して導入される室内空気を、蒸発器4aにおいて熱交換して冷気とし、送風ファン4bにより床面に沿ってコールドアイル9aに供給する。各サーバラック3に吸込まれた冷気は、各サーバ3bを冷却して高温排気となりホットアイル9bに排出される。排気はホットアイル9b内を上昇して、天井空間8bに導かれ、還気ダクト8hを通過して空調機4に戻される。
【0029】
一方、ラック型空調機5については、ホットアイル9b内の高温排気の一部を直接吸い込んで、蒸発器5aで熱交換して冷気とし、送風ファン5bによりコールドアイル9aに吹き出す。供給冷気は、アンビエント空調機4からの冷気と混合されて、各サーバラックに吸込まれる。以上のような冷気・排気循環により、各サーバラックの冷却を行っている。
【0030】
次に、空調システム1の制御系統は、ラック型空調機5の吹出温度To、吸込温度Ti、蒸発器温度Te、をそれぞれ計測する温度センサS1乃至S3と、吸込空気の相対湿度Hiを計測する湿度センサS4と、これら各センサの計測値に基づいて本実施形態の無除湿運転制御を指令する制御部9を、主要構成として備えている。
【0031】
制御部9は、吸込温度Ti及び相対湿度Hiに基づいて吸込み空気の露点温度Twを演算するための空気表テーブル(図示せず)を備えている。
制御部9は、さらに吹出温度To及び蒸発器温度Teを制御することにより水リスク回避を担保するための、相対湿度Hiの関数として示される余裕値テーブルAを備えている。
【0032】
図2は、余裕値テーブルAの内容を概念的に示したものである。同図(a)を参照して、吹出温度Toの余裕値ε1は、比例的に増加する相対湿度Hiの関数(ε1=f(Hi))として示される。また、同図(b)を参照して、蒸発器温度Teの余裕値ε2についても、比例的に増加する相対湿度Hiの関数(ε2=g(Hi))で示される。但し、ε1は常にε1≧0であるのに対して、相対湿度Hiが低い場合にはε2は負の値をとることもある。これは相対湿度が低い場合の蒸発器5aにおけるバイパスファクターによる再蒸発を考慮したものである。
【0033】
このように、相対湿度に対応して余裕値ε1、ε2を変化させることにより、相対湿度が低い場合には、水リスクが小さいため吹出温度To、蒸発器温度Te
の閾値を低く
する、すなわち冷房能力確保を図ることができる。一方、相対湿度が高くなるにつれて水リスクも高くなるため、吹出温度To、蒸発器温度Te
の閾値を高く
する、すなわち結露防止を図ることができる。
【0034】
次に
図4を参照して、本実施形態における無除湿運転制御の具体的フローについて説明する。なお、以下のフローでは制御の安定化を考慮して、各ステップは所定の時間間隔で行われるものとする。
運転開始後は温度センサS1〜S3により吹出温度To、吸込温度Ti、蒸発器温度Teが、湿度センサS4により吸込空気の相対湿度Hiが、それぞれ計測される(S200)。次いで、余裕値テーブルAを用いてε1=f(Hi)、ε2=g(Hi)の値が演算される(S101)。これらの計測値及び演算値に基づいて、以下の制御が行われる。
【0035】
まず、吹出温度Toが設定室温Ts以上か否かの判定が行われる(S102)。To<Tsの場合には、冷水弁V1開度を1段階絞る(S106)。蒸発器温度Teを上昇方向に制御して、吹出温度Toを設定室温Ts以上に維持するためである。
【0036】
S102においてY、すなわちTo≧Tsの場合には、次に吹出温度Toと吸込空気の露点温度Twとの比較が行われる(S103)。比較に際しては、水リスク回避を図るため相対湿度Hiに比例する余裕値ε1を考慮して行われる。
To<Tw+ε1の場合には水リスク大と判定し、冷水弁V1開度を1段階絞り、蒸発器温度Teを上昇傾向に制御する(S106)。
【0037】
S103においてY、すなわちTo≧Tw+ε1の場合には、さらに蒸発器温度Teと吸込空気の露点温度Twとの比較が行われる(S104)。この場合、蒸発器5aの凝縮水による水リスクを回避するため、以下のとおり余裕値ε2を考慮して行われる。
Te≧Tw+ε2の場合には、蒸発器温度を下げても水リスク小と判定して、冷水弁V1開度を1段階増加する(S105)。Te<Tw+ε2の場合には、水リスク大と判定して、蒸発器温度を上昇傾向に制御するため冷水弁V1開度を1段階絞る(S106)。以上の制御を運転停止に至るまで(S107においてY)繰り返し定期的に行う(S108)。
【0038】
なお、本実施形態ではε1、ε2が相対湿度Hi変化に対応して比例的に増加する例を示したが、段階的に増加する余裕値テーブルA’(
図3参照)を用いる態様とすることもできる。これにより、制御の簡便化が可能となる。該当する以下の各実施形態についても同様である。
また、本実施形態では水リスクの指標として相対湿度を用いる例を示したが、これに替えて絶対湿度を用いることもできる。絶対湿度の方が室内の温度変動に影響をされないため、より安定した制御指標となる。以下の各実施形態についても同様である。
また、本実施形態では、冷媒蒸発量の制御を一次側冷水回路6に介装した冷水弁V1の開度制御により行う例を示したが、二次側冷媒回路7に介装した冷媒弁V2の開度制御により行う態様とすることもできる。
さらに、蒸発器または凝縮器の熱交換器の一部を迂回するバイパス回路を設け、当該回路内に介装した冷媒弁の開度制御により行う態様としてもよい。
【0039】
(第二の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図5を参照して、本実施形態に係る空調システム20の構成が上述の空調システム1と異なる点は、第一に空調方式である。すなわち、空調システム1のラック型空調機5は冷水−冷媒方式を採用しているのに対して、空調システム20では直膨方式を採用していることである。すなわち、空調機21の室外機22は圧縮機22a、凝縮器22bを備え、室内機であるラック型空調機23の蒸発器23aに冷熱供給するように構成されている。
【0040】
また、蒸発器23a下部のドレンパン23c内に水検知センサS21を備えていることである。さらに、ドレンパン23内の水検知有無により閾値を変化させるため、余裕値テーブルB1,B2を備えていることである。
図6を参照して、テーブルB1は、上述の余裕値テーブルA1と同一余裕値(ε1’=f(Hi)、ε2’=g(Hi))であり、水検知しない場合に適用される。
一方、水検知有の場合には水とびリスク大と判定されるため、
図7に示すようにε1’=f2(Hi)、ε2’=g2(Hi)であるテーブルB2が適用される。
両図より明らかなように、f2(Hi)>f(Hi)、g2(Hi)>g(Hi)に設定されており、水検知の場合の閾値を大きく取るようにしている。
さらに、常にf2(Hi
)>0、g2(Hi)>0に設定されており、水リスク回避を担保している。
【0041】
次に
図8を参照して、本実施形態における無除湿運転制御の具体的フローについて説明する。運転開始後は吹出温度To、吸込温度Ti、蒸発器温度Te、湿度センサS4により吸込空気の相対湿度Hiの値、及び、水検知センサS21によりドレンパン23c内の水検知有無が計測される(S200)。次に、水検知の有無により(S201)、テーブルB1又はテーブルB2を適用して、ε1’
、ε2
’ の値が演算される(S202又はS203)。
これらの計測値及び演算値に基づいて、以下の制御が行われる。まず、吹出温度Toが設定室温Ts以上か否かの判定が行われる(S204)。To<Tsの場合には、圧縮機22aの回転数を1段階減少させる(S208)。これにより蒸発器温度Teを制御して、吹出温度Toを設定室温Ts以上に維持する。
【0042】
S204においてY、すなわちTo≧Tsの場合には、次に吹出温度Toと吸込空気の露点温度Twとの比較が行われる(S205)。比較に際しては結露防止を図るため余裕値ε1’を考慮して行われる。To<Tw+ε1’の場合には結露のおそれありと判定し、圧縮機22aの回転数を1段階減少させる(S208)。
【0043】
S204においてY、すなわちTo≧Tw+ε1’の場合には、さらに蒸発器温度Teと吸込空気の露点温度Twとの比較が行われる(S206)。この場合、ドレンパン23cにおける溢水、漏水、さらに水飛び等
の防止を図るため、以下のとおり余裕値ε2
’を考慮して行われる。なお、上述のように、余裕値ε2’は水検知の場合に蒸発器温度(Teの)閾値を高くするように設定されている。
Te≧Tw+ε2’の場合には、蒸発器温度を下げても水リスクなしと判定して、圧縮機22aの回転数を1段階増加させる(S207)。Te<Tw+ε2’の場合には、水リスク大と判定して、蒸発器温度
Teを低下傾向に制御するため圧縮機22aの回転数を1段階減少させる(S208)。
以上の制御を運転停止に至るまで(S209においてY)繰り返し定期的に行う(S210)。
【0044】
また、本実施形態では直膨方式の室内機を用いた例を示したが、第一の実施形態と同じく冷水−冷媒方式の空調機を用いた態様とすることもできる。
【0045】
(第三の実施形態)
さらに、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態の構成は上述の実施形態に係る空調システム20と同一である。本実施形態が異なる点は余裕値テーブルの内容である。すなわち、上述の実施形態ではドレンパン23内の水検知有無に対応して、第二の余裕値(ε2’)を変化させているのに対して、本実施形態ではラック型空調機23のファン23cの回転数rに対応して、第二の余裕値(ε2”)の値を変化させることである。なお、余裕値ε1”については上述の実施形態と同様のテーブルを適用する。
【0046】
具体的には、第二の余裕値ε2”は、ファン回転数rに対応して
図9〜
図11に示す異なるテーブルC1乃至C3に基づいて設定される。すなわち、ファン回転数が低い領域(r≦r1)では、冷却の顕熱比(SHF)が下がるため凝縮水発生リスクは高くなる。このため、テーブルC1では、ε2”≧0、かつ、蒸発器温度閾値が高くなるよう設定されている(
図9(b))。
ファン回転数が大きくなるに従い(r2≧r>r1)、SHFは上がり凝縮水発生リスクが低減するため、閾値を下げて冷房能力を確保する制御としている(
図10(b))。
さらにファン回転数が大きい領域(r>r2)では、万一、湿度変動等により凝縮水
が発生した場合、コイルからドレンパンに落ちずに、ファン風圧で凝縮水が室内側に飛ばされるおそれがある。こうしたリスクを回避するため、凝縮リスクに対して余裕を持った閾値とするものである(
図11(b))。
なお、ファン回転数r1、r2は、空調機能力、冷房負荷、余裕値ε1”、ε2”等に対応して、適切な値に設定することができる。
【0047】
次に
図12を参照して、本実施形態における無除湿運転制御フローについて説明する。運転開始後は吹出温度To、吸込温度Ti、蒸発器温度Te、湿度センサS4により吸込空気の相対湿度Hiの値、及び、ファン回転数検知センサS22によりファン23c回転数が計測される(S300)。次に、ファン回転数rの値に対応して(S301)、テーブルC1乃至C3を適用して、ε1”、ε2”の値が演算される(S302〜S304)。
以下のフローについては
図8のS204〜S210と同様であるので(但し、同図においてε1’、ε2’→ε1”、ε2”)、重複説明を省略する。
【0048】
(第四の実施形態)
さらに、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、主として上述の(10)の発明に関する。
図13を参照して、本実施形態に係る空調システム40の構成が、第一の実施形態に係る空調システム1と異なる点は、アンビエント空調機4の吹出温度To’、二重床
下温度T
fをそれぞれ計測する温度センサS41、S42をさらに備えていることである。
また、制御方式で異なる点は、ラック型空調機の吹出温度(To)とアンビエント空調機の吹出温度(To’)の差、ΔTo=(To−To’)に基づいて余裕値ε1(3)、ε2(3)を変化させていることである。
【0049】
本実施形態において余裕値テーブルDは、ε1(3)についてはΔTo≧0の範囲では余裕値ε1(3)=ε1+を小さく設定している。この範囲では、ラック型空調機5の吹出温度(To)がアンビエント空調機4の吹出温度(To’)より高く、アンビエント空調機4側で除湿制御が行われてもICT機器側の結露リスクが少ないためである。
これに対してΔTo<0の範囲では、ラック型空調機5側で除湿制御を行うことになるため、水リスクが大きい。このため、ε1(3)=ε1−を大きく設定している。
さらに、第二の余裕値ε2(3)についても同様の設定としている。但し、両者の値は必ずしも同一である必要はない。
【0050】
次に
図15を参照して、本実施形態における無除湿運転制御フローについて説明する。運転開始後はラック型空調機5について、吹出温度To、吸込温度Ti、蒸発器温度Teが計測される。また、アンビエント空調機4について、吹出温度To’及び二重床下温度Tfが計測される(S400)。
次に、ΔTo=(To−To’)の正負に対応して、テーブルDを適用して、ε1”、ε2”の値が演算される(S401)。
【0051】
さらに、ラック型空調機5の吹出温度Toが二重床下温度Tf以上か否かが判定される(S402)。To<Tfの場合には(S402においてN)、結露のおそれがあるためラック型空調機5の吹き出し温度を上昇させるべく、冷水弁V1を一段階絞る(S406)。
S403以下のフローについては
図4のS103以下と同様であるので、重複説明を省略する。
【0052】
なお、本実施形態では余裕値テーブルD
の設定に際して、ラック型空調機
5とアンビエント空調機
4の吹出温度の差
ΔToに基づく例を示したが、
ラック型空調機5と二重床
下温度T
fとの差に基づく態様とすることもできる。
【0053】
(第五の実施形態)
さらに、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、主として上述の(2)の発明に関する。本実施形態の構成は上述の実施形態に係る空調システム1と同一である。本実施形態の制御が第一の実施形態と異なる点は以下の通りである。すなわち、第一の実施形態ではラック型空調機5の吹出温度To及び蒸発器温度Teと、吸込空気の露点温度Twの比較に基づいて、余裕値ε1、ε2の値を変化させている。これに対して、本実施形態では吹出温度Toと吸込空気の露点温度Twの比較に基づいて、余裕値ε1のみ制御するものである。
【0054】
以下、
図16を参照して、本実施形態における無除湿運転制御の具体的フローについて説明する。運転開始後は温度センサS1〜S3により吹出温度To、吸込温度Ti、蒸発器温度Teが、湿度センサS4により吸込空気の相対湿度Hiが、それぞれ計測される(S500)。次いで、余裕値テーブルAを用いてε1=f(Hi)の値が演算される(S501)。これらの計測値及び演算値に基づいて、以下の制御が行われる。
【0055】
まず、吹出温度Toが設定室温Ts以上か否かの判定が行われる(S502)。To<Tsの場合には、冷水弁V1開度を1段階絞る(S504)。蒸発器温度Teを上昇方向に制御して、吹出温度Toを設定室温Ts以上に維持するためである。
【0056】
S502においてY、すなわちTo≧Tsの場合には、次に吹出温度Toと吸込空気の露点温度Twとの比較が行われる(S503)。比較に際しては、水リスク回避を図るため相対湿度Hiに比例する余裕値ε1を考慮して行われる。
S503においてN,すなわちTo<Tw+ε1の場合には水リスク大と判定し、冷水弁V1開度を1段階絞り、蒸発器温度Teを上昇傾向に制御する(S504)。
【0057】
S503においてY、すなわちTo≧Tw+ε1の場合には水リスク小と判定し、冷水弁V1開度を1段階増加し、蒸発器温度Te低下傾向に制御する(S505)。以上の制御を運転停止に至るまで(S506においてY)、繰り返し定期的に行う(S507)。
【0058】
(第六の実施形態)
さらに、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、主として上述の(3)の発明に関する。本実施形態の構成は上述の実施形態に係る空調システム1と同一である。本実施形態の制御が第五の実施形態と異なる点は、第五の実施形態では吹出温度Toと吸込空気の露点温度Twの比較に基づいて余裕値ε1のみ制御するのに対して、本実施形態では蒸発器温度Teと吸込空気の露点温度Twの比較に基づいて余裕値ε2のみ制御する点である。
【0059】
以下、
図17を参照して、本実施形態における無除湿運転制御の具体的フローについて説明する。運転開始後は温度センサS1〜S3により吹出温度To、吸込温度Ti、蒸発器温度Teが、湿度センサS4により吸込空気の相対湿度Hiが、それぞれ計測される(S600)。次いで、余裕値テーブルAを用いてε2=g(Hi)の値が演算される(S601)。これらの計測値及び演算値に基づいて、以下の制御が行われる。
【0060】
まず、吹出温度Toが設定室温Ts以上か否かの判定が行われる(S602)。To<Tsの場合には、冷水弁V1開度を1段階絞る(S605)。蒸発器温度Teを上昇方向に制御して、吹出温度Toを設定室温Ts以上に維持するためである。
【0061】
S602においてY、すなわちTo≧Tsの場合には、次に蒸発器温度Teと吸込空気の露点温度Twとの比較が行われる。比較に際しては、水リスク回避を図るため相対湿度Hiに比例する余裕値ε2を考慮して行われる。
Te<Tw+ε2の場合には(S603においてN)、水リスク大と判定し、冷水弁V1開度を1段階絞り、蒸発器温度Teを上昇傾向に制御する(S605)。
【0062】
Te≧Tw+ε2の場合には(S603においてY)、蒸発器温度を下げても水リスク小と判定して、冷水弁V1開度を1段階増加し、蒸発器温度Te低下傾向に制御する(S604)。
以上の制御を運転停止に至るまで(S607においてY)繰り返し定期的に行う。
【符号の説明】
【0063】
1、20、40・・空調システム
3・・・・・サーバラック
4・・・・・アンビエント空調機
5、23・・ラック型空調機
5a・・・・蒸発器
5b・・・・送風ファン
5c、23c・・・・・ドレンパン
6・・・・・一次側冷水回路
7・・・・・二次側冷媒回路
8e・・・・冷水弁
9a・・・・コールドアイル
9b・・・・ホットアイル
22a・・・・・圧縮機
S1−S3、S41・・・・・温度センサ
S4・・・・・湿度センサ
S21・・・・・水検知センサ
S22・・・・・ファン回転数検知センサ