(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、IPM(Interior Permanent Magnet:磁石埋込型)モータなどの動力モータでは、回転子の回転角を検出する回転角センサとして、レゾルバが用いられる。レゾルバは、基本的にはコイルと鉄心によって簡易に構成されているため高い耐環境性能を有し、温度変化、塵や埃等に影響されることなく正常に動作する。レゾルバの励磁コイルには励磁信号(正弦波信号)が印加される。レゾルバの2つの出力コイルからは、回転子の回転角に応じて、励磁信号が正弦波状に振幅変調された2相の出力信号が出力される。そして、各相の出力信号を所定周期毎に検出し、回転角が算出される。
【0003】
下記特許文献1には、レゾルバの励磁コイルの一端にオフセット電圧(直流バイアス)を含む励磁信号(正弦波信号)を供給し、励磁コイルの他端にも同一のオフセット電圧を含む反転励磁信号を供給する回転角度検出装置が開示されている。この回転角度検出装置は、上記励磁コイルの地絡を検出した場合に、励磁信号及び反転励磁信号にオフセット電圧を加えることを禁止することにより、オフセット電圧を含まない励磁信号を励磁コイルに供給し、これによってオフセット電圧に起因する素子の破壊や励磁コイルの断線を防止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の回転角度検出装置では、直流成分であるオフセット電圧は励磁コイルの供給されないものの、交流成分である励磁信号が励磁コイルに供給されてしまうので、レゾルバの保護や回転角度検出装置を構成する回路素子の保護の観点で不十分である。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、励磁コイルの地絡に対してレゾルバや回路素子をより確実かつ簡易な構成で保護するレゾルバ励磁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、レゾルバの励磁コイルに供給するための逆相レゾルバ励磁信号及び正相レゾルバ励磁信号を生成するレゾルバ励磁装置であって、所定周波数の正弦波信号を生成する正弦波信号生成回路と、第1の演算増幅器を用いて正弦波信号を反転増幅することにより逆相レゾルバ励磁信号を生成する反転増幅回路と、第2の演算増幅器を用いて正弦波信号あるいは逆相レゾルバ励磁信号を増幅することにより正相レゾルバ励磁信号を生成する増幅回路と、を備えるレゾルバ励磁信号生成部と、外部から入力される停止指令に基づいて反転増幅回路の出力及び増幅回路の出力を接地電位に設定する停止回路とを具備する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、増幅回路は、第2の演算増幅器を用いて逆相レゾルバ励磁信号を反転増幅することにより正相レゾルバ励磁信号を生成し、停止回路は、第1の演算増幅器の非反転入力端子及び第2の演算増幅器の非反転入力端子を接地電位に引き込むことにより、反転増幅回路の出力及び増幅回路の出力を接地電位に設定する、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、停止回路は、第1の演算増幅器の反転入力端子をも接地電位に引き込む、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外部から入力される停止指令に基づいて反転増幅回路の出力及び増幅回路の出力を接地電位に設定する停止回路とを具備するので、励磁コイルの地絡に対してレゾルバや回路素子をより確実かつ簡易な構成で保護することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る回転角検出装置1の構成を示すブロック図である。回転角検出装置1は、レゾルバ10と、レゾルバ10にレゾルバ励磁信号を出力すると共にレゾルバ10の出力信号をデジタル信号に変換するレゾルバ励磁装置20と、レゾルバ励磁装置20の出力信号に基づいてモータのベクトル制御を行うMPU(Micro−Processing Unit)30と、を備えている。
【0013】
レゾルバ10は、回転子であるロータ11と、ロータ11の周囲に配置された励磁コイルL1と、同じくロータ11の周囲に配置された第1出力コイルL2及び第2出力コイルL3と、を備えている。ロータ11の周囲には、円周方向に沿って磁極(図示省略)が形成されたステータ(図示省略)が設けられている。上記励磁コイルL1及び第1、第2出力コイルL2,L3は、ステータの個々の磁極に個別に巻かれている。
【0014】
レゾルバ励磁装置20は、正弦波信号を生成する正弦波信号生成回路21と、レゾルバ励磁信号を生成するレゾルバ励磁信号生成部22と、レゾルバ10の出力信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するレゾルバデジタル変換部23とを備えている。なお、レゾルバ励磁装置20は、図示しないが、正弦波信号生成回路21、レゾルバ励磁信号生成部22及びレゾルバデジタル変換部23に正極の電源電圧を供給する片電源回路(プラス電源回路)をも備えている。
【0015】
正弦波信号生成回路21は、所定角周波数ωの正弦波信号を生成する。この角周波数ωは、例えば10kHzである。正弦波信号生成回路21は、なお、正弦波信号生成回路21は、正極の電源電圧Vccで動作するものであり、この関係で正弦波信号は、電源電圧Vccの中間電圧Vcc/2に直流バイアスされた交流信号である。
【0016】
レゾルバ励磁信号生成部22は、正弦波信号生成回路21から入力される正弦波信号に基づいて、正相レゾルバ励磁信号及び当該レゾルバ励磁信号と逆相の(位相が180度反転した)逆相レゾルバ励磁信号を生成する。また、レゾルバ励磁信号生成部22は、正相レゾルバ励磁信号を励磁コイルL1の一端に、また反転レゾルバ励磁信号を励磁コイルL1の他端に出力する。また、レゾルバ励磁信号生成部22は、MPU30から停止指令が入力されると、正相レゾルバ励磁信号及び逆相レゾルバ励磁信号の出力を停止する。
【0017】
レゾルバデジタル変換部23は、レゾルバ10の出力信号であり、第1出力コイルL2から入力される正弦関数信号(アナログ信号)及び第2出力コイルL3から入力される余弦関数信号(アナログ信号)をデジタル信号(角度データ)に変換する。また、レゾルバデジタル変換部23は、上記角度データをMPU30へ出力する。
【0018】
図2は、レゾルバ励磁信号生成部22の詳細構成を示す回路図である。レゾルバ励磁信号生成部22は、第1、第2の演算増幅器41,42(オペアンプ)と、上記片電源回路から入力された直流電圧Vbを1/2に分圧する1/2分圧回路43と、0V電圧を生成する0V生成回路44(停止回路)と、7つの抵抗R1〜R7と、を備えている。なお、レゾルバ励磁信号生成部22は正極の電源電圧Vbで動作するものである。
【0019】
第1の演算増幅器41の反転入力端子は、抵抗R1を介して、当該第1の演算増幅器41の出力端子に接続されている。さらに、第1の演算増幅器41の反転入力端子は、抵抗R2を介して、正弦波信号生成回路21の出力端子に接続されている。
【0020】
第1の演算増幅器41の非反転入力端子は、抵抗R3を介して1/2分圧回路43の出力端子に接続されていると共に、例えば正弦波信号生成回路21から抵抗R4を介して中間電圧Vcc/2が印加される。第1の演算増幅器41の出力端子は、励磁コイルL1の他端に接続されると共に、抵抗R6を介して第2の演算増幅器42の反転入力端子に接続される。
【0021】
一方、第2の演算増幅器42の反転入力端子は、抵抗R5を介して、当該第2の演算増幅器42の出力端子に接続されていると共に、抵抗R6を介して第1の演算増幅器41の出力端子に接続されている。第2の演算増幅器42の非反転入力端子は、抵抗R7を介して、1/2分圧回路43の出力端子に接続されている。第2の演算増幅器42の出力端子は、励磁コイルL1の一端に接続される。なお、このようなレゾルバ励磁信号生成部22において、第1の演算増幅器41及び抵抗R1〜R4は第1の反転増幅回路を構成し、第2の増幅回路42及び抵抗R5〜R7は第2の反転増幅回路を構成している。
【0022】
1/2分圧回路43は、上記電源電圧Vbを1/2に分圧することにより中間電圧Vb/2を出力する。0V電圧生成回路44は、入力端子がMPU30に接続され、出力端子が第1、第2の演算増幅器41,42の各非反転入力端子に直接接続されている。この0V生成回路44は、MPU30からハイ電圧が停止指令として入力されると、第1、第2の演算増幅器41,42の各非反転入力端子を強制的に0V(接地電位)に引き込む停止回路である。
【0023】
図3は、このような0V生成回路44の詳細構成を示す回路図である。0V生成回路44は、2つのNPNトランジスタTr1,Tr2と、4つの抵抗R11,R12,R13,R14と、を備えている。一方のトランジスタTr1については、コレクタ端子が第1の演算増幅器41の非反転入力端子に、ベース端子が抵抗R11を介してエミッタ端子にそれぞれ接続されている。また、このトランジスタTr1のベース端子には、抵抗R12を介して停止指令が入力される。また、一方のトランジスタTr1のエミッタ端子は接地されている。
【0024】
他方のトランジスタTr2については、コレクタ端子が第2の演算増幅器42の非反転入力端子に接続され、ベース端子が抵抗R13を介してエミッタ端子に接続されている。また、このトランジスタTr2のベース端子には抵抗R14を介して停止指令が入力される。また、このトランジスタTr2ののエミッタ端子は接地されている。
【0025】
すなわち、一方のトランジスタTr1及び2つの抵抗R11,R12は、ハイ電圧あるいはロー電圧を択一的に示す停止指令を反転させる第1インバータ回路を構成している。また、他方のトランジスタTr2及び2つの抵抗R13,R14は、ハイ電圧あるいはロー電圧を択一的に示す停止指令を反転させる第2インバータ回路を構成している。
【0026】
次に、このように構成された回転角検出装置1の作用効果について詳しく説明する。
この回転角検出装置1では、レゾルバ励磁装置20のレゾルバ励磁信号生成部22における逆相レゾルバ励磁信号及び正相レゾルバ励磁信号の生成処理が行われる。そして、この逆相レゾルバ励磁信号及び正相レゾルバ励磁信号がレゾルバ励磁装置20からレゾルバ10に出力されることによって、正弦関数信号及び余弦関数信号がレゾルバ10からレゾルバ励磁装置20に出力される。
【0027】
そして、この正弦関数信号及び余弦関数信号がレゾルバ励磁装置20のレゾルバデジタル変換部23で角度データに変換されてMPU30に出力される。そして、MPU30は、上記角度データに基づいてモータをベクトル制御する。
【0028】
回転角検出装置1の全体的な動作は以上の通りであるが、レゾルバ励磁信号生成部22における逆相レゾルバ励磁信号及び正相レゾルバ励磁信号の生成処理の詳細をさらに詳しく説明する。
図2に示すように、第1の演算増幅器41の反転入力端子には、中間電圧Vcc/2に直流バイアスされた正弦波信号が抵抗R2を介して入力される。一方、第1の演算増幅器41の非反転入力端子には、中間電圧Vcc/2が抵抗R4を介して入力されると共に1/2分圧回路43から出力される直流電圧Vb/2が抵抗R3を介して入力される。
【0029】
このような入力状態において、正弦波信号の直流バイアスつまり中間電圧Vcc/2はキャンセルされ、新たな直流バイアスとして直流電圧Vb/2を有すると共に正弦波信号の位相が反転した逆相レゾルバ励磁信号が第1の演算増幅器41の出力端子から励磁コイルL1の一端に出力される。
【0030】
また、このような逆相レゾルバ励磁信号は、抵抗R6を介して第2の演算増幅器42の反転入力端子に入力される。一方、第2の演算増幅器42の非反転入力端子には、1/2分圧回路43から出力される直流電圧Vb/2が抵抗R7を介して入力される。このような入力状態において、直流バイアスとして直流電圧Vb/2を有すると共に逆相レゾルバ励磁信号の位相が反転した正相レゾルバ励磁信号が第2の演算増幅器42の出力端子から励磁コイルL1の他端に出力される。
【0031】
この結果として、励磁コイルL1の両端には、正相レゾルバ励磁信号及び逆相レゾルバ励磁信号の差動電圧、つまり、正相レゾルバ励磁信号及び逆相レゾルバ励磁信号の各振幅の2倍の振幅を有する正弦波電圧が印加される。この結果、第1、第2出力コイルL2,L3から出力される正弦関数信号及び余弦関数信号は、振幅が大きなものとなり、よってノイズの影響が少なくなるのでロータ11の回転角度の検出精度が向上する。
【0032】
ここで、MPU30は、通常動作状態では停止指令をロー電圧に設定するが、地絡検出部(不図示)から励磁コイルL1に地絡が発生したことを示す検出信号が入力されると、停止指令をハイ電圧に変更する。この結果、
図3に示す0V生成回路44において、2つのトランジスタTr1,Tr2が共にオン状態に遷移するので、第1、第2の演算増幅器41,42の各非反転入力端子を強制的に0V電位(接地電位)とする。
【0033】
一方、停止指令がロー電位からハイ電圧に変化しても、第1の演算増幅器41の反転入力端子には、正弦波信号生成回路21から中間電圧Vcc/2を直流バイアスとする正弦波信号が入力され続けるが、0V生成回路44によって第1の演算増幅器41の非反転入力端子が強制的に0V電位(接地電位)に設定されているので、第1の演算増幅器41の出力端子からは交流信号が何ら出力されず、直流的に0V電位(接地電位)となる。すなわち、停止指令がロー電位からハイ電圧に変化すると、励磁コイルL1の一端は0V電位(接地電位)となる。
【0034】
また、停止指令がロー電位からハイ電圧に変化すると、第2の演算増幅器42については、反転入力端子及び非反転入力端子の何れも0V電位(接地電位)となる。したがって、第2の演算増幅器42の出力端子からは交流信号が何ら出力されず、直流的に0V電位(接地電位)となり、よって励磁コイルL1の他端も0V電位(接地電位)となる。
【0035】
このような回転角検出装置1によれば、励磁コイルL1に地絡が発生すると、第1、第2の演算増幅器41,42の各出力端子は強制的に0V電位(接地電位)となり、励磁コイルL1には信号が何ら供給されない状態となるので、励磁コイルの地絡に対してレゾルバ10や自らを構成する回路素子をより確実かつ簡易な構成で保護することができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、0V生成回路44によって第1、第2の演算増幅器41,42の各非反転入力端子を強制的に0V電位(接地電位)に引き込んだが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1、第2インバータ回路に加えて第3インバータ回路を備え、第3インバータ回路によって第1の演算増幅器41の反転入力端子をも強制的に0V電位(接地電位)に引き込んでもよい。
【0037】
(2)上記実施形態では、0V生成回路44を
図3に示すように構成したが、本発明はこれに限定されない。0V生成回路44は、出力端を強制的に0V電位(接地電位)に設定できるものであれば、どのような回路でもよい。
【0038】
(3)上記実施形態では、正弦波信号生成回路21が生成する正弦波信号の直流バイアスが正弦波信号生成回路21の電源電圧Vccの中間電圧Vcc/2の場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。正弦波信号が任意の直流電圧V1(好ましくは中間電圧Vcc/2近傍の電圧)の場合には、正弦波信号生成回路21から別途取り込む直流電圧も上記直流電圧V1と同一となる。
【0039】
(4)また、上記実施形態のレゾルバ励磁信号生成部22は、1/2分圧回路43を備えることにより第1、第2の反転増幅回路から励磁コイルL1に出力される逆相レゾルバ励磁信号及び正相レゾルバ励磁信号の直流バイアスを電源電圧Vbの中間電圧Vb/2に設定するが、本発明はこれに限定されない。1/2分圧回路43に代えて、電源電圧Vbを任意の分圧比β(0<β<1)で分圧する分圧回路を備えることにより、任意の直流電圧を逆相レゾルバ励磁信号及び正相レゾルバ励磁信号の直流バイアスとしてもよい。ただし、この場合であっても、分圧比βは1/2近傍の値、つまり直流バイアスは中間電圧Vb/2近傍の電圧が好ましい。