特許第6174393号(P6174393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174393
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】レゾルバ励磁装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/20 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
   G01D5/20 110Q
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-136296(P2013-136296)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-10930(P2015-10930A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏司
(72)【発明者】
【氏名】瀬野尾 和隆
(72)【発明者】
【氏名】植野 修吾
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5067880(JP,B2)
【文献】 特開昭63−133001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルバの励磁コイルに供給するための逆相レゾルバ励磁信号及び正相レゾルバ励磁信号を生成するレゾルバ励磁装置であって、
所定周波数の正弦波信号を生成する正弦波信号生成回路と、
前記正弦波信号を反転増幅して前記逆相レゾルバ励磁信号を生成する第1の反転増幅回路と、前記逆相レゾルバ励磁信号を反転増幅して前記正相レゾルバ励磁信号を生成する第2の反転増幅回路と、を備えるレゾルバ励磁信号生成部と、
第1の直流電圧を出力する直流電圧生成回路とを備え、
前記第1の反転増幅回路は、前記正弦波信号及び前記第1の直流電圧を入力として、前記第1の直流電圧を直流バイアスとする前記逆相レゾルバ励磁信号を出力し、
前記第2の反転増幅回路は、前記第1の直流電圧を直流バイアスとする前記逆相レゾルバ励磁信号及び前記第1の直流電圧を入力とし、前記第1の直流電圧を直流バイアスとする前記正相レゾルバ励磁信号を出力する
ことを特徴とするレゾルバ励磁装置。
【請求項2】
前記正弦波信号が第2の直流電圧を含む場合には、前記第1の反転増幅回路は、前記第2の直流電圧をも入力として前記第1の直流電圧を直流バイアスとする前記逆相レゾルバ励磁信号を出力することを特徴とする請求項1に記載のレゾルバ励磁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバ励磁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IPM(Interior Permanent Magnet:磁石埋込型)モータなどの動力モータでは、回転子の回転角を検出する回転角センサとして、レゾルバが用いられる。レゾルバは、基本的にはコイルと鉄心によって簡易に構成されているため高い耐環境性能を有し、温度変化、塵や埃等に影響されることなく正常に動作する。レゾルバの励磁コイルには、正弦波信号が印加される。レゾルバの2つの出力コイルからは、回転子の回転角に応じて、励磁信号が正弦波状に振幅変調された2相の出力信号が出力される。そして、各相の出力信号を所定周期毎に検出し、回転角が算出される。
【0003】
下記特許文献1には、レゾルバの励磁コイルの一端にオフセット電圧(直流バイアス)を含む励磁信号(正弦波信号)を供給し、励磁コイルの他端にも同一のオフセット電圧を含む反転励磁信号を供給する回転角度検出装置が開示されている。この回転角度検出装置は、上記励磁コイルの地絡を検出した場合に、励磁信号及び反転励磁信号にオフセット電圧を加えることを禁止することにより、オフセット電圧を含まない励磁信号を励磁コイルに供給し、これによってオフセット電圧に起因する素子の破壊や励磁コイルの断線を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5067880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の回転角度検出装置は、正弦波信号に基づいてレゾルバ励磁信号を生成すると共に、この正弦波信号の逆相信号に基づいて反転レゾルバ励磁信号を生成する。このため、逆相信号を生成するためのインバータ回路が必要になるため、部品点数が多くなり、生産コストが上がってしまう問題があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、部品点数を抑制して安価に構成できるレゾルバ励磁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、レゾルバの励磁コイルに供給するための逆相レゾルバ励磁信号及び正相レゾルバ励磁信号を生成するレゾルバ励磁装置であって、所定周波数の正弦波信号を生成する正弦波信号生成回路と、正弦波信号を反転増幅して逆相レゾルバ励磁信号を生成する第1の反転増幅回路と逆相レゾルバ励磁信号を反転増幅して正相レゾルバ励磁信号を生成する第2の反転増幅回路とを備えるレゾルバ励磁信号生成部と、を具備する、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、第1の直流電圧を出力する直流電圧生成回路をさらに備え、前記第1の反転増幅回路は、前記正弦波信号及び前記第1の直流電圧を入力として、前記第1の直流電圧を直流バイアスとする前記逆相レゾルバ励磁信号を出力し、前記第2の反転増幅回路は、前記第1の直流電圧を直流バイアスとする前記逆相レゾルバ励磁信号及び前記第1の直流電圧を入力とし、前記第1の直流電圧を直流バイアスとする前記正相レゾルバ励磁信号を出力する、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記正弦波信号が第2の直流電圧を含む場合には、前記第1の反転増幅回路は、前記第2の直流電圧をも入力として前記第1の直流電圧を直流バイアスとする前記逆相レゾルバ励磁信号を出力する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レゾルバ励磁信号生成部が正弦波信号を反転増幅して逆相レゾルバ励磁信号を生成する第1の反転増幅回路と、逆相レゾルバ励磁信号を反転増幅して正相レゾルバ励磁信号を生成する第2の反転増幅回路とを備えるので、従来技術のようなインバータ回路が不要であり、よって部品点数を抑制して安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る回転角検出装置1の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態におけるレゾルバ励磁信号生成部22の構成を示す回路図である。
図3】本発明の一実施形態において、(a)逆相レゾルバ励磁信号、(b)正相レゾルバ励磁信号、及び(c)励磁コイルL1の両端に生じる電圧を示す波形図である。
図4】本発明の一実施形態の変形例におけるレゾルバ励磁信号生成部22Aの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る回転角検出装置1の構成を示すブロック図である。回転角検出装置1は、レゾルバ10と、レゾルバ10にレゾルバ励磁信号を出力すると共にレゾルバ10の出力信号をデジタル信号に変換するレゾルバ励磁装置20と、レゾルバ励磁装置20の出力信号(角度データ)に基づいてモータのベクトル制御を行うMPU(Micro−Processing Unit)30と、を備えている。
【0013】
レゾルバ10は、回転子であるロータ11と、ロータ11の周囲に配置された励磁コイルL1と、同じくロータ11の周囲に配置された第1出力コイルL2及び第2出力コイルL3と、を備えている。ロータ11の周囲には、円周方向に沿って磁極(図示省略)が形成されたステータ(図示省略)が設けられている。上記励磁コイルL1及び第1、第2出力コイルL2,L3は、ステータの個々の磁極に個別に巻かれている。
【0014】
レゾルバ励磁装置20は、正弦波信号を生成する正弦波信号生成回路21と、レゾルバ励磁信号を生成するレゾルバ励磁信号生成部22と、レゾルバ10の出力信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するレゾルバデジタル変換部23とを備えている。なお、レゾルバ励磁装置20は、図示しないが、正弦波信号生成回路21、レゾルバ励磁信号生成部22及びレゾルバデジタル変換部23に正極の電源電圧を供給する片電源回路(プラス電源回路)をも備えている。
【0015】
正弦波信号生成回路21は、角周波数ωの正弦波信号を生成してレゾルバ励磁信号生成部22に出力する。この角周波数ωは、例えば10kHzである。なお、正弦波信号生成回路21は、正極の電源電圧Vccで動作するものであり、この関係で正弦波信号は、電源電圧Vccの中間電圧Vcc/2(第1の中間電圧)に直流バイアスされた交流信号である。
【0016】
レゾルバ励磁信号生成部22は、正弦波信号生成回路21から入力される正弦波信号に基づいて、正相レゾルバ励磁信号及び当該レゾルバ励磁信号と逆相の(位相が180度反転した)逆相レゾルバ励磁信号を生成する。また、レゾルバ励磁信号生成部22は、正相レゾルバ励磁信号を励磁コイルL1の一端に、また反転レゾルバ励磁信号を励磁コイルL1の他端に出力する。
【0017】
レゾルバデジタル変換部23は、レゾルバ10の出力信号であり、第1出力コイルL2から入力される正弦関数信号(アナログ信号)及び第2出力コイルL3から入力される余弦関数信号(アナログ信号)をデジタル信号(角度データ)に変換する。また、レゾルバデジタル変換部23は、上記角度データをMPU30へ出力する。
【0018】
図2は、上記レゾルバ励磁信号生成部22の詳細構成を示す回路図である。レゾルバ励磁信号生成部22は、2つの演算増幅器41,42(オペアンプ)と、上記片電源回路から入力された直流電圧Vbを1/2に分圧する1/2分圧回路43(直流電圧生成回路)と、7つの抵抗R1〜R7と、を備えている。なお、レゾルバ励磁信号生成部22は正極の電源電圧Vbで動作するものである。
【0019】
演算増幅器41の反転入力端子は、抵抗R1を介して、当該演算増幅器41の出力端子に接続されている。さらに、演算増幅器41の反転入力端子は、抵抗R2を介して、正弦波信号生成回路21の出力端子に接続されている。
【0020】
演算増幅器41の非反転入力端子は、抵抗R3を介して1/2分圧回路43の出力端子に接続されていると共に、例えば正弦波信号生成回路21から抵抗R4を介して中間電圧Vcc/2が印加される。演算増幅器41の出力端子は、励磁コイルL1の他端に接続されると共に、抵抗R6を介して演算増幅器42の反転入力端子に接続される。
【0021】
一方、演算増幅器42の反転入力端子は、抵抗R5を介して、当該演算増幅器42の出力端子に接続されていると共に、抵抗R6を介して演算増幅器41の出力端子に接続されている。演算増幅器42の非反転入力端子は、抵抗R7を介して、1/2分圧回路43の出力端子に接続されている。演算増幅器42の出力端子は、励磁コイルL1の一端に接続される。
【0022】
なお、このようなレゾルバ励磁信号生成部22において、一方の演算増幅器41及び抵抗R1〜R4は第1の反転増幅回路を構成し、他方の増幅回路42及び抵抗R5〜R7は第2の反転増幅回路を構成している。1/2分圧回路43は、上記電源電圧Vbを1/2に分圧することにより中間電圧Vb/2(第2の中間電圧)を出力する。
【0023】
次に、このように構成された回転角検出装置1の作用効果について詳しく説明する。
この回転角検出装置1では、レゾルバ励磁装置20のレゾルバ励磁信号生成部22における逆相レゾルバ励磁信号及び正相レゾルバ励磁信号の生成処理が行われる。そして、この逆相レゾルバ励磁信号及び正相レゾルバ励磁信号がレゾルバ励磁装置20からレゾルバ10に出力されることによって、正弦関数信号及び余弦関数信号がレゾルバ10からレゾルバ励磁装置20に出力される。
【0024】
そして、この正弦関数信号及び余弦関数信号がレゾルバ励磁装置20のレゾルバデジタル変換部23で角度データに変換されてMPU30に出力される。そして、MPU30は、上記角度データに基づいてモータをベクトル制御する。
【0025】
回転角検出装置1の全体的な動作は以上の通りであるが、レゾルバ励磁信号生成部22における逆相レゾルバ励磁信号及び正相レゾルバ励磁信号の生成処理の詳細をさらに詳しく説明する。図2に示すように、演算増幅器41の反転入力端子には、中間電圧Vcc/2に直流バイアスされた正弦波信号が抵抗R2を介して入力される。一方、演算増幅器41の非反転入力端子には、中間電圧Vcc/2が抵抗R4を介して入力されると共に1/2分圧回路43から出力される直流電圧Vb/2が抵抗R3を介して入力される。
【0026】
このような入力状態において、正弦波信号の直流バイアスつまり中間電圧Vcc/2はキャンセルされ、新たな直流バイアスとして直流電圧Vb/2を有すると共に正弦波信号の位相が反転した逆相レゾルバ励磁信号が演算増幅器41の出力端子から励磁コイルL1の一端に出力される(図3(a)参照)。
【0027】
また、このような逆相レゾルバ励磁信号は、抵抗R6を介して演算増幅器42の反転入力端子に入力される。一方、演算増幅器42の非反転入力端子には、1/2分圧回路43から出力される直流電圧Vb/2が抵抗R7を介して入力される。このような入力状態において、直流バイアスとして直流電圧Vb/2を有すると共に逆相レゾルバ励磁信号の位相が反転した正相レゾルバ励磁信号が演算増幅器42の出力端子から励磁コイルL1の他端に出力される(図3(b)参照)。
【0028】
この結果として、励磁コイルL1の両端には、図3(c)に示すように、正相レゾルバ励磁信号及び逆相レゾルバ励磁信号の差動電圧、つまり、正相レゾルバ励磁信号及び逆相レゾルバ励磁信号の各振幅の2倍の振幅を有する正弦波電圧が印加される。この結果、第1、第2出力コイルL2,L3から出力される正弦関数信号及び余弦関数信号は、振幅が大きなものとなり、よってノイズの影響が少なくなるのでロータ11の回転角度の検出精度が向上する。
【0029】
このような回転角検出装置1によれば、レゾルバ励磁信号生成部22において、第1の反転増幅回路で逆相レゾルバ励磁信号を生成し、また第1の反転増幅回路に直列接続されることにより逆相レゾルバ励磁信号を入力信号とする第2の反転増幅回路で正相レゾルバ励磁信号を生成するので、従来技術のようなインバータ回路が不要であり、よって部品点数を少なくして生産コストを抑制でき、かつ簡易に構成することができる。
【0030】
また、レゾルバ励磁信号生成部22は、正弦波信号生成回路21から入力された正弦波信号の直流バイアス(中間電圧Vcc/2)をキャンセルし、自らの電源電圧Vbの中間電圧Vb/2を直流バイアスとする正相レゾルバ励磁信号及び逆相レゾルバ励磁信号を生成するので、自らの電源電圧Vbに対して最も大きな振幅の正相レゾルバ励磁信号及び逆相レゾルバ励磁信号を生成することができる。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)例えば、図2に示したレゾルバ励磁信号生成部22に代えて、図4に示すレゾルバ励磁信号生成部22Aを採用してもよい。すなわち、正弦波信号生成回路21が生成する正弦波信号の直流バイアスは、正弦波信号生成回路21の電源電圧Vccの中間電圧Vcc/2以外の場合が考えられる。正弦波信号が任意の直流電圧V1(好ましくは中間電圧Vcc/2近傍の電圧)の場合には、正弦波信号生成回路21から別途取り込む直流電圧(第2の直流電圧)も上記直流電圧V1と同一となる。
【0032】
(2)また、レゾルバ励磁信号生成部22では、1/2分圧回路43を直流電圧生成回路として備えることにより第1、第2の反転増幅回路から励磁コイルL1に出力される逆相レゾルバ励磁信号及び正相レゾルバ励磁信号の直流バイアスを電源電圧Vbの中間電圧Vb/2に設定したが、1/2分圧回路43に代えて、電源電圧Vbを分圧比β(0<β<1)で分圧するβ分圧回路43Aを直流電圧生成回路として備えることにより、β分圧回路43Aが出力する直流電圧(第1の直流電圧)を逆相レゾルバ励磁信号及び正相レゾルバ励磁信号の直流バイアスとしてもよい。また、この場合であっても、分圧比βは1/2近傍の値、つまり直流バイアスは中間電圧Vb/2近傍の電圧が好ましい。
【0033】
(3)例えば、レゾルバデジタル変換部23はレゾルバ励磁装置20の必須構成要素ではなく、レゾルバデジタル変換部23の機能を例えばMPU30内に組み込んでもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 回転角検出装置
10 レゾルバ
11 ロータ
20 レゾルバ励磁装置
21 正弦波信号生成回路
22 レゾルバ励磁信号生成部
41,42 演算増幅器
43 1/2分圧回路(直流電圧生成回路)
R1〜R7 抵抗
L1 励磁コイル
図1
図2
図3
図4