【実施例1】
【0038】
本発明の実施形態の一例である実施例1について、
図1から
図4を用いて説明する。
【0039】
[実施例1の構成の説明]
まず、本発明の一実施例である車載電子機器の電力消費制御装置の具体的な構成について、
図1を用いて説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施例である車載電子機器の電力消費制御装置の構成を示すブロック図である。すなわち、車載電子機器の電力消費制御装置5は、
図1に示すように、図示しない車両に実装されて、バッテリ10と、イグニッションスイッチ12と、車両状態検知センサ14と、BCM20(車載電子機器制御部)と、車載電子機器50と、からなる。
【0041】
前記バッテリ10は、車載電子機器や電装品の駆動や、エンジンの始動・点火等に利用する電圧を発生する電圧源である。
【0042】
前記イグニッションスイッチ12は、イグニッションキーと連動したスイッチであり、イグニッションスイッチがON状態のときに車両のエンジンが始動可能な状態となり、イグニッションスイッチOFFで車両のエンジンが停止する。
【0043】
前記車両状態検知センサ14は、イグニッションスイッチ12がOFFになっているときの車両各部の状態を検知するセンサであり、例えば、ドアやトランクの開閉を検知するドアスイッチ,ドアのロック状態を検知するドアロック状態検出センサ,前照灯や室内照明等の灯火類に流れる電流を検出することによって照明の点灯状態をモニタする照明状態検出センサ等である。
【0044】
前記車載電子機器50は、図示しない車両に搭載された電子機器や電装品を示している。その中には、例えば、パワーシート52,前照灯54,室内ランプ56,ワイパ58,リアデフォッガ60,ドアミラー62等、が含まれる。なお、車載電子機器50は、ここに列挙したものに限定されるものではなく、他にも様々な電子機器や電装品が該当する。また、このような電子機器や電装品の中には、車両の種類や車両のグレードによっては装着されていないものもある。
【0045】
前記BCM20(車載電子機器制御部)は、車両に搭載された電子機器や電装品の制御装置であり、
図1に示すように、CPU30と、負荷駆動部22と、過電流検出部24と、バッテリ残量検出部26(電力残量取得部)とからなる。
【0046】
前記負荷駆動部22は、車両に搭載された電子機器や電装品を駆動するドライバ回路である。具体的には、トランジスタやIGBT等のスイッチング素子やリレーで構成される。また、最近ではIPD(Intelligent Power Device)と呼ばれる、保護機能を有する周辺回路が付加されたパワーデバイスが用いられることもある。
【0047】
前記過電流検出部24は、負荷駆動部22に想定よりも多くの電流(過電流)が流れていることを検出する。
【0048】
前記バッテリ残量検出部26(電力残量取得部)は、バッテリ10の残量を検出する。
【0049】
前記CPU30は、汎用のマイクロコンピュータで構成されており、各機能を実現するソフトウェア、すなわち、車両状態判断部32と、電力消費抑制部34と、電力消費促進部36と、消費電力量記憶部38と、履歴保持部40と、告知指示部42(電力消費促進動作告知部)を備えている。
【0050】
前記車両状態判断部32は、イグニッションスイッチ12がOFFになっているときの車両の状態を検知して、電力消費抑制状態(スタンバイモード)に移行してよいか否かを判断する。
【0051】
前記電力消費抑制部34は、車両に搭載されている電子機器や電装品を、電力消費を抑制した状態、いわゆるスタンバイモードで駆動する。
【0052】
前記電力消費促進部36は、所定の条件が成立したとき(後述する)に、車両に搭載されている電子機器や電装品を積極的に駆動して、電力消費を促進させる。
【0053】
前記消費電力量記憶部38は、車両に搭載されている電子機器や電装品が動作したときに消費する消費電力量が、予め記憶されているメモリである。
【0054】
前記履歴保持部40は、電力消費促進部36が作動した状態(以下、電力消費促進状態と呼ぶ)に移行したことを履歴として保持しておくメモリである。
【0055】
前記告知指示部42(電力消費促進動作告知部)は、車両に搭載されている電子機器や電装品に対して、車両が電力消費促進状態に移行したことをユーザに告知する指示を出力する。
【0056】
[電力消費抑制状態の説明]
次に、本実施例における電力消費抑制状態(スタンバイモード)について説明する。
【0057】
車両のエンジンを切って、ユーザが車両から離れている間は、防盗装置やキーレスエントリーシステム等、必要最小限の電子機器や電装品のみに通電することによって、電力消費量を抑制する。
【0058】
さらに、「不要なスイッチング素子への通電を中止して電流の低減を図る」、「センサによるセンシングのように反復動作が必要なシステムにおいて、動作の時間間隔を広げる」等によって、電力消費の抑制が行われる。
【0059】
そして、イグニッションスイッチがONになったときに、スタンバイモードが解除される。
【0060】
[電力消費促進状態の説明]
次に、本実施例における電力消費促進状態について説明する。
【0061】
負荷駆動部22に故障が発生して過電流が流れたときには、その状態のままで放置しておくと、負荷駆動部22が破壊されて、発熱や発煙を引き起こす可能性がある。
【0062】
そこで、本実施例においては、負荷駆動部22に過電流が流れたときには、車両に搭載された電子機器や電装品を所定の条件で駆動させて電力消費を促進させ、早期にバッテリ10を空の状態とする。この状態が、前記した電力消費促進状態である。このような電力消費促進状態を作り出すことによって、早期にバッテリ10を上がった状態(電圧が0の状態)として電流を止めて、故障による被害を最小限に食い止めることができる。
【0063】
電力消費促進状態は、具体的には、過電流が検出されたときのバッテリ残量に応じて、車両に搭載されている電子機器や電装品のうち、適切な電子機器や電装品を選択して、選択された電子機器や電装品を駆動する(通電する)ことによって実現する。
【0064】
次に、電力消費促進状態の実現方法の一例について、
図2を用いて説明する。
図2は、リアワイパ,ルームランプ,ステップランプ,ラゲッジランプ,エアコンインジケータを備えた車両において、電力消費促進状態を実現する方法の一例を示している。
【0065】
図2に示すように、そのときのバッテリ残量に応じて、駆動する(通電する)電子機器や電装品が、予め設定されている。なお、車載されている電子機器や電装品の種類、また消費電流は車両によって異なるため、
図2に示した内容は、車両に応じて異なったものとなる。
【0066】
図2に示すように、バッテリ残量が多いときは、例えば、消費電流の多いリアワイパを駆動させて、さらに、ルームランプを点灯させる。このような状態にすることによって、電力消費を促進させる。
【0067】
バッテリ残量が中程度のときは、例えば、ルームランプと、ステップランプと、ラゲッジランプを点灯させる。
【0068】
そして、バッテリ残量が少ないときは、例えば、ラゲッジランプと、エアコンインジケータを点灯させる。
【0069】
このように、バッテリ残量に応じた負荷を駆動することによって、バッテリ残量に応じた電力消費促進状態を実現して、電力消費を効率よく促進させることができる。なお、大電流を流す構成を採った方がバッテリ10に残った電力を短時間で消費できるため望ましいが、電力消費の大きい電装品を駆動すると、例えば、無人の車両で前照灯が点灯する等の不審な動きをするため、保安上の観点から、できるだけ車外から目立つ派手な動きを避けた電力消費を行うように、電子機器や電装品を選択して駆動させるのが望ましい。
【0070】
なお、
図2に記載した情報(車載機器毎の消費電流)は、予め消費電力量記憶部38に記憶されており、後述する作用説明に記載するように、必要に応じて読み出されて利用される。
【0071】
[告知方法の説明]
前記した電力消費促進状態に移行すると、バッテリ10が上がった状態となるため、エンジンを始動することができなくなる。したがって、ユーザに対して、電力消費促進状態に移行したためにバッテリ10が上がっていることを告知するのが望ましい。
【0072】
しかし、バッテリ10が上がっているため、一般的な警告のように、インジケータや音声アナウンスを用いた告知を行うことができない。
【0073】
そのため、本実施例では、電力消費促進状態に移行すると同時に、バッテリ10の残量が残っているうちに、所定の電子機器や電装品の状態を、ユーザが目視確認してすぐに気付くように、通常の状態とは異なる別の状態へと変更する。
【0074】
図3は、この告知の一例を示すものである。例えば、パワーシートが搭載された車両であれば、バッテリ10の残量が残っているうちに、運転席の背もたれが最も倒れた状態として、その状態で停止させておく。
【0075】
また、例えば、ワイパアームを、格納位置から払拭範囲の他方の端まで移動して、その位置で停止させておく。
【0076】
さらに、例えば、ドアミラーを、左右いずれか一方を格納状態として他方を開状態としておく。
【0077】
このように、車両に搭載された少なくとも一つの電子機器や電装品に対して、ユーザが容易に気づくような状態の変化を起こさせることによって、電力消費促進状態に移行したことを示す告知とすることができる。
【0078】
なお、どの電装品をどのような状態にするかは、予め設定しておき、電力消費促進部36に記憶しておく。そして、そのときのバッテリ10の残量に応じて、その残量で駆動することができる適切な電装品が選択されて、所定の状態の変化を起こさせる。或いは、どの電装品をどのような状態にするかを、予め一つ決定しておき、電力消費促進状態に移行した場合には常に、その内容を実行してもよい。その場合、予め決定しておく内容(どの電装品をどのような状態にするか)は、バッテリ10の残量が少ない場合でも、確実に駆動してユーザに告知できるよう、消費電力が小さいものを選択しておくのが望ましい。
【0079】
再び車両に乗車したユーザは、この状態変化に気づいて、電力消費促進状態に移行したことを認識してディーラーに連絡する。そして、故障箇所の点検修理が実施される。
【0080】
なお、車両に、外部との通信が可能なテレマティックスシステムが搭載されているときには、電力消費促進状態に移行したときに、自動的にディーラーやユーザに通信を行って、電力消費促進状態に移行したためバッテリ10が空になることを告知してもよい。
【0081】
[実施例1の処理の流れの説明]
次に、実施例1の具体的な処理の流れについて、
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0082】
(ステップS10)イグニッションスイッチ12がOFFになっているか否かを確認する。イグニッションスイッチ12がOFFになっているときはステップS12に進み、OFFになっていないときは、ステップS10を繰り返す。
【0083】
(ステップS12)過電流検出部24で、負荷駆動部22に過電流が流れているか否かを検出する。過電流が流れていることが検出されたらステップS14に進み、過電流が検出されないときは、ステップS26に進む。
【0084】
(ステップS14)バッテリ残量検出部(電力残量取得部)26で、バッテリ10(電源)の残量を検出する。
【0085】
(ステップS16)電力消費促進部36において、バッテリ残量に応じて、電力消費促進状態において駆動,通電する電子機器や電装品を選択する。
【0086】
(ステップS18)電力消費促進モードに移行する。
【0087】
(ステップS20)電力消費促進モードに移行したことを履歴保持部40に記憶する。
【0088】
(ステップS22)告知指示部42(電力消費促進動作告知部)において、電力消費促進モードに移行したことを告知する方法を選択して、所定の電子機器や電装品に、予め決められた状態となるように指示を出す。
【0089】
(ステップS24)バッテリ残量検出部26(電力残量取得部)において、バッテリ10の残量が0になったか否かを判断する。バッテリ10の残量が0になったら、
図4の処理を終了する。バッテリ10の残量が0でないときは、ステップS24を繰り返す。
【0090】
(ステップS26)電力消費抑制部34において、電力消費抑制モードへの移行条件が満足されているか否かを判断する。移行条件が満足されているときはステップS28に進み。移行条件が満足されていないときはステップS26を繰り返す。
【0091】
(ステップS28)電力消費抑制モードに移行する。
【0092】
(ステップS30)過電流検出部24で、負荷駆動部22に過電流が流れているか否かを検出する。過電流が流れていることが検出されたらステップS14に進み、過電流が検出されないときは、ステップS32に進む。
【0093】
(ステップS32)イグニッションスイッチ12がONになっているか否かを確認する。イグニッションスイッチ12がONになっているときは
図4の処理を終了する。ONになっていないときは、ステップS30に戻る。
【0094】
以上、説明したように、実施例1に係る車載電子機器50の電力消費制御装置5によれば、過電流検出部24が、負荷駆動部22に過電流が流れたことを検出したときに、電力消費促進部36が、車載電子機器50によるバッテリ10(電源)の電力消費を促進させて、負荷駆動部22への電源の供給を停止させるため、負荷駆動部22に過電流が流れる故障が発生したとき、バッテリ10(電源)の消費を促進させることによって、BCM20(車載電子機器制御部)の故障による被害の拡大を防止することができる。
【0095】
また、実施例1に係る車載電子機器50の電力消費制御装置5によれば、車両状態判断部32が、車両が所定の状態にあると判断したときであっても、過電流検出部24が、負荷駆動部22に過電流が流れたことを検出したときには、電力消費抑制部34が、車載電子機器50の駆動を最小限に抑えて電力消費を抑制する動作を行わせないため、より確実に電力消費を促進することができる。
【0096】
また、実施例1に係る車載電子機器50の電力消費制御装置5によれば、バッテリ残量検出部26(電力残量取得部)がバッテリ10(電源)の残量を取得して、取得されたバッテリ10(電源)の残量に応じて、電力消費促進部36が、電力消費の促進度合を変更するため、電力残量に応じて、外部から車両を見たときに不審な動きをさせることなく、或いは、不審な動きを最小限に留めつつ、より効率的に電力消費を促進させることができる。
【0097】
また、実施例1に係る車載電子機器の電力消費制御装置5によれば、電力消費促進部36が、バッテリ10(電源)の残量に応じて予め決められた所定の車載電子機器50を動作させるため、簡単な手続きで、バッテリ10(電源)の残量に応じた電力消費促進状態を実現することができる。
【0098】
また、実施例1に係る車載電子機器50の電力消費制御装置5によれば、電力消費促進部36が、バッテリ10(電源)の残量がなくなるまで放電を行うため、エンジンの再始動を抑止することによって車両を走行できない状態として、故障したBCM20(車載電子機器制御部)による更なる被害の拡大を防止すことができる。
【0099】
また、実施例1に係る車載電子機器50の電力消費制御装置5によれば、告知指示部42(電力消費促進動作告知部)が、電力消費が促進されてバッテリ10(電源)の残量がなくなったことをユーザに確実に告知するため、ユーザは、バッテリ10(電源)の残量がなくなったことを容易に理解することができ、ディーラーへの連絡を的確に行うことができる。
【0100】
また、実施例1に係る車載電子機器50の電力消費制御装置5によれば、電力消費促進部36が動作して電力消費が促進されたときには、告知指示部42(電力消費促進動作告知部)が、所定の車載電子機器50に対して、予め決められた動作を行わせるため、電力消費が促進されてバッテリ10(電源)の残量がなくなったことを、ユーザにより一層確実に告知することができる。
【0101】
また、実施例1に係る車載電子機器50の電力消費制御方法によれば、負荷駆動部22に過電流が流れる故障が発生したとき、バッテリ10(電源)の消費を促進させることによって、故障による被害の拡大を防止することができる。
【0102】
また、実施例1に係る車載電子機器50の電力消費制御方法によれば、負荷駆動部22に過電流が流れたときには、車載電子機器50の駆動を最小限に抑えて電力消費を抑制する動作を行わせないため、より確実に電力消費を促進することができる。
【0103】
また、実施例1に係る車載電子機器50の電力消費制御方法によれば、電力残量に応じて、外部から車両を見たときに不審な動きをさせることなく、或いは、不審な動きを最小限に留めつつ、短時間でより確実に電力消費を促進することができる。
【0104】
また、実施例1に係る車載電子機器50の電力消費制御方法によれば、車両に搭載された所定の電子機器や電装品に通電するという簡単な手続きで、電源の残量に応じた電力消費促進状態を実現することができる。
【0105】
また、実施例1に係る車載電子機器50の電力消費制御方法によれば、電力消費促進部36が、バッテリ10(電源)の残量がなくなるまで放電を行うため、エンジンの再始動を抑止することによって車両を走行できない状態として、故障したBCM20(車載電子機器制御部)による更なる被害の拡大を防止することができる。
【0106】
また、実施例1に係る車載電子機器50の電力消費制御方法によれば、電力消費が促進されて電源の残量がなくなったことをユーザに告知することができる。そのため、告知されたユーザは、ディーラーへの連絡を迅速に行うことができる。
【0107】
また、実施例1に係る車載電子機器50の電力消費制御方法によれば、電力消費が促進されたときに、所定の車載電子機器50が予め決められた動作を行うため、電力消費が促進されてバッテリ10(電源)の残量がなくなったことを、ユーザにより一層確実に告知することができる。
【0108】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。