【実施例1】
【0016】
図1〜
図11を用いて第1実施例を説明する。
図1は、マルチホップネットワークのシステム全体を示す説明図である。マルチホップネットワークシステム1は、マルチホップネットワーク10と、集約サーバ20とを含んで構成される。
【0017】
マルチホップネットワーク10は、例えば少なくとも一つのゲートウェイ30と、複数の無線局40(WA〜WL)とを備える。通信経路P1は、ゲートウェイ30と集約サーバ20との間の通信経路を示す。他の通信経路P10〜P21は、無線局40間の通信経路を示す。
【0018】
集約サーバ20は、ゲートウェイ30を介して各無線局40からデータを収集するコンピュータである。集約サーバ20は、各無線局40のソフトウェア更新も管理する。ゲートウェイ30は、各無線局40との通信を管理する。集約サーバ20は、複数のゲートウェイ30に接続することができる。
【0019】
集約サーバ20とゲートウェイ30とは、「管理装置」の一例である。例えば、集約サーバ20を「マルチホップネットワークシステムの最上位に位置する第1管理装置」と呼び、ゲートウェイ30を「第1管理装置の直下に接続された第2管理装置」と呼ぶこともできる。
【0020】
無線局40は、「無線通信装置」の一例である。無線局40は、例えば、通信機能を有するセンサ装置のように構成される。センサ装置としては、例えば、電力計、温度計、照度計、日照計、風速計、水量計などがある。
【0021】
図2は、集約サーバ20の構成例を示すブロック図である。集約サーバ20は、例えば、メモリ200と、マイクロプロセッサ(図中CPUと略記)210と、通信部220を備えるコンピュータとして構成される。通信部220は、ゲートウェイ30と通信するための装置である。
【0022】
メモリ200には、ソフトウェアの更新を指示するための機能201を実現するためのコンピュータプログラムおよび必要な管理データが格納されている。マイクロプロセッサ210がそのコンピュータプログラムを実行することで、ゲートウェイ30に対して各無線局40のソフトウェアを更新するよう指示することができる。そのソフトウェア更新指示には、後述する他の実施例で説明するように、欠落ブロックの中継の可否を制御するための情報を含めることができる。さらに、ソフトウェア更新指示には、欠落ブロックの中継を許可する場合のホップ数を含めることもできる。中継を許可された欠落ブロックは、許可されたホップ数だけ転送される。
【0023】
図3は、ゲートウェイ30の構成例を示すブロック図である。ゲートウェイ30は、例えば、メモリ300と、マイクロプロセッサ310と、通信部320を備えるコンピュータとして構成される。メモリ300には、各機能301〜306を実現するためのコンピュータプログラムおよび必要な管理データが格納されている。通信部320は、集約サーバ20および各無線局40と通信するための機能である。
【0024】
ソフトウェアブロック分割機能301は、「ブロック生成部」の一例であり、集約サーバ20からのソフトウェア更新指示を受けて、所定のソフトウェアを所定サイズのブロックに分割する機能である。所定のソフトウェアは、例えば、無線局40の機能を改善または拡張するためのコンピュータプログラムである。
【0025】
ブロック送信機能302は、分割したブロックをブロードキャスト通信でマルチホップネットワーク内の全ての無線局40へ送信する機能である。欠落ブロック問合せ機能303は、各無線局40おいて未受信のブロック(欠落ブロック)が発生していないか問い合わせる機能である。
【0026】
欠落ブロック集約機能304は、
図4で後述する欠落ブロック通知機能403による通知で判明した欠落ブロックの番号を集約する機能である。ブロック再送機能305は、集約したブロック番号を有する欠落ブロックを無線局40に再送信する機能である。つまり、欠落ブロックはまとめられて、再送信対象の無線局40に送られる。送信タイミング制御機能306は、ブロードキャスト通信によりブロックを同時に送信する場合の衝突を回避するために、各無線局での送信タイミングを調整する機能である。
【0027】
図4は、無線局40の構成例を示すブロック図である。無線局40は、例えば、メモリ400、マイクロプロセッサ410、通信部420を備えるコンピュータ端末として構成される。メモリ400には、各機能401〜406を実現するためのコンピュータプログラムおよび必要な管理データが格納されている。通信部420は、ゲートウェイ30と通信するための機能である。
【0028】
ブロック中継機能401は、親局である上位装置(ゲートウェイ30または無線局40)から受信したブロックを、1ホップ下に位置する直下の子局である無線局40に転送する機能である。欠落ブロック問合せ機能402は、ゲートウェイ30の欠落ブロック問合せ機能303と同様に、1ホップ下に位置する直下の無線局40に対して、欠落ブロックの有無を問い合わせる機能である。
【0029】
欠落ブロック通知機能403は、親局(ゲートウェイ30または無線局40)からの欠落ブロックの問合せに対して、欠落ブロックを特定するためのブロック番号とその欠落ブロックを受信していない無線局を特定するための識別子(ネットワークアドレスなど)を返信する機能である。親局からの問合せに応じて受動的に欠落ブロックの番号などを通知してもよいし、子局からの欠落ブロック番号などの受信を契機に、能動的に欠落ブロックの番号などを親局に通知してもよい。
【0030】
欠落ブロック集約機能404は、ゲートウェイ30の欠落ブロック集約機能304と同様に、欠落ブロックの番号を集約する機能である。ブロック再送機能405は、欠落ブロックを無線局40に向けて再送信する機能である。送信タイミング制御機能406は、ブロックの送信時期が重ならないように調整する機能である。子局検知機能407は、1ホップ下の無線局を検出する機能である。欠落ブロック確認機能408は、自装置40が受領していないブロック(欠落ブロック)が存在しないか確認する機能である。
【0031】
ゲートウェイ30のブロック送信機能302と無線局40のブロック中継機能401とは、「ブロック送信部」の一例を構成することができる。ゲートウェイ30の欠落ブロック問合せ機能303および欠落ブロック集約機能304と、無線局40の欠落ブロック問合せ機能402と欠落ブロック通知機能403と欠落ブロック集約機能404と欠落ブロック確認機能408とは、「欠落ブロック検出部」の一例を構成することができる。ゲートウェイ30のブロック再送機能305と無線局40のブロック再送機能405とは、「再送信部」の一例を構成する。
【0032】
図5および
図6のフローチャートを参照して、各無線局40のソフトウェアを更新する手法を説明する。なお、説明の便宜上、フローチャートに示すネットワーク構成と
図1などで示すネットワーク構成とは一致しない。
図5および
図6に示すフローチャートでは、ゲートウェイ30の1ホップ下に2つの無線局40(WA)、40(WB)が接続されており、それらのうちの無線局40(WA)にはさらに別の無線局40(WC)が接続されているものとする。
【0033】
集約サーバ20は、ゲートウェイ30のメモリ300へ更新対象のソフトウェアを格納した後、ゲートウェイ30に対して各無線局40のソフトウェアを更新するよう指示する(S10)。
【0034】
集約サーバ20からソフトウェア更新指示を受けたゲートウェイ30は、メモリ300へ格納されたソフトウェアを所定サイズのブロックに分割し、分割した各ブロックに通し番号を付与する(S11)。ゲートウェイ30は、1ホップ下位の無線局である、無線局40(WA)と無線局40(WB)へ1ブロックずつブロードキャスト通信にて送信する(S12、S16)。以下の説明では、1ホップ下に位置する無線局40を子局と呼ぶことがある。逆に、1ホップ上に位置する無線局40またはゲートウェイ30を親局と呼ぶことがある。
【0035】
無線局40(WA)は、ゲートウェイ30からブロックを受信すると、そのブロックをメモリ400内の記憶領域へ格納する(S13)。無線局40(WA)は、子局40(WC)を有する。そこで、無線局40(WC)の親局である無線局40(WA)は、子局である無線局40(WC)へブロックを中継する(S14)。中継するとは、自装置が受信したデータを他の装置に転送することを意味する。子局40(WC)は、親局40(WA)からのブロックを受信すると、メモリ400内の記憶領域に格納する(S15)。
【0036】
ゲートウェイ30からブロックを受信した無線局40(WB)も、そのブロックをメモリ400内の記憶領域に格納する(S17)。無線局40(WB)は、子局を持たないため、中継はしない。
【0037】
以上の処理をマルチホップネットワークシステムの末端に位置する無線局40まで順次繰り返すことで、最初のブロックが各無線局40に受信され保持される。つまり、各無線局40がブロードキャスト通信を用いてブロックを中継することで、比較的短時間で末端の無線局40までブロックを配信することができる。
【0038】
2番目のブロックについても同様である。ゲートウェイ30は、一方の子局である無線局40(WA)に2番目のブロックを送信して記憶させると共に(S18、S19)、他方の子局である無線局40(WB)にも2番目のブロックを送信して記憶させる(S22、S23)。一方の子局である無線局40(WA)は、さらに子局40(WC)を有するため、ゲートウェイ30から受信したブロックを子局40(WC)に転送し、記憶させる(S20、S21)。以上の処理をマルチホップネットワークシステムの末端に位置する無線局40まで順次繰り返すことで、2番目のブロックが各無線局40に受信され保持される。
【0039】
3番目のブロックについても同様に、ゲートウェイ30から各子局40(WA)、40(WB)にブロックが送信され(S24、S28)、各子局40(WA)、40(WB)はそれぞれのメモリ400内に3番目のブロックを格納する(S25、S29)。無線局40(WA)は、1ホップ下に位置する無線局40(WC)に、ゲートウェイ30から受信した3番目のブロックを中継する(S26、S27)。以上の処理をマルチホップネットワークシステムの末端に位置する無線局40まで順次繰り返すことで、3番目のブロックが各無線局40に受信され保持される。
【0040】
ソフトウェアを分割して生成された各ブロックのうち最終ブロック#nも、上記同様である。ゲートウェイ30から各子局40(WA)、40(WB)に最終ブロックが送信され(S30、S34)、各子局40(WA)、40(WB)はそれぞれのメモリ400内に最終ブロックを格納する(S31、S35)。無線局40(WA)は、子局である無線局40(WC)に、最終ブロックを中継する(S32、S33)。
【0041】
以上の処理をマルチホップネットワークシステムの末端に位置する無線局40まで順次繰り返すことで、最終ブロックが各無線局40に受信され保持される。各無線局40が最終ブロックを受信して記憶すると、更新対象ソフトウェアの受信が完了する(S36、S37、S38)。図示は省略するが、ソフトウェアを受信した後、適当なタイミングで、各無線局40はソフトウェアを更新する。
【0042】
このように本実施例では、更新対象のソフトウェアを複数ブロックに分割し、各ブロックをブロードキャスト通信を用いてマルチホップネットワークシステム内の各無線局40に送信する。ブロードキャスト通信を用いるため、ユニキャスト通信を用いる場合に比べて、ネットワークトラフィックの上昇を抑制しつつ、かつ短時間で全ての無線局40のソフトウェア更新が可能となる。ブロードキャスト通信は、ACKの返信が不要であり、1回の送信でN台の子局へデータを送信できるためである。
【0043】
図6は、ブロードキャスト通信を用いた場合においてブロックが途中で消失する様子を示すフローチャートである。上述のようにブロードキャスト通信を用いれば、効率的に多数の無線局40にブロックを送信できる。
【0044】
しかし、無線局の設置数が増えたり、最大ホップ数が増加したりすると、ホップ間でブロックを中継する際に、ブロック送信の衝突が発生するため、データ(ブロック)を消失する可能性が高まる(S19A、S27A)。
図6に示す例では、無線局40(WA)は第2ブロックの受信に失敗し(S19A)、無線局40(WC)は第3ブロックの受信に失敗している。
【0045】
したがって、無線局40(WA)では、2番目のブロックが欠落ブロックとなる。無線局40(WC)は無線局40(WA)の子局であるため、親局である無線局40(WA)の欠落ブロックでもある2番目のブロックと、3番目のブロックとが、無線局40(WC)にとっての欠落ブロックである。
【0046】
もしも、
図7で後述のように、欠落ブロックをユニキャスト通信で個別に各無線局に再送信する場合、再送信すべき無線局の数が多くなるほど、再送信完了までに要する時間が長くなり、ソフトウェアの更新完了まで長時間を要する。さらに、ユニキャスト通信では、データを受信した無線局が受領通知(ACK)を返す必要があるため、ネットワークトラフィックが増大しやすい。
【0047】
そこで、本実施例では後述の方法で欠落ブロックを無線局40に再送信することにより、ブロック再送信時のネットワークトラフィックの上昇を抑え、さらにソフトウェア更新完了までにかかる時間を短縮する。なお、以下の説明では、欠落ブロックの再送信を、ブロック再送信と表現する場合がある。
【0048】
図7〜
図9を用いて、再送処理の方法をケースを分けて説明する。
図7は、末端に位置する一つの無線局40(WL)で欠落ブロックが生じたため、ユニキャスト通信でブロック(欠落ブロック)を再送信する様子を示す。
【0049】
ユニキャスト通信では、データの送信後に、そのデータが到達したことを確認するためのACKを返信する必要がある。
図7に示す例では、ゲートウェイ30から再送信対象の無線局40(WL)までの間に5ホップの転送が必要になる。ブロックは、ゲートウェイ30から、通信経路P10、P12、P15、P18、P21を経て、目的の無線局40(WL)に到達する。この場合、ブロックの再送信のために10個のパケットが必要となる(ブロックの再送信に必要なパケット数=(再送信元装置30から再送信先の無線局40(WL)までのホップ数)*(データ数(=再送信対象ブロック+ACK)))。なお、再送信対象の無線局を再送信先の無線局と呼ぶ場合がある。
【0050】
上記の再送信方法では、ブロックを上位ホップから下位ホップへ順次中継して送信している。ここでもしも、再送信対象の無線局40(WL)の1ホップ上位に位置する無線局40(WI)が、再送信対象のブロック(無線局40(WL)が受信していないブロック)を受信して保持している場合を考える。無線局40(WI)は、再送信対象の無線局40(WL)の1ホップ上に位置する親局であり、再送信対象の無線局40(WL)は子局である。
【0051】
親局40(WI)から子局40(WL)に再送信対象のブロックを送信すれば、そのブロックが再送信対象の無線局40(WL)に受信されるまでのパケット数を「10」から「2」に低下させることができる。再送信元である親局40(WI)から再送信先である子局40(WL)までのホップ数は「1」であり、データ数は「2」であるから、ブロックの再送信に必要なパケット数は「2」となる。
【0052】
このように、再送信対象の無線局の上位に位置する無線局のうち、欠落ブロックを全て保持している無線局を再送信元の無線局として選択すれば、ブロックの再送信に関するホップ数をほぼ一定に保つことができる。したがって、マルチホップネットワークシステム全体の最大ホップ数がたとえ増加した場合であっても、そのホップ数増大による影響を受けずに、比較的短時間で各無線局40に各ブロックを配信することができる。
【0053】
なお、親局が再送信元になるためには、その親局が、再送信先である子局の必要とする全ての欠落ブロックを保持している必要がある。再送信先で必要とされている欠落ブロックを親局が保持していない場合、親局は、上位の無線局から欠落ブロックを取得して保持する。再送信処理は、上位の無線局から1ホップずつ順次繰り返して実施する。これにより、マルチホップネットワークシステムの上位に位置する各無線局から順番に、全てのブロックを保持する。
【0054】
図8は、無線局40(WI)と無線局40(WL)とが、同一のブロックを1個受信していない場合のブロック再送信を示す。
図8において、再送信対象の無線局40(WI)、40(WL)の上位に位置する無線局40(WF)、40(WC)、40(WA)、ゲートウェイ30のうち、再送信対象のブロックを保持する直近の装置40(WF)が、再送信元の装置となる。
【0055】
なお、もしも、
図8において右側に示す無線局40(WE)でもブロックが欠落している場合、再送信元の装置は親局である無線局40(WB)である。この場合、それぞれ異なる複数の再送信元から異なる欠落ブロックが子局に向けて送信される。
【0056】
再送信元の無線局40(WF)は、通信経路P18を用いて、子局である無線局40(WI)に再送信対象ブロック(欠落ブロック)を送信する。この送信は、ユニキャスト通信で行われる。無線局40(WI)は、親局40(WF)から受信したブロックをメモリ400に格納する。
【0057】
無線局40(WI)は全てのブロックを保持したので、その直下に位置する再送信対象の無線局40(WL)に対する再送信元装置としての資格を備える。そこで、新たに再送信元となった無線局40(WI)は、ユニキャスト通信により、子局である無線局40(WL)へ欠落ブロックを送信する。
【0058】
もしも或る親局の有する複数の子局のそれぞれでブロックが欠落している場合、親局は、ユニキャスト通信に代えてブロードキャスト通信を使用し、欠落ブロックを各子局に略同時に送信する。
【0059】
親局からブロードキャスト通信でブロックを受信した各子局は、そのブロック内に格納されている中継制御情報に基づいて、さらに下位の無線局へそのブロックを中継することもできる。後述する他の実施例で明らかになるように、中継制御情報には、中継が許可された場合のホップ数を含むことができる。中継制御情報は、例えば、集約サーバ20がゲートウェイ30にソフトウェア更新指示を出すときに、設定することができる。
【0060】
マルチホップネットワーク全体から見て欠落ブロック数が多い場合、再送信対象の無線局に最も近い無線局を再送信元の無線局として、ブロードキャスト通信で欠落ブロックを送信することで、ソフトウェアの更新を短時間で完了することができる。
【0061】
これに対し、欠落したブロック数が少ない場合、親局から子局に順番に欠落ブロックをブロードキャスト通信で送信すると、全てのブロックを保持している無線局にもブロックが転送されてしまい、無駄な通信が増えるため、ネットワークトラフィックが上昇する。したがって、例えば、無線局の数、最大ホップ数などの状況に合わせて、中継の可否およびホップ数を設定できるようにしている。
【0062】
図9は、無線局40(WG)、40(WH)、40(WJ)、40(WK)でそれぞれ同一の欠落ブロックが1つある場合の、ブロック再送信の様子を示す。
【0063】
無線局40(WG)、40(WH)は、受信していないブロックの番号を特定して、親局である無線局40(WC)に通知する。この通知は、欠落ブロック通知機能403により実行される。
【0064】
親局である無線局40(WC)は、子局である無線局40(WG)、40(WH)から欠落ブロック通知を受信すると、通知されたブロックをブロードキャスト通信を用いて各無線局40(WG)、40(WH)へ送信する。
【0065】
無線局40(WG)は、ブロードキャスト通信を用いて、さらに下位の無線局40(WJ)、40(WK)へ欠落ブロックをそれぞれ中継する。これにより、再送対象の無線局40(WG)、40(WH)、40(WJ)、40(WK)で全てのブロックが保持され、ソフトウェアの更新処理が実施される。
【0066】
ところで、上述の再送信処理では、親局から子局にブロードキャスト通信でブロックを再送信し、かつ、各無線局はさらに下位の無線局にもブロックを中継する。したがって、無線局40(WC)からブロードキャストされたブロックは、欠落ブロックの生じていない無線局40(WF)、40(WI)、40(WL)にも送信されてしまい、無駄なデータ送信が生じる。
【0067】
このため例えば、無駄な再送信が行われる無線局の数を算出し、その数に応じて、ユニキャスト通信を用いるか、ブロードキャスト通信を用いるかを決定してもよい。または、ブロードキャスト通信に代えて、特定範囲内の複数の無線局に対してブロックを送信するマルチキャスト通信を用いる構成としてもよい。例えば、
図9の例では、無線局40(WC)は、無線局40(WG)、40(WH)に対してのみブロックを再送信し、他の無線局40(WF)にはブロックを再送信しないように構成することもできる。
【0068】
図10および
図11を用いて、無線局で生じた欠落ブロックを上位の装置に通知する処理について説明する。
図10および
図11において、ゲートウェイ30から1ホップ目に存在する無線局には数字(1)を添える。ゲートウェイ30から2ホップ目に位置する無線局には数字(2)を添える。
図10、
図11において、無線局40(WA)、40(WB)は、ゲートウェイ30の1ホップ下に存在し、無線局40(WC)は無線局40(WA)の1ホップ下、ゲートウェイ30から見て2ホップ下に位置する。さらに、無線局40(WC)は、無線局40(WA)の子局に該当する。
【0069】
無線局40の記憶領域に格納したブロックに欠落がある場合は、少なくとも以下に示す第1の通知方法または第2の通知方法のいずれかを用いて、親局へ欠落ブロックを通知することができる。
【0070】
図10は、第1の通知方法を示すフローチャートである。第1の通知方法では、親局が子局に対して、欠落ブロックの有無を問い合わせる。
【0071】
図10に示すように、ゲートウェイ30は、最終ブロックの送信が終了すると(S40)、任意のタイミングで、子局40(WA)、40(WB)に対して欠落ブロックの有無を問い合わせる(S41、S44)。ゲートウェイ30が欠落ブロックを確認するタイミングは、最終ブロックの送信完了時である。各無線局がそれぞれの子局に対して欠落ブロックを確認するタイミングは、全てのブロックを受信した場合とする。
【0072】
ゲートウェイ30からの問合せを受けた各子局40(WA)、40(WB)は、受信済みのブロック番号を調べて、欠落ブロックが有るかを確認する(S42、S45)。欠落ブロックの見つかった子局40(WA)は、欠落ブロックの番号(
図9では第2番目のブロック)を問合せ元であるゲートウェイ30に通知する(S43)。他方の子局40(WB)は、全てのブロックを受信しているため、欠落ブロックが存在しない。従って、子局40(WB)は、問合せ元であるゲートウェイ30に返信しない。
【0073】
ゲートウェイ30は、子局40(WA)から欠落ブロックの番号を通知されると、子局40(WA)に欠落ブロックをユニキャスト通信で送信する(S46)。この例では、再送信対象の子局は1つだけであるため、ユニキャスト通信が使用される。上述の通り、複数の子局でブロックの欠落が生じている場合は、ブロードキャスト通信(またはマルチキャスト通信)が用いられる。
【0074】
子局40(WA)は、欠落ブロックを受信してメモリ400に記憶する(S47)。これにより、子局40(WA)は、ソフトウェアの更新に必要な全てのブロックを受信したことになる(S48)。
【0075】
全てのブロックを保持した無線局40(WA)は、欠落ブロックの再送信元装置となることができる。そこで、無線局40(WA)は親局として、子局である無線局40(WC)に対して欠落ブロックが有るか問い合わせる(S49)。
【0076】
子局40(WC2)は、受信済みのブロックの番号から、欠落しているブロックが存在するか確認する(S50)。この例では、子局40(WC)は、第2ブロックおよび第3ブロックを受信していないものとする。子局40(WC)は、親局40(WA)に対して、第2ブロックおよび第3ブロックを受信していない旨を通知する(S51)。
【0077】
親局40(WA)は、子局40(WC)からの通知を受信すると、欠落ブロックである第2ブロックを子局40(WC)に送信すると共に(S52)、さらに続けて、他の欠落ブロックである第3ブロックを子局40(WC)に送信する(S54)。
【0078】
子局40(WC)は、親局40(WA)から受信した欠落ブロックをメモリ400に格納する(S53、S55)。これにより、子局40(WC)は、ソフトウェアの更新に必要な全てのブロックを受信したことになる(S56)。
【0079】
各無線局40(WA)、40(WB)、40(WC)は、全ブロックを入手した後、適切なタイミングで、ソフトウェアを更新することができる。ソフトウェアの更新準備が完了次第に直ちに更新してもよいし、ソフトウェアの更新準備が完了した後、予め設定される待機時間またはランダムに選択される待機時間だけ待機してから、ソフトウェアを更新してもよい。
【0080】
図11は、第2の通知方法を示すフローチャートである。第2の通知方法では、子局から親局へ欠落ブロックの存在を通知する。各子局は、欠落ブロックが有るか否かを定期的に確認し、欠落ブロックが有る場合は親局に通知する。その通知を受けた親局は、欠落ブロックを集約し、再送信処理を実行する。
【0081】
例えば、無線局40(WA)に欠落ブロックが存在する場合(S60)、無線局40(WA)は、親局であるゲートウェイ30に対して、欠落ブロック(例えば第2ブロック)の番号を通知する(S61)。同様に、無線局40(WB)も受信していないブロックがあることを検出すると(S62)、欠落しているブロック(例えば第2ブロックと第3ブロック)の番号をゲートウェイ30に通知する(S63)。
【0082】
ゲートウェイ30は、子局40(WA)および40(WB)からの通知を受領すると、複数の子局40(WA)、40(WB)でブロックの欠落が発生していることを知る。ゲートウェイ30は、子局40(WA)、40(WB)で欠落しているブロックの番号を集約する。これにより、ゲートウェイ30は、子局40(WA)、40(WB)に関して欠落しているブロックが第2ブロックおよび第3ブロックであることを知る。
【0083】
ゲートウェイ30は、欠落ブロックを子局40(WA)、40(WB)に送信するための通信方法として、ブロードキャスト通信を使用する。複数の子局でブロックの欠落が生じているため、欠落ブロックをユニキャストで個別に送信するよりも、集約した欠落ブロックをブロードキャストで一斉に送信する方が効率が良いためである。
【0084】
ゲートウェイ30は、一方の子局40(WA)に第2ブロックを送信すると共に(S64)、他方の子局40(WB)にも第2ブロックを送信する(S67)。一方の子局40(WA)は、第2ブロックを受信してメモリ400に格納することで(S65)、ソフトウェアの更新に必要な全てのブロックを保持することになる(S66)。他方の子局40(WB)も、ゲートウェイ30から受信した第2ブロックをメモリ400に格納する。しかし、他方の子局40(WB)は、未だ第3ブロックを保持していない。
【0085】
ゲートウェイ30は、他方の子局40(WB)だけが受信していない第3ブロックを、各子局40(WB)、40(WA)に送信する(S69、S71)。一方の子局40(WA)は、ゲートウェイ30から第3ブロックを受信するが、その第3ブロックは一方の子局40(WA)の有するメモリ400に格納済みである。子局40(WA)は、格納済みの第3ブロックを、今回ゲートウェイ30から受信した第3ブロックで上書きしてもよいし、今回受信した第3ブロックを破棄してもよい(S70)。
【0086】
他方の子局40(WB)は、ゲートウェイ30から受信した第3ブロックをメモリ400に格納する(S72)。これにより、子局40(WB)は、ソフトウェアの更新に必要な全てのブロックを保持する(S73)。
【0087】
このように構成される本実施例は、欠落ブロックを受信していない無線局40の上位に位置する装置のうち、欠落ブロックを有する直近の装置(ソフトウェア更新に必要な全てのブロックを保持する直近の装置)を再送信元装置とする。そして、本実施例では、再送信元装置から欠落ブロックを再送信対象の無線局40に再送信する。したがって、本実施例では、比較的大規模なマルチホップネットワークであっても、ブロックを再送信する経路のホップ数を少なくできる。この結果、本実施例では、ネットワークトラフィックを抑制しながら、所定のソフトウェアを各無線局40に短時間で配信でき、運用性、保守管理性が向上する。