特許第6174458号(P6174458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174458
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】輸送業務支援システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/00 20060101AFI20170724BHJP
   B61L 25/02 20060101ALI20170724BHJP
   G06Q 50/30 20120101ALI20170724BHJP
【FI】
   B61L27/00 M
   B61L25/02 Z
   G06Q50/30
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-227585(P2013-227585)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-85876(P2015-85876A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 厳自郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆
(72)【発明者】
【氏名】中村 真純
(72)【発明者】
【氏名】村上 秀人
【審査官】 小山 憲子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−25617(JP,A)
【文献】 特開2000−11115(JP,A)
【文献】 特開平5−183507(JP,A)
【文献】 特開2008−207621(JP,A)
【文献】 特開2011−10279(JP,A)
【文献】 特開2003−48543(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0128563(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0185472(US,A1)
【文献】 特開2013−237409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 27/00
B61L 25/02
G06Q 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固有の通信認証IDを有し、無線方式にて随時情報の送受信が可能に構成された乗務員用端末装置と、
乗務員ごとの輸送業務支援情報を当該乗務員の前記乗務員用端末装置に無線方式にて配信する情報配信サーバ装置と、
列車内に配置され、当該列車に乗務した前記乗務員の前記乗務員用端末装置の固有の通信認証IDを読み取るID読取装置と、
前記列車内において、前記乗務員用端末装置のうち、前記ID読取装置によって読み取られた固有の通信認証IDに対応するものとの間で情報の送受信を行い、当該乗務員用端末装置に配信された前記輸送業務支援情報を受信する通信装置と、
前記通信装置により受信された輸送業務支援情報に基づいて前記列車に関する輸送業務支援を行う制御装置と、
を備えていることを特徴とする輸送業務支援システム。
【請求項2】
前記乗務員用端末装置は、前記情報配信サーバ装置に対して輸送業務支援情報を要求可能であり、
前記乗務員用端末装置から要求があったときは、前記情報配信サーバ装置は、前記乗務員用端末装置から要求された輸送業務支援情報を当該乗務員用端末装置に配信することを特徴とする請求項1に記載の輸送業務支援システム。
【請求項3】
前記輸送業務支援情報は、乗務員が乗務する行路の時刻表データを含んでいることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の輸送業務支援システム。
【請求項4】
前記乗務員用端末装置は、表示部を備えており、
前記表示部には、前記輸送業務支援情報に基づく表示画面が表示されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の輸送業務支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送業務支援システムに関し、特に、通常運行時のみでなく異常時運行時にも対応可能な輸送業務支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
列車を運行するためには、仕業と呼ばれる乗務員の乗務計画(乗務員が乗車する列車の番号や行路等)が作成され、乗務員は、この乗務計画に基づいて指定された路線の列車に乗務する。
従来、この乗務計画は、例えば1日の始めの点呼の際等に各乗務員に渡される。
例えば、特許文献1には、乗務計画等のデータをフロッピーディスク(登録商標)やICカード等の記録媒体に出力して乗務員に渡すことが記載されている。
この場合、乗務員はこの記録媒体を持って列車に乗務し、列車に搭載された支援データ出力装置の運転支援データ入力部に記録媒体を装着する。これにより、乗務計画等のデータが表示出力制御部へ送出されて、運転台に設置された運転士用表示部に運転指示が表示され、客用案内表示部に客用車内案内が表示され、かつ客用車内案内が自動的に放送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−105081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フロッピーディスク(登録商標)やICカード等の記録媒体の容量はあまり多くないため、乗務員が1日のうちに多くの行路に乗務するような場合には、全ての行路に関する情報を1つの記録媒体に格納することができない。
このため、乗務員が複数の記録媒体を受け取って列車に乗務しなければならず、煩雑であるとともに、1人の乗務員に対して複数の記録媒体を用意する必要が生じ、コストがかさんでしまうとの問題がある。
【0005】
また、事故や故障、災害等により、列車の運行に乱れが生じた場合には、乗務員に予め渡されている乗務計画とは異なるダイヤで運行する必要が生じる。この場合、上記のような従来のシステムでは、変更後の乗務計画は、列車無線で乗務員に伝えられたり、休憩場所等にFAXで送られ、乗務員は当該FAXを受け取って、これに基づいて列車に乗務したりしなければならなかった。
しかし、このような場合、乗務員は、電子データとしての乗務計画等のデータを持っていない。このため、乗務計画等のデータと連動して自動的に輸送業務を支援する機構(例えば、速度超過を報知し乗務員に注意を喚起したり、自動でドアの開閉案内や客用車内案内を行ったりする機構)が列車側に備わっている場合でもこれを利用することができず、速度制限やブレーキ制御のタイミング等も全て乗務員の経験による操作にかかるとともに、ドアの開閉案内や客用車内案内等も乗務員の手動に頼らざるを得なかった。
このため、乗務員の負担が過多となり、人為的ミスが生じやすいという問題もあった。
【0006】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、大容量の情報を登録できるとともに、乗務計画に変更が生じたときにも変更後の情報を円滑に乗務員に伝達し輸送業務を支援することが可能となる輸送業務支援システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の輸送業務支援システムは、
固有の通信認証IDを有し、無線方式にて随時情報の送受信が可能に構成された乗務員用端末装置と、
乗務員ごとの輸送業務支援情報を当該乗務員の前記乗務員用端末装置に無線方式にて配信する情報配信サーバ装置と、
列車内に配置され、当該列車に乗務した前記乗務員の前記乗務員用端末装置の固有の通信認証IDを読み取るID読取装置と、
前記列車内において、前記乗務員用端末装置のうち、前記ID読取装置によって読み取られた固有の通信認証IDに対応するものとの間で情報の送受信を行い、当該乗務員用端末装置に配信された前記輸送業務支援情報を受信する通信装置と、
前記通信装置により受信された輸送業務支援情報に基づいて前記列車に関する輸送業務支援を行う制御装置と、
を備えている。
このように構成することで、乗務員ごとの輸送業務支援情報を無線方式で当該乗務員の乗務員用端末装置に配信することができ、配信された情報を、当該乗務員が乗務した列車の輸送業務支援に反映させることができる。
また、固有の通信認証IDに対応する乗務員用端末装置のみが列車の通信装置との間で通信可能となっているため、当該列車に乗務した乗務員の乗務員用端末装置に配信された情報のみを当該列車の輸送業務支援情報として取り込み、輸送業務支援に反映させることができる。
【0008】
また、好ましくは、前記乗務員用端末装置は、前記情報配信サーバ装置に対して輸送業務支援情報を要求可能であり、
前記乗務員用端末装置から要求があったときは、前記情報配信サーバ装置は、前記乗務員用端末装置から要求された輸送業務支援情報を当該乗務員用端末装置に配信する。
このように構成することで、事故や故障、災害等により運行に乱れが生じたときにも、乗務員が、自分の乗務する列車に関する最新の輸送業務支援情報を随時取得することができ、当該情報を輸送業務支援に反映させることができる。
【0009】
また、好ましくは、前記輸送業務支援情報は、乗務員が乗務する行路の時刻表データを含んでいる。
このように構成することで、行路の時刻表データも輸送業務支援情報に含まれる電子データとして取り込むことができ、これを輸送業務支援に反映させることができる。
【0010】
また、好ましくは、前記乗務員用端末装置は、表示部を備えており、
前記表示部には、前記輸送業務支援情報に基づく表示画面が表示される。
このように構成することで、乗務員はどこでも乗務員用端末装置の表示画面において乗務する列車や行路の情報を確認することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乗務員ごとの輸送業務支援情報を当該乗務員の乗務員用端末装置から読み取り、当該乗務員が乗務した列車の輸送業務支援に反映させることができる。
このため、従来のように仕業カードを用いることなく、簡易に輸送業務支援情報に基づく輸送業務支援を行うことができる。これにより、仕業カードに費やされていたコストを削減することができる。また、乗務員用端末装置に送信できるデータの容量は比較的大きいため、従来の仕業カードでは1枚に収まり切らなかったような大容量のデータでも乗務員用端末装置によって一括管理することができる。
また、固有の通信認証IDに対応する乗務員用端末装置のみが列車の通信装置との間で通信可能となっている。このため、無関係な者の端末との間で通信が成立するのを防止することができ、セキュリティー上優れている。また、1台の列車の通信装置の近傍にそれぞれ乗務員用端末装置を持った乗務員が複数いるような状況下でも、当該列車に乗務した乗務員の乗務員用端末装置に配信された情報のみを当該列車の輸送業務支援情報として取り込むことができ、簡易かつ確実に、正しい情報に基づいた輸送業務支援を行うことができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る輸送業務支援システム全体を示す要部ブロック図である。
図2】本実施形態の輸送業務支援システムにより提供される情報に基づいて乗務員用端末装置の表示部に表示される列車ダイヤ画面の一例を示す図である。
図3】本実施形態の輸送業務支援システムにより提供される情報に基づいて乗務員用端末装置の表示部に表示される列車ダイヤ画面の一例を示す図である。
図4】本実施形態の輸送業務支援システムにより提供される情報に基づいて運転台表示装置に表示される輸送支援画面の一例を示す図である。
図5】本実施形態の輸送業務支援システムにより提供される情報に基づいて運転台表示装置に表示される輸送支援画面の一例を示す図である。
図6】本実施形態の輸送業務支援システムにより提供される情報に基づいて運転台表示装置に表示される輸送支援画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
図1から図6を参照しつつ、本発明に係る輸送業務支援システムの一実施形態について説明する。なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0014】
図1は、本実施形態に係る輸送業務支援システム1の全体構成を示す図である。なお、図1において、破線で示す枠内は、列車の車両内であることを示している。
輸送業務支援システム1は、固有の通信認証IDを有する乗務員用端末装置3と、輸送業務支援情報を乗務員用端末装置3に配信する情報配信サーバ装置としての行路情報配信サーバ装置22と、乗務員用端末装置の固有の通信認証IDを読み取るID読取装置としてのカードリーダ61と、乗務員用端末装置3から輸送業務支援情報を受信する通信装置63と、通信装置63により受信された輸送業務支援情報に基づいて列車に関する輸送業務支援を行う制御装置60とを備えている。
乗務員とは業務として列車に乗る者であり、本実施形態では列車の運転士や車掌のいずれかをいう。乗務員は、後述する仕業情報にしたがって列車に乗務し、運転台において列車の運行操作を行う。輸送業務支援システム1は、このような乗務員の輸送業務を支援するものである。
【0015】
図1に示すように、本実施形態において、情報配信サーバ装置である行路情報配信サーバ装置22は、輸送総合システム2を構成する装置である。以下、輸送総合システム2について説明する。
【0016】
輸送総合システム2は、列車計画(列車ダイヤ)、車両運用計画、乗務員運用計画等の輸送計画を作成し、作成された輸送計画のデータ(列車計画に関する列車ダイヤ、車両運用計画に関する車両運用データ、乗務員運用計画に関する乗務員運用データ等)を伝達、管理するものである。
ここで、列車計画とは、列車の運行時刻等に関する計画である。車両運用計画とは、車両運用(車両の割り当て)に関する計画である。また、乗務員運用計画とは、運転士・車掌などの乗務員の運用(乗務の担当)に関する計画である。
輸送総合システム2において作成・管理される輸送計画に基づいて、車両や担当乗務員が手配され、各駅では輸送総合システム2と接続された図示しない装置が列車の進路を制御し、輸送計画に沿って列車が運行される。
【0017】
輸送総合システム2は、例えば線区ごとに設置された複数の区所サーバ装置24と、これら区所サーバ装置24と所定のネットワーク(図示省略)を介して接続され、線区単位の情報が集積される中央サーバ装置21とを備えている。
中央サーバ装置21では、集約された情報に基づいて総合的な輸送計画(すなわち、列車計画、車両運用計画、乗務員運用計画等)が作成され、中央サーバ装置21は、作成した輸送計画のデータを第1の仕業情報データベース(図1及び以下の説明において「第1の仕業情報DB」とする。)211に格納する。なお、第1の仕業情報DB211内の情報は、数日前に計画される輸送計画の情報を中央サーバ装置21で入力される他、事故や故障等の異常時等で、輸送計画の変更時には、中央サーバ装置21又は区所サーバ装置24で、新たな輸送計画のデータを作成し、第1の仕業情報DB211内の情報を修正してもよい。
【0018】
なお、事故や故障等の異常が発生すると、列車が停止したり遅延を生じたりして、列車ダイヤが乱れてしまう。
この場合、輸送総合システム2では、その時々の状況に合わせて列車を途中駅で折返し運転としたり、運休させる等、輸送計画を変更する。また、異常状態が解消されると、できる限り早く平常ダイヤに戻すための変更計画を作成する。
これら輸送計画の変更に関する情報についても中央サーバ装置21に集約され、第1の仕業情報DB211内に格納される。
【0019】
本実施形態において、中央サーバ装置21により作成され第1の仕業情報DB211内に格納された輸送計画のデータは、データ転送サーバ装置23を介して情報配信サーバ装置である行路情報配信サーバ装置22に伝送される。
行路情報配信サーバ装置22は、中央サーバ装置21から、例えば乗務員の区所単位(職場単位)で輸送計画のデータが送られた場合に、この情報を行路ごと、列車番号ごと等に分解し、整理した上で第2の仕業情報データベース(図1及び以下の説明において「第2の仕業情報DB」とする。)221に格納する。
なお、行路情報配信サーバ装置22には、随時最新の情報が送られるようになっており、第2の仕業情報DB221内の情報は、第1の仕業情報DB211と同様に随時最新の情報に更新される。
【0020】
また、輸送総合システム2には、情報入力用端末装置5が接続されている。
情報入力用端末装置5は、行路情報配信サーバ装置22の第2の仕業情報DB221に格納されている輸送計画のデータに基づいて、各乗務員ごとの1日分の仕業情報を入力するものである。
また、事故等の異常によって輸送計画が変更された場合には、情報入力用端末装置5は、変更計画の情報に基づいて各乗務員について変更に対応した仕業情報(すなわち、行路の持ち替え案)を入力する必要が生じることがある。
【0021】
ここで、仕業情報とは、当該乗務員がどの行路のどの列車番号の列車に乗務するのか等の1日分の乗務スケジュール等の情報であり、列車の走行位置に合わせて運転士仕業情報(運転時刻等の様々な情報)を表示装置(車両の運転台表示装置64)に表示させ、列車の安全走行(徐行支援等を含む)並びに通停確認を行うための輸送業務支援情報である。
仕業情報は、具体的には、仕業番号、列車番号、最高速度、速度種別、徐行情報、各駅の着発時刻、着発番線、入出の際の制限速度、始端駅及び終端駅での乗継時刻、各駅間運転時分、注意事項の情報を含んでいる。
仕業番号とは、例えば、休B10**、平B10**(図4図5等参照)といった行路番号である。
列車番号とは、当該行路の中で運転士が乗務する列車の番号である。
最高速度とは、各線区や運転士が乗務する列車における最高速度である。
速度種別とは、例えば、貨物列車等について規定されている加速度や減速度等に関する種別である。
徐行情報とは、どの区間(キロ程)で徐行規制が行われているかを示す情報である。
各駅の着発時刻や着発番線の情報は、運転時刻表に相当する情報(時刻表データ、列車ダイヤ)である。
乗継時刻とは、1つの行路における始端駅及び終端駅での乗務員の乗り継ぎ時間である。
各駅間運転時分とは、各駅間をおよそ何分何十秒で走行するか、運転する際の目安となる時分を示すものである。
注意事項とは、列車ごとや行路ごとに特殊な注意事項がある場合に、区所の管理者等が個別に入力するテキスト文書部分である。
なお、仕業情報(輸送業務支援情報)の内容はここに例示したものに限定されない。仕業情報(輸送業務支援情報)には、これ以外の情報が含まれていてもよいし、ここに例示した情報の一部を含まなくてもよい。
【0022】
情報入力用端末装置5によって入力された仕業情報(輸送業務支援情報)は、行路情報配信サーバ装置22から、インターネット(TCP/IP、HTTP(Hyper Text Link Transformer Protocol)等のプロトコルに基づいて相互リンクされたネットワーク)Nを介して、各乗務員の乗務員用端末装置3に無線方式にて配信される。
すなわち、行路情報配信サーバ装置22は、1日の乗務が始まる前に、各乗務員に対応する仕業情報(輸送業務支援情報)を当該乗務員の乗務員用端末装置3に対して配信する。なお、仕業情報が正しく配信されたか否かを確認するために、配信が完了すると乗務員用端末装置3側から行路情報配信サーバ装置22に対して情報の受信が完了した旨の確認信号が送信されるようにしてもよい。
また、乗務員が乗務員用端末装置3から仕業情報(輸送業務支援情報)の配信が要求された場合には、行路情報配信サーバ装置22は、要求に応じた情報を当該乗務員用端末装置3に配信する。
例えば、列車ダイヤが乱れて、乗務員が当初の予定とは異なる列車に乗務することになった場合に、乗務員が乗務員用端末装置3から当該列車の列車番号を入力してこれに関する仕業情報(輸送業務支援情報)の配信を要求すると、行路情報配信サーバ装置22は、当該列車番号に対応する仕業情報(輸送業務支援情報)を当該乗務員用端末装置3に配信する。この場合にも仕業情報が正しく配信されたか否かを確認するために、配信が完了すると乗務員用端末装置3側から行路情報配信サーバ装置22に対して情報の受信が完了した旨の確認信号が送信されることが好ましい。
【0023】
乗務員用端末装置3(図1では、3台の乗務員用端末装置3a,3b,3cを図示)は、例えばタブレット型の端末装置であり、各乗務員にそれぞれ付与されている。
乗務員用端末装置3は、液晶パネル等で構成された表示部31を備えている。
表示部31は、行路情報配信サーバ装置22から送られた仕業情報(輸送業務支援情報)に基づく画面等を表示させることができる。
例えば、図2及び図3は、表示部31に時刻表データ(列車ダイヤ)に基づく時刻表画面を表示させた場合の表示画面例を示した図である。時刻表画面には、列車の停車駅名、各駅の着発時刻、各駅間の運転時間等の他、行路番号や列車番号等が表示される。
本実施形態では、列車ダイヤの表示のさせ方について図2及び図3に示すような複数の表示パターンの中から乗務員の見やすいものを選択して表示させることができるようになっている。
【0024】
なお、表示部31に表示される内容や、表示のさせ方は図示例には限定されない。例えば、後述する列車車両内の運転台表示装置64に表示される画面(例えば、図4又は図5参照)と同じものが、表示部31にも表示されるようになっていてもよい。
また、本実施形態では、後述するように、列車の現在位置がキロ程によって把握されているため、列車の現在位置に応じて、既に通過した駅については表示画面から順次消していくように表示させてもよい。このように通過済みの駅を画面上から消すことにより、乗務員は、列車の現在位置や次の停車駅がどこであるかを視覚的に容易に確認することができる。
さらに、例えば、図3のような時刻表を表示させる場合に、表示部31の表示画面上には、常時次の停車駅を含む3〜4駅のみを表示させ、駅を通過するごとに、通過済みの駅を表示画面から消すとともに進行方向にある先の駅を順次表示させるように、画面をスクロール表示させてもよい。このように表示させる情報量を絞り込むことで、表示画面上に表示させる文字を大きくすることも可能となり、より見やすくすることができる。
【0025】
また、乗務員用端末装置3は、通信機能を備え、インターネットN等を介して外部装置(例えば、輸送総合システム2の行路情報配信サーバ装置22)との間で、無線方式にて随時情報の送受信が可能に構成されている。乗務員用端末装置3は、行路情報配信サーバ装置22との間で無線方式にて通信を行うことにより、乗務員用端末装置3がどこにあっても(例えば、乗務員の休憩場所や乗務員が乗務している列車内等)、行路情報配信サーバ装置22から仕業情報(輸送業務支援情報)の配信を受けることができる。
なお、前述のように、乗務員用端末装置3は、行路情報配信サーバ装置22から仕業情報(輸送業務支援情報)の配信を受けたときには、受信した旨の確認信号を行路情報配信サーバ装置22に対して送信することが好ましい。
【0026】
本実施形態において、乗務員用端末装置3は、それぞれ固有の通信認証IDを有している。通信認証IDは、例えば、後述する列車車両内の通信装置63と乗務員用端末装置3との間での通信を認証するためのIDである。
乗務員用端末装置3と車両内の通信装置63との間での通信の方式としては、例えばブルートゥース(Bluetooth(登録商標))やワイファイ(WiFi;wireless fidelity(登録商標))、NFC(Near Field Communication;近距離通信)等の各種の無線方式による通信方式が適用可能である。なお、列車車両内の通信装置63と乗務員用端末装置3との間での通信は、ここに例示した方式のものに限定されないが、比較的近距離での安定した通信が可能であり、混信しにくく、また比較的容量の大きなデータであっても短時間で転送が可能な方式が好ましい。
【0027】
なお、乗務員用端末装置3は、通信機能と表示機能を有するものであればよく、その構成等は特に限定されないが、タブレット型の端末装置のように比較的小型軽量で携帯性に優れたものが好ましい。
【0028】
各乗務員用端末装置3(乗務員用端末装置3a,3b,3c・・・)には、それぞれ認証用カード4(図1では、3枚の認証用カード4a,4b,4cを図示)がセットとされており、各認証用カード4a,4b,4c・・・には、それぞれ対応する乗務員用端末装置3(乗務員用端末装置3a,3b,3c・・・)の固有の通信認証ID情報が予め記憶されている。
認証用カード4は、例えば、乗務員用端末装置3を収容するケース内のポケット等に収容され、対応する乗務員用端末装置3と常に一緒に携帯できるようになっていることが好ましい。
認証用カード4には、NFC(Near Field Communication;近距離通信)通信規格に対応したICチップが搭載されており、NFC通信規格に対応した機器(本実施形態ではID読取装置であるカードリーダ61)にかざすことで認証用カード4に記憶されている乗務員用端末装置3の固有の通信認証IDが読み取られ、所定の機器(本実施形態では列車車両内の通信装置63)に送信されるように構成されている。
なお、認証用カード4は、NFC通信規格に対応したものに限定されず、他の通信規格によりID読取装置に通信認証IDを読み取らせるものであってもよい。ただし、複数の認証用カード4が列車車両内に存在した場合に、他の認証用カード4から誤って通信認証IDを読み取らないように、比較的近距離において通信を行うものが好ましい。また、ID読取装置であるカードリーダ61は、認証用カード4を挿入されることで認証用カード4から通信認証IDを読み取るものであってもよい。
【0029】
図1に示すように、列車車両内には、カードリーダ61、アクセスポイント62、通信装置63、運転台表示装置64、客室内表示装置65、音声案内装置66等の他、これら列車内の各機能部を総合的に制御する制御装置60が設けられている。
【0030】
カードリーダ61は、列車内に配置され、当該列車に乗務した乗務員の乗務員用端末装置3の固有の通信認証IDを読み取るID読取装置である。
前述のように、本実施形態では、乗務員用端末装置3の固有の通信認証IDの情報は、NFC通信規格に対応したICチップが搭載された認証用カード4に記憶されている。カードリーダ61は、NFC通信規格に対応しており、認証用カード4をカードリーダ61にかざすと、認証用カード4内の情報(本実施形態では乗務員用端末装置3の固有の通信認証ID情報)がカードリーダ61によって読み取られるようになっている。
カードリーダ61によって読み取られた乗務員用端末装置3の通信認証IDは、制御装置60に送られる。
なお、カードリーダ61は、認証用カード4内の情報を読み取ることができるものであればよく、ここに例示した構成に限定されない。例えば認証用カード4がNFC以外の通信規格に対応している場合には、カードリーダ61も認証用カード4と同じ通信規格に対応したものを適用する。また、カードリーダ61は、認証用カード4を挿入されることで認証用カード4から通信認証IDを読み取るものであってもよい。
【0031】
アクセスポイント62は、列車内に配置された無線通信の中継器である。なお、アクセスポイント62は、列車内に複数設置されていてもよい。
【0032】
通信装置63は、列車内において、乗務員用端末装置3のうち、ID読取装置であるカードリーダ61によって読み取られた固有の通信認証IDに対応するものとの間で情報の送受信を行い、当該乗務員用端末装置3に配信された仕業情報(輸送業務支援情報)を受信する。
本実施形態では、通信装置63は、通信を許可された対象(すなわち、ホワイトリストに登録されたもの)のみと通信を行うことができるように構成され、いわゆる「ホワイトリスト」方式が採用されている。制御装置60は、カードリーダ61から送られた通信認証IDを通信装置63において通信を行うことが許可されるホワイトリストに書き込むようになっている。
通信装置63は随時アクセスポイント62と通信し、ホワイトリストに登録された通信認証IDを有する乗務員用端末装置3へのアクセスがある場合のみ、当該乗務員用端末装置3との間で通信を行う。
例えば、乗務員Aが乗務員用端末装置3aとセットになっている認証用カード4aをカードリーダ61にかざすことにより、乗務員Aの乗務員用端末装置3aの通信認証IDが読み取られ、ホワイトリストに書き込まれると、当該通信認証IDを有する乗務員用端末装置3aが通信装置63との間で通信可能な状態となる。通信装置63によって受信された情報は制御装置60に送られる。
なお、通信装置63と乗務員用端末装置3との間の通信を制限する手法はここに例示したものに限定されない。
【0033】
一旦ホワイトリストに登録された通信認証IDは、登録後、所定時間当該通信認証IDを有する乗務員用端末装置3からのアクセスが確認されなかった場合にホワイトリストから抹消される。この場合の所定時間は適宜設定することが可能であるが、例えば10秒程度である。
また、同じ通信認証IDが再度カードリーダ61から読み取られた場合(すなわち、同じ乗務員が認証用カード4を再度カードリーダ61にかざした場合)にも当該通信認証IDがホワイトリストから抹消される。
例えば、乗務員Aが認証用カード4aをカードリーダ61にかざして乗務員Aの乗務員用端末装置3aの通信認証IDが読み取られ、ホワイトリストに書き込まれた後、再度乗務員Aが認証用カード4aをカードリーダ61にかざして同じ通信認証IDが読み取られると、当該通信認証IDがホワイトリストから抹消されて、乗務員Aの乗務員用端末装置3aは通信装置63との間で通信できない状態となる。
また、ある通信認証IDがカードリーダ61から読み取られた後、さらに別の通信認証IDがカードリーダ61から読み取られた場合には、先に読み取られた通信認証IDがホワイトリストから抹消され、後に読み取られた通信認証IDが新たにホワイトリストに登録されて、当該通信認証IDを有する乗務員用端末装置3が通信装置63と通信可能な状態となる。
例えば、乗務員Aが認証用カード4aをカードリーダ61にかざして乗務員Aの乗務員用端末装置3aの通信認証IDが読み取られ、ホワイトリストに書き込まれた後、別の乗務員Bが認証用カード4bをカードリーダ61にかざして乗務員Bの乗務員用端末装置3bの通信認証IDが読み取られると、当該乗務員用端末装置3aの通信認証IDがホワイトリストから抹消されて、乗務員Aの乗務員用端末装置3aは通信装置63との間で通信できない状態となる。そして、新たに乗務員Bの乗務員用端末装置3bの通信認証IDがホワイトリストに書き込まれて、当該通信認証IDを有する乗務員用端末装置3bが通信装置63と通信可能な状態となる。
【0034】
運転台表示装置64は、乗務員(運転士)の乗務する運転台(図示せず)に設けられた表示装置である。
運転台表示装置64には、乗務員用端末装置3から受信した仕業情報(輸送業務支援情報)に基づく表示信号が、制御装置60から送られるようになっている。運転台表示装置64は、この表示信号に基づいて輸送業務を支援するための各種の情報を表示画面上に表示させる。
【0035】
図4及び図5は、運転台表示装置64に表示される表示画面の一例を示す図である。
図4及び図5に示すように、運転台表示装置64には、例えば、列車番号(例えば、図4では、「列車番号 412T」)、行路番号(例えば、図4では、「行路番号 休B152行路」)、現在時刻(例えば、図4では、「時刻 6時22分35秒」)、現在の列車の走行速度(例えば、図4では、「速度 0km/h」)、キロ程(例えば、図4では、「キロ程 2.2km」)が表示される。
【0036】
キロ程とは、起点となる駅(これを以下「起点駅」という。)を起点としたときの列車の位置を示すものである。
例えば、新橋駅であれば東京駅を起点として1.9kmがキロ程として示される。
キロ程は、列車の車輪の径と回転数とに基づいて、列車走行中も随時計測されており、運転台表示装置64には、随時最新のキロ程が表示されるようになっている。また、制御装置60の図示しない記憶部には、各路線における起点駅から各駅までの距離(キロ程)が記憶されており、列車が駅に到着しドアが開くと、キロ程は記憶部に記憶されている距離に上書きされる。これによりキロ程の誤差が駅到着ごとに補正される。
【0037】
また、運転台表示装置64には、当該行路における駅名、及び各駅の着発時刻と着発番線、列車ダイヤに相当する情報等が表示される。
例えば、図4では、駅名が横方向に一覧表示されており、各駅名の下に各駅の着発時刻と着発番線が表示されている。
なお、列車ダイヤに相当する情報の表示のさせ方は、図4のような表示に限定されず、例えば図5に示すように、駅名が縦方向に一覧表示され、各駅名の横に各駅の着発時刻と着発番線が表示されるようにしてもよい。
図5では、三河島等の途中駅には停車しない特別快速列車が、現在日暮里に停車している状態を示しており、次の停車駅が松戸であることが表示されている。
なお、前述のように、列車の現在位置はキロ程によって把握されているため、制御装置60は、列車の現在位置を取得することができる。これにより、列車の現在位置に応じて、通過済みの駅については表示画面から消し、列車の進行方向にある先の駅を順次表示させていくというように、スクロール表示させる表示制御を行うことが好ましい。
【0038】
また、運転台表示装置64には、徐行規制が行われている箇所(徐行区間)及び当該箇所における制限速度を示している。徐行区間は、例えば起点駅からのキロ程で表示される。
図4及び図5では、キロ程29.550km〜30.000kmの区間では、制限速度が50km/hであり、30.000km〜30.650kmの区間では、制限速度が80km/hであることが示されている。
また、乗務員が乗り継ぐべき次の行路の行路番号と乗継時刻についても運転台表示装置64に表示させることが好ましい。
【0039】
さらに、運転台表示装置64には、列車の号車番号と走行の向き(図4及び図5では1両目から15両目まである列車が1両目を先頭にして走行中であることを示している。)や、各車両のドアの開閉状況が表示される。図4及び図5では、1両目、4両目、11両目のドアが開いている状態であることを示している。
【0040】
また、運転台表示装置64の表示画面には、故障の発生を知らせる「故障発生ボタン」、非常時の通報を行う「非常通報ボタン」、各種設定を行う「設定ボタン」、乗務員(運転士)がカスタマイズした設定等を読み出す「運転士メニューボタン」、等が設けられている。
運転台表示装置64の表示画面には指先等によるタッチ操作が可能なタッチパネルが一体に形成されており、乗務員は、表示画面上の各ボタンをタッチ操作することにより、故障や非常事態の発生を報知したり、各種の設定等を行うことができる。
また、図4に示すように、運転台表示装置64の表示画面には、仕業情報(輸送業務支援情報)に付帯情報(すなわち、区所の管理者等により入力されたテキスト文書)がある場合に「付帯情報有ボタン」が表示される。
図6は、付帯情報有ボタンが操作された場合に運転台表示装置64に表示される表示画面例を示したものである。
図6では、付帯情報として、2つの注意事項がある場合を例示している。
【0041】
なお、運転台表示装置64の表示画面に表示される内容や表示レイアウト等は図示例に限定されない。表示内容や表示レイアウト等は、カスタマイズ可能となっていてもよい。
【0042】
客室内表示装置65は、例えば列車の客室内のドアの上等に設置された乗客用の表示装置である。客室内表示装置65は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)やLED等で構成された電光掲示板等で構成されている。
本実施形態において、仕業情報(輸送業務支援情報)には列車の行き先や停車駅名等の情報を含む時刻表データ(列車ダイヤ)が含まれている。このため、客室内表示装置65は、制御装置60による表示制御により、仕業情報(輸送業務支援情報)に基づいて、例えば、当該列車の行き先や、列車の種類(各駅停車か快速列車か等の種別)や、次の停車駅の駅名や、次の停車駅において進行方向のいずれの側のドアが開閉するかの情報や、この先の停車駅までの到着予測時間等を自動的に適宜表示させる。
また、事故や故障等により列車に遅れが生じている異常時運転の際には、変更された輸送計画に基づく各駅への到着予想時刻等が適宜表示されるようにしてもよい。
【0043】
音声案内装置66は、列車の客室内において音声案内を行うスピーカシステム等で構成されている。
音声案内装置66は、制御装置60による制御により、時刻表データ(列車ダイヤ)を含む仕業情報(輸送業務支援情報)に基づいて、例えば、当該列車の行き先や、列車の種類(各駅停車か快速列車か等の種別)や、次の停車駅の駅名や、次の停車駅において進行方向のいずれの側のドアが開閉するかの情報等を自動的に適宜音声出力させる。
また、事故や故障等により列車に遅れが生じている異常時運転の際には、変更された輸送計画に基づいて、当該列車の今後の停車予定駅情報等が適宜音声案内されるようにしてもよい。
【0044】
制御装置60は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成される記憶部(いずれも図示せず)とを備えるコンピュータである。
本実施形態において、制御装置60には、前述のように、カードリーダ61によって読み取られた乗務員用端末装置3の通信認証IDが送られるようになっており、制御装置60は、カードリーダ61から送られた通信認証IDを通信装置63において通信を行うことが許可されるホワイトリストに書き込む。
また、制御装置60には、前述のように、通信装置63が乗務員用端末装置3との間で通信を行うことによって受信された仕業情報(輸送業務支援情報)が送られるようになっており、制御装置60は、この仕業情報に基づいて、運転台表示装置64や客室内表示装置65の表示制御を行い、音声案内装置66からの音声出力制御を行う。
その他、本実施形態において、制御装置60は、仕業情報(輸送業務支援情報)に基づいて以下のような制御を行うことも可能である。
【0045】
すなわち、制御装置60は、仕業情報に含まれる各駅の着番線情報に基づいて、各車両のドアの開閉を制御することができる。すなわち、駅ごとの着番線情報から進行方向における右側・左側のいずれのドアを開閉すべきかを判断し、各駅ごとに適切な側のドアが開くように図示しないドア開閉機構を制御する。
また、制御装置60は、仕業情報に含まれる制限速度情報に基づいて、制限速度を超えた場合には、音声やブザー、ランプ等によるアラートを発生させ、乗務員への注意喚起を行う。なお、列車が仕業情報に規定されている制限速度を超えた場合には、自動でブレーキをかけるように、制御装置60がブレーキ機構を制御するように構成してもよい。
また、制御装置60は、キロ程から判断される列車の現在位置が仕業情報に規定されている徐行区間に近づいていると判断すると、徐行区間までの距離が所定距離以下となった時点で、徐行区間が近づいている旨を音声やブザー、ランプ等により報知し、乗務員への注意喚起を行う。なお、列車が徐行区間に入っても規定された速度以下に減速されていない場合には、自動でブレーキをかけるように、制御装置60がブレーキ機構を制御するように構成してもよい。
また、列車の走行区間内には、地上設備の破損等を回避するために列車の停車が許されない停車禁止区間(これを「エアセクション」という。)がある。制御装置60は、キロ程から判断される列車の現在位置が仕業情報に規定されている停車禁止区間内であり、列車の走行速度が所定の速度を下回っていると判断すると、当該区間が停車禁止区間である旨を音声やブザー、ランプ等により報知し、乗務員への注意喚起を行う。
また、列車の乗務員と輸送を管理する指令室の指令員とは無線によって会話することができるが、指令室は線区単位で管理されている。このため、線区ごとの無線連絡が互いに混信しないように、各線区ごとに無線のチャンネルが異なっており、複数の線区を跨いで運行する列車の場合、無線のチャンネルを適宜切り替えないと、指令室との連絡が取れない状態となる。そこで、制御装置60は、キロ程から判断される列車の現在位置がどの線区内にあるかを判断し、線区が変わるごとに、無線のチャンネルを当該線区のチャンネルに適宜自動で切り替えるようになっている。
【0046】
次に、本実施形態における輸送業務支援システムの作用について説明する。
【0047】
まず、通常運行時には、1日の乗務が開始される前に、輸送総合システム2の行路情報配信サーバ装置22から各乗務員の乗務員用端末装置3(乗務員用端末装置3a,3b,3c・・・)に対して各乗務員に対応する仕業情報(輸送業務支援情報)がインターネットNを介して無線方式で配信される。
乗務員は、自分の乗務員用端末装置3に配信された仕業情報(輸送業務支援情報)を確認して、当該仕業情報において指示された行路の列車に乗務する。そして、列車内の運転台に設置されているカードリーダ61に認証用カード4をかざして当該乗務員用端末装置3の通信認証IDを読み取らせる。カードリーダ61によって読み取られた通信認証IDは制御装置60に送られ、制御装置60によって、当該通信認証IDが通信装置63が通信可能なホワイトリストに書き込まれる。
例えば、乗務員Aが自分の乗務員用端末装置3a及びこれに付帯した認証用カード4aを携帯して自分の乗務する列車に乗務し、カードリーダ61に認証用カード4aをかざすと、乗務員用端末装置3aの通信認証IDが読み取られて当該通信認証IDがホワイトリストに書き込まれる。
列車の通信装置63は、近くのアクセスポイント62と通信して、ホワイトリストに書き込まれた通信認証IDと一致する乗務員用端末装置3(上記例では乗務員用端末装置3a)があるか否かを検索し、通信認証IDと一致する乗務員用端末装置3がある場合には当該乗務員用端末装置3(上記例では乗務員用端末装置3a)との間で通信を行う。通信装置63は、乗務員用端末装置3から、当該乗務員用端末装置3が行路情報配信サーバ装置22から配信された仕業情報(輸送業務支援情報)を受信し、これを制御装置60に送る。
制御装置60は、通信装置63によって受信された仕業情報(輸送業務支援情報)に基づいて、運転台表示装置64に列車ダイヤ等の運行に必要な情報を表示させるとともに、客室内表示装置65に停車駅の情報等の乗客に有用な情報を表示させ、また音声案内装置66によって、次の停車駅の案内、開閉するドアの位置等の音声情報を乗客に提供する。
また、制御装置60は、仕業情報(輸送業務支援情報)に基づいて、ドアの自動開閉、速度等に関する乗務員への注意喚起、ブレーキ制御、無線チャンネルの切り替え、交流・直流に対応した車上設備の切り替え等、乗務員の輸送業務を支援するための各種制御を行う。
【0048】
次に、事故や故障等により列車ダイヤ乱れが生じた異常時運行時には、乗務員が列車に乗務する前に輸送計画の変更が分かれば、変更後の仕業情報(輸送業務支援情報)が各乗務員の乗務員用端末装置3に配信され、乗務員は配信された仕業情報に基づいて列車に乗務する。
また、輸送計画の変更があったがその日1日分の計画が確定されていない場合には、とりあえず、決定している分の輸送計画に応じた仕業情報(輸送業務支援情報)が各乗務員の乗務員用端末装置3に配信され、乗務員は配信された仕業情報に基づいて列車に乗務する。そして、列車に乗務している間に、追加の変更指示等が新たな仕業情報(輸送業務支援情報)として行路情報配信サーバ装置22から各乗務員の乗務員用端末装置3に対して随時配信される。配信された仕業情報(輸送業務支援情報)は、随時制御装置60による制御に反映され、運転台表示装置64や客室内表示装置65に表示される内容、音声案内装置66から出力される内容が最新の仕業情報(輸送業務支援情報)に基づいたものに切り替えられる。また、ドアの自動開閉、ブレーキの自動制御、無線チャンネルの切り替え等の輸送業務支援についても、適宜最新の仕業情報(輸送業務支援情報)に基づいた制御が行われる。
また、例えば急な計画の変更等により、乗務員が計画担当等に指示されて、仕業情報(輸送業務支援情報)なしに列車に乗務した場合、乗務員は、乗務した列車の列車番号や行路番号を乗務員用端末装置3から入力して、当該列車番号や行路番号に対応する仕業情報(輸送業務支援情報)の送信を行路情報配信サーバ装置22に対して要求することもできる。この場合、行路情報配信サーバ装置22は要求された情報を当該乗務員用端末装置3に配信し、乗務員は、配信された情報にしたがって列車を運行する。また、この場合にも、新たな輸送計画が決まり次第、最新の仕業情報(輸送業務支援情報)が随時行路情報配信サーバ装置22から当該乗務員用端末装置3に配信され、配信された情報は乗務員用端末装置3が列車の通信装置63と通信することで制御装置60に送られる。そして、制御装置60は、この最新の仕業情報(輸送業務支援情報)に基づいて各部の制御を行う。
【0049】
乗務員が列車を降りる際には、認証用カード4を再度カードリーダ61にかざす。これいにより、対応する乗務員用端末装置3の通信認証IDが当該列車の通信装置63が通信可能なホワイトリストから抹消され、乗務員用端末装置3と列車の通信装置63との通信が切断される。
なお、乗務員が列車を降りる際に認証用カード4をカードリーダ61にかざし忘れても、いずれのアクセスポイントにおいても通信認証IDに合致する乗務員用端末装置3との通信が成立しない状態が10秒程度続くと自動的に当該乗務員用端末装置3の通信認証IDがホワイトリストから抹消され、乗務員用端末装置3と列車の通信装置63との通信が切断される。
また、乗務員(例えば乗務員A)が認証用カード4(例えば認証用カード4a)を再度カードリーダ61にかざす前に次の別の乗務員(例えば乗務員B)が認証用カード4(例えば認証用カード4b)をカードリーダ61にかざした場合には、先に認証されていた乗務員用端末装置3aの通信認証IDがホワイトリストから抹消され、新たに乗務員用端末装置3bの通信認証IDがホワイトリストに書き込まれて、乗務員用端末装置3bのみが列車の通信装置63との通信を行うことのできる状態となる。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
すなわち、本実施形態では、乗務員ごとの仕業情報(輸送業務支援情報)を当該乗務員の乗務員用端末装置3から読み取り、列車の制御装置60は、この仕業情報(輸送業務支援情報)に基づいて当該乗務員が乗務した列車に関する輸送業務支援を行うことができる。
このため、従来のように仕業カードを用いることなく、簡易に輸送業務支援情報に基づく輸送業務支援を行うことができる。これにより、仕業カードに費やされていたコストを削減することができる。また、乗務員用端末装置3に送信できるデータの容量は比較的大きいため、従来の仕業カードでは1枚に収まり切らなかったような大容量のデータでも乗務員用端末装置3によって一括管理することができる。
また、仕業情報(輸送業務支援情報)は、無線方式で行路情報配信サーバ装置22から配信されるため、通常運行時のみならず、事故や故障等により乗務計画に変更が生じたときにも、変更後の情報を円滑に乗務員に伝達することができる。そして、列車の制御装置60は最新の情報を随時取得することができ、この最新の仕業情報(輸送業務支援情報)に基づいた輸送業務支援(すなわち、自動による運転台表示装置64・客室内表示装置65の表示制御や音声案内装置66の出力制御、自動によるドアの開閉制御や速度規制等に関する乗務員への注意喚起等)を行うことが可能となる。
また、固有の通信認証IDに対応する乗務員用端末装置3のみが列車の通信装置63との間で通信可能となっている。このため、無関係な者の端末との間で通信が成立するのを防止することができ、セキュリティー上優れている。また、1台の列車の通信装置63の近傍にそれぞれ乗務員用端末装置3を持った乗務員が複数いるような状況下でも、当該列車に乗務した乗務員の乗務員用端末装置3に配信された情報のみを当該列車の輸送業務支援情報として取り込むことができ、簡易かつ確実に、正しい情報に基づいた輸送業務支援を行うことができる。
さらに、乗務員用端末装置3側から、行路情報配信サーバ装置22に対して仕業情報(輸送業務支援情報)を要求することも可能である。このため、急な変更等により、輸送計画の変更が確定しないうちにとりあえず列車に乗務したような場合にも、列車番号や行路番号を入力することで必要な情報を行路情報配信サーバ装置22から取得することができる。
また、仕業情報(輸送業務支援情報)は、乗務員が乗務する行路の時刻表データを含んでいるため、運転台表示装置64に時刻表画面を表示させることが可能であるとともに、乗客に対して、自動で列車の行き先や停車駅等の案内を行うことが可能となる。
【0051】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0052】
例えば、本実施形態では、列車車両内の通信装置63と乗務員用端末装置3との間で無線方式により通信が行われる場合を例示したが、列車車両内の通信装置63と乗務員用端末装置3との間の通信方式は、無線方式に限定されず、有線方式であってもよい。
この場合、例えばUSB(Universal Serial Bus)ケーブル等の通信ケーブルを介しして各種の有線通信を行うものであってもよい。
また、乗務員用端末装置3を列車車両内の通信装置63と接続されたクレードル等に載置することによって、乗務員用端末装置3に配信された情報が列車車両内の通信装置63に伝送されるように構成してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、乗務員用端末装置3の固有の通信認証IDを記憶する認証用カード4を乗務員用端末装置3とは別個に備える場合を例示したが、乗務員用端末装置3の中に一体的にNFC通信規格に対応したICチップ等を搭載してもよい。
この場合には、別途認証用カード4を備える必要がなく、乗務員用端末装置3をID読取装置であるカードリーダ61等に直接かざすことでID読取装置に通信認証IDを読み取らせるように構成してもよい。
【0054】
また、乗務員用端末装置3の固有の通信認証IDは、バーコードやQRコード(登録商標)等で構成されていてもよい。
この場合には、ID読取装置もこれらのコードを読取可能な構成のものを適用する。
【符号の説明】
【0055】
1 輸送業務支援システム
2 輸送総合システム
3 乗務員用端末装置
4 認証用カード
21 中央サーバ装置
22 行路情報配信サーバ装置
60 制御装置
61 カードリーダ
63 通信装置
64 運転台表示装置
65 客室内表示装置
66 音声案内装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6