特許第6174525号(P6174525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174525
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
   H02M3/28 H
   H02M3/28 X
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-136824(P2014-136824)
(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公開番号】特開2016-15833(P2016-15833A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2016年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103208
【氏名又は名称】コーセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】畑岸 淳一
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−081914(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3176298(JP,U)
【文献】 特開2005−073486(JP,A)
【文献】 特開2013−027085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00 − 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を主出力電圧に変換して出力する第一電力変換部、及び前記第一電力変換部の動作を制御する第一制御回路が設けられた第一のコンバータと、前記第一制御回路内に設けられたシリアル通信モジュールと、前記入力電圧を補助出力電圧に変換して出力する第二電力変換部、及び前記第二電力変換部の動作を制御する第二制御回路が設けられた第二のコンバータと、相手方の実装基板に接続される複数の外部接続端子とを備え、
前記複数の外部接続端子には、両端に前記入力電圧が外部入力される一対の入力端子と、
両端から前記主出力電圧を出力する一対の主出力端子と、外部機器に接続され、前記シリアル通信モジュールと前記外部機器との間で通信を可能にするシリアル通信用端子と、
前記外部機器のグランドに接続される外部グランド端子と、前記第一制御回路にシリアル通信用のアドレスを付与するための外部接続端子である主アドレス設定端子と、機能の設定が切り替え可能な機能可変端子とが含まれ、
前記機能可変端子の機能は、内蔵する切替手段によって設定され、前記切替手段は、前記機能可変端子を、前記主アドレス設定用端子と協働して前記第一制御回路の前記アドレスを付与するための外部接続端子である補助アドレス設定端子とする設定と、前記機能可変端子を、前記補助出力電圧を前記外部機器の動作用電圧として出力する補助出力端子とする設定とを切り替え可能に設けられていることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記シリアル通信モジュールは、I2C方式の通信モジュールであり、前記シリアル通信用端子として、クロック送受信用の端子及びデータ送受信用の端子が設けられている請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記第一及び第二のコンバータの各内部回路は、互いに絶縁された入力側回路と出力側回路とで構成され、前記シリアル通信モジュール、前記一対の主出力端子、前記シリアル通信用端子、前記外部グランド端子、前記主アドレス設定端子、及び前記機能可変端子は、第一又は第二のコンバータの前記出力側回路に設けられている請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記第二電力変換部は、前記入力電圧を前記補助出力電圧及び制御用電圧に変換して出力し、前記制御用電圧は、前記第一制御回路の中の前記出力側回路に設けられている部分の動作用電圧として使用される請求項3記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部機器と通信を行う機能を備えたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力変換動作をデジタル制御するため制御回路内にデジタルプロセッサを設け、さらにデジタルプロセッサと外部機器との間の通信を可能にしたスイッチング電源装置が実用化されている。この種のスイッチング電源装置を使用すると、例えば、図6(a)、(b)に示すような各電源システム1,2を構成することができる。
【0003】
電源システム1は、図6(a)に示すように、従来のスイッチング電源装置3、負荷4、及び外部機器5を備えている。スイッチング電源装置3は、入力電圧Viを受けて、主出力電圧Voと補助出力電圧Vrに変換して出力する装置であり、内部回路は図示していないが、例えば、1つの入力巻線と2つの出力巻線を有するコンバータトランスが設けられ、入力巻線に直列接続された主スイッチング素子が入力電圧Viを断続することによって入力巻線に断続電圧を印加し、2つの出力巻線に発生する交流電圧をそれぞれ整流平滑して電圧Vo,Vrを出力する構成になっている。負荷4は、主出力電圧Voを動作用電圧として動作する電子機器等である。外部機器5は、通信バス6を通じてスイッチング電源装置2や負荷4と通信を行い、これらの動作状態を監視したり、動作状態を変更させたりする装置である。電源システム1に類似した構成は、例えば、特許文献1の図4図5に開示されている。
【0004】
電源システム2は、電源システム1の構成の一部を変更したものであり、図6(b)に示すように、スイッチング電源装置3に代えて従来のスイッチング電源装置7が使用され、新たに補助電源装置8が追加されている。スイッチング電源装置7は、負荷4の動作用電圧である主出力電圧Voのみを出力し、補助電源装置8が外部機器5の動作用の電圧である補助出力電圧Vr生成し出力する。電源システム2に類似した構成は、例えば、特許文献1の図1に開示されている。
【0005】
また、近年、通信機能を備えるスイッチング電源装置について、仕様の標準化を図るための様々な規格が制定された。例えば、複数の電源装置メーカ等が参加した団体であるSMIF(System Management Interface forum)が制定したPMBus(Power Management
Bus)と呼ばれるI2C方式(Inter Integrated Circuit)の電源管理用バスプロトコルや、電源モジュール標準化団体であるDOSA(Distributed-power Open Standard Alliance)が制定した電源装置の端子配列の規格等が挙げられる。そのため、電源システムの設計者等から、これらの規格に準拠したスイッチング電源装置を開発するよう要求されるケースが増えてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−3776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のスイッチング電源装置3を用いた電源システム1は、スイッチング電源装置3に入力電圧Viが投入されると、主出力電圧Voと補助出力電圧Vrがほぼ同時に立ち上がり、外部機器5と負荷4が動作を開始するタイミングがほぼ同じになるため、スイッチング電源装置3及び負荷4の起動特性(起動時の動作)を外部機器5で制御することができないという問題がある。また、特許文献1に記載されているように、1つの電力変換回路で主出力電圧Voと補助出力電圧Vrを生成している関係で、一方の電圧だけを可変したり停止させたりすることが難しいという問題もある。その他、スイッチング電源装置3の構成は、DOSAの端子配列の規格に準拠できないものである。
【0008】
一方、従来のスイッチング電源装置7を用いた電源システム2の場合、上記の動作上の問題は解決できる。また、スイッチング電源装置7を、PMBus規格やDOSAの端子配列の規格に準拠させることも可能である。しかし、電源システム2は、スイッチング電源装置7とは別に、補助電源装置8を追加しなければならないので、システム全体の構成が電源システム1よりも複雑になる。
【0009】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、各種規格に準拠した仕様とこれに類似した個別仕様を、電源装置の生産工程の中で容易に選択又は変更できるスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、入力電圧を主出力電圧に変換して出力する第一電力変換部、及び前記第一電力変換部の動作を制御する第一制御回路が設けられた第一のコンバータと、前記第一制御回路内に設けられたシリアル通信モジュールと、前記入力電圧を補助出力電圧に変換して出力する第二電力変換部、及び前記第二電力変換部の動作を制御する第二制御回路が設けられた第二のコンバータと、相手方の実装基板に接続される複数の外部接続端子とを備え、
前記複数の外部接続端子には、両端に前記入力電圧が外部入力される一対の入力端子と、
両端から前記主出力電圧を出力する一対の主出力端子と、外部機器に接続され、前記シリアル通信モジュールと前記外部機器との間で通信を可能にするシリアル通信用端子と、
前記外部機器のグランドに接続される外部グランド端子と、前記第一制御回路にシリアル通信用のアドレスを付与するための外部接続端子である主アドレス設定端子と、機能の設定が切り替え可能な機能可変端子とが含まれ、
前記機能可変端子の機能は、内蔵する切替手段によって設定され、前記切替手段は、前記機能可変端子を、前記主アドレス設定用端子と協働して前記第一制御回路の前記アドレスを付与するための外部接続端子である補助アドレス設定端子とする設定と、前記機能可変端子を、前記補助出力電圧を前記外部機器の動作用電圧として出力する補助出力端子とする設定とを切り替え可能に設けられているスイッチング電源装置である。
【0011】
前記シリアル通信モジュールは、I2C方式の通信モジュールであり、前記シリアル通信用端子として、クロック送受信用の端子及びデータ送受信用の端子が設けられている。
【0012】
前記第一及び第二のコンバータの各内部回路は、互いに絶縁された入力側回路と出力側回路とで構成され、前記シリアル通信モジュール、前記一対の主出力端子、前記シリアル通信用端子、前記外部グランド端子、前記主アドレス設定端子、及び前記機能可変端子は、第一又は第二のコンバータの前記出力側回路に設けられている。この場合、前記第二電力変換部は、前記入力電圧を前記補助出力電圧及び制御用電圧に変換して出力し、前記制御用電圧は、前記第一制御回路の中の前記出力側回路に設けられている部分の動作用電圧として使用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のスイッチング電源装置は、シリアル通信モジュール及びこれを用いた通信に必要な外部接続端子を備えているので、通信プロトコルを各種のシリアル通信規格(PMBus等)に準拠させることができる。さらに、切替手段の設定を切り替えることで、DOSA等の端子配列の規格に準拠した仕様とこれらに類似した個別仕様を、電源装置の生産工程の中で容易に選択又は変更できるで、ユーザからの発注がどちらの仕様であっても、指定された製品を速やかに生産し出荷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のスイッチング電源装置の一実施形態の外観を示す正面図(a)、底面図(b)、外部接続端子の配列を示す図(c)である。
図2】この実施形態のスイッチング電源装置の内部構成を示す回路ブロック図である。
図3図2の切替手段の例を示す図(a),(b),(c)である。
図4】この実施形態のスイッチング電源装置を用いて構成された電源システムの一例を示す回路ブロック図である。
図5】この実施形態のスイッチング電源装置を用いて構成された電源システムの他の例を示す回路ブロック図である。
図6】従来のスイッチング電源装置を用いて構成された電源システムの例を示す回路ブロック図(a),(b)である
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のスイッチング電源装置の一実施形態について、図1図5に基づいて説明する。この実施形態のスイッチング電源装置10は、図1に示すように、多層基板である回路基板12の両面に、内部回路を構成する複数の回路素子14が搭載され、回路基板12の底面側に、相手方の実装基板16に接続するための複数の外部接続端子18が配設された1/4ブリックサイズの電源装置である。外部接続端子18は、例えば金属製のピンであり、実装基板16のスルーホール16aに挿入されハンダ付けされる。
【0016】
複数の外部接続端子18は、図1(c)に示すように、P1(+Vi)端子〜P15(Addr0)端子である。各端子のレイアウトは、機能可変端子であるP14(Addr1/Vr)端子の機能をP14(Addr1)端子に設定することによって、DOSAの端子配列の規格に準拠することができる。詳しくは後で説明する。
【0017】
スイッチング電源装置10は、図2に示すように、入出力絶縁型の第一のコンバータ20、入出力絶縁型の第二のコンバータ22、及び切替手段24で構成され、内部回路の特定箇所が外部接続端子18に引き出されている。
【0018】
第一のコンバータ20は、入力電圧Viを主出力電圧Voに変換して出力する第一電力変換部26を備えている。主出力電圧Voは、負荷の動作用電圧である。第一電力変換部26は、スイッチング素子28で入力電圧Viを断続することによってトランス30の入力巻線30aに断続電圧を印加し、出力巻線30bに発生する交流電圧を第一整流平滑回路32で整流平滑して主出力電圧Voを生成する。
【0019】
第一電力変換部26の動作は、第一制御回路34によって制御される。第一制御回路34は、第一電圧検出回路36で主出力電圧Voを検出し、第一制御部38で、主出力電圧Voが目標値に保持されるようにスイッチング素子28のオン時間及びオフ時間を決定し、その情報がアイソレータ40を通じて第一駆動回路42に伝達され、第一駆動回路42がスイッチング素子28を駆動する。第一制御部38は、デジタルプロセッサで構成されたインテリジェンス性の高い多機能な回路ブロックであり、主出力電圧Voを目標値に保持する制御以外に、例えば、スイッチング素子28のオン時間を強制的に短くしたりオンオフ動作を停止させたりする制御(過電流保護、過電圧保護)、起動時のスイッチング素子28のオンオフ開始のタイミングや最大オン時間の制御(ソフトスタート)等を行うことができる。また、第一制御部38には、シリアル通信モジュールであるI2Cモジュール38aが設けられ、外部機器との間でI2C方式の通信を行うことができる。第一制御部38の通信機能については、後で説明する。
【0020】
第一のコンバータ20は、内部回路が入力側回路44と出力側回路46に分離しており、トランス30及びアイソレータ40を介して互いに絶縁されている。つまり、入力側回路44内にスイッチング素子28及び第一駆動回路42が設けられ、出力側回路46内に第一整流平滑回路32、第一電圧検出回路36及び第一制御部38が設けられている。
【0021】
第二のコンバータ22は、入力電圧Viから補助出力電圧Vr及び制御用電圧Vs(>Vr)を生成して出力する第二電力変換部48を備えている。第二電力変換部48は、スイッチング素子50で入力電圧Viを断続することによってトランス52の入力巻線52aに断続電圧を印加し、出力巻線52bに発生する交流電圧を第二整流平滑回路54で整流平滑して制御用電圧Vsを生成する。制御用電圧Vsは、第一のコンバータ20の出力側回路46に設けられた第一制御部38や第一電圧検出回路36に動作用電圧として使用される。さらに、第二整流平滑回路32の後段に降圧用のレギュレータ56を設け、補助出力電圧Vrを生成する。補助出力電圧Vrは、外部機器の動作用電圧として使用される電圧である。
【0022】
第二整流平滑回路32の後段の構成は、電圧Vr,Vsの高低によって変更されるものである。例えば、Vr=Vsの場合は、レギュレータ56を省略することができる。Vr>Vsの場合は、第二整流平滑回路54の出力電圧を補助出力電圧Vrとし、補助出力電圧Vrをレギュレータ56で降圧して制御用電圧Vsを生成する構成にしてもよい。
【0023】
第二電力変換部48の動作は、第二制御回路58によって制御される。第二制御回路58は、第二電圧検出回路60で制御用電圧Vs(又は補助出力電圧Vr)を検出し、その情報がアイソレータ62を通じて第二制御部64に伝達され、第二制御部64で、制御用電圧Vs(又は補助出力電圧Vr)が目標値に保持されるようにスイッチング素子50のオン時間及びオフ時間を決定し、第二駆動回路66がスイッチング素子66を駆動する。
【0024】
第二のコンバータ22は、内部回路が入力側回路68と出力側回路70に分離しており、トランス52及びアイソレータ62を介して互いに絶縁されている。つまり、入力側回路68内にスイッチング素子50、第二制御部64及び第二駆動回路68が設けられ、出力側回路70内に、第二整流平滑回路54、第二電圧検出回路60、及びレギュレータ56が設けられている。
【0025】
I2C方式の通信を行うためには、第一制御回路34に通信用のアドレスを付与しなければならない。第一制御部38は、アドレス設定用のAddr0ピン及びAddr1ピンを有し、各端子に外部抵抗が接続されたときの各ピンの電圧値(アナログ値)に応じてアドレスが付与される。例えば、2つのピンの電圧範囲をそれぞれ8分割すれば、8×8=64通りのアドレスを割り振ることができる。また、Addr1ピンの電圧を無視する設定にすれば、Addr0ピンの電圧により、8通りのアドレスを割り振ることができる。
【0026】
複数の外部接続端子18は、P1(+V)端子〜P15(Addr0)端子で構成されている。P1(+Vi)端子とP3(-Vi)端子は、両端に入力電圧Viが外部入力される一対の入力端子であり、第一及び第二電力変換部26,48の各入力端に接続されている。
【0027】
P2(ON/OFF)端子は、主出力電圧Voの出力と停止を切り替えるためのオンオフ端子であり、第一駆動回路42に接続されている。ここでは、外部からローレベルの電圧が入力されると(又はP3(-Vi)端子に接地されると)、第一駆動回路42がスタンバイし、スイッチング素子28がオンオフ可能になる。また、外部からハイレベルの電圧が入力されると、第一駆動回路42が動作できない状態になり、主出力電圧Voがダウンする。なお、スイッチン素子28をオンオフできない状態にする方法は、第一駆動回路42の動作を制限する以外の方法を用いてもよい。
【0028】
P4(+Vo)端子とP8(-Vo)端子は、両端から主出力電圧Voを出力する一対の主出力端子であり、第一整流平滑回路32の出力端に接続されている。
【0029】
P7(+S)端子とP5(-S)端子は、主出力電圧Voを負荷に近い位置で検出するための一対のセンシング端子であり、第一電圧検出回路36の入力端に接続されている。例えば、スイッチング電源装置10から負荷までの配線が長い場合に配線の電圧降下が無視できなくなるので、これをキャンセルするために使用される。
【0030】
P6(TRM)端子は、主出力電圧Voの目標値を可変するためのトリミング端子であり、第一電圧検出回路36に接続されている。ここでは、第一電圧検出回路36がアナログ式の誤差増幅回路(主出力電圧Voと基準電圧との差を増幅して出力する回路)の構成なっており、P6(TRM)端子に抵抗等を外部接続することによって基準電圧を変化させ、主出力電圧Voの目標値を可変する。目標値が第一制御部38で設定される場合は、P6(TRM)端子は第一制御部38に接続される。
【0031】
P9(Pw-Good)端子は、主出力電圧Voが出力されていることを示す信号を外部出力するためのパワーグッド端子であり、第一制御部38に接続されている。P9(Pw-Good)端子は、ここではオープンドレイン出力であり、外部の直流電圧にプルアップして使用され、第一電圧検出回路36で検出した主出力電圧Voが所定値(主出力電圧Voの目標値よりも低い値)より低いときにハイレベルを、高いときにローレベルを出力する。
【0032】
P10(S-Gnd)端子は、外部機器のグランドに接続される外部グランド端子であり、第一制御部38のグランド、及び第二整流平滑回路54のグランドに接続されている。
【0033】
P11(Data)端子とP13(Clock)端子は、シリアル通信用端子(I2C方式のクロック送受信用の端子とデータ送受信用の端子)であり、共にI2Cモジュール38aに接続されている。P11(Data)端子とP13(Clock)端子はオープンドレイン出力であり、それぞれ外部の直流電圧にプルアップして使用される
P12(SMBAlert)端子は、第一のコンバータ20又は第二のコンバータ48に何らかの異常が発生した場合にアラーム信号(ハイレベル又はローレベル)を出力するためのアラーム端子であり、第一制御部28に接続されている。
【0034】
P15(Addr0)端子は、第一制御回路34にシリアル通信用のアドレスを付与するため、外部抵抗が接続される主アドレス設定端子であり、第一制御部38のAddr0ピンに接続されている。
【0035】
P14(Addr1/Vr)端子は、切替手段24によって機能が設定される機能可変端子である。切替手段24は、例えば手動式のスイッチ素子24aであり、図3(a)に示すように、P14(Addr1/Vr)端子を第一制御部38のAddr1ピンに接続するか、レギュレータ56の出力端に接続するか、どちらか一方に設定する働きをする。したがって、P14(Addr1/Vr)端子は、スイッチ素子24aが前者のように設定されると、P15(Addr0)端子と協働して第一制御回路34のアドレスを付与する補助アドレス設定端子(P14(Addr1)端子)となり、スイッチ素子24aが後者のように設定されると、補助出力電圧Vrを外部機器の動作用電圧として出力する補助出力端子(P14(Vr)端子)となる。なお、P14(Addr1/Vr)端子をP14(Vr)端子に設定する場合は、第一制御部38がAddr0ピン及びAddr1ピンの電圧値からアドレスを割り振るとき、Addr1ピンの電圧を無視し、Addr0ピンの電圧だけに基づいてアドレスを割り振るようプログラムする点に留意する。
【0036】
切替手段24は、手動のスイッチ素子24a以外の構成でもよい。例えば、図3(b)に示すように、切替手段24を配線パターン24b(1)と接続切替用抵抗素子24b(2)とで構成すれば、抵抗素子24b(2)の実装位置を変更することにより、設定を切り替えることができる。また、図3(c)に示すように、切替手段24を半導体スイッチ24cで構成し、第一制御部38から指令を受けて設定が切り替わるようにしてもよい。
【0037】
次に、スイッチング電源装置10を用いて構成される電源システムの一例(電源システム72)について、図4に基づいて説明する。電源システム72は、スイッチング電源装置10が負荷74(1),74(2)に動作電圧を供給し、これらの動作を外部機器76で監視し、制御するシステムである。負荷74(1),74(2)、及び外部機器76は、スイッチング電源装置10と通信を行うため、それぞれ内部にI2Cモジュールが設けられている。また、スイッチング電源装置10の機能可変端子であるP14(Addr1/Vr)端子は、補助出力端子であるP14(Vr)端子に設定されている。
【0038】
スイッチング電源装置10は、P2(ON/OFF)端子がP3(-Vi)端子に接地され、第一のコンバータ20のスイッチング素子28が動作可能になっている。したがって、P1(+Vi),P3(-Vi)端子間に入力電圧Viが印加されると、P8(+Vo),P4(-Vo)端子間に主出力電圧Voが発生する。P8(+Vo),P4(-Vo)端子は、負荷74(1),74(2)が有するS8(+Vo),S4(-Vo)端子にそれぞれ接続され、主出力電圧Voを負荷74(1),74(2)の動作用電圧として出力する。P7(+S),P5(-S)端子は、負荷74(1),74(2)のS8(+Vo),S4(-Vo)端子に近い位置に接続され、主出力電圧Voを検出する。
【0039】
P14(Vr),P10(S-Gnd)端子は、外部機器76が有するT14(Vr),T10(S-Gnd)端子にそれぞれ接続され、補助出力電圧Vrを外部機器76の動作用電圧として出力する。また、P10(S-Gnd)端子は、負荷74(1),74(2)のS10(S-Gnd)端子にそれぞれ接続され、各装置の共通のグランドになる。
【0040】
P6(TRM)端子とP10(S-Gnd)端子との間には可変抵抗が接続され、この可変抵抗で主出力電圧Voの目標値を微調整することができる。
【0041】
P9(Pw-Good)端子は、負荷74(1),74(2)のS9(Pw-Good)端子、及び外部機器76のT9(Pw-Good)端子にそれぞれ接続され、主出力電圧Voが目標値に近い値まで上昇するとパワーグッド信号を出力する。外部機器76及び負荷74(1),74(2)は、パワーグッド信号を受けると、プログラムに従って適宜の動作を行う。P9(Pw-Good)端子は、抵抗を介してP14(Vr)端子にプルアップされている。
【0042】
P12(SMBAlert)端子は、外部機器76のT12(SMBAlert)端子に接続され、アラーム信号を出力する。負荷74(1),74(2)もP12(SMBAlert)端子と同様のS12(SMBAlert)端子を有し、外部機器76のT12(SMBAlert)端子に接続され、自己に異常が発生したときにアラーム信号を出力する。外部機器76は、アラーム信号を受けると、プログラムに従って所定の措置を行う。
【0043】
P15(Addr0)端子とP10(S-Gnd)端子との間には所定の抵抗が接続され、スイッチング電源装置10の通信用のアドレスを設定する。ここでは、P14(Addr1/Vr)端子がP14(Vr)端子に設定されているので、アドレスの設定は、P15(Addr0)端子の電圧だけを用いて行う。
【0044】
P11(Data),P13(clock)端子は、外部機器76のT11(Data),T13(clock)端子にそれぞれ接続され、I2C方式の通信が可能になっている。また、負荷74(1),74(2)も同様のS11(Data),S13(clock)端子を有し、外部機器76のT11(Data),T13(clock)端子にそれぞれ接続され、I2C方式の通信が可能になっている。P11(Data),P13(clock)端子は、それぞれ抵抗を介してP14(Vr)端子にプルアップされている。
【0045】
スイッチング電源装置10が外部機器76に向けて送信する情報は、例えば、スイッチング電源装置10の動作状態を示すデータ等(入力電圧Vi、主出力電圧Vo、補助出力電圧Vr、スイッチング周波数、特定の回路素子の電流、電圧、温度)である。これにより、外部機器76がスイッチング電源10の動作状態を的確に監視することができる。外部機器76がスイッチング電源装置10に送信する情報は、第一制御部38に対するコマンド等である。例えば、外部機器76が「主出力電圧Voの検出値を5分間隔で送信せよ」というコマンドを送信する。すると、これを受信した第一制御部38が第一電圧検出回路36から主出力電圧Voの情報を取得し、外部機器76に5分間間隔で送信する。また、外部機器76が「主出力電圧Voをダウンさせよ」というコマンドを送信すると、これを受信した第一制御部38が第一駆動回路42の動作を停止させる。外部機器76と負荷74(1),負荷74(2)との間で行われる通信についても、類似した内容である。
【0046】
電源システム72に使用されるスイッチング電源装置10は、PMbus規格に準拠しているが、P14(Addr1/Vr)端子がP14(Vr)端子に設定されているため、DOSAの端子配列の規格には準拠しない。しかしながら、電源システム72の構成を、後述する電源システム78よりもシンプルにできるという利点がある。
【0047】
次に、スイッチング電源装置10を用いて構成される電源システムの他の例(電源システム78)について、図5に基づいて説明する。ここで、電源システム72と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
電源システム78が電源システム72と大きく異なるのは、使用するスイッチング電源装置10の仕様であり、機能可変端子であるP14(Addr1/Vr)端子が補助アドレス設定端子であるP14(Addr1)端子に設定され、DOSAの端子配列の規格に準拠している点である。そのため、外部機器76に動作用電圧を供給するための補助電源装置80が追加されている。
【0049】
P14(Addr1)端子とP10(S-Gnd)端子との間には所定の抵抗が接続され、P15(Addr0)端子と協働してスイッチング電源装置10の通信用のアドレスを設定する。補助電源装置80は、入力電圧Viを補助出力電圧Vrに変換して出力する装置であり、出力端が外部機器76のT14(+Vr),T10(S-Gnd)端子に接続されている。この補助出力電圧Vrは、P9(Pw-Good)端子、P11(Data)端子、及びP13(Clock)端子をプルアップする直流電圧としても使用される。その他の部分の構成及び動作は、電源システム72と同様である。
【0050】
電源システム78は、補助電源装置80が追加されるので電源システム72より構成が複雑である。しかしながら、スイッチング電源装置10として、PMbus規格とDOSAの端子配列の規格に準拠した業界標準製品が使用できるので、ユーザがスイッチング電源装置を複数社購買できるという利点がある。また、多数のアドレスを割り振りできるので、スイッチング電源装置10や負荷74の数が多い場合に有利である。なお、P9(Pw-Good)端子は、主出力電圧Voの出力と停止を切り替えるためのオンオフ端子(P9(ON/OFF)端子)に変更しても、DOSAの端子配列の規格に準拠することができる。
【0051】
以上説明したように、スイッチング電源装置10は、I2Cモジュール38a及び通信に必要な外部接続端子であるP11(Data),P13(clock)端子等を備えているので、通信プロトコルをPMBus規格に準拠させることができる。さらに、切替手段24の設定を切り替えることで、DOSA等の端子配列の規格に準拠した仕様(電源システム78に適した仕様)と、電源システムをシンプルにできる仕様(電源システム72に適した仕様)を、電源装置の生産工程で容易に変更できるで、ユーザからの発注がどちらの仕様であっても、指定された製品を速やかに生産し出荷することができる。
【0052】
また、スイッチング電源装置10は、第一及び第二のコンバータ20,22の入出力が絶縁され、I2Cモジュール38aを含む第一制御部38aが出力側回路46に設けられている。したがって、通信相手の外部機器76や負荷74(1),74(2)は、出力側回路46(安全規格上の安全電圧側)に接続されることになるので、特別な絶縁手段を設けなくても外部機器76等の安全を確保することができる。また、第一制御回路34の中の出力側回路46に設けられている部分(第一制御部38a等)は、第二のコンバータ22の制御用電圧Vsを受けて動作可能になる構成なので、入力電圧Viの投入した後、第一電力変換部26が動作開始する前に第一制御部38等を動作可能にすることができる。したがって、第一制御部38は、第一電力変換部26の動作を、スイッチングを開始する当初から制御できるので、主出力電圧Voの立ち上がり特性等を容易かつ自在に可変調整することができる。
【0053】
なお、本発明のスイッチング電源装置は、上記実施形態に限定されるものではない。スイッチング電源装置が行う通信は、外部機器とシリアル通信を行うものであれば、その通信方式は限定されず、シリアル通信用端子もその通信方式に合わせて設けられる。例えば、PMbus規格やSMBus規格(System Management Bus)に準拠させる場合は、上記のようにI2Cモジュールを設け、シリアル通信用端子としてP11(Data),P13(Closk)端子を設けるとよい。その他、SPI方式(Serial Peripheral Interface)やMicroWire方式等を用いる場合は、各方式用の通信モジュール及びこれに対応したシリアル通信用端子を設ける。
【0054】
また、DOSA以外の端子配列にする場合、P1(+Vi)端子〜P15(Addr0)端子のレイアウトを変更してもよい。また、必要に応じてP2(ON/OFF)端子、P5(+S),P7(-S)端子、P6(TRM)端子、P9(Pw-Good)端子、P12(SMBalert)を選択的に省略して機能をシンプルにしたり、内部回路を入出力非絶縁型にしたりして、装置の低コスト化や小型化を図ってもよい。
【0055】
また、切替手段を切り替えて機能可変端子の初期設定を行う作業は、スイッチング電源装置を生産する工場で行ってもよいし、スイッチング電源装置を購入したユーザが電源システムに組み込む時に行ってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 スイッチング電源装置
18 外部実装端子(P1(+Vi)端子〜P15(Addr0)端子)
20 第一のコンバータ
22 第二のコンバータ
24 切替手段
26 第一電力変換部
34 第一制御回路
38a I2Cモジュール(シリアル通信モジュール)
44,68 入力側回路
46,70 出力側回路
48 第二電力変換部
58 第二制御回路
76 外部機器
P1(+Vi) プラス入力端子
P3(-Vi) マイナス入力端子
P4(-Vo) マイナス主出力端子
P8(+Vo) プラス主出力端子
P10(S-Gnd) 外部グランド端子
P11(Data),P13(Clock) シリアル通信端子
P14(Addr1/Vr) 機能可変端子
P14(Addr1) 補助アドレス設定端子
P14(Vr) 補助出力端子
P15(Addr0) 主アドレス設定端子
Vo 主出力電圧
Vi 入力電圧
Vr 補助出力電圧
Vs 制御用電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6