特許第6174687号(P6174687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6174687新規なカルボジイミド含有組成物、その合成方法、及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174687
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】新規なカルボジイミド含有組成物、その合成方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08K 5/29 20060101AFI20170724BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   C08K5/29
   C08L75/04
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-515426(P2015-515426)
(86)(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公表番号】特表2015-520267(P2015-520267A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】EP2013056157
(87)【国際公開番号】WO2013182329
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年2月12日
(31)【優先権主張番号】12170770.7
(32)【優先日】2012年6月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511206984
【氏名又は名称】ライン・ケミー・ライノー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム・ラウファー
(72)【発明者】
【氏名】アルミン・エッカート
(72)【発明者】
【氏名】マルティナ・ハウク
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭46−008590(JP,B1)
【文献】 米国特許第03193523(US,A)
【文献】 特開2001−031735(JP,A)
【文献】 特開2008−004691(JP,A)
【文献】 米国特許第05532414(US,A)
【文献】 特開平06−192206(JP,A)
【文献】 特開2004−019067(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102816087(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 5/00−5/59
C08L 75/00−75/16
C08G 18/00−18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−少なくとも1種のポリオールと、
−少なくとも1種の式(I)の液体カルボジイミドと
【化1】
(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立にC〜Cアルキルであり、R及びRはそれぞれ独立にC〜Cアルキルである)、
−少なくとも1種のジイソシアネートと、
を含有し、ポリオールに対するジイソシアネートの比率が20〜50:100重量部でり、前記カルボジイミドが室温で液体である、組成物。
【請求項2】
前記R〜Rラジカルが分子内で同じものであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記R〜Rラジカルがイソプロピルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カルボジイミドが前記式(I)のカルボジイミドの複数の混合物であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリオールが、ポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルエステルポリオールを含むことを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオールが、30〜80℃の温度で液体のポリエーテルエステルポリオール及び/又はポリエステルポリオールを含むことを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の触媒を含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
モル質量が200g/mol未満の少なくとも1種のジアミン及び/又は短鎖ジオールも更に含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリオールが最初に入れられ、前記式(I)の液体カルボジイミド又は式(I)の液体カルボジイミドの混合物が撹拌しながら又は計量して入れられることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物の合成方法。
【請求項10】
ポリオールと少なくとも1種の式(I)のカルボジイミドとからなる組成物に、80〜130℃の温度でジイソシアネートが撹拌しながら入れられることを特徴とする、請求項1に記載の組成物の合成方法。
【請求項11】
少なくとも1種のポリエステルポリオールと、なくとも1種の式(I)の液体カルボジイミ
【化2】
(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立にC〜Cアルキルであり、R及びRはそれぞれ独立にジイソシアネートを有するC〜Cアルキルである)
との、80〜130℃の温度での反応により得られ、ポリオールに対するジイソシアネートの比率が20〜50:100重量部でり、前記カルボジイミドが室温で液体である、ポリマー。
【請求項12】
前記触媒が最初に、モル質量が200g/mol未満の前記ジアミン及び/又は前記短鎖ジオールと予め混合され、ポリオールと少なくとも1種の式(I)の液体カルボジイミドと前記ジイソシアネートとからなる組成物に40〜100℃の温度で撹拌しながら入れられ、ポリオールに対するジイソシアネートの比率が20〜50:100重量部であることを特徴とする、請求項に記載の組成物の合成方法。
【請求項13】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物の、熱可塑性ポリウレタン中での使用。
【請求項14】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物の、PUエラストマー、接着剤、注型用樹脂、又はPUフォーム中での使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な芳香族カルボジイミド−及びポリオール−含有組成物、その合成方法、並びに、熱可塑性ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、PU接着剤、PU注型用樹脂又はPUフォーム中のエステルベースのポリオール中での安定剤及び/又は相溶化剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、ポリイソシアネートと、多価アルコールすなわちポリオールとの重付加反応により実質的に定量的に生成する。ある分子のイソシアネート基(−N=C=O)と別の分子のヒドロキシル基(−OH)との反応によりウレタン基(−NH−CO−O−)が生成することで架橋が生じる。
【0003】
ジイソシアネートとポリオールとの反応の経過は成分のモル比に依存ずる。所望の平均分子量と所望の末端基を有する中間体が得られる可能性が高い。これらの中間体はその後、後ろの連結点でジオール又はジアミンと反応することができ(鎖延長)、この場合目的とするポリウレタン又はポリウレタン−ポリウレア複合体が生成する。中間体は通常プレポリマーと呼ばれている。
【0004】
プレポリマーの製造に好適なポリオールとしては、ジオールの他、ポリエーテルエステル、又は末端ヒドロキシル基を有するポリエステル(ポリエステルポリオール)がある。
【0005】
機械的及び動的に高い耐久性のあるポリウレタンの製造のためには、ポリエステルポリオールを使用することが好ましい。
【0006】
カルボジイミドは多くの用途で、例えば、熱可塑性樹脂、ポリオール、ポリウレタン等のための加水分解安定剤として、有用であることがこれまでに見出されている。
【0007】
この目的のためには立体障害型カルボジイミドを用いることが好ましい。これに関連して特によく知られているカルボジイミドは、2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(Rhein Chemie Rheinau GmbH社のStabaxol(登録商標)I)である。
【0008】
しかし、先行技術で知られているカルボジイミドは、低温でも揮発性であるという欠点を有している。これらは熱的に不安定であり、粉末の形態を維持しにくい顕著な傾向を示し、その後に量り入れるだけのために使用前に溶かす必要がある。(特許文献1)に記載されているような別のカルボジイミドも同様に固体であり、同じ量では十分に効果が得られず、採算が合うように合成できず、及び/又は市販品として入手することができない。
【0009】
そのため、上述の欠点を有さない、新規な芳香族カルボジイミド−及びポリオール−含有組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0597382A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、カルボジイミドを液体の形態で理想的に利用することができる、新規な芳香族カルボジイミド−及びポリオール−含有組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、驚くべきことに、特定の液状単量体カルボジイミドをポリオール中で使用することによって達成された。
【0013】
したがって、本発明は、
−少なくとも1種のポリオールと、
−少なくとも1種の、好ましくは室温で液体である式(I)の単量体カルボジイミドと
【化1】
(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立にC〜Cアルキルであり、R及びRはそれぞれ独立にC〜Cアルキルである)、
を含有する組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
アルキルラジカルは直鎖及び/又は分岐であってもよい。これらは好ましくは分岐である。
【0015】
本発明の組成物で使用される式(I)のカルボジイミドは、好ましくは同じものであるR〜Rラジカルを有している。
【0016】
本発明の更に好ましい実施形態では、R〜Rラジカルはイソプロピルである。
【0017】
本発明の範囲には、前述及び後述の全ての一般的なラジカルの定義、添え字、パラメーター、及び説明が含まれ、また、お互いの好ましい範囲で述べたもの、すなわち、それぞれの範囲及び好ましい範囲の間のいかなる組み合わせも包含される。
【0018】
式(I)の化合物は貯蔵安定性があり、室温で液体であり、非常に計量し易いことを特徴とする。これらは好ましくは25℃で2000mPas未満、より好ましくは1000mPas未満の粘度を有する。
【0019】
これらのカルボジイミドは、好ましくは、触媒及び任意選択的な溶媒の存在下、40℃〜200℃の温度で、二酸化炭素の脱離を伴う式(II)
【化2】
及び
【化3】
の三置換ベンゼンイソシアネート
(式中、R、R、R及びRはそれぞれ独立にC〜Cアルキルであり、R及びRはそれぞれ独立にC〜Cアルキルである)
のカルボジイミド化によって合成することができる。
【0020】
三置換ベンゼンイソシアネートは、好ましくは2,4,6−トリイソプロピルフェニルイソシアネート、2,6−ジイソプロピル−4−エチルフェニルイソシアネート、及び2,6−ジイソプロピル−4−メチルフェニルイソシアネートである。これらの合成に必要な三置換ベンゼンアミンは、当業者に知られているように、適切なアルケン、ハロアルカン、ハロアルケンベンゼン、及び/又はハロシクロアルカンを用いたアニリンのFriedel−Craftsアルキル化によって合成することができる。
【0021】
その後にこれらをホスゲンと反応させることで、対応する三置換ベンゼンイソシアネートが得られる。
【0022】
カルボジイミド化は、好ましくはAngew.Chem.93,p.855−866(1981)、又はDE−A−11 30 594又はTetrahedron Letters 48(2007),p.6002−6004に記載されている方法によって行われる。
【0023】
本発明のある実施形態では、式(I)の化合物の合成に好ましい触媒は、強塩基又はリン化合物である。ホスホレンオキシド、ホスホリジン、又はホスホリンオキシド、及びその対応する硫化物を使用することが好ましい。3級アミン、塩基性金属化合物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物、アルコキシド又はフェノキシド、カルボン酸金属塩及び非塩基性有機金属化合物を触媒として用いることもできる。
【0024】
カルボジイミド化は、物質中でも溶媒中でも行うことができる。最初に材料中でカルボジイミド化を開始し、引き続き溶媒を添加した後に完結させることも可能である。使用される溶媒は例えばベンジン、ベンゼン、及び/又はアルキルベンゼンとすることができる。
【0025】
使用される溶媒は例えばベンジン、ベンゼン、及び/又はアルキルベンゼンとすることができる。
【0026】
好ましくは、本発明にかかる方法で使用されるカルボジイミドは用いられる前に精製される。粗生成物は蒸留によって又は抽出によって精製することができる。精製に使用される好適な溶媒は、アルコール、ケトン、エーテル、又はエステルとすることができる。
【0027】
三置換アニリンから、CSとの反応によってチオ尿素誘導体を得た後に塩基性次亜塩素酸塩溶液中で反応させてカルボジイミドを得ることにより、本発明にかかる方法で使用されるカルボジイミドを合成することもでき、あるいは、欧州特許出願公開第0597382A号明細書に記載の方法によって合成することもできる。
【0028】
本発明との関係におけるポリオールは、2000以下の、好ましくは1000〜2000の、より好ましくは500〜1000の分子量(g/mol)を好ましくは有する長鎖化合物である。
【0029】
本発明との関係における用語「ポリオール」には、長鎖ジオール及びトリオールの他、一分子当たり3個より多いヒドロキシル基を有する化合物も包含される。トリオールを使用することが特に好ましい。
【0030】
好ましいポリオールは、30〜80℃の温度で液体の形態で存在するポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルエステルポリオールである。
【0031】
ポリオールが200以下の、好ましくは20〜150の、より好ましくは50〜115のOH価を有する場合に有利である。特に好適なのは、様々なポリオールと、芳香族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸及び/又はラクトンのポリマーとの反応生成物であるポリエステルポリオールである。
【0032】
ここでは芳香族ジカルボン酸が好ましく、好適なポリエステルポリオールの合成に使用することができる。特に好ましいのはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フタル酸無水物、及びベンゼン環を有する置換ジカルボン酸化合物である。
【0033】
好ましい脂肪族ジカルボン酸は、好適なポリエステルポリオールの合成に使用できるものであり、より好ましくはセバシン酸、アジピン酸、及びグルタル酸である。
【0034】
好ましいラクトンのポリマーは、好適なポリエステルポリオールの合成に使用できるものであり、より好ましくはポリカプロラクトンである。
【0035】
ジカルボン酸と、ラクトンのポリマーは共に汎用化学品である。
【0036】
好適なポリエステルポリオールの合成に使用することができるポリオールも特に好ましく、最も好ましくはエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、及びシクロヘキサンジメタノールである。
【0037】
本発明の更に好ましい実施形態では、ポリオールはポリエーテルエステルポリオールである。
【0038】
この目的のためには、上述の様々なポリオールと、芳香族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸及び/又はラクトンのポリマー(例えばポリカプロラクトン)との反応生成物が好ましい。
【0039】
本発明との関係において使用されるポリオールは、典型的にはBayer MaterialScience AG社から商品名Baycoll(登録商標)又はDesmophen(登録商標)として入手可能な汎用化学品である。
【0040】
本発明の更なる実施形態では、組成物は少なくとも1種のジイソシアネートも更に含有する。
【0041】
好ましいジイソシアネートは芳香族及び脂肪族のジイソシアネートである。特に好ましいのはトルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルイソシアネート)、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、及び/又はヘキサメチレン1,6−ジイソシアネートであり、非常に好ましいのはトルエン2,4−ジイソシアネート及びトルエン2,6−ジイソシアネートである。
【0042】
本発明の更なる実施形態では、組成物は少なくとも1種のジアミン及び/又はジオールも更に含有する。
【0043】
鎖延長剤として使用される好適なジアミンは、2−メチルプロピル3,5−ジアミノ−4−クロロベンゾエート、ビス(4,4’−アミノ−3−クロロフェニル)メタン、3,5−ジメチルチオ−2,4−トリレンジアミン、3,5−ジメチルチオ−2,4−トリレンジアミン、3,5−ジエチル−2,4−トリレンジアミン、3,5−ジエチル−2,6−トリレンジアミン、4,4’−メチレンビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)及び1,3−プロパンジオールビス(4−アミベンゾエート)である。
【0044】
鎖の延長のために本発明との関係で使用されるジアミン又はジオールは、Rheinchemie Rheinau GmbH社から商品名Addolink(登録商標)として入手可能な汎用化学品である。
【0045】
鎖の延長に好適なジオールは、モル質量が200g/mol未満の短鎖ジオールであり、好ましくはブタン−1,4−ジオール又はヘキサン−1,6−ジオール及び/又はヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)である。
【0046】
本発明との関係において使用されるジオールは、特にはRhein Chemie Rheinau GmbH社から商品名Addolink(登録商標)として入手可能な汎用化学品である。
【0047】
ポリオールに対するカルボジイミドの比率は、ポリオール100重量部当たり好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは1〜3重量部である。
【0048】
ポリオールに対するジイソシアネートの比率は、好ましくは20〜50:100重量部、好ましくは25〜35:100重量部である。
【0049】
組成物がポリオールとカルボジイミドとジイソシアネートの他に、少なくとも1種のジアミン及び/又はジオールを更に含有する場合、ジアミン及び/又はジオールの量は、組成物基準で5〜30重量%である。
【0050】
組成物がポリオールとカルボジイミドとジイソシアネートの他に、少なくとも1種の触媒を更に含有する場合、触媒の量は、組成物基準で0.01〜1重量%である。
【0051】
使用される触媒は好ましくはジブチルスズジラウレート又はトリエチレンジアミンのプロピレングリコール液である。
【0052】
本発明との関係において使用される触媒は、Rhein Chemie Rheinau GmbH社から商品名Addocat(登録商標)として入手可能な汎用化学品である。
【0053】
本発明は、更に、ポリオールが予め入れられたところに、式(I)の液体カルボジイミド又は式(I)のカルボジイミドの混合物が撹拌されながら入れられる、本発明の組成物の合成も提供する。
【0054】
本発明の混合物がジイソシアネートを更に含有する場合、これは80〜130℃の温度で、ポリオールと少なくとも1種の式(I)のカルボジイミドとからなる組成物の中に撹拌しながら入れられる。重付加反応が進行するにつれて生成するポリマーも同様に本発明の主題の一部をなす。
【0055】
本発明は、更に、少なくとも1種のポリオール及び少なくとも1種の式(I)のカルボジイミドを、80〜130℃の温度でジイソシアネートと反応させることで得られるポリマーも提供する。
【0056】
ポリオールに対するジイソシアネートの比率は、好ましくは20〜50:100重量部、より好ましくは25〜35:100重量部である。
【0057】
好ましいジイソシアネートは上述の芳香族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートである。特に好ましいのはトルエン2,4−ジイソシアネート、トルエン2,6−ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルイソシアネート)、ナフタレン1,5−ジイソシアネート、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート及び/又はヘキサメチレン1,6−ジイソシアネートであり、トルエン2,4−ジイソシアネート及びトルエン2,6−ジイソシアネートが非常に好ましい。
【0058】
本発明の混合物がジイソシアネートの他に、アミン及び/又はジオールも更に含有する場合、これは40〜100℃の温度で、ポリオールと少なくとも1種の式(I)のカルボジイミドとジイソシアネートとからなる組成物の中に撹拌しながら入れられる。
【0059】
本発明の混合物がジイソシアネート、アミン及び/又はジオールの他に、少なくとも1種の触媒も更に含有する場合、これは最初にジオールと予め混合され、40〜100℃の温度で、ポリオールと少なくとも1種の式(I)のカルボジイミドとジイソシアネートとからなる組成物の中に撹拌しながら入れられる。
【0060】
あるいは、本発明の組成物の合成は、「ワンショット」法によって行うこともできる。例えばG.Oertels,Kunststoff Handbuch 7[Plastics Handbook 7],p.26に記載されているこの方法は、本発明のカルボジイミドを用いて同様に行うことができる。
【0061】
本発明は、更に、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリウレタンエラストマー、PU接着剤、PU注型用樹脂、又はPUフォーム中での、本発明の組成物の加水分解劣化防止剤としての使用も提供する。
【0062】
以下の実施例は本発明を説明する役割を果たすものであるが、本発明を限定する効果を有するものではない。
【実施例】
【0063】
Stabaxol(登録商標) P200という商品名で入手可能な、テトラメチルキシリレンジイソシアネートをベースとするポリカルボジイミドと、Rhein Chemie Rheinau GmbH社からStabaxol(登録商標) Iという商品名で入手可能な固体の単量体カルボジイミド(ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドについて、下記式のカルボジイミド(CDI I)
【化4】
(式中、R〜Rラジカルはイソプロピルである)
との比較試験を、Bayer MaterialScience AG社のDesmophen(登録商標) 2001 KSタイプであるポリエステルポリオール中で行った。
【0064】
本発明の組成物で使用されるカルボジイミドの合成
焼き出し及び窒素充填を行った500mlのフランジ容器に、窒素を流した状態で400gの2,4,6−トリイソプロピルフェニルイソシアネートを最初に入れ、140℃に加熱した。400mgの1−メチルホスホレンオキシドを添加した後、反応混合物を5時間以内に160℃に加熱した。その後、NCO含量が<1%(変換率>95%に相当)になるまで160℃で反応を継続した。このようにして得られた粗生成物を蒸留によって精製した。得られた生成物は25℃で700mPasの粘度を有する淡黄色の液体であった。
【0065】
熱安定性
熱安定性を調べるために、Mettler Toledo社のTGA分析ユニット(TGA/SDTA851)を用いて熱重量分析を行った。この目的のため、それぞれの試料10〜15mgを、昇温30〜600℃、加熱速度10℃/minで、窒素下で分析した。5%重量が減少した温度(℃)を測定した[T(5%)]。
【0066】
結果は表1に示されている。
【0067】
【表1】
ポリエステルポリオール中の酸価の減少
【0068】
公知のように、立体障害型カルボジイミドをベースとする加水分解安定剤の液体ポリエステルポリオール中での効果は、酸化の減少によって試験することができる。
【0069】
本発明の組成物の酸価の減少を、Bayer MaterialScience AG社のDesmophen(登録商標) 2001 KSであるポリエステルポリオール中で、CDI Iを用いて上述のStabaxol I及びStabaxol P200と比較して試験した。
【0070】
この目的のため、上述のカルボジイミド1重量%を、測定した酸価が約0.9mgKOH/gであるポリエステルポリオール中に80℃で撹拌しながら入れ、酸価を一定の間隔で測定した。
【0071】
結果は表2に示されている。
【0072】
【表2】
【0073】
この結果は、本発明のポリエステルポリオール/カルボジイミド組成物中では、Stabaxol(登録商標) I又はStabaxol(登録商標) P200を含有する組成物中よりも、非常に早く驚くほど酸が分解することを示している。それと同時に、本発明の組成物中のカルボジイミドが非常に優れた熱安定性を有しており、これはこれまで反応性がより低いポリカルボジイミドの場合でしか知られていなかったものである。