(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174688
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】エステル基を有するポリマーを安定化させるための方法
(51)【国際特許分類】
C08L 67/00 20060101AFI20170724BHJP
C08K 5/29 20060101ALI20170724BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
C08L67/00
C08K5/29
C08J3/20CEZ
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-515427(P2015-515427)
(86)(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公表番号】特表2015-518911(P2015-518911A)
(43)【公表日】2015年7月6日
(86)【国際出願番号】EP2013056158
(87)【国際公開番号】WO2013182330
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年2月12日
(31)【優先権主張番号】12170771.5
(32)【優先日】2012年6月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511206984
【氏名又は名称】ライン・ケミー・ライノー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム・ラウファー
(72)【発明者】
【氏名】アルミン・エッカート
【審査官】
久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−057155(JP,A)
【文献】
特公昭46−008590(JP,B1)
【文献】
米国特許第03193523(US,A)
【文献】
特開平06−192206(JP,A)
【文献】
特開2004−019067(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102816087(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 5/00−5/59
C08J 3/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル基を有するポリマーを安定化させるための方法であって、それらを調製および/または加工するための連続式またはバッチ式のプロセスにおいて、式(I):
【化1】
[式中、R
1、R
2、R
4、およびR
6は、それぞれ独立に、C
3〜C
6−アルキルであり、
R
3およびR
5は、それぞれ独立に、C
1〜C
3−アルキルである]
のカルボジイミドを、
5〜40℃の温度にて液状の形態で添加(液状で配合)することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記R1〜R6基が分子内で同一であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記R1〜R6基がイソプロピルであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記液状のカルボジイミドを、10〜35℃の温度で添加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマーが熱可塑性ポリウレタン(TPU)であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル基を有するポリマーを安定化させるための方法に関し、この方法において、それらの調製および/または加工の過程において、モノマー性の芳香族カルボジイミドが、液状で配合された(liquid−dosed)形態で添加される。
【背景技術】
【0002】
カルボジイミドは、各種の用途において、たとえば熱可塑性プラスチック、ポリオール、ポリウレタンなどのための加水分解安定剤として有用であることが見いだされている。
【0003】
この目的のためには、立体障害のあるカルボジイミドを使用することが好ましい。これに関連して特によく知られているカルボジイミドは、2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(Stabaxol(登録商標)I、Rhein Chemie Rheinau GmbH製)である。
【0004】
しかし、この目的のための従来技術において知られているカルボジイミドは、低温においてさえも揮発性であるという欠点を有している。それらは、熱的に不安定であり、粉体の形態ではブロッキングを極めて起こしやすい傾向がある。安定剤としてポリマー系で使用する場合、それらが自由流動性を有さないために、適用する前にまず溶融させねばならず、それによって、やっと計量仕込みができるという欠点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、この目的のために使用することが可能であり、かつ上述の欠点を有していない、立体障害のあるカルボジイミドが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の目的は、エステル基を有するポリマーを安定化させるための方法であって、その安定剤が、熱的に安定で、貯蔵安定性があり、室温においてさえも易流動性の液体として存在し、容易に調製することが可能であり、そして液体の形態で適用することが可能である方法を提供することであった。
【0007】
驚くべきことには、特定のモノマー性カルボジイミドを使用することによって、この目的が達成された。
【0008】
したがって、本発明は、エステル基を有するポリマーを安定化させるための方法を提供し、この方法において、それらを調製および/または加工するための連続式またはバッチ式のプロセスにおいて、式(I):
【化1】
[式中、R
1、R
2、R
4、およびR
6は、それぞれ独立に、C
3〜C
6−アルキルであり、
ならびに、R
3およびR
5は、それぞれ独立に、C
1〜C
3−アルキルである]
のカルボジイミドを、液状で配合された形態で添加する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
それらのC
3〜C
6−アルキル基は、直鎖状であっても、および/または分岐状であってもよい。それらが分岐状であれば、好ましい。
【0010】
本発明によるプロセスにおいて使用される式(I)のカルボジイミドにおいては、そのR
1〜R
6の基が、同一であることが好ましい。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、そのR
1〜R
6の基がイソプロピルである。
【0012】
これらのカルボジイミドは、室温では液状であり、25℃で、好ましくは2000mPas未満、より好ましくは1000mPas未満の粘度を有している。
【0013】
本発明の範囲には、前述または後述の、すべての一般的な基、定義、指数、パラメーター、および説明、ならびに、好ましい範囲と記述されているそれらが、相互に、すなわちそれぞれの範囲および好ましい範囲の間のすべての組合せで含まれている。
【0014】
式(I)の化合物は、貯蔵安定性があり、室温では液状であり、そして優れた計量性を特徴としている。
【0015】
これらのカルボジイミドは、式(II):
【化2】
および式(III):
【化3】
[式中、R
1、R
2、R
4、およびR
6は、それぞれ独立に、C
3〜C
6−アルキルであり、
R
3およびR
5は、それぞれ独立に、C
1〜C
3−アルキルである]
の三置換されたベンゼンイソシアネートを、触媒および場合によっては溶媒の存在下で、40℃〜200℃の温度で二酸化炭素を脱離させることによってカルボジイミド化させることにより調製することができる。
【0016】
三置換されたベンゼンイソシアネートは、2,4,6−トリイソプロピルフェニルイソシアネート、2,6−ジイソプロピル−4−エチルフェニルイソシアネート、および2,6−ジイソプロピル−4−メチルフェニルイソシアネートであることが好ましい。これらを調製するために必要な三置換されたベンゼンアミンは、当業者には知られているように、アニリンと、適切なアルケン、ハロアルカン、ハロアルケンベンゼン、および/またはハロシクロアルカンとのフリーデル・クラフツアルキル化反応によって調製することができる。
【0017】
次いで、これらをホスゲンと反応させると、対応する三置換されたベンゼンイソシアネートが得られる。
【0018】
カルボジイミド化は、Angew.Chem.,93,p.855〜866(1981)、または独国特許出願第A−11 30 594号明細書、またはTetrahedron Letters,48(2007),p.6002〜6004に記載された方法によって実施することが好ましい。
【0019】
式(I)の化合物を調製するための好ましい触媒は、本発明の一つの実施態様において、強塩基またはリン化合物である。ホスホレンオキシド、ホスホリジン、またはホスホリンオキシド、およびそれらに対応するスルフィドを使用することが好ましい。触媒としては、三級アミン、塩基性金属化合物、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物または水酸化物、アルコキシドまたはフェノキシド、金属カルボキシレート、および非塩基性有機金属化合物を使用することもまた可能である。
【0020】
カルボジイミド化反応は、材料のまま(in substance)、あるいは溶媒中のいずれかで実施することができる。同様に、最初に材料のままでカルボジイミド化を開始させ、次いで溶媒を添加して反応を完了させることも可能である。使用する溶媒は、たとえばベンジン、ベンゼン、および/またはアルキルベンゼンなどであってよい。
【0021】
本発明によるプロセスにおいて使用するカルボジイミドは、精製してから使用することが好ましい。粗生成物を、蒸留または抽出の手段によって精製することができる。精製するための使用に適した溶媒は、たとえば、アルコール、ケトン、エーテル、またはエステルである。
【0022】
本発明によるプロセスにおいて使用するためのカルボジイミドは、三置換されたアニリンから、CS
2と反応させてチオ尿素誘導体を得、次いで塩基性の次亜塩素酸塩溶液中で反応させてカルボジイミドを得る方法によって、あるいは欧州特許出願公開第0597382A号明細書に記載された方法によって、調製することも同様に可能である。
【0023】
本発明によるプロセスにおける液状配合は、バッチ式または連続式、好ましくは連続式の加工機械で実施するが、そのような機械としてはたとえば、一軸、二軸、および多軸の押出機、連続式コニーダー(Bussタイプ)および/またはバッチ式ニーダー、たとえばBanburyタイプ、ならびに、ポリマー産業において通常使用されるその他のユニットなどが挙げられる。液状配合は、エステル基を有するポリマーの調製の開始時またはその途中、あるいは、加工、たとえばモノフィラメントの製造またはポリマーペレットの製造の開始時またはその途中に、実施することができる。
【0024】
本発明の文脈においては、「液状で配合する」という用語は、上述の式(I)のカルボジイミドを、連続式またはバッチ式の加工機械内に、重力手段または容積計量の手段によって、液状の形態で計量仕込みすることを意味していると理解されたい。これを可能とするためには、本発明のカルボジイミドが、特に、ポリマーの加工で通常用いられる周囲温度での配合の際に、液状、かつ低粘度でなければならない。加工操作において液状配合するために、熱可塑性プラスチックのコンパウンディング技術において通常である連続式の配合ユニットを使用する。それらは、加熱可能であってもよい。それらが、加熱可能でないことが好ましい。
【0025】
式(I)のカルボジイミドと、他の、立体的であることが要求される(sterically demanding)ポリマー性および/またはモノマー性のカルボジイミド、たとえばテトラメチルキシリレンジイソシアネートをベースとするポリマー性のカルボジイミドおよび/またはビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミドと、を組み合わせた液状混合物を使用することも同様に可能である。
【0026】
本発明の文脈において「連続式のプロセス」という用語は、液状のカルボジイミドも含めたすべての配合成分が、計量添加および加工におけるいかなる時点においても、その配合で指示された質量比を有していることを意味している。
【0027】
本発明の文脈において「バッチ式のプロセス」という用語は、液状のカルボジイミドも含めたすべての配合成分が、計量添加の最後において、その配合で指示された質量比を有していることを意味している。
【0028】
カルボジイミドの質量比は、後ほどの用途に依存するが、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%、最も好ましくは1〜2重量%である。
【0029】
カルボジイミドの液状配合は、好ましくは5〜120℃、より好ましくは5〜40℃、より好ましくは10〜35℃の温度で実施される。
【0030】
エステル基を有するポリマーは、好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)である。
【0031】
それらは、市販の製品であり、たとえばBayer MaterialScience AGから入手することができる。
【0032】
エステル基を有するポリマーの調製およびそれらの加工の例には、好ましくは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)およびPUエラストマーが含まれる。「PUエラストマー」という用語には、ポリウレタンをベースとした、高温注型および低温注型のエラストマーが含まれる。TPUエラストマー、さらにはPUエラストマーは、加工中の重付加反応によって調製される。この目的のためには、液状および/または固体状の形態のすべての原料および添加剤を、連続式ではコンパウンディング押出機に同時に、あるいはバッチ式では撹拌反応器に供給する。コンパウンディング押出機では、混合および重付加が進行して、製品である、付加された(additized)ポリマー性熱可塑性TPUが得られる。
【0033】
連続式計量仕込みユニットを用いて、コンパウンディング押出機内で溶融されたTPU中に、液状のカルボジイミドを連続的に計量添加することによって、重付加を完了させることによってのみ安定化されるTPUが、さらに好ましい。
【0034】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであるが、何ら限定的効果を有さない。
【実施例】
【0035】
実施例
Bayer MaterialScience AG製のDesmophen(登録商標)2001KSタイプのポリエステルポリオール中で、テトラメチルキシリレンジイソシアネートをベースとする液状のポリマー性のカルボジイミド(Stabaxol(登録商標)P200の名称で入手可能)およびモノマー性のカルボジイミド(ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド)(Rhein Chemie Rheinau GmbHから、Stabaxol(登録商標)Iの名称で入手可能)を、本発明の次式:
【化4】
[式中、R
1〜R
6基はイソプロピルである]
の液状のモノマー性のカルボジイミド(CDI I)と比較、試験した。
【0036】
本発明に従って使用したカルボジイミドの調製
最初に、空焼きをし(baked−out)、窒素充填した500mLのフランジ式容器に、窒素気流下に400gの2,4,6−トリイソプロピルフェニルイソシアネートを仕込み、140℃に加熱した。400mgの1−メチルホスホリンオキシドを添加してから、その反応混合物を、5時間以内に160℃まで加熱した。その後で、NCO含量が1%未満(95%を超える転化率に相当)に達するまで、160℃で反応を続けた。そのようにして得られた粗反応生成物を、蒸留の手段により精製した。得られた反応生成物は、淡黄色の液状物で、25℃で700mPasの粘度を有していた。
【0037】
熱安定性
熱安定性を検討するために、Mettler ToledoからのTGA分析ユニット(TGA851)を用いて、熱重量分析を実施した。この目的のために、それぞれの場合において、10〜15mgのサンプルを、窒素下で、30℃から600℃まで、10℃/分の加熱速度で昇温させて分析した。5%の重量損失に達した温度(℃)を評価した[T(5%)]。
【0038】
それらの結果を、表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
ポリエステルポリオールにおける酸価の低下
知られているように、液状のポリエステルポリオール中の立体障害のあるカルボジイミドに基づく加水分解安定剤の効果を、酸分解の手段によって試験することができる。
【0041】
ポリエステルポリオールであるDesmophen(登録商標)2001KS(Bayer MaterialScience AG製)中における酸価の低下を、CDI Iを使用し、上述したStabaxol(登録商標)IおよびStabaxol(登録商標)P200と比較して、試験した。
【0042】
この目的のためには、80℃で、1重量%の上述したカルボジイミドを、約0.9mgKOH/gの測定酸価を有するポリエステルポリオールの中に混ぜ込み、一定時間ごとに酸価を測定した。
【0043】
それらの結果を、表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表1および2の結果から、液状のモノマー性のカルボジイミドを使用した本発明による方法は、取り扱いの面で大きな利点を有するとともに、酸価が極めて迅速に低下すると同時に極めて良好な熱安定性も有していることがわかる。