【文献】
Journal of Organometallic Chemistry,1994年,Vol.480,P.177-184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リガンドが、ビスホスファイト、ジオルガノホスファイト、またはトリオルガノホスファイトのうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【技術分野】
【0002】
本発明は、CO、H
2、および少なくとも1つのオレフィンが、触媒の存在下において、少なくとも1つのアルデヒド生成物を形成するのに十分なヒドロホルミル化条件下で接触させられるヒドロホルミル化方法に関する。
【0003】
アルデヒドは、ロジウム−オルガノホスファイトリガンド錯体触媒の存在下で、オレフィン性不飽和化合物を一酸化炭素および水素と反応させることによって生成され得ることが当該技術分野において周知である。このヒドロホルミル化反応方法の生成物は、反応方法に応じて特定のアルデヒド誘導体を含み得る。アルデヒドの誘導体には、アルコール、酸、およびポリオールが含まれる。かかるアルデヒドは実用性が広く、例えば、脂肪族アルコールへの水素化、可塑剤を生成するためのアルドール縮合、および脂肪族酸を生成するための酸化のための中間体として有用である。
【0004】
好ましいヒドロホルミル化方法は、例えば、米国特許第4,148,830号、同第4,717,775号、および同第4,769,498号で開示されるものなどの触媒溶液の連続的なヒドロホルミル化および再循環に関する。しかしながら、かかる液体再循環ヒドロホルミル化方法に付随する利益にもかかわらず、触媒およびオルガノホスファイトリガンドの安定化は、依然として当該技術分野の主要な懸念である。触媒安定性は、いかなる触媒の使用においても主要な問題である。非常に高額なロジウム触媒の望ましくない反応に起因する触媒または触媒活性の喪失は、所望のアルデヒドの生成に害を及ぼし得る。同様に、ヒドロホルミル化方法中に用いられるオルガノホスファイトリガンドの分解は、ロジウム触媒の活性を低下させ得る被毒オルガノホスファイト化合物または阻害物質または酸性副生成物の形成を引き起こし得る。その上、触媒生産性が低下すると、アルデヒド生成費用が増加する。
【0005】
当業者は、オルガノホスファイトリガンドの加水分解不安定性が、ヒドロホルミル化方法に触媒作用を及ぼすロジウム−オルガノホスファイトリガンド錯体における、オルガノホスファイトリガンド分解および触媒非活性化の主要要因となることを認識している。全てのオルガノホスファイトは、ある程度加水分解を起こしやすく、オルガノホスファイトの加水分解の速度は、一般的に、オルガノホスファイトの立体化学的性質に依存する。同時に、P−OR部分が交換される類似の加アルコール分解反応もまた、系に存在するホスファイトの性質を著しく変化させ得る。一般的に、リン原子周辺の立体的な環境がより嵩高いほど、加水分解速度は遅くなる。その上、全てのかかる加水分解反応は、加水分解反応に触媒作用を及ぼすリン酸性化合物を一定に生成する。例えば、三級オルガノホスファイトの加水分解はホスホン酸ジエステルを生成し、これはホスホン酸モノエステルへと加水分解可能であり、次いでこれは、H
3PO
3、つまり強酸へと加水分解可能である。その上、ホスホン酸ジエステルとアルデヒドとの間、または特定のオルガノホスファイトリガンドとアルデヒドとの間の反応などの副反応の補助的な生成物の加水分解は、望ましくない強アルデヒド酸、例えば、n−C
3H
7CH(OH)P(O)(OH)
2の生成を引き起こし得る。
【0006】
あまり加水分解性でない非常に望ましい立体障害型オルガノビスホスファイトでさえ、アルデヒド生成物と反応して、被毒オルガノホスファイト、例えば、オルガノモノホスファイトを形成し得、これは触媒阻害物質であるだけでなく、加水分解、ならびに例えば、米国特許第5,288,918号および同第5,364,950号で示されるようなアルデヒド酸副生成物、例えば、ヒドロキシアルキルホスホン酸の形成を非常に受けやすい。さらに、オルガノホスファイトリガンドの加水分解は、リン酸性化合物、例えば、H
3PO
3、アルデヒド酸、例えば、ヒドロキシアルキルホスホン酸、H
3PO
4などの生成の点から見て、自己触媒的であると考えることができ、検査されないままである場合、連続的な液体再循環ヒドロホルミル化方法の触媒系がさらに酸性化するであろう。したがって、やがて、許容できない量のかかるリン酸性材料の最終的な蓄積が、存在するオルガノホスファイトの全滅を生じさせ得、それ故、例えば、反応装置の壁への沈殿および/または付着のため、ヒドロホルミル化触媒を完全に無効(非活性化)にさせ、高価なロジウム金属の損失を起こしやすくさせる。
【0007】
米国特許第5,741,942号(第1欄)および米国特許第5,288,918号(第24欄)は、Rh−ホスファイト系ヒドロホルミル化の主要な問題の1つが、元のホスファイトの分解による代替的なホスファイトの形成であることを教示する。‘918で示される「被毒ホスファイト」構造は、活性Rh触媒と結合することができる多少立体障害型であるホスファイトを伴い、それを、それがさらに分解し、ロジウムをさらに遊離するような時間まで、所望のヒドロホルミル化反応へと不活性化させる。‘918で示されるロジウム−触媒作用を及ぼす反応またはホスファイト(酸性−または塩基性−触媒作用を及ぼし得る)の単純な加アルコール分解を含む、この「被毒ホスファイト」を生成するためのいくつかの既知の方法がある。望ましいホスファイトリガンドが、立体的に密集しているため、これらの反応は、ヒドロホルミル化反応装置中に存在する条件下で、緩徐になる傾向にある。著しい量の任意の被毒ホスファイトの存在は、プラント効率を低下させる点において、所望でない。
【0008】
多数の方法が、触媒および/またはオルガノホスファイトリガンドの安定性を維持し、それ故被毒ホスファイトの形成を最小限におさえるために提案されてきた。例えば、米国特許第5,288,918号は、水および/または弱酸性化合物などの触媒活性を向上させる添加剤を用いることを提案する。米国特許第5,364,950号は、オルガノホスファイトリガンドを安定化するためにエポキシドを添加することを提案する。酸性度の調節などの他の要因は、「被毒ホスファイト」の形成を最小限におさえるか、または形成された任意のものを選択的に分解するために重要である。米国特許第5,741,944号は、少なくとも一部の酸を、それらが形成されるときに、除去するために随意のアミン添加剤を伴う水抽出器の使用を教示し、米国特許第5,763,677号は、酸性種を除去するためのイオン交換樹脂の使用を教示する。米国特許第4,774,361号は、溶液からのロジウム沈殿を防止、および/または低減させるために、アミド、ケトン、カルバミン酸塩、尿素、および炭酸ラジカルからなる部類から選択される極性官能基を含む有機ポリマーの存在下で、触媒からアルデヒド生成物を回収するのに用いられる気化分離を実施することを提案する。
【0009】
アルコール、特に、メタノールなどの一級アルコールの存在下で、ホスファイトが分解することも既知である。米国特許第2010/0267991号(第4欄+)は、ホスファイトの加アルコール分解の問題を開示し、加水分解/加アルコール分解反応を最小限におさえるために、リンについての立体的嵩高さの重要性を強調する。米国特許第6,307,110号(第23欄55行目)は、一級アルコールを、ホスファイト系ヒドロホルミル化反応で使用することを避けることを教示する。メタノールは、立体障害の不足のため、最も反応性の高い一級アルコールである。メタノールは、ホスファイトと反応して、実質的にあまり立体的に密集しないので、有意なヒドロホルミル化触媒阻害物質である可能性の高いメトキシ−ホスファイト誘導体を生成し得る。米国特許第3,527,809号は、フェノキシからメトキシ系ホスファイトへの移行は、300超でΔHNPを減少させ、メトキシ系ホスファイトへの悪影響を強めることを教示する。立体的密集(またはリガンド円錐角)の影響もまた、米国特許第5,741,945号で、考察され、そこで嵩高くないモノホスファイトリガンドが、ヒドロホルミル化反応を妨害するCOと張り合うので、使用され得ないことを教示する。
【0010】
該参考文献の教示の価値にもかかわらず、ロジウム触媒および用いられるオルガノホスファイトリガンドを安定化するための代替的な方法、できれば、より良好で、かつより効率的な手段の探求が、当該技術分野において進行中の活動であり続ける。石炭から化学物質への技術における近年の進歩が、ヒドロホルミル化技術への新たな挑戦を提示した。アルデヒド生成物を生成するのに使用されるオレフィンは、伝統的に、石油供給原料を分解することによって、すなわち、低分子量の炭化水素を、高分子量の炭化水素から生成することによって、作製されてきた。オレフィンの新たな代替的な供給源は、酸素化からオレフィンへの単位(例えば、米国特許第5,914,433号のメタノールからオレフィンへの単位)における酸素化転換方法によってである。メタノールは、オレフィンの商業規模の調製において、例えば、上述のメタノールからオレフィンへの方法、ならびに抽残液ストリームからのイソブチレン除去などの精製スキームなどにおいて(MTBE、ガソリン中に使用される添加剤を生成するか、またはイソブチレンをポリイソブチレンへと再生するために)、使用される。伝統的な炭化水素系供給源からの残留メタノールは、非常に低いレベル、例えば、<100ppmで維持されるが、オレフィンの新たな供給源は、伝統的な供給源よりも実質的に高いレベルを有し得る。
【0011】
工業用オレフィン供給材料は、硫黄などの不純物を含み、オレフィンストリームからの望ましくない副生成物の除去は、非常に困難であり得る。例えば、硫黄、窒素、および塩素の除去またはメチル三級ブチルエーテル(MTBE)または三級アミルメチルエーテル(TAME)単位から回収されたC
4またはC
5抽残液からのジメチルエーテル(DME)の除去、または酸素化物からオレフィンへの単位からのジメチルエーテルを含む酸素化副生成物の除去は、著しい量のオレフィン供給材料の前処理を必要とし得る。
【0012】
合成ガスは、COおよびH
2を含む広く使用される工業用ガスである。石炭は、プラントで、石炭から化学物質への技術を使用して合成ガスに転換される。合成ガスは、メタノールおよび様々なオレフィンなどの他の化学物質へと転換される。合成ガスおよびオレフィンは、他の下流方法のために使用され、吹き返し汚染のためまたはこれらの他の方法からのベント再循環のため、様々なレベルのメタノールを含み得る。
【0013】
高レベルのメタノールを含む供給材料は、前に観察されたものより実質的に高いレベルのメタノールを含む触媒溶液を生成し得るので、重度の反応阻害を示し得るメタノール系の立体的非障害型加アルコール分解生成物を生成する可能性が高くなる。
【0014】
水素化リンの存在下でのヒドロホルミル化中のアルコールの存在は、既知である。欧州特許第420510号は、アルコールおよび水素化リンリガンドの存在下でのオレフィンのヒドロホルミル化を報告する。しかしながら、水素化リンは、それらが加水分解/加アルコール分解反応を受けない点においてホスファイトと異なる。米国特許第4,148,830号は、アルデヒド縮合付加物が、長期の連続運用において、水素化リンおよびホスファイト系ロジウムヒドロホルミル化のための溶媒として使用され得ることを教示する。これらの縮合付加物は、嵩高いアルコール、エーテル、またはエステルである。
【0015】
Diebolt et al.,Advanced Synthesis&Catalysis,354,Issue4,March2012,pp.670−677、およびAli et al.,J.Mol.Cat.A,2005,230,9は、ホスファイトが、バッチ方式運用で、メタノールの存在下で、使用され得るが、アルデヒドではなくアセタールを生成することを示す。リガンドの安定性は、考察されず、実際の所、任意のリンリガンドの不在下で、方法は良く機能した。
【0016】
国際公開第2005/093010号は、幅広い種類の触媒を使用する、メタノール(数ある中でも)を含む最大10%の酸素化汚染物質を含むプロピレンのヒドロホルミル化を開示する。触媒安定性または長期間の連続的な運用データは提示されない。
【0017】
リガンド加水分解は、常に懸念であるので、ホスファイトリガンドの加水分解対加アルコール分解比率の均衡は、メタノールなどの高活性アルコールの存在下では報告されていない。加えて、対応するメトキシ系被毒ホスファイトの加水分解の相対速度は、報告されていない。‘918で引用される反応は、ブタノールに基づくが、メタノールに関する類似の反応の報告はなく、メトキシ系ホスファイト阻害物質の蓄積の可能性も、それらを除去するいかなる手段に関する情報もない。したがって、汚染物質を除去するためにオレフィン供給材料の広範囲に渡る前処理を必要としないオレフィンヒドロホルミル化方法を見出すことが望ましいであろう。
【0018】
より多量のメタノールを含む供給原料を許容し得るヒドロホルミル化方法を有することが望ましくもある。例えば、オレフィンおよび/または石炭から化学物質へのプラントからの合成ガス、例えば、メタノールで汚染されている供給材料ストリームを使用し得るヒドロホルミル化方法が望ましいであろう、なぜならこれは供給材料成分から、追加の資本経費および処理費用を必要とする残留メタノールの除去をするための広範囲に渡る方法の必要性を防ぎ得るからである。
【発明の概要】
【0019】
本発明の方法は、
(a)金属加水分解性リンリガンド錯体触媒、および随意に遊離加水分解性リンリガンドの存在下において、反応流体中でアルデヒド生成物を生成するのに十分な反応条件下で、オレフィン、水素、およびCOを含む反応物質を、反応領域内で接触させることであって、但し、該反応物質のうちの少なくとも1つが、メタノールを含み、該反応領域に進入するより前の該反応物質中のメタノールの総量が、メタノールおよび該反応物質の総重量の200ppm〜10パーセントであることを条件とする、接触させることと、
(b)該反応領域から前記反応流体の少なくとも一部を分離領域へと除去し、該分離領域内で該反応流体を分離し、ヒドロホルミル化反応生成物ストリームおよび触媒再循環ストリームを生成することと、
(c)1つ以上のリン酸性化合物の少なくともいくらかの量を中和し、該生成物ストリームから除去するのに十分な条件下で、該触媒再循環ストリームの少なくとも一部を水性緩衝溶液で処理することと、を含む、ヒドロホルミル化方法である。
【0020】
驚くべきことに、触媒は、これらの高量のメタノールの存在下でさえ、実質的に非活性化しない。
【0021】
本明細書の元素周期表および様々な群の全ての参照は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,72nd Ed.(1991−1992)CRC Press,at pageI−10で出版されたバージョンである。
【0022】
その反対が述べられるか、または文脈から暗示されない限り、全ての部および百分率は、重量に基づき、全ての試験方法は、本出願の出願日現在のものである。米国特許実務の目的のため、いかなる参照特許の内容、特許出願、または公開が、特に定義(特に本開示で提供されるいかなる定義とも矛盾しない範囲で)および当該技術分野における一般知識の開示に対するそれらの全てにおいて参照によって組み込まれる(またはその同等物の米国版が参照により確かに組み込まれる)。
【0023】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」、および「1つ以上の」は、交換可能に使用される。用語「含有する(comprise)」、「含む(include)」、およびそれらの変化形は、これらの用語が説明および特許請求項に現れる場合に、限定的な意味を有しない。したがって、例えば、「1つの(a)」疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物は、組成物が、「1つ以上の」疎水性ポリマーの粒子を含むという意味に解釈され得る。
【0024】
また本明細書において、終点による数値範囲の列挙は、その範囲において包含される全ての数字を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。本発明の目的のため、当業者が、数値範囲がその範囲において含まれる全ての潜在的な部分範囲を含み、支持することを意図することを理解し得ることと一致することを理解されたい。例えば、1〜100の範囲は、1.01〜100、1〜99.99、1.01〜99.99、40〜60、1〜55などを伝えることを意図する。また、本明細書において、特許請求項におけるかかる列挙を含む数値範囲および/または数値の列挙は、用語「約」を含むように解釈され得る。かかる例において、用語「約」は、本明細書で列挙されるものと実質的に同様である数値範囲および/または数値を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「ppmw」は、重量による百万分率を意味する。
【0026】
本発明の目的のため、用語「炭化水素」は、少なくとも1つの水素および1つの炭素原子を有する全ての許容可能な化合物を含むことを意図する。かかる許容可能な化合物はまた、1つ以上のヘテロ原子を有し得る。広い態様において、許容可能な炭化水素は、置換または非置換であり得る非環式(ヘテロ原子を伴う、または伴わない)および環式の、分枝状および非分枝状の、炭素環式およびヘテロ環式の、芳香族および非芳香族の有機化合物を含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「置換」は、特筆のない限り有機化合物の全ての許容可能な置換基を含むことを意図する。広い態様において、許容可能な置換基は、有機化合物の非環式および環式、分枝状および非分枝状、炭素環式およびヘテロ環式、芳香族および非芳香族置換基を含む。例示的な置換基は、例えば、炭素の数が1〜20個以上、好ましくは、1〜12個の範囲であり得る、アルキル、アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、ならびにヒドロキシ、ハロ、およびアミノを含む。許容可能な置換基は、適切な有機化合物の1つ以上のものおよび同様のものまたは異なるものであり得る。本発明は、有機化合物の許容可能な置換基によるいかなる方式においても制限されないことを意図する。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロホルミル化」は、1つ以上の置換または非置換オレフィン化合物または1つ以上の置換または非置換オレフィン化合物を含む反応混合物を、1つ以上の置換または非置換アルデヒドまたは1つ以上の置換または非置換アルデヒドを含む反応混合物へと転換することを伴う全ての許容可能な不斉および不斉でないヒドロホルミル化方法を含むが、これに限定されないことを意図する。
【0029】
用語「反応流体」、「反応媒体」、および「触媒溶液」は、本明細書で交換可能に使用され、(a)金属−オルガノリンリガンド錯体触媒、(b)遊離オルガノリンリガンド、(c)反応において形成されるアルデヒド生成物、(d)未反応反応物質、(e)該金属−オルガノリンリガンド錯体触媒および該遊離オルガノリンリガンドのための溶媒、ならびに、随意に(f)反応において形成される1つ以上のリン酸性化合物(均質または不均質であり得、これらの化合物が、処理機器表面に付着するものを含む)を含有する混合物を含み得るが、これらに限定されない。反応流体は、(a)反応領域中の流体、(b)分離領域へ行く途中の流体ストリーム、(c)分離領域中の流体、(d)再循環ストリーム、(e)反応領域または分離領域から取り出された流体、(f)水性緩衝溶液で処理された取り出された流体、(g)反応領域または分離領域に返還された処理された流体、(h)外部冷却器中の流体、ならびに(i)リガンド分解生成物およびそれらの塩を包含し得るが、これらに限定されない。
【0030】
「加水分解性リンリガンド」は、少なくとも1つのP−Z結合を含む三価リンリガンドであり、Zが酸素、窒素、塩素、フッ素、または臭素である。例としては、ホスファイト、ホスフィノ−ホスファイト、ビスホスファイト、ホスホニト、ビスホスホニト、ホスフィニト、ホスホラミダイト、ホスフィノ−ホスホラミダイト、ビスホスホラミダイト、およびフルオロホスファイトが挙げられるが、これらに限定されない。リガンドは、キレート構造を含み得、および/または複数のP−Z部分、例えば、ポリホスファイト、ポリホスホラミダイトなど、および混合P−Z部分、例えば、ホスファイト−ホスホラミダイト、およびフルロホスファイト(flurophosphite)−ホスファイトを含み得る。
【0031】
用語「錯体」は、本明細書で使用される場合、1つ以上の電子的に豊かな分子または原子(すなわち、リガンド)と、1つ以上の電子的に乏しい分子または原子(すなわち、遷移金属)との結合によって形成される配位化合物を意味する。例えば、本明細書で使用可能なオルガノリンリガンドは、金属と配位結合を形成することができる、1つの非共有対の電子を有する少なくとも1つのリン(III)ドナー原子を有する。
【0032】
本開示の方法は、成分として、遷移金属および加水分解性リンリガンドを含む触媒の存在下において、少なくとも1つのアルデヒド生成物を形成するのに十分なヒドロホルミル化条件下で、CO、H
2、および少なくとも1つのオレフィンを含む反応物質を接触させることを含む。随意の処理成分は、アミンおよび/または水を含む。
【0033】
本発明の一実施形態において、本発明は、以前の処理ステップがいくつかの成分(例えば、イソブチレン)を除去するのに使用される、酸素化物からオレフィン、または他の供給原料からオレフィンへの転換で生成された生成物から得られたオレフィンを豊富に含むストリームをヒドロホルミル化することを含む方法に関する。本発明の方法によると、オレフィン含有ストリームは、相対的に高い量のメタノールを含む場合でさえ、ヒドロホルミル化され得る。
【0034】
メタノールは、たった1つの反応物質、またはその任意の組み合わせ中に存在し得る。メタノールの量は、オレフィン、CO、水素、およびメタノールの総重量に基づいて、200ppm〜10パーセントであり得る。本発明の様々な実施形態において、メタノールの量は、少なくとも400ppm、少なくとも1,000ppm、または少なくとも1パーセントである。
【0035】
水素および一酸化炭素は、本方法に必要である。これらは、石油分解および精製所稼動を含む任意の好適な供給源から得られ得る。合成ガス混合物は、水素およびCOの供給源として好まれる。
【0036】
合成ガス(合成用ガスから)は、様々な量のCOおよびH
2を含むガス混合物に与えられた名前である。生成方法は、周知であり、例えば、(1)水蒸気変成および天然ガスまたは液体炭化水素の部分的酸化、ならびに(2)石炭および/またはバイオマスのガス化を含む。水素およびCOは、典型的には、合成ガスの主要な成分であるが、合成ガスは、二酸化炭素、ならびにN
2およびArなどの不活性ガスを含み得る。H
2対COの比率は、大きく異なるが、一般的には、1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1の範囲である。合成ガスは、市販されており、しばしば、燃料供給源として、または他の化学物質の生成の中間体として使用される。化学物質生成の最も好ましいH
2:CO比率は、3:1〜1:3であり、通常、ほとんどのヒドロホルミル化用途に対して、約1:2〜2:1を目標とする。本発明の目的のため、合成ガスは、従来では許容できないと考えられた量のメタノールを含み得る。メタノールの量は、上流プラント変動性に依存して、一定または可変であり得る。
【0037】
ヒドロホルミル化方法で用いられ得る置換または非置換オレフィン不飽和反応物質は、2〜40個、好ましくは3〜20個の炭素原子を含む、光学活性(プロキラルおよびキラル)および光学不活性(アキラル)の両方であるオレフィン不飽和化合物を含む。これらの化合物は、米国特許第2010/006980号で詳細が記載される。かかるオレフィン不飽和化合物は、末端的にまたは内部的に不飽和であり得、直鎖、分枝状鎖、または環式構造、ならびに、オレフィン混合物、例えば、プロペン、ブテン、イソブテンなどのオリゴマー化から得られるものであり得る(例えば、米国特許第4,518,809号、および同第4,528,403号で開示されるようなダイマー、トリマー、またはテトラマーのプロピレンと称されるものなど)。
【0038】
エナンチオマーのアルデヒド混合物を生成するのに用いられ得る不斉ヒドロホルミル化において有用なプロキラルおよびキラルオレフィンは、式:
【0040】
によって表されるものを含み、式中、R
1、R
2、R
3、およびR
4は、同一または異なり(但し、R
1がR
2と異なることか、またはR
3がR
4と異なることを条件として)、水素、アルキル、置換アルキルから選択され、該置換が、ベンジルアミノおよびジベンジルアミノなどのジアルキルアミノ、メトキシおよびエトキシなどのアルコキシ、アセトキシなどのアシルオキシ、ハロ、ニトロ、ニトリル、チオ、カルボニル、カルボキサミド、カルボキサルデヒド、カルボキシル、およびカルボン酸エステル、フェニルを含むアリール、フェニルを含む置換アリールから選択され、該置換が、ルキル、ベンジルアミノおよびジベンジルアミノなどのアルキルアミノおよびジアルキルアミノを含むアミノ、ヒドロキシ、メトキシおよびエトキシなどのアルコキシ、アセトキシなどのアシルオキシ、ハロ、ニトリル、ニトロ、カルボキシル、カルボキサルデヒド、カルボン酸エステル、カルボニル、およびチオ、アセトキシなどのアシルオキシ、メトキシおよびエトキシなどのアルコキシ、ベンジルアミノおよびジベンジルアミノなどのアルキルアミノおよびジアルキルアミノを含むアミノ、アセチルベンジルアミノおよびジアセチルアミノなどのアシルアミノおよびジアシルアミノ、ニトロ、カルボニル、ニトリル、カルボキシル、カルボキサミド、カルボキサルデヒド、カルボン酸エステル、およびメチルメルカプトなどのアルキルメルカプトから選択される。本定義のプロキラルおよびキラルオレフィンはまた、R基が環式化合物を形成するために結合する上の一般式の分子、例えば、3−メチル−1−シクロヘキサンを含むことを理解されたい。
【0041】
不斉ヒドロホルミル化で有用な例示的な光学活性またはプロキラルオレフィン化合物は、例えば、米国特許第4,329,507号、同第5,360,938号、および同第5,491,266号に記載される。
【0042】
本発明で用いられるオレフィンは、オレフィン製造もしくは精製、または不純物除去方法のいずれかからの残留メタノールを有し得る。石炭が合成ガスへと転換され、次に、オレフィンなどのより高い分子量化学物質へと転換されるメタノールへと転換される、石炭から化学物質への方法において、メタノールの分離および再循環は、完全に完了され得ず、残留メタノールは、オレフィン(複数可)中に残り得る。抽残液ストリームにおいて、イソブテンとメタノールとの反応によるMTBE(メチル−t−ブチルエーテル)への転換によるイソブテンの除去はまた、結果として生じるブテンストリーム中に残留メタノールを残し得る。非効率な蒸留または処理妨害は、高いメタノールレベルを有するオレフィンをもたらし得る。
【0043】
溶媒は、有利には、ヒドロホルミル化方法で用いられる。ヒドロホルミル化方法を不当に妨げない任意の好適な溶媒が使用され得る。例証として、ロジウム触媒作用を及ぼされたヒドロホルミル化方法に好適な溶媒は、例えば、米国特許第3,527,809号、同第4,148,830号、同第5,312,996号、および同第5,929,289号で開示されるものなどを含む。好適な溶媒の非限定例としては、飽和炭化水素(アルカン)、芳香族炭化水素、水、エーテル、アルデヒド、ケトン、ニトリル、アルコール、エステル、およびアルデヒド縮合生成物が挙げられる。溶媒の特定の例としては、テトラグライム、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンジン、キシレン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ブチルアルデヒド、およびベンゾニトリルが挙げられる。有機溶媒はまた、飽和限界最大まで溶解した水を含み得る。例示的な好ましい溶媒は、ケトン(例えば、アセトンおよびメチルエチルケトン)、エステル(例えば、酢酸エチル、ジ−2−フタル酸エチルヘキシル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)、炭化水素(例えば、トルエン)、ニトロ炭化水素(例えば、ニトロベンゼン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF))、およびスルホランを含む。ロジウム触媒作用を及ぼしたヒドロホルミル化方法において、一次溶媒として、生成されることが所望のアルデヒド生成物および/または例えば、米国特許第4,148,380号、および米国特許第4,247,486号に記載されるようなヒドロホルミル化方法中に、例えば、原位置で生成され得るようなより高い沸騰アルデヒド液体縮合副生成物に対応するアルデヒド化合物を用いることが好ましい場合がある。一次溶媒は、通常、連続的方法の性質のため、アルデヒド生成物およびより高い沸騰アルデヒド液体縮合副生成物(「重量物」)の両方を最終的に含むであろう。溶媒の量は、特に重要ではなく、所望の量の遷移金属濃度を伴う反応媒体を提供するのに十分でさえあればよい。典型的には、溶媒の量は、反応流体の総重量に基づいて、約5重量パーセント〜約95重量パーセントの範囲である。溶媒の混合物が用いられ得る。
【0044】
かかるヒドロホルミル化反応で用いることが可能である例示的な金属−オルガノリンリガンド錯体は、金属−オルガノリンリガンド錯体触媒を含む。これらの触媒、ならびにそれらを調製する方法は、当該技術分野において周知であり、本明細書で述べられる特許で開示されたものを含む。一般的に、かかる触媒は、原位置で、予め形成されるか、または形成され得、オルガノリンリガンド、一酸化炭素、および随意に水素との組み合わせで、錯体中の金属を含む。リガンド錯体種は、単核、二核および/またはより高い核性形態において存在し得る。しかしながら、触媒の正確な構造は知られていない。
【0045】
金属−オルガノリンリガンド錯体触媒は、光学活性または光学不活性であり得る。金属は、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、オスミウム(Os)、およびそれらの混合物から選択される第8族、第9族、および第10族金属を含み得、好ましい金属が、ロジウム、コバルト、イリジウム、およびルテニウム、より好ましくはロジウム、コバルト、およびルテニウム、特にロジウムである。これらの金属の混合物が使用され得る。金属−オルガノリンリガンド錯体を構成する許容可能なオルガノリンリガンド、および遊離オルガノリンリガンドは、モノ−、ジ−、トリ−、およびより高いポリオルガノリンリガンドを含む。リガンドの混合物は、金属−オルガノリンリガンド錯体触媒および/または遊離リガンドで用いられ得、かかる混合物は、同一か、または異なり得る。
【0046】
金属−オルガノリンリガンド錯体触媒のリガンドおよび/または遊離リガンドとして機能し得る、オルガノリン化合物は、アキラル(光学不活性)またはキラル(光学活性)型であり得、当該技術分野において周知である。アキラルオルガノリンリガンドが好ましい。
【0047】
金属−オルガノリンリガンド錯体触媒のリガンドとして機能し得るオルガノリンリガンドの中でも、モノオルガノホスファイト、ジオルガノホスファイト、トリオルガノホスファイト、およびオルガノポリホスファイト化合物である。かかるオルガノリンリガンドおよびそれらの調製方法は、当該技術分野において周知である。
【0048】
代表的なモノオルガノホスファイトは、式:
【0050】
を有するものを含み得、式中、R
10が、三価非環式および三価環式ラジカル、例えば、1,2,2−トリメチロールプロパンに由来するものなどの三価アルキレンラジカル、または1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサンに由来するものなどの三価シクロアルキレンラジカルなどの、4〜40個以上の炭素原子を含む置換または非置換三価炭化水素ラジカルを表す。かかるモノオルガノホスファイトが、例えば、米国特許第4,567,306号でより詳細に記載されることが見出され得る。
代表的なジオルガノホスファイトは、式:
【0052】
を有するものを含み得、式中、R
20が、4〜40個以上の炭素原子を含む置換または非置換二価炭化水素ラジカルを表し、Wが、1〜18個以上の炭素原子を含む置換または非置換一価炭化水素ラジカルを表す。
【0053】
上の式(II)でWによって表される、代表的な置換および非置換一価炭化水素ラジカルは、アルキルおよびアリールラジカルを含むが、一方で、R
20によって表される代表的な置換および非置換二価炭化水素ラジカルは、二価非環式ラジカルおよび二価芳香族ラジカルを含む。例示的な二価非環式ラジカルは、例えば、アルキレン、アルキレン−オキシ−アルキレン、アルキレン−S−アルキレン、シクロアルキレンラジカル、およびアルキレン−NR
24−アルキレンを含み、R
24が水素、または置換もしくは非置換一価炭化水素ラジカル、例えば、1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルである。より好ましい二価非環式ラジカルは、例えば、米国特許第3,415,906号、および同第4,567,302号により完全に開示されるような二価アルキレンラジカルである。例示的な二価芳香族ラジカルは、例えば、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン−アルキレン、アリーレン−アルキレン−アリーレン、アリーレン−オキシ−アリーレン、アリーレン−NR
24−アリーレンを含み、R
24が、上で定義したような、アリーレン−S−アリーレン、およびアリーレン−S−アルキレンである。より好ましくは、R
20が、例えば、米国特許第4,599,206号、同第4,717,775号、および同第4,835,299号でより完全に開示されるような二価芳香族ラジカルである。
【0054】
代表的なより好ましい部類のジオルガノホスファイトは、式:
【0056】
のものであり、式中、Wが、上で定義された通りであり、各Arが、同一または異なり、置換または非置換アリールラジカルを表し、各yが同一または異なり、0または1の値であり、Qが−C(R
33)
2−、−O−、−S−、−NR
24−、Si(R
35)
2、および−CO−から選択される二価架橋基を表し、各R
33が同一または異なり、水素、1〜12個の炭素原子を有するアルキルラジカル、フェニル、トリル、およびアニシルを表し、R
24が上で定義された通りであり、各R
35が同一または異なり、水素またはメチルラジカルを表し、mが0または1の値を有する。かかるジオルガノホスファイトは、例えば、米国特許第4,599,206号、同第4,717,775号、および同第4,835,299号にさらに詳細に記載される。
【0057】
代表的なトリオルガノホスファイトは、式:
【0059】
を有するものを含み得、式中、各R
46が、同一または異なり、置換または非置換一価炭化水素ラジカル、例えば、1〜24個の炭素原子を含み得る、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、およびアラルキルラジカルである。例示的なトリオルガノホスファイトは、例えば、トリアルキルホスファイト、ジアルキルアリールホスファイト、アルキルジアリールホスファイト、トリアリールホスファイト、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、ブチルジエチルホスファイト、ジメチルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリナフチルホスファイト、ビス(3,6,8−トリ−t−ブチル−2−ナフチル)メチルホスファイト、ビス(3,6,8−トリ−t−ブチル−2−ナフチル)シクロヘキシルホスファイト、トリス(3,6−ジ−t−ブチル−2−ナフチル)ホスファイト、ビス(3,6,8−トリ−t−ブチル−2−ナフチル)フェニルホスファイト、およびビス(3,6,8−トリ−t−ブチル−2−ナフチル)(4−スルホニルフェニル)ホスファイトなどを含む。最も好ましいトリオルガノホスファイトは、トリフェニルホスファイトである。かかるトリオルガノホスファイトは、例えば、米国特許第3,527,809号、および同第5,277,532号にさらに詳細に記載される。
【0060】
代表的な有機ポリホスファイトは、2つ以上の三級(三価)リン原子を含み、式:
【0062】
を有するものを含み得、式中、Xが、2〜40個の炭素原子を含む置換または非置換n−価有機架橋ラジカルを表し、各R
57が、同一または異なり4〜40個の炭素原子を含む二価有機ラジカルを表し、各R
58が、同一または異なり、1〜24個の炭素原子を含む置換または非置換一価炭化水素ラジカルを表し、aおよびbが同一または異なり得、それぞれが0〜6の値を有するが、但し、a+bの合計が2〜6であり、かつnがa+bと同等であることを条件とする。aが2以上の値を有するとき、各R
57ラジカルが、同一または異なり得ることを理解されたい。各R
58ラジカルもまた、任意の所与の化合物において同一または異なり得る。
【0063】
Xにより表される代表的なn−価(好ましくは二価)有機架橋ラジカル、および上でR
57により表される代表的な二価有機ラジカルは、非環式ラジカルおよび芳香族ラジカルの両方、例えば、アルキレン、アルキレン−Q
m−アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン−アルキレン、およびアリーレン−(CH
2)
y−Q
m−(CH
2)
y−アリーレンラジカルを含み、各Q、y、およびmは、上の式(III)で定義された通りである。上でXおよびR
57により表されるより好ましい非環式ラジカルは、二価アルキレンラジカルであるが、一方で、上でXおよびR
57により表されるより好ましい芳香族ラジカルは、例えば、米国特許第4,769,498号、同第4,774,361号、同第4,885,401号、同第5,179,055号、同第5,113,022号、同第5,202,297号、同第5,235,113号、同第5,264,616号、および同第5,364,950号、および同第5,527,950号でより完全に開示されるような二価アリーレンおよびビスアリーレンラジカルである。上の各R
58ラジカルにより表される代表的な好ましい一価炭化水素ラジカルは、アルキルおよび芳香族ラジカルを含む。
【0064】
例示的な好ましいオルガノポリホスファイトは、下の式(VI)〜(VIII):
【0066】
のものなどのビスホスファイトを含み得、式中、式(VI)〜(VIII)の各R
57、R
58、およびXが、上の式(V)で定義されたものと同一である。好ましくは各R
57およびXは、アルキレン、アリーレン、アリーレン−アルキレン−アリーレン、およびビスアリーレンから選択される二価炭化水素ラジカルを表すが、一方で、各R
58ラジカルは、アルキルおよびアリールラジカルから選択される一価炭化水素ラジカルを表す。かかる式(V)〜(VIII)のオルガノホスファイトリガンドは、例えば、米国特許第4,668,651号、同第4,748,261号、同第4,769,498号、同第4,774,361号、同第4,885,401号、同第5,113,022号、同第5,179,055号、同第5,202,297号、同第5,235,113号、同第5,254,741号、同第5,264,616号、同第5,312,996号、同第5,364,950号、および同第5,391,801号に開示されることが見出され得る。
【0067】
式(VI)〜(VIII)中のR
10、R
20、R
46、R
57、R
58、Ar、Q、X、m、およびyは、上で定義される通りである。最も好ましくは、Xが二価アリール−(CH
2)
y−(Q)
m−(CH
2)
y−アリールラジカルを表し、各yが0または1の値を独立して有し、mが0または1の値を有し、Qが−O−、−S−、または−C(R
35)
2−であり、各R
35が同一または異なり、水素またはメチルラジカルを表す。より好ましくは、上の定義されたR
8基の各アルキルラジカルが、1〜24個の炭素原子を含み得、上の式(VI)〜(VII)の上で定義されたAr、X、R
57、およびR
58基の各アリールラジカルが、6〜18個の炭素原子を含み得、該ラジカルが、同一または異なり得るが、一方で、Xの好ましいアルキレンラジカルが、2〜18個の炭素原子を含み得、R
57の好ましいアルキレンラジカルが、5〜18個の炭素原子を含み得る。さらに、好ましくは、二価Arラジカルおよび上の式のXの二価アリールラジカルが、フェニレンラジカルであり、そこで−(CH
2)
y−(Q)
m−(CH
2)
y−により表される架橋基が、フェニレンラジカルと式のそれらのリン原子とを接続する式のオルトから酸素原子である位置で、該フェニレンラジカルと結合する。任意の置換基ラジカルが、かかるフェニレンラジカル上に存在するとき、所与の置換フェニレンラジカルとそのリン原子を結合する酸素原子に関するフェニレンラジカルのパラおよび/またはオルト位置で結合することがまた、好ましい。
【0068】
上の式(I)〜(VIII)のかかるオルガノホスファイトのR
10、R
20、R
57、R
58、W、X、Q、およびArラジカルのうちのいずれかは、所望されれば、本発明の方法の所望の結果に不当に悪影響を与えない1〜30個の炭素原子を含む任意の好適な置換基で置換され得る。アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、およびシクロヘキシル置換基などの対応する炭化水素ラジカルに加えて該ラジカル上にあり得る置換基は、例えば、−−Si(R
35)
3などのシリルラジカル、−N(R
15)
2などのアミノラジカル、アリール−P(R
15)
2などの水素化リンラジカル、−C(O)R
15などのアシルラジカル、−OC(O)R
15などのアシルオキシラジカル、−−CON(R
15)
2および−N(R
15)COR
15などのアミドラジカル、−SO
2R
15などのスルホニルラジカル、−OR
15などのアルコキシラジカル、−SOR
15などのスルフィニルラジカル、−P(O)(R
15)
2などのホスホニルラジカル、ならびにハロ、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、およびヒドロキシラジカルを含み得、各R
15ラジカルが、1〜18個の炭素原子を有する同一または異なる一価炭化水素ラジカル(例えば、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、およびシクロヘキシルラジカル)を独立して表すが、但し、−N(R
15)
2などのアミノ置換基中の共に取られた各R
15がまた、窒素原子と共にヘテロ環式ラジカルを形成する二価架橋基を表し得、−C(O)N(R
15)
2および−N(R
15)COR
15などのアミド置換基中のNに結合した各R
15がまた、水素であり得ることを条件とする。特定の所与のオルガノホスファイトを構成する置換または非置換炭化水素ラジカル基のいずれかは、同一かまたは異なり得ることを理解されたい。
【0069】
より具体的に例示的な置換基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ネオ−ペンチル、n−ヘキシル、アミル、sec−アミル、t−アミル、イソ−オクチル、デシル、およびオクタデシルなどの一級、二級、および三級アルキルラジカル、フェニル、およびナフチルなどのアリールラジカル、ベンジル、フェニルエチル、およびトリフェニルメチルなどのアラルキルラジカル、トリル、およびキシリルなどのアルカリールラジカル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、シクロオクチル、およびシクロヘキシルエチルなどの脂環式ラジカル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、t−ブトキシ、−OCH
2CH
2OCH
3、−O(CH
2CH
2)
2OCH
3、および−O(CH
2CH
2)
3OCH
3などのアルコキシラジカル、フェノキシなどのアリールオキシラジカル、ならびに、−Si(CH
3)
3、−Si(OCH
3)
3、および−Si(C
3H
7)
3などのシリルラジカル、−NH
2、−N(CH
3)
2、−NHCH
3、および−NH(C
2H
5)などのアミノラジカル、−P(C
6H
5)
2などのアリール水素化リンラジカル、−C(O)CH
3、−C(O)C
2H
5、および−C(O)C
6H
5などのアシルラジカル、−C(O)OCHなどのカルボニルオキシラジカル、−O(CO)C
6H
5などのオキシカルボニルラジカル、−CONH
2、−CON(CH
3)
2、および−NHC(O)CH
3などのアミドラジカル、−S(O)
2C
2H
5などのスルホニルラジカル、−S(O)CH
3などのスルフィニルラジカル、−SCH
3、−C
2H
5、および−SC
6H
5などのスルフィジルラジカル、−P(O)(C
6H
5)
2、−P(O)(CH
3)
2、−P(O)(C
2H
5)
2、−P(O)(C
3H
7)
2、−P(O)(C
4H
9)
2、−P(O)(C
6H
13)
2、−P(O)CH
3(C
6H
5)、および−P(O)(H)(C
6H
5)などのホスホニルラジカルを含む。
【0070】
かかるオルガノホスファイトリガンドの特定の例示的な例としては、以下が挙げられる。2−t−ブチル−4−メトキシフェニル(3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ホスファイト、メチル(3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ホスファイト、6,6’−[[3,3’−ビス(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジメトキシ−[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6,6’−[[3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン、(2R,4R)−ジ[2,2’−(3,3’,5,5’−テトラキス−tert−ブチル−1,1−ビフェニル)]−2,4−ペンチルジホスファイト、(2R,4R)ジ[2,2’−(3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル)]−2,4−ペンチルジホスファイト、2−[[2−[[4,8,−ビス(1,1−ジメチルエチル),2,10−ジメトキシジベンゾ−[d,f][1,3,2]ジオキソホスフェピン−6−イル]オキシ]−3−(1,1−ジメチルエチル)−5−メトキシフェニル]メチル]−4−メトキシ、リン酸のメチレンジ−2,1−フェニレンテトラキス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェニル]エステル、およびリン酸の[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイルテトラキス[2−(1,1−ジメチルエチル)−4−メトキシフェニル]エステル。
【0071】
金属−オルガノリンリガンド錯体触媒は、均質または不均質形態であり得る。例えば、予め形成されたロジウムヒドリド−カルボニル−オルガノリンリガンド触媒は、調製され、ヒドロホルミル化反応混合物へと導入され得る。より好ましくは、ロジウム−オルガノリンリガンド錯体触媒は、活性触媒の原位置での形成のため反応媒体へと導入され得るロジウム触媒前駆体に由来し得る。例えば、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、Rh
2O
3、Rh
4(CO)
12、Rh
6(CO)
16、およびRh(NO
3)
3などのロジウム触媒前駆体は、活性触媒の原位置での形成のためオルガノリンリガンドと共に、反応混合物へと導入され得る。好ましい実施形態において、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネートは、ロジウム前駆体として用いられ、溶媒の存在下で、オルガノリンリガンドと反応して、活性触媒の原位置での形成のため過剰な(遊離)オルガノリンリガンドと共に反応装置へと導入される触媒ロジウム−オルガノリンリガンド錯体前駆体を形成する。いずれにしても、一酸化炭素、水素、およびオルガノリンリガンドが、金属と錯体を形成することができる全てのリガンドであり、ヒドロホルミル化反応で用いられる条件下において、活性金属−オルガノリンリガンド触媒が、反応混合物中に存在することで十分である。カルボニルおよびオルガノリンリガンドは、原位置でヒドロホルミル化方法中か、またはそれより前のいずれかにロジウムに錯体を形成し得る。
【0072】
例証として、好ましい触媒前駆体組成物は、可溶化ロジウムカルボニルオルガノホスファイトリガンド錯体前駆体、溶媒、および随意に遊離オルガノホスファイトリガンドから本質的に成る。好ましい触媒前駆体組成物は、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、有機溶媒、およびオルガノホスファイトリガンドの溶液を形成することによって調製され得る。オルガノリンリガンドは、一酸化炭素ガスの放出によって証明されるように、ロジウムアセチルアセトネート錯体前駆体のカルボニルリガンドのうちの1つと容易に取って代わる。
【0073】
その結果、金属−オルガノリンリガンド錯体触媒は、有利に、一酸化炭素およびオルガノリンリガンドと錯体を形成する金属を含み、該リガンドは、キレートおよび/または非キレート様式で、金属と結合する(錯体を形成する)。
【0074】
触媒の混合物が用いられ得る。反応流体中に存在する金属−オルガノリンリガンド錯体触媒の量は、用いられることが所望である所与の金属濃度を提供するのに必要な最小限の量のみで十分であり、例えば、上述の特許で開示されるものなどに関する特定のヒドロホルミル化方法に触媒作用を及ぼすのに少なくとも必要な触媒量の金属の基礎を提供するであろう。一般的に、反応媒体中の遊離金属として計算される10ppmw〜1000ppmwの範囲の濃度の、触媒金属、例えば、ロジウムは、ほとんどの方法で十分であるべきだが、一方、一般的には、10〜500ppmwの金属、およびより好ましくは25〜350ppmwの金属を用いることが好ましい。
【0075】
金属−オルガノリンリガンド錯体触媒に加えて、遊離オルガノリンリガンド(すなわち、金属と錯体を形成しないリガンド)もまた、反応媒体中に存在し得る。遊離オルガノリンリガンドは、上で考察される上で定義されたオルガノリンリガンドのうちのいずれかと対応し得る。遊離オルガノリンリガンドが、用いられる金属−オルガノリンリガンド錯体触媒のオルガノリンリガンドと同一であることが好ましい。しかしながら、かかるリガンドは、任意の所与の方法と同一ある必要はない。本発明のヒドロホルミル化方法は、反応媒体中の金属のモル当たり0.1モル以下〜100モル以上の遊離オルガノリンリガンドを含み得る。好ましくは、ヒドロホルミル化方法は、反応媒体中に存在する金属のモル当たり1〜50モルのオルガノリンリガンドの存在下で実行される。より好ましくは、オルガノポリホスファイトでは、金属のモル当たり1.1〜4モルのオルガノポリホスファイトリガンドが用いられる。該オルガノリンリガンドの量は、存在する金属に結合する(錯体を形成する)オルガノリンリガンドの量と、存在する遊離オルガノリンリガンドの量両方の合計である。所望されれば、追加のオルガノリンリガンドが、いかなる時でも、任意の好適な方式で、例えば、反応媒体中の遊離リガンドの所定のレベルを維持するために、ヒドロホルミル化方法の反応媒体に提供され得る。
【0076】
一実施形態において、ロジウム触媒は、ゼオライト、ガラス、または粘土の孔上に担持されるか、または孔内部に層間挿入される、無機酸化物、(すなわち、アルミナ、シリカ、チタニア、またはジルコニア)炭素、またはイオン交換樹脂などの任意の固体担体に浸透され得るか、または該ゼオライトまたはガラスの孔をコーティングする液体フィルム中にも溶解し得る。かかるゼオライト−担持触媒は、ゼオライトの孔径によって決定される通りに、高選択的に1つ以上の位置異性体アルデヒドを生成するのに特に有利である。このように形成された固体触媒は、依然として、上で定義されたリガンドのうちの1つ以上と錯体を形成し得る。かかる固体触媒の記載は、例えば、J.Mol.Cat.1991,70,363−368、Catal.Lett.1991,8,209−214、J.Organomet.Chem,1991,403,221−227、Nature,1989,339,454−455、J.Catal.1985,96,563−573、J.Mol.Cat.1987,39,243−259に見出すことができる。触媒は、例えば、J.Mol.Cat.,1990,63,213−221に記載されるような酢酸セルロースまたはポリフェニレンスルホンなどの薄いフィルムまたは膜担体に取り付けられ得る。触媒は、ポリマーに組み込まれるホスファイトなどのオルガノリン含有リガンドによって不溶性ポリマー担体に取り付けられ得る。ポリマー担持触媒の記載は、例えば、J.Mol.Cat.,1993,83,17−35、Chemtech1983,46、J.Am.Chem.Soc.,1987,109,7122−7127に見出すことができる。別の実施形態において、触媒は、その分子量の性質によって、高温で反応媒体に溶解するが、冷却の際に沈殿するポリマー上に担持され得、したがって、反応混合物からの触媒分離を促進する。かかる「可溶性」ポリマー担持触媒は、例えば、Polymer,1992,33,161、J.Org.Chem.1989,54,2726−2730に記載される。
【0077】
オルガノホスファイトリガンドの加水分解性分解および金属−オルガノホスファイトリガンド錯体の非活性化を、防止および/または低減させるための抽出システムなどにおける水性緩衝溶液の使用は、周知であり、例えば、米国特許第5,741,942号、および同第5,741,944号に記載される。かかる緩衝液系および/またはそれを調製するための方法は、当該技術分野において周知であり、リン酸塩およびカルボン酸塩(例えば、クエン酸塩、マレイン酸塩、フラテ(furate))などの酸素酸塩を含む。緩衝液の混合物が用いられ得る。
【0078】
加水分解性分解を経験し得る例示的な金属−オルガノリンリガンド錯体触媒作用を及ぼされたヒドロホルミル化方法は、例えば、米国特許第4,148,830号、同第4,593,127号、同第4,769,498号、同第4,717,775号、同第4,774,361号、同第4,885,401号、同第5,264,616号、同第5,288,918号、同第5,360,938号、同第5,364,950号、同第5,491,266号、および同第7,196,230号に記載されるようなこれらの方法を含む。加水分解性分解を受けやすいであろうP−Z部分を含む種は、オルガノホスホニト、ホスホラミダイト、およびフルオロホスホニト、例えば、国際公開第2008/071508号、国際公開第2005/042458号、および米国特許第5,710,344号、同第6,265,620号、同第6,440,891号、同第7,009,068号、同第7,145,042号、同第7,586,010号、同第7,674,937号、および同第7,872,156号に記載されるようなものを含む。これらの種は、米国特許第5,744,649号、および同第5,741,944号で教示される抽出器技術の使用によって抽出され得る様々な酸性および/または極性分解生成物を生成するであろう。その結果、有利に用いられるヒドロホルミル化処理技術は、例えば、ガス再循環、液体再循環、およびそれらの組み合わせなどの任意の既知の処理技術に対応し得る。好ましいヒドロホルミル化方法は、触媒液体再循環を伴うものである。
【0079】
抽出接触条件は大きく異なり得、かかる条件の任意の好適な組み合わせが、本明細書において用いられ得る。例えば、かかる条件のうちの1つの減少が、他の条件のうちの1つ以上が増加することによって、補われ得るが、その結果もまた正確である。所望されれば、より低いまたはより高い温度が用いられ得るが、一般的に、10℃〜120℃、好ましくは20℃〜80℃、より好ましくは25℃〜60℃の範囲の液体温度が、ほとんどの場合好適であるべきである。有利には、処理は、周囲圧力〜反応圧力の範囲の圧力で実行され、接触時間は、数秒または数分〜数時間以上と異なり得る。
【0080】
反応流体からのリン酸性化合物の除去における成功は、ヒドロホルミル化反応媒体中に存在するオルガノリンリガンドの分解(消費)率を測定することによって判定され得る。消費率は、幅広い範囲、例えば、1日毎のリットル当たり<0.6〜最大5グラムにわたって変化し得、自己触媒的レベルより少ない加水分解を維持するためにリガンドの費用と処理頻度との最良の妥協点によって決定されるであろう。好ましくは、水性緩衝溶液処理は、ヒドロホルミル化反応媒体中に存在する所望のオルガノリンリガンドの消費が、許容できる比率、例えば、1日毎のリットル当たり<0.5グラムのリガンド、より好ましくは1日毎のリットル当たり<0.1グラムのリガンド、最も好ましくは1日毎のリットル当たり<0.06グラムのリガンドを維持するように、実行される。リン酸性化合物の水性緩衝溶液への抽出および中和が進むにつれ、緩衝溶液のpHは緩徐に減少するであろう。
【0081】
ヒドロホルミル化システムからの少なくとも幾分かの量のリン酸性化合物、例えば、H
3PO
3、H
3PO
4、ヒドロキシルブチルホスホン酸およびヒドロキシルペンチルホスホン酸などのヒドロキシアルキルホスホン酸などのアルデヒド酸の除去により、ヒドロホルミル化反応媒体の酸性度を制御し、したがって、その加水分解性分解を防止または低減することによって、有用なオルガノリンリガンドを安定化する。
【0082】
随意に、有機窒素化合物を、ヒドロホルミル化反応流体に添加して、例えば、米国特許第4,567,306号で教示されるようなオルガノリンリガンドの加水分解の際に形成された酸性加水分解副生成物を除去し得る。かかる有機窒素化合物は、それと共に転換生成物塩を形成することによって、酸性化合物と反応し、中性にするのに使用され得、したがって、触媒金属が酸性加水分解副生成物と錯体形成することを防止するので、反応条件下で反応領域内に存在しながら、触媒の酸性度を保護するのを補助する。
【0083】
リン酸性化合物を除去するのに有用な好ましい有機窒素化合物は、米国特許第5,731,472号に記載されるものなどのジアゾール、トリアゾール、ジアジン、およびトリアジンからなる群から選択されるヘテロ環式化合物である。ベンズイミダゾールおよびベンズトリアゾールが好ましい。反応流体中に存在し得る有機窒素化合物の量は、典型的には、反応流体のリットル当たり少なくとも0.0001モルの濃度の遊離有機窒素化合物を提供するのに十分である。一般的に、有機窒素化合物対合計オルガノリンリガンド(遊離オルガノリンリガンドとして存在するか、または結合する)の比率は、少なくとも0.1:1、さらにより好ましくは、少なくとも0.5:1である。1:1〜5:1の有機窒素化合物:オルガノリンリガンドモル比は、ほとんどの目的に対して十分であるべきである。
【0084】
水性緩衝溶液処理は、遊離リン酸化合物を、反応流体を含む金属−オルガノリンリガンド錯体触媒から除去するだけでなく、用いられる場合有機窒素化合物消去剤の使用によって形成された転換生成物塩のリン酸性材料もまた除去する、すなわち、該転換生成物塩のリン酸が水性緩衝溶液中に残るが、一方、処理された反応流体が、再活性化した(遊離)有機窒素化合物と共に反応領域へ戻る。
【0085】
ヒドロホルミル化方法、およびその操作の条件は周知である。ヒドロホルミル化方法は、不斉であるか、または不斉でない可能性があり、不斉でない好ましい方法は、任意のバッチ、連続または半連続様式で実施され得、任意の触媒液体および/または所望のガス再循環操作を伴い得る。したがって、かかるアルデヒドをオレフィン不飽和化合物から生成するための特定のヒドロホルミル化方法、ならびにヒドロホルミル化方法の反応条件および要素が、本発明の重要な特徴でないことが明らかでなければならない。
【0086】
再循環手順は、一般的には、触媒およびアルデヒド生成物を含む液体反応媒体の一部を、ヒドロホルミル化反応装置、すなわち、反応領域から、連続的または断続的のいずれかで、取り出すことと、米国特許第5,430,194号、および米国特許第5,681,473号に記載のものなどの複合膜の使用によって、またはそれを蒸留する、より慣習的で好ましい方法、すなわち、必要に応じて、分離蒸留領域内での正常圧、減圧、高圧で1つ以上の段階における気化分離によって、それらからのアルデヒド生成物を回収することを伴い、残基を含む不揮発性金属触媒は、例えば、米国特許第5,288,918号に記載されるような反応領域へと再循環する。揮発性材料の縮合、および分離、および例えば、さらなる蒸留によるそれらの回収は、任意の従来の方式で実行され得、粗製のアルデヒド生成物は、所望されれば、さらなる精製および異性体分離のため受け継がれ、任意の回収された反応物質、例えば、オレフィン出発材料および合成ガスは、任意の所望の方式で、ヒドロホルミル化領域(反応装置)へ再循環され得る。かかる膜分離の抽残液を含む回収された金属触媒またはかかる気化分離の残基を含む回収された不揮発性金属触媒は、所望される任意の従来の方式で、ヒドロホルミル化領域(反応装置)へ再循環され得る。
【0087】
好ましい実施形態において、ヒドロホルミル化反応流体は、少なくともいくらかの量の4つの異なる主要要素または成分、すなわち、アルデヒド生成物、金属−オルガノリンリガンド錯体触媒、遊離オルガノリンリガンド、および該触媒および該遊離リガンドの溶媒を含む任意の対応するヒドロホルミル化方法に由来する任意の流体を含む。ヒドロホルミル化反応混合物組成物は、ヒドロホルミル化方法で意図的に用いられるか、または該方法中に原位置で形成されたいずれかのものなどの追加の要素を含み得、かつ通常は含むであろう。かかる追加の要素の例は、未反応オレフィン出発材料、一酸化炭素および水素ガス、ならびに原位置で形成された副生成物、例えば、飽和炭化水素および/またはオレフィン出発材料に対応する未反応異性化オレフィン、リガンド分解化合物、および高沸騰液体アルデヒド縮合副生成物、ならびに用いられる場合、他の不活性共溶媒型材料または炭化水素添加剤を含む。
【0088】
ヒドロホルミル化方法の反応条件は、光学活性および/または光学不活性アルデヒドを生成するために従来用いられる任意の好適な種類のヒドロホルミル化条件を含み得る。用いられるヒドロホルミル化反応条件は、所望のアルデヒド生成物の種類によって決まるであろう。例えば、ヒドロホルミル化方法の水素、一酸化炭素、およびオレフィン出発化合物の合計ガス圧力は、1〜69,000kPaの範囲であり得る。しかしながら、一般的に、14,000kPa未満、より好ましくは3,400kPa未満の水素、一酸化炭素、およびオレフィン出発化合物の合計ガス圧力で、方法が操作されることが好ましい。最低合計圧力は、反応の所望比率を得るのに必要な量の反応物質によって主に制限される。より具体的には、ヒドロホルミル化方法の一酸化炭素の分圧は、好ましくは1〜6,900kPa、より好ましくは21〜5,500kPaであるが、一方、水素分圧は、好ましくは34〜3,400kPa、より好ましくは69〜2,100kPaである。一般的に、ガス状のH
2:COのモル比は、1:10〜100:1以上の範囲であり得、より好ましいモル比は、1:10〜10:1である。
【0089】
一般的に、ヒドロホルミル化方法は、任意の実施可能な反応温度で実施され得る。有利には、ヒドロホルミル化方法は、−25℃〜200℃、好ましくは50℃〜120℃の反応温度で実施される。
【0090】
ヒドロホルミル化方法は、例えば、固定床反応装置、流体床反応装置、連続撹拌槽型反応装置(CSTR)、またはスラリー反応装置などの1つ以上の好適な反応装置を使用して実施され得る。触媒の最適な寸法および形状は、使用される反応装置の種類に左右されるであろう。用いられる反応領域は、単一容器であり得るか、または2つ以上の別個の容器を含み得る。用いられる分離領域は、単一容器であり得るか、または2つ以上の別個の容器を含み得る。本発明で用いられる緩衝液処理領域は、単一容器であり得るか、または2つ以上の別個の容器を含み得る。本明細書で用いられる反応領域(複数可)および分離領域(複数可)は、同一の容器内、または異なる容器内に存在し得る。例えば、反応蒸留、および反応膜分離などの反応分離技法は、反応領域(複数可)内で起こり得る。
【0091】
ヒドロホルミル化方法は、所望されれば、未消費出発材料の再循環と共に実施され得る。反応は、単一反応領域、または複数の反応領域で、直列または並列で、実施され得る。反応ステップは、出発材料のうちの1つの他方への添加の増加によって影響され得る。また、反応ステップは、出発材料の共同の添加によって組み合わされ得る。完全な転換が所望でないか、または入手可能でない場合、出発材料は、例えば、蒸留によって、生成物から分離され得、次いで、出発材料は、反応領域へと戻って再循環される。
【0092】
ヒドロホルミル化方法は、ガラスライニングのステンレス鋼または同様の型の反応機器のいずれかで実施され得る。反応領域は、過剰な温度変動のため、または起こり得るいかなる「暴走」反応温度をも避けるために1つ以上の内部および/または外部熱交換器(複数可)に装着され得る。
【0093】
本発明のヒドロホルミル化方法は、1つ以上のステップまたは段階で実施され得る。反応ステップまたは段階の正確な数は、資本費用および高い触媒選択性、活性、寿命、および操作性の容易さ、ならびに出発材料の当の固有反応性および出発材料の安定性および反応条件への所望の反応生成物の間の最良の妥協点によって決定されるであろう。
【0094】
一実施形態において、本発明において有用なヒドロホルミル化方法は、例えば、米国特許第5,728,893号などに記載される多段階の反応装置内で実行され得る。かかる多段階の反応装置は、容器当たり2つ以上の理論的反応段階を作り出す内部の物的障壁を考慮して設計され得る。
【0095】
一般的には、連続的方式でヒドロホルミル化方法を実施することが好ましい。連続的ヒドロホルミル化方法は、当該技術分野において周知である。連続的方法は、単一通過方式で実行され得る、すなわち、未反応オレフィン出発材料(複数可)および気化したアルデヒド生成物を含む蒸気質の混合物が、アルデヒド生成物が回収される場所からの液体反応混合物から除去され、組立オレフィン出発材料(複数可)、一酸化炭素、および水素が、未反応オレフィン出発材料(複数可)を再循環することなく、次の単一通過のため液体反応媒体へと供給される。再循環手順のかかる種類は、当該技術分野において周知であり、例えば、米国特許第4,148,830号に記載の所望のアルデヒド反応生成物(複数可)から分離される金属−オルガノリン錯体触媒流体の液体再循環、または例えば、米国特許第4,247,486号などに記載のガス再循環手順、ならびに、所望されれば、液体およびガス再循環手順の両方の組み合わせを伴い得る。最も好ましいヒドロホルミル化方法は、連続的液体触媒再循環方法を含む。好適な液体触媒再循環手順は、例えば、米国特許第4,668,651号、同第4,774,361号、同第5,102,505号、および同第5,110,990号に開示される。
【0096】
一実施形態において、アルデヒド生成物混合物は、アルデヒド混合物が、例えば、溶媒抽出、結晶化、蒸留、気化、払拭フィルム気化、流下フィルム気化、相分離、濾過、またはそれらの組み合わせなどの任意の好適な方法によって生成される、粗製反応混合物の他の成分から分離され得る。国際公開第88/08835号に記載されるようにそれらが捕獲剤の使用によって形成されるときに、アルデヒド生成物を粗製反応混合物から除去することが所望であり得る。アルデヒド混合物を、粗製反応混合物の他の成分から分離するための1つの方法は、例えば、米国特許第5,430,194号および同第5,681,473号に記載される膜分離による。
【0097】
上述の通り、所望のアルデヒドは、反応混合物から回収され得る。例えば、米国特許第4,148,830号および同第4,247,486号に記載の回収技法が使用され得る。例えば、連続的な液体触媒再循環方法において、液体反応混合物(アルデヒド生成物、触媒などを含む)の一部、すなわち、反応領域から除去された反応流体は、分離領域、すなわち、所望のアルデヒド生成物が、液体反応流体から、常圧、減圧、または高圧下で、1つ以上の段階において、蒸留によって分離され得る気化器/分離器に渡され得、生成物受器内で縮合および収集され、所望されれば、さらに精製され得る。液体反応混合物を含む残存不揮発性触媒は、次いで、反応装置へと戻って再循環され得、所望されれば、任意の他の揮発性材料、例えば、未反応オレフィンは、任意の水素および一酸化炭素と共に、例えば、任意の従来の方式での蒸留による縮合アルデヒド生成物からのそれらの分離後に、液体反応に溶解した。一般的に、所望のアルデヒドを、オルガノリンリガンドと反応生成物の起こり得る分解を避けるために減圧下および低温で、触媒含有反応混合物から分離することが好ましい。
【0098】
より具体的には、金属−オルガノリン錯体触媒含有反応流体からの所望のアルデヒド生成物の蒸留および分離は、所望される任意の好適な温度で行われ得る。一般的に、かかる蒸留は、150℃未満、より好ましくは50℃〜140℃の範囲の温度などの比較的低温で行われることが好ましい。一般的に、かかるアルデヒド蒸留は、減圧、例えば、減圧下、例えば、低沸騰アルデヒド(例えば、C
4〜C
6)を伴うときに、ヒドロホルミル化中に用いられる合計ガス圧力より実質的に低い合計ガス圧力、または高沸騰アルデヒド(例えば、C
7以上)を伴うときに、真空下で行われることがまた好ましい。例えば、一般的な方法は、反応媒体から蒸留領域、例えば、所望のアルデヒド生成物を蒸留する気化器/分離器に存在する合成用ガス濃度よりかなり低い濃度の合成用ガスを現在含む液体媒体に溶解する未反応ガスの実質的に一部を揮発するように圧力を減じるため、液体反応生成物媒体を、ヒドロホルミル化反応装置から除去させる。一般的に、真空から最大340kPaの合計ガス圧力の範囲の蒸留圧力は、ほとんどの目的に対して十分であるべきである。
【0099】
代替的には、バッチ方式操作において、上で強調されたステップは、機器ではなく、時間によって分けられ得る。いくつかまたは全てのステップは、同一の機器で行うが、時間によって分けられ得る(すなわち、順に実施)。より重いオレフィンでは、反応物質をバッチ反応装置へと変え、合成ガスを、反応が完了するまで添加することによってヒドロホルミル化反応を実施し、次に、生成物触媒分離の前(または後)に、反応装置内で緩衝液処理を実施する(水層を静かに注ぎ出す)(それ自体が米国特許第5,932,772号に記載の傾斜法であり得る)ことが好ましい場合がある。
【0100】
例示的な光学不活性アルデヒド生成物は、例えば、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−メチル1−ブチルアルデヒド、ヘキサナール、ヒドロキシヘキサナール、2−メチル1−ヘプタナール、ノナナール、2−メチル−1−オクタナール、デカナール、アジポアルデヒド、2−メチルグルタルアルデヒド、2−メチルアジポアルデヒド、3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド、6−ヒドロキシヘキサナール、アルケナール、例えば、2−,3−および4−ペンテナール、アルキル5−ホルミルバレレート、2−メチル−1−ノナナール、2−メチル1−デカナール、3−プロピル−1−ウンデカナール、ペンタデカナール、3−プロピル−1−ヘキサデカナール、エイコサナール、2−メチル−1−トリコサナール、ペンタコサナール、2−メチル−1−テトラコサナール、ノナコサナール、2−メチル−1−オクタコサナール、ヘントリアコンタナール、および2−メチル−1−トリアコンタナールを含む。
【0101】
例示的な光学活性アルデヒド生成物は、本発明の不斉ヒドロホルミル化方法によって調製される(エナンチオマーの)アルデヒド化合物、例えば、S−2−(p−イソブチルフェニル)−プロピオンアルデヒド、S−2−(6−メトキシ−2−ナフチル)プロピオンアルデヒド、S−2−(3−ベンゾイルフェニル)−プロピオンアルデヒド、S−2−(3−フルオロ−4−フェニル)フェニルプロピオンアルデヒド、およびS−2−(2−メチルアセトアルデヒド)−5−ベンゾイルチオフェンなどを含む。
【0102】
本発明の特定の実施形態
一般手順
直列に接続された3つの1リットルステンレス鋼撹拌槽反応装置から構成される液体再循環反応装置システムを用いる。各反応装置は、垂直に据え付けられた撹拌機および反応装置の底部近辺に位置する円管状スパージャを備える。各スパージャは、反応装置内の液体へ所望のガス流を提供するのに十分な寸法の複数の穴を備える。スパージャは、オレフィンおよび/または合成ガスを反応装置へと供給するために使用され、各反応装置への再循環未反応ガスのためにも使用され得る。各反応装置は、反応装置温度の調節手段としてシリコーン油シェルを有する。反応装置1〜2および反応装置2〜3は、任意の未反応ガスを移送するためのラインおよび、アルデヒド生成物および触媒を含む液体溶液の一部を、反応装置1から反応装置2へ、そして、反応装置2から反応装置3へと注入させるラインを介してさらに接続される。それ故、反応装置1の未反応オレフィンは、反応装置2内、続いて反応装置3内でさらにヒドロホルミル化される。各反応装置はまた、所望の液体レベルを保つための含気性液体レベル調節器を備える。反応装置3は、未反応ガスの除去のための吹き出しベントを有する。
【0103】
液体反応溶液の一部は、反応装置3から、減圧での加熱容器から構成される気化器へと連続的に注入される。気化器からの流出液ストリームを、気化したアルデヒドを液体反応溶液の不揮発性成分から分離する気化器の底部に位置するガス−液体分離器へと送る。気化したアルデヒド生成物を生成物受器内で縮合および収集する。含気性液体レベル調節器は、分離器の底部で再循環される触媒を含む所望の不揮発性成分レベルを調節する。分離器を、再循環ラインによって緩衝液処理容器に接続する。
【0104】
分離器からの再循環する触媒を含む不揮発性成分を、相分離領域および充填カラム含有領域から構成される、水性緩衝液処理領域、または抽出器へと渡す。0.4モルのリン酸ナトリウムである水性緩衝液を、6.5〜7.2の指定されたpHで維持する。緩衝液処理の後に、再循環される触媒を含む有機層を、相分離領域から再循環ラインを通って、反応装置1へと注入する。
【0105】
比較実験A(本発明の実施形態ではない)
一般手順の方法を用い、プロピレンを75日間ヒドロホルミル化する。
【0106】
ヒドロホルミル化反応を、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート(約75ppmのロジウム)、典型的な式VIのリガンドである約0.25重量%の6,6’−[[3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビスジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンリガンド、(ロジウムのモル当量当たり約4モル当量のリガンド)、および、溶媒として約15%のテトラエチレングリコールジメチルエーテル、および約85重量%のC
4アルデヒド(約30:1の比率のn−ブチルアルデヒドおよびイソ−ブチルアルデヒド)を含む3リットルの触媒前駆体を満たすことによって実施する。反応装置を、次いで、一酸化炭素および水素を流しながら70℃の反応温度に加熱する。反応装置1、2、および3の圧力を、130、110、および90psigで、それぞれ維持する。プロピレンを、毎時反応装置容積のリットル当たり1.8グラムモルの速度で、反応装置1に供給する。上述の反応条件を、ヒドロホルミル化の間中、維持する。粗製アルデヒド生成物を、98℃、8psigで操作する気化システムで分離する。操作中、触媒性能を、処理測定およびガスクロマトグラフィー(GC)によるサンプル分析によって判定する。操作の間中リガンド分解生成物の形成を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イオンクロマトグラフィー(IC)、および
31P NMR分光法によって監視する。
【0107】
実施例1
比較実験Aの方法を繰り返すが、但し、メタノールを、後述の通り様々な濃度で添加する。
【0108】
純粋なHPLC等級メタノールを、酸素遊離まで脱ガスし、反応装置1へ進入するより前に液体再循環ラインへと注入する。メタノールを、反応物質において約580ppmwおよび5800ppmwに相当するメタノール汚染物質を提供するのに十分な速度で供給する。580ppmのメタノールの反応物質汚染物質と一致するメタノール濃度でのヒドロホルミル化を、47日間実施する。ヒドロホルミル化の残りの28日間、反応物質の重量に基づく5800ppmwのメタノールを反応装置1へ注入する。
【0109】
比較実験と比較したとき、ヒドロホルミル化速度または通常−およびイソ−ブチルアルデヒドの選択性において違いが見られない。比較実験と比較したとき、リガンド分解生成物の形成速度において違いが見られない。さらに、メタノールの存在下での一連のヒドロホルミル化の間、
31P NMR分光法を使用して、新たなリン系化学物質中間体を見出だせない。
【0110】
驚くべきことに、一連の75日間のヒドロホルミル化の間、上述の条件で供給されたメタノールは、ヒドロホルミル化触媒の性能またはリガンド分解速度にいかなる観察可能な悪影響をも及ぼさない。理論に束縛されるものではないが、メトキシ系被毒ホスファイトは、それが生成されるよりも早い速度で加水分解されないか、または形成されない(または少なくとも生成物系被毒ホスファイトより早い)と思われる。抽出器を用いてpHを調節することによって、メトキシ系被毒ホスファイトの形成速度を低く保ち、および/またはメトキシ系被毒ホスファイトの加水分解速度を、ヒドロホルミル化速度またはリガンド分解速度全体に影響を与えないように十分早くする。