【文献】
European Pharmacopoeia 5.0,2005, 2.6.16. TESTS FOR EXTRANEOUS
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項2または3に記載の方法において、ヒト以外の動物が、成体マウス、哺乳マウスおよびモルモットからなる群から選択され、そして生きている動物の割合および感染の証拠の発生が、接種された動物が成体マウスの場合には被験組成物の接種から少なくとも7〜10日の期間後に評価され、接種された動物が哺乳マウスの場合には被験組成物の接種から14日の期間後に評価され、そして接種された動物がモルモットの場合には被験組成物の接種から少なくとも42日の期間後に評価される、方法。
請求項2ないし5のいずれかに記載の方法において、被験組成物が、それぞれ、活性物質が生産される細胞培養物のサンプル、または該細胞培養物に由来する生産物、またはシードウイルスもしくはシードウイルスを含有する組成物である、方法。
請求項1ないし10のいずれかに記載の方法において、該ポリヌクレオチド構築物がHA(血球凝集素)および/またはNA(ノイラミニダーゼ)コード配列を含む、方法。
請求項1ないし11のいずれかに記載の方法において、活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含むポリヌクレオチド構築物が、該ポリヌクレオチド構築物を用いて免疫感作するために使用される個体に対するコドン最適化によりコドンが最適化されている、方法。
請求項1ないし12のいずれかに記載の方法において、該ポリヌクレオチド構築物が配列番号1または2に示される核酸と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むか、あるいは該ポリヌクレオチド構築物が配列番号1または2に示された配列を有するポリヌクレオチドを含む、方法。
請求項1ないし16のいずれかに記載の方法において、活性物質がインフルエンザ抗原を含み、かつ、ポリヌクレオチド構築物が配列番号1または2に示す核酸と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、方法。
【発明の概要】
【0012】
発明の要約
本発明は以下の観点、主題および好適態様を提供し、これらはそれぞれ単独または組み合わせて本発明の目的の解決に貢献する。
【0013】
(1)少なくとも1種の活性物質を含んでなる組成物中の外来物質の試験方法において、a)活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物の発現産物に対して生じた抗体と、少なくとも1種の活性物質を含んでなる組成物とを接触させる工程であって、抗体が活性物質に結合する工程、および
b)工程a)に続いて組成物中の外来物質の存在または不存在を決定する工程
を含んでなる、方法。
【0014】
好ましくは抗体は活性物質に特異的に結合する。
【0015】
(2)少なくとも1種の活性物質を含んでなる組成物中の外来物質の試験方法において、a)活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物の発現産物に対して生じた抗体を準備する工程、
b)該抗体を、少なくとも1種の活性物質を含んでなる組成物と接触させる工程であって、抗体が活性物質に結合する工程、および
c)工程b)に続いて組成物中の外来物質の存在または不存在を決定する工程、
を含んでなる、方法。
【0016】
(3)少なくとも1種の活性物質を含んでなる組成物中の外来物質の試験方法であって、
a)個体にポリヌクレオチド構築物を免疫感作することにより生成された抗体を準備する工程、
b)該抗体を、少なくとも1種の活性物質を含んでなる組成物と接触させる工程であって、抗体が活性物質と結合する工程、および
c)工程b)に続いて組成物中の外来物質の存在または不存在を決定する工程、
を含んでなる、方法。
【0017】
(4)(1)ないし(3)項目のいずれかに記載の方法であって、項目(1)の工程b)の前または項目(2)および(3)の工程c)の前に、活性物質が抗体に結合することにより、好ましくは特異的に結合することにより中和または不活性化されている、方法。
【0018】
換言すると、活性物質は組成物中の外来物質の存在または不存在を決定する工程の前に、抗体に結合することにより中和または不活性化される。
【0019】
(5)(1)ないし(3)項目のいずれかに記載の方法であって、組成物中の外来物質の存在または不存在を決定する工程が、
a)活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物を接種した、好ましくは免疫感作したヒト以外の動物を使用し、そして該動物に被験組成物を接種し、
b)特定期間の後、生きている動物の割合を評価し、ここで接種した動物の少なくとも80%が生存し、かつ該期間中に感染の証拠を示さなかった場合、その組成物は外来物質を含まないと見なされ、そして接種した動物の80%未満が生存し、かつ/または該期間中に少なくとも1匹の動物が感染した証拠を示した場合、その組成物は外来物質を含有すると見なされる、
ことを含んでなる、方法。
【0020】
(6)(1)ないし(4)項目のいずれかに記載の方法であって、組成物中の外来物質の存在または不存在を決定する工程が、
a)ヒト以外の動物に、中和または不活性化活性物質を含有する被験組成物を接種し、
b)特定期間の後、生きている動物の割合を評価し、ここで接種した動物の少なくとも80%が生存し、かつ該期間中に感染の証拠を示さなかった場合、その組成物は外来物質を含まないと見なされ、そして接種した動物の80%未満が生存し、かつ/または該期間中に少なくとも1匹の動物が感染した証拠を示した場合、その組成物は外来物質を含有すると見なされる、
ことを含んでなる、方法。
【0021】
被験組成物中の外来物質の存在または不存在を決定する工程は、例えば2つの方法により行うことができる:1つの可能性は、被験組成物中に存在する活性物質を、試験生物、例えばヒト以外の動物に組成物を接種する前に中和することである(例えば項目(6)を参照されたい)。この中和はインビトロで行われ、すなわち試験生物自体で行われるものではない。試験生物は被験組成物を組成物が中和された後に接種される。もう1つの可能性(例えば項目(5)を参照にされたい)は、中和工程がその場(in situ)で行われ、例えば試験生物自体で行われる。これは活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物を用いた試験生物の能動的免疫感作により達成される。そのように行うことにより、試験生物は活性物質の少なくとも一部に対して向けられた抗体を生じる。試験生物が被験組成物(活性物質を含むが未だ中和されていない)を接種されるとすぐに、これらの抗体が次いで活性物質を中和できる。したがって、被験組成物中の外来物質の存在または不存在の決定は、インビトロでの活性物質の中和工程を必要とせずに同じ試験生物内で行うことができる。これは試験法を行うために必要な時間、必要な試験生物数を有意に減少し、そしてさらに試験の確実さ(robustness)および安全性を上
げる。
【0022】
(7)項目(5)または(6)に記載の方法であって、ヒト以外の動物が、成体マウス、哺乳マウスおよびモルモットからなる群から選択され、そして生きている動物の割合および感染の証拠の発生が、接種動物が成体マウスの場合には被験組成物の接種から少なくとも7〜10日の期間後、場合により21日の期間後に評価され、接種動物が哺乳マウスの場合には被験組成物の接種から14日の期間後に評価され、そして接種動物がモルモットの場合には被験組成物の接種から少なくとも42日の期間後に評価される、方法。
【0023】
(8)項目(5)ないし(7)のいずれかに記載の方法であって、被験組成物の接種が脳内および/または腹腔内で行われる、方法。
【0024】
(9)前記項目のいずれかに記載の方法であって、組成物中の外来物質の存在または不存在を決定する工程が、規定の要件に従い、好ましくは欧州薬局方、2005、2.6.16章の要件に従い行われる、方法。
【0025】
(10)前記項目のいずれかに記載の方法であって、ここで被験組成物が、活性物質が生産される細胞培養物のサンプル、または該細胞培養物から誘導される生産物である、方法。
【0026】
さらにまた別法として、被験組成物がそれぞれシード(seed)ウイルス、またはシードウイルスを含む組成物であることも可能である。本発明の意味ではシードウイルスとは、抗原またはワクチンを生産するために使用されることを意図するウイルスである。例えばシードウイルスは、ウイルスを安全にし、そして細胞培養または卵の中で増殖することができるように遺伝的に改変することができる。
【0027】
(11)項目(1)ないし(10)のいずれかに記載の方法であって、組成物が製薬学的組成物、好ましくはワクチン調製物またはその中間産物である、方法。
【0028】
(12)項目(1)ないし(11)のいずれかに記載の方法であって、活性物質が抗原、好ましくは不活性化または弱毒化ウイルスであり、より好ましくはスプリットウイルス抗原、ウイルス抗原のサブユニットまたはビロゾームのようなウイルス抗原、あるいは活性物質はウイルスもしくはウイルス粒子の少なくとも一成分を含んでなり、好ましくは活性物質剤はインフルエンザウイルス粒子である、方法。
【0029】
(13)項目(1)ないし(12)のいずれかに記載の方法であって、活性物質がポリヌクレオチド配列によりコードされる抗原である、方法。
【0030】
(14)前記項目のいずれかに記載の方法であって、抗体が、個体にポリヌクレオチド構築物を免疫感作することにより提供される、方法。
【0031】
(15)前記項目のいずれかに記載の方法であって、抗体および活性物質が同じポリヌクレオチド構築物を使用して誘導されない、方法。
【0032】
(16)項目(15)に記載の方法であって、ポリヌクレオチド構築物が少なくとも1つの構造および/または機能要素が異なる、方法。
【0033】
(17)項目(15)または(16)に記載の方法であって、ここでポリヌクレオチド構築物がそれらがコードするポリペプチドに関して異なる、方法。
【0034】
(18)前記項目のいずれかに記載の方法であって、抗体が外来物質としてウイルス、例えばニューモウイルス亜科(Pneumovirinae)、例えばRSウイルス(RSV)を含むニューモウイルス属(Pneumovirus genus);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のファミリーのモルビリウイルス(Morbilliviruses)、例えば麻疹ウイルス;ピコルナウイルス科(Picornaviridae)のファミリーのエンテロウイルス(Enteroviruses)、例えばコサッキー(Coxsackie)ウイルス、例えばコサッキーB5、エコーウイルス、エンテロウイルスのA−D群およびライノウイルス; 哺乳動物 レオウイルス科(Reoviridae)、特にオルトレオウイルス(例えば哺乳動物 レオウイルス、例えばレオウイルス1、2および3)およびロタウイルス;レトロウイルス科(Retroviridae)のメンバー、例えばオルトレトロウイルス亜科(Orthoretrovirinae)、例えばレトロウイルス、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のファミリーのメタニューモウイルス(Metapneumoviruses)、例えばヒト メタニューモウイルス(HMPV)、またはパラインフルエンザウイルス1、2、3および4型; パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のファミリーのルブラウイルス(Rubulaviruses)、例えばムンプスウイルス;風疹ウイルス(Rubellavirus)のようなトガウイルス科(Togaviridae);コロナウイルス科(Coronaviridae)、例えばSARSコロナウイルス、および他のヒトコロナウイルス、例えばコロナウイルスOC43, 229E, NL63およびHKU1;ピコルナウイルス科(Picornaviridae)のファミリーのライノウイルス(Rhinoviruses)、例えばライノウイルスの M-株; 帯状疱疹ウイルス(VZV)、ヒト ヘルペスウイルス2(HHV3)としても知られている;ポリオーマウイルス科(Polyomaviridae)、例えばSV-40ポリオーマウイルス、BKポリオーマウイルスおよびJCポリオーマウイルス;ブタ サーコウイルス; ブタ ピコルナウイルス、例えばブタ 水胞病ウイルス(SVDV)およびテッシェン-タルファン(Teschen-Talfan)ウイルス;パルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバー、例えばイヌ パルボウイルス(CPV)、ボカウイルスまたはブタ パルボウイルス;パラインフルエンザウイルス(PIV);オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)のメンバー、インフルエンザウイルス A および B型を含む;パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)
パラミクソウイルス亜科(paramyxovirinae)のメンバー、PIV-I、PIV-2 およびPIV-3を含む;ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、例えば単純ヘルペスウイルス1 および2、ヒト 単純ヘルペスウイルス6, 7 または 8型、サイトメガロウイルスおよびエプスタインバールウイルス;アデノウイルス科(Adenoviridae)、例えアデノウイルス、ヒト、サルおよび鳥類アデノウイルス、例えば鳥類アデノウイルス1を含む;鳥類 サーコウイルス;鳥類 レオウイルス科(Reoviridae)、特にオルトレオウイルス、例えば鳥類 レオウイルス;パピローマウイルス科(Papillomaviridae)のメンバー、ヒトパピローマウイルスを含む;フラビウイルス科(Flaviviridae)のメンバー、例えば西ナイルウイルス;およびビルナウイルス科(Birnaviridae)、例えば伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(ガムボロウイルスとしても知られている)からなる群から選択されるウイルスを試験するために使用され、 および/またはここで抗体は、外来物質としてバクテリア、例えばトラコーマクラミジア、肺炎クラミジアおよびオウム病クラミジアを含むクラミジア(Chlamydia)バクテリア;およびマイコプラズマ(Mycoplasma)を試験するために使用される、方法。
【0035】
(19)前記項目のいずれかに記載の方法であって、ポリヌクレオチド構築物がHA(血球凝集素)および/またはNA(ノイラミニダーゼ)コード配列を含んでなる、方法。
【0036】
好適な態様では、ポリヌクレオチド構築物はこれら任意のHAおよび/またはNAコード配列を単独または互いに組み合わせて含んでなる。またポリヌクレオチド構築物はこれら配列の部分のみを含むことも可能である。好ましくはポリヌクレオチド構築物はH1、H2、H3、H5、H6、H7、N1、N2、N3またはN7をコードする完全な配列または配列の一部を、単独または組み合わせて、好ましくはH5を単独で含む。さらに好適な態様では、ポリヌクレオチド構築物はH1N1、H2N2、H3N2、H6N1、H7N3またはH7N7をコードする配列または配列の部分、好ましくはH5N1をコードす
る配列または配列の部分を含んでなる。
【0037】
(20)前記項目のいずれか、特に項目(14)に記載する方法であって、活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物が、特にポリヌクレオチド構築物を用いて免疫感作する個体に対してコドン最適化により最適化されているコドンである、方法。
【0038】
(21)前記項目のいずれかに記載の方法であって、活性物質がインフルエンザ抗原を含んでなり、そしてポリヌクレオチド構築物が配列番号1または2に示す核酸と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、そしてさらに好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する配列を含んでなる、方法。
【0039】
(22)前記項目のいずれかに記載の方法であって、活性物質がインフルエンザ抗原を含んでなり、そしてポリヌクレオチド構築物が配列番号1または2に示す配列を含んでなる、方法。
【0040】
(23)以下の状態のいずれか:
i)被験組成物中の活性物質の存在または不存在、
ii)組成物中の外来または感染物質の存在または不存在
を試験するための、該活性物質に対して特異的に抗体を生じるための活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物の使用であって、抗体がポリヌクレオチド構築物を用いた個体の免疫感作により提供され、そして活性物質が該抗体により中和または不活性化されている、使用。
【0041】
(24)項目(23)に記載の使用であって、活性物質が感染性を現し、そして組成物の感染性の不存在は、抗体が活性物質を中和または不活性化しており、そしてさらなる感染物質が存在しないことを示す、使用。
【0042】
(25)項目(23)または(24)に記載の使用であって、活性物質が抗原、好ましくはウイルス粒子であるか、あるいは活性物質がウイルス粒子の少なくとも一成分を含んでなり、特にここで該ウイルス粒子はインフルエンザウイルス粒子である、使用。
【0043】
(26)項目(23)ないし(25)のいずれかに記載の使用であって、組成物の試験が陽性または陰性対照試験である、使用。
【0044】
(27)項目(23)ないし(26)のいずれかに記載の使用であって、組成物の試験が外来物質に関する試験である、使用。
【0045】
(28)製薬学的組成物、特にワクチンの生産方法であって、生産工程の少なくとも一時点で:
a1)項目(1)ないし(22)のいずれか1項に記載の方法を行うか;あるいは
a2)項目(23)ないし(27)のいずれかに記載の使用を行い;そして場合により
b)外来物質を除去および/または不活性化するための処理により、製薬学的組成物、特にワクチン、またはその中間産物を処理し、かつ/または製薬学的組成物またはワクチンが誘導される細胞培養物を処理する工程、
を含む、方法。
【0046】
(29)項目(28)の方法であって、病原性物質が決定された場合、工程b)での処理は該病原性外来物質を除去および/または不活性化するために特異的に適合されている、方法。
【0047】
(30)活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物の発現産物に対して生じた抗体の活性物質の精製のための使用であって、抗体が該活性物質に特異的に結合し、ここで抗体および活性物質は同じポリヌクレオチド構築物を使用して誘導されない、使用。
【0048】
(31)項目(30)に記載の使用であって、使用する抗体が項目(14)−(22)で定義される、使用。
【0049】
(32)項目(30)または(31)に記載の使用であって、抗体が固体相に結合するための親和性タグを含んでなる、使用。
【0050】
(33)配列番号1または2に示す核酸と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する配列を含んでなるポリヌクレオチド。
【0051】
(34)項目(33)に記載のポリヌクレオチドであって、ここでポリヌクレオチドは配列番号1または2に示す配列を有する、ポリヌクレオチド。
【0052】
(35)項目(33)または(34)に記載のポリヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチド構築物。
【0053】
(36)項目(33)もしくは(34)のポリヌクレオチドまたは項目(35)のポリヌクレオチド構築物を含んでなる宿主細胞。
【0054】
(37)項目(36)に記載の宿主細胞であって、宿主細胞がバクテリア細胞、酵母細胞、菌・カビ細胞、植物細胞、藻類細胞または昆虫細胞、好ましくはバクテリア細胞または酵母細胞、そして最も好ましくはバクテリア細胞である、宿主細胞。
【0055】
(38)項目(36)または(37)に記載の宿主細胞であって、宿主細胞が大腸菌(Escherichia coli)細胞、ストレプトミセス(Streptomyces)細胞、ピキア パストリス(Pichia pastoris)細胞、またはシゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)細胞、好ましくは大腸菌細胞である、宿主細胞。
【0056】
(39)項目(33)もしくは(34)に記載のポリヌクレオチドまたは項目(35)に記載のポリヌクレオチド構築物を含むヒト以外の生物、トランスジェニック動物または微生物。
【0057】
(40)項(33)または(34)に記載のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドに特異的な抗体。
【0058】
(41)a)項目(35)に記載のポリヌクレオチド構築物を準備する工程、および
b)適切な個体、好ましくはマウス、ラットまたはウサギ、より好ましくはウサギのような適切な動物を該ポリヌクレオチド構築物で免疫感作する工程、
を含んでなる項目(40)に記載の抗体の生産方法。
【0059】
(42)組成物中の外来物質を試験する部分キットの使用であって、
a)活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物、および
c)宿主細胞、
を含んでなる、キット。
【0060】
(43)a)配列番号1または2に示す核酸と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物、または配列番号1または2に示す配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物、および
b)宿主細胞、
を含んでなる部分キット。
【0061】
発明の詳細な説明
本発明をこれから好適態様および実施例によりさらに詳細に記載するが、それらは目的を具体的に説明するためにのみ提示するものであり、本発明の範囲をどのようにも限定するとは理解されない。
【0062】
本発明は、組成物中に存在する活性物質に特異的に結合する抗体を使用することにより、組成物中の汚染物の効果的で迅速な、しかも信頼性がある検出法を提供するが、ただし該抗体は活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物の発現産物に対してすでに生じたものである。免疫感作のために組換えポリヌクレオチド構築物を使用することにより調製された抗体が特に有利であり、そして外来物質または付随物質を試験する前に活性物質の中和または不活性化に有用となることが分かった。そのような抗体は、活性物質としてタンパク質物質を含有する組成物中の外来物質の試験に特に適している。抗体を調製するために使用するポリヌクレオチド構築物は合成的に調製され、そして所定の活性物質中に存在するアミノ酸配列の少なくとも一部をコードするポリヌクレオチドを含んでなるので、ポリヌクレオチド構築物は中和または不活性化の標的に対して相同的配列をコードするが、試験中に抗体を組成物に加えた場合に、外来物質または付随物質で汚染されない。それとは反対に、所定の活性物質自体を用いて動物を免疫感作することにより生成される抗体を使用する他の免疫原性外来物質試験は、組成物中に存在する外来物質に特異的な抗体の形成も十分に導く恐れがあり、これにより偽陰性の結果のリスクを生じる。動物でそのような望ましくない抗体の生産は、例えば活性物質が生産される細胞培養系から生じる汚染物により誘導される可能性がある。しかし結果として、本発明による抗体生産のためのポリヌクレオチド構築物の免疫感作の使用とは異なり、外来物質に特異的となる抗体が試験中に外来物質を中和し、これにより分析に誤りを導く。本発明の方法は汚染物に特異的な抗体の形成のリスクを回避するか、または少なくとも減らすことができる。すなわち例えば偽陰性の外来物質試験結果を回避することができる。さらに交差反応が起こる危険性も下がる。さらにポリヌクレオチド構築物は、混入する外来物質の不存在を示すために適切な試験系で直接試験することができ、例えば構築物は広い配列の潜在的汚染物に関するPCRにより、あるいは欧州薬局方2.6.16章に記載されている方法を適用することにより直接試験することができる。
【0063】
特に後の試験では本質的にインフルエンザウイルス自体とは反応しないことを意図して、個体を例えばインフルエンザウイルス抗原のようなウイルス抗原をコードするポリヌクレオチド構築物で直接免疫感作することにより、インフルエンザウイルス抗原に特異的に結合する抗体を迅速に生成することが可能であることが分かった。このように本発明の方法を使用することにより、例えば野生型ウイルスまたはワクチン調製工程中に得られるウイルス粒子自体を用いて動物を免疫感作することによる特異的抗体の生成はもはや必要ではなく、これは続く試験段階で使用される抗体生成に必要な時間を有意に減少する。加えて、ポリヌクレオチド構築物は流行する(可能性がある)または季節性のインフルエンザウイルス株が同定されると直ぐに調製することができるので、もはや交差反応株の同定および培養に頼る必要性は無い。これは流行のまたは季節性のワクチンは市場へ迅速に供給されることが必要なので、インフルエンザの流行性または季節的大発生の場合に特に有用
である。本発明の方法を適用することにより、これらのインフルエンザ抗原に対して向けられた特異的抗体は迅速に生成され、そしてインフルエンザワクチン調製の工程中に試験するために、さらには選択して治療目的に使用されることができる。したがって本発明はワクチン供給リードタイムを短くすることができる。また生成した抗体は品質検査に使用することもできるので、ワクチンまたはその中間産物は例えば外来物質試験に供されて、本発明はワクチンの向上した品質をも導く。さらに本発明の教示を適用することにより、外来物質が検出された後に、そのバッチを検出された付随物質の不活性化または除去の特別な処理に供することにより、高価な生産バッチとしてさらに使用することも可能かもしれない。
【0064】
全体として、本発明の方法を適用することにより、試験した組成物の改善された品質および安全性、ならびに付随物質試験の改善された消費時間が実現する。その結果、試験した組成物の供給リードタイムを短縮することができる。
【0065】
一つの特定の観点では、本発明は少なくとも1種の活性物質を含んでなる組成物中の外来物質の試験方法に関し、この方法は:
a)活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物の発現産物に対して生じた抗体と、少なくとも1種の活性物質を含んでなる組成物とを接触させる工程であって、抗体が活性物質に結合する工程、および
b)工程a)に続いて組成物中の外来物質の存在または不存在を決定する工程、
を含んでなる。
【0066】
本発明の意味において、用語「外来物質」または「付随物質」とは、被験組成物中に存在する可能性がある汚染物を指す。付随または外来物質は、組成物中に含まれることを意図していない物質であり、そして組成物を含有する生成物の特性に悪い影響を及ぼす恐れがある。例えば組成物が製薬学的調製物を構成し、またはそのために使用する場合、付随物質は例えば感染性物質(病原体)、すなわちヒトもしくは動物に感染することができる物質であり得る。そのような感染物質は微生物、例えばバクテリア、菌・カビ、藻類、ウイルスもしくはその部分であり得る。ウイルスはしばしば、生物製剤の生産に使用される細胞培養のような系で成長することも可能である。さらに組成物は宿主細胞のDNAで汚染される恐れもある。
【0067】
生物製剤の生産、特にウイルス粒子の生産に使用される典型的な細胞株は、MDCK、CHO、BHK、Vero、MRC-5、PER.C6、WI-38等を含む哺乳動物細胞株である。そのような細胞に故意にではなく感染し、したがって本発明に従い試験されるべき潜在的な外来もしくは付随物質を表す感染性ウイルスおよびバクテリアの例には、例えばニューモウイルス亜科(Pneumovirinae)、例えばRSウイルス(RSV)を含むニューモウイルス属(Pneumovirus genus);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のファミリーのモルビリウイルス(Morbilliviruses)、例えば麻疹ウイルス;ピコルナウイルス科(Picornaviridae)のファミリーのエンテロウイルス(Enteroviruses)、例えばコサッキー(Coxsackie)ウイルス、例えばコサッキーB5、エコーウイルス、エンテロウイルスのA−D群およびライノウイルス; 哺乳動物 レオウイルス科(Reoviridae)、特にオルトレオウイルス(例えば哺乳動物 レオウイルス、例えばレオウイルス1、2および3)およびロタウイルス;レトロウイルス科(Retroviridae)のメンバー、例えばオルトレトロウイルス亜科(Orthoretrovirinae)、例えばレトロウイルス、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のファミリーのメタニューモウイルス(Metapneumoviruses)、例えばヒト メタニューモウイルス(HMPV)、またはパラインフルエンザウイルス1、2、3および4型; パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のファミリーのルブラウイルス(Rubulaviruses)、例えばムンプスウイルス;風疹ウイルス(Rubellavirus)のようなトガウイルス科(Togaviridae);コロナウイルス科(Coronaviridae)、例えばSARSコロナウイルスおよび他のヒトコロナウ
イルス、例えばコロナウイルスOC43, 229E, NL63およびHKU1;ピコルナウイルス科(Picornaviridae)のファミリーのライノウイルス(Rhinoviruses)、例えばライノウイルスの
M-株; 帯状疱疹ウイルス(VZV)、ヒト ヘルペスウイルス2(HHV3)としても知られている;ポリオーマウイルス科(Polyomaviridae)、例えばSV-40ポリオーマウイルス、BKポリオーマウイルスおよびJCポリオーマウイルス;ブタ サーコウイルス; ブタ ピコルナウイルス、例えばブタ 水胞病ウイルス(SVDV)およびテッシェン-タルファン(Teschen-Talfan)ウイルス;パルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバー、例えばイヌ パルボウイルス(CPV)、ボカウイルスまたはブタ パルボウイルス;パラインフルエンザウイルス(PIV);オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)のメンバー、インフルエンザウイルス A および B型を含む;パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae) パラミクソウイルス亜科(paramyxovirinae)のメンバー、PIV-I、PIV-2 およびPIV-3を含む;ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、例えば単純ヘルペスウイルス1 および2、ヒト 単純ヘルペスウイルス6, 7 または 8型、サイトメガロウイルスおよびエプスタインバールウイルス;アデノウイルス科(Adenoviridae)、例えアデノウイルス、ヒト、サルおよび鳥類アデノウイルス、例えば鳥類アデノウイルス1を含む;鳥類 サーコウイルス;鳥類 レオウイルス科(Reoviridae)、特にオルトレオウイルス、例えば鳥類 レオウイルス;パピローマウイルス科(Papillomaviridae)のメンバー、ヒトパピローマウイルスを含む;フラビウイルス科(Flaviviridae)のメンバー、例えば西ナイルウイルス;およびビルナウイルス科(Birnaviridae)、例えば伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(ガムボロウイルスとしても知られている)からなる群から選択されるウイルス;およびバクテリア、例えばトラコーマクラミジア、肺炎クラミジアおよびオウム病クラミジアを含むクラミジア(Chlamydia)バクテリア;およびマイコプラズマ(Mycoplasma)を含む。
【0068】
本発明による方法を適用することにより、組成物中の個々の外来または付随物質の存在は、効率的で迅速な、しかも信頼性のある様式で試験することができる。そのような被験組成物は、特定の品質的要件を満たすべき任意の組成物、またはその任意の上流サンプルでよい。そのような組成物は、例えばヒトまたは動物の任意の体液またはサンプル中に疾患または感染物質を検出するための試験キットで使用することができる。また本発明による方法は、分析または調製を目的とするような任意の研究室での用途に使用する組成物を試験するためにも適している。さらに本発明の意味において被験組成物は、例えば活性物質が生産される細胞培養のサンプル、あるいは単離−もしくは精製産物またはその任意の中間産物であることができる。サンプルは任意のプロセス工程で採取することができる。また組成物はこの細胞培養から誘導される生成物であることもできる。ここでもこの生成物は任意の段階の細胞培養物に由来する生成物であることができ、これは生成物が最終生成物の前駆体または最終生成物自体のいずれか、あるいはその間の任意の生成物のいずれかでよいことを意味する。さらに別法では、被験組成物はそれぞれシードウイルスであるか、またはシードウイルスを含有する組成物であることが可能である。本発明の意味において、シードウイルスは抗原またはワクチンの生産に使用されることを意図するウイルスである。
【0069】
本発明の意味する別の組成物は、製薬学的組成物である。好ましくは組成物は製薬学的組成物である。製薬学的組成物は、ヒトまたは動物の疾患を防止し、診断し、緩和し、処置し、または治癒するために体内または上で使用されることができる。好ましくはそのような製薬学的組成物は、ワクチン調製物またはその中間産物である。製薬学的組成物がワクチン調製物である場合、ワクチンバッチの特定のサンプルを試験することも可能である。試験すべき他の組成物は、例えば最終的に製薬学的またはワクチン生成物を導くプロセス段階に由来する任意のサンプルであり、例えば活性物質が誘導される細胞培養物に由来するサンプル、または任意の中間産物である。
【0070】
製造工程中の任意の時期に、付随物質を含む汚染が生じ得る場合、あるいは適切に試験
できる場合、本発明の方法は該組成物の製造中、任意の段階で行うことができる。
【0071】
被験組成物は、少なくとも1種の活性物質を含んでなる。本発明の意味における活性物質は、組成物中の有効成分である任意の化学的もしくは生物学的物質または化合物を表す。製薬学的組成物の場合、活性物質は生物製剤(biopharmaceutical)のような薬物化合物、そして特に発現されたポリペプチドでよい。好ましくは活性物質は抗原であり、好ましくは抗原は不活性化または弱毒化されたウイルスであり、そしてより好ましくは抗原はウイルス抗原である。これらウイルス抗原の例は、例えば部分的に破壊されたウイルス粒子、例えばスプリット(split)ウイルス抗原のようなウイルス粒子、サブユニットウイルス抗原またはビロゾームのような精製されたエンベロップ抗原である。ビロゾームは単一ラメラのリン脂質二重層小胞であり、例えば約70nm〜約150nmの範囲の適切な平均直径を持つ。本質的に、ビロゾームは再構成された空のウイルスエンベロップを表し、供給源のウイルスの遺伝物質を含むヌクレオカプシドを欠いている。ビロゾームは複製することはできないが、リン脂質二重膜に差し込まれたインフルエンザウイルスの血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)のような機能的ウイルスエンベロップの糖タンパク質を含む純粋な融合−活性小胞である。活性物質がウイルスまたはウイルス粒子の少なくとも一成分を含んでなることも好適であり、好ましくは活性物質はインフルエンザウイルス粒子である。
【0072】
本発明の方法は本質的に流行のワクチン生産の分野に特に有用であるので、好適な態様に従い、活性物質はインフルエンザワクチンに存在することができるインフルエンザウイルス粒子に由来する抗原またはワクチン成分である。これらのインフルエンザワクチンは、任意の適切なインフルエンザ株(1もしくは複数)に基づくことができる。インフルエンザワクチンは典型的にはインフルエンザA、BおよびCウイルスの少なくとも1株に由来する抗原、好ましくはインフルエンザAまたはBの少なくとも1株に由来する抗原を含む。ワクチンに薦められる株は、季節毎に変化する可能性がある。ワクチンが2以上の適切なインフルエンザ株に基づくことも可能となり得る。例えばインフルエンザワクチンは2種のインフルエンザA株および1種のインフルエンザB株を含むことができる。さらにワクチンは一価のみだけでなく、二−、三−または多価ワクチンとなり得ることも可能であり、好ましくはワクチンは三価ワクチンである。活性物質、好ましくはインフルエンザウイルス粒子に由来する抗原またはワクチン成分を含有するインフルエンザワクチンは、当業者に既知の任意の技術により製造することができる。例えばワクチンは活性物質または活性物質の一部をコードするポリヌクレオチド構築物を使用することにより、あるいは卵または細胞に生ワクチン調製物を感染させることにより製造してもよい。好ましくはワクチンは卵または細胞に生ワクチン調製物を感染させることにより製造される。ワクチンの製造が細胞に基づく場合、増殖しているウイルスを宿すことができる細胞、例えばMDCK(メィディン-ダービー イヌ 腎臓細胞)、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞)、BHK(ベビーハムスター腎臓細胞)、Vero(アフリカミドリザルの腎臓上皮細胞由来細胞)、MRC-5(二次ヒト肺繊維芽細胞)、PER.C6(ヒト胎児網膜細胞由来細胞)、WI-38(ヒト胎児肺組織由来細胞)等の哺乳動物細胞が使用される。通常、ウイルスまたは生ウイルス調製物はそれぞれ、増殖する細胞に注入される。次いで細胞の外壁を除去し、回収し、精製し、そして不活性化する。卵に基づく製造では、通常、ウイルスまたは生ウイルス調製物はそれぞれ卵に注入され、そして胚の回りの流体に蓄積する。胚は感染させられるようになるので、ウイルスは増殖することができる。特定期間の後、ウイルスを回収し、精製し、そして化学的に不活性化する。このウイルスまたはウイルスの部分は、ワクチンを生産するために使用される。
【0073】
本明細書で使用する用語「ポリヌクレオチド」は、二本鎖または一本鎖核酸分子、例えばDNA、cDNA、ゲノムDNA、RNAおよび/またはmRNA分子などを意味すると理解される。核酸分子はコード鎖または相補鎖のいずれかとして存在することができる
。ポリヌクレオチドは、天然起源であるか、または遺伝子工学もしくは化学法および合成法により生成することができ、あるいはそれらから誘導されたものでよい。好ましくはポリヌクレオチド配列は、活性物質として抗原をコードする。
【0074】
本発明の方法に従い、工程a)で、活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物の発現産物に対して生じた抗体を、少なくとも1種の活性物質を含んでなる組成物と接触させ、ここで抗体は活性物質に、例えば抗原−抗体複合体の形成により特異的に結合する。
【0075】
以下では、本発明に使用する抗体をさらに詳細に記載する。それらはポリヌクレオチド構築物またはベクターから誘導される。用語「ポリヌクレオチド構築物」または「ベクター」は、それぞれ外来ポリヌクレオチド(またはそれぞれ挿入物)を宿主細胞または宿主生物に導入するために使用する分子を表す。ポリヌクレオチド構築物は、上記のポリヌクレオチドを含んでなり、好ましくはポリヌクレオチド構築物またはベクターはDNAまたはRNA配列であり、そしてさらに好ましくはDNA配列である。ポリヌクレオチド構築物は、1もしくは複数の(ポリ)ペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列、または挿入物をそれぞれが含む。このポリヌクレオチドまたは挿入物は、それぞれ二本鎖または一本鎖の核酸分子、例えばDNA、cDNA、ゲノムDNA、RNAおよび/またはmRNA分子などであることができる。核酸分子は、コード鎖または相補鎖のいずれかとして存在することができる。ポリヌクレオチドは天然起源であるか、または遺伝子工学または化学法および合成法により生成されることができ、あるいはそれらから誘導されたものでよい。好ましくはポリヌクレオチド配列は、活性物質の少なくとも一部を表す(ポリ)ペプチドまたはタンパク質をコードする。
【0076】
本発明の意味において、「ポリヌクレオチド構築物の発現産物に対して生じた抗体」という表現は、抗体が適切な生物をポリヌクレオチド構築物で免疫感作することにより得られるか、あるいは細胞または細胞系内で抗体を生じることにより得られることを表す。この特異的免疫感作から得られた生成抗体は、場合により単離され、ポリヌクレオチド構築物により含まれる配列によりコードされるポリ(ペプチド)に(選択的な特異性で)結合し、ここで(ポリ)ペプチドは活性物質の少なくとも一部を表す。
【0077】
好ましくはポリヌクレオチド構築物またはベクターは、それぞれ本発明に従い、a)プロモーター領域、b)本明細書に開示するようにプロモーター領域に操作可能にそれぞれ連結されるポリヌクレオチドまたは挿入物、およびc)任意に、それらに操作可能に連結される調節配列、これは転写、終結および/またはポリアデニレーションシグナル、エンハンサー配列および/またはリーダーシグナルをコードする配列、および/または効率的なリボゾーム結合を確実にする配列、例えばKozakコンセンサス配列として作用することができる。適切なプロモーターおよび/または調節配列は分子生物学の当業者には周知である。いずれにせよ熟練者は適切なプロモーターおよび/または調節配列を文献、たとえば関連する科学雑誌および遺伝子データベースで見いだすことができ、あるいは彼らはSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3
rd edition,Cold Spring Harbor Press,(2000)に記載されているような標準法を使用して所望の生物から単離することができる。
【0078】
本発明に従い使用されるポリヌクレオチド構築物に適するポリヌクレオチド配列または挿入物は、それぞれ活性物質の少なくとも一部を形成するポリペプチドをコードする配列に基づき、当業者により決定され得る。活性物質としてウイルス抗原の場合、ウイルス抗原をコードするヌクレオチド配列は通常知られており、例えばウイルスまたはワクチンが「逆遺伝学」の手法により調製される場合である(例えば Neumann et al.,“Reverse Genetics of Influenza Virus”, Minireview, Virology 287, 243-250, 2001、そこに引用
されている参考文献、ならびに後の逆遺伝学技法を参照にされたい)。適切なポリペプチドをコードする全ポリヌクレオチド配列またはその一部は当業者により選択されることができ、そしてポリヌクレオチド構築物に導入され得る。適切なポリペプチドは、免疫感作した個体に効率的な抗体応答を誘導することができるポリペプチドである。適切なポリペプチドは例えば、PubMed database (例えばhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/,
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/FLU/FLU.html,
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/145284465?ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntre z. Sequence. Sequence_ResultsPanel.Sequence_RVDocSum および
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore)のような当業者に知られているデータベースに見いだすことができる。好ましくはポリペプチドは1もしくは複数の抗原決定基(エピトープ)を含んでなる。ポリヌクレオチド構築物は、1つの活性物質または活性物質の一部をコードするだけでなく、1もしくは複数の他の活性物質または他の活性物質の部分もコードするポリペプチドを含むことも可能である。また異なるポリヌクレオチドまたは挿入物をそれぞれ含有する異なるポリヌクレオチド構築物を使用することも可能である。しかしこれは組成物中に存在する異なる活性物質の存在および数に依存する可能性がある。このように異なる種類の活性物質が存在する場合、異なる種類のポリヌクレオチド構築物(各種類は、1種類の活性物質の少なくとも一部を表すポリペプチドをコードする配列を含んでなる)が作成される。
【0079】
好ましくは本発明で使用されるポリヌクレオチド構築物またはベクターは発現ベクターである。発現ベクターはそれが含む遺伝子の発現(すなわち転写および翻訳)を制御できるベクターである。さらに一層好ましくは、ベクターは哺乳動物のプラスミド発現ベクターである。そのようなベクターの例は、プラスミド(p) pCMVである。好ましくは本発明で使用するベクターは以下の特徴を含む:a)サイトメガロウイルス(CMV) プロモーター、b)効率的なリボゾーム結合、したがって最大レベルのタンパク質翻訳を確実にするために、ATG開始コドンの前に置かれるKozakコンセンサス配列、およびc)転写終結シグナル、ポリ(A)シグナル、これは正しい転写の停止を確実にするために、活性物質の少なくとも一部を表す(ポリ)ペプチドまたはタンパク質をコードする配列の終わりに配置される。コード配列(すなわちポリヌクレオチド)は、適切な制限部位でベクター中にサブクローン化され得る。次いで生じたプラスミド(それぞれポリペプチド構築物またはベクター、好ましくはDNA構築物またはベクター)は、バクテリア細胞、酵母細胞、菌・カビ細胞、藻類細胞、植物細胞または昆虫細胞、好ましくは大腸菌(E.coli)細胞のようなバクテリア細胞のような適切な宿主細胞中での形質転換に使用され得る。形質転換した細胞は適切な培地で培養され、次いで回収そして溶解され、そしてプラスミドは回収される。前述の手順に適するプロトコールは、例えばSambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3
rd edition, Cold Spring Harbor Press, (2000)、Davis, et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier (1986)、および Ausubel, et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley lnterscience (1988)に見いだすことができる。
【0080】
生成したプラスミドのポリヌクレオチドを特性決定するために、一般に制限分析、ゲル電気泳動そしてさらに生化学的および分子生物学的方法を分析法として使用できる。これらの方法ならびに上記ポリヌクレオチド構築物の生成に使用される方法は周知であり、そして組換えポリヌクレオチド法に関する多くの方法論が公開され、それらにはSambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3
rd edition, Cold Spring Harbor Press, (2000)、Davis, et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier (1986)、および Ausubel, et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley lnterscience (1988)を含む。
【0081】
宿主細胞の形質転換は、発現ベクターの増幅に使用することができる。次いでこの増幅
した発現ベクターは、例えば以下に記載するように個体を免疫感作するために使用することができる。
【0082】
被験組成物中に存在している活性物質に特異的に結合する抗体または抗血清を生成するために、本発明の好適な態様では、個体が活性物質の少なくとも一部をコードするポリヌクレオチドまたは挿入物をそれぞれ含んでなるポリヌクレオチド構築物で免疫感作される。この適切な個体をポリヌクレオチド構築物で直接的免疫感作すると、例えば免疫感作が活性物質、例えば(ポリ)ペプチド自体を用いて行われる場合に必要となるかもしれない方法の工程を回避することができるので、発現産物に対する抗体の迅速な生成を導く。そのような別の方法で必要となる方法の工程は、例えば面倒なポリ(ペプチド)の精製である。本発明の時間を節約する能率的な方法は、活性物質がウイルス抗原、ウイルス粒子、ビロゾーム、または前記の部分である場合、試験が安全で、高品質なワクチンをより迅速に提供できることから特に有利となる。これは流行のまたは季節性のワクチンは市場へ迅速に供給されることが必要なので、インフルエンザの流行のまたは季節的大発生の場合に特に有利である。本発明の方法を適用することにより、これらインフルエンザ抗原の現在流行の、または季節性の株に対する特異的抗体、および相同的である抗体を迅速に作成し、そしてインフルエンザワクチン調製物の生成に使用することができる。類似の状況を他のワクチン調製に応用することができる。さらに免疫感作は合成ポリヌクレオチド構築物で行うこともできるので、適切な動物を汚染物で免疫感作する危険性は実質的に下がる。結果として、これらの汚染物に対する抗体生成の危険性は回避できるか、または少なくとも下げられるので、例えば偽陰性の外来物質の試験結果が回避される。これは試験組成物の安全性および品質を有意に強化するだろう。
【0083】
また個体は、各種類が異なるポリヌクレオチドを持つ2以上の異なる種類のポリヌクレオチド構築物で免疫感作することもできる。免疫感作される個体は、適切な動物、例えばヒツジ、ヤギ、ウサギ、ラット、マウス、イヌまたはモルモット、好ましくはウサギ、マウス、モルモットまたはラット、そしてより好ましくはウサギのようなヒト以外の個体である。適切な動物の免疫感作は、以下の周知な標準的手法に従い行うことができる。一般に、場合により精製されたポリヌクレオチド構築物は、標準的な皮下注射用針を使用した生理食塩中のポリヌクレオチド構築物の注射、遺伝子銃送達または圧気注入法のような多くの送達法により、好ましくは動物の組織に導入される。さらにこの送達は局所的適用手段により行うことができ、またはサイトフェクチン−媒介型の送達を行うことができる。次いで免疫感作された動物は、発現した(ポリ)ペプチドまたはタンパク質の少なくとも部分または全部に特異的な抗体を生産する。生産された抗体は免疫感作した個体の血中に存在し、そして当業者に周知な標準的手法により回収することができる。また免疫感作した個体から集めた血液から血清サンプルを調製することも可能である。抗体は、発現している(ポリ)ペプチドまたはタンパク質の性質に依存してモノクローナルまたはポリクローナルでよい。本発明の意味において用語「モノクローナル抗体」とは、同じ抗原特異性を有する抗体を表し、すなわちすべてが同じエピトープ(抗原決定基)に特異的である抗体である。それは発現している(ポリ)ペプチドが単一のエピトープに対応する場合、抗体は本発明の意味で「モノクローナル抗体」であることを意味する。発現している(ポリ)ペプチドまたはタンパク質が2以上のエピトープを含んでなる場合、免疫感作した動物により生産される特異抗体は、本発明の意味において「ポリクローナル抗体」である。
【0084】
特定期間、例えば最高100日、そして通常は最高70日または最高50日の後、好ましくは免疫感作からおよそ70日で免疫感作した動物により生成される特異抗体を当業者に周知な方法に従い得ることができる。好ましくは動物から全血を取り、そして抗体を含有する血清サンプルを得る。好適な態様では、工程a)に使用する抗体は、免疫感作した動物から単純に得た血清サンプルにより表される。
【0085】
工程b)の前に、活性物質は好ましくは抗体の結合により中和または不活性化される。好ましくは結合は特異的である。
【0086】
本発明の意味で用語「特異的結合」は、本発明の抗体が、被験組成物に存在する活性物質に特異性を現し、したがって該活性物質には選択的に結合するが、被験組成物に潜在的に存在する外来物質には結合しないことを示す。本発明の好適な態様では、本発明の抗体は専ら該活性物質に結合し、そして潜在的に存在する外来物質には全く結合しない。活性物質が上記のような抗原である場合、抗体の活性物質への特異的結合は交差反応でもよく、これは本発明の抗体が交差反応性を現すことを意味する。本発明の意味において用語「交差反応性」は、特定の抗体が共通する、または高い相同的エピトープを有する2以上の抗原と反応する能力を表す。これは例えば、2以上の活性物質または2以上の抗原がそれぞれ被験組成物中に存在する状況であり得る。
【0087】
本発明の意味において、中和された活性物質は特異抗体と相互作用する活性物質であり、例えばこれは特異抗体と複合体を形成し、したがって本質的にはそれ以上効果的になることはできない。好適な態様では、中和された活性物質は全く効果的ではない。本発明の意味において効果的ではない活性物質とは、例えばその機能、例えばその薬理学的機能をもはや遂行することができないことである。また効果的ではない活性物質は、活性物質に感受性の検出細胞株と接触した時、または試験動物に投与された時にもはや病原効果を引き起こすことができないかもしれない。前記の各手段により、付随物質試験は少なくとも本質的には活性物質自体に応答しないことが確実となる。
【0088】
本発明の好適な態様では、特異抗体がウイルス抗原もしくはウイルス粒子、またはウイルス抗原もしくはウイルス粒子の少なくとも一成分と反応し、そして故にその病原性、例えばその感染性および/または毒性を破壊し、または阻害する。特異抗体の中和力は、場合により工程b)を行う前に試験することができる。当業者に周知の中和試験を行うことができる。そのような中和試験の一例では、得られた特異抗体または特異抗体を含有する血清を、特異抗体と交差反応性の参照株と混合する。次いで反応した参照株は、この参照株の感染に感受性であるVero、MRC-5またはMDCK細胞株のような検出細胞株に接種することができる。次いでこれらの検出細胞株は適当期間、例えば約14日間観察され、そして病原効果の存在が検査される。抗体の中和力を試験する別の可能性は、卵モデル(この試験は例えば欧州薬局方、2.6.16章に記載されている)で感染性を試験することにより中和された調製物の感染性を試験することである。病原性効果は細胞の増殖または維持に悪い効果、特に微生物および/またはウイルス感染に付随する効果を及ぼす。病原性効果には限定するわけではないが、細胞変性効果(CPE)、細胞破裂、増殖阻害、タンパク質合成阻害またはアポトーシスがある。CPEは、細胞の型により変動し、そして死を引き起こす可能性がある細胞構造の観察可能な変化であり、そして当該技術分野で確立された知識に従い測定することができる。例えばウイルス感染の最も共通する効果の幾つかは、細胞の円形化および基質からの脱着、細胞溶解、シンシチウム形成および封入体形成のような形態学的変化である。中和活性はCPEの低下および赤血球凝集抑制により、または赤血球の感染細胞への血球吸着の低下により特徴付けられる。また中和活性は細胞上清の赤血球凝集試験によっても特徴付けることができる。
【0089】
しかしそのような中和試験は参照試験である。これはいったん抗体の中和力を所定の開発された系で示すことができれば、この中和試験をこの系のために一貫して行う必要はないことを意味する。
【0090】
試験した血清または抗体がそれぞれ十分な中和活性を持たないことが判明した場合、さらなる至適化を、ベクターの設計、免疫感作に使用する種、DNA構築物もしくはベクターのそれぞれの用量および投与経路、免疫感作および採血スケジュール、および中和力試
験の形式に関してさらに行うことができる。本発明の意味において「十分な中和活性」とは、抗体/活性物質複合体が適切な中和試験を行った時に検出可能な効果を生じることができないことを表す。
【0091】
本発明の方法に従い、工程b)で外来物質または付随物質の存在または不存在がそれぞれ決定される。これらの試験は公定要件に従い、例えば欧州薬局方、2005、2.6.16(ウイルスシードロット)の要件に従い、成体マウス、哺乳マウスおよびモルモットで行うことができる。鳥類組織に伝染したウイルスについては、鳥類ウイルスの試験を欧州薬局方、2005、2.6.16(ウイルスシードロットおよびウイルス回収)に記載されているように行う。
【0092】
さらに構築物は、欧州薬局方、2005(2.6.16)の2.6.16章に記載されているように、被験組成物で接種する前に、動物の試験系の能動的免疫感作に使用することもできる。これは、混入している物質に反応する動物試験モデルの能力を変化させずに、もはや必要ないシードウイルスを中和することになる。これにより試験系の確実性がさらに向上し、2.6.16に従う試験の形式に使用する動物数が減り、そして2.6.16でのコンプライアンスを示すために必要な時間がかなり短縮する。
【0093】
好ましくは本発明の上記態様では、抗体および活性物質は同じポリヌクレオチド、好ましくはDNA構築物を使用して誘導されない。ポリヌクレオチド構築物は、本発明に従い付随物質試験のための活性物質に対する抗体を生成するか、または調製規模で活性物質を生産するかのいずれかの異なる目的に供することができ、これは活性物質、例えばウイルス抗原もしくはウイルス粒子の生産に使用されるポリヌクレオチド構築物が、この活性物質を中和または不活性化する特異抗体の生成には使用されないことを意味する。
【0094】
本発明において、「同じポリヌクレオチド構築物を使用して誘導されない」という表現は、ポリヌクレオチド構築物は少なくとも1つの構造的および/または機能的要素が、例えば全構築物の特定部分に関して異なっているか、または異なる系で調製されたことを表す。例えば熟練者は、彼らが意図する用途に依存して、ポリヌクレオチド構築物またはベクターはそれぞれそれらが含む機能的要素について異なることができると認識している。例えばベクターが適切な宿主細胞中でポリヌクレオチドまたは挿入物それぞれの増幅のみに使用される場合、ベクターはベクターおよび宿主細胞中に含まれる挿入物の半独立的複製を可能にする少なくとも1つの複製起点(ori)を含むべきである。さらにそのようなベクターは、挿入物の挿入のためのヌクレオチド突出部を含むマルチクローニング部位(MCS)、またはポリヌクレオチドの挿入を可能にする複数の制限酵素コンセンサス部位のような追加の機能的要素を含むことができる。挿入物の転写を望むならば、ベクターはさらにプロモーター配列を含むべきである。しかしこれらのベクターは典型的にはポリヌクレオチドの発現に必要な機能配列を欠いている。発現されるポリペプチドに対する強力な抗体生成を誘発することを意図してポリヌクレオチドの発現を望む場合には、ベクターはmRNAをエキソヌクレアーゼから保護するポリアデニレーションテイルを、転写されたpre-mRNAの末端に作り、そして転写および翻訳の終結を確実にするポリアデニレーション配列を含んでなる。さらにこのポリアデニレーションテイルは、mRNA生産を安定化する。加えて、UTRは転写または翻訳を妨害し得る独自の性質を含むので、最小長の非翻訳領域(UTR)のみ、またはUTRを全く含まないことが好ましい。さらにこれらのベクターは、mRNAの翻訳のためにリボゾームを集合するKozak配列もmRNA中に含むべきである。
【0095】
被験組成物中に存在している活性物質が、ポリヌクレオチド構築物を使用することにより生成されたウイルス抗原またはウイルス粒子である場合、このウイルス抗原またはウイルス粒子は、好ましくは適切な動物の免疫感作に使用されるポリヌクレオチド構築物、すなわち好ましくは免疫感作に使用されるポリヌクレオチド構築物により含まれるポリヌク
レオチド配列の発現産物に特異的に結合する工程a)の抗体の生成に使用されるポリヌクレオチド構築物とは異なるポリヌクレオチド構築物を使用して生成される。例えばこれらのポリヌクレオチド構築物は、ポリアデニレーション配列、非翻訳領域またはプロモーター領域の存在に関して、そしてさらに好ましくはポリアデニレーション配列の存在について異なることができる。
【0096】
別の方法では、活性物質の生産に使用されるポリヌクレオチド構築物が、この活性物質の配列のみをコードしているのではなく、汚染物の配列もコードするならば、このポリヌクレオチド構築物で個体を免疫感作すると、この汚染物コード配列が活性物質コード配列に加えて該個体内で発現されるだろう。その結果、免疫感作された個体は活性物質だけでなく混入する(ポリ)ペプチドにも特異的な抗体を生成するだろう。最終的にこれらの汚染物に特異的な抗体が汚染物を中和し、これにより偽陰性の試験結果が導かれる。
【0097】
しかし異なるポリヌクレオチド構築物を使用することにより、この混入するポリペプチドに対する抗体は生成され無いので、外来物質試験で偽陰性の試験結果は回避される。上記のように、ポリヌクレオチド構築物は、彼らが意図する用途に依存して、構造的および/または機能的要素が異なることができる。本発明に従い、ポリヌクレオチド構築物が特異抗体の生成に使用される場合、免疫感作される個体内で活性物質の少なくとも一部をコードするポリヌクレオチドの発現が望まれるので、好ましくは発現ベクターが使用される。あるいはポリヌクレオチド構築物はそれらがコードする各ポリヌクレオチドについて異なることも可能である。本発明を応用することにより、例えば個体の免疫感作に使用される発現ベクターが全活性物質をコードするポリヌクレオチド配列を持つことは必ずしも必要ではない。免疫感作した個体での特異抗体の生成には、発現ベクターが活性物質の一部、例えば活性物質の1もしくは複数の保存領域をコードするポリヌクレオチド配列のみを持つことが適当となる可能性もある。
【0098】
さらに本発明の好適な態様では、活性物質の少なくとも一部をコードするポリヌクレオチド配列のコドン最適化を行うことができ、特にコドンをポリヌクレオチド構築物での免疫感作に使用する個体に最適化することができる(以下参照)。上に概略した修飾を行うことにより(種々の構造的および/または機能的要素の使用、例えば活性物質の一部のみをコードするポリヌクレオチド配列の発現、およびポリヌクレオチド配列のコドン最適化)、汚染物をコードする配列をさらに発現する危険性はほとんど存在しない。これは被験組成物が高品質の要件を満たすべきである場合、例えばワクチンのような製薬学的組成物に使用される場合に特に有利である。さらに上に挙げたポリヌクレオチドの修飾は、有意に改善された発現率をさらに導き、これにより強化された抗体生産およびすなわち強化された中和能力がもたらされる。
【0099】
さらに好適な態様では、活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物は、特にポリヌクレオチド構築物での免疫感作に使用する個体に対するコドン最適化によりコドンが最適化される。当業者には知られているように、各具体的アミノ酸は、最少1コドンそして最大6コドンによりコードされる。これまでの研究では、細胞のポリペプチドをコードする遺伝子のコドン使用頻度は、種間で偏ることが示された(Kanaya, S, Y. Yamada, Y. Kudo and T. lkemura (1999),「18の単細胞生物でのコドン使用頻度およびtRNA遺伝子の研究および枯草菌tRNAの定量:多変量解析に基づく遺伝子発現レベルおよびコドン使用頻度の種特異的多様性」“Studies of codon usage and tRNA genes at 18 unicellular organisms and quantification of Bacillus subtilis tRNAs: gene expression level and species-specific diversity of codon usage based on multivariate analysis.”Gene 238:143-155)。遺伝子コードの縮重は、当業者にとりわけポリヌクレオチド配列を目的宿主細胞のコドン優先度(preference)に適応させる可能性を提供し、これにより本発明で所望する抗原結合ポリペプチドの発現を最適化する。当
業者はポリヌクレオチド配列を、ポリヌクレオチド構築物で免疫感作する目的宿主細胞または生物のコドン優先度にどのように適合させるかを知っている。 例えば免疫感作する生物がウサギ、ヒツジ、ヤギ、ラットまたはマウスのような適当な動物である場合、ポリヌクレオチド配列は各動物のコドン優先度に適合させることができる。生物−特異的コドン使用頻度および生物−特異的コドン対使用頻度の両方に関して各遺伝子設計を最適化するために、幾つかのソフトウェアツール(アルゴリズム)が存在し、例えばCODAゲノミックスによる“Protein Translation Engineering(商標)technologies”がある。
【0100】
本発明のさらに好適な態様では、抗体は所定の活性物質を中和または不活性化するために使用され、続いてウイルスおよび/またはバクテリアが外来物質として試験される。これらの試験されるウイルスおよび/またはバクテリアは、例えばニューモウイルス亜科(Pneumovirinae)、例えばRSウイルス(RSV)を含むニューモウイルス属(Pneumovirus genus);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のファミリーのモルビリウイルス(Morbilliviruses)、例えば麻疹ウイルス;ピコルナウイルス科(Picornaviridae)のファミリーのエンテロウイルス(Enteroviruses)、例えばコサッキー(Coxsackie)ウイルス、例えばコサッキーB5、エコーウイルス、エンテロウイルスのA−D群およびライノウイルス; 哺乳動物 レオウイルス科(Reoviridae)、特にオルトレオウイルス(例えば哺乳動物 レオウイルス、例えばレオウイルス1、2および3)およびロタウイルス;レトロウイルス科(Retroviridae)のメンバー、例えばオルトレトロウイルス亜科(Orthoretrovirinae)、例えばレトロウイルス、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のファミリーのメタニューモウイルス(Metapneumoviruses)、例えばヒト メタニューモウイルス(HMPV)、またはパラインフルエンザウイルス1、2、3および4型; パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)のファミリーのルブラウイルス(Rubulaviruses)、例えばムンプスウイルス;風疹ウイルス(Rubellavirus)のようなトガウイルス科(Togaviridae);コロナウイルス科(Coronaviridae)、例えばSARSコロナウイルス、および他のヒトコロナウイルス、例えばコロナウイルスOC43, 229E, NL63およびHKU1;ピコルナウイルス科(Picornaviridae)のファミリーのライノウイルス(Rhinoviruses)、例えばライノウイルスの M-株; 帯状疱疹ウイルス(VZV)、ヒト ヘルペスウイルス2(HHV3)としても知られている;ポリオーマウイルス科(Polyomaviridae)、例えばSV-40ポリオーマウイルス、BKポリオーマウイルスおよびJCポリオーマウイルス;ブタ サーコウイルス; ブタ ピコルナウイルス、例えばブタ 水胞病ウイルス(SVDV)およびテッシェン-タルファン(Teschen-Talfan)ウイルス;パルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバー、例えばイヌ パルボウイルス(CPV)、ボカウイルスまたはブタ パルボウイルス;パラインフルエンザウイルス(PIV);オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)のメンバー、インフルエンザウイルス A および B型を含む;パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae) パラミクソウイルス亜科(paramyxovirinae)のメンバー、PIV-I、PIV-2 およびPIV-3を含む;ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、例えば単純ヘルペスウイルス1 および2、ヒト 単純ヘルペスウイルス6,
7 または 8型、サイトメガロウイルスおよびエプスタインバールウイルス;アデノウイルス科(Adenoviridae)、例えアデノウイルス、ヒト、サルおよび鳥類アデノウイルス、例えば鳥類アデノウイルス1を含む;鳥類 サーコウイルス;鳥類 レオウイルス科(Reoviridae)、特にオルトレオウイルス、例えば鳥類 レオウイルス;パピローマウイルス科(Papillomaviridae)のメンバー、ヒトパピローマウイルスを含む;フラビウイルス科(Flaviviridae)のメンバー、例えば西ナイルウイルス;およびビルナウイルス科(Birnaviridae)、例えば伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(ガムボロウイルスとしても知られている);トラコーマクラミジア、肺炎クラミジアおよびオウム病クラミジアを含むクラミジア(Chlamydia)バクテリア;およびマイコプラズマ(Mycoplasma)からなる群から選択することができる。
【0101】
本発明の方法のさらに好適な態様では、ポリヌクレオチド構築物中に含まれるポリペプチドは、血球凝集素(HA)および/またはノイラミニダーゼ(NA)コード配列を含ん
でなる。血球凝集素は例えばインフルエンザウイルスの表面に見いだすことができる。ウイルスが感染する細胞に結合する原因は抗原性糖タンパク質である。今日まで、少なくとも16種のインフルエンザHA抗原が知られている。これらのサブタイプはH1からH16と命名されている。NAはノイラミン酸のグリコシド結合を開裂する酵素である。今日までインフルエンザノイラミニダーゼの少なくとも9種のサブタイプが知られている。これらのサブタイプは、例えば当業者には知られているデータベース、例えばPubMedデータベース(例えば
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/,
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/FLU/FLU.html,
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore および
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/145284465?ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntre z. Sequence. Sequence_ResultsPanel.Sequence_RVDocSum)に見いだすことができる。好適な態様ではポリヌクレオチド構築物はこれら任意のHAおよび/またはNAコード配列を単独または互いに組み合わせて含んでなる。またポリヌクレオチド構築物はこれら配列の部分のみを含むことも可能である。好ましくはポリヌクレオチド構築物はH1、H2、H3、H5、H6、H7、N1、N2、N3またはN7をコードする完全な配列または配列の一部を、単独または組み合わせて含み、好ましくはH5を含む。さらに好適な態様では、ポリヌクレオチド構築物はH1N1、H2N2、H3N2、H6N1、H7N3またはH7N7をコードする配列または配列の部分、好ましくはH5N1をコードする配列または配列の部分を含んでなる。
【0102】
本発明の方法のさらに好適な態様では、活性物質はインフルエンザ抗原を含んでなり、そしてポリヌクレオチド構築物が配列番号1または2に示す核酸と例えば少なくとも90%、好ましくは例えば少なくとも95%、そして最も好ましくは例えば100%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含んでる。そのようなポリヌクレオチド配列は、効率的発現、すなわち哺乳動物個体でのDNAベクターに基づくインフルエンザ抗原の免疫感作の概念に、好ましくはインフルエンザのHAおよびNAコード配列のいずれか1方または両方について、さらに詳細にはH5およびN1のそれぞれの配列についてコドンが最適化されている。ポリヌクレオチド構築物は、例えば上に挙げたヌクレオチド配列(配列番号1または2に示す核酸)の相補鎖にハイブリダイズするか、あるいは上に挙げたヌクレオチド配列の縮重配列であるポリヌクレオチド配列も含んでなる。用語「ハイブリダイズするために」または「ハイブリダイゼーション」とは、一本鎖ポリヌクレオチドが相補的なポリヌクレオチド鎖と塩基対を形成するプロセスを説明する。本発明の文脈では、用語「ハイブリダイゼーション」は、通常のハイブリダイゼーション条件下での、好ましくはストリンジェントな条件下、例えばSambrook et al. (2000), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3
rd edition, Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring
Harbour, NYに記載されているようなハイブリダイゼーションを意味する。適切なストリンジェント条件には、35℃から65℃の温度で約0.9モルの塩溶液を含む。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下の条件を含んでなる:
ハイブリダイゼーションバッファー: 7% SDS
250 mM NaCI
250 mM K-リン酸バッファー pH 7.0
1 mM EDTA
ハイブリダイゼーション温度 : 58 ℃〜 60 ℃
ハイブリダイゼーション時間 : 一晩
洗浄バッファー : (I) 2 x SSC, 0.1 % SDS
(II) 0.2 x SSC, 0.1 % SDS
洗浄温度および時間 : それぞれ 2 x 30 分、 55 ℃ 〜 60 ℃
【0103】
上に挙げた、配列番号1または2に示す核酸と例えば少なくとも90%、好ましくは例えば少なくとも95%、そして最も好ましくは例えば100%の配列同一性を有するポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列のフラグメント、誘導体、類似体または部分も含んでなる。フラグメント、誘導体、類似体または部分は、自然に存在する変更体もしくは変異体の両方でよく、ここでこれらの変異体は自然に存在するか、または例えば特異的突然変異誘発法により導入させておいてもよい。さらに変更体はさらなる合成配列を含んでなることができる。
【0104】
用語「フラグメント」は、記載したポリペプチドの1つをコードするために十分な長さであるポリヌクレオチド配列の部分と理解されるべきである。本文脈において、用語「誘導体」は配列が1もしくは数箇所の位置で上記ポリヌクレオチド配列とは異なるが、これらの配列と高度な相同性を有することを意味する。ここで相同性とは少なくとも40%の配列同一性、特に少なくとも60%または70%、好ましくは少なくとも80%、82%、84%、86%または88%、そして特に好ましくは少なくとも90%、92%、94%、96%または98%の配列同一性を意味する。上記ヌクレオチド配列から、例えば欠失、置換、挿入または組換えによる変動も生じる可能性がある。
【0105】
2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間の相同性(=同一性)の割合を測定するために、この2つの配列を並べ、そして各位置のアミノ酸またはヌクレオチドを比較する。この配列中の1つの位置が同じアミノ酸または同じヌクレオチドで占められている場合、この分子はこの位置で相同的(=同一)である。2つの配列間の相同性の割合は、同一である共通位置の数の関数である(すなわち相同性 = 全位置数あたりの同一位置の数 ×100)。
【0106】
相同性は、全アミノ酸またはヌクレオチド配列領域にわたり算出される。異なる配列を比較するために、異なるアルゴリズムに基づく様々なプログラムを当業者は利用できる。NeedlmanおよびWunschまたはSmithおよびWatermanのアルゴリズムが特に信頼性のある結果提供する。配列アライメントおよび比較について、プログラム“PileUp”( J. Mol. Evolution., 25, 351-360, 1987, Higgins et al., CABIOS, 5 1989: 151 153 ) または“Gap”および“BestFit”[Needleman and Wunsch (J. Mol. Biol. 48; 443-453 (1970 )および Smith and Waterman (Adv. Appl. Math. 2; 482-489 (1981 )]を使用でき、これらはGCG Software-Packet [Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711 (1991 )]に含まれている。上で言及した割合としての配列相同性の値は、以下の調整を使用して全配列領域にわたり“ギャップ(Gap)”プログラムにより決定することができる:ギャップ加重値(Gap Weight): 50, 長さの加重値(Length Weight): 3, 平均マッチ(Average Match): 10.000 および 平均ミスマッチ(Average Mismatch): 0.000。これらの調整は配列相同性分析の標準調整として使用することができる。
【0107】
また本発明は以下の条件を試験するための活性物質に対して特異的に抗体を生じるために、該活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物の使用に関する:
i)被験組成物中の活性物質の存在または不存在、
ii)組成物中の外来または感染物質の存在または不存在
ここで抗体はポリヌクレオチド構築物を用いた個体の免疫感作により提供され、そして活性物質は該抗体により中和または不活性化される。
【0108】
本発明のポリヌクレオチド構築物の使用は、活性物質を含有する組成物の迅速で効率的、しかも信頼性のある試験を提供することを可能とする。ポリヌクレオチド構築物で個体を免疫感作することにより提供される抗体を使用することにより、個体を活性物質自体で免疫感作する場合に起こる可能性がある汚染が回避される。その結果、本発明のポリヌク
レオチド構築物の使用で偽陰性の試験結果が回避される。さらに各試験で使用する抗体の生成がはかどる。その結果、試験がより迅速になる。これは被験組成物中の活性物質がウイルス粒子から構成されているか、またはそれに由来する場合に、ワクチンの供給リードタイムが有意に減るために特に有利となる。これは細胞培養技術に基づき生産されるワクチンに特に重要となる。
【0109】
一般に、活性物質に対して特異的に抗体を生じるために該活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物を使用することにより、組成物中の活性の不存在は抗体が活性物質を不活性化または中和したこと、そしてさらに被験組成物中に抗原が存在しないことを示す。
【0110】
被験組成物中の所定の活性物質に応答する任意の活性の不存在は、組成物中に存在している活性物質が抗体の活性物質への特異的結合により中和または不活性化されたことを意味する。中和された活性物質は特異抗体と相互作用し、例えば抗体と複合体を形成し、したがって本質的にはもはや効果的になることができず、好ましくは中和された活性物質は全く非効果的である。本発明の意味で非効果的な活性物質は、その機能、例えばその薬理学的もしくは免疫学的機能を行うことができない。また非効果的な活性物質は活性物質に感受性の検出細胞株と接触した場合に、もはや病理的効果を生じることはできない可能性がある。抗体の中和力は上記のように試験することができる。しかし活性であることが判明した組成物は、尚も活性物質を含み、すなわち効果的である。
【0111】
ポリヌクレオチド構築物、活性物質、被験組成物および外来物質もしくは感染物質は上に記載し、ならびに適切な個体の免疫感作および活性物質の中和も記載する。好ましくは活性物質は抗原、より好ましくはウイルス抗原またはウイルス粒子であるか、あるいは活性物質はウイルスもしくはウイルス粒子の少なくとも1つの成分を含んでなり、好ましくは活性物質はインフルエンザウイルス粒子である。好ましくは被験組成物は活性物質が生産される細胞培養物に由来するサンプル、またはこの細胞培養物から誘導された生成物であり、また被験組成物が製薬学的組成物、好ましくはワクチン調製物またはその中間産物であることも好適である。また被験組成物はシードウイルス、またはシードウイルスをそれぞれ含有する組成物であることも好ましい。
【0112】
さらに好適であるのは、外来または感染物質が上記のようなウイルスである。
【0113】
活性物質に対して特異的に抗体を生じるために、該活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物を使用することにより、例えば(陰性または陽性)対照試験を行うことができる。そのような対照試験では、組成物は特に活性物質(それに対して抗体が向けられる)が組成物中に存在する否かに関して試験されるべきである。この目的のためには、適切な個体をポリヌクレオチド構築物で免疫感作することにより提供される抗体が、被験組成物と接触させられる。試験した組成物が特異抗体の添加後にいかなる活性も示さない場合、活性物質は組成物中に存在する。場合により、被験組成物と特異抗体を接触させる前に、抗体の中和力を上記のように試験することができる。
【0114】
さらに好適な態様では、活性物質に対して特異的に抗体を生じるために、該活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物を使用することにより、例えば外来物質試験を行うことができる。外来物質試験は上記のように行うことができる。
【0115】
また本発明は製薬学的組成物、特にワクチンの生産法に関し、ここで生産工程の少なくとも一時点で上記のような組成物中の外来物質を試験する方法が行われる。外来物質試験は、製薬学的組成物の生産法または製造法のそれぞれの任意の段階で行うことができる。
好ましくは試験はシードロットについて、またはウイルス回収物について行うことができ、そしてさらに好ましくは試験はシードロットについて行うことができる。さらに例えば細胞培養の始めおよび/または終わりに、あるいはその間に一回または繰り返し行うこともできる。外来物質試験は既製のワクチン調製物について行うこともでき、例えば生産バッチから出る1もしくは複数のサンプルを試験することを含む。
【0116】
場合により、製薬学的組成物、特にワクチンまたはその中間産物、および/または製薬学的組成物またはワクチンが誘導される細胞培養物を処理する工程が行われ、これにより外来物質は除去され、かつ/または不活性化される。個々の組成物または細胞培養物から外来物質を除去するために適する方法は、当業者には周知であり、そして化学的および/または物理的不活性化または除去法、例えば濾過法、吸着法、例えばホルムアルデヒドもしくはベータ−プロピオラクトンによる化学処理、加熱および/または電磁気照射(例えばUV−C処理またはガンマ線照射による照射)等による物理的処理を含んでなる。本発明の有用な方法のさらなる利点は、いったん外来物質の存在が示されたら、外来物質除去工程を該外来物質を除去し、かつ/または不活性化するために特異的に適合させることができる点にある。例えば被験組成物中に存在する外来物質が(任意に)同定される場合、特に該外来物質を除去および/または不活性化することが知られている特異的な除去および/または不活性化法を使用することができる。該外来物質を除去および/または不活性化することにより、例えば全組成物バッチの廃棄を回避でき、したがって時間と経費を節約できる。
【0117】
さらに本発明は、活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物の発現産物に対して生じた抗体の使用に関し、ここで抗体は該活性物質を精製するために活性物質に特異的に結合し、そしてここで抗体および活性物質は同じポリヌクレオチド構築物を使用して誘導されない。用語「ポリヌクレオチド構築物の発現産物に対して生じた抗体」および「抗体および活性物質は同じポリヌクレオチド構築物を使用して誘導されない」とは上に記載している。本明細書で使用するような用語「精製」には、限定するわけではないがアフィニティ精製(これはタンパク質を、固体支持体(例えばカラム)上に固定された抗体(本明細書に記載するよう生産された)のような他のタンパク質に対するそれらの親和性を介してカラム上に保持することにより精製するために使用する)、および分離、例えば種々の抗原の分離を含む。好ましくは活性物質はウイルス抗原であり、特にインフルエンザ抗原である。本発明の抗体の使用により、精製に使用される抗体はウイルス株の発現産物に対して特異的に生じたものなので、精製が望まれるウイルス株に由来するかまたはそれを現すウイルス粒子の迅速かつ高度に特異的な精製が可能になる。
【0118】
好ましくは活性物質の精製に使用される抗体は、上記定義の抗体である。精製目的で使用される抗体は、さらに固体相への結合のために親和性タグを含んでなることがさらに好適である。
【0119】
さらに本発明は配列番号1または2に示す核酸と、例えば少なくとも90%、そして好ましくは例えば少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含んでなるポリヌクレオチドに関する。最も好ましくは、ポリヌクレオチドは配列番号1または2に示す核酸を有する。該ポリヌクレオチドに関して、上記記載を参照にされたい。
【0120】
また本発明は、配列番号1または2に示す核酸と、例えば少なくとも90%、そして好ましくは例えば少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物に関する。最も好ましくはポリヌクレオチド構築物は配列番号1または2に示す配列を有するポリヌクレオチドを含んでなる。該ポリペプチドに関しては、上記記載を参照にされたい。ポリヌクレオチド構築物も上に記載されている。
【0121】
本発明の別の観点は、上記のような本発明のポリヌクレオチド、または該ポリヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチド構築物を含んでなる原核または真核宿主細胞を提供することである。好ましくは宿主細胞は安定に、または一時的に本発明の上記ポリヌクレオチド構築物で形質転換される。形質転換の手法については、形質転換が標準的プロトコールに従い行うことができる点に注目されたい。しかしSambrook et al. (2000), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3
rd Ed., Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Harbour, NYを参照にされたい。本発明のさらに別の観点は、本発明の上記ポリヌクレオチド、または上記ベクターもしくはポリヌクレオチド構築物をそれぞれ含有するヒト以外の生物、トランスジェニック動物ならびにトランスジェニック微生物を提供することである。
【0122】
好ましくは本発明の宿主細胞または動物または微生物は、本発明の抗原−結合ポリペプチドを発現し、そして合成する。
【0123】
これらの宿主細胞は任意の原核または真核細胞でよく、好ましくは微生物細胞、より好ましくはバクテリア、酵母、菌・カビおよび藻類細胞であることができる。中でも特に好適な微生物細胞は、大腸菌(Escherichia coli)細胞、ストレプトミセス(Streptomyces)細胞、ピキア パストリス(Pichia pastoris)細胞、またはシゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)細胞、そして最も好ましくは大腸菌細胞である。
【0124】
さらに本発明は本発明によるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドに特異的な抗体、ならびに該抗体を生産する方法を提供し、ここでこの方法は:
a)本発明のポリヌクレオチド構築物を準備し、そして
b)適切な個体、好ましくはマウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、モルモットまたはウサギ、より好ましくはウサギのような適切なヒト以外の動物を該ポリヌクレオチド構築物で免疫感作する、
工程を含んでなる。
【0125】
ポリヌクレオチド構築物ならびに適切な個体の免疫感作は、上に記載されている。抗体は熟練者により知られている任意の標準的手法により回収することができる。例えば抗体は特異的抗原の中和または精製に使用することができる。
【0126】
さらに本発明は組成物中の外来物質を試験する部分キットの使用も対象とし、ここでキットは
a)活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物、および
c)宿主細胞、
を含んでなる。
【0127】
外来物質、ポリヌクレオチド構築物、活性物質および宿主細胞という用語に関して、ならびに外来物質の試験法に関しては、上記記載を参照にされたい。
【0128】
さらなる観点では、本発明は:
a)配列番号1または2に示す核酸と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物、または配列番号1または2に示す配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物、および
b)宿主細胞、
を含んでなる部分キットにも関する。
【0129】
活性物質、ポリヌクレオチド構築物および宿主細胞という用語に関して、上記記載を参照にされたい。
【0130】
配列番号1または2に示す核酸と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する活性物質の少なくとも一部をコードする配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物、または配列番号1または2に示す配列を含んでなるポリヌクレオチド構築物は、バクテリア細胞、酵母細胞、菌・カビ細胞、藻類細胞、植物細胞または昆虫細胞のような適切な宿主細胞、好ましくは大腸菌(Escherichia coli)細胞のようなバクテリア細胞の形質転換に使用される。形質転換した宿主細胞は、適切な培地で培養され、そして回収そして溶解され、そしてポリヌクレオチド構築物が回収される。次いで増幅したポリヌクレオチド構築物は、上記のような個体の免疫感作に使用することができる。この免疫感作した個体は次いでポリヌクレオチド構築物の発現産物に対する抗体、例えばこの場合には活性物質の少なくとも一部であるタンパク質に対する抗体を生成する。次いでこの抗体は、少なくとも1種の活性物質を含んでなる組成物中の外来物質を試験するために使用することができ、ここで活性物質は配列番号1または2に示す核酸と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する配列により少なくとも部分的にコードされているか、またはここで活性物質は配列番号1または2に示す配列により少なくとも部分的にコードされている。
【0131】
組成物中の該外来物質の試験法に関しては、上記記載を参照にされたい。
【0132】
以下の図面および実施例は、本発明をさらに詳細に説明するが、これらは具体的説明の目的でのみ提示され、本発明の範囲をどのようにも制限すると解釈すべきではない。
【実施例】
【0134】
1.HAおよびNAをコードするポリペプチドおよびDNA構築物の調製
DNAベクターは、インフルエンザウイルス A/Viet Nam/1194/2004(H5N1)の血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)タンパク質の既知の配列から調製した(HAおよびNA
をそれぞれコードする配列は、PubMedデータベースに開示されており、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/,
http://www.ncbi.nlm.nih.goV/nuccore/145284463?ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Sequence. Sequence ResultsPanel.Sequence RVDocSum、および.
http://www.ncbi.nlm.nih.goV/nuccore/145284406?ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Sequence. Sequence ResultsPanel.Sequence RVDocSumを参照にされたい)。
【0135】
HAおよびNAコード配列は、例えばRoth, D. A. et al.,“Translational Engineering and Synthetic Biology”, Landes Bioscience, 2007に記載されているようにコンピューターにより最適化した。具体的にはHAおよびNAコード配列のコドン使用頻度およびコドン対使用頻度を、アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)に従い最適化した。上の説明に記載された合理的な相同性変動範囲内で、コドン最適化は免疫感作される他の個体について提供されたHA および NA コード配列により同様に行うことができた。上流の5’非翻訳領域も最適化して、翻訳開始を妨害するかもしれない望ましくない2次RNA構造を防いだ。CODAアルゴリズムで最適化したHA および NA 遺伝子を集成し、そしてpCMVベクターにクローン化し、これはClontech Laboratories Inc.のようなほとんどの供給元から販売されている。両方のpCMV構築物が以下の特徴を含んだ:
− 高レベルのRNA転写産物を生産するために使用されたサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターが駆動する哺乳動物発現ベクター、
− 効率的なリボゾーム結合、それ故に最大レベルのタンパク質翻訳を確実にするためのATG開始コドンの前に配置されたKozakコンセンサス配列、
− 転写終結シグナル、ポリ (A) シグナルは正しい転写停止を確実にするために遺伝子の終わりに配置された。
【0136】
CODAアルゴリズムで最適化したHA および NA遺伝子は、CMVプロモーターが駆動するベクターに制限酵素(Nhe I および Xba I)を使用してサブクローン化され、そしてそれぞれpCMV-HA および pCMV-NAと命名された。正しい配列は、制限酵素消化により、そしてDNAシークエンシングにより確認した。ベクターマップおよびDNA配列は
図3〜6に列挙する。
【0137】
DNA構築物を、別々に大腸菌(E. coli)細胞にトランスフェクトし、そこからマスターセルバンク(MCB)を調製した。MCBは無菌性、バクテリオファージ、プラスミドマーカー保持およびプラスミド同定を、当業者に既知の標準法に従い試験した。
【0138】
2.プラスミド生産
プラスミドのバルク生産は、大腸菌(E. coli)培養から行い、続いてプラスミドの単離、精製および特性決定を行った。精製したバルクプラスミドを、DNAの完全性、OD 260/280比、アガロースゲル分析、制限分析、DNA配列、混入タンパク質およびエンドトキシンについて、当業者の既知の標準法に従い試験した。
【0139】
3.動物の免疫感作および抗血清の生成
続いて抗血清は、各群6匹の2群のウサギを免疫感作することにより生成した。各ウサギに、0.5 mlのDNA物質(すなわちプラスミド)を、試験の0、28および56日に接種した。各用量は1.0 mgの全DNAからなった。1つの群のウサギに、一価の HA DNAを免疫感作し、そしてもう1群のウサギに二価の1:1のHA および NA DNA混合物を免疫感作した。免疫感作前および後の血液サンプルをすべての動物から、0、28、35、42 および56日に採取した。すべての動物は70日目に瀉血により殺した。すべてのウサギは健康で、活動的で、しかも観察期間を通して投薬または試験品に関する問題を示唆する臨床的兆候はなかった。すべてのウサギは健康で、そして試験期間を通して生存し、そして抗原に対するいかなる副作用も示さなかった。
【0140】
生じた抗体を含有する得られた血液を処理して、例えば特異的中和抗体を含有する血清サンプルを得るか、あるいはプラスミド/ベクター発現産物に特異的な単離抗体を得ることができる。
【0141】
4.中和試験
血清サンプルは、集めた血液から調製することができ、そして流行している参照株NIBRG-14のワーキングシードウイルス(WSV)に対する中和力の試験を行うことができる。NIBRG-14はワクチン製造に使用したリアソータントA/Viet Nam/1 194/2004-様株である;この株はNIBSC (
http://www.nibsc.ac.uk/ および http://www.nibsc.ac.uk/flu_site/pandemic.htmlを参照にされたい)。これらの血清中和試験は以下のように行うことができる:
2倍希釈 WSV を、一連の4つの3倍希釈物の12の最終ウサギ血液と混合することができる。これらの血清希釈物は別個のフラスコで調製し、そして均一化し、そして縁のコーティングは溶液をフラスコをわずかにそらすこと(swerving)により行うことができる。WSVは血清希釈物に直接ピペットで加え、そして生じた希釈物を穏やかに均一化することができる。次いで希釈物を新しい清潔なフラスコに移し、そして37℃で2時間、そらし板上で穏やかにそらすことによりインキュベーションすることができる。
【0142】
細胞に接種する1日前に、75 cm
2フラスコに各細胞株を調製することができる:6個のフラスコはWSVの中和に、1個は陽性および阻害対照に、そして1個は陰性対照に調製できる。
【0143】
陽性対照
陽性対照は、約1000TCID50(組織培養感染用量“Tissue Culture Infective Dose”;細胞培養物の50%に病理学的変化を生じる病原性物質の量)のヒト パラインフルエンザ3ウイルスの接種に相当した。1つの陽性対応は0日に接種され、そして陽性対照として14日の血球吸着および/または血球凝集試験に使用することができる。
【0144】
阻害対照
標的細胞に、約1000TCID50のヒトパラインフルエンザ3ウイルスで事前にスパイクした被験サンプルを接種することができる。
【0145】
陰性対照
陰性対照には、フラスコ毎に各細胞株に特異的な希釈培地を接種できる。この対照は被験サンプルと同じ条件下で処理することができる。
【0146】
接種
反応した、すなわち中和された可能性があるWSV希釈物は、次いで3種の検出細胞株(Vero細胞 (アメリカンタイプカルチャーコレクション (ATTC)から得た CCL-81;Yasumunra Y. et al., 1962)、MRC-5 細胞 (ATCCから得た CCL-171;Jacobs J. P. et al., 1970) およびMDCK 細胞 (ECACC 84121903; S. H. Darby, 1958))に接種することができる。3 mlの各溶液(希釈培地、被験サンプル)は、各フラスコ中で中和される可能性があるWSVおよび対照に接種することができる。37℃+/−2℃で70分+/−10分後、接種物を取り出すことができる。次いで生存培地(survival medium)を加えて20mlの最終容量を得た。培養フラスコは5+/−0.5%CO
2の存在下で37℃+/−2℃に配置することができる。
【0147】
接種した細胞は、倒立顕微鏡で14日間、定期的に観察し、そして細胞変性効果(CPE)および血球凝集活性の存在について検査することができる。中和力は、CPEの観察により、血球吸着試験により、および血球凝集試験により検出することができる。
【0148】
4.1 CPEの観察
細胞は試験期間中、倒立顕微鏡下で定期的に観察することができる。
【0149】
4.2 血球吸着試験
血球吸着試験は、試験期間の終わりに行うことができる(14日)。単層細胞をPBSバッファーで1、2回洗浄することができる。次いでPBS中に調製した0.4%の3種赤血球(ヒト、モルモット Hartleyおよび雄鶏)を含有する溶液を各ウェルに加えることができる。血球吸着はウイルス感染に特異的であり、そして1つの種類の赤血球が細胞上に固定された時に陽性となる。5℃+/−3℃で約30分間インキュベーションした後、細胞を顕微鏡検査にかけることができる。次いでプレートを37℃+/−2℃でさらに約30分間インキュベーションした後、2度目の観察を行うことができる。
【0150】
4.3 血球凝集試験
血球凝集試験は、14日に血球吸着試験で使用したフラスコからの細胞培養物の上清について行うことができる。上清を回収し、そして低速遠心で清澄化することができる。次いで清澄化した上清を6ウェルプレートに入れることができる。次にPBS中に調製した0.25%の3種赤血球(ヒト、モルモット Hartleyおよび雄鶏)を含有する溶液を各ウェルに加えることができる。5℃+/−3℃で約30分後、上清を顕微鏡検査にかけることができる。次いで6ウェルプレートを37℃+/−2℃でさらに約30分間インキュベーションした後、2度目の観察を行うことができる。
【0151】
試験したサンプルは、特異的細胞株を使用して、ウイルスCPEの不存在および特異的血球吸着および/または血球凝集活性の不存在の観察により、ウイルス汚染が無いと考えられる。
【0152】
さらに48の暫定的(interim)採血は、唯一の細胞(MDCK)株を使用することを除いて同じ手順に従い試験することができる。この結果を、不活性化リアソータント A/Viet Nam/1203/2004-様ウイルス(フェレットで A/Viet Nam/1194/2004に対して交差反応する抗体を誘導することが知られている株)でウサギを接種した後に調製した血清を使用して得たものと比較することができる。
【0153】
4.4 孵化鶏卵
欧州薬局方第6版、2.6.16章に従い、血球凝集試験を孵化鶏卵を使用して行うことができる。
【0154】
簡単に説明すると、SPF (特異的病原体なし) の卵(卵の起源:フランスのCouvoir de Cerveloup, 400, domaine de Cerveloup38210 Vourey)を使用することができる(受け取ってからインキュベーションするまで12℃+/−3℃で維持することができる)。インキュベーションは37℃+/−2℃で、70%湿度の雰囲気で行うことができる。
【0155】
サンプル調製
WSVはウサギまたはヒツジ抗血清で中和することができる。卵からのバクテリアの混入を回避するために1%抗生物質水溶液を加えることができる。次いでサンプルは適切なシリンジ針を使用して卵に注入することができる。
【0156】
卵のプレインキュベーション
卵を受け取った時、およびプレインキュベーションの前に、卵を大ざっぱに観察して傷がある卵は捨てることができる。次いで卵は37℃で9〜11日間、プレインキュベーションすることができる。プレインキュベーション期間の終わりに、卵は加熱を回避するために冷光下で観察することができ、そして不受精卵または生きている胚が無い卵を捨てた。
【0157】
接種
被験サンプル(中和した可能性があるWSV)の分析には、9〜11日のインキュベーション後に30個の卵に尿膜経路を介して接種することができ、そして対照の試験には25個の卵に接種することができる。
【0158】
陰性対照には、抗生物質を補充したPBS(例えば10個の卵)、非希釈ウサギ抗血清のみ(例えば5個の卵)、および2種類のヒツジ抗血清のみ(例えば1種類あたり5個の卵)を卵に接種することができる。
【0159】
血球凝集試験の陽性対照には、センダイウイルスを使用できる(非希釈)。
【0160】
接種は以下のように行うことができる:
卵殻を消毒した後、殻に穴を空けることができ、そして0.5 mlの被験サンプルを55個の卵に尿膜経路で接種することができる。卵殻の穴を塞ぐことができ、そして卵は37℃+/−2℃で7日間インキュベーションすることができる。
【0161】
インキュベーション期間の終わりに、観察後、生きている胚から尿膜液を集めることができる。死んだ胚が観察された場合、さらに調査するため各胚の流体を−70℃未満で、そして5℃+/−3℃(バクテリアの混入があった場合)で保存することができる。
【0162】
血球凝集試験
インキュベーション期間の終わりに、血球凝集試験を以下のように行うことができる:流体は遠心(2500 g、10分)により清澄化し、そして血球凝集試験を行うために、200μlの流体を4枚の96ウェルプレート(各ウェルについて50μl)で処理することができる。簡単に説明すると、2枚の96ウェルプレートのウェルに50μlの0.5%赤血球含有溶液 (モルモット; フランスのCharles River Laboratoryから購入)を加えることができ、そして別の2枚の96ウェルプレートに50μlの0.5%赤血球含有溶液(雌鳥)を加えることができる。プレートの半分を5℃+/−3℃でインキュベーションすることができ、他の半分を室温でインキュベーションすることができる。2時間インキュベーションした後、プレートは血球凝集活性について検査することができる。
【0163】
被験サンプルは、接種した卵から集めた流体に特異的な血球凝集活性が観察できない場合に、ウイルス混入が無いと見なされる。
【0164】
5.付随/外来物質の試験
次いで血清の中和は、付随物質試験に使用することができる。これらの試験は公定要件(欧州薬局方 2.6.16章)に従い行うことができる。これらの試験は、成体マウス、哺乳マウスおよびモルモットを対象として、公定要件、例えば欧州薬局方 2005 2.6.16章(ウイルスシードロット)の要件に従い行うことができる。哺乳マウスで行うことができる試験に関しては、哺乳マウスは被験組成物で1〜2日齢に接種できることに留意されたい。鳥類組織で伝染するウイルスについて、鳥類ウイルスの試験は、欧州薬局方 2005 2.6.16章(ウイルスシードロットおよびウイルス回収物)に記載されているように行うことができる。
【0165】
5.1 成体マウス: CD1 マウス
3群の例えば10匹の成体CD1マウス(15-20 g、例えばCharles River Laboratoryから購入)を、少なくとも48時間順化することができる。1群は中和血清(30μlを脳内に注射(Ic)、500μlを腹腔内に注射(IP))を受容することができ、1群は観察期間に死亡が発生する場合に備えて維持することができ、そして1群は陰性対照として使用することができる
。
【0166】
マウスは試験期間中、定期的に観察されることができる(1日に1、2回)。
【0167】
観察期間の終わりに(21日)、中和サンプルを受容した群から80%の成体マウスが生存した場合、被験サンプル中にはウイルスが存在しない。
【0168】
5.2 哺乳CD1マウス
1〜2日齢の30匹のマウス(例えば Charles River Laboratoryから購入)に、中和血清を接種することができ、10匹のマウスは陰性対照として使用することができる。各哺乳マウスは、被験血清10μlのIc.および100μlのIPを受容する。マウスは試験期間中、定期的に観察されることができる(1日に1、2回)。
【0169】
観察期間の終わりに(14日)、中和サンプルを受容した群から80%の成体マウスが生存した場合、被験サンプル中にはウイルスが存在しない。
【0170】
5.3 Hartleyのモルモット
9匹のモルモット(350-450 g、例えばフランスのCharles River Laboratoryから購入)から、1群5匹の動物に被験サンプルを5000μl、IP注射した。4匹の動物は、陰性対照として42日の試験期間観察することができる。試験期間中、ウイルス感染の兆候が検出されない場合(すなわち死亡または肉眼による損傷)、被験サンプル中にウイルスは存在しない。