【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体高分子形燃料電池実用化推進技術開発/基盤技術開発/カーボンアロイ触媒」にかかる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸素還元活性物が、Pt,Pd,Ru,Fe,Co,Ti,Zr,Nb,Mo,W,及びReからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む、請求項1又は2に記載の酸素還元触媒。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0012】
〔酸素還元触媒〕
本実施形態に係る酸素還元触媒は、プルシアンブルー型金属錯体と、酸素還元活性物と、を含有する。
【0013】
〔プルシアンブルー型金属錯体〕
本実施形態に係る酸素還元触媒で用いられるプルシアンブルー型金属錯体としては、特に限定されないが、例えば、下記式(1)で示される金属錯体が挙げられる。なお、プルシアンブルー型金属錯体は、金属イオンM
1とM
2とをシアノ基(CN)が架橋した立方晶系結晶構造を有する。
A
xM
1[M
2(CN)
6]
y・zH
2O ・・・式(1)
[式(1)中、Aは陽イオン、M
1,M
2は金属イオンを表す。xは0〜3であり,yは0.3〜1.5であり,zは0〜30である。]
【0014】
本実施形態において、プルシアンブルー型金属錯体のシアノ基(CN)の一部はヒドロキシ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、水などで置換されていてもよい。シアノ基の一部が他の官能基に置換されることにより、格子欠陥を有するプルシアンブルー型金属錯体が得られる。
【0015】
陽イオンAとしては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属、プロトン、アンモニウムイオン等が挙げられる。本実施形態に係る酸素還元触媒で用いるプルシアンブルー型金属錯体は、陽イオンも水和水も含有されていなくてもよい。
【0016】
また、プルシアンブルー型金属錯体は、プルシアンブルー型金属錯体の表面に、オレイルアミン等の有機分子、又はフェロシアン化物イオン等の他の金属錯体や金属イオンを吸着させたものでもよい。吸着は物理吸着であっても化学吸着であっても良い。
【0017】
金属イオンM
1としては、特に限定されないが、例えば、V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ru,Rh,Pd,Ag,Pt,Ca,Sr,Ba及びランタノイドからなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属イオンが挙げられる。このなかでも、好ましくはV,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Znであり、より好ましくはFe,Co,Niであり,さらに好ましくはFeである。このような金属イオンM
1を用いることにより、過酸化水素分解活性により優れる傾向にある。
【0018】
金属イオンM
2としては、特に限定されないが、例えば、V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mo,Ru,Pt及びWからなる群より選ばれる一種又は二種以上の金属イオンが挙げられる。このなかでも、好ましくはCr,Fe,Coであり、より好ましくはFeである。このような金属イオンM
2を用いることにより、過酸化水素分解活性により優れる傾向にある。yは0.3〜1.5であり、好ましくは、0.5〜1.3であり、より好ましくは0.6〜1.1である。
【0019】
金属イオンM
1,M
2の価数は特に限定されず、原料や製法上好ましい価数のものを適宜選ぶことができる。例えば、プルシアンブルーではM
1がFe(III),M
2がFe(II)であり、プルシアンホワイトではM
1がFe(II),M
2がFe(II)であるが、一般的な燃料電池の運転条件ではプルシアンホワイトは酸化されてプルシアンブルーとなるため価数は特に限定されない。
【0020】
本実施形態において、プルシアンブルー型金属錯体は、酸素よりも過酸化水素を優先的に還元する触媒として働く。過酸化水素を還元するには、プルシアンブルー型金属錯体に電子が供給される必要がある。プルシアンブルー型金属錯体は一般に半導体であるので、電子を供給するという観点からは、プルシアンブルー型金属錯体が導電材料上に担持されていることが好ましい。
【0021】
ここでいう導電材料とは、特に限定されないが、例えば、後述する酸素還元触媒であってもよいし、それ以外のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、グラファイト、活性炭等の炭素材料であってもよい。
【0022】
プルシアンブルー型金属錯体と導電材料との接触抵抗を低減する観点から、プルシアンブルー型金属錯体はナノ粒子であることが好ましい。ナノ粒子の粒径は500nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。ナノ粒子の粒径の下限は特に制限されないが、耐酸性の観点から0.5nm以上であることが好ましい。プルシアンブルー型金属錯体のナノ粒子を合成する方法は特に限定されず、既存の撹拌抽出法、逆ミセル法、フェリチンなどをテンプレートとして用いる方法、過剰のヘキサシアノ金属イオンと金属イオンの水溶液を混合する方法等を用いることができる。
【0023】
プルシアンブルー型金属錯体のナノ粒子を導電材料に担持する方法は、特に限定されず、例えばプルシアンブルー型金属錯体を水溶液中で合成した後に、水溶液に導電材料を添加する方法が挙げられる。また、電気化学的に導電材料上にプルシアンブルー型金属錯体を析出させることもできる。この方法により、プルシアンブルー型金属錯体と導電材料との間の接触抵抗が低減できるため好ましい。例えば、式(1)においてM
1がFe(III)、M
2がFe(II)であるプルシアンブルーを導電材料上に電気化学的に担持する場合、ヘキサシアノ鉄(III)イオンとFe(III)イオンを含む酸性水溶液を電解液とし、導電材料を含む電極を陰極として電析を行うことによりプルシアンブルー型金属錯体を担持した導電材料を得ることができる。
【0024】
プルシアンブルー型金属錯体を合成する方法は、上述の電気化学的担持に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ヘキサシアノ鉄(II)イオンとFe(III)イオン、又はヘキサシアノ鉄(III)イオンとFe(II)イオンを混合することでプルシアンブルー型金属錯体を合成することができる。ヘキサシアノ鉄(II)イオンとFe(II)イオンを含む溶液に酸化剤を添加する、又はヘキサシアノ鉄(III)イオンとFe(III)イオンを含む溶液に還元剤を添加する方法を用いることもできる。また、Feイオンの代わりに対応する価数のCo,Niイオンを混合することによってFe以外の遷移金属を骨格に持つプルシアンブルー型金属錯体を合成することができる。
【0025】
酸素還元触媒中のプルシアンブルー型金属錯体の比率は、酸素還元触媒を100質量%として、質量比で、0.001〜10質量%であり、0.01〜5質量%であることがより好ましく、0.05〜2質量%であることがさらに好ましく、0.1〜1質量%であることがよりさらに好ましい。含有率が上記範囲内であることにより、酸素還元触媒全体の質量当たりの酸素還元活性が適切に保たれ、過酸化水素を速やかに還元し、過酸化物ラジカルによる高分子電解質膜の劣化をより抑制できる傾向にある。
【0026】
本実施形態におけるプルシアンブルー型金属錯体の形成を簡便に確認する方法として、CuKα線をX線源として得られるX線回折測定を行うことが挙げられる。プルシアンブルー型金属錯体が形成されていれば、X線回折図において、回折角(2θ)が17.5°±0.5°,24.8°±0.5°,35.3°±0.5°,39.6°±0.5°の位置にピークが観察される傾向にある。また、酸素還元触媒を強アルカリ性の水溶液に浸してプルシアンブルー型金属錯体を分解し、その水溶液中のシアン化物濃度を測定することでプルシアンブルー型金属錯体を定量することができる。水溶液中のシアン化物濃度の測定はJISK0400−38−20「水質−シアン化物の定量−第2部:容易に遊離するシアン化物の定量」に従って行うことが好ましい。
【0027】
〔酸素還元活性物〕
本実施形態に係る酸素還元触媒で用いられる酸素還元活性物としては、酸素を還元する活性を有するものであれば特に限定されず、例えば、Pt系触媒、Pt合金系触媒、酸化物系非貴金属触媒、金属フタロシアニン系触媒及び金属ポルフィリン系触媒、並びに、窒素含有炭素触媒等が挙げられる。このなかでも、金属フタロシアニン系触媒及び金属ポルフィリン系触媒、並びに窒素含有炭素触媒が好ましく、窒素含有炭素触媒がさらに好ましい。このような酸素還元活性物を用いることにより、酸素還元反応における過酸化水素の発生量がより多くなり、プルシアンブルー型金属錯体の添加による高分子電解質膜の耐久性向上及び発電特性向上の効果がより大きくなる傾向にある。これら酸素還元活性物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法で合成されたものを用いることができる。
【0028】
上記窒素含有炭素触媒としては、特に限定されないが、例えば、遷移金属等の金属を含むものと含まないものが挙げられる。このなかでも、遷移金属等の金属を含むものが好ましい。遷移金属を含む窒素含有炭素触媒を用いることにより、酸素還元活性により優れる傾向にある。ここで、遷移金属としては、特に限定されないが、例えば、Fe,Co,Ni,Cu,Mn,Crが好ましく、Fe,Coがより好ましく、Feがさらに好ましい。
【0029】
遷移金属を含む窒素含有炭素触媒の合成法は、特に限定されないが、例えば、窒素原料と、炭素原料と、遷移金属原料と、を熱処理して炭化する方法が好ましい。
【0030】
ここで、窒素原料としては、特に限定されないが、例えば、窒素を含む有機物が好ましい。このような窒素を含む有機物としては、特に限定されないが、例えば、メラミンや1,10−フェナントロリンのような低分子;ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、アズルミン酸のような高分子;また鉄フタロシアニン、鉄ポルフィリンのような金属錯体の有機配位子を用いることができる。
【0031】
また、炭素原料としては、特に限定されないが、例えば、窒素を含む有機物、窒素を含まないフェノール樹脂等の高分子、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、グラファイト、活性炭等の炭素材料が挙げられる。
【0032】
遷移金属原料としては、特に限定されないが、例えば、鉄フタロシアニンや鉄アセチルアセトナート等の遷移金属錯体、又は硝酸鉄(III)や臭化鉄(II)等の遷移金属塩であることが好ましい。
【0033】
窒素含有炭素触媒を合成する際の熱処理条件は特に限定されないが、400℃〜1500℃であることが好ましく、500℃〜1200℃であることがより好ましく、600℃〜1000℃であることがさらに好ましい。温度が上記範囲内であることにより、酸素還元活性により優れる傾向にある。
【0034】
熱処理時間としては、5分〜50時間が好ましく、15分〜20時間がより好ましく、30分〜10時間がさらに好ましい。熱処理時間が上記範囲内であることにより、酸素還元活性により優れる傾向にある。また、熱処理の際の雰囲気は、特に限定されないが、窒素ガス下、希ガス下、又は真空下等が挙げられる。熱処理は複数回繰り返すことが好ましく、酸素還元活性の観点から、2回目以降の熱処理においてはアンモニア含有ガス下で熱処理することが好ましい。遷移金属の含有量を調整する観点から、熱処理の前後で塩酸や硫酸等を用いて遷移金属を一部又は全部除去してもよい。
【0035】
また、窒素含有炭素触媒の平均粒子径は、1nm以上100μm以下であることが好ましく、5nm以上10μm以下であることがより好ましく、10nm以上1μm以下であることがさらに好ましい。平均粒子径が上記範囲内であることにより、電極の比活性と電極内の物質輸送能力により優れる傾向にある。平均粒子径は、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法、画像イメージング法、重力沈降法等により測定することができる。なお、粒子径を調整する方法は特に限定されず、所定の粒子径である原料を用いてもよいし、粉砕を行ってもよい。粉砕の方法としては、以下の方法に限らないが、例えば、プレカーサー又は窒素含有炭素触媒をボールミル、ビーズミル、ジェットミル等にて粉砕する方法が挙げられる。
【0036】
酸素還元活性物は、酸素還元活性の観点からPt,Pd,Ru,Fe,Co,Ti,Zr,Nb,Mo,W,及びReからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含むことが好ましい。この中でも、Fe,Coは安価で埋蔵量も多いことから、酸素還元触媒への利用が望まれるが、Fe,Coからなる酸素還元活性物では過酸化水素発生率が高い。したがって、本実施例に係る酸素還元触媒はFe,Coからなる酸素還元活性物に好適に用いることができる。上記元素は、実施例に記載の方法にて同定することができる。
【0037】
〔酸素還元触媒の製造方法〕
本実施形態に係る酸素還元触媒の製造方法は、プルシアンブルー型金属錯体を合成する工程と、酸素還元活性物を合成する工程と、両者を複合化する工程とを有する。それぞれの工程を独立の作業として行ってもよく、複数の工程を同時に行う場合もある。プルシアンブルー型金属錯体を合成する工程と、酸素還元活性物を合成する工程については従来公知の方法を用いることができる。
【0038】
プルシアンブルー型金属錯体と酸素還元活性物を複合化する方法は、特に限定されず、前記の導電材料上にプルシアンブルー型金属錯体を担持する方法において、導電材料が酸素還元活性物である場合はそのまま酸素還元触媒に供することができる。また、導電材料が酸素還元活性物以外のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラフェン、グラファイト、活性炭等である場合は、プルシアンブルー型金属錯体と酸素還元活性物とを液相もしくは固相で複合化すればよい。
【0039】
本実施形態に係る酸素還元触媒を含む電極の電気化学的特性を評価する方法は、特に限定する必要は無いが、燃料電池の電極として用いることを考慮するならば、回転電極法(リニアスイープボルタンメトリー)によって評価することが好ましい。回転電極法によって測定した結果、過酸化水素の減少が確認されれば、燃料電池の電極として用いた場合にも過酸化水素が減るということが確認できる。
【0040】
〔用途〕
本実施形態に係る酸素還元触媒は、酸素還元電極、燃料電池等に好適に用いることができる。上記酸素還元触媒を含む、酸素還元電極及び燃料電池は、過酸化水素が速やかに還元され高分子電解質膜の劣化が抑制されたものとなる。酸素還元触媒から酸素還元電極、燃料電池等を得る方法は、特に限定されず、一般的な固体高分子形燃料電池の作成法を用いることができる。(例えば、特開2007−207662号公報参照)
【実施例】
【0041】
以下に本実施形態の実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであり、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。当業者は、以下に示す実施例に様々な変更を加えて本実施形態として実施することができ、かかる変更は本実施形態の範囲に包含される。
【0042】
分析方法は以下のとおりとした。
<分析方法>
(過酸化水素発生率の電気化学測定)
実施例及び比較例で用いた、電極作製法及び回転電極法によるリニアスイープボルタンメトリーの測定方法(日厚計測製の回転リングディスク電極装置「RRDE−1」を使用。)を以下に示す。回転電極はガラス状炭素からなるディスクとプラチナからなるリングを有する。ディスクには実施例及び比較例に示すように酸素還元触媒を塗布する。回転電極を作用極とし、可逆水素電極(RHE)を参照極として、炭素電極を対極とした。0.5M硫酸を電解液とし、その電解液に酸素を30分間バブリングした後、回転速度1500rpmでディスク電位を1.1Vから0Vまで5mV/sで掃引して電気化学測定を行った。リング電位は1.2Vとした。また、酸素還元開始電位E
0は−10μA/cm
2の電流を与える電位と定義した。
【0043】
ディスクに流れた電流(i
D)は酸素還元触媒上での酸素還元反応によるものであり、酸素から水への4電子還元反応と酸素から過酸化水素への2電子還元反応を合計したものである。一方、リングに流れた電流(i
R)はディスクで発生した過酸化水素の一部がリングに捕捉され、酸素に酸化されることによって生じたものである。ここで、捕捉率をN(本装置ではN=0.372)とすると、過酸化水素発生率は下記式により求められる。0.3V,0.5V,0.7Vでの過酸化水素発生率をそれぞれH
2O
2(0.3V),H
2O
2(0.5V),H
2O
2(0.7V)として、実施例及び比較例の測定結果を表1に示した。
過酸化水素発生率=200×(|i
R|/N)/(|i
D|+|i
R|/N)
【0044】
(酸素還元触媒に含まれる金属元素の定量方法)
実施例及び比較例の酸素還元活性物に含まれる金属元素は、ICP−MS法によって同定、定量した。また酸素還元触媒に含まれるプルシアンブルー型錯体は電気化学担持によって酸素還元活性物と複合化した。担持量は電気化学担持での電気量から算出した。その結果を表1に示す。
【0045】
[製造例1:酸素還元活性物の合成]
フェノール樹脂(群栄化学工業(株)製、レジトップPSK−2320)3.3gをアセトン300mLに溶解して溶液とし、この溶液中に3.0gの鉄フタロシアニン(東京化成工業(株)製)を加えた後、アセトンを減圧留去し、真空乾燥した。これを3.0g石英ボートに載置し、内径35mmの石英管状炉に収容し、1.2NL/minの窒素流通下で600℃において5時間熱処理した。冷却後、直径10mmφの窒化炭素製ボールを入れた遊星型ボールミル(フリッチュ製、商品名「Pulverisette−7」)を用いて90分間乾式粉砕した。粉砕された炭化物を、目開き106μmの篩を通過させた後、水/エタノール=1/1(体積比)混合液と直径0.5mmφのジルコニア製ボールとを入れた遊星型ボールミルを用いて90分間湿式粉砕し、平均粒子径0.35μmの炭化物を得た。
【0046】
粉砕後の炭化物1.0gを36質量%の濃塩酸500mL中に入れ、常温で4時間撹拌し、炭化物表面の鉄を溶解除去した。これをメンブレンフィルターで濾過し、純粋で洗浄した後、80℃において真空乾燥した。乾燥後の炭化物を上記と同じ加熱炉に入れ、1.2NL/minのアンモニアガス/窒素=1/1(体積比)混合ガス流通下で800℃において1時間熱処理した。
【0047】
冷却後の炭化物0.53gを36質量%の濃塩酸500mL中に入れ、常温で4時間撹拌し、炭化物表面の鉄を溶解除去した。これをメンブレンフィルターで濾過し、純水で洗浄した後、80℃において真空乾燥した。乾燥後の炭化物を上記と同じ加熱炉に入れ、1.2NL/minのアンモニアガス/窒素=1/1(体積比)混合ガス流通下で1000℃において1時間熱処理した。
【0048】
冷却後の炭化物0.22gを36質量%の濃塩酸500mL中に入れ、常温で4時間撹拌し、炭化物表面の鉄を溶解除去した。これをメンブレンフィルターで濾過し、純粋で洗浄した後、80℃において真空乾燥し、酸素還元活性物を0.21g得た。
【0049】
[実施例1]
バイアル瓶に、製造例1において得られた酸素還元活性物5mgを秤取し、そこに、ガラスビーズをスパチュラ一杯、5質量%ナフィオン(商品名)分散液(シグマアルドリッチジャパン製)を50μL、並びにイオン交換水及びエタノールをそれぞれ150μLずつ添加し、それらの混合物に20分間超音波を照射してスラリーを作製した。このスラリーを4μL秤取し、回転電極のガラス状炭素上(0.2828cm
2)に塗布し、飽和水蒸気下で乾燥した。この回転電極を、20mmol/Lのフェリシアン化カリウム(和光純薬製)、20mmol/Lの塩化鉄(III)(和光純薬製)を溶解させた0.01mol/Lの塩酸水溶液の入ったガラスセルに浸し、セル内の雰囲気を窒素で置換した後、−1.5μAの電流を10秒間流し、プルシアンブルーを回転電極に電気化学的に担持させて、実施例1の酸素還元触媒を得た。この回転電極を0.5M硫酸で洗浄した後、上記電気化学測定を行った。この結果を表1に示す。下記比較例1と比べて、低電位及び高電位とも過酸化水素発生率が3.4%程度低減した。
【0050】
[実施例2]
−1.5μAの電流を20秒間流し、プルシアンブルーを回転電極に電気化学的に担持させたこと以外は、実施例1と同様の操作を行ない、実施例2の酸素還元触媒を得た。この回転電極を0.5M硫酸で洗浄した後、上記電気化学測定を行った。この結果を表1に示す。下記比較例1と比べて、低電位及び高電位とも過酸化水素発生率が5.3%程度低減した。
【0051】
[比較例1]
製造例1において得られた酸素還元活性物を用いて上記電気化学測定を行った。その結果を表1に示す。
【0052】
[製造例2]
(アズルミン酸の製造)
水350gに青酸150gを溶解させた水溶液を調製し、攪拌を行いながら、その水溶液に25%アンモニア水溶液120gを10分間かけて添加し、得られた混合液を35℃に加熱した。青酸の重合が始まり黒褐色の重合物が析出し始め、温度は徐々に上昇し45℃となった。重合開始2時間後から30質量%の青酸水溶液を200g/hの速度でさらに添加し、4時間かけて800g添加した。青酸水溶液の添加中は反応温度を50℃に保つように制御した。この温度で、さらに100時間攪拌した。得られた黒色沈殿物をろ過によって分離し、黒色のアズルミン酸を得た。このときの青酸に対するアズルミン酸の収率は96%であった。得られた黒色のアズルミン酸を水洗した後、乾燥器にて120℃で4時間乾燥させた。
【0053】
(酸素還元活性物の合成)
1Lのナス型フラスコに上記乾燥後のアズルミン酸6.0g、硝酸鉄(III)、9水和物0.55g及び純水400gを加え、90℃の油浴中で1時間撹拌した。その後、ロータリーエバポレーターにて溶媒を除去し、真空乾燥機にて80℃で8時間乾燥させた。これを1.0g石英ボートに載置し、それを内径35mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの窒素流通下で60分間かけて室温から600℃まで昇温し、600℃のまま5時間保持した。冷却後、直径10mmφのジルコニア製ボールを入れた遊星ボールミル(フリッチュ製、商品名「Pulverisette−7」)を用いて90分間乾式粉砕した。粉砕された炭化物を目開き106μmの篩を通過させることで、平均粒子径を1.2μmに調整した。粉砕後の炭化物0.30gを36質量%の濃塩酸500mL中にいれ、常温で4時間撹拌し、炭化物表面の鉄を溶解除去した。これをメンブレンフィルターで濾過し、純水で洗浄した後、80℃において真空乾燥した。乾燥後の炭化物を上記と同じ加熱炉に入れ、1.2NL/minのアンモニアガス/窒素=1/1(体積比)混合ガス流通下で800℃において1時間熱処理した。冷却後の炭化物0.05gを36質量%の濃塩酸100mL中に入れ、常温で4時間撹拌し、炭化物表面の鉄を溶解除去した。これをメンブレンフィルターで濾過し、純水で洗浄した後、80℃において真空乾燥し、酸素還元活性物を0.04g得た。
【0054】
[実施例3]
バイアル瓶に、製造例2において得られた酸素還元活性物を用い、かつ−1.5μAの電流を20秒間流し、プルシアンブルーを回転電極に電気化学的に担持させたこと以外は、実施例1と同様の操作を行ない、実施例2の酸素還元触媒を得た。この回転電極を0.5M硫酸で洗浄した後、上記電気化学測定を行った。この結果を表1に示す。比較例2と比べて、低電位及び高電位とも過酸化水素発生率が6.4%程度低減した。
【0055】
[比較例2]
製造例2において得られた酸素還元活性物を用いて上記電気化学測定を行った。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】