(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、Oリングによってレンズユニットの気密性を確保する構造では、Oリングよりも前方側(被写体側)の隙間に異物や水が侵入するおそれがある。また、Oリングの組み込み時にOリングに異物が付着したり、Oリング自体が変形するなどして気密性が損なわれるおそれがある。気密性が損なわれると複数のレンズの間に水滴や異物が進入し、光学性能を著しく低下させるなどして機能を保てなくなる。
【0006】
また、レンズホルダにレンズを組み付けたレンズユニットでは、レンズホルダに対するレンズの固定に緩みが生じると、気密性が損なわれるだけでなく、複数のレンズにより構成される光学系の精度が低下し、レンズユニットの光学性能が低下するおそれもある。
【0007】
一方、特許文献2では、レンズを保持部材(レンズホルダ)に取り付けた後にスピンコーティングを施しており、レンズおよび保持部材の表面に光学薄膜が形成されている。このため、光学薄膜によってレンズと保持部材との隙間を覆うことができ、レンズユニットの気密性が向上する。しかしながら、特許文献2では、レンズと保持部材との境界にコーティング材が溜まるのを回避する形状となっており、隙間を封止するコーティング材が薄いため、気密性が十分でないおそれがある。
【0008】
また、特許文献2のレンズユニットは、保持部材に設けられた凹部の底にレンズが配置されており、このような形状では、必要な範囲にのみコーティングを施すのが困難になる場合がある。例えば、ディップコーティングでは、不必要に広い範囲にコーティングが行われ、高コストになるおそれがある。
【0009】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、気密性が高くレンズの固定強度が高いレンズユニットおよび光学ユニットを容易に且つ低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のレンズユニットは、光軸に沿って配置された複数のレンズと、当該複数のレンズを保持する筒状のレンズホルダと、を有し、前記複数のレンズは、凸状のレンズ面が形成された第1レンズを含み、当該第1レンズは、前記レンズホルダの前記光軸方向の一端から前記レンズ面の少なくとも一部を突出させた状態で前記レンズホルダに固定され、
前記レンズホルダには、前記第1レンズの外周部の全周をカシメ固定するカシメ部が設けられ、前記レンズ面、および、当該レンズ面を囲む前記レンズホルダの表面の少なくとも一部に、連続するコーティングが施されて
おり、前記カシメ部と前記レンズ面との境界部は、コーティング材が溜まる液溜まり部となっており、前記レンズ面のレンズ有効径よりも外周側が前記液溜まり部となるように、前記レンズ面および前記カシメ部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、このような構成により、第1レンズとレンズホルダとの隙間がコーティング材によって密封されるため、レンズユニットの気密性を高めることができ、異物や水分がレンズユニットの内側に侵入するのを抑制できる。また、コーティング材が硬化することで第1レンズのレンズホルダに対する固定を強化でき、第1レンズの緩みを抑制できる。よって、レンズユニットの光学性能の低下を抑制できる。また、レンズホルダからレンズ面が突出しているため、必要な範囲に容易にコーティングを施すことができる。加えて、レンズの組み付け後にコーティングを行うため、検査をクリアした良品にのみコーティングを施せば良く、コーティングの作業負荷を削減できると共に、コーティング材を節約できる。また、コーティング材によってレンズホルダの表面までも保護できる。
【0012】
また、本発明は、前記レンズホルダには、前記第1レンズの外周部
の全周をカシメ固定するカシメ部が設けられ、前記コーティングは、前記レンズ面、および、前記カシメ部の表面を含む前記レンズホルダの表面の少なくとも一部に連続して施されている
。従って、カシメ固定によって第1レンズの固定強度を高めることができると共に、コーティング材によってカシメ部と第1レンズとの隙間を密封できる。よって、気密性を高めることができ、異物や水分の侵入を抑制できる。
【0013】
更に、本発明は、前記カシメ部と前記レンズ面との境界部は、コーティング材が溜まる液溜まり部となっている
。従って、境界部を厚くコーティングできるため、カシメ部とレンズとの隙間をより確実に密封でき、より気密性を高めることができる。
よって、異物や水分等の侵入をより確実に抑制できる。
また、前記レンズ面のレンズ有効径よりも外周側が前記液溜まり部となるように、前記レンズ面および前記カシメ部が形成されているため、液溜まり部に溜まったコーティング材が光学性能に影響を与えることがない。
【0016】
ここで、本発明において、前記レンズホルダの内面には、前記第1レンズが前記光軸方向に当接する位置決め部が形成され、前記カシメ部は、前記位置決め部との間で前記第1レンズの外周部をカシメ固定することが望ましい。このようにすると、カシメ部とレンズ面との境界からレンズホルダ内にコーティング材が侵入したとしても、位置決め部がコーティング材の液溜まり部となり、位置決め部よりも内側へのコーティング材の侵入が抑制される。従って、レンズホルダ内に侵入したコーティング材によって不具合が生じるおそれが少ない。また、位置決め部に溜まるコーティング材によって位置決め部と第1レンズとの隙間を封止できるため、更に気密性が向上する。また、第1レンズの固定強度も更に高まる。
【0017】
本発明において、前記第1レンズと前記レンズホルダとの間に配置されたOリングを有することが望ましい。このようにすると、コーティング材だけでなくOリングによって密閉性を向上させることができるため、より気密性を高めることができる。
【0018】
また、本発明において、前記レンズホルダの外周面に段部が形成されていることが望ましい。このようにすると、段部が液溜まり部となるため、余分なコーティング材がレンズホルダの外周面を伝って広範囲に垂れることを防止できる。
【0019】
次に、本発明の光学ユニットは、上記のレンズユニットと、当該レンズユニットを保持する保持部材とを有し、当該保持部材は、前記第1レンズが固定された側の前記レンズホルダの端部を囲む保持枠を備え、前記レンズユニットにおける前記レンズ面および前記レンズホルダの表面に施された前記コーティングは、前記保持枠の表面の少なくとも一部にまで連続して施されていることを特徴としている。
【0020】
本発明は、このように、レンズユニットとその保持部材との隙間までもコーティングによって覆われているため、光学ユニットの気密性が高く、レンズユニット100の固定強度も高い。従って、異物や水分の侵入による不具合を抑制でき、光学性能の劣化を抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1レンズとレンズホルダとの隙間がコーティング材によって密封されるため、レンズユニットの気密性を高めることができ、異物や水分がレンズユニットの内側に侵入するのを抑制できる。また、コーティング材が硬化することで第1レンズのレンズホルダに対する固定を強化でき、第1レンズの緩みを抑制できる。よって、レンズユニットの光学性能の低下を抑制できる。また、レンズホルダからレンズ面が突出しているため、必要な範囲に容易にコーティングを施すことができる。加えて、レンズの組み付け後にコーティングを行うことにより、検査をクリアした良品にのみコーティングを施すことができ、コーティングの作業負荷を削減できると共に、コーティング材を節約できる。また、コーティング材によってレンズホルダの表面までも保護できる。
また、レンズホルダには、第1レンズの外周部の全周をカシメ固定するカシメ部が設けられ、コーティングはレンズ面、および、カシメ部の表面を含むレンズホルダの表面の少なくとも一部に連続して施され、カシメ部とレンズ面との境界部がコーティング材が溜まる液溜まり部となっている。従って、カシメ固定によって第1レンズの固定強度を高めることができるとともに、カシメ部とレンズ面との境界部を厚くコーティングできるため、カシメ部と第1レンズとの隙間を密封できる。更に、レンズ面のレンズ有効径よりも外周側が液溜まり部となっているため、液溜まり部に溜まったコーティング材が光学性能に影響を与えることがない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明を適用したレンズユニットおよび光学ユニットを説明する。
【0024】
(レンズユニット)
図1は、本発明の実施形態に係るレンズユニットの断面図であり、
図2はレンズユニットにおける成形レンズおよび絞りを抜き出して示す説明図である。なお、
図1において、後述する薄膜80は図示を省略している。本形態のレンズユニット100は、装置光軸Lに沿って配置された複数のレンズ1、2、3、4と、赤外線フィルタ6とを有しており、レンズ1、2、3、4および赤外線フィルタ6は筒状のホルダ7に保持されている。また、ホルダ7の内側において、レンズ3とレンズ4との間には絞り5が配置されている。本形態では、レンズ1、2、3、4および赤外線フィルタ6のうち、最も物体側L1に位置するレンズ1は、ホルダ7の物体側開口部7a(後述する大径部74の前端開口部)を塞ぐように配置されている。一方、最も像側L2に位置する赤外線フィルタ6は、ホルダ7の像側開口部7b(後述する底板部71に形成された開口部)を塞ぐように配置されている。なお、レンズの枚数はこのような数に限定されず、他の枚数であってもよい。また、赤外線フィルタ6はなくても良い。
【0025】
ホルダ7は、樹脂製の筒体である。なお、樹脂製に限らず、アルミニウム等の金属製であってもよい。ホルダ7は、装置光軸L方向の最も後側(像側L2)に位置する穴空きの底板部71と、底板部71の外周縁から前側(物体側L1)に延在する筒状胴部72と、筒状胴部72の前端部分の外周側に形成されたフランジ部73と、フランジ部73から前側(物体側L1)に延在する筒状の大径部74とを有している。ホルダ7の内側において、大径部74の内面740は、筒状胴部72の内面720よりも大径となっている。
【0026】
ホルダ7内には、筒状胴部72の内面720を基準としてレンズ2、3、4が配置されている。また、ホルダ7における物体側L1の最前端には、大径部74の内面740を基準としてレンズ1(第1レンズ)が配置されている。レンズ1は、物体側L1のレンズ面1aが凸状をしており、レンズ面1aの少なくとも一部がホルダ7の前端よりも物体側L1に突出するように配置されている。本形態では、ホルダ7の最前端にレンズ1を配置しており、レンズ面1aの大部分がホルダ7の前端から物体側L1に突出している。一方、ホルダ7の後端において、底板部71の像側L2の面には、赤外線フィルタ6の物体側面6aが当接している。赤外線フィルタ6の像側面6bは、レンズユニット100の後側(像側L2)に配置された撮像素子(図示せず)と対向している。
【0027】
レンズ1は、負のパワーを持つガラスレンズである。なお、レンズ1として、プラスチック製の成形レンズを用いてもよい。レンズ1は、物体側L1のレンズ面1aが凸状の球面であり、像側L2のレンズ面1bが凹状の球面である。レンズ面1a、1bの曲率半径を比較すると、レンズ面1bの曲率半径は、レンズ面1aの曲率半径より小となっている。レンズ1の外周面は、大径部74の内面740を基準に配置されてレンズ1の光軸の位置を規定する外周基準面110になっている。
【0028】
レンズ1は、フランジ部73における前側(物体側L1)の面に設けられた環状の段部75(位置決め部)を基準として、装置光軸L方向に位置決めされている。ホルダ7には、大径部74の前端に、熱カシメによってレンズ1をカシメ固定するカシメ部76が設けられている。レンズ1の外周部は、段部75に対して装置光軸L方向に当接するように配置され、カシメ部76は、段部75との間でレンズ1の外周部をカシメ固定している。カシメ部76および段部75は、レンズ1の全周に環状に設けられている。
【0029】
段部75の内周寄りの位置には環状の溝77が形成されており、溝77にはOリング78が配置されている。レンズ1において、像側L2のレンズ面1bの外周には、段部75に対して装置光軸L方向に対向する平坦な環状面1cが形成されている。レンズ1が大径部74内に組み付けられてカシメ固定されると、環状面1cは、段部75に当接(圧接)され、環状面1cと溝77の底面との間でOリング78が圧縮される。これにより、溝部77の底面および環状面1cにOリング78が密着して、レンズ1とホルダ7との隙間がOリング78によって密封される。
【0030】
レンズ2は、負のパワーを持つプラスチック製の成形レンズである。レンズ2は、物体側L1のレンズ面2aが凸状の球面あるいは非球面であり、像側L2のレンズ面2bが凹状の球面あるいは非球面である。レンズ面2a、2bの曲率半径を比較すると、レンズ面2bの曲率半径は、レンズ面2aの曲率半径より小となっている。レンズ2は、レンズ面2a、2bの外周側にフランジ部21を有している。フランジ部21における物体側L1の面には段部22が形成されている。フランジ部21の外周面は、筒状胴部72の内面720のうち、物体側L1に位置する内面部分を基準に配置されてレンズ2の光軸の位置を規定する外周基準面210になっている。
【0031】
レンズ3は、正のパワーをもつプラスチック製の成形レンズである。レンズ3は、物体側L1のレンズ面3aが凹状の球面あるいは非球面であり、像側L2のレンズ面3bが凸状の球面あるいは非球面である。レンズ面3a、3bの曲率半径を比較すると、レンズ面3aの曲率半径は、レンズ面3bの曲率半径より小となっている。レンズ3は、レンズ面3a、3bの外周側にフランジ部31を有している。フランジ部31の外周面は、筒状胴部72の内面720のうち、装置光軸L方向の中間に位置する内面部分を基準に配置されてレンズ3の光軸の位置を規定する外周基準面310になっている。
【0032】
レンズ4は、正のパワーをもつ接合レンズである。レンズ4において、物体側L1のレンズ面4aが凸状の球面あるいは非球面であり、像側L2のレンズ面4bが凸状の球面あるいは非球面である。具体的には、レンズ4は、物体側L1に配置されたプラスチック製の成形レンズ46と、像側L2に配置されたプラスチック製の成形レンズ47とを接合した接合レンズであり、成形レンズ46の像側L2のレンズ面46bと成形レンズ47の物体側L1のレンズ面47aとが接着剤で接合されている。このため、成形レンズ46の物体側L1のレンズ面46aによって、レンズ4の物体側L1のレンズ面4aが構成され、成形レンズ47の像側L2のレンズ面47bによって、レンズ4の像側L2のレンズ面4bが構成されている。レンズ面46a、46b、47a、47bの曲率半径を比較すると、レンズ面46b、47aの曲率半径は、他のレンズ面46a、47bより小となっている。
【0033】
レンズ4は、レンズ2、3と同様に、レンズ面4a、4bの外周側にフランジ部41を有しており、フランジ部41の外周面は、筒状胴部72の内面720のうち、像側L2に位置する内面部分を基準に配置されてレンズ4の光軸の位置を規定する外周基準面410になっている。本形態において、成形レンズ46は成形レンズ47より大径であることから、外周基準面410は、成形レンズ46のフランジ部460の外周面によって形成されている。成形レンズ47のフランジ部470はフランジ部460よりも小径であるため、フランジ部41における像側L2の面には、段部45が形成されている。
【0034】
ホルダ7において、筒状胴部72の内面720には、底板部71に近い像側L2の位置に段部721が形成されている。段部721にレンズ4のフランジ部41が当接することにより、レンズ4が装置光軸L方向に位置決めされている。レンズ4の物体側L1には、絞り5、レンズ3、およびレンズ2がこの順に重ねられている。本形態において、レンズ2、3、4は、筒状胴部72に圧入されるか、あるいは、筒状胴部72の内面720との間に最小の隙間を隔てて挿入されることにより、ホルダ7に対して固定されている。
【0035】
ここで、レンズ1の外周基準面110は、大径部74の内面740と平行になっている。レンズ1を大径部74内に配置すると、外周基準面110が大径部74を基準に配置され、その結果、レンズ1の光軸の位置が決まる。同様に、レンズ2、3、4の外周基準面210、310、410は、ホルダ7の内面720と平行になっている。レンズ2、3、4をホルダ7の筒状胴部72の内側に配置すると、外周基準面210、310、410は、それぞれ、ホルダ7の内面720を基準に配置される。その結果、レンズ2、3、4の光軸の位置が決まる。
【0036】
(コーティング材による密封構造)
図3は、レンズユニット100の部分拡大断面図(
図1の領域Aの拡大図)である。レンズユニット100では、レンズ1における物体側L1のレンズ面1aに表面強化用のハードコーティングが施されており、レンズ面1aの表面はコーティング材の薄膜80によって覆われている。薄膜80は、例えば、UV硬化膜、熱硬化膜などの硬質膜である。薄膜80を形成するにあたって、使用するコーティング材は、目的とする性能に応じて、公知の材料を適宜用いることができる。例えば、UV硬化膜の場合、有機材料と無機材料のどちらを用いても良いし、有機材料と無機材料を含むハイブリッドコーティング材を用いても良い。
【0037】
なお、レンズ面1aを覆う薄膜80は、様々な機能を備えたものとすることができる。例えば、UV硬化膜は、表面強化機能だけでなく、耐候性を兼ね備えたものとすることもできる。また、薄膜80は、反射防止膜などの光学機能を有する薄膜や、撥水防止機能を有する薄膜であってもよい。あるいは、複数の種類の薄膜を積層したものであってもよい。
【0038】
レンズ面1aへのコーティングは、スピンコーティング法、ディップコーティング法、塗布法などの各種の方法で行うことができる。例えば、本形態では、スピンコーティング法によってUV硬化膜を形成している。また、必要な膜厚(例えば、2〜3μm)を確保できるのであれば、スパッタリング法によってコーティングを施しても良い。
【0039】
ここで、本形態では、レンズ面1aへのコーティング工程を、レンズ1をホルダ7にカシメ固定した状態で行う。すなわち、レンズ1〜4、絞り5等のホルダ7への組み込みを行った後、組み込み完成後のレンズユニット100をスピンコーターに保持させる。そして、レンズユニット100の物体側L1の先端にコーティング材を供給し、遠心力によってコーティング材をレンズ面1aに均一に拡げる。しかる後に、紫外線、熱等によってコーティング材を硬化させる。このとき、液状のコーティング材は、レンズ面1aだけでなくレンズ面1aの外周を囲んでいるカシメ部76の表面まで拡がって硬化する。このように、ホルダ7へのレンズ組み付け後にコーティングを行うと、コーティングが施される範囲は、レンズ面1aだけでなく、レンズ1の周囲を囲むホルダ7の前端部分の表面を含む範囲となる。
【0040】
レンズユニット100において、コーティング材がカシメ部76の表面まで拡がった部位では、レンズ面1aとカシメ部76の表面に連続したコーティングが施される。これにより、レンズ面1aとカシメ部76の表面が連続した薄膜80によって覆われ、レンズ面1aとカシメ部76との隙間が密封される。更に、レンズ面1aとカシメ部76との間に隙間がある場合には、この隙間に液状のコーティング材が侵入して硬化するため、レンズ1と大径部74の内面740との隙間がコーティング材によって密封される。このとき、コーティング材によってレンズ1のホルダ7に対する固定も強化される。
【0041】
ホルダ7の内側において、大径部74の内面740と段部75との接続部は、ホルダ7とレンズ1の隙間に侵入したコーティング材が溜まる液溜まり部81となっている。液溜まり部81に侵入したコーティング材は、ホルダ7とレンズ1の隙間を密閉すると共に、硬化してレンズ1の固定を強化する。
【0042】
また、ホルダ7の前端において、レンズ面1aとカシメ部76の先端との境界には、カシメ部76の先端の厚みに応じた段差が形成されている。この段差の箇所は、コーティング材が溜まる液溜まり部82となっている。ここで、カシメ部76の先端は、レンズ面1aのレンズ有効径よりも外周側に位置しており、レンズ有効径よりも外周側に液溜まり部82が形成されている。レンズ面1aに供給されたコーティング材は、レンズ面1aのレンズ有効径の範囲内において均一な膜厚となるように拡げられる。そして、余分なコーティング材は液溜まり部82に溜まり、遠心力等によってその外周側のカシメ部76の表面まで拡がるようになっている。
【0043】
ホルダ7の外側には、大径部74の外周面に、物体側L1を向いた段面を備える段部79が形成されている。段部79は、大径部74の全周に亘って環状に形成されている。レンズユニット100の物体側L1の先端に供給されたコーティング材のうち、余分なコーティング材がカシメ部76から大径部74の外周面にまで流れた場合、この段部79がコーティング材の液溜まり部83となる。つまり、ホルダ7の外周面を伝ってコーティング材が広範囲に垂れることが防止されている。
【0044】
(本形態の主な効果)
以上のように、本形態のレンズユニット100は、レンズ1のレンズ面1aがホルダ7から装置光軸L方向の物体側L1に突出しており、外部に露出しているレンズ面1aと、このレンズ面1aを囲むホルダ7の前端部分(カシメ部76)の表面に、連続したコーティングが施されている。このような構成では、レンズ面1aとホルダ7との隙間を覆う薄膜80が形成されるので、レンズ1とホルダ7との隙間が密封される。従って、レンズユニット100の気密性が高まり、レンズユニット100内に異物や水分が侵入するのを抑制できる。また、コーティング材が硬化することでレンズ1のホルダ7に対する固定を強化でき、レンズ1の緩みを抑制できる。よって、レンズユニット100の光学性能の低下を抑制できる。
【0045】
特に、本形態では、ホルダ7からレンズ面1aが突出しているため、各種のコーティング方法で必要な範囲に容易にコーティングを施すことができる。例えば、ディップコーティングのような簡易な方法でレンズ面1aおよびカシメ部76にコーティングを施すことができる。また、ホルダ7へのレンズ1〜4等の組み込みを行った後にコーティングを施すため、組み付け完了後の検査をクリアした良品にのみコーティングを行えばよい。従って、コーティングの作業負荷を削減できると共に、コーティング材を節約できる。また、コーティング材によってホルダ7の表面までも保護でき、ホルダ7にも撥水機能や表面強化機能等を持たせることができる。
【0046】
また、本形態では、レンズ1がホルダ7にカシメ固定されているため、レンズの固定強度が高い。また、カシメ部76とレンズ面1aとの境界部に液溜まり部82が設けられているため、隙間ができるおそれのある境界部が厚くコーティングされ、カシメ部76とレンズ1との隙間をより確実に密封できる。ここで、液溜まり部82はレンズ面1aのレンズ有効径よりも外周側に設けられているため、液溜まり部82に溜まったコーティング材がレンズユニット100の光学性能に影響を与えることがない。また、カシメ部76はレンズ1の全周に設けられているため、レンズ1の全周をカシメ固定でき、固定強度が高い。また、レンズ1の全周に液溜まり部82が形成されているため、更に確実に密封できる。なお、カシメ部76はレンズ1の全周に設けられていなくても良い。また、カシメ部76とレンズ面1aとの境界を覆うコーティングについても、レンズ面1aの全周に施されていなくても良く、一部分にのみ施されていてもよい。一部分であっても、気密性向上効果およびレンズ1の固定強度向上効果は得られる。
【0047】
更に、本形態では、ホルダ7内に、レンズ1に対して装置光軸L方向に当接してレンズ1を位置決めする段部75(位置決め部)が形成されており、カシメ部76は、段部75との間にレンズ1の外周部をカシメ固定している。このような構成では、段部75がコーティング材の液溜まり部81となり、レンズ1とカシメ部76との隙間からホルダ7内にコーティング材が侵入したとしても、液溜まり部81よりも奥側(レンズユニット内部)へのコーティング材の侵入が抑制される。従って、ホルダ7とレンズ1との隙間に侵入したコーティング材がレンズ1のレンズ面1bやレンズ2〜4に付着するのを抑制でき、ホルダ7内に侵入したコーティング材によって不具合が生じるおそれが少ない。また、液溜まり部81に溜まるコーティング材によって大径部74の内面740と第1レンズとの隙間が密封され、更に気密性を高めることができる。また、液溜まり部81に侵入したコーティング材の硬化によってレンズ1の固定強度を更に高めることができる。
【0048】
加えて、本形態では、ホルダ7の外周面にも段部79が形成されており、この段部79が液溜まり部83となって、ホルダ7の外周面を伝ってコーティング材が広範囲に垂れることを防止できる。従って、ホルダの外周面に不必要にコーティング材が付着することによる不具合を抑制できる。
【0049】
また、本形態では、コーティング材とOリング78の2種類の封止材を用いてレンズ1とホルダ7との隙間を密封しているため、Oリング78による気密性向上効果も得られ、より気密性が高い構造となっている。なお、Oリング78を省略した構造にしてもよい。レンズユニット100について、Oリング78を省略した場合とOリング78有りの場合について気密性検査(リーク検査)を行った結果、Oリング78が無くても検査合格レベルの気密性が得られることを確認している。
【0050】
(光学ユニット)
図4は、本発明の実施形態に係る光学ユニットの説明図であり、
図4(a)は光学ユニットの主要部分の断面図、
図4(b)は光学ユニットの部分拡大断面図(
図4(a)の領域Bの拡大図)である。光学ユニット200は、上記形態のレンズユニット100と、レンズユニット100を保持する保持部材としての装置ケース201と、レンズユニット100の像側L2に配置された撮像素子(図示せず)等を有する。
【0051】
装置ケース201には、装置光軸L方向の一端に筒状の保持枠202が形成されている。保持枠202は、レンズ1が固定された側のホルダ7の端部を囲むように形成されている。レンズユニット100は、保持枠202の内側において、フランジ部73および大径部74の外周面が保持枠202の内面203を基準に配置されて位置決めされている。レンズユニット100は、装置ケース201に対し、接着剤あるいは圧入等によって固定されている。なお、他の固定方法を用いても良い。レンズユニット100は、物体側L1の先端部分(すなわち、レンズ面1aおよびカシメ部76の先端部分)が保持枠202から突出するように配置されている。
【0052】
光学ユニット200において、レンズ面1aには、上述したように表面強化用のハードコーティングが施されており、レンズ面1aの表面はコーティング材の薄膜80によって覆われている。本形態では、レンズユニット100のレンズ面1aへのコーティングを、レンズユニット100が装置ケース201に固定された状態で行う。このため、
図4(b)に示すように、レンズ面1aおよびその外周を囲むカシメ部76の表面から、カシメ部76の外周を囲む保持枠202の表面まで連続してコーティングが施されている。
【0053】
このような構成では、レンズユニット100におけるレンズ面1aとホルダ7との隙間だけでなく、レンズユニット100と装置ケース201との隙間を覆うように薄膜80が形成され、レンズユニット100と装置ケース201との隙間が密封される。従って、光学ユニット200の気密性が高まり、光学ユニット200内に異物や水分が侵入するのを抑制できる。また、コーティング材が硬化することで、レンズユニット100の装置ケース201に対する固定を強化でき、レンズユニット100の緩みを抑制できる。また、装置ケース201からレンズユニット100の先端部分が突出しているため、コーティングが容易である。更に、装置ケース201の表面をコーティング材によって保護できる。
【0054】
なお、光学ユニット200において、レンズユニット100と同様に、カシメ部76と保持枠202との境界部に液溜まり部を形成することで、隙間ができるおそれのある境界部が厚くコーティングされ、より気密性が高まる。また、レンズユニット100におけるホルダ7の外周面に形成された段部79は、レンズユニット100と装置ケース201との隙間に侵入したコーティング材が溜まる液溜まり部として機能する。従って、光学ユニット200内に侵入したコーティング材による不具合を抑制できる。また、ホルダ7の外周面と装置ケース201の内面との間にOリングを配置してもよく、この場合には、更に気密性を向上させることができる。