(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、強地震を検知して復帰不可のガス遮断を行った後、所定時間の計測を開始し、この間に地震等の事象を検知しないときは、復帰不可のガス遮断状態を復帰可能なガス遮断状態に変更することにより、復帰スイッチの押下や自動復帰によりガスが使用できるようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図3は、特許文献1に記載された従来のガス遮断装置の構成図を示すものである。
図3に示すように、ガスメータ110は、ガス流量を検出する流量センサ111,地震による震動の強弱に応じた感震信号を出力する感震センサ112,ガス圧力を検出する圧力センサ113,ガスの供給を遮断する遮断弁114,ガスの使用量や警報、その他の情報を表示する表示部115,遠隔の監視センタ121と電話回線(ネットワーク)120を介して接続された通信I/F(インターフェース)116,ガス遮断の機能をテストするための遮断機能検査手段としてのテストスイッチ117,ガス遮断した場合に遮断弁114を開けるための復帰スイッチ118、及び、前記センサやスイッチ等からの信号に基づいて遮断弁114や表示部115の制御を行うなど、ガスメータ110の制御に必要な種々の演算処理を実行するマイクロコンピュータ(図示しないCPU、メモリ、タイマ、入出力インターフェース等を含む)で構成される制御部としてのコントローラ119を備えている。
【0004】
そして、感震センサ112により、地震と判定して復帰不可のガス遮断を行った後、所定時間計時手段119aによる所定時間の計時を開始し、この所定時間内に感震センサ112による感震有りを検知しなければ、自動復帰可能としている。
【0005】
なお、ガスメータ110に対しては、作業員が通信装置122とガスメータ110とを図示しない接続ケーブルで接続して、必要なデータを相互に送受信することにより、復帰不可のガス遮断の解除や閉栓状態の遮断弁114の開栓を指示する復帰命令の送信、遮断条件や動作モード等の設定を行うことができる。また、遮断弁114によるガス遮断後に、所定の条件が成立すれば自動的に遮断弁114の開弁を行うモードである自動復帰の有り/無しの動作モードについても設定することができる。なお、これらの設定は、電話回線120を介して監視センタ121との間で必要なデータを送受信することにより行うこともできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、地震と判定して復帰不可のガス遮断を行った後、所定時間計時手段119aによる所定時間の計時を開始し、この所定時間内に感震センサ112からの感震信号を確認している。そのため、震源地からの距離が近い場合や大きな地震の場合、或いは地震の大きさは小さいが地質的な特性により揺れる時間が長くなる場合には地震が終息しておらず、所定時間内の感震信号の確認では地震有りと再度判定してしまうという課題があった。
【0008】
即ち、
図4に示すように、最初の地震判定をaのタイミングで行った後、所定時間b内に地震が発生したかどうかの検出を行っている。
【0009】
しかし、地震と判定して復帰不可のガス遮断を行ったタイミングaの後、続けて所定時間内に震動検出手段からの感震信号確認を行なっているので、大きな地震の場合は地震が終息しておらず所定時間内の感震信号確認で地震有りと再度判定していた。そのため、所定時間内の感震信号確認を行うタイミングが早すぎることで、地震終息を待たずして復帰不可遮断と確定していた。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、地震と判定して復帰不可のガス遮断を行った後、地震の規模や地質の地域特性、建物などの条件を考慮したタイミングで感震信号の確認を行うことが可能なガス遮断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明のガス遮断装置は、流路を流れるガスの流量を測定する流量センサと、震動を感知し、感震信号を出力する感震センサと、前記流路の開閉を行う遮断弁と、前記感震センサから出力された感震信号により地震の有無を判定し、地震有りと判定したときに前記遮断弁によりガスの遮断を行うコントローラと、を備え、前記コントローラは、地震ありと判定して復帰不可のガス遮断を行った後、第1の所定時間の計時を開始し、この第1の所定時間の計時後に、第2の所定時間の計時を開始し、第2の所定時間の計時中に前記感震センサから感震信号を検知しないときは、復帰不可のガス遮断状態を復帰可能なガス遮断状態に変更する。これにより、復帰スイッチの押下や自動復帰によりガスが使用できるように制御するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、地震による復帰不可遮断の発生件数を低減することが出来、ガス事業者の不要な出動回数と負担を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、流路を流れるガスの流量を測定する流量センサと、震動を感知し、感震信号を出力する感震センサと、前記流路の開閉を行う遮断弁と、前記感震センサから出力された感震信号により地震の有無を判定し、地震有りと判定したときに前記遮断弁によりガスの遮断を行うコントローラと、を備え、前記コントローラは、地震ありと判定して復帰不可のガス遮断を行った後、第1の所定時間の計時を開始し、この第1の所定時間の計時後に、第2の所定時間の計時を開始し、第2の所定時間の計時中に前記感震センサから感震信号を検知しないときは、復帰不可のガス遮断状態を復帰可能なガス遮断状態に変更する、ガス遮断装置である。これにより、復帰スイッチの押下や自動復帰によりガスが使用できるようになり、復帰不可遮断の発生件数を低減でき、ガス事業者の出動回数と負担を低減することができる。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明のガス遮断装置において、外部から操作可能な操作手段、或いは外部との通信が可能な通信手段を備え、前記操作手段が所定の操作を受け付けることにより、或いは前記通信手段を介して所定の信号を受信することにより、外部から前記第1の所定時間を変更可能に構成されている。これにより、地震の規模や強度、地質特性、余震の頻度に応じて、第1の所定時間を設定することで、同一の地震に対しても、メータの設置地域に合ったタイミングで地震の有無検知を行うことが可能となり、自動復帰が不可能なガス遮断の発生を最小限にすることができる。
【0016】
第3の発明は、特に、第1の発明のガス遮断装置において、前記感震センサは、震動の大きさに応じた感震信号を出力し、前記コントローラは、前記感震信号により所定以上の大きさの地震有りと判定したときに復帰不可のガス遮断を行うと共に、前記第1の所定時間を地震の大きさに対応して変更可能としている。これにより、多様な地震に対して対応することが可能となる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるガス遮断装置の構成図を示すものである。
【0018】
図1において、ガスメータ10は、ガス流量を検出する流量センサ11,地震による震動の強弱に応じた感震信号を出力する感震センサ12,ガス圧力を検出する圧力センサ13,ガスの供給を遮断する遮断弁14,ガスの使用量や警報、その他の情報を表示する表示部15,遠隔の監視センタ21と電話回線20を介して接続された通信I/F16,ガス遮断の機能をテストするための遮断機能検査手段であるテストスイッチ17,ガス遮断した場合に遮断弁14を開栓するための復帰スイッチ18,及び,ガスメータ10の制御に必要な種々の演算処理を実行するマイクロコンピュータ(図示しないCPU、メモリ、タイマ、入出力インターフェース等を含む)で構成されるコントローラ19を備えている。
【0019】
また、作業員が通信装置22とガスメータ10の通信I/F(通信手段)16とを図示しない接続ケーブルで接続することにより、必要なデータをガスメータ10と通信装置22との間で相互に送受信できる。従って、通信装置22を操作することにより、復帰不可の遮断状態の解除、遮断弁14を閉栓状態から開栓状態にする復帰命令の送信、或いは、遮断条件や動作モード等の設定を行うことができる。例えば、通信I/Fを介して所定の信号を入力することにより、後述する待機時間(第1の所定時間)は、任意の時間幅で設定することができる。なお、これらの設定は、電話回線20を介して監視センタ21との間で必要なデータを送受信することにより行うこともできる。また、ガスメータ10自体に、時間設定の為の操作スイッチ(操作手段)を設けて、この操作手段に対して所定の操作を行うことにより、設定するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0020】
遮断弁14は、ガスメータ10内に配管された図示しないガス流路の途中に設置されている。遮断弁14は、感震センサ12により地震発生が検知された場合、流量センサ11により検出されるガス流量が異常の場合、或いは、圧力センサ13により検出されるガス圧力の値が異常値の場合に、コントローラ19からの指示に基づきガスを遮断する。
【0021】
なお、このガスの遮断状態には、復帰可能なガス遮断状態と復帰不可のガス遮断状態とがある。復帰可能なガス遮断状態では、監視センタ21又は通信装置22からガスメータ10へ復帰命令を送信するか、又は復帰スイッチ18を押下することにより、ガスが使用できる状態、即ち、遮断弁14を開栓状態とすることができる。
【0022】
一方、復帰不可のガス遮断状態では、監視センタ21又は通信装置22からガスメータ10へ復帰不可の解除命令を送信することにより復帰可能なガス遮断状態となる。更にその後、監視センタ21又は通信装置22からガスメータ10へ復帰命令を送信するか、又は復帰スイッチ18を押下することにより、ガスが使用できる状態、即ち、遮断弁14を開栓状態とすることができる。
【0023】
復帰スイッチ18は、閉栓してガスを遮断している遮断弁14を、再び開栓して使用できる状態に復帰させるためのスイッチである。この復帰スイッチ18が需要家又は作業員により押下されると、コントローラ19は復帰処理として、遮断弁14を開状態とする。このように復帰スイッチ18が押下された場合も、需要家等によりガスを使用しても安全であることが確認されていると見なすことができる。
【0024】
コントローラ19は、ガスの使用量を演算して表示部15に表示させる処理を実行する。また、コントローラ19は、各センサを通じてガス流量又はガス圧力の異常、地震の発生の有無、及び、電源電圧等を常時監視する。そして、異常を検知した場合はガスの遮断又は警報を行い、また必要に応じて遠隔の監視センタ21にガスメータ10の使用状態や警報内容等を通報する処理を実行する。
【0025】
また、コントローラ19は、感震センサ12から出力された感震信号に基づいて地震の強弱(「地震の強弱」として、例えば、揺れの大きさを表す「震度の大小」を採用してもよい)を判定する。ここで、所定未満の大きさの地震(弱地震)であると判定した場合は復帰可能なガス遮断を行う。
【0026】
一方、所定以上の大きさの地震(強地震)であると判定した場合は復帰不可のガス遮断を行う。そして、待機時間計時手段19aで第1の所定時間(待機時間)の計時を行った後、検知時間計時手段19bで第2の所定時間の計時を開始する。
【0027】
そして、第2の所定時間の計時時間内に感震センサ12から感震信号を検知しないときは、復帰不可のガス遮断状態を復帰可能なガス遮断状態に変更するガス遮断処理を実行する。
【0028】
さらに、コントローラ19は、復帰可能なガス遮断を行った場合には、自動的にガス遮断状態を解除する自動復帰の処理を実行する。この自動復帰は、既存のガスメータに設けられている機能の一つであり、自動復帰あり又は自動復帰なしのいずれかの動作モードに設定されている。
【0029】
また、コントローラ19は、テスト遮断が行われたときは、復帰不可のガス遮断状態から復帰可能なガス遮断状態へと変更する機能を有する。このテスト遮断は、テストスイッチ17の操作による遮断を意味し、地震による遮断よりも実行の優先度の高い遮断であり、且つ、復帰可能な遮断である。従って、第2の所定時間内にテスト遮断を行うことで、復帰不可の遮断状態から復帰可能な遮断状態への変更が可能となる。
【0030】
テストスイッチ17は、リードスイッチにより構成され、このテストスイッチ17によるテスト遮断は、専門の技術を有する作業員が行う。即ち、地震やその他の異常発生後の安全確認は作業員により実施される。したがって、テストスイッチ17によりガス遮断のテストが行われたときは、作業員によりガスを使用しても安全であることが確認されている、と見なすことができる。
【0031】
なお、本実施の形態では、テスト遮断の有無を第2の所定時間(検知時間)の計時中に判断する方法を説明したが、第1の所定時間(待機時間)の計時中、或いは、待機時間終了後などいつ行なってもよいものである。
【0032】
次に、以上のように構成されたガス遮断装置について、その動作及び作用を、
図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0033】
以下に説明する処理は、コントローラ19のマイクロコンピュータにより、プログラムに従って実行される。
【0034】
まず、ガス遮断の状態かどうかを判定し(S101)、ガス遮断状態でなければ(S101:NO)、地震の有無を判定する(S102)。
【0035】
すなわち、コントローラ19は常時、地震の発生、ガス流量やガス圧力の異常等を監視しており、これらの異常を検知した場合は、遮断弁14を閉じて復帰可能なガス遮断状態又は復帰不可のガス遮断状態とする。そして、感震センサ12から感震信号を受信して地震の発生を検知したときは、復帰不可能な遮断を行う。
【0036】
ステップS102で地震有りと判定すると(S102:YES)、復帰不可のガス遮断状態とする(S103)と共に、第1の所定時間(待機時間)の計時を開始(S105)する。なお、ステップS102の処理については、単に地震の有無を判定するのに替えて、「感震信号により所定以上の大きさの地震」の有無を判定することとしてもよい。
【0037】
また、ステップS101でガス遮断状態が検知されると(S101:YES)、検知時間(第2の計時時間)の計時中であるかの判断を行い(S110)、検知時間の計時中であれば(S110:YES)、ステップS111の処理に移行する。
【0038】
ステップS110で検知時間(第2の計時時間)の計時中でないと判断されると(S110:NO)、待機時間(第1の所定時間)の計時中かどうかを判定し(S104)、待機時間の計時中と判断されると(S104:YES)、待機時間が経過したかどうかの判定を行う(S106)。
【0039】
次に、ステップS106で待機時間が経過したと判断されると(S106:YES)、遮断後の感震信号再検知のための第2の所定時間(検知時間)の計時を開始する(S107)。
【0040】
ステップS110で検知時間(第2の計時時間)の計時中であると判断されると(S110:YES)、検知時間が経過したかどうかを判断し(S111)、検知時間が経過していれば(S111:YES)、検知時間中に地震が検知されなかったとして復帰可能なガス遮断状態へ変更する(S113)。
【0041】
ステップS111で検知時間が経過していないと判断された場合は(S111:NO)、テストスイッチ17の操作によるテスト遮断が行われたかどうかの判断(S109)、或いは、監視センタ21又は通信装置22からの復帰不可の遮断状態の解除命令があったかどうかの判断(S114)を行い、テスト遮断あり(S109:YES)、又は解除命令あり(S114:YES)の場合は、復帰可能なガス遮断と確定する(S113)。
【0042】
もしも、テスト遮断及び解除命令の何れもがない場合は、地震の有無を判定し(S108)、地震有りと判定されれば(S108:YES)、検知時間中に地震が検知されたとして復帰不可のガス遮断と確定する(S112)。
【0043】
なお、復帰可能なガス遮断と確定した場合(S113)、コントローラ19は、遮断弁14を復帰不可のガス遮断状態として管理していれば、復帰可能なガス遮断状態として管理するよう変更する。同様に、復帰不可のガス遮断と確定した場合(S112)、コントローラ19は、遮断弁14を復帰可能なガス遮断状態として管理していれば、復帰不可のガス遮断状態として管理するよう変更する。
【0044】
さらに、フローチャートによる説明は行わないが、復帰可能なガス遮断状態において、遮断弁14を開栓する処理について以下に説明する。
【0045】
まず、自動復帰ありのモードが設定されているかどうかを判定し、自動復帰ありのモードであれば、ガス遮断の復帰処理(遮断弁14の開栓)を行う。もしも、自動復帰なしのモードであれば、復帰操作として復帰スイッチ18が押下されたかどうかを判定し、押下されれば、ガス遮断の復帰処理を行う。
【0046】
以下、本実施の形態の効果を、
図5を用いて説明する。
【0047】
図5は、地震の震動波形と、地震検知のタイミングa、待機時間c、及び、検知時間dの関係の典型例を示す。この
図5に示すように、本実施の形態では、最初の地震判定をaのタイミングで行った場合、その後の待機時間cが経過してから、検知時間d内に地震が発生するかどうかの判定を行っている。
【0048】
従って、
図4を用いて説明した従来の判定方法と異なり、適切な時間に設定された待機時間cを用いることで、地震の終息を待ち、次の地震判定を行うことができる。
【0049】
これによって、最初の地震検知で一旦復帰不可のガス遮断状態とした後に、次の地震判定時に地震なしと判定できるので、この判定に基づき復帰可能なガス遮断状態へ変更することができ、復帰スイッチ18の押下による復帰処理や自動復帰が可能となる。したがって、作業員が通信装置22を介して解除命令を送信する必要もなく、作業員が出動する回数も減るため、安全性を確保しつつ人的な経費と時間を節約することができる。
【0050】
なお、上記本実施の形態では、第2の所定時間(待機時間)を1通りとしているが、検知した感震信号に基づいて地震の大きさを判定し、コントローラ19が地震の大きさに基づいて自動的に待機時間を設定することとしてもよい。また、予め複数の待機時間をメモリ等で記憶しておいて、コントローラ19が地震の大きさに応じて選択するようにしてもよいことはいうまでもない。