【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材の両面に粘着剤層を有するグラファイトシート用両面粘着テープであって、前記両面の粘着剤層のうちの少なくとも一方の粘着剤層が、リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.05〜2.5の(メタ)アクリルポリマーを含有するグラファイトシート用両面粘着テープである。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
粘着剤層には、一般に(メタ)アクリルモノマー等のラジカル重合性モノマーを「フリーラジカル重合」により重合させて得られたポリマーが用いられている。
しかしながら、フリーラジカル重合は、分子量及び分子量分布、共重合体組成等を充分に制御できず、低分子量成分が生成したり、共重合の場合であってもホモポリマーが生成したりするという欠点がある。本発明者らは、このような低分子量成分又はホモポリマーが、両面粘着テープを電子部品から剥がれやすくしたり、グラファイトシートごと両面粘着テープを電子部品から剥離するときに、粘着剤層の剛性が不足するためにグラファイトシートにクラック又は折りシワを発生させたりする原因となっていると考え、フリーラジカル重合ではなく「リビングラジカル重合」により得られたポリマーを用いることを検討した。
【0009】
リビングラジカル重合は、重合反応が停止反応又は連鎖移動反応等の副反応で妨げられることなく分子鎖が生長していく重合であるため、分子量及び分子量分布、共重合体組成等を制御しやすく、低分子量成分の生成及び共重合せずに生じるホモポリマーの生成を抑えることができる。
本発明者らは、基材の両面に粘着剤層を有するグラファイトシート用両面粘着テープにおいて、少なくとも一方の粘着剤層に、リビングラジカル重合により得られた特定範囲の分子量分布(Mw/Mn)の(メタ)アクリルポリマーを用いることにより、薄い両面粘着テープであっても電子部品から剥がれにくい一方で、グラファイトシートごと電子部品から剥離するときにはグラファイトシートにクラック又は折りシワを発生させることなく剥離することができるグラファイトシート用両面粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明のグラファイトシート用両面粘着テープ(以下、単に「本発明の両面粘着テープ」ともいう)は、基材の両面に粘着剤層を有するものである。上記両面の粘着剤層のうちの少なくとも一方の粘着剤層は、リビングラジカル重合により得られた分子量分布(Mw/Mn)1.05〜2.5の(メタ)アクリルポリマーを含有する。
なお、本発明の両面粘着テープを用いてグラファイトシートを電子部品に貼り付ける際には、このような(メタ)アクリルポリマーを含有する粘着剤層が電子部品側となるように用いられることが好ましい。
【0011】
上記(メタ)アクリルポリマーは、リビングラジカル重合、好ましくは有機テルル重合開始剤を用いたリビングラジカル重合により得られたポリマーである。
リビングラジカル重合は、重合反応が停止反応又は連鎖移動反応等の副反応で妨げられることなく分子鎖が生長していく重合であるため、分子量及び分子量分布、共重合体組成等を制御しやすく、低分子量成分の生成及び共重合せずに生じるホモポリマーの生成を抑えることができる。このため、上記粘着剤層が上記(メタ)アクリルポリマーを含有することにより、本発明の両面粘着テープは、薄い両面粘着テープであっても電子部品から剥がれにくい一方で、グラファイトシートごと電子部品から剥離するときにはグラファイトシートにクラック又は折りシワを発生させることなく剥離できるものとなる。
【0012】
なかでも、有機テルル重合開始剤を用いたリビングラジカル重合は、他のリビングラジカル重合とは異なり、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、アミド基、ニトリル基等の官能基を有するモノマーをいずれも保護することなく、同一の開始剤で重合して均一な分子量及び組成を有するポリマーを得ることができる。このため、このような官能基を有するモノマーを容易に共重合することができる。
【0013】
上記有機テルル重合開始剤は、リビングラジカル重合に一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、有機テルル化合物、有機テルリド化合物等が挙げられる。
上記有機テルル化合物として、例えば、(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−クロロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(メチルテラニル−メチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−アミノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−シアノ−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(1−メチルテラニル−エチル)ベンゼン、1−クロロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−アミノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−ニトロ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−シアノ−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メチルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェニルカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−メトキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−フェノキシカルボニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−スルホニル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−(2−メチルテラニル−プロピル)ベンゼン、2−(メチルテラニル−メチル)ピリジン、2−(1−メチルテラニル−エチル)ピリジン、2−(2−メチルテラニル−プロピル)ピリジン、2−メチルテラニル−エタン酸メチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メチルテラニル−エタン酸エチル、2−メチルテラニル−プロピオン酸エチル、2−メチルテラニル−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メチルテラニルアセトニトリル、2−メチルテラニルプロピオニトリル、2−メチル−2−メチルテラニルプロピオニトリル等が挙げられる。これらの有機テルル化合物中のメチルテラニル基は、エチルテラニル基、n−プロピルテラニル基、イソプロピルテラニル基、n−ブチルテラニル基、イソブチルテラニル基、t−ブチルテラニル基、フェニルテラニル基等であってもよく、また、これらの有機テルル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
上記有機テルリド化合物として、例えば、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジ−sec−ブチルジテルリド、ジ−tert−ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス−(p−メトキシフェニル)ジテルリド、ビス−(p−アミノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−ニトロフェニル)ジテルリド、ビス−(p−シアノフェニル)ジテルリド、ビス−(p−スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等が挙げられる。これらの有機テルリド化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ−n−プロピルジテルリド、ジ−n−ブチルジテルリド、ジフェニルジテルリドが好ましい。
【0015】
なお、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記有機テルル重合開始剤に加えて、重合速度の促進を目的として重合開始剤としてアゾ化合物を用いてもよい。
上記アゾ化合物は、ラジカル重合に一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等が挙げられる。これらのアゾ化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記リビングラジカル重合においては、分散安定剤を用いてもよい。上記分散安定剤として、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記リビングラジカル重合の方法として、従来公知の方法が用いられ、例えば、溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等が挙げられる。
上記リビングラジカル重合において重合溶媒を用いる場合、該重合溶媒は特に限定されず、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒や、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド等の高極性溶媒を用いることができる。これらの重合溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、重合温度は、重合速度の観点から0〜110℃が好ましい。
【0017】
上記(メタ)アクリルポリマーは、分子量分布(Mw/Mn)が1.05〜2.5である。
上記分子量分布が2.5を超えると、上記リビングラジカル重合において生成した低分子量成分等が増えるため、両面粘着テープが電子部品から剥がれやすくなったり、グラファイトシートごと両面粘着テープを電子部品から剥離するときにグラファイトシートにクラック又は折りシワが発生したりする。上記分子量分布の好ましい上限は2.0であり、より好ましい上限は1.8である。
【0018】
上記(メタ)アクリルポリマーは、重量平均分子量(Mw)の好ましい下限が10万、好ましい上限が200万である。上記重量平均分子量が10万以上であれば、高い耐熱性を得ることができる。なお、上記重量平均分子量が200万を超えると、塗工時の粘度が高すぎて塗工し難くなり、上記粘着剤層の厚みムラを発生させてしまうことがある。上記重量平均分子量のより好ましい下限は20万である。
【0019】
なお、分子量分布(Mw/Mn)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である。
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。具体的には、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、(メタ)アクリルポリマーをテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルターで濾過し、得られた濾液を用いてGPC法によりポリスチレン換算分子量として測定される。GPC法では、例えば、2690 Separations Model(Waters社製)等を使用できる。
【0020】
上記リビングラジカル重合において重合する(メタ)アクリルモノマーは特に限定されず、有機テルル重合開始剤を用いることで、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、アミド基、ニトリル基等の官能基を有するモノマーであってもいずれも保護することなく用いることができ、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、ビニル化合物等が挙げられる。
上記(メタ)アクリル酸エステルは特に限定されず、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いた場合、その含有量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリルモノマー中の好ましい上限は30重量%である。上記含有量が30重量%を超えると、上記粘着剤層のゲル分率が高くなりすぎて両面粘着テープが剥がれやすくなることがある。
【0022】
また、アクリル酸を用いることも好ましく、その含有量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリルモノマー中の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は10重量%である。上記含有量が0.1重量%未満であると、上記粘着剤層が柔らかくなりすぎて、耐熱性が低下することがある。上記含有量が10重量%を超えると、上記粘着剤層が硬くなりすぎて、両面粘着テープが剥がれやすくなることがある。
【0023】
上記ビニル化合物は特に限定されず、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−アクリロイルモルフォリン、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。これらのビニル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記粘着剤層は、更に、粘着付与樹脂を含有することができる。上記粘着剤層が粘着付与樹脂を含有することにより、両面粘着テープは、薄い両面粘着テープであってもより剥がれにくいものとなる。
【0025】
上記粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン樹脂、不均化ロジン樹脂、重合ロジン樹脂、水添ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、不均化ロジンエステル樹脂、重合ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。なかでも、ロジンエステル系樹脂、テルペンフェノール樹脂が好ましい。
上記ロジンエステル系樹脂とは、アビエチン酸を主成分とするロジン樹脂、不均化ロジン樹脂及び水添ロジン樹脂、アビエチン酸等の樹脂酸の二量体(重合ロジン樹脂)等を、アルコールによってエステル化させて得られた樹脂である。エステル化に用いたアルコールの水酸基の一部がエステル化に使用されずに樹脂内に含有されることで、水酸基価が上記範囲に調整される。アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールが挙げられる。なお、ロジン樹脂をエステル化した樹脂がロジンエステル樹脂、不均化ロジン樹脂をエステル化した樹脂が不均化ロジンエステル樹脂、水添ロジン樹脂をエステル化した樹脂が水添ロジンエステル樹脂、重合ロジン樹脂をエステル化した樹脂が重合ロジンエステル樹脂である。
上記テルペンフェノール樹脂とは、フェノールの存在下においてテルペンを重合させて得られた樹脂である。
【0026】
上記不均化ロジンエステル樹脂としては、例えば、荒川化学工業社製スーパーエステルA75(水酸基価23、軟化温度75℃)、同社製スーパーエステルA100(水酸基価16、軟化温度100℃)、同社製スーパーエステルA115(水酸基価19、軟化温度115℃)、同社製スーパーエステルA125(水酸基価15、軟化温度125℃)等が挙げられる。上記水添ロジンエステル樹脂としては、例えば、荒川化学工業社製パインクリスタルKE−359(水酸基価42、軟化温度100℃)、同社製エステルガムH(水酸基価29、軟化温度70℃)等が挙げられる。上記重合ロジンエステル樹脂としては、例えば、荒川化学工業社製ペンセルD135(水酸基価45、軟化温度135℃)、同社製ペンセルD125(水酸基価34、軟化温度125℃)、同社製ペンセルD160(水酸基価42、軟化温度160℃)等が挙げられる。
上記テルペン系樹脂としては、例えば、ヤスハラケミカル社製YSポリスターG150(軟化点150℃)、同社製YSポリスターT100(軟化点100℃)、同社製YSポリスターG125(軟化点125℃)、同社製YSポリスターT115(軟化点115℃)、同社製YSポリスターT130(軟化点130℃)等が挙げられる。
これらの粘着付与樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記粘着付与樹脂の水酸基価の好ましい下限は25、好ましい上限は55である。上記水酸基価が上記範囲を外れると、両面粘着テープが剥がれやすくなることがある。上記水酸基価のより好ましい下限は30、より好ましい上限は50である。
なお、水酸基価は、JIS K1557(無水フタル酸法)により測定できる。
【0028】
上記粘着付与樹脂の軟化温度の好ましい下限は70℃、好ましい上限は170℃である。上記軟化温度が70℃未満であると、上記粘着付与樹脂が柔らかすぎて、両面粘着テープが剥がれやすくなることがある。上記軟化温度が170℃を超えると、上記粘着剤層が硬くなりすぎて、両面粘着テープが剥がれやすくなることがある。上記軟化温度のより好ましい下限は120℃である。
なお、軟化温度とは、JIS K2207環球法により測定した軟化温度である。
【0029】
上記粘着付与樹脂の含有量は、上記(メタ)アクリルポリマー100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が40重量部である。上記含有量が5重量部未満であると、両面粘着テープが剥がれやすくなり、上記含有量が40重量部を超えると、ガラス転移温度の上昇により、両面粘着テープが剥がれやすくなることがある。上記含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0030】
上記粘着剤層は、必要に応じて、可塑剤、乳化剤、軟化剤、微粒子、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、酸化防止剤、界面活性剤、ワックス、充填剤等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0031】
上記粘着剤層は、ゲル分率が70重量%以下であることが好ましい。上記ゲル分率が70重量%以下であれば、両面粘着テープは、より剥がれにくいものとなる。上記ゲル分率のより好ましい上限は60重量%である。
また、上記ゲル分率の下限は特に限定されないが、好ましい下限は1重量%である。上記ゲル分率が1重量%未満であると、上記粘着剤層が柔らかくなりすぎて、耐熱性が低下することがある。上記ゲル分率のより好ましい下限は5重量%である。
なお、ゲル分率は、次のようにして測定される。まず、両面粘着テープを50mm×100mmの平面長方形状に裁断して試験片を作製し、試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記式(1)を用いてゲル分率を算出する。なお、試験片には、粘着剤層を保護するための離型フィルムは積層されていないものとする。
ゲル分率(重量%)=100×(W2−W0)/(W1−W0) (1)
(W0:基材の重量、W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
【0032】
上記範囲のゲル分率の粘着剤層を得る方法としては、架橋剤を添加して上記粘着剤層を構成する樹脂の主鎖間に架橋構造を形成する方法が好ましい。上記架橋剤の種類又は量を適宜調整することによって、上記粘着剤層のゲル分率を上記範囲に調整しやすくなる。
【0033】
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、基材に対する密着安定性に優れるため、イソシアネート系架橋剤が好ましい。上記イソシアネート系架橋剤として、例えば、コロネートHX(日本ポリウレタン工業社製)、コロネートL(日本ポリウレタン工業社製)、マイテックNY260A(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記架橋剤の配合量は、上記(メタ)アクリルポリマー100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜3重量部がより好ましい。
【0034】
本発明の両面粘着テープにおいては、上記両面の粘着剤層のうちの少なくとも一方の粘着剤層が上述したような粘着剤層であれば、他方の粘着剤層は、上述したような粘着剤層と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
なお、本発明の両面粘着テープを用いてグラファイトシートを電子部品に貼り付ける際には、上記他方の粘着剤層がグラファイトシート側となるように用いられることが好ましい。
【0035】
上記基材は特に限定されないが、樹脂フィルム、樹脂発泡体、紙、不織布、ヤーンクロス布等が挙げられる。
上記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系樹脂フィルムや、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のポリエステル系樹脂フィルムや、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の変性オレフィン系樹脂フィルムや、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、シクロオレフィンポリマー樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリイミドフィルム等が挙げられる。
上記樹脂発泡体としては、例えば、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、アクリルフォーム、ウレタンフォーム、エチレンプロピレンゴムフォーム等が挙げられる。上記ヤーンクロス布としては、例えば、ポリエチレンフラットヤーンを織ったものや、その表面に樹脂フィルムをラミネートしたもの等が挙げられる。
上記基材は、透明な樹脂からなる基材であってもよく、網目状の構造を有する基材であってもよく、孔が開けられた基材であってもよい。
【0036】
本発明の両面粘着テープは、薄い両面粘着テープであっても剥がれにくいため、用途に応じて上記両面の粘着剤層及び上記基材を薄くすることができるが、両面粘着テープの総厚みが3〜18μm、上記基材の厚みが1〜6μm、それぞれの粘着剤層の厚みが1〜6μmであることが好ましい。
上記基材の厚みが1μm未満であると、両面粘着テープの機械的強度が低下することがある。上記基材の厚みが6μmを超えると、両面粘着テープの腰が強くなりすぎて、電子部品の形状に沿って密着させて貼り合わせることが困難になることがある。上記それぞれの粘着剤層の厚みが1μm未満であると、両面粘着テープが剥がれやすくなることがある。上記それぞれの粘着剤層の厚みが6μmを超えると、薄い両面粘着テープが得られないことがある。
【0037】
本発明の両面粘着テープの製造方法は特に限定されず、例えば、上記(メタ)アクリルポリマーを、必要に応じて上記粘着付与樹脂、上記架橋剤等のその他の配合成分と共に混合し、攪拌して粘着剤溶液を調製し、続いて、この粘着剤溶液を基材に直接塗工乾燥させて粘着剤層を形成させた後、別途用意した離型処理したフィルムに塗工乾燥させて形成した粘着剤層を基材に転着させる方法、又は、この粘着剤溶液を離型処理されたフィルムに塗工乾燥させて粘着剤層を形成し、得られた粘着剤層を基材の両面に転着させる方法等が挙げられる。
【0038】
本発明の両面粘着テープは、グラファイトシート用両面粘着テープであれば用途は特に限定されないが、画像表示装置又は入力装置を搭載した電子機器(例えば、携帯電話、携帯情報端末等)、自動車の電子部品等にグラファイトシートを貼り付けるために好適に用いられる。
上記グラファイトシートは、面方向に高い熱伝導性を有し、面方向の熱伝導性と厚み方向の熱伝導性とに大きな異方性があるため、電子機器、精密機器等のスポットで熱が高くなる電子部品において有効に熱を拡散することができる。上記グラファイトシートとしては、天然黒鉛粉末をシート化して得られた天然グラファイトシート、高分子フィルムを熱処理して得られた人工グラファイトシート等が挙げられる。なかでも、薄型で面方向に高い熱伝導性を有するため、人工グラファイトシートが好ましい。
【0039】
上記人工グラファイトシートは、例えば、高分子フィルムを熱処理して得ることができる。上記高分子フィルムとしては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾール、ポリチアゾール等からなるフィルムが挙げられる。なかでも、ポリイミドフィルムが好ましい。
上記ポリイミドフィルムは、他の高分子フィルムよりも炭化及び黒鉛化が進行しやすいため、熱拡散率、熱伝導率及び電気伝導度が低温で均一に高くなりやすく、かつ、熱拡散率、熱伝導率及び電気伝導度そのものも高くなりやすい。また、厚みが薄い場合に加え、厚い場合においても熱伝導性の高いグラファイトが得られる。また、得られるグラファイトが結晶性に優れ、耐熱性、折り曲げ性に優れ、保護フィルムと貼り合わせた場合に、表面から黒鉛が落ちにくいグラファイトシートが得られやすい。
【0040】
上記高分子フィルムを熱処理する際には、まず、上記高分子フィルムを減圧下又は不活性ガス中で予備加熱処理して炭素化する。この炭素化は通常1000℃程度の温度で行い、例えば10℃/分の速度で昇温した場合、1000℃程度の温度領域で30分程度の温度保持を行うことが好ましい。次いで、グラファイト化工程は、減圧下又は不活性ガス中で行われる。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウムが適当である。
上記高分子フィルムを熱処理する際、その熱処理温度としては、最低でも2000℃以上が必要であり、最終的には2400℃以上、より好ましくは2600℃以上、更に好ましくは2800℃以上となることが好ましい。このような熱処理温度にすることにより、熱伝導性に優れたグラファイトを得ることができる。熱処理温度が高いほど良質のグラファイトへの転化が可能であるが、経済性の観点からはできるだけ低温で良質のグラファイトに転化できることが好ましい。2500℃以上の超高温を得るには、通常はグラファイトヒーターに直接電流を流して、そのジュ−ル熱を利用した加熱が行なわれる。
【0041】
上記グラファイトシートは、面方向の熱伝導度が200W/mK以上であり、厚み方向の熱伝導度が20W/mK以下であることが好ましい。
【0042】
上記グラファイトシートの市販品として、例えば、カネカ製グラフィニティー、パナソニック製PGSシート等が挙げられる。
【0043】
本発明の両面粘着テープは、該両面粘着テープで上記グラファイトシートの片面又は両面を被覆した複合シートとして用いられてもよい。このような複合シートとすることで、上記グラファイトシートに絶縁性及び強度を付与することができる。なかでも、本発明の両面粘着テープの面積を上記グラファイトシートより広くし、本発明の両面粘着テープで上記グラファイトシートの両面を封止することが好ましい。これにより、端面での上記グラファイトシートの層間破壊又は上記グラファイトシートの粉落ちを防止でき、好適な加工性を実現しやすくなる。