特許第6174999号(P6174999)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6174999PCR反応緩衝液中での細胞溶解のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6174999
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】PCR反応緩衝液中での細胞溶解のための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20060101AFI20170724BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   C12Q1/68 A
   C12N15/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-532139(P2013-532139)
(86)(22)【出願日】2011年9月30日
(65)【公表番号】特表2013-538587(P2013-538587A)
(43)【公表日】2013年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2011067069
(87)【国際公開番号】WO2012045670
(87)【国際公開日】20120412
【審査請求日】2013年8月15日
【審判番号】不服2016-5671(P2016-5671/J1)
【審判請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】10186416.3
(32)【優先日】2010年10月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,イングリッド
【合議体】
【審判長】 大宅 郁治
【審判官】 中島 庸子
【審判官】 長井 啓子
(56)【参考文献】
【文献】 Molecular Human Reproduction,1996年,Vol.2,No.1,p.63−71
【文献】 Analytical Biochemistry,2008年,Vol.375,p.370−372
【文献】 島津評論,2002年,Vol.58,p.95−100
【文献】 Direct PCR from dried blood without DNA extraction,American biotechnology laboratory,2001年,p.38,40
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C12N15/00
C12Q 1/68
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE(STN)
JSTPlus,JST7580,JMEDPlus(JDreamIII),PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸の増幅のための方法であって、以下の工程:
a)1個以上の真核細胞の生細胞を含む第1の量を有する液体試料を容器の中に移し、
b)前記の容器に第2の量を有するPCR反応緩衝液を添加し、一方で前記の第2の量は前記の第1の量の少なくとも2倍の大きさであり、前記緩衝液が少なくとも一対の増幅プライマー、熱安定性DNAポリメラーゼおよびdNTPを含み、
c)前記の容器を少なくとも90℃で、少なくとも30秒かつ3分以下の間保温し、それにより1個以上の生細胞を溶解し、及び前記の熱安定性DNAポリメラーゼを活性化し、
d)前記の標的を、中間の精製工程を実施せずに熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼを用いたポリメラーゼ連鎖反応により増幅する;
を含み、
ここで、工程a)の前に前記の少なくとも1個以上の生細胞を含む液体が細胞選別法により得られ、そして、
前記の工程a)の生細胞の数の、工程d)のポリメラーゼ連鎖反応が実施される液体の量に対する比率が少なくとも1細胞/25μlであり、2細胞/μlより大きくない
前記方法。
【請求項2】
前記の工程b)のPCR反応緩衝液が、加えて標識されたハイブリダイゼーションプローブまたは二本鎖DNA結合蛍光化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の熱安定性DNAポリメラーゼが工程c)の間に前記のポリメラーゼから除去される化学修飾を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記の標的核酸が単一コピーDNAである、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCRを用いたDNA分析の分野に関する。より具体的には、本発明は、リアルタイムPCRによる、少数の細胞のみの材料から出発するDNAの分析、およびそれに続く前記の試料DNAの直接分析のための新規の方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年で、PCRは、それが核酸の指数関数的増幅を可能にするため、DNAの分析のための“馬車馬”になってきた。特に、リアルタイムPCR(qPCRとも呼ばれる)は、それが増幅された核酸をその増幅の間に、または途中で開けずに、その増幅反応の直後に融解曲線分析により同時分析することを可能にするため、強力な道具になってきた。
【0003】
さらに、PCRの自動化は、今では96、384または1536個の反応をマイクロタイタープレート形式で並行して実施することを可能にするqPCRシステムが利用可能であるため、著しく進歩してきた。システムはより使いやすくもなってきた。例えば、それぞれの反応容器が既にPCR増幅またはPCR増幅および検出を実施するために必要な化合物を冷凍乾燥された形態で含むマイクロタイタープレートが商業的に入手可能であり、客は分析する予定のDNAを含む試料を実際の反応自体の前に添加しさえすればよい。ガラススライド上でのPCR増幅および検出を可能にする代わりの系がAdvalytics(AG 480F)により提供されている。
【0004】
それでもなお、PCR分析に関する作業の流れをさらに向上させることは、特に少数の細胞のみに由来するDNAに対してしか分析を行うことができない場合、依然として課題である。伝統的なリアルタイムPCRでは、DNAまたはRNAをまず細胞から時間のかかる手順で単離し、それは材料の喪失につながる可能性がある。回収した後、その細胞を溶解し、そうしないとPCR増幅が少なくとも定量的に阻害される可能性があるため、そのDNAをその溶解物から少なくとも部分的に精製する。
【0005】
この状況において、本発明の基礎をなす技術的な問題は、さらに単純化されたDNA分析プロトコルを可能にする、向上された、自動化可能な高スループットな方法を提供することであった。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、以下の工程:
a)1個以上の生細胞を含む第1の量を有する液体を容器の中に移し、
b)前記の容器に第2の量を有するPCR反応緩衝液を添加し、一方で前記の第2の量は前記の第1の量の少なくとも2倍の大きさであり、
c)前記の1個以上の生細胞を前記の容器内で、少なくとも90℃で少なくとも30秒間の保温により溶解させ、
d)前記の標的を、中間の精製工程を実施せずに熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼを用いたポリメラーゼ連鎖反応により増幅する;
を含み、工程b)の間に添加されるPCR反応緩衝液が追加で少なくとも一対の増幅プライマー、熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼおよびdNTPを含むことを特徴とする、標的核酸の増幅のための方法を提供する。
【0007】
前記の工程b)のPCR反応緩衝液は、加えて標識されたハイブリダイゼーションプローブまたは二本鎖DNA結合蛍光化合物を含んでいてよい。
1態様において、前記の熱安定性DNAポリメラーゼの活性は、例えば前記の熱安定性DNAポリメラーゼが工程c)の間に前記のポリメラーゼから除去される化学修飾を有する場合、工程c)の間に熱的に活性化される。
【0008】
本発明の方法の1態様において、前記の少なくとも1個以上の生細胞を含む液体は工程a)の前に細胞選別法により得られている。
好ましくは、前記の工程a)の生細胞の数の、その中で工程d)のポリメラーゼ連鎖反応が実施される液体の量に対する比率は、2細胞/μLより大きくない。
【0009】
好ましくは、増幅されることになる核酸はDNAである。標的DNAが単一コピーのDNAである場合も、本発明の範囲内である。
別の観点において、本発明は、上記で開示した本発明の方法の実施に有用な特異的なキットを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一般的に言って、本発明は、細胞試料を液体環境中で溶解させ、それを後で一切の中間の精製工程または複雑な液体取り扱い手順なしでポリメラーゼ連鎖反応を適用することによる核酸分析のために直接用いることを可能にする方法を提供する。より正確には、本発明は、以下の工程を含む、標的核酸の増幅のための方法を提供する:
a)1個以上の生細胞を含む第1の量を有する液体試料を容器の中に移し、
b)前記の容器に第2の量を有するPCR反応緩衝液を添加し、一方で前記の第2の量は前記の第1の量の少なくとも2倍の大きさであり、
c)前記の容器を少なくとも90℃で少なくとも30秒間保温し、それにより前記の1個以上の生細胞を前記の容器内で溶解させ、
d)前記の標的核酸を、中間の精製工程を実施せずに熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼを用いたポリメラーゼ連鎖反応により増幅する。
【0011】
本発明の1観点によれば、工程a)、b)、c)およびd)の全てを同じ反応容器内で実施することが可能である。好ましくは、工程c)は少なくとも 分間続く。
その標的核酸はDNA、すなわちゲノムDNAの特定の部分であってよい。そのポリメラーゼ連鎖反応はDNA依存性DNAポリメラーゼ、例えばTaqDNAポリメラーゼまたは同様のものを用いて実施されるであろう。あらゆるタイプのゲノムのバリエーション、例えば一塩基多型等を同定するために、そのDNAの特定の部分を増幅することができる。
【0012】
実施例により実証されると考えられるように、本発明は、驚くべきことに最初の試料物質として単一の生細胞のみから出発するPCR分析を実施するために適用可能である方法を提供する。さらに、少数の細胞のみ、またはさらには単一の細胞のみから単一コピー遺伝子からの標的DNAを再現性よく増幅および分析することが可能である。
【0013】
工程a)
工程a)に従う1個以上の生細胞は、好ましくはヒト、動物または植物由来の真核細胞である。その細胞は、細胞株または生検由来のものであってよい。
【0014】
その細胞を含有する液体は、その中で前記の細胞が少なくとも一定の期間の間生存するあらゆる液体、緩衝液または培地であってよく、それは好ましくは30分間より長い。そのような液体は、例えばその中で細胞の懸濁状態での生存および増殖がうまく培養されてきた(cultivated)培地であってよい。接着細胞の場合、その液体は、その中でその細胞が固体支持体から脱離されてきた緩衝液であってよい。しかし、好ましくは、そのような緩衝液は、その後のポリメラーゼに仲介されるPCR増幅反応への阻害作用を有する可能性のあるあらゆるプロテアーゼを含まない。そのような作用は、観察された場合、その細胞にその容器中への沈着(deposition)の前に追加の洗浄工程を施すことにより回避することができる。
【0015】
その液体のその容器中への移動は、まず細胞試料の適切な希釈系列を調製し、次いで1個のみまたは数個の細胞に相当するものをピペットで前記の容器中に入れることにより、手作業で達成することができる。好ましくは、その移動は、適切な自動化されたピペット操作ステーション、または大抵は好ましくは細胞選別機を用いて達成される。そのような細胞選別機械は当技術で周知であり、いくつかの異なる製造業者から商業的に入手可能である。細胞選別機の基礎をなす技術のため、細胞破壊片の大きな粒子が細胞選別機により細胞と誤認されることが時々起こるであろう。この作用により、単一細胞分析の場合、それに続くPCR反応の間に一部の試料が結果を与えない可能性がある。
【0016】
好ましくは、一切の精製工程なしではより高い濃度の細胞破砕片の存在がそれに続くPCR増幅反応を阻害する可能性があるため、その反応容器に移される細胞の数は制限されるべきである。好都合には、その反応容器に移される細胞の数は、下記で開示する工程d)がその試料が2細胞相当数(equivalents)/μlの比率を超えないような方式で実施されるように調節される。
【0017】
やはり好ましくは、その反応容器に移される細胞の数は低すぎるべきではなく、これはそうでなければ単一コピー遺伝子の増幅のためのPCR反応を実施するのが難しくなる可能性があるためである。従って、その反応容器に移される細胞の数は、下記で開示する工程d)がその試料が少なくとも1細胞相当数/25μlの比率を含むような方式で実施されるように調節される。
【0018】
その液体の量は、工程b)におけるPCR反応緩衝液の添加および−必要であれば−それに続くPCR反応に必要なさらなる化合物の添加が最終的に結果として前記のPCRの実施に関してなお合理的に小さい最終的な量をもたらすように、十分に小さい。前記の量は絶対に100μlを超えるべきではなく、決して200μlを超えるべきではない。好都合には、前記の量は50μlより大きくない。20μl未満、さらには10μlの量が非常に好ましい。1個以上の細胞を含有する液体の自動化された沈着の場合、μlより下の範囲で非常に少ないことが可能である。特に、細胞選別機を用いる場合、1細胞相当数のみを含有する量は約100nl未満である。たとえ後者の場合においてその試料が乾燥しても、その新規の方法はなお有効であることが本発明者により証明されている。単一細胞分析の特定の態様において、その最終的な量は好ましくは25μlを超えない。これはなお効率的な単一コピー遺伝子の増幅を可能にする。
【0019】
その反応容器は、その中でPCR反応を実施することができるあらゆるタイプの反応容器であってよい。従って、唯一の本質的な制限はその容器が十分な熱耐性を有することであり、これはそのPCR熱サイクルプロトコルの間にそれが90℃以上の高温に繰り返しさらされることになると考えられるためである。
【0020】
1態様において、その反応容器は、サーマルサイクラー機器中に入れられるように適合された、または設計されたマイクロタイタープレートのウェルである。これは本発明の方法を高度に並行した様式で多くの試料に対して実行することを可能にする。24、96、384、および1536ウェルを含むマイクロタイタープレートが当技術において既知であり、多数の異なる供給業者から商業的に入手可能である。当技術で入手可能なマイクロタイタープレートは、少なくとも2μlの反応量を可能にする。そのようなマイクロタイタープレートは、それらを適切な加熱ブロック上に置く、あるいはマイクロタイタープレートを組み込むように設計されたPCRサーマルサイクラー機器中に直接入れることにより、少なくとも90℃の高温にさらされ得る。
【0021】
第2態様において、その反応容器は単独の反応チューブまたはそれらをサーマルサイクラー機器の加熱ブロックの中に一緒に入れることができるように互いに連結されている反応チューブのストリップ(stripe)の一部である反応チューブであってよい。さらなる態様において、その反応容器は毛細管LightCycler機器(Roche Applied Science カタログ番号023 531 414 001)の中に入れることができる特別な毛細管である。
【0022】
工程b)
本発明の文脈において、本発明の工程b)において添加される“PCR反応緩衝液”という用語は、その中でその試料に対して後で一切の中間の精製工程なしでPCR反応を行うことができるあらゆる液体として理解される。前記の添加されるPCR反応緩衝液の第2の量は、その第1の量の少なくとも2倍(2×)の大きさ、好ましくは5倍(5×)の大きさであるべきである。これは、それに続くPCR反応の間のその標的核酸の効率的な増幅を可能にするであろう。
【0023】
1態様において、その“PCR反応緩衝液”は、PCR反応の実施に必要である全ての化合物を既に含有しており、それは熱安定性DNAポリメラーゼ、デオキシヌクレオシド三リン酸の混合物(dNTP)、および少なくとも1種類の適切な増幅プライマーの対である。その“PCR反応緩衝液”は、適切なpH緩衝化合物(例えばトリス)、Mg2+塩、ホットスタート構成要素等も含んでいてよい。
【0024】
特定の態様において、その“PCR反応緩衝液”は、その標的DNAの増幅をリアルタイムで監視するのに必要である化合物を既に含んでいてよい。特に、これらの化合物は蛍光ハイブリダイゼーションプローブまたは二本鎖DNA結合色素のどちらかである。様々な可能な検出形式の詳細は下記で論じられるであろう。
【0025】
あるいは、前記の構成要素の一部、いずれかもしくは全て、またはあらゆる他の追加の化合物が、溶解工程c)の後に、しかし工程d)に従う実際の増幅反応の実施の前に添加される場合も、本発明の範囲内である。
【0026】
工程c)
本発明によれば、その細胞の溶解は、当技術において従来法で用いられる特定の溶解工程試薬を一切事前添加せずに、PCR反応緩衝液内で起こる。むしろ、その1個以上の生細胞の溶解は、その試料を少なくとも90℃において少なくとも30秒の期間の間保温することにより起こる。通常、30秒の期間の高温での保温は中程度の数の細胞(64個より多くない細胞)の完全な溶解に十分であり、それはそれに続く単一コピー遺伝子の増幅および検出を可能にする。しかし、前記の期間が30分の期間まで、しかし好ましくは15分より長くない期間まで、最も好ましくは3分より長くない期間まで延長される場合も、本発明の範囲内である。前記の期間が少なくとも1分である場合、優秀な結果は得られた最低の条件である。
【0027】
細胞の溶解のために用いられる温度は100℃を超えるべきではなく、好ましくは95℃未満であり、これはより高い温度ではそれに続くPCR反応に必要であるその反応緩衝液に含有される構成要素が破壊される危険性が増大するためである。例えば、Taq DNAポリメラーゼのような熱安定性DNAポリメラーゼでさえも、100℃より上の温度では実質的に変性または分解した状態になる。
【0028】
工程d)
実施例により明示されるように、PCR反応はその溶解物を中間の精製工程なしで直接用いて実施することができる。しかし、態様次第で、前記のPCR反応に必要な追加の化合物がその溶解の後にその試料に添加される場合は、本発明の範囲内である。
【0029】
本発明は非常に少数の細胞のみ、またはさらには単一の細胞のみに由来する核酸の分析に適用可能であるため、分析される細胞の数およびその中で工程d)に従う実際のPCR反応が起こる量の間の比率を考慮すれば、本発明に従う実験の設計に好都合である。一方で、そのような少量の出発物質が分析されることになるのであれば、そのPCR反応は最適な程度の感度を達成するために最小限の量の中で実施されるべきである。従って、前記の工程a)の細胞の数の、その中で工程d)のポリメラーゼ連鎖反応が実施される液体の量に対する比率が、少なくとも1細胞/20μlPCR反応量であれば好都合であることが証明されている。
【0030】
一方で、中間の精製工程がないため、その溶解された試料はそのPCR反応の効率を損なう可能性のある細胞破砕片を含有しているであろう。この状況において、前記の工程a)の生細胞または細胞相当物の数の、その中で工程d)のポリメラーゼ連鎖反応が実施される液体の量に対する比率が、2細胞/μlより大きくなければ好都合であることが証明されている。1細胞/25μl〜2細胞/μlの比率がさらにもっと好都合である。実験により決定されているように、この範囲内の比率は、単一の細胞のみ、ならびにはるかに多い細胞数に由来するDNAに対する単一コピー分析を可能にする。
【0031】
そのPCR反応は従来のPCR反応であってよく、ここでそのセットは標的DNA、dNTP、好ましくはDNA依存性DNAポリメラーゼであるDNAポリメラーゼ、適切なpH緩衝系、例えばトリス、およびいくつかの他の補助的化合物、例えばMg2+塩類等を含む。
【0032】
特定の態様において、そのポリメラーゼは、本発明の方法を遺伝子発現の監視のために用いるための1ステップRT PCRを実施することもできる熱安定性DNAポリメラーゼであってもよい。
【0033】
続いて、増幅されたDNAの分析は、通常はゲル電気泳動により達成される。しかし、1態様において、そのPCR反応はリアルタイムPCR反応であってよく、ここでその増幅の進行は、例えば以下の検出形式のいずれかを用いて連続的に監視される:
−TaqMan加水分解プローブ形式:
一本鎖ハイブリダイゼーションプローブを2種類の構成要素で標識する。第1構成要素が適切な波長の光で励起された際に、吸収されたエネルギーが第2構成要素(いわゆるクエンチャー)に、蛍光共鳴エネルギー移動の原理に従って移動する。そのPCR反応のアニーリング工程の間に、そのハイブリダイゼーションプローブが標的DNAに結合し、それに続く伸長段階の間にTaqポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼ活性により分解される。結果として、その励起された蛍光構成要素およびクエンチャーが空間的に互いから分離され、そうして第1構成要素の蛍光放射を測定することができる。TaqManプローブアッセイは、米国特許第5,210,015号、米国特許第5,538,848号、および米国特許第5,487,972号において詳細に開示されている。TaqManハイブリダイゼーションプローブおよび化合物の混合物は、米国特許第5,804,375号において開示されている。
【0034】
特定の態様において、そのTaqManハイブリダイゼーションプローブは、Roche Applied Sciencesから入手可能であるような(カタログ2010/2011,p.577)ユニバーサルプローブライブラリーからのUPLプローブである。
【0035】
−分子ビーコン:
これらのハイブリダイゼーションプローブも第1構成要素およびクエンチャーで標識されており、その標識は好ましくはそのプローブの両端に位置している。そのプローブの二次構造の結果として、両方の構成要素は溶液中で空間的に近くにある。標的核酸へのハイブリダイゼーションの後、両方の構成要素は、適切な波長の光による励起後にその第1構成要素の蛍光放射を測定することができるように、互いから分離される(米国特許第5,118,801号)。
【0036】
−FRETハイブリダイゼーションプローブ:
FRETハイブリダイゼーションプローブ試験形式は、全ての種類の相同ハイブリダイゼーションアッセイに特に有用である(Matthews, J.A., and Kricka, L.J., Analytical Biochemistry 169 (1988) 1-25)。それは、同時に用いられ、増幅された標的核酸の同じ鎖の隣接部位に相補的である2種類の一本鎖ハイブリダイゼーションプローブを特徴とする。両方のプローブは異なる蛍光構成要素で標識されている。適切な波長の光で励起された際に、第1構成要素は、両方のハイブリダイゼーションプローブが検出する予定の標的分子の隣接する位置に結合した際に第2構成要素の蛍光放射を測定することができるように、吸収したエネルギーを蛍光共鳴エネルギー移動の原理に従って第2構成要素に移動させる。FRETアクセプター構成要素の蛍光の増大を監視する代わりに、FRETドナー構成要素の蛍光の減少をハイブリダイゼーション事象の定量的測定として監視することも可能である。
【0037】
特に、そのFRETハイブリダイゼーションプローブ形式は、増幅された標的DNAを検出するためにリアルタイムPCRにおいて用いることができる。リアルタイムPCRの技術分野で既知の全ての検出形式の中で、FRETハイブリダイゼーションプローブ形式は非常に高感度、正確かつ信頼できることが証明されている(WO97/46707;WO97/46712;WO97/46714)。2種類のFRETハイブリダイゼーションプローブの使用に対する代替策として、蛍光標識されたプライマーおよび1種類のみの標識されたオリゴヌクレオチドプローブを用いることも可能である(Bernard, P.S., et al., Analytical Biochemistry 255 (1998) 101-107)。この点について、そのプライマーがFRETドナー化合物で標識されるか、またはFRETアクセプター化合物で標識されるかは任意に選択されてよい。
【0038】
−二本鎖DNA結合色素形式:
増幅産物が二本鎖核酸結合部分を用いて検出される場合に、リアルタイムPCRが本発明に従う添加物の存在下で実施される場合も、本発明の範囲内である。例えば、それぞれの増幅産物を本発明に従って蛍光DNA結合色素により検出することもでき、それは二本鎖核酸との相互作用の際に、適切な波長の光による励起後に、対応する蛍光シグナルを放射する。色素SybrGreenIおよびSybrGold(Molecular Probes)が当技術において頻繁に用いられる。別の特に有用な色素は、LightCycler 480 Resolight色素(Roche Applied Science カタログ番号:04 909 640 001)である。
【0039】
−融解曲線分析
SybrGreen形式でのリアルタイムアンプリコン検出は特異的な生成物とプライマー/ダイマーのような増幅アーティファクトを識別することができないという事実のため、通常それに続いて融解曲線分析が実施される。PCR反応の完了後、その試料の温度を恒常的に増大させ、SybrGreenがその試料中に存在する二本鎖DNAに結合している限り蛍光が検出される。その二本鎖DNAが解離すると、そのシグナルは即時に減少する。この減少を、一次微分係数値を決定することができるような適切な蛍光対温度−時間プロットを用いて監視し、それにおいて蛍光の減少の最大値が観察される。プライマー/ダイマー二本鎖DNAは通常短いため、一本鎖DNAへの解離は二本鎖の特異的な増幅産物の解離と比較してより低い温度で起こる。
【0040】
さらに、分子ビーコンおよびFRETハイブリダイゼーションプローブも融解曲線分析に用いられる。PCR反応の完了後、その試料の温度を恒常的に増大させ、そのハイブリダイゼーションプローブが標的DNAに結合している限り蛍光が検出される。融解温度において、そのハイブリダイゼーションプローブはそれらの標的から遊離し、その蛍光シグナルは即時に減少してバックグラウンドレベルまで下がる。この減少を、一次微分係数値を決定することができるような適切な蛍光対温度−時間プロットを用いて監視し、それにおいて蛍光の減少の最大値が観察される。
【0041】
ホットスタートPCR
そのPCR反応構成は、ホットスタート効果、すなわち、時々結果としてプライマーダイマーのような非特異的増幅産物の形成をもたらす周囲温度での非特異的なプライマーのアニーリングおよびそれに続く伸長の阻害を提供するいくつかの化合物を含有することができる。温度が上昇した際、そのホットスタート化合物があらゆる結合パートナーから遊離するため、この阻害が除去された状態になり、その結果その熱安定性DNAポリメラーゼが熱的に活性化された状態になり、特異的なポリメラーゼに触媒されるプライマー伸長が起こることができる。そのような化合物に関する多くの例が当技術において既知である。具体的な例が米国特許第5,338,671号において与えられており、それはホットスタート化合物としてのTaqポリメラーゼ抗体を開示している。そのようなホットスタート化合物に関するより最近の例が欧州特許第1 989 324 A号および欧州特許第2 163 556号において開示されている。
【0042】
前記のホットスタート化合物は、溶解の後に、工程d)の前にポリメラーゼおよびあらゆる他のPCR化合物と一緒にその試料に添加されてよい。しかし、好ましくは、前記のホットスタート化合物は工程b)の間に添加されている“PCR反応緩衝液”内に既に含まれている。結果として、その熱安定性DNAポリメラーゼの熱的活性化は、工程c)の間の少なくとも90℃での保温により既に達成されていることができる。
【0043】
特定の態様において、そのDNAポリメラーゼは化学修飾の結果として可逆的に不活性化される。より正確には、熱不安定性ブロック基をそのTaq DNAポリメラーゼ中に導入し、それはその酵素を室温で不活性にする(米国特許第5,773,258号)。これらのブロック基は前PCR工程の間に、その酵素が活性化された状態になるように高温で除去される。そのような熱不安定性修飾は、例えばシトラコン酸無水物またはアコニチン酸無水物をその酵素のリシン残基に結合させることにより得ることができる(米国特許第5,677,152号)。そのような修飾を有する酵素は差し当たってAmplitaq Gold(Moretti, T., et al., Biotechniques 25 (1998) 716-22)またはFastStart DNAポリメラーゼ(Roche Applied Sciences カタログ番号:12 032 902 001)として商業的に入手可能である。FastStart DNAポリメラーゼの“PCR反応緩衝液”の一部としての添加およびそれに続く溶解工程c)の間の活性化は、本発明の特に効率的な態様であることが証明されている。
【0044】
本発明に従うキット
本発明は、リアルタイムPCR分析を実施するための新規のタイプのキットも提供する。そのキットは試薬構成要素および使い捨ての構成要素を含み、それは一緒に上記で開示した方法のいずれかのために用いることができ、特にそれに適合している。少なくとも、そのようなキットは以下のものを含む:
−サーマルサイクラー機器の中に取りつけられるように設計された複数の反応容器、
−熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼ、および
−d−NTP。
【0045】
加えて、そのようなキットは少なくとも一対の増幅プライマーを含んでいてよい。
好ましくは、その反応容器はマイクロタイタープレートまたは反応容器の線状細片の形態で互いに物理的に連結されている。
【0046】
やはり好ましくは、前記の熱安定性ポリメラーゼは90℃で少なくとも1分間の保温により熱的に活性化される。特定の態様において、そのDNAポリメラーゼは化学修飾の結果として可逆的に不活性化される。より正確には、熱不安定性ブロック基をそのTaq DNAポリメラーゼ中に導入し、それはその酵素を室温で不活性にする(米国特許第5,773,258号)。これらのブロック基は前PCR工程の間に、その酵素が活性化された状態になるように高温で除去される。そのような熱不安定性修飾は、例えばシトラコン酸無水物またはアコニチン酸無水物をその酵素のリシン残基に結合させることにより得ることができる(米国特許第5,677,152号)。そのような修飾を有する酵素は差し当たってAmplitaq Gold(Moretti, T., et al., Biotechniques 25 (1998) 716-22)またはFastStart DNAポリメラーゼ(Roche Applied Sciences カタログ番号:12 032 902 001)として商業的に入手可能である。
【0047】
新発明のキットの特定の態様において、前記の増幅プライマーの対はゲノムDNAから単一コピー遺伝子を増幅するように設計されている。従って、結果として、そのようなキットは単一コピー遺伝子の分析に必要な全ての試薬および使い捨て用品の完全なセットを含有する有用な道具を初めて科学者に提供する。
【実施例】
【0048】
実施例1
選別されたマウスハイブリドーマ細胞からのGAPDH遺伝子およびRPLI13A遺伝子の増幅のためのqPCR
定められた数のマウスハイブリドーマ細胞を、細胞選別機(Beckton Dickinson,FACS Aria I)を用いて96ウェルマイクロタイタープレートの別々のウェルの中に、その液体ビームが常にそのウェルの中心に向けられるような方式で沈着させた。しかし、細胞選別機の基礎をなす技術のため、その選別された粒子の小さい割合が無傷の細胞全体ではなく細胞破砕片であることを排除できなかった。従って、以下において、選別された物質の数を細胞相当数と呼ぶことにする。
【0049】
開示したように選別された細胞を、LC480リアルタイムPCR機器(Roche Applied Science カタログ番号:05 015 278 001)のために設計された96ウェルマイクロタイタープレート(Roche Applied Science カタログ番号:04 729 692 001)の中に、以下のピペット操作スキームに従って分配した:
1細胞相当数/縦列1〜4のウェル
2細胞相当数/縦列5〜6中のウェル
4細胞相当数/縦列7〜8中のウェル
8細胞相当数/縦列9中のウェル
16細胞相当数/縦列10中のウェル
32細胞相当数/縦列11中のウェル
64細胞相当数/縦列12中のウェル
それぞれのウェルに、以下:
0.4μM 順方向プライマー agcttgtcatcaacgggaag(SEQ ID NO:1)
0.4μM 逆方向プライマー tttgatgttagtggggtctcg(SEQ ID NO:2)
0.2μM UPLプローブ(RocheApplied Science カタログ番号:04 685 075 001,No.9)
1×LC480 Probe Master(Roche Applied Science カタログ番号:04 902 343 001)
を含有するマスター混合物を添加した。
【0050】
その順方向および逆方向プライマーは、マウスゲノム中に高いコピー数で存在することが既知であるマウスGAPDH遺伝子を増幅するように設計された。
別々のプレート上で、その同じマスター混合物を添加したが、プライマーおよびプローブはマウスゲノムの12コピーのみ存在する遺伝子RPLI13Aを増幅するように設計された。プライマーおよびプローブは以下の通りであった:
0.4μM 順方向プライマー catgaggtcgggtggaagta(SEQ ID NO:3)
0.4μM 逆方向プライマー gcctgtttccgtaacctcaa(SEQ ID NO:4)
0.2μM UPLプローブ(RocheApplied Science カタログ番号:04 686 993 001,No.25)
LightCycler Probe Masterは熱安定性FastStart DNAポリメラーゼを含み、それは化学修飾されたホットスタート酵素である。前記の修飾を高温での保温により除去することにより、活性化が誘導される。
【0051】
以下の熱サイクルプロトコルに従って、LC480リアルタイムPCR機器においてqPCRを実施した:
前保温: 1× 95℃ 10’
変性 45× 95℃ 10’’
アニーリング 45× 60℃ 30’’
伸長 45× 72℃ 1’’
冷却温度変動速度 2.2℃/s
加熱温度変動速度 4.4℃/s
増幅シグナルの検出およびcp値の計算(低いcp値は高レベルの増幅を示す)を、製造業者の説明書の指示に従って実施した。
【0052】
以下の表は、分析した異なる細胞数に関して得られた平均cp値を開示する:
【0053】
【表1】
【0054】
その表から理解できるように、高コピー数のマウスGAPDH遺伝子ならびにマウスゲノム中に12コピー存在するRPLI13A遺伝子に由来するシグナルは、たとえ出発物質として1個の細胞しか用いなくても検出することができる。
【0055】
さらに、cp値はウェルあたりの細胞の数と逆相関することを観察することができる。従って、PCR反応緩衝液の添加およびそれに続く95℃で10’の保温は明らかに細胞を定量的様式で溶解させるのに十分であったと明らかに結論付けることができる。
【0056】
実施例2
選別されたマウスハイブリドーマ細胞からのKcnj2遺伝子の増幅のためのqPCR
その実験は本質的に実施例1に関して開示したように実施され、プライマーおよびプローブが単一コピーのマウス遺伝子Kcnj2を増幅するように設計されたという変更があった。プライマーおよびプローブは以下の通りであった:
順方向プライマー ctgtcttgccttcgtgctct(SEQ ID NO:5)
逆方向プライマー agcagggctatcaaccaaaa(SEQ ID NO:6)
UPLプローブ(RocheApplied Science カタログ番号:04 688 996 001,No.76)
以下の表は、分析した異なる細胞数に関して得られた平均cp値を開示する:
【0057】
【表2】
【0058】
その表から理解できるように、単一コピー数のマウス遺伝子Kcnj2に由来する増幅シグナルは、たとえ出発物質として1個の細胞しか用いなくても得ることができる。言い換えれば、本発明は単一細胞試料からの単一コピー遺伝子の増幅のための溶液を提供する。
【0059】
さらに、その試料がより高い細胞数、例えば64細胞に由来する場合、cp値が増大することを観察することができる。これは、95℃におけるそのPCR反応緩衝液内での溶解のため、所与の反応体積内の細胞破砕片の濃度が増大し、従ってそれがそのPCR反応の増幅効率を抑制し得るという事実により説明することができる。本発明は、より低い細胞数に由来する試料に対するPCRに特に適用可能であると結論付けることができる。
【0060】
さらに、以下の表は、個々の単一細胞試料から得られたcp値を開示する:
【0061】
【表3】
【0062】
その表から推測できるように、16の並行した反応からの約4において増幅シグナルが得られなかった。全ての単一選別事象が結果として実際の単一細胞の反応容器中への分離および送達をもたらすわけではないことを証明する実施例2の結果を考慮すると、この結果を説明することができる。言い換えれば、一部の場合において増幅シグナルが観察されない事実はその個々のウェルが細胞を含有していなかったという事実によるものであるが、それはその溶解および増幅手順自体が一定の失敗率を有するという事実によるものではない。
【0063】
実施例3
乾燥試薬を含有するマイクロタイタープレートを用いる選別されたマウスハイブリドーマ細胞からのKcnj2遺伝子の増幅のためのqPCR
その実験は本質的に実施例2に関して開示したように実施され、以下の変更があった:
必要なプライマーおよびプローブを含有する10μlの溶液を、マイクロタイタープレートのそれぞれのウェルの中に入れた。そのマイクロタイタープレートを、そのプライマーおよびプローブがそのマイクロタイタープレートのそれぞれの反応ウェルの表面上に乾燥するように、25℃および200mBarで12時間、続いて25℃および50mBarで4時間保温した。
【0064】
続いて、細胞の沈着を以下のように実施した:
1細胞相当数/縦列1〜6のウェル
2細胞相当数/縦列7中のウェル
4細胞相当数/縦列8中のウェル
8細胞相当数/縦列9中のウェル
16細胞相当数/縦列10中のウェル
32細胞相当数/縦列11中のウェル
64細胞相当数/縦列12中のウェル
20μlのマスター混合物を添加した後、リアルタイムPCR分析を実施した。以下の表は、分析された異なる細胞数に関して得られた平均cp値を開示する:
【0065】
【表4】
【0066】
単一細胞分析のために用いられた48のウェルから10の増幅反応のみが陰性であったことを特筆するのも重要である。これらの反応は平均cp値の計算には含まれなかった。
実施例4
乾燥試薬を含有するマイクロタイタープレートを用いる単一のマウスハイブリドーマ細胞からのKcnj2遺伝子の増幅のためのqPCR
細胞相当物のどれだけ多くの割合が細胞破砕片ではなく実際に生細胞に対応するのかを分析するため、3×30の選別された相当物をそれぞれ顕微鏡スライド上に沈着させ、計数した。顕微鏡による目視検査により、それぞれ28、28および29個の細胞を確認することができた。これは、細胞相当物(選別事象)あたり94%の生細胞対6%の細胞破砕片に対応する。
【0067】
以下において、実験は本質的に2個の実施例3に関して開示したようなマイクロタイタープレートにおいて実施され、両方のマイクロタイタープレートにおいてそれぞれの反応ウェルは単一細胞相当物のみを含有していたという変更があった。結果は以下の通りであった:
【0068】
【表5】
【0069】
その結果は、本発明により提供されるようなPCR法に従って単一細胞分析を実施することが可能であることを示している。さらに、単一細胞分析が意図される場合も、そのプライマーおよびプローブはそのマイクロタイタープレートの表面上に乾燥させられる。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]