(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6175135
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】車両フレームおよびジョイント装置を有する自動車
(51)【国際特許分類】
B62D 21/02 20060101AFI20170724BHJP
B60G 7/02 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
B62D21/02 A
B60G7/02
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-518944(P2015-518944)
(86)(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公表番号】特表2015-530300(P2015-530300A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】EP2013061676
(87)【国際公開番号】WO2014005787
(87)【国際公開日】20140109
【審査請求日】2016年2月19日
(31)【優先権主張番号】102012013149.6
(32)【優先日】2012年7月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ラングホルスト・フリードヘルム
(72)【発明者】
【氏名】アイスマン・イェンス
(72)【発明者】
【氏名】シェーパー・フランク
(72)【発明者】
【氏名】クノップ・ゼーレン
【審査官】
田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0134593(US,A1)
【文献】
特開2003−285613(JP,A)
【文献】
特開2001−206032(JP,A)
【文献】
特開2006−063933(JP,A)
【文献】
特開2003−287012(JP,A)
【文献】
実開平06−045122(JP,U)
【文献】
特開2007−253831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/02
B60G 7/02
B60G 9/04
F16B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車であって、車両フレーム(2)を有し、および車両フレーム(2)に対して一または複数のアーム(6,7)を介して支持される車両軸(5)を有し、その際、一または複数のアーム(6,7)が、少なくとも一つのジョイント装置(8)を介して車両軸(5)に接続されており、このジョイント装置が、接続手段(11)を介して、車両軸(5)に対して固定的である対抗支承部(12)と接続されており、その際、接続手段(11)が、其々向かい合った、ジョイント装置(8)及び対抗支承部(12)の接触面(10,10a)を貫通し、かつ互いに接続している自動車において、其々向かい合った、ジョイント装置(8)又は対抗支承部(12)の接触面(10,10a)が、其々、一つの平面内に位置すること、及び各接続手段(11)の軸(13)が、これによって貫通される接触面(10,10a)が位置する当該平面を、90度とは異なる角度(α)で横切ることを特徴とする自動車。
【請求項2】
接続手段(11)の各軸(13)が、これによって貫通される接触面を、接触面(10)内に位置するベクトルに対して30度から60度の間の角度(α)で横切ることを特徴とする請求項1に記載の自動車(1)。
【請求項3】
接続手段(11)の各軸(13)が、これによって貫通される接触面(10)を、接触面(10)内に位置するベクトルに対して約45の角度で横切ることを特徴とする請求項2に記載の自動車(1)。
【請求項4】
接続手段(11)が、ナット留めされたねじにより形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【請求項5】
接触面(10,10a)が、上から見て車両長手方向軸(14)に対しておよび車両横断方向軸(15)に対して角度付けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の自動車(1)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の自動車(1)中で使用するためのジョイント装置(8)であって、ジョイント装置(8)が、球状パーツを有する軸体(9)を有するいわゆる突出部として形成されており、および軸体(9)が、軸方向外側において、接触面(10,10a)および接続手段(11)の為の切欠き部を設けられているジョイント装置(8)において、ジョイント装置(8)ごとに、軸方向外側に位置する二つの接触面(10,10a)が設けられおり、およびこれらが車両長手方向軸(14)に対して互いに逆に角度づけられていることを特徴とするジョイント装置(8)。
【請求項7】
接触面(10,10a)が、ぎざ部(16)を設けられていることを特徴とする請求項6に記載のジョイント装置(8)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両フレームを有し、および車両フレームに一または複数のアームを介して支持される少なくとも一つの軸を有する自動車、特に商用車であって、その際、一または複数のアームは、少なくとも一つのジョイント装置を介して軸に接続されており、このジョイント装置は、軸に対して固定的である対抗支承部と、接触面を貫通する接続手段を介して接続されているもの、かつ、請求項1の上位概念に係るものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、三角アーム装置を介してそのような支持を達成することは公知である。該三角アーム装置は、三角形の頂点が、中央の部分内で球形状に拡張された軸体を有するジョイント装置を介して、軸、例えば後軸に付設された対抗支承部とねじ留めされている。ねじは、このため軸方向外側でジョイント装置の軸体と対抗支承部を貫通する。その際、ねじは接触面を垂直に貫通するので、接触面には、加えられるねじ力の約10%のみが垂直力として伝達される。しかし、この与えられる垂直力は、接触面に接続される部材が、接触面の平面内の一つの方向に互いに移動できるということを防止する。これにより、十分高い垂直力が保証されることが重要である。
【0003】
しかし、接触面における摩擦値は、大きな振動を受けるので(専門文献によれば、約3のファクター)、接続手段の軸に対して横断する方向に大きな力が導入される際にも、接続が解除されるのを確実に防止するために、そのような接続は過大に寸法取られて形成する必要がある。これは、高い材料コストと部材の追加的重量の原因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ここで改善を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明は、この課題を、請求項1に記載の特徴を有する自動車および請求項6に記載の特徴を有するジョイント装置によって解決する。本発明の有利な実施形および発展形に関しては、下位の請求項2から5および7から9が参照される。
【0006】
発明により、接触面において各接続手段の軸が、これによって貫通される接触面を、90度とは異なる角度で横切ることにより、ねじ接続の力が、垂直方向成分と横断方向成分に分配されることが達成される。これにより、予テンションの部分を著しく高める、形状結合的部分が生じる。これにより、一方でねじ定格サイズを小さくすることができ、このことは材料コストと重量を減少させる。その上、ねじ接続の締結過程が明らかにより少ない正確性をもって選択されることが可能であるので、過程のコストが減少され、そして接続の確実性は高められる。より小さなねじによって、ジョイント内の軸体もまたより小さく寸法取ることが可能となる。これによって重量およびコストがさらに減少する。更に、表面品質にも、より少ない要求がなされることが可能である。
【0007】
出来る限り高い予テンションを発生させるために、接続手段の各軸が、これによって貫通される接触面を、接触面内に位置するベクトルに対して30度から60度の間の角度で横切ると有利である。
【0008】
特に、摩擦結合と形状結合の間の最適な組み合わせの為に、接続手段の各軸が、これにより貫通される接触面を、接触面内に位置するベクトルに対して約45度の角度で横切ることが可能である。
【0009】
接触面が上から見て、車両長手方向軸に対しておよび車両横断方向軸に対して角度付けられている限り、軸と車両フレームの間、つまり横断方向動作と長手方向動作の間の主とした力の方向も、其々、接触面に対して角度づけられ、よって、そこに接続される部材相互のせん断をより少なく促進するので、接続の追加的な安全性が図られる。接触面の平面内の力の作用に対するその様な安全性の為に、接触面がぎざ部または摩擦を高めるための同様な措置を設けられていると、貢献する。
【0010】
特に、ジョイント装置毎に、軸方向外側に位置する二つの接触面が、車両横断方向軸に対して互いに逆方向に角度付けられており、これにより、外側の壁部のように、その間に位置するジョイント装置を囲む。
【0011】
これは、球状パーツを有する軸体を有するいわゆる突出部を安価に形成することができる。その際、軸体は、軸方向外側に接触面および接続手段の為の切欠き部を設けられている。
【0012】
ジョイント装置及び/又は支承装置は、個別に負荷を受ける。これは、乗用車(PKW)または商用車(NKW)のような車両中で使用されることが可能であり、また建設機械においても使用されることが可能である。
【0013】
本発明の別の特徴は、図面から、および以下に記載する本発明の対象の実施例の説明からも生じる。
【0014】
図には以下の内容が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】三角アームを介して支持された後軸を有する商用車の簡略上面図。
【
図2】後軸に対する接続部を有する三角アームの斜視図。
【
図4】ジョイント装置の後軸への接続部の詳細の上面図。ここではジョイント装置のうち、横断方向中央に球形状に拡張された軸体のみが表されている。追加的に力のベクトルが記入されている。
【
図5】軸体の接触面を介しての接続部。正面から見た図。
【
図6】ジョイント装置の、ぎざ部を設けられた軸体の簡略図。組立前後の、拡大された詳細断面図を伴う。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に簡略的に表された自動車1は、ここでは商用車(NKW)を構成し、そして長手方向キャリア3と横断方向キャリア4を有する車両フレーム2を有する。車両フレーム2は、異なる構成を有し得る。車両フレームには、少なくとも一つの車軸5、例えば後軸が保持されている。例えば建築車両やオフロード車両もまた、発明に従い構成可能である。
【0017】
そこに表された装置は、三角アーム装置内で鋭角に、そして上から見るとV字形状に互いに近づきあう二つのアーム6,7を有している。そのように形成された三角形の頂点では、これらが、ジョイント装置8によって車両軸5と係合している。これは、車両横断方向に関して中央の領域において、ディファレンシャルの収容の為に拡張されている。ジョイント装置8は、これにより、ディファレンシャルの収容の為に拡張されたこの領域(後軸5の領域)の上端部で組付け可能であり、そしてこれによってこの車両軸5の為の横断方向ガイドおよび長手方向ガイドを形成することが可能である。ここで支持する二つのアーム6,7は、それ自体、その上側の領域中で、例えば、担持する長手方向フレーム部材3に接続されていることが可能である。これはここでは詳細に記入されていない。三角アーム装置の替わりに、例えば上から見てX字形状を有する四点アームや他の装置が考慮されることができる。
【0018】
ジョイント装置8は、しばしば突出部とも称される。そのようなジョイント装置8は、球状パーツを有する軸体9を有している。これは、横断方向外側に、接触面10と接続手段11に対する切欠き部を有している。
【0019】
接続手段11は、図面では、ナット締めされたねじとして形成されており、そしてジョイント装置8の接触面10およびこれと反対側に位置し、軸5と固定的に接続される対抗支承部12の接触面10を貫通している。その際、各接続手段11の軸13は、これによって貫通される接触面10に対して、90度とは異なる角度αにある。
【0020】
この角度は、接触面10内に位置するベクトルに対して30度から60度の間の値を取る。
【0021】
理想的には、接続手段11の各軸13は、これによって貫通されている接触面10を、接触面10内に位置するベクトルに対して約45度の角度で横切る。そのとき、形状結合(独語:Formschluss)と摩擦結合(独語:Kraftschluss)の間の最適な分配が達成される。車両長手方向軸14に対して平行、または車両横断方向軸15に対して平行な、主として発生する力が、同じように良好に受け止められる。
【0022】
形状結合的部分に対しては、接触面10が上から見て、車両長手方向軸14に対しておよび車両横断方向軸15に対して、特に、ジョイント装置8毎に、軸体9と対抗支承部12の間で、軸方向外側に位置する二つの接触面が設けられており、かつこれらが車両横断方向軸15に対して互いに反対に角度づけられているよう角度づけられていると、極めて良好であるが、これは例えば
図4に良好に見て取れる。よって、横断方向の各力に対して、ジョイント装置8の同様に良好な支持が保証される。
【0023】
更に、接触面10の摩擦係数は、接触面がぎざ部16を設けられていることによって大きくすることが可能である。これは例えば
図5および6に記入されている。硬化された軸体9のぎざ部16は、組立の間(
図6の左側、組立前、組立後の図参照)より軟性の対抗支承部12中に押し込まれているので、これは、ぎざ部16の逆輪郭を得る。この逆輪郭は、形状結合的安全を生じさせる。
【0024】
更に、各接触面10が、まっすぐに推移せず、
図4の右側に記載されているように、接触面10aが丸められて推移していることも可能である。これは例えば、外側に向かって増加する勾配を有する凹面である。
【0025】
ジョイント装置8は、記載したように、特に走行機構部材の内部またはその接続部の様々な箇所で、車両1に設けられることが可能であり、よって個別に負荷を受ける。
【0026】
1 自動車
2 車両フレーム,
3 長手方向キャリア,
4 横断方向キャリア
5 車両軸
6 アーム
7 アーム
8 ジョイント装置
9 軸体
10 接触面
10a 接触面
11 接続手段
12 対抗支承部
13 接続手段の軸
14 長手方向軸
15 横断方向軸
16 ぎざ部
17 ジョイント装置の軸体