(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6175152
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】回転テーブル装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/04 20060101AFI20170724BHJP
B23Q 1/52 20060101ALN20170724BHJP
【FI】
F16H25/04
!B23Q1/52
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-14982(P2016-14982)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-142410(P2016-142410A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2016年1月29日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0015268
(32)【優先日】2015年1月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503319250
【氏名又は名称】株式会社三千里機械
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 洪錫
【審査官】
塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−126958(JP,A)
【文献】
実公昭42−000032(JP,Y1)
【文献】
特開昭50−127045(JP,A)
【文献】
実開昭56−008955(JP,U)
【文献】
特表昭61−501415(JP,A)
【文献】
特開平03−172659(JP,A)
【文献】
米国特許第04685346(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/00−37/16、49/00
B23Q 1/00− 1/76、 9/00−9/02
B23Q 16/00−16/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの内部に回転可能に設けられた回転テーブル1の周面に一定の間隔でカム従動子2を設け、被駆動軸の回転でギアカム4が回転することに応じてギアカム4に噛み合ったカム従動子2によって回転テーブル1が回転する回転テーブル装置において、
前記カム従動子2であるローラギア3及びギアカム4は、それぞれ、その縦断面が台形状である傾斜面3a、4aを備え、前記カム従動子2は、ベアリング5によって支持されるように回転テーブル1に回転可能に設けられ、前記回転テーブル1とローラギア3との間、かつ、前記回転テーブル1の外部には、回転テーブル1のピッチを調節するピッチ調節部材6が設けられていることを特徴とする回転テーブル装置。
【請求項2】
前記ローラギア3の傾斜面3aの前記縦断面の斜辺が直線であることを特徴とする請求項1に記載の回転テーブル装置。
【請求項3】
前記ローラギア3の傾斜面3aの前記縦断面の斜辺がインボリュート曲線であることを特徴とする請求項1に記載の回転テーブル装置。
【請求項4】
前記ピッチ調節部材6がスラストベアリング、滑りベアリング、ワッシャ、カラー及びブッシュのうち、いずれか1つであることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか一項に記載の回転テーブル装置。
【請求項5】
前記ローラギア3と軸7とが一体に形成され、前記軸7の一端に環状の係止溝7aが形成され、前記係止溝7aには、回転テーブル1に螺合されたボルト8が位置することを特徴とする請求項1に記載の回転テーブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に用いられる回転テーブル装置に関し、より具体的には、ギアカムに噛み合って回転することに応じて回転テーブルを所定の角度でインデクシングするカム従動子の構造を画期的に改善し、カム従動子の構造を変更しなくても回転テーブルのピッチ調節が容易になるようにする回転テーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、旋削加工、または研削加工を行う工作機械には、工具、または被加工物が固定される回転テーブルを所定の角度でインデクシング(Indexing)しながら回転させる回転テーブル装置が設けられる。
【0003】
公知の工作機械などに用いられる回転テーブル装置であって、回転テーブルにウォームホイールが設けられており、前記ウォームホイールには、ウォームが噛み合うように設けられ、前記ウォームが回転することに応じて回転テーブルが所定の角度でインデクシングされる。
【0004】
このような回転テーブル装置においては、ウォーム減速機構がその機構上避けることができないバックラッシュ(Backlash)を有する固有の欠陷があった。
【0005】
かかる問題点を改善するために、バックラッシュの発生を防止した新しい技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
図1は、従来の回転テーブル装置を一部断面で示した平面図であり、
図2は、
図1のX−X線断面図である。従来の回転テーブル装置10の構成は、次の通りである。
【0007】
被駆動軸20は、第1ベアリング60によって、ハウジング40に対して回転自在に支持されており、前記被駆動軸20には、カムとしてのローラギアカム22が設けられている。
【0008】
回転テーブル30は、第2ベアリング70によって、ハウジング40に対して回転軸38を中心にして回転自在に支持されているが、前記第2ベアリング70は、第1軌道輪72、第2軌道輪74、ローラ76、及び回転テーブル30に形成されたV溝36によって構成され、クロスローラベアリングとしての機能を果たす。
【0009】
この時、第1軌道輪72は、ボルトによってハウジング40に固定されており、第2軌道輪74は、ボルトによって第1軌道輪72に固定されている。V溝36を回転テーブル30に形成して第2ベアリング70を構成することにより、ハウジング40に対する回転テーブル30の支持度を高めることができる。
【0010】
前記回転テーブル30には、その周縁部に複数個のカム従動子32が放射状で各々回転可能に設けられているが、前記カム従動子32は、被駆動軸20に設けられているローラギアカム22と噛み合う。
【0011】
図3は、従来の装置において回転テーブル30の周面にカム従動子32が設けられた状態の縦断面図であって、回転テーブル30に所定の間隔で回転可能に設けられるカム従動子32は、円筒状のローラギア32aと、前記ローラギア32aを回転テーブル30に固定するようにする軸32bと、前記ローラギア32aと軸32bとの間に設けられたベアリング32cから構成されている。
【0012】
従って、駆動手段(図示せず)によって被駆動軸20が回転すると、ギアカム22に回転テーブル30のカム従動子32である円筒状のローラギア32aが軸32bを中心に回転可能に噛み合わされており、カム従動子32である円筒状のローラギア32aがギアカム22に噛み合った状態で回転するようになるので、回転テーブル30が所定の角度で回転すると、カム従動子32である円筒状のローラギア32aがギアカム22に緊密に接続された状態で回転するようになるので、被駆動軸20の回転が中断してもバックラッシュが発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】大韓民国登録特許公報登録番号10−0433569号(2004.05.19)
【特許文献2】大韓民国登録特許公報登録番号10−0579073号(2006.05.04)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、このような構造を有する従来の回転テーブル装置は、被駆動軸の回転が中断しても回転テーブルへのバックラッシュの発生を防止することができるが、次のようなさまざまな問題点がある。
【0015】
第1に、ローラギア及びギアカムの断面が円筒状からなっており、回転テーブルのピッチを微細に調節しようとしても、ローラギア及びギアカムを再び加工する必要があるので、迅速な対処が不可能であった。
【0016】
第2に、ローラギア及びギアカムの断面が円筒状に形成されているので、ギアカムと噛み合って回転する時、内・外側からすべり現象が発生する。
【0017】
第3に、杖鼓状タイプのギアカムを使用する時には、バックラッシュの発生を防止することができるが、円筒状タイプのギアカムを使用する時には、バックラッシュの発生を防止することができないという短所があった。
【0018】
第4に、ローラギアの内部にベアリング及び軸の結合のための空間部が形成されることによって耐久性が落ちる。
【0019】
第5に、ギアカムの研削の時、ディスク状の砥石を使用することができないので、高価なギアカム専用の加工機を購入する必要がある。
【0020】
本発明は、このような問題点を解決するために案出したものであって、ギアカムに噛み合って回転することに応じて回転テーブルを所定の角度でインデクシングするカム従動子であるローラギア及びギアカムの断面を台形状に改善すると共に、回転テーブルとローラギアとの間にピッチ調節部材を設け、カム従動子であるローラギアを再加工しなくても回転テーブルのピッチを容易に調節可能にすることを目的とする。
【0021】
本発明の他の目的は、カム従動子を構成するローラギアの傾斜面をインボリュート曲線に加工し、円周径に応じたすべり現象を最小化することができるようにすることにある。
【0022】
本発明のまた他の目的は、円筒状のギアカムを使用しても被駆動軸の回転が中断した時、バックラッシュの発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記目的を達成するための本発明によれば、ハウジングの内部に回転可能に設けられた回転テーブルの周面に一定の間隔でカム従動子を設け、被駆動軸の回転でギアカムが回転することに応じてギアカムに噛み合ったカム従動子によって回転テーブルが回転する回転テーブル装置において、前記カム従動子であるローラギア及びギアカムは、その縦断面が台形状である傾斜面を備え、前記カム従動子は、ベアリングによって支持されるように回転テーブルに回転可能に設けられ、前記回転テーブルとローラギアとの間
、かつ、前記回転テーブル1の外部には、回転テーブルのピッチを調節するピッチ調節部材が設けられていることを特徴とする回転テーブル装置が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、従来の装置に比べて、次のようなさまざまな長所を有する。
【0025】
第1に、ローラギア及びギアカムの断面が台形状であるので、ローラギアの構造を変更せずにピッチ調節部材の交替だけでローラギアとギアカムとの接続位置を変更できるので、回転テーブルのピッチ調節が可能になる。
【0026】
第2に、ローラギアがギアカムの一面と線接触しながら回転するので、ローラギアの摩耗を最小化することは勿論であり、接触率を増大させるので、確実な動力伝達が可能になる。
【0027】
第3に、ローラギアの傾斜面をインボリュート曲線でも加工が可能であるので、円周径に応じたすべりを最小化することができるようになる。
【0028】
第4に、円筒状タイプのギアカムを使用しても、バックラッシュの発生を防止することが出来る。
【0029】
第5に、ギアカムの研削の時、ディスク状の砥石を使用することができるので、高価なギアカム専用の加工機を購入しなくてもギアカムの迅速な加工が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】従来の回転テーブル装置を一部断面で示した平面図。
【
図3】従来の装置において、回転テーブルの周面にカム従動子が設けられた状態の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付した図面を参考にして、本発明の実施例に対して本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は、さまざまな相異した形態で具現され得り、ここで説明する実施例に限定されない。図面は概略的な図であり、縮尺に合わせて図示を省略した部分がある。図面にある部分などの相対的な寸法及び比率は、図面における明確性及び便宜のために、その大きさにおいて誇張又は減少されて示されており、任意の寸法は、単に例示的なものであって限定的なものではない。そして、2つ以上の図面に示される同様の構造物、要素、または部品には、同一の参照符号が類似した特徴を示すために使用される。
【0032】
図4は、本発明の一実施例を示した縦断面図であり、
図5は、
図4の“A”部の拡大図であり、
図6は、
図4のB−B線断面図であって、本発明は、ハウジング(図示せず)の内部に回転可能に設けられた回転テーブル1の周面に一定の間隔でカム従動子2が設けられている。本発明のカム従動子2であるローラギア3及びギアカム4は、その縦断面が台形状である傾斜面3a,4aを備えることによって、
図4及び
図5に示したように、前記傾斜面3a,4aが相互に当接するようになっている。前記カム従動子2は、ベアリング5によって支持されるように回転テーブル1の周面に沿って回転可能に設けられており、前記回転テーブル1とローラギア3との間には、ピッチ調節部材6が設けられていることを特徴とする。
【0033】
縦断面の台形の斜辺が直線となるように、前記ローラギア3の傾斜面3aを形成しても良いが、必要に応じて前記縦断面の台形の斜辺が直線に近いインボルリュート(involute)曲線となるように、前記ローラギア3の傾斜面3aを形成してもよい。なお、本明細書において、縦断面とは、回転テーブル1の回転軸と直交する断面を言う。
【0034】
前記ローラギア3に形成された傾斜面3aの縦断面の台形の斜辺を直線にすると、ギアカム4に線接触するが、傾斜面3aの縦断面の台形の斜辺をインボリュート曲線にすると、ギアカム4に点接触することになって、円周径に応じたすべりを最小化することができる長所を有する。
【0035】
また、前記回転テーブル1とローラギア3との間に設けられて回転テーブル1のピッチを調節するピッチ調節部材6は、必要に応じて、スラストベアリング、滑りベアリング、ワッシャ(washer)、カラー(collar)及びブッシュ(bush)のうち、いずれか一つを適用することができるが、必ずしも、これらに限定されない。
【0036】
そして、前記ローラギア3の一端に軸7が一体に形成されており、前記軸7の下部には、環状の係止溝7aが形成されているので、前記軸7を回転テーブル1に固定されたベアリング5に結合させた状態で、回転テーブル1にボルト8を螺合すると、前記係止溝7aにボルト8が位置されるように構成されている。
【0037】
本発明は、一実施例として示した
図4のように、ギアカム4を杖鼓状に適用しても良いが、他の実施例として示した
図7のように、円筒状に適用してもバックラッシュを防止することができる長所を有する。
【0038】
これは、ローラギア3の傾斜面3aがギアカム4の傾斜面4aと線接触しながら回転するので、ローラギアの摩耗を最小化することは勿論であり、接触率を増大させるので、確実な動力伝達が可能であるからである。
【0039】
このように構成された本発明の作用を説明すると、次の通りである。
【0040】
先ず、各カム従動子2を構成する軸7にベアリング5を組み立てる前に、軸7の内部にピッチ調節部材6を嵌め込んだ後に、ベアリング5を順に嵌め込んで組み立てた後、これを回転テーブル1の周面に沿って形成された各挿入孔1aの内部に押圧して固定する。
【0041】
この時、前記ピッチ調節部材6は、用途に応じてスラストベアリング、滑りベアリング、ワッシャ、カラー及びブッシュのうち、いずれか一つを択一的に選択して使用する。
【0042】
その後、回転テーブル1からカム従動子2が離脱しないようにボルト8を螺合してボルトの先端が軸7の一端に形成された係止溝7aに位置するようにすることによって、カム従動子2が回転テーブル1から離脱することを防止することができる。
【0043】
このような状態で、前記カム従動子2がギアカム4に噛み合うように
図4のように設けた状態で、モータの駆動で被駆動軸(図示せず)が回転してギアカム4を共に回転させるとギアカム4に噛み合ったカム従動子2であるローラギア3が回転するが、この時、ローラギア3がギアカム4の一面と線、または点接触しながら回転するので、ローラギア3の摩耗を最小化することは勿論であり、接触率を増大させるので、確実な動力伝達が可能になる。
【0044】
これをより具体的に説明すると、前記ギアカム4が回転するとギアカム4の中心Cから回転テーブル1の右側に位置するローラギア3の傾斜面3aは、ギアカム4の左側傾斜面4aに接触する一方、回転テーブル1の左側に位置するローラギア3の傾斜面3aは、ギアカム4の右側傾斜面4aに接触し、その間に位置するローラギア3は、ギアカム4のいずれの傾斜面4aとも接触しない状態を維持しながら動力が伝達されるので、回転テーブル1の円滑な回転が可能になる。
【0045】
一方、上記したように動作する本発明において回転テーブル1のピッチを調節しようとする場合には、回転テーブル1とローラギア3との間に位置するように設けられるピッチ調節部材6の高さhを変更することによって、カム従動子2の構造を変更せずにピッチの調節が実現可能である。
【0046】
すなわち、
図5の“a”地点でローラギア3の中心部位が接触しながら動力が伝達されるようにしてから、“b”地点にローラギア3の中心部位が接触するようにピッチ調節部材6の高さhを大きくすると、“S”だけのピッチが変更される。
【0047】
以上、添付された図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は、技術的思想や必須の特徴を変更せずに、他の具体的な形態で実施され得るということを理解することができるだろう。
【0048】
従って、以上から記述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないものとして理解されるべきであり、前記詳細な説明において記述された本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、そして、その等価概念から導出されるすべての変更、または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0049】
1‥回転テーブル、
2‥カム従動子、
3‥ローラギア、
3a、4a‥傾斜面、
4‥ギアカム、
5‥ベアリング、
6‥ピッチ調節部材、
7‥軸、
7a‥係止溝、
8‥ボルト。