特許第6175164号(P6175164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6175164
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】併用システム
(51)【国際特許分類】
   F24J 2/00 20140101AFI20170724BHJP
   F03G 6/00 20060101ALI20170724BHJP
   H02S 40/44 20140101ALI20170724BHJP
   F24J 2/42 20060101ALI20170724BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20170724BHJP
   F25B 27/00 20060101ALI20170724BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   F24J2/00 A
   F03G6/00 501
   F03G6/00 551
   H02S40/44
   F24J2/42 Q
   F24F5/00 101A
   F25B27/00 H
   F25B27/00 K
   F25B49/02 510A
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-127733(P2016-127733)
(22)【出願日】2016年6月28日
【審査請求日】2016年7月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓樹
(72)【発明者】
【氏名】矢野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】黒川 秀亮
【審査官】 横溝 顕範
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−146355(JP,A)
【文献】 特開2000−146257(JP,A)
【文献】 特開平08−114334(JP,A)
【文献】 特開2000−055505(JP,A)
【文献】 特開平11−155244(JP,A)
【文献】 特開平08−177627(JP,A)
【文献】 特開2007−255779(JP,A)
【文献】 特開2001−099520(JP,A)
【文献】 特開平04−251170(JP,A)
【文献】 特開2001−050045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24J 2/00
F03G 6/00
F24F 5/00
F24J 2/42
F25B 27/00
F25B 49/02
H02S 40/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気又は動力からなる第1エネルギーを供給すると共に温度変動する熱エネルギーである第2エネルギーを供給する併給システムと、
前記併給システムから第1エネルギーの供給を受けて駆動し、冷熱供給部から温熱供給部へ熱移送させる第1熱移送システムと、
前記併給システムから供給される前記第2エネルギー及び前記第1熱移送システムの温熱供給部の熱のなかから選択された一方又は双方を駆動熱として受領して冷熱供給部から温熱供給部へ熱移送させる第2熱移送システムと、
前記併給システムからの第2エネルギーを前記第1熱移送システム及び前記第2熱移送システムの少なくとも一方に供給する少なくとも3つの運転モードのうち、いずれか1つを第2エネルギーの温度に応じて自動選択する選択制御部と、
前記選択制御部により自動選択された運転モードに応じた運転を実行させる運転制御部と、を備え、
前記少なくとも3つの運転モードは、冷房運転時及び暖房運転時のそれぞれにおいて設定されるものであり、
冷房運転時の前記少なくとも3つの運転モード、及び、暖房運転時の前記少なくとも3つの運転モードは、それぞれ前記第1熱移送システムの温熱供給部の熱を前記駆動熱として受領するモードを含む
ことを特徴とする併用システム。
【請求項2】
前記少なくとも3つの運転モードのうち少なくとも1つは、前記第1熱移送システムと前記第2熱移送システムとの間において、熱エネルギーの授受を行うモードである
ことを特徴とする請求項1に記載の併用システム。
【請求項3】
前記少なくとも3つの運転モードには、前記第1熱移送システムの冷熱供給部の液体が冷房に使用される場合、当該冷熱供給部の液体を大気との熱交換により昇温させる場合、当該冷熱供給部の液体を前記併給システム側に供給して昇温させる場合、及び、当該冷熱供給部の液体を前記第2熱移送システムに供給して昇温させる場合の4つのうち、少なくとも2つの場合が含まれている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の併用システム。
【請求項4】
前記少なくとも3つの運転モードには、前記第1熱移送システムの温熱供給部の液体が暖房に使用される場合、当該温熱供給部の液体を前記第2熱移送システムの駆動熱受領部に供給する場合、当該温熱供給部の液体を前記第2熱移送システムの低温熱源として供給する場合、当該温熱供給部の液体を前記併給システム側に供給する場合、及び当該温熱供給部の液体を大気との熱交換により降温させる場合の5つのうち、少なくとも2つの場合が含まれている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の併用システム。
【請求項5】
前記少なくとも3つの運転モードには、前記第2熱移送システムの冷熱供給部の液体が冷房に使用される場合、当該冷熱供給部の液体を大気との熱交換により昇温させる場合、当該冷熱供給部の液体を前記併給システム側に供給して昇温させる場合、及び、当該冷熱供給部の液体を前記第1熱移送システムに供給して昇温させる場合の4つのうち、少なくとも2つの場合が含まれている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の併用システム。
【請求項6】
前記少なくとも3つの運転モードには、前記第2熱移送システムの温熱供給部の液体が暖房に使用される場合、当該温熱供給部の液体を前記第1熱移送システムの冷熱供給部に供給する場合、当該温熱供給部の液体を前記併給システム側に供給する場合、及び当該温熱供給部の液体を大気との熱交換により降温させる場合の4つのうち、少なくとも2つの場合が含まれている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の併用システム。
【請求項7】
前記第1熱移送システムの冷熱供給部の液体を冷房に利用する第1冷房部と、前記第2熱移送システムの冷熱供給部の液体を冷房に利用する第2冷房部とを有した室内ユニットを更に備え、
前記少なくとも3つの運転モードには、前記室内ユニットのうち前記第1及び第2冷房部の液体温度を5度差以上とする運転モードを含む
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の併用システム。
【請求項8】
室温を検出するための室温センサと、
前記第2エネルギーの温度を検出するためのエネルギー温度センサと、
気温を検出するための大気温センサと、を更に備え、
前記併給システムは、電気からなる第1エネルギーを生成して供給するものであり、
前記選択制御部は、前記室温センサ、前記エネルギー温度センサ、及び前記大気温センサの検出結果と、前記併給システムにより生成された電力量とに基づいて、前記少なくとも3つの運転モードから、いずれか1つを自動選択する
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の併用システム。
【請求項9】
前記併給システムは、太陽光を利用して電気を生成のうえ供給すると共に太陽熱により熱媒を加熱して供給するハイブリッドソーラーパネルである
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の併用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、併用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽熱を利用して加熱された熱媒を、吸収式冷凍機の駆動に用いる太陽熱利用システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。また、太陽熱を利用して加熱された熱媒により貯湯槽内の湯水を加熱し、貯湯槽内の温水を吸収式冷凍機の駆動に用いる太陽熱利用システムについても提案されている(例えば特許文献2参照)。これらの太陽熱利用システムでは、太陽熱を利用して吸収式冷凍機を駆動することができ、化石燃料等の使用を抑えることができる。
【0003】
さらに、特許文献2に記載のシステムは、圧縮式ヒートポンプについても備えており、貯湯槽内の温水を利用した熱交換により圧縮式ヒートポンプにて冷水を得て冷房利用する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−14328号公報
【特許文献2】特開2004−211979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件発明者は、特許文献2に記載のように、圧縮式ヒートポンプ等の冷熱供給部から温熱供給部へ熱移送させる第1熱移送システムと、吸収式冷凍機等の駆動熱を受領して冷熱供給部から温熱供給部へ熱移送させる第2熱移送システムとを備える併用システムについて開発を行っている。ここで、圧縮式ヒートポンプ等の第1熱移送システムは駆動に電力又は動力を要する。また、吸収式冷凍機、吸収式ヒートポンプ及び吸着式冷凍機等の第2熱移送システムの駆動にはある程度の温度以上の駆動熱を供給する必要がある。このため、併用システムに対して、電力又は動力と、熱エネルギーとを供給することができる併給システム(例えばハイブリッドソーラーパネル、風車や水車の動力と太陽熱集熱器との組み合わせなど)を用いることを検討している。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の太陽熱利用システムでは、熱媒が80度まで加熱されない場合には、吸収式冷凍機等の駆動(第2熱移送システムの駆動)が困難となってしまう。例えば吸収式冷凍機等の冷房運転を行う場合、十分に温度が低い冷水を得るためには最低でも熱媒温度は60度を要するが容量が著しく低下するという欠点がある。このため、現実的に熱媒は75度程度以下において吸収式冷凍機等の駆動に利用されることはなく、これ以上の温度が得られない場合には吸収式冷凍機等の駆動に利用できなくなってしまう。また、特許文献2に記載の太陽熱利用システムにおいても、貯湯槽内の温水温度が朝方に低下することから、上記と同様に、吸収式冷凍機等の駆動が困難となってしまう場合がある。さらに、冷房運転に限らず暖房運転においても同様に熱媒温度によっては吸収式冷凍機等の駆動が困難となってしまう。
【0007】
このように、特許文献1,2に記載のシステムでは、熱媒温度という熱エネルギー温度の変動に対応することが困難なシステムとなっている。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電力又は動力と、熱エネルギーとを生成して供給することができる併給システムを備える場合において、供給される熱エネルギーの温度変動に応じた制御を実行することが可能な併用システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の併用システムは、併給システムと、第1熱移送システムと、第2熱移送システムと、選択制御部とを備えている。併給システムは、電気又は動力からなる第1エネルギーを供給すると共に温度変動する熱エネルギーである第2エネルギーを供給する。第1熱移送システムは併給システムから第1エネルギーの供給を受けて駆動し、冷熱供給部から温熱供給部へ熱移送させる。第2熱移送システムは併給システムから供給される第2エネルギー及び第1熱移送システムの温熱供給部の熱のなかから選択された一方又は双方を駆動熱として受領して冷熱供給部から温熱供給部へ熱移送させる。選択制御部は、併給システムからの第2エネルギーを第1熱移送システム及び第2熱移送システムの少なくとも一方に供給する少なくとも3つの運転モードのうち、いずれか1つを第2エネルギーの温度に応じて自動選択する。さらに、少なくとも3つの運転モードは、冷房運転時及び暖房運転時のそれぞれにおいて設定されるものであり、冷房運転時の少なくとも3つの運転モード、及び、暖房運転時の少なくとも3つの運転モードは、それぞれ第1熱移送システムの温熱供給部の熱を駆動熱として受領するモードを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第2エネルギー温度に応じた3つ以上の運転モードから、適切なものが選択可能となり、電力又は動力と、熱エネルギーとを供給することができる併給システムを備える場合において、供給される熱エネルギーの温度変動に応じた制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る併用システムを示す構成図である。
図2】本実施形態に係る併用システムにおける運転モードの自動選択処理を示すフローチャートであって、冷房運転時における自動選択処理を示している。
図3】第1運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図4】第2運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図5】第3運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図6】第4運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図7】第5運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図8】第6運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図9】第7運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図10】冷房運転時の各運転モードにおける各部位の液体温度を示す図である。
図11】本実施形態に係る併用システムにおける運転モードの自動選択処理を示すフローチャートであって、暖房運転時における自動選択処理を示している。
図12】第8運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図13】第9運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図14】第10運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図15】第11運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図16】第12運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図17】第13運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図18】第14運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図19】第15運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図20】第16運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図21】第17運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。
図22】暖房運転時の各運転モードにおける各部位の液体温度を示す図である。
図23】室内ユニットの変形例を示す図である。
図24】変形例に係る併用システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る併用システムを示す構成図である。図1に示すように、併用システム1は、ハイブリッドソーラーパネル(併給システム)PVTと、圧縮式ヒートポンプからなる電動熱移送システム(第1熱移送システム)EHPと、吸収式冷凍機からなる熱動熱移送システム(第2熱移送システム)ACSと、室内ユニットICと、屋外ラジエータORと、パワーコントローラーPCと、配電盤SWBDと、各種搬送ポンプP1〜P5と、各種配管R1〜R40と、各種電磁方向弁V1〜V20と、複数の温度センサT1〜T3と、制御部Cとを備えている。
【0014】
ハイブリッドソーラーパネルPVTは、電気からなる第1エネルギーを生成して供給すると共に温度変動する熱エネルギーである第2エネルギーを生成して供給するものであって、太陽電池SCと、集熱パネルHCとから構成されている。太陽電池SCは、太陽光を利用して電気からなる第1エネルギーを生成するものであり、集熱パネルHCは、太陽熱により熱媒を加熱することで熱エネルギーである第2エネルギーを生成するものである。この集熱パネルHCによる熱媒加熱温度は、夏季及び冬季などの日照時間の差異や天候の差異に応じて、変化する傾向にある。このため、集熱パネルHCは、温度変動する熱エネルギーである第2エネルギーを生成して供給するものといえる。
【0015】
なお、本実施形態ではハイブリッドソーラーパネルPVTを併給システムの例に説明するが、併給システムは、ハイブリッドソーラーパネルPVTに限らず、例えば動力からなる第1エネルギーを生成して供給すると共に温度変動する熱エネルギーである第2エネルギーを生成して供給するものであってもよい。この場合、例えば第1エネルギーの生成には、風車や水車など風力や水力が利用され、第2エネルギーの生成には、上記と同様に集熱パネルHCが利用される。
【0016】
また、第1エネルギー及び第2エネルギーは併給システムによって生成される場合に限らない。例えば、併給システムは、グリッド電源から電気を第1エネルギーとして供給するものと、後述の図24に示すように貯湯槽HWTの温水(熱エネルギー)を第2エネルギーとして供給するものであってもよい。
【0017】
電動熱移送システムEHPは、ハイブリッドソーラーパネルPVTから第1エネルギーの供給を受けて駆動し、その冷熱供給部CSEから温熱供給部HSEへ熱移送させるものである。詳細にハイブリッドソーラーパネルPVTの太陽電池SCにて生成された電気は、パワーコントローラーPC及び配電盤SWBDを通じて、電動熱移送システムEHPのモータMに供給される。このモータMにより圧縮器が駆動することとなり、冷熱供給部CSEから温熱供給部HSEへの熱移送が実現される。なお、本実施形態において電動熱移送システムEHPは、圧縮式ヒートポンプを想定しているが、適用可能であれば他のものが用いられてもよい。さらに、電動式に限らず、第1エネルギーとして動力が供給される場合には機動式のものであってもよい。
【0018】
熱動熱移送システムACSは、駆動熱を駆動熱受領部DHPにて受領して、その冷熱供給部CSAから温熱供給部HSAへ熱移送させるものである。ここで、本実施形態において熱動熱移送システムACSは、吸収式冷凍機を想定していることから、駆動熱受領部DHPにて受領した駆動熱は再生器における溶液加熱に用いられることとなる。なお、熱動熱移送システムACSは、冷房運転時において吸収式冷凍機として機能するが、暖房運転時には吸収式ヒートポンプとして機能する。具体的に説明すると、大気温度が15度以上であれば、吸収式冷凍機を第一種吸収式ヒートポンプとして運転することができる。このとき、冷房運転において室内ユニットICに接続されていた冷水配管(冷熱供給部)は暖房運転において屋外ラジエータORに接続され、冷房運転において屋外ラジエータORに接続されていた温水配管(温熱供給部)は暖房運転において室内ユニットICに接続される。さらに、熱動熱移送システムACSは、吸収式冷凍機(冷房時)や吸収式ヒートポンプ(暖房時)に限らず、吸着式冷凍機など適用可能であれば他のものが用いられてもよい。
【0019】
室内ユニットICは、室内空調用のファンコイルユニットや輻射パネルであって、冷水や温水の供給によって冷房効果及び暖房効果を発揮するものである。屋外ラジエータORは、大気との熱交換により放熱効果又は集熱効果を発揮するものである。
【0020】
各種配管R1〜R40は、ハイブリッドソーラーパネルPVTの集熱パネルHCと、電動熱移送システムEHPと、熱動熱移送システムACSと、室内ユニットICと、屋外ラジエータORとを接続する配管である。これら配管R1〜R40に流れる液体は、全て同一種の不凍液となっている。また、これら配管R1〜R40上には、搬送ポンプP1〜P5と、電磁方向弁V1〜V20とが設けられている。第1〜第20電磁方向弁V1〜V20のうち第7及び第8電磁方向弁V7,V8は四方弁であり、他は三方弁である。
【0021】
より詳細に説明すると、集熱パネルHCの出口から熱動熱移送システムACSの駆動熱受領部DHPの入口までは、第1〜第4配管R1〜R4にて接続されており、駆動熱受領部DHPの出口から集熱パネルHCの入口までは、第5〜第8配管R5〜R8にて接続されている。また、第1及び第2配管R1,R2の間には第1電磁方向弁V1が設けられており、第2及び第3配管R2,R3の間には第2電磁方向弁V2が設けられており、第3及び第4配管R3,R4の間には第3電磁方向弁V3が設けられている。さらに、第5及び第6配管R5,R6の間には第4電磁方向弁V4が設けられており、第6及び第7配管R6,R7の間には第5電磁方向弁V5が設けられており、第7及び第8配管R7,R8の間には第6電磁方向弁V6が設けられている。また、第1搬送ポンプP1は第1配管R1上に設けられている。
【0022】
電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEの出口から熱動熱移送システムACSの冷熱供給部CSAの入口までは、第12及び第9配管R12,R9にて接続されており、熱動熱移送システムACSの冷熱供給部CSAの出口から電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEの入口までは、第10及び第11配管R10,R11にて接続されている。第12及び第9配管R12,R9の間には第7電磁方向弁V7が設けられており、第10及び第11配管R10,R11の間には第8電磁方向弁V8が設けられている。また、第2搬送ポンプP2は第9配管R9上に設けられ、第5搬送ポンプP5は第11配管R11上に設けられている。
【0023】
熱動熱移送システムACSの温熱供給部HSAの出口から室内ユニットICの入口までは、第13〜第15配管R13〜R15にて接続されており、室内ユニットICの出口から熱動熱移送システムACSの温熱供給部HSAの入口までは、第16〜第18配管R16〜R18にて接続されている。また、第13及び第14配管R13,R14の間には第9電磁方向弁V9が設けられており、第14及び第15配管R14,R15の間には第10電磁方向弁V10が設けられている。さらに、第16及び第17配管R16,R17の間には第11電磁方向弁V11が設けられており、第17及び第18配管R17,R18の間には第12電磁方向弁V12が設けられている。また、第3搬送ポンプP3は第18配管R18上に設けられている。
【0024】
屋外ラジエータORの出口から電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEの入口までは、第31及び第32配管R31,R32にて接続されており、電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEの出口から屋外ラジエータORの入口までは、第33及び第34配管R33,R34にて接続されている。第31及び第32配管R31,R32の間には第13電磁方向弁V13が設けられており、第33及び第34配管R33,R34の間には第14電磁方向弁V14が設けられている。また、第4搬送ポンプP4は第32配管R32上に設けられている。
【0025】
第9電磁方向弁V9から第13電磁方向弁V13までは、第25及び第27配管R25,R27にて接続されており、第12電磁方向弁V12から第14電磁方向弁V14までは、第26及び第28配管R26,R28にて接続されている。第25及び第27配管R25,R27の間には第20電磁方向弁V20が設けられており、第26及び第28配管R26,R28の間には第19電磁方向弁V19が設けられている。
【0026】
第10電磁方向弁V10から第27配管R27の中間位置までは、第20、第22、及び第30配管R20,R22,R30にて接続されており、第11電磁方向弁V11から第28配管R28の中間位置までは、第19、第21、及び第29配管R19,R21,R29にて接続されている。また、第20及び第22配管R20,R22の間には第17電磁方向弁V17が設けられており、第22及び第30配管R22,R30の間には第15電磁方向弁V15が設けられている。さらに、第19及び第21配管R19,R21の間には第18電磁方向弁V18が設けられており、第21及び第29配管R21,R29の間には第16電磁方向弁V16が設けられている。
【0027】
第1電磁方向弁V1から第16電磁方向弁V16までは、第23配管R23にて接続されており、第6電磁方向弁V6から第15電磁方向弁V15までは、第24配管R24にて接続されている。第2電磁方向弁V2から第18電磁方向弁V18までは、第35配管R35にて接続されており、第5電磁方向弁V5から第17電磁方向弁V17までは、第40配管R40にて接続されている。第3電磁方向弁V3から第20電磁方向弁V20までは、第36及び第37配管R36,R37にて接続されており、第4電磁方向弁V4から第19電磁方向弁V19までは、第38及び第39配管R38,R39にて接続されている。第36及び第37配管R36,R37の間には、上記した第7電磁方向弁V7が設けられ、第38及び第39配管R38,R39の間には、上記した第8電磁方向弁V8が設けられている。
【0028】
複数の温度センサT1〜T3は、室温を検出するための室温センサT1と、第2エネルギーである熱媒温度を検出するためのエネルギー温度センサT2と、気温を検出するための大気温センサT3とから構成されている。また、図示を省略するが、エネルギー温度センサT2は、第1配管R1上に設けられており、第1配管R1を流れる熱媒温度を検出する。
【0029】
また、本実施形態においては複数の電磁方向弁V1〜V20を切り替えることによって、ハイブリッドソーラーパネルPVTの集熱パネルHCにて得られた熱エネルギー(第2エネルギー)を、電動熱移送システムEHP及び熱動熱移送システムACSの少なくとも一方に供給する13つの運転モード(少なくとも3つの運転モードの一例であって、後述の図3〜7,9,13,15,17〜21の運転モード)と、双方に供給しない4つの運転モード(後述の図8,12,14,16の運転モード)とを実行可能となっている。
【0030】
制御部Cは、選択制御部C1と、運転制御部C2とを備えている。選択制御部C1は、上記13つの運転モードと4つの運転モードのうちから、いずれか1つを自動選択するものである。ここで、選択制御部C1は、第2エネルギーの温度(エネルギー温度センサT2の検出結果)に応じて、いずれか1つの運転モードを自動選択する。より詳細に選択制御部C1は、室温センサT1、エネルギー温度センサT2及び大気温センサT3の検出結果と、供給される電力量(本実施形態では併給システムがハイブリッドソーラーパネルPVTであるため、パワーコントローラーPCにて検出される太陽電池SCの発電量)とに基づいて、いずれか1つを自動選択する。運転制御部C2は、選択制御部C1により自動選択された運転モードに応じた運転を実行する。すなわち、運転制御部C2は、各種電磁方向弁V1〜V20を制御すると共に、各搬送ポンプP1〜P5の運転等を制御することとなる。
【0031】
図2は、本実施形態に係る併用システム1における運転モードの自動選択処理を示すフローチャートであって、冷房運転時における自動選択処理を示している。まず、図2に示すように、選択制御部C1は、エネルギー温度センサT2からの信号に基づいて、熱媒供給温度が70度(第1温度)以上であるかを判断する(S1)。熱媒供給温度が70度以上であると判断した場合(S1:YES)、選択制御部C1は、熱動熱移送システムACSを運転し、冷熱供給部CSAの冷水を室内ユニットICに供給して冷房運転し、温熱供給部HSAの温水を屋外ラジエータORに供給して大気放熱する運転モード(後述の第1〜第3運転モード)を選択すべきと判断する。
【0032】
次いで、選択制御部C1は、冷房需要が熱動熱移送システムACSによる冷房能力以下であるかを判断する(S2)。ここで、冷房需要は、室温センサT1の検出温度と、制御部Cに設定される冷房目標温度(設定温度)との関係から、制御部Cによって算出される。
【0033】
冷房需要が熱動熱移送システムACSによる冷房能力以下であると判断した場合(S2:YES)、選択制御部C1は、第1運転モードを自動選択する(S3)。そして、図2に示す処理は終了する。
【0034】
図3は、第1運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図3に示すように、第1運転モードでは、集熱パネルHCにて加熱された熱媒が、熱動熱移送システムACSの駆動熱受領部DHPを介して集熱パネルHCに戻るように循環している。また、熱動熱移送システムACSの冷熱供給部CSAの冷水は室内ユニットICに供給されて冷房に利用され、温熱供給部HSAの温水は屋外ラジエータORに供給されて放熱される。この第1運転モードは、電力の消費が大変少ないため、空調に十分な熱媒温度と熱量が得られる場合に、太陽電池SCの発生電力を極力他の需要に回すことができる。
【0035】
図10は、冷房運転時の各運転モードにおける各部位の液体温度を示す図である。第1運転モードにおける各部位の液体温度は図10に示す通りである。
【0036】
再度図2を参照する。冷房需要が熱動熱移送システムACSによる冷房能力以下でないと判断した場合(S2:NO)、選択制御部C1は、大気温センサT3からの信号に基づいて、外気温度が25度(第2温度)以上であるかを判断する(S4)。外気温度が25度以上であると判断した場合(S4:YES)、選択制御部C1は、第2運転モードを自動選択する(S5)。そして、図2に示す処理は終了する。
【0037】
図4は、第2運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図4に示すように、第2運転モードでは、第1運転モードの状態に加えて、電動熱移送システムEHPが運転している。電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEの冷水は室内ユニットICに供給されて冷房に利用され、温熱供給部HSEの温水は熱動熱移送システムACSの駆動熱受領部DHPに供給される。この第2運転モードは、熱動熱移送システムACSが極力全負荷で運転し、それで空調需要を満たせない場合に必要な分だけ電動熱移送システムEHPを部分負荷で回し、太陽電池SCの発生電力を余らせる運転をすることができる。第2運転モードにおける各部位の液体温度は図10に示す通りである。
【0038】
再度図2を参照する。外気温度が25度以上でないと判断した場合(S4:NO)、選択制御部C1は、第3運転モードを自動選択する(S6)。そして、図2に示す処理は終了する。
【0039】
図5は、第3運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図5に示すように、第3運転モードでは、第1運転モードの状態に加えて、電動熱移送システムEHPが運転している。電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEの冷水は室内ユニットICに供給されて冷房に利用され、温熱供給部HSEの温水は屋外ラジエータORに供給されて大気との熱交換により放熱される。この第3運転モードは、外気温が高くない場合には電動熱移送システムEHPで副生する温水の温度を外気温を10度程度上回る程度に抑えることによって、図4に示す第2運転モードと比較し消費電力を抑えることができる。第3運転モードにおける各部位の液体温度は図10に示す通りである。
【0040】
再度図2を参照する。熱媒供給温度が70度以上でないと判断した場合(S1:NO)、選択制御部C1は、熱媒供給温度が60度(第3温度)以上であるかを判断する(S7)。熱媒供給温度が60度以上であると判断した場合(S7:YES)、選択制御部C1は、第4運転モードを自動選択する(S8)。そして、図2に示す処理は終了する。
【0041】
図6は、第4運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図6に示すように、第4運転モードでは、集熱パネルHCにて加熱された熱媒が、電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEを介して集熱パネルHCに戻るように循環している。また、電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEの温水は熱動熱移送システムACSの駆動熱受領部DHPに供給され、熱動熱移送システムACSの冷熱供給部CSAの冷水は室内ユニットICに供給されて冷房に利用される。熱動熱移送システムACSの温熱供給部HSAの温水は屋外ラジエータORに供給されて放熱される。この第4運転モードは、熱媒温度が上がりきらず、そのままでは熱動熱移送システムACSの駆動ができない時でも運転することができる。第4運転モードにおける各部位の液体温度は図10に示す通りである。
【0042】
再度図2を参照する。熱媒供給温度が60度以上でないと判断した場合(S7:NO)、選択制御部C1は、現在が朝の時間帯であるかを判断する(S9)。ここで、朝の時間帯とは、例えば午前5時から午前8時まで等である。現在が朝の時間帯であると判断した場合(S9:YES)、選択制御部C1は、第5運転モードを自動選択する(S10)。そして、図2に示す処理は終了する。
【0043】
図7は、第5運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図7に示すように、第5運転モードでは、電動熱移送システムEHPのみが運転しており、冷熱供給部CSEの冷水が室内ユニットICに供給されて冷房に利用されている。一方、電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEの温水は、ハイブリッドソーラーパネルPVT側に供給されている。すなわち、電動熱移送システムEHPの運転で副生する温水により、集熱パネルHC側が加熱される構成となっている。特に、後述の図24のように、電動熱移送システムEHPとハイブリッドソーラーパネルPVTとの間に貯湯槽HWTを備える場合には、第5運転モードの運転によって、貯湯槽HWT内の湯水を加熱することができる。すなわち、第5運転モードは、数時間後の熱媒温度が熱動熱移送システムACSの駆動ができる温度に達すると予想される朝、電動熱移送システムEHPによる冷房運転を行う時にはその排熱を大気に廃棄せずに貯蔵しておくことができる。なお、第5運転モードにおいては、第1搬送ポンプP1が他の運転モードと逆回転させられる。第5運転モードにおける各部位の液体温度は図10に示す通りである。
【0044】
ここで、第5運転モードにおいて、電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEの温水は、より高温まで温められて熱動熱移送システムACSの駆動熱受領部DHPに供給されてもよい。この場合、熱動熱移送システムACSの冷熱供給部CSAの冷水が室内ユニットICに供給されて冷房に利用され、温熱供給部HSAの温水がハイブリッドソーラーパネルPVT側に供給されることとなる。
【0045】
再度図2を参照する。現在が朝の時間帯でないと判断した場合(S9:NO)、選択制御部C1は、第6運転モードを自動選択する(S11)。そして、図2に示す処理は終了する。
【0046】
図8は、第6運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図8に示すように、第6運転モードでは、電動熱移送システムEHPのみが運転しており、冷熱供給部CSEの冷水が室内ユニットICに供給されて冷房に利用されている。一方、電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEの温水は、屋外ラジエータORに供給されて放熱される。この第6運転モードは、電動熱移送システムEHPのみの運転によって冷房を行いつつも、電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEの温水温度を図7に示す第5運転モードよりも昇温させずに電力消費を抑えることができる。第6運転モードにおける各部位の液体温度は図10に示す通りである。
【0047】
ここで、図2に示す例では、冷房需要が熱動熱移送システムACSによる冷房能力以下であると判断した場合(S2:YES)、選択制御部C1は、第1運転モードを自動選択しているが(S3)、これに代えて、以下の処理を行ってもよい。すなわち、冷房需要が熱動熱移送システムACSによる冷房能力以下であると判断した場合(S2:YES)、選択制御部C1は、外気温度が35度以上であるかを判断し、35度以上でない場合に第1運転モードを自動選択し、35度以上である場合に第7運転モードを自動選択してもよい。
【0048】
図9は、第7運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。なお、図9に示す併用システム1は、図1に示した構成に加えて、第21及び第22電磁方向弁V21,V22を更に備えている。図9に示すように、第7運転モードでは、集熱パネルHCにて加熱された熱媒が、熱動熱移送システムACSの駆動熱受領部DHPを介して集熱パネルHCに戻るように循環している。熱動熱移送システムACSの冷熱供給部CSAの冷水は室内ユニットICに供給されて冷房に利用される。また、熱動熱移送システムACSの温熱供給部HSAの温水は、電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEに供給される。電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEの温水は屋外ラジエータORに供給されて放熱される。第7運転モードは、熱動熱移送システムACSの温水温度が外気温より十分に高くなくそのままでは大気に熱を放出しづらい場合でも太陽熱を主体した冷房運転を行うことができる。この第7運転モードは、特に気温の高い地域で有効である。第7運転モードにおける各部位の液体温度は図10に示す通りである。
【0049】
図11は、本実施形態に係る併用システム1における運転モードの自動選択処理を示すフローチャートであって、暖房運転時における自動選択処理を示している。まず、図11に示すように、選択制御部C1は、エネルギー温度センサT2からの信号に基づいて、熱媒供給温度が40度(第4温度)以上であるかを判断する(S21)。熱媒供給温度が40度以上であると判断した場合(S21:YES)、暖房需要が供給熱量以下であるかを判断する(S22)。ここで、暖房需要は、室温センサT1の検出温度と、制御部Cに設定される暖房目標温度(設定温度)との関係から、制御部Cによって算出される。また、供給熱量は、エネルギー温度センサT2からの信号と、第1搬送ポンプP1の回転数から求められる流量とから、制御部Cによって算出される。
【0050】
暖房需要が供給熱量以下であると判断した場合(S22:YES)、選択制御部C1は、第8運転モードを自動選択する(S23)。そして、図11に示す処理は終了する。
【0051】
図12は、第8運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図12に示すように、第8運転モードでは、集熱パネルHCにて加熱された熱媒が、直接室内ユニットICに供給されて暖房に利用される。この第8運転モードは、電力の消費が大変少ないため、空調に十分な熱媒温度と熱量が得られる場合に、太陽電池SCの発生電力を極力他の需要に回すことができる。
【0052】
図22は、暖房運転時の各運転モードにおける各部位の液体温度を示す図である。第8運転モードにおける各部位の液体温度は図22に示す通りである。
【0053】
再度図11を参照する。暖房需要が供給熱量以下でないと判断した場合(S22:NO)、選択制御部C1は、エネルギー温度センサT2からの信号に基づいて、熱媒供給温度が70度以上であるかを判断する(S24)。熱媒供給温度が70度以上であると判断した場合(S24:YES)、選択制御部C1は、大気温センサT3からの信号に基づいて、外気温度が15度以上であるかを判断する(S25)。外気温度が15度以上であると判断した場合(S25:YES)、選択制御部C1は、第9運転モードを自動選択する(S26)。そして、図11に示す処理は終了する。
【0054】
図13は、第9運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図13に示すように、第9運転モードでは、集熱パネルHCにて加熱された熱媒が、熱動熱移送システムACSの駆動熱受領部DHPを介して集熱パネルHCに戻るように循環している。熱動熱移送システムACSの冷熱供給部CSAの冷水は屋外ラジエータORに供給されて大気との熱交換によって集熱される。温熱供給部HSAの温水は室内ユニットICに供給されて暖房に利用される。また、電動熱移送システムEHPが運転しており、電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEの冷水は屋外ラジエータORに供給されて大気との熱交換によって集熱される。電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEの温水は熱動熱移送システムACSの駆動熱受領部DHPに供給される。この第9運転モードは、大容量の暖房運転を行うことができる。第9運転モードにおける各部位の液体温度は図22に示す通りである。
【0055】
再度図11を参照する。熱媒供給温度が70度以上でないと判断した場合(S24:NO)、又は、外気温度が15度以上でないと判断した場合(S25:NO)、選択制御部C1は、第10運転モードを自動選択する(S27)。そして、図11に示す処理は終了する。
【0056】
図14は、第10運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図14に示すように、第10運転モードでは、集熱パネルHCにて加熱された熱媒が、直接室内ユニットICに供給されて暖房に利用される。さらに、電動熱移送システムEHPが運転しており、電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEの冷水は屋外ラジエータORに供給されて大気との熱交換によって集熱される。電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEの温水は室内ユニットICに供給されて暖房に利用される。第10運転モードは、外気温度が低く熱動熱移送システムACSが大気集熱できない場合でも比較的容量の大きな暖房運転を行うことができる。第10運転モードにおける各部位の液体温度は図22に示す通りである。
【0057】
再度図11を参照する。熱媒供給温度が40度以上でないと判断した場合(S21:NO)、選択制御部C1は、エネルギー温度センサT2及び大気温センサT3からの信号に基づいて、熱媒供給温度が外気温度以上であるかを判断する(S28)。熱媒供給温度が外気温度以上であると判断した場合(S28:YES)、選択制御部C1は、第11運転モードを自動選択する(S29)。そして、図11に示す処理は終了する。
【0058】
図15は、第11運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図15に示すように、第11運転モードでは、集熱パネルHCにて加熱された熱媒が、電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEを介して集熱パネルHCに戻るように循環している。電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEの温水は室内ユニットICに供給されて暖房に利用される。第11運転モードは、熱媒温度が上がりきらず、そのままでは直接暖房温水に利用することができない時でも省電力で暖房運転を行うことができる。第11運転モードにおける各部位の液体温度は図22に示す通りである。
【0059】
再度図11を参照する。熱媒供給温度が外気温度以上でないと判断した場合(S28:NO)、選択制御部C1は、第12運転モードを自動選択する(S30)。そして、図11に示す処理は終了する。
【0060】
図16は、第12運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図16に示すように、第12運転モードでは、電動熱移送システムEHPが運転しており、電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEの冷水は屋外ラジエータORに供給されて大気との熱交換によって集熱される。電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEの温水は室内ユニットICに供給されて暖房に利用される。第12運転モードは、外気温度が低く、且つ太陽熱が得られない時でも運転することができる。第12運転モードにおける各部位の液体温度は図22に示す通りである。
【0061】
ここで、図11に示す例においてステップS26では第9運転モードが選択されているが、暖房需要、発電量、及び余剰させたい電力量の少なくとも1つに応じて、第13運転モード又は第14運転モードが選択されてもよい。
【0062】
図17は、第13運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図17に示すように、第13運転モードでは、集熱パネルHCにて加熱された熱媒が、熱動熱移送システムACSの駆動熱受領部DHPを介して集熱パネルHCに戻るように循環している。熱動熱移送システムACSの冷熱供給部CSAの冷水は屋外ラジエータORに供給されて大気との熱交換によって集熱される。温熱供給部HSAの温水は室内ユニットICに供給されて暖房に利用される。第13運転モードは、電力の消費が大変少ないため、空調に十分な熱媒温度と熱量が得られ、かつ外気温がある程度あって熱動熱移送システムACSによる大気集熱が可能である場合に、大きな暖房用温水熱量を供給しながら、極力電力を余らせる運転ができる。第13運転モードにおける各部位の液体温度は図22に示す通りである。
【0063】
図18は、第14運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図18に示すように、第14運転モードでは、第13運転モードの状態に加えて、電動熱移送システムEHPが運転している。電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEの冷水は屋外ラジエータORに供給されて大気との熱交換によって集熱され、温熱供給部HSEの温水は室内ユニットICに供給されて暖房に利用される。この第14運転モードは、第13運転モードよりも電力消費量が大きくなるが第9運転モードよりも電力消費を抑えることができ、空調に十分な熱媒温度と熱量が得られ、かつ外気温がある程度あって熱動熱移送システムACSによる大気集熱が可能である場合に、第13運転モードよりも大きな暖房用温水熱量を供給しながら、第9運転モードよりも電力を余らせる運転をすることができる。なお、第14運転モードにおいては、第4搬送ポンプP4が他の運転モードと逆回転させられる。また、第14運転モードにおける各部位の液体温度は図22に示す通りである。
【0064】
さらに、図11に示す例においてステップS27では第10運転モードが選択されているが、熱媒供給温度が70度以上であって(S24:YES)、外気温度が15度以上でない場合(S25:NO)、第10運転モードに代えて、第15運転モードが選択されてもよい。
【0065】
図19は、第15運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図19に示すように、第15運転モードでは、集熱パネルHCにて加熱された熱媒が、熱動熱移送システムACSの駆動熱受領部DHPを介して集熱パネルHCに戻るように循環している。熱動熱移送システムACSの温熱供給部HSAの温水は室内ユニットICに供給されて暖房に利用され、熱動熱移送システムACSの冷熱供給部CSAの冷水は電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEに供給される。電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEの冷水は屋外ラジエータORに供給されて大気との熱交換によって集熱される。第15運転モードは、外気温が低く熱動熱移送システムACSによる大気集熱が直接的には不可能である場合にも、極力電動熱移送システムEHPに負荷をかけないまま、暖房用温水熱量を供給することができる。第15運転モードにおける各部位の液体温度は図22に示す通りである。
【0066】
さらに、図11に示す例においてステップS27では第10運転モードが選択されているが、熱媒供給温度が70度以上でない場合(S24:NO)において、暖房需要が所定値よりも低い場合に第10運転モードが選択され、暖房需要が所定値以上である場合に第16運転モードが選択されてもよい。
【0067】
図20は、第16運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図20に示すように、第16運転モードでは、集熱パネルHCにて加熱された熱媒が、電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEを介して集熱パネルHCに戻るように循環している。電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEの温水は、熱動熱移送システムACSの駆動熱受領部DHPに供給される。熱動熱移送システムACSの冷熱供給部CSAの冷水は屋外ラジエータORに供給されて大気との熱交換によって集熱され、温熱供給部HSAの温水は直接室内ユニットICに供給されて暖房に利用される。第16運転モードは、外気温度が低く熱動熱移送システムACSが大気集熱できない場合に暖房運転できると共に、第10運転モードよりも大容量運転を行うことができる。第16運転モードにおける各部位の液体温度は図22に示す通りである。
【0068】
さらに、図11に示す例においてステップS29では第11運転モードが選択されているが、発電量が多い場合や余剰させたい電力量が少ない場合や暖房需要が第11運転モードよりも高い場合には、第17運転モードが選択されてもよい。
【0069】
図21は、第17運転モードにおける熱媒、温水及び冷水の流れを示す状態図である。図21に示すように、第17運転モードでは、集熱パネルHCにて加熱された熱媒が、熱動熱移送システムACSの冷熱供給部CSAを介して集熱パネルHCに戻るように循環している。電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEの冷水は屋外ラジエータORに供給されて大気との熱交換によって集熱され、温熱供給部HSEの温水は熱動熱移送システムACSの駆動熱受領部DHPに供給される。熱動熱移送システムACSの温熱供給部HSAの温水は直接室内ユニットICに供給されて暖房に利用される。第17運転モードは、熱媒温度が上がりきらず、そのままでは直接暖房温水に利用することができない時でも比較的大容量の暖房運転を行うことができる。第17運転モードにおける各部位の液体温度は図22に示す通りである。
【0070】
更には、上記した第2及び第3運転モードにおいて結露対策の観点から、室内ユニットICを以下のように構成してもよい。図23は、室内ユニットICの変形例を示す図である。図23に示すように、変形例に係る室内ユニットICは、電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEの冷水を冷房に利用する第1冷房部IC1と、熱動熱移送システムACSの冷熱供給部CSAの冷水を冷房に利用する第2冷房部IC2とを有している。すなわち、電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEと、熱動熱移送システムACSの冷熱供給部CSAとが異なる配管によって別々に第1冷房部IC1と第2冷房部IC2とに接続され、個別に冷水が供給されるようになっている。加えて、この場合には、第2及び第3運転モードのいずれか1つの運転モードにおいて、第1冷房部IC1及び第2冷房部IC2へ供給される冷水温度を5度差以上とするように、電動熱移送システムEHPと熱動熱移送システムACSとを駆動する。図23に示す例では、第1冷房部IC1へ供給される冷水温度を5度とし、第2冷房部IC2へ供給される冷水温度を15度とし、10度差を設けるようにしている。これにより、より温度の低い第1冷房部IC1において集中的に結露が発生する。このため、第1冷房部IC1に対して、結露水を受け取り破棄するための機構を設ければよく、結露対策の容易化を図ることができる。
【0071】
このようにして、本実施形態に係る併用システム1によれば、ハイブリッドソーラーパネルPVTからの温水を電動熱移送システムEHP及び熱動熱移送システムACSの少なくとも一方に供給する13つの運転モードのうち、いずれか1つをハイブリッドソーラーパネルPVTからの温水温度に応じて自動選択する。このため、ハイブリッドソーラーパネルPVTからの温水温度に応じた13つの運転モードから、適切なものが選択可能となり、電力又は動力と、熱エネルギーとを供給することができるハイブリッドソーラーパネルPVTを備える場合において、供給される熱エネルギーの温度変動に応じた制御を実行することができる。
【0072】
また、13つの運転モードのうち(少なくとも1つ)は、電動熱移送システムEHPと熱動熱移送システムACSとの間において、熱エネルギーの授受を行うモードであるため、例えば電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEにて生成した熱エネルギーを熱動熱移送システムACSの駆動熱として供給したり、熱動熱移送システムACSにおいて冷水を得る過程で生成した温水を電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEに供給したりすることができ、電動及び熱動熱移送システムEHP,ACSの双方を利用した効果的な運転を行うことができる。
【0073】
また、電動熱移送システムEHPの冷熱供給部CSEに冷水が流れる場合の接続先、電動熱移送システムEHPの温熱供給部HSEに冷水が流れる場合の接続先、熱動熱移送システムACSの冷熱供給部CSAに冷水が流れる場合の接続先、及び、熱動熱移送システムACSの温熱供給部HSAに冷水が流れる場合の接続先を様々とでき、様々な運転モードを実現することができる。
【0074】
さらに、室内ユニットICが第1及び第2冷房部IC1,IC2を備える場合に、それぞれの冷水温度を5度差以上とするため、冷房時に発生する結露は第1及び第2冷房部IC1,IC2のうち低温側に生じることとなり、低温側のみに結露水を室外等に破棄する機構を設ければよく、結露対策の容易化を図ることができる。
【0075】
さらに、室温センサT1、エネルギー温度センサT2、及び大気温センサT3の検出結果と、ハイブリッドソーラーパネルPVTにより生成させられた電力量とに基づいて、13つの運転モードから、いずれか1つを自動選択するため、第2エネルギーの温度のみならず、室温目標となる設定温度と室温との差、大気を利用した集熱や放熱の効率、及び、余剰とする電力量などを考慮して運転モードを選択することができ、より効果的な運転に寄与することができる。
【0076】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。さらに、可能な範囲で公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0077】
図24は、変形例に係る併用システム1を示す構成図である。図24に示すように、併用システム1は、貯湯槽HWTを更に備えており、集熱パネルHCにて加熱された熱媒によって貯湯槽HWT内の湯水を加熱する構成となっている。また、変形例において第1配管R1の端部は貯湯槽HWTの上部に接続されていると共に、第8配管R8の端部は貯湯槽HWTの下部に接続されている。第1配管R1には、貯湯槽HWT上部の温水が供給される。このような構成であっても、直接集熱パネルHCから温水供給される場合と同様に、貯湯槽HWTから温水温度も変動するため、上記と同様に各運転モードを実行することができる。
【0078】
さらに、上記実施形態において各温度は上記した数値に限らず、適宜変更可能であることはいうまでもない。
【0079】
加えて、上記実施形態では、併給システムからの熱エネルギーの供給が熱媒(不凍液)により行われているが、これに限らず、併給システムと熱動熱移送システムACSとが一体となって熱エネルギーが再生器の溶液を直接加熱する構成であってもよいし、熱エネルギーを伝達する熱導体が再生器等まで延びていてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 :併用システム
PVT :ハイブリッドソーラーパネル(併給システム)
SC :太陽電池
HC :集熱パネル
PC :パワーコントローラー
SWBD :配電盤
EHP :電動熱移送システム(第1熱移送システム)
M :モータ
CSE :冷熱供給部
HSE :温熱供給部
ACS :熱動熱移送システム(第2熱移送システム)
DHP :駆動熱受領部
CSA :冷熱供給部
HSA :温熱供給部
IC :室内ユニット
IC1 :第1冷房部
IC2 :第2冷房部
OR :屋外ラジエータ
C :制御部
C1 :選択制御部
C2 :運転制御部
P1〜P5 :搬送ポンプ
R1〜R40 :配管
V1〜V22 :電磁方向弁
T1 :室温センサ
T2 :エネルギー温度センサ
T3 :大気温センサ
HWT :貯湯槽
【要約】
【課題】電力又は動力と、熱エネルギーとを供給することができる併給システムを備える場合において、供給される熱エネルギーの温度変動に応じた制御を実行することが可能な併用システムを提供する。
【解決手段】併用システム1は、ハイブリッドソーラーパネルPVTと、電動熱移送システムEHPと、熱動熱移送システムACSと、選択制御部C1とを備えている。電動熱移送システムEHPはハイブリッドソーラーパネルPVTから電気の供給を受けて駆動し、冷熱供給部CSEから温熱供給部HSEへ熱移送させる。熱動熱移送システムACSは駆動熱を受領して冷熱供給部CSAから温熱供給部HSAへ熱移送させる。選択制御部C1は、ハイブリッドソーラーパネルPVTからの熱媒を電動熱移送システムEHP及び熱動熱移送システムACSの少なくとも一方に供給する13つの運転モードのうち、いずれか1つを熱媒の温度に応じて自動選択する。
【選択図】図1
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