【文献】
J. Exp. Med.,2011年 3月 7日,Vol.208,No.3,p.577-592
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記対象が、乾癬、皮膚炎、アトピー性皮膚炎;全身性強皮症、硬化症;クローン病,潰瘍性大腸炎;呼吸窮迫症候群、成人呼吸窮迫症候群(ARDS);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;湿疹、喘息、アテローム性動脈硬化症;白血球接着不全症;リウマチ性関節炎;全身性エリテマトーデス(SLE);糖尿病;多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症糖尿病;結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症および脈管炎;悪性貧血(アジソン病);中枢神経系(CNS)炎症性障害、多臓器損傷症候群;溶血性貧血、クリオグロブリン血症またはクームス陽性貧血;重症筋無力症;抗原抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート・イートン筋無力症候群;水疱性類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫多腺性内分泌障害;ライター病;スティッフマン症候群;ベーチェット病;巨細胞性動脈炎;免疫複合体性腎炎;IgA腎症;IgM多発性ニューロパシー;免疫性血小板減少性紫斑病(ITP);ならびに自己免疫性血小板減少症から選択される症状を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
前記対象が、リウマチ性関節炎、急性関節炎、痛風性関節炎、急性痛風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変性性関節炎、感染性関節炎、ライム病関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、脊椎関節炎、および若年発症リウマチ性関節炎、変形性関節炎、関節炎クロニカプログレディエンテ、変形性関節炎、原発性慢性多発性関節炎、反応性関節炎、および強直性脊椎炎、炎症性過剰増殖性皮膚疾患、プラーク乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬、および爪の乾癬等の乾癬、接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、疱疹状皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎を含む皮膚炎、X連鎖高IgM症候群、蕁麻疹、慢性アレルギー性蕁麻疹、慢性特発性蕁麻疹、慢性自己免疫性蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性表皮剥離症、強皮症、全身性強皮症、硬化症、全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、脊髄−視覚MS、原発性進行性MS(PPMS)、再発寛解型MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、播種性硬化症、および失調性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、大腸炎、潰瘍性大腸炎、潰瘍性大腸炎(colitis ulcerosa)、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、ポリープ性大腸炎(colitis polyposa)、壊死性腸炎、貫壁性大腸炎、自己免疫性炎症性腸疾患、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、上強膜炎、呼吸窮迫症候群、成人もしくは急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、ブドウ膜の全てもしくは一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液障害、リウマチ様脊椎炎、突発性難聴、IgE媒介性疾患、アナフィラキシー、アレルギー性鼻炎、アトピー性鼻炎、脳炎、ラスムッセン脳炎、辺縁系および/または脳幹脳炎、ブドウ膜炎、前部ブドウ膜炎、急性前部ブドウ膜炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、自己免疫性ブドウ膜炎、糸球体腎炎(GN)、特発性膜性GNまたは特発性膜性腎症、膜性または膜性増殖性GN(MPGN)、急速進行性GN、アレルギー状態、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)または全身性ループスエリテマトーデス(systemic lupus erythematodes)、皮膚SLE、亜急性皮膚紅斑性狼瘡、新生児ループス症候群(NLE)、播種性紅斑性狼瘡、ループス(ループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、腎外性ループス、腎外ループス、円板状ループス、脱毛性ループスを含む)、若年発症糖尿病、小児インスリン依存性糖尿病(IDDM)、成人発症糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性尿崩症、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅発性過敏症に関連した免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、リンパ腫様肉芽腫症、ヴェグナー肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎、脈管炎関連症状、側頭動脈炎、再生不良性貧血、自己免疫性再生不良性貧血、クームス陽性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む溶血性貧血もしくは免疫性溶血性貧血、悪性貧血(anemia peraiciosa)、アジソン病、赤芽球貧血、または赤芽球癆(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出を伴う疾患、CNS炎症性障害、敗血症、外傷、または出血、抗原抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、類天疱瘡、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター病もしくは症候群、免疫複合体性腎炎、抗体媒介性腎炎、視神経脊髄炎、多発性ニューロパシー、IgM多発性ニューロパシーまたはIgM媒介性ニューロパシー等の慢性ニューロパシー、血小板減少症、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性精巣炎および卵巣炎、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎);亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、自己免疫性多腺性症候群、腫瘍随伴症候群、ランバート・イートン筋無力症候群、イートン・ランバート症候群、スティッフマンもしくはスティッフパーソン症候群、脳脊髄炎、アレルギー性脳脊髄炎、実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、胸腺腫関連重症筋無力症、小脳変性症、神経性筋緊張病、オプソクローヌスもしくはオプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、感覚性ニューロパシー、多巣性運動ニューロパシー、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、慢性肝炎、ルポイド肝炎、巨細胞性肝炎、肝炎、リンパ性間質性肺炎、閉塞性細気管支炎、ギラン・バレー症候群、ベルガー病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚病、原発性胆汁性肝硬変症、肺線維症、自己免疫性腸疾患症候群、セリアック病(Celiac disease)、セリアック病(Coeliac disease)、セリアックスプルー(グルテン性腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症、冠動脈疾患、自己免疫性耳疾患、オプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、多発性軟骨炎、肺胞タンパク症、アミロイドーシス、強膜炎、非癌性リンパ球増加症、原発性リンパ球増加症、末梢性ニューロパシー;腫瘍随伴症候群、癲癇、片頭痛、不整脈、筋障害等のチャネル病、炎症性ミオパシー、巣状分節状糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼病、網膜ブドウ膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝障害、線維筋痛、多発性内分泌不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮症、初老期認知症、自己免疫性脱髄疾患等の脱髄疾患、糖尿病性腎症、ドレスラー症候群、円形脱毛症、クレスト症候群、混合結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、反復性流産、農夫肺、多形性紅斑、心術後症候群、クッシング症候群、鳥飼育者肺、アレルギー性肉芽腫性血管炎、良性リンパ球性血管炎;アルポート症候群、アレルギー性肺胞炎および線維化性肺胞炎等の肺胞炎、間質性肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、キパノソミアシス、住血吸虫症、回虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維症、びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シャルマン症候群、フェルティー症候群、フィラリア症、慢性毛様体炎、異時性毛様体炎、虹彩毛様体炎、またはフックス毛様体炎等の毛様体炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、エコーウイルス感染、心筋ミオパシー、アルツハイマー病、パルボウイルス感染、風疹ウイルス感染、ワクチン接種後症候群、先天性風疹感染、エプスタイン・バーウイルス感染、流行性耳下腺炎、エヴァン症候群、自己免疫性性腺機能不全、シデナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓性血管炎、甲状腺機能亢進症、脊髄癆、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、内分泌性眼障害、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎炎症候群、微小変化型腎症、良性家族性および虚血再灌流損傷、網膜自己免疫、関節炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害、アスペルミオジェネース(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、腸炎アレルギー、癩性結節性紅斑、特発性顔面麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ性熱、ハンマンリッチ病、感覚器性聴力損失、血色素尿症発作、性腺機能低下症;限局性回腸炎、白血球減少症、感染性単核球症、横断性脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、ネフローゼ、交感神経性眼炎、肉芽種性睾丸炎、膵炎、急性多発性神経根炎、壊疽性膿皮症、ケルヴァン甲状腺炎、後天性脾臓萎縮症、抗精子抗体に起因する不妊症、非悪性胸腺腫、白斑、SCIDおよびエプスタイン・バーウイルス関連疾患、後天性免疫不全症候群(AIDS)、リーシュマニア等の寄生虫症、毒素性ショック症候群、食中毒、T細胞浸潤を伴う疾患、白血球接着不全症、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅発性過敏症に関連した免疫応答、白血球漏出を伴う疾患、多臓器損傷症候群、抗原抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫性多内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌不全、末梢性ニューロパシー、I型自己免疫性多腺性症候群、成人発症特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、完全脱毛症、拡張型心筋ミオパシー、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性もしくは非化膿性副鼻腔炎、急性もしくは慢性副鼻腔炎、篩骨、前頭、上顎、または蝶形骨副鼻腔炎、好酸球増加症、肺浸潤好酸球増加症、好酸球増加症−筋肉痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸球性肺炎、熱帯性肺好酸球増加症等の好酸球関連障害、気管支肺アスペルギルス症、アスペルギルス腫、または好酸球を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、血清反応陰性脊椎関節炎、多内分泌自己免疫疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性粘膜皮膚カンジダ症、ブルートン症候群、一過性乳児低ガンマグロブリン血症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症、膠原病に関連した自己免疫障害、リウマチ、神経系疾患、虚血性再灌流障害、血圧応答の減退、血管機能不全、血管拡張、組織損傷、心血管虚血、痛覚過敏症、脳虚血、および血管新生を伴う疾患、アレルギー性過敏症障害、糸球体腎炎、再灌流傷害、心筋または他の組織の再灌流傷害、急性炎症性成分を伴う皮膚病、急性化膿性髄膜炎または他の中枢神経系炎症性障害、眼および眼窩炎症性障害;顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘導毒性、急性重症炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺線維症、糖尿病性網膜症、糖尿病性大動脈障害、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、ならびに子宮内膜症から選択される症状を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0063】
*定義
〔0091〕 本発明をより詳細に説明する前に、以下の定義が提供される。
〔0092〕 本明細書において使用される「免疫細胞」という用語は、造血源であり、かつ免疫応答において役割を果たす細胞を含む。免疫細胞には、B細胞およびT細胞等のリンパ球;天然キラー細胞;ならびに単球、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、好塩基球、および顆粒球等の骨髄性細胞が含まれる。
【0064】
〔0093〕 本明細書において使用される「T細胞」という用語は、CD4+T細胞およびCD8+T細胞を含む。T細胞という用語はまた、Tヘルパー1型T細胞およびTヘルパー2型T細胞の両方を含む。
【0065】
〔0094〕 「抗原提示細胞」という用語は、プロフェッショナル抗原提示細胞(例えば、Bリンパ球、単球、樹枝状細胞、およびランゲルハンス細胞)ならびに他の抗原提示細胞(例えば、ケラチノサイト、内皮細胞、星状膠細胞、線維芽細胞、および乏突起膠
細胞)を含む。
【0066】
〔0095〕 「抗原」という用語は、本明細書において、抗原への免疫応答の調節が治療的に所望され得る抗原を指す。関心の特定の抗原への所望の強化された免疫応答の場合において、かかる抗原は、誘発され得る保護的免疫応答が例示的な感染性疾患抗原を含むが、それに限定されない。例えば、考慮対象のHIV由来の抗原は、タンパク質gag、env、pol、tat、rev、nef、逆転写酵素、および他のHIV成分である。ヒト乳頭腫ウイルス由来のE6およびE7タンパク質も考慮の対象内である。さらに、単純ヘルペスウイルス由来のEBNA1抗原も考慮の対象内である。考慮の対象となる他のウイルス抗原は、B型肝炎ウイルスのS、M、およびLタンパク質、B型肝炎ウイルスのpre−S抗原、および他の肝炎、例えば、A型、B型、およびC型肝炎、C型肝炎ウイルスRNA等のウイルス成分等の肝炎ウイルス抗原;血球凝集素、ノイラミニダーゼ、核タンパク質、M2、および他のインフルエンザウイルス成分等のインフルエンザウイルス抗原;麻疹ウイルス融合タンパク質および他の麻疹ウイルス成分等の麻疹ウイルス抗原;タンパク質E1およびE2および他の風疹ウイルス成分等の風疹ウイルス抗原;VP7scおよび他のロタウイルス成分等のロタウイルス抗原;エンベロープ糖タンパク質Bおよび他のサイトメガロウイルス抗原成分等のサイトメガロウイルス抗原;RSV融合タンパク質、M2タンパク質、および他の呼吸器合胞体ウイルス抗原成分等の呼吸器合胞体ウイルス抗原;前初期タンパク質、糖タンパク質D、および他の単純ヘルペスウイルス抗原成分等の単純ヘルペスウイルス抗原;gpl、gpll、および他の水疱瘡ウイルス抗原成分等の水疱瘡ウイルス抗原;タンパク質E、M−E、M−E−NS1、NS1、NS1−NS2A、80%E、および他の日本脳炎ウイルス抗原成分等の日本脳炎ウイルス抗原;狂犬病糖タンパク質、狂犬病核タンパク質、および他の狂犬病ウイルス抗原成分等の狂犬病ウイルス抗原;ウエストナイルウイルスprMおよびEタンパク質;ならびにエボラエンベロープタンパク質である。ウイルス抗原のさらなる例については、Fundamental Virology,Second Edition,eds.Knipe,D.M.and,Howley P.M.(Lippincott Williams &
Wilkins,New York,2001)を参照されたい。加えて、細菌抗原も開示される。本発明の組成物および方法において使用され得る細菌抗原には、百日咳毒素、線維状赤血球凝集素、パータクチン、FIM2、FIM3、アデニル酸シクラーゼ、および他の百日咳細菌抗原成分等の百日咳細菌抗原;ジフテリア毒素またはトキソイドおよび他のジフテリア細菌抗原成分等のジフテリア細菌抗原;破傷風毒素またはトキソイドおよび他の破傷風細菌抗原成分等の破傷風細菌抗原;Mタンパク質および他の連鎖球菌抗原成分等の連鎖球菌抗原;IsdA、IsdB、SdrD、およびSdrE等のブドウ球菌抗原;リポ多糖類、フラジェリン、および他のグラム陰性細菌抗原成分等のグラム陰性桿菌抗原;ミコール酸、熱ショックタンパク質65(HSP65)、30kDa主要分泌タンパク質、抗原85A、ESAT−6、および他のマイコバクテリア抗原成分等のヒト型結核菌抗原;ヘリコバクターピロリ菌抗原成分;肺炎球菌溶血素、肺炎球菌莢膜多糖類および他の肺炎球菌抗原成分等の肺炎球菌抗原;莢膜多糖類および他のインフルエンザ菌抗原成分等のインフルエンザ菌抗原;炭疽菌防御抗原、炭疽菌致死因子、および他の炭疽菌抗原成分等の炭疽菌抗原;ペスト菌由来のF1およびVタンパク質;rompおよび他のリケッチア細菌抗原成分等のリケッチア細菌抗原が含まれるが、それらに限定されない。本明細書に記載の細菌抗原には、任意の他の細菌、マイコバクテリア、マイコプラズマ、リケッチア、またはクラミジア抗原も含まれる。原虫および他の寄生虫抗原の例には、メロゾイト表面抗原、種虫表面抗原、スポロゾイト周囲抗原、生殖母細胞/配偶子表面抗原、血液期抗原pf 1 55/RESA、および他のマラリア原虫抗原成分等の熱帯熱マラリア原虫抗原;SAG−1、p30および他のトキソプラズマ抗原成分等のトキソプラズマ抗原;グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、パラミオシン、および他の住血吸虫抗原成分等の住血吸虫抗原;リーシュマニア主要抗原および他のリーシュマニア抗原等のgp63、リポホスホグリカンおよびその関連タンパク質、ならびに他のリーシュマニア
抗原成分;ならびに75〜77kDa抗原、56kDa抗原および他のトリパノソーマ抗原成分等のクルーズトリパノソーマ抗原が挙げられるが、それらに限定されない。真菌抗原の例には、カンジダ種、アスペルギルス種、ブラストミセス種、ヒストプラスマ種、コクシジオイデス種、癜風菌および他の種、エクソフィアラウェルネッキイ(Exophiala werneckii)および他の種、黒色砂毛症菌および他の種、トリコスポルムベイゲリイ(Trichosporum beigelii)および他の種、小胞子菌種、白癬菌種、表皮菌種、スポロトリックスシェンキイおよび他の種、フォンセケアペドロソイ(Fonsecaea pedrosoi)および他の種、ワンゲリアデルマティティディス(Wangiella dermatitidis)および他の種、シュードアレシェリアボイジイおよび他の種、マズレラグリセアおよび他の種、クモノスカビ種、アブシディア種、およびケカビ種由来の抗原が挙げられるが、それらに限定されない。プリオン病抗原の例には、PrP、ベータアミロイド、および他のプリオン関連タンパク質が挙げられる。
【0067】
〔0123〕 上述の感染体および寄生体に加えて、非感染体に対する望ましい免疫原性強化の別の分野は、癌抗原を発現する細胞が身体から望ましく排除される癌を含むが、それに限定されない異常増殖性疾患の分野である。本発明の組成物および方法において使用され得る腫瘍抗原には、前立腺特異抗原(PSA)、乳房、膀胱、卵巣、精巣、黒色腫、テロメラーゼ;P糖タンパク質等の多剤耐性タンパク質;MAGE−1、アルファフェトプロテイン、癌胎児性抗原、変異体p53、乳頭腫ウイルス抗原、ガングリオシド、または黒色腫もしくは他の腫瘍細胞の他の炭水化物含有成分が含まれるが、それらに限定されない。任意の型の腫瘍細胞由来の抗原が、本明細書に記載の組成物および方法において使用され得ることが、本発明によって企図される。抗原は、癌細胞であり得るか、または膜タンパク質等の癌細胞から単離される免疫原性物質であり得る。普遍的なスルビビンおよびテロメラーゼ抗原ならびに精巣癌抗原のMAGEファミリーが含まれる。自己免疫に関与することが示されており、かつ本発明の方法において、耐性を誘導するために使用され得る抗原には、多発性硬化症のミエリン塩基性タンパク質、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質、およびプロテオリピドタンパク質、ならびにリウマチ性関節炎のCIIコラーゲンタンパク質が含まれるが、それらに限定されない。
【0068】
〔0124〕 抗原は、非限定的な例として、強力なT細胞媒介性免疫(樹枝状細胞を介して)を動員するワクチンが必要とされる、HZV−1、EBV、HBV、インフルエンザウイルス、SARSウイルス、ポックスウイルス、マラリア、またはHSV等の感染体の一部分であり得る。
【0069】
〔0125〕 「腫瘍」という用語は、組織新生物の形態、具体的には、多少脱阻害される内因性組織の自発的、自主的、および不可逆的な過剰成長の形態の少なくとも1つの細胞または細胞集団を表し、その成長は、原則として、特定の細胞および組織機能の多少顕著な喪失と関連付けられる。この細胞または細胞集団は、その成長に関して、それ自体で、または宿主生物の制御機構によって効果的に阻害されず、例えば、黒色腫もしくは癌腫である。腫瘍抗原は、悪性細胞自体の中または上に存在する抗原のみならず、内皮細胞および他の血管成分を含む腫瘍の間質支持組織上に存在する抗原も含む。
【0070】
〔0096〕 本明細書において使用される「免疫応答」という用語は、T細胞共刺激の調節によって影響されるT細胞媒介性および/またはB細胞媒介性免疫応答を含む。例示的な免疫応答には、B細胞応答(例えば、抗体産生)、T細胞応答(例えば、サイトカイン産生および細胞傷害性)、ならびにサイトカイン応答細胞、例えば、マクロファージの活性化が含まれる。本明細書において使用される、免疫応答に関連した「下方調節」という用語が、任意の1つ以上の免疫応答の減少を含む一方で、免疫応答に関連した「上方調節」という用語は、任意の1つ以上の免疫応答の増加を含む。1つの種類の免疫応答の
上方調節が、別の種類の免疫応答の対応する下方調節につながり得ることが理解される。例えば、ある特定のサイトカイン(例えば、IL−10)の産生の上方調節は、細胞免疫反応の下方調節につながり得る。
【0071】
〔0097〕 本明細書において使用される「共刺激受容体」という用語は、共刺激シグナルを、免疫細胞、例えば、CD28またはICOSに伝送する受容体を含む。本明細書において使用される「阻害性受容体」という用語は、負のシグナルを免疫細胞に伝送する受容体を含む。
【0072】
〔0098〕 本明細書において使用される、活性化免疫細胞に関連した「共刺激する」という用語は、増殖またはエフェクター機能を誘導する第2の非活性化受容体媒介性シグナル(「共刺激シグナル」)を提供する共刺激分子の能力を含む。例えば、共刺激シグナルは、例えば、T細胞−受容体媒介性シグナルを受容したT細胞において、サイトカイン分泌をもたらし得る。例えば、活性化受容体を介して細胞受容体媒介性シグナルを受容した免疫細胞は、本明細書において、「活性化免疫細胞」と称される。
【0073】
〔0099〕 阻害性受容体によって変換される阻害シグナルは、共刺激受容体(CD28またはICOS等)が、免疫細胞上に存在しない場合でも発生し得、したがって、単に共刺激分子の結合に対する阻害性受容体と共刺激受容体との間の競合に左右されるものではない(Fallarino et al.(1998)J.Exp.Med.188:205)。免疫細胞への阻害シグナルの伝送は、免疫細胞における無応答性、アネルギー、またはプログラム化された細胞死をもたらし得る。好ましくは、阻害シグナルの伝送は、アポトーシスが関与しない機構を介して作動する。
【0074】
〔00100〕 本明細書において使用される「アポトーシス」という用語は、当分野で既知の技術を用いて特徴化することができるプログラム化された細胞死を含む。アポトーシス細胞死は、例えば、細胞断片化に至る細胞収縮、膜ブレブ形成、およびクロマチン凝縮を特徴とし得る。アポトーシスを経験する細胞は、特徴のあるパターンのヌクレオソーム間DNA開裂も示す。
【0075】
〔00101〕 本明細書において「自己免疫」または「自己免疫疾患もしくは状態」という用語、本明細書において「自己免疫疾患」という用語は、個人自身の組織に起因し、かつそれに対する疾患もしくは障害、またはその同時分離もしくは顕在化、あるいはそれからもたらされる状態である。自己免疫疾患もしくは障害の例には、関節炎(急性関節炎、慢性リウマチ性関節炎、痛風性関節炎、急性痛風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変性性関節炎、感染性関節炎、ライム病関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、脊椎関節炎、および若年発症リウマチ性関節炎、変形性関節炎、関節炎クロニカプログレディエンテ、変形性関節炎、原発性慢性多発性関節炎、反応性関節炎、ならびに強直性脊椎炎等のリウマチ性関節炎)、炎症性過剰増殖性皮膚疾患、尋常性乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬、および爪の乾癬等の乾癬、接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、疱疹状皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎を含む皮膚炎、X連鎖高IgM症候群、慢性自己免疫性蕁麻疹を含む慢性アレルギー性蕁麻疹および慢性特発性蕁麻疹等の蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性表皮剥離症、強皮症(を含む全身性強皮症)、全身性硬化症等の硬化症、脊髄−視覚MS、原発性進行性MS(PPMS)、および再発寛解型MS(RRMS)等の多発性硬化症(MS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、播種性硬化症、および失調性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)(例えば、クローン病、自己免疫媒介性胃腸疾患、潰瘍性大腸炎、潰瘍性大腸炎(colitis ulcerosa)、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、ポリープ性大腸炎(colitis polyposa)、壊死性腸炎、および貫壁性大腸炎等の大腸炎、ならびに自己免疫性炎症性腸疾患)、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発
性硬化性胆管炎、上強膜炎、成人もしくは急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む呼吸窮迫症候群、髄膜炎、ブドウ膜の全てもしくは一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液障害、リウマチ様脊椎炎、突発性難聴、アナフィラキシーならびにアレルギー性およびアトピー性鼻炎等のIgE媒介性疾患、ラスムッセン脳炎ならびに辺縁系および/または脳幹脳炎等の脳炎、前部ブドウ膜炎、急性前部ブドウ膜炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、または自己免疫性ブドウ膜炎等のブドウ膜炎、原発性GN、免疫媒介性GN、膜性GN(膜性腎症)、特発性膜性GNまたは特発性膜性腎症、I型およびII型を含む膜性または膜性増殖性GN(MPGN)、および急速進行性GN等の慢性もしくは急性糸球体腎炎等のネフローゼ症候群を伴う糸球体腎炎(GN)および伴わない糸球体腎炎(GN)、アレルギー状態、アレルギー反応、アレルギー性もしくはアトピー性湿疹を含む湿疹、気管支喘息(asthma bronchiale)、気管支喘息(bronchial asthma)、および自己免疫喘息等の喘息、T細胞浸潤を伴う疾患および慢性炎症性応答、慢性肺炎症性疾患、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、皮膚SLE等の全身性エリテマトーデス(SLE)または全身性ループスエリテマトーデス、亜急性皮膚紅斑性狼瘡、新生児ループス症候群(NLE)、播種性紅斑性狼瘡、ループス(腎炎、脳炎、小児、腎外性、腎外、円板状、脱毛性)、小児インスリン依存性糖尿病(IDDM)を含む若年発症(I型)糖尿病、成人発症糖尿病(II型尿病を含む)、自己免疫性糖尿病、特発性尿崩症、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅発性過敏症に関連した免疫応答、結核、サルコイドーシス、リンパ腫様肉芽腫症、ヴェグナー肉芽腫症を含む肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎(大血管脈管炎(リウマチ性多発筋痛症および巨細胞性(高安)動脈炎を含む)、中血管脈管炎(川崎病および結節性多発性動脈炎を含む)、顕微鏡的多発性動脈炎、CNS脈管炎、壊死性、皮膚、または過敏性脈管炎、全身性壊死性脈管炎、およびチャーグ・ストラウス脈管炎もしくは症候群(CSS)等のANCA関連脈管炎を含む)を含む脈管炎、側頭動脈炎、再生不良性貧血、自己免疫性再生不良性貧血、クームス陽性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む溶血性貧血もしくは免疫性溶血性貧血、悪性貧血(anemia perniciosa)、アジソン病、赤芽球貧血または赤芽球癆(PRCA)、第VIII因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出を伴う疾患、CNS炎症性障害、敗血症、外傷、または出血等に続発する多臓器損傷症候群、抗原抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病(Bechet’s disease)もしくはベーチェット病(Behcet’s disease)、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、水疱性類天疱瘡および皮膚類天疱瘡等の類天疱瘡、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、天疱瘡粘膜類天疱瘡、および紅斑性天疱瘡を含む)、自己免疫多腺性内分泌障害、ライター病もしくは症候群、免疫複合体性腎炎、抗体媒介性腎炎、視神経脊髄炎、多発性ニューロパシー、IgM多発性ニューロパシーまたはIgM媒介性ニューロパシー等の慢性ニューロパシー、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)を含む血小板減少症(例えば、心筋梗塞患者によって発現されるような)、および自己免疫または慢性もしくは急性ITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)等の免疫媒介性血小板減少症、自己免疫性精巣炎および卵巣炎を含む精巣および卵巣の自己免疫疾患、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、または亜急性甲状腺炎等の甲状腺炎を含む自己免疫性内分泌疾患、自己免疫性甲状腺疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブス病、自己免疫性多腺性症候群(または多腺性内分泌障害症候群)等の多腺性症候群、ランバート・イートン筋無力症候群またはイートン・ランバート症候群等の神経学的腫瘍随伴症候群を含む腫瘍随伴症候群、スティッフマンもしくはスティッフパーソン症候群、アレルギー性脳脊髄炎(allergic encephalomyelitis)またはアレルギー性脳脊髄炎(encephalomyelitis allergica)および実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE) 等の脳脊髄炎、胸腺腫関連重症筋無力
症等の重症筋無力症、小脳変性症、神経性筋緊張病、オプソクローヌスもしくはオプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、および感覚性ニューロパシー、多巣性運動ニューロパシー、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、慢性肝炎、ルポイド肝炎、巨細胞性肝炎、慢性活動性肝炎または自己免疫性慢性活動性肝炎、リンパ性間質性肺炎、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギラン・バレー症候群、ベルガー病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚病、原発性胆汁性肝硬変症、肺線維症、自己免疫性腸疾患症候群、セリアック病(Celiac disease)、セリアック病(Coeliac disease)、セリアックスプルー(グルテン性腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリック病)、冠動脈疾患、自己免疫性内耳疾患(AGED)等の自己免疫性耳疾患、自己免疫性聴力損失、オプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、難治性もしくは再発性多発性軟骨炎等の多発性軟骨炎、肺胞タンパク症、アミロイドーシス、強膜炎、非癌性リンパ球増加症、単クローン性B細胞リンパ球増加症(例えば、良性単クローン性免疫グロブリン血症および意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症、MGUS)を含む原発性リンパ球増加症、末梢性ニューロパシー、腫瘍随伴症候群、癲癇、片頭痛、不整脈、筋障害、難聴、失明、周期性四肢麻痺、およびCNSのチャネル病等のチャネル病、自閉症、炎症性ミオパシー、巣状分節状糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼病、網膜ブドウ膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性血液障害、線維筋痛、多発性内分泌不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮症、初老期認知症、自己免疫性脱髄疾患等の脱髄疾患、糖尿病性腎症、ドレスラー症候群、円形脱毛症、クレスト症候群(石灰沈着症、レイノー現象、食道運動障害、手指硬化症、および毛細血管拡張症)、男性および女性自己免疫性不妊症、混合結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、反復性流産、農夫肺、多形性紅斑、心術後症候群、クッシング症候群、鳥飼育者肺、アレルギー性肉芽腫性血管炎、良性リンパ球性血管炎、アルポート症候群、アレルギー性肺胞炎および線維化性肺胞炎等の肺胞炎、間質性肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、キパノソミアシス、住血吸虫症、回虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維症、びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎、シャルマン症候群、フェルティー症候群、フィラリア症、毛様体炎 等の慢性毛様体炎、異時性毛様体炎、虹彩毛様体炎、またはフックス毛様体炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、エコーウイルス感染、心筋ミオパシー、アルツハイマー病、パルボウイルス感染、風疹ウイルス感染、ワクチン接種後症候群、先天性風疹感染、エプスタイン・バーウイルス感染、流行性耳下腺炎、エヴァン症候群、自己免疫性性腺機能不全、シデナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓性血管炎、甲状腺機能亢進症、脊髄癆、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、内分泌性眼障害、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎炎症候群、微小変化型腎症、良性家族性および虚血再灌流損傷、網膜自己免疫、関節炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害、アスペルミオジェネース(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、腸炎アレルギー、癩性結節性紅斑、特発性顔面麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ性熱、ハンマンリッチ病、感覚器性聴力損失、血色素尿症発作、性腺機能低下症、限局性回腸炎、白血球減少症、感染性単核球症、横断性脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、ネフローゼ、交感神経性眼炎、肉芽種性睾丸炎、膵炎、急性多発性神経根炎、壊疽性膿皮症、ケルヴァン甲状腺炎、後天性脾臓萎縮症、抗精子抗体に起因する不妊症、非悪性胸腺腫、白斑、SCIDおよびエプスタイン・バーウイルス関連疾患、後天性免疫不全症候群(AIDS)、リーシュマニア等の寄生虫症、毒素性ショック症候群、食中毒、T細胞浸潤を伴う疾患、白血球接着不全症、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅発性過敏症に関連した免疫応答、白血球漏出を伴う疾患、多臓器損傷症候群、抗原抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫性萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患
、混合結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌不全、末梢性ニューロパシー、I型自己免疫性多腺性症候群、成人発症特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、完全脱毛症、拡張型心筋ミオパシー、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性もしくは非化膿性副鼻腔炎、急性もしくは慢性副鼻腔炎、篩骨、前頭、上顎、または蝶形骨副鼻腔炎、好酸球増加症、肺浸潤好酸球増加症、好酸球増加症−筋肉痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸球性肺炎、熱帯性肺好酸球増加症等の好酸球関連障害、気管支肺アスペルギルス症、アスペルギルス腫、または好酸球を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、血清反応陰性脊椎関節炎、
多内分泌自己免疫疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性粘膜皮膚カンジダ症、ブルートン症候群、一過性乳児低ガンマグロブリン血症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症、膠原病に関連した自己免疫障害、リウマチ、神経系疾患、虚血性再灌流障害、血圧応答の減退、血管機能不全、血管拡張、組織損傷、心血管虚血、痛覚過敏症、脳虚血、および血管新生を伴う疾患、アレルギー性過敏症障害、糸球体腎炎、再灌流傷害、心筋または他の組織の再灌流傷害、急性炎症性成分を伴う皮膚病、急性化膿性髄膜炎または他の中枢神経系炎症性障害、眼および眼窩炎症性障害、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘導毒性、急性重症炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺線維症、糖尿病性網膜症、糖尿病性大動脈障害、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、および子宮内膜症が挙げられるが、それらに限定されない。
【0076】
〔00102〕 「癌」および「癌性」という用語は、典型的には制御されていない細胞成長を特徴とする哺乳動物の生理学的状態を指すか、または説明する。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられるが、それらに限定されない。かかる癌のより特定の例には、扁平上皮癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺アデノ癌腫、および肺扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)(胃腸癌を含む)、膵臓癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌(liver cancer)、膀胱癌、肝癌(hepatoma)、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎癌または腎臓癌、肝臓癌(liver cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌(hepatic carcinoma)および種々の種類の頭部および頸部癌、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;多発性骨髄腫;ならびに移植後リンパ増殖性障害(PTLD)が挙げられる。
【0077】
〔00103〕 「アレルギー性疾患」という語句は、アレルギー反応を伴う疾患を指す。より具体的には、「アレルギー性疾患」は、そのアレルゲンへの曝露と病理学的変化の発現との間に強い相関関係が存在し、かつその病理学的変化が免疫機構を有すると立証されている、アレルゲンが同定される疾患と定義される。本明細書において、免疫機構とは、白血球が、アレルゲン刺激に対して免疫応答を示すことを意味する。アレルゲンの例には、ダニ抗原および花粉抗原が挙げられる。代表的なアレルギー性疾患には、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、ならびに花粉および昆虫アレルギーが含まれる。アレルギー体質は、アレルギー体質の親の子どもに継承され得る遺伝因子である。家族性アレルギー性疾患は、アトピー性疾患とも呼ばれており、原因となる遺伝因子は、アトピー性体質である。「アトピー性皮膚炎」は、アトピー性疾患、特に、皮膚炎症状を伴う疾患の一般用語である。好ましい例には、湿疹、アレルギー性鼻炎、枯草熱、蕁麻疹、および食物アレルギーからなる群から選択されるアレルギー状態が挙げられる。アレルギー状態には、湿疹、アレルギー性鼻炎または鼻風邪、枯草熱、気管支喘息、蕁麻疹(ur
ticaria)(蕁麻疹(hives))、および食物アレルギー、ならびに他のアトピー性状態が含まれる。
【0078】
「喘息」は、炎症、気道狭窄、および吸入物質への気道の反応性の増加を特徴とする呼吸器系の障害を指す。喘息は、排他的ではないが、高い頻度で、アトピー性またはアレルギー性症状と関連付けられる。
【0079】
〔00104〕 本明細書において、「炎症状態または炎症性疾患」という語句は、リウマチ性疾患(リウマチ性関節炎、変形性関節炎、乾癬性関節炎を含むが、それらに限定されない)脊椎関節症(強直性脊椎炎、反応性関節炎、ライター症候群を含むが、それらに限定されない)、結晶性関節炎(痛風、偽痛風、カルシウムピロリン酸沈着症を含むが、それらに限定されない)、ライム病疾患、リウマチ性多発筋痛症;結合組織病(全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群を含むが、それらに限定されない);脈管炎(結節性多発性動脈炎、ヴェグナー肉芽腫症、チャーグ・ストラウス症候群を含むが、それらに限定されない);外傷または虚血によって生じた結果を含む炎症状態、サルコイドーシス;アテローム硬化性血管疾患、アテローム性動脈硬化症、および血管閉塞性疾患(アテローム性動脈硬化症、虚血性心疾患、心筋梗塞、発作、末梢血管疾患を含むが、それらに限定されない)、ならびに血管ステント再狭窄を含む血管疾患;ブドウ膜炎、角膜疾患、虹彩炎、虹彩毛様体炎、および白内障を含む眼疾患を含む群から選択される疾患または状態を含む慢性または急性炎症性疾患を含む。
【0080】
〔00105〕 本発明による治療に適している癌という用語には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病、またはリンパ性悪性疾患が含まれるが、それらに限定されない。かかる癌のより具体的な例には、膀胱、卵巣、黒色腫、扁平上皮癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺アデノ癌腫、および肺扁平上皮癌を含む)、腹膜癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)(胃腸癌を含む)、膵臓癌、膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎癌または腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌および種々の種類の頭部および頸部癌、ならびにB−細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非開裂細胞性NHL;巨大病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;および移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症に関連した異常血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連した浮腫等)、およびメーグス症候群が挙げられる。好ましくは、癌は、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌腫、頭部および頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、ならびに多発性骨髄腫からなる群から選択される。例示的な実施形態(実施例を参照のこと)において、癌は、早期進行性(転移性を含む)膀胱癌、卵巣癌、または黒色腫である。別の実施形態では、癌は、結腸直腸癌である。本発明の治療に適している癌性状態には、転移性癌が含まれ、骨髄由来の抑制因子細胞によるVISTA発現は、抗腫瘍応答および抗侵襲性免疫応答を抑制する。本発明の方法は、血管新生化腫瘍の治療に特に好適である。
【0081】
〔0018〕 本発明はまた、化学療法もしくは放射線療法または他の生物学との併用で、癌、すなわち、個人における癌を治療し、かつその活性を強化するのに好適であり、骨髄由来の抑制因子細胞によるVISTA発現は、抗腫瘍応答および化学療法もしくは放射線療法の有効性または生物学的有効性を抑制する。本発明に従って、抗癌活性を呈する
任意の化学療法剤を使用することができる。好ましくは、化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体および関連阻害剤、ビンカアルカロイド、エピポドフィロトキシン、抗生物質、L−アスパラギナーゼ、トポイソメラーゼ阻害剤、インターフェロン、白金配位複合体、アントラセンジオン置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、副腎皮質ステロイド、プロゲスチン、エストロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、抗アンドロゲン、およびゴナドトロピン放出ホルモン類似体からなる群から選択される。より好ましくは、化学療法剤は、5−フルオロウラシル(5−FU)、ロイコボリン(LV)、イリノテカン、オキサリプラチン、カペシタビン、パクリタキセル、およびドセタキセルからなる群から選択される。2つ以上の化学療法剤を、抗VEGF抗体の投与との併用で、投与する混合物中で使用することができる。1つの好ましい併用化学療法は、5−FUを含むフルオロウラシル系、および1つ以上の他の化学療法剤(複数を含む)である。併用化学療法に好適な投与計画は、当分野で既知であり、例えば、Saltz et al.(1999)Proc ASCO 18:233aおよびDouillard et al.(2000)Lancet 355:1041−7で説明されている。生物学的製剤は、PD−L1、PD−L2、CTLA−4およびPD−L1、PD−L2、CTLA−4融合タンパク質に対する抗体、ならびにサイトカイン、成長因子アンタゴニストおよびアゴニスト、ホルモンおよび抗サイトカイン抗体等の別の免疫増強剤であり得る。
【0082】
〔00106〕 受容体に結合するPD−L3もしくはVISTA分子の形態に応じて、シグナルは、例えば、受容体に結合するために、PD−L3もしくはVISTA分子の活性化形態と競合することによって、(例えば、受容体の架橋をもたらすD−L3もしくはVISTA分子の多価形態によって、または抗原提示細胞上で受容体に結合するPD−L3もしくはVISTAの可溶型によって)伝送されるか、あるいは(例えば、PD−L3もしくはVISTA分子の可溶性一価形態によって、またはそれが抗原提示細胞上でFc受容体に結合しないように、当分野で既知の方法を用いて変質されるPD−L3もしくはVISTAの可溶型によって)阻害されるかのいずれかであり得る。しかしながら、可溶性分子が刺激性であり得る事例が存在する。本明細書に記載の日常的なスクリーニングアッセイを用いて、種々の調節剤の効果を、容易に実証することができる。
【0083】
〔00107〕 本明細書において使用される「活性化受容体」という用語は、抗原、複合抗原(例えば、MHC分子との関連で)、または抗体に結合する免疫細胞受容体を含む。かかる活性化受容体には、T細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)、サイトカイン受容体、LPS受容体、補体受容体、およびFc受容体が含まれる。
【0084】
〔00108〕 例えば、T細胞受容体は、T細胞上に存在し、CD3分子と関連している。T細胞受容体は、MHC分子との関連において抗原(ならびにポリクローナルT細胞活性化試薬によって)によって刺激される。TCRを介するT細胞活性化は、多数の変化、例えば、タンパク質リン酸化反応、膜脂質の変化、イオン流出、環状ヌクレオチドの変質、RNA転写の変化、タンパク質合成の変化、および細胞体積の変化をもたらす。
【0085】
〔00109〕 本明細書において使用される「B細胞受容体」(BCR)という用語は、膜Ig(mIg)とB細胞上で見出される他の膜貫通ポリペプチド(例えば、IgアルファおよびIgベータ)との間の複合体を含む。mIgのシグナル変換機能は、オリゴマーまたは多量体抗原による受容体分子の架橋によって誘発される。B細胞は、抗免疫グロブリン抗体によっても活性化され得る。BCR活性化時、B細胞中で、チロシンリン酸化反応を含む多数の変化が発生する
〔00110〕 「Fc受容体」(FcR)という用語は、免疫グロブリン分子(Ig)のFc部分への細胞表面受容体を含む。Fc受容体は、免疫応答に関与する多くの細胞上で見出される。これまでに同定されているヒトFcRの中では、IgG(FcガンマR
と指定される)、IgE(FcエプシロンR1)、IgA(FcアルファR)、および重合IgM/A(Fc.μαR)を認識するものである。FcRは、以下の細胞型において見出される:FcエプシロンRI(マスト細胞)、FcエプシロンRII(多くの白血球)、FcアルファR(好中球)、およびFcμアルファR(腺上皮、肝細胞)(Hogg,N.(1988)Immunol.Today 9:185−86)。広く研究されたFcガンマRは、細胞性免疫防御の中心であり、炎症のメディエータの放出の刺激および自己免疫疾患の発病に関与する加水分解酵素に関与する(Unkeless,J.C(1988)Annu.Rev.mmunol.6:251−87)。マクロファージ/単球、多形核白血球、およびナチュラルキラー(NK)細胞FcガンマRが、IgGによって媒介される特定の認識の要素を与えるため、FcガンマRは、エフェクター細胞とIgを分泌するリンパ球との間に決定的なつながりを提供する。ヒト白血球は、少なくとも3つの異なるIgGの受容体、すなわちh FcガンマRI(単球/マクロファージ上で見出される)、hFcガンマRII(単球、好中球、好酸球、血小板、場合によってB細胞、およびK562細胞株上で見出される)、ならびにFcγIII(NK細胞、好中球、好酸球、およびマクロファージ上で見出される)を有する。
【0086】
〔00111〕 T細胞に関して、T細胞への共刺激シグナルの伝送は、シクロスポリンAによって阻害されないシグナル伝達経路を含む。加えて、共刺激シグナルは、T細胞中でサイトカイン分泌(例えば、IL−2および/もしくはIL−10)を誘導することができ、かつ/またはT細胞中で抗原に対する無応答性の誘導、アネルギーの誘導、もしくは細胞死の誘導を防止することができる。
【0087】
〔00112〕 本明細書において使用される「阻害シグナル」という用語は、免疫細胞上で阻害性受容体分子を介して伝送されるシグナルを指す。かかるシグナルは、活性化受容体(例えば、TCR、CD3、BCR、またはFc分子を介して)を介してシグナルを刺激し、例えば、免疫細胞における第2のメッセンジャー生成、増殖、もしくはエフェクター機能の阻害、例えば、減少した食作用、抗体産生、もしくは細胞傷害性、または免疫細胞のメディエータ(サイトカイン(例えば、IL−2)および/もしくはアレルギー性応答のメディエータ等)産生不全、またはアネルギーの発達の阻害をもたらし得る。
【0088】
〔00113〕 本明細書において使用される「無応答性」という用語は、刺激、例えば、活性化受容体またはサイトカインを介する刺激への免疫細胞の屈折性を含む。例えば、免疫抑制剤への曝露または高用量の抗原により、無応答性が発生し得る。
【0089】
〔00114〕 本明細書において使用される「アネルギー」または「耐性」という用語は、活性化受容体媒介性刺激への屈折性を含む。かかる屈折性は、概して、抗原特異的であり、寛容化抗原への曝露が終わった後に持続する。例えば、(無応答性とは対照的に)T細胞におけるアネルギーは、サイトカイン産生、例えば、IL−2の欠如を特徴とする。T細胞が抗原に曝露され、かつ第2のシグナル(共刺激シグナル)の不在下で第1のシグナル(T細胞受容体またはCD−3媒介シグナル)を受容するときに、T細胞アネルギーが発生する。これらの条件下で、同一の抗原への細胞の再曝露は(共刺激分子の存在下で再曝露が発生する場合でさえ)、サイトカイン産生不全、したがって、増殖不全をもたらす。しかしながら、アネルギーT細胞は、非連関抗原への応答を開始することができ、サイトカイン(例えば、IL−2)と培養されるときに増殖することができる。例えば、指標細胞株を用いてELISAまたは増殖アッセイによって測定されるように、T細胞アネルギーを、Tリンパ球によるIL−2産生の欠如によって観察することもできる。あるいは、受容体遺伝子構築物を使用することができる。例えば、アネルギーT細胞は、5’IL−2遺伝子エンハンサーのまたは制御下で異種プロモーターによって、またはエンハンサー内で見出すことができるAP1配列の多量体によって誘導されるIL−2遺伝子転写を開始し損なう(Kang et al.(1992)Science 257:1
134)。
【0090】
〔00115〕 共刺激シグナルの調節は、免疫細胞のエフェクター機能の調節をもたらす。したがって、「PD−L3またはVISTA活性」という用語は、PD−L3またはVISTAポリペプチドがその天然結合パートナー(複数を含む)に結合する能力、免疫細胞共刺激または阻害シグナルを調節する能力、および免疫応答を調節する能力を含む。
【0091】
〔00116〕 免疫細胞における阻害シグナルの調節は、免疫細胞の増殖および/または免疫細胞によるサイトカイン分泌の調節をもたらす。
〔00117〕 本明細書において使用される「自然発生」核酸分子は、自然に発生する(例えば、天然タンパク質をコードする)ヌクレオチド配列を有するRNAまたはDNA分子を指す。
【0092】
〔00118〕 本明細書において使用される「アンチセンス」核酸分子は、タンパク質をコードする「センス」核酸に相補的なヌクレオチド配列、例えば、二本鎖cDNA分子のコード鎖に相補的なヌクレオチド配列、mRNA配列に相補的なヌクレオチド配列、または遺伝子のコード鎖に相補的なヌクレオチド配列を含む。したがって、アンチセンス核酸分子は、センス核酸分子に水素結合し得る。
【0093】
〔00119〕 本明細書において使用される「コード領域」という用語が、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域を指す一方で、「非コード領域」という用語は、アミノ酸に翻訳されないヌクレオチド配列の領域(例えば、5’および3’非翻訳領域)を指す。
【0094】
〔00120〕 本明細書において使用される「ベクター」という用語は、それが結合された別の核酸分子を輸送することができる核酸分子を指す。1つの種類のベクターは、「プラスミド」であり、追加のDNAセグメントが連結され得る環状の二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターは、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムに連結され得るウイルスベクターである。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自己複製の能力がある(例えば、複製の細菌起源を有する細菌性ベクター、およびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入時に、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある特定のベクターは、それらが作動可能に結合される遺伝子の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書において、「組換え発現ベクター」または単に「発現ベクター」と称される。概して、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、多くの場合、プラスミドの形態である。本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドが、最も一般的に使用されるベクターの形態であるため、同義に使用され得る。しかしながら、本発明は、ウイルスベクター(例えば、複製欠損性レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ関連ウイルス)等の同等の機能を果たす発現ベクターのかかる他の形態を含むよう意図されている。
【0095】
〔00121〕 本明細書において使用される「宿主細胞」という用語は、本発明の組換え発現ベクター等の本発明の核酸分子が導入された細胞を指すよう意図される。「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書において同義に使用される。かかる用語が、特定の対象細胞のみならず、かかる細胞の子孫または潜在的子孫も指すことを理解されたい。変異または環境の影響のいずれかによりある特定の修飾が後世において発生し得るため、かかる子孫は、事実上、親細胞と同一ではない場合もあるが、本明細書において使用される用語の範囲内に依然として含まれる。
【0096】
〔00122〕 本明細書において使用される「遺伝子導入動物」は、非ヒト動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、マウスを指し、動物の細胞のうちの1つ以上が、「導入遺伝子」を含む。「導入遺伝子」という用語は、遺伝子導入動物が発育する細胞のゲノムに組み込まれ、かつ例えば、遺伝子導入動物の1つ以上の細胞型または組織におけるコードされた遺伝子産物の発現を誘導する成熟動物のゲノム中に残存する外因性DNAを指す。
【0097】
〔00123〕 本明細書において使用される「相同組換え動物」は、内在性遺伝子が、動物の発育前に、内在性遺伝子と、動物の細胞、例えば、動物の胚細胞に導入される外因性DNA分子との間の相同組換えによって変化した、遺伝子導入非ヒト動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、マウスの一種を指す。
【0098】
〔00124〕 本明細書において使用される「単離タンパク質」は、細胞から単離されるか、または組換えDNA技術によって産生されるときに、他のタンパク質、細胞物質、および培養培地を実質的に含まないタンパク質、あるいは化学的に合成されるときに、化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まないタンパク質を指す。
【0099】
〔00125〕 「単離」もしくは「精製」タンパク質またはその生物学的に活性な部分は、PD−L3もしくはVISTAタンパク質が得られる細胞または組織源からの細胞物質または他の夾雑タンパク質を実質的に含まないか、あるいは化学的に合成されるときには、化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という言い回しは、タンパク質が、それが単離されるか、または組換えによって産生される細胞の細胞成分から分離されるPD−L3またはVISTAタンパク質の調製物を含む。一実施形態において、「細胞物質を実質的に含まない」という言い回しは、約30%(乾燥重量)未満の非PD−L3またはVISTAタンパク質(本明細書において「夾雑タンパク質」とも称される)、より好ましくは、約20%未満の非PD−L3またはVISTAタンパク質、さらにより好ましくは、約10%未満の非PD−L3またはVISTAタンパク質、および最も好ましくは、約5%未満の非PD−L3またはVISTAタンパク質を有するPD−L3またはVISTAタンパク質の調製物を含む。PD−L3またはVISTAタンパク質またはその生物学的に活性な部分が組換えによって産生されるとき、それはまた、好ましくは、培養培地を実質的に含まない、すなわち、培養培地は、タンパク質調製物の体積の約20%未満、より好ましくは、約10%未満、および最も好ましくは、約5%未満を占める。
【0100】
〔00126〕 「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という言い回しは、タンパク質が、タンパク質の合成に関与する化学的前駆体または他の化学物質から分離されるPD−L3またはVISTAタンパク質の調製物を含む。一実施形態において、「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という言い回しは、約30%(乾燥重量)未満の化学的前駆体または非PD−L3もしくはVISTA化学物質、より好ましくは、約20%未満の化学的前駆体または非PD−L3もしくはVISTA化学物質、さらにより好ましくは、約10%未満の化学的前駆体または非PD−L3もしくはVISTA化学物質、および最も好ましくは、約5%未満の化学的前駆体または非PD−L3もしくはVISTA化学物質を有するPD−L3もしくはVISTAタンパク質の調製物を含む。
【0101】
〔00127〕 本明細書において使用される「抗体」という用語は、抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)、ならびに全抗体分子を含む。本明細書において使用される「抗原結合部分」という用語は、抗原(例えば、PD−L3またはVISTA)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能が全長抗体のフラグメントによって実行され得ることが示されている。抗体の「抗
原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例として、(i)Fabフラグメント、すなわちVL、VH、CLおよびCHIドメインから成る一価フラグメント、(ii)F(ab’)2フラグメント、すなわちヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合される2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント、(iii)VHおよびCHIドメインから成るFdフラグメント、(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインから成るFvフラグメント、(v)VHドメインから成るdAbフラグメント(Ward et al.(1989)Nature 341:544−546)、ならびに(vi)単離した相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHが、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え方法を用いて、VLおよびVH領域対が一価分子(一本鎖Fv(scFv)として既知であり、例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423−426、およびHuston et al.(1988)Proc Natl.Acad.Sci.USA85:5879−5883、およびOsbourn et al.1998 Nat.Biotechnol.16:778を参照のこと)を形成する単一タンパク質鎖とすることができる合成リンカーによって連結され得る。かかる一本鎖抗体は、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含するよう意図されている。特定のscFvの任意のVHおよびVL配列は、全てのIgG分子または他のアイソタイプをコードする発現ベクターを生成するために、ヒト免疫グロブリン定常領域cDNAまたはゲノム配列に結合され得る。VHおよびV1を、タンパク質化学または組換えDNA技術のいずれかを用いて、免疫グロブリンのFab、Fv、または他のフラグメントの生成において使用することもできる。二重特異性抗体等の一本鎖抗体の他の形態も包含される。二重特異性抗体は、VHおよびVLドメインが単一ポリペプチド鎖上で発現される二価の二重特異性抗体であるが、リンカーを用いると、それが短すぎて、同一の鎖上の2つのドメインの間の対合を可能にすることができず、それによって、ドメインを別の鎖の相補性ドメインと対にさせ、かつ2つの抗原結合部位を作成する(例えば、Holliger,P.et al.(1993)Proc Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448、Poljak,R.J.et al.(1994)Structure 2:1121−1123を参照のこと)。
【0102】
〔00128〕 さらに、抗体またはその抗原結合部分は、1つ以上の他のタンパク質またはペプチドを有する抗体もしくは抗体部分の共有もしくは非共有会合によって形成される、より大きいイムノアドヘシン分子の一部であり得る。かかるイムノアドヘシン分子の例には、四量体scFv分子を作製するために、ストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov,S.M.et al.(1995)Hum.Antibodies Hybridomas 6:93−101)、ならびに二価およびビオチン化scFv分子を作製するために、システイン残基、マーカーペプチド、およびC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov,S.M.et al.(1994)Mol Immunol.31:1047−1058)が含まれる。FabおよびF(ab’)2フラグメント等の抗体部分を、それぞれ、全抗体のパパインまたはペプシン消化等の従来の技術を用いて、全抗体から調製することができる。さらに、抗体、抗体部分、およびイムノアドヘシン分子を、本明細書に記載の標準の組換えDNA技術を用いて得ることができる。
【0103】
〔00129〕 抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル;異種、同種、もしくは同系;またはそれらの修正された形態、例えば、ヒト化、キメラ等であり得る。好ましくは、本発明の抗体は、PD−L3もしくはVISTA分子に特異的に、または実質的に特異的に結合する。本明細書において使用される「モノクローナル抗体」および「モノクローナル抗体組成物」という用語は、抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位の1つの種のみを含有する抗体分子の集団を指すが、「ポリクローナル抗体」および「ポリクローナル抗体組成物」という用語は、特定の抗原と相互作用すること
ができる抗原結合部位の複数の種を含有する抗体分子の集団を指す。モノクローナル抗体組成物は、典型的には、それが免疫反応する特定の抗原への単一の結合親和性を示す。
【0104】
〔00130〕 本明細書において使用される「ヒト化抗体」という用語は、ヒト細胞によって生成されるであろう抗体により酷似するよう変化した可変および定常領域を有する、非ヒト細胞によって生成される抗体を含むよう意図されている。例えば、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列において見出されるアミノ酸を組み込むために、非ヒト抗体アミノ酸配列を変化させることによる。本発明のヒト化抗体は、例えば、CDRにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン配列(例えば、ランダムもしくは部位特異的変異誘発によって導入されるインビトロでの変異によって、またはインビボでの体細胞変異によって)によってコードされないアミノ酸残基を含み得る。本明細書において使用される「ヒト化抗体」という用語は、マウス等の別の哺乳類種の生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植された抗体も含む。
【0105】
〔00131〕 本明細書において使用される「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すよう意図されている(例えば、PD−L3またはVISTAに特異的に結合する単離抗体は、PD−L3またはVISTA以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。さらに、単離抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まない場合もある。
【0106】
〔00132〕 本明細書における「オリゴマー化ドメイン」は、VISTA細胞外ドメインまたはそのフラグメントに付着されるときに、オリゴマー化を促進するドメインを指す。本オリゴマー化ドメインは、さらなるジスルフィド結合によってさらに安定化することができる自己会合性αヘリックス、例えば、ロイシンジッパーを含む。ドメインは、膜全域でのベクトル折り畳み、インビボでのポリペプチドの機能的結合タンパク質への折り畳みを促進すると考えられるプロセスに適合するよう設計される。その例は、当分野で既知であり、一例として、コイル状GCN4、およびCOMPを含む。
【0107】
〔00133〕 αヘリックスコイルドコイルは、恐らく、タンパク質において見出される最も広く知られているサブユニットオリゴマー化モチーフである。したがって、コイルドコイルは、様々な異なる機能を果たす。転写活性化因子のいくつかのファミリーにおいて、例えば、短いロイシンジッパーは、DNA上でのDNA結合領域の配置に重要な役割を果たす(Ellenberger et al.,1992,Cell 71:1223−1237)。コイルドコイルは、中間径フィラメントタンパク質のオリゴマーを形成するためにも使用される。さらに、コイルドコイルタンパク質は、小胞膜およびウイルス膜融合の両方において重要な役割を果たすようである(Skehel and Wiley,1998,Cell 95:871−874)。両方の場合において、融合される膜に埋め込まれる疎水性配列は、長いαヘリックスの束から成る棒状複合体の同一の端部に配置される。この分子配列は、膜融合のために複合体が組み立てられるときに、近接した膜並置を引き起こすと考えられている。コイルドコイルは、多くの場合、オリゴマー化を制御するために使用される。これは、GCN4、ウイルス融合ペプチド、SNARE複合体、およびある特定のtRNAシンテターゼ等であって、それらに限定されない転写因子を含む多くの種類のタンパク質中に見出される。非常に長いコイルドコイルが、トロポミオシン、中間径フィラメント、および紡錘体極体成分等のタンパク質中に見出される。コイルドコイルは、平行配向または逆平行配向で会合する高度に組織化された様式で、相互の周囲でスーパーコイル状であるいくつかのαヘリックスを含む。二量体および三量体が最も一般的であるが、ヘリックスは、同一のタンパク質または異なるタンパク質由来であり得る。コイルドコイルは、それらの疎水性の継ぎ目を埋めるために一体となる成分ヘリックスによって形成される。疎水性の継ぎ目がそれぞれのヘリックスに巻き付くと、ヘリックスも相互に巻き付くようにねじれ、疎水性の継ぎ目を埋め、スーパーコイルを形成
する。これは、この構造をコイルドコイルと定義する穴の中への取手パッキング(knobs−into−holes packing)として既知の、隣接したヘリックス間の側鎖の特徴的な相互嵌合である。並列構造がより一般的であるが、ヘリックスは、この種の相互作用が発生するために同一の方向に走る必要はない。逆並列構造は、三量体において非常にまれであり、五量体においては未知であるが、2つのヘリックスが、多くの場合、短いループによって結合される分子内二量体においてはより一般的である。細胞外空間では、ヘテロ三量体コイルドコイルタンパク質ラミニンが、基底膜の形成において重要な役割を果たす。他の例として、その中で3つ(トロンボスポンジン1および2)または5つ(トロンボスポンジン3、4、およびCOMP)の鎖が結合される、トロンボスポンジンならびに軟骨オリゴマー基質タンパク質(COMP)がある。分子は、花束様の外観を有し、それらのオリゴマー構造の理由は、恐らく、細胞受容体とのC末端ドメインの多価相互作用である。酵母転写活性化因子GCN4は、30を超える同定された基本領域ロイシンジッパー(bZIP)DNA結合モチーフを含有する真核細胞タンパク質のうちの1つである(Ellenberger et al.,1992,Cell 71:1223−1237)。bZIP二量体は、それらのカルボキシ末端34残基上に平行コイルドコイルを形成し、かつそれらのアミノ末端に向かって徐々に分岐して、DNA結合部位の主溝を通過する、一対の連続的なアルファヘリックスである。コイルドコイル二量体化界面は、DNA軸に対してほぼ垂直に配向され、複合体にT文字の外観を与える。bZIPは、平行アルファヘリックスコイルドコイル中でともに密集する疎水性および無極性残基の4−3の7個単位の繰り返し(4−3 heptad repeat)を含有する(Ellenberger et al.,1992,Cell 71:1223−1237)。二量体の安定性は、7個単位の繰り返しの位置aおよびdにおけるロイシンおよび無極性残基の並列パッキング、ならびにGCN4ロイシンジッパーペプチドの結晶構造に示される限定された数のヘリックス内およびヘリックス間塩橋に起因する(Ellenberger et al.,1992,Cell 71:1223−1237)。別の例には、Mr52,000のサブユニットのホモ三量体(Paulsson and Heinegard,1981,Biochem J.197:367−375)としてウシ気管軟骨から単離されるCMP(マトリリン−1)があり、それぞれのサブユニットは、vWFAlモジュール、単一EGFドメイン、vWFA2モジュール、および5つの7個単位に及ぶコイルドコイルドメインから成る(Kiss et al.,1989,J.Biol.Chem.264:8126−8134、Hauser and Paulsson,1994,J.Biol.Chem.269:25747−25753)。精製CMPの電子顕微鏡検査は、その中でそれぞれのサブユニットが、コイルドコイルに対応する共通点から出現する楕円を形成する花束様の三量体構造を示した(Hauser and Paulsson,1994,J.Biol.Chem.269:25747−25753)。マトリリン−1中のコイルドコイルドメインは、広範囲にわたって研究されている。三量体構造は、非変性状態下での鎖間ジスルフィド結合の完全還元後に保持される(Hauser and Paulsson,1994,J.Biol.Chem.269:25747−25753)。さらに別の例には、軟骨オリゴマー基質タンパク質(COMP)がある。非コラーゲン蓄積糖タンパク質、COMPは、最初に軟骨内で同定された(Hedbom et al.,1992,J.Biol.Chem.267:6132−6136)。タンパク質は、N末端7個単位の繰り返し領域(cc)から成る5つのサブユニットの524kDaのホモ五量体であり、4つの上皮細胞成長因子(EGF)様のドメイン(EF)、7つのカルシウム結合ドメイン(T3)、およびC末端球状ドメイン(TC)が続く。このドメイン構成によると、COMPは、トロンボスポンジンのファミリーに属する。位置aおよびdで優先的に疎水性残基を有する7個単位の繰り返し(abcdefg)nは、ヘリックスコイルドコイルドメインを形成する(Cohen and Parry,1994,Science 263:488−489)。近年、COMP(COMPcc)の組換え五本鎖コイルドコイルドメインが結晶化され、その構造は、0.2nmの解像度で解析された(Malashkevich et al.,1996
,Science 274:761−765)。
【0108】
〔00134〕
本発明のポリペプチドおよび核酸分子を指すとき、「ファミリー」という用語は、共通の構造ドメインまたはモチーフを有し、かつ本明細書で定義される十分なアミノ酸またはヌクレオチド配列相同性を有する、2つ以上のポリペプチドまたは核酸分子を意味するよう意図されている。かかるファミリーメンバーは、自然発生的であるか、または非自然発生的であり得、同一の種または異なる種のいずれかに由来し得る。例えば、ファミリーは、ヒト由来第1のポリペプチド、ならびにヒト由来の他のはっきりと異なるポリペプチドを含有し得るか、またはあるいは、非ヒト由来の相同体、例えば、サルポリペプチドを含有し得る。ファミリーのメンバーは、共通の機能的特性も有し得る。
【0109】
〔00135〕 例えば、本発明のPD−L3またはVISTAポリペプチドのファミリーは、好ましくは、少なくとも1つの「シグナルペプチドドメイン」を含む。本明細書において使用される「シグナル配列」または「シグナルペプチド」は、分泌および膜結合ポリペプチドのN末端で発生し、かつ多数の疎水性アミノ酸残基を含有する、約15個以上のアミノ酸を含有するペプチドを含む。例えば、シグナル配列は、少なくとも約10〜30個のアミノ酸残基、好ましくは、約15〜25個のアミノ酸残基、より好ましくは、約18〜20個のアミノ酸残基、およびさらにより好ましくは、約19個のアミノ酸残基を含有し、少なくとも約35〜65%、好ましくは、約38〜50%、およびより好ましくは、約40〜45%の疎水性アミノ酸残基(例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、またはフェニルアラニン)を有する。当分野で「シグナルペプチド」とも称される、かかる「シグナル配列」は、かかる配列を含有するポリペプチドを脂質二重層に指向する役目を果たし、分泌および膜結合ポリペプチドにおいて切断される。以下に記載されるように、シグナル配列は、天然ヒトPD−L3またはVISTAのアミノ酸配列内で特定され、天然マウスPD−L3またはVISTAのアミノ酸配列内でも特定された。
【0110】
〔00136〕 本発明の別の実施形態では、PD−L3またはVISTA本発明のポリペプチドは、「膜貫通ドメイン」の存在に基づいて特定される。本明細書において使用される「膜貫通ドメイン」という用語は、原形質膜にわたる長さの約15個のアミノ酸残基のアミノ酸配列を含む。より好ましくは、膜貫通ドメインは、約少なくとも20、25、30、35、40、または45個のアミノ酸残基を含み、原形質膜にわたる。膜貫通ドメインは、疎水性残基が豊富であり、典型的には、アルファヘリックス構造を有する。好ましい実施形態において、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%以上の膜貫通ドメインアミノ酸が疎水性であり、例えば、ロイシン、イソロイシン、チロシン、またはトリプトファンである。膜貫通ドメインは、例えば、Zagotta,W.N.et al.(1996)Annu.Rev.Neurosci.19:235−263に記載されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。PDL3の膜貫通ドメイン領域は、本明細書において特定される(例えば、
図1を参照のこと)。
【0111】
〔00137〕 別の実施形態では、本発明のPD−L3もしくはVISTA分子は、ポリペプチドまたは対応する核酸分子における「IgCドメイン」の不在および「IgVドメイン」の存在に基づいて特定される。本明細書において使用されるIgVおよびIgCドメインは、Igスーパーファミリーメンバードメインとして当分野で認識されている。これらのドメインは、Ig折り畳みと呼ばれるはっきりと異なる折り畳みパターンを有する構造単位に対応する。Ig折り畳みは、2つのベータシートのサンドイッチから成り、それぞれ、全てではないが大部分のドメインにおいて、2つのシートの間で保存ジスルフィド結合を有する5〜10個のアミノ酸の逆平行ベータ鎖から成る。Ig、TCR、およびMHC分子のIgCドメインは、同一の種類の配列パターンを共有し、Igスーパーファミリー内のClセットと呼ばれる。他のIgCドメインは、他のセットに含まれる。
IgVドメインはまた、配列パターンを共有し、Vセットドメインと呼ばれる。IgVドメインは、C−ドメインよりも長く、追加の対のベータ鎖を形成する。IgVドメインを構成する天然ヒトおよびマウスPD−L3またはVISTAポリペプチドのアミノ酸残基を、
図1で見ることができる。PD−L3またはVISTAのその天然結合パートナー(複数を含む)への結合のために、IgVドメインの存在が必要とされる可能性が高い。
【0112】
〔00138〕 別の実施形態では、本発明のPD−L3またはVISTA分子は、ポリペプチドまたは対応する核酸分子における「細胞外ドメイン」の存在に基づいて特定される。本明細書において使用される「細胞外ドメイン」という用語は、テールとして細胞の表面から伸びるN末端アミノ酸を表す。本発明の細胞外ドメインは、IgVドメインを含み、かつシグナルペプチドドメインを含み得る(
図1を参照のこと)。
【0113】
〔00139〕 さらに別の実施形態では、本発明のPD−L3またはVISTA分子は、ポリペプチドまたは対応する核酸分子における「細胞質ドメイン」の存在に基づいて特定される。本明細書において使用される「細胞質ドメイン」という用語は、細胞質ドメインを含むことが予測される、テールとして細胞の細胞質に広がるC末端アミノ酸を表す。
【0114】
〔00140〕 好ましい実施形態において、本発明のPD−L3またはVISTA分子は、以下のドメインのうちの少なくとも1つ以上を含む:シグナルペプチドドメイン、IgVドメイン、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメイン。
【0115】
〔00141〕 本発明の単離ポリペプチド、好ましくは、PD−L3またはVISTAポリペプチドは、配列番号2もしくは4もしくは5のアミノ酸配列と十分に同一のアミノ酸配列を有するか、あるいは配列番号1もしくは3もしくはフラグメントまたはその補体と十分に同一のヌクレオチド配列によってコードされる。本明細書において使用される「十分に同一」という用語は、第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列と同一もしくは同等の(例えば、類似した側鎖を有するアミノ酸残基)、十分な数もしくは最低数のアミノ酸残基またはヌクレオチドを含有する第1のアミノ酸またはヌクレオチド配列を指し、したがって、第1および第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列は、共通の構造ドメインもしくはモチーフおよび/または共通の機能的活性を共有する。例えば、共通の構造ドメインを共有するアミノ酸またはヌクレオチド配列は、ドメインのアミノ酸配列にわたって少なくとも30%、40%、もしくは50%の相同性、好ましくは、60%の相同性、より好ましくは、70%〜80%、およびさらにより好ましくは、90〜95%の相同性を有し、少なくとも1つ、および好ましくは2つの構造ドメインまたはモチーフを含有し、本明細書において十分に同一であると定義される。さらに、少なくとも30%、40%、もしくは50%、好ましくは、60%、より好ましくは、70〜80%、もしくは90〜95%の相同性を共有し、かつ共通の機能的活性を共有するアミノ酸またはヌクレオチド配列は、本明細書において十分に同一であると定義される。
【0116】
〔00142〕 本明細書において同義に使用される、「PD−L3もしくはVISTA活性」、「PD−L3もしくはVISTAの生物学的活性」、または「PD−L3もしくはVISTAの機能的活性」は、標準の技術に従って、インビボまたはインビトロで決定される、PD−L3もしくはVISTAタンパク質、ポリペプチドまたは核酸分子によって、PD−L3もしくはVISTA−応答細胞または組織上で、あるいはPD−L3もしくはVISTAポリペプチド結合パートナー上で発現される活性を指す。これらの活性は、CD4+およびCD8+T細胞増殖およびサイトカイン産生を調節することを含む。別の実施形態では、PD−L3またはVISTA活性は、PD−L3またはVISTA結合パートナーとの会合等の直接的活性である。本明細書において使用される「標的分子」または「結合パートナー」は、PD−L3もしくはVISTA媒介性機能が達成されるよ
うに、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドが自然において結合するか、または相互作用する、すなわち、T細胞上で発現される分子である。あるいは、PD−L3またはVISTA活性は、PD−L3またはVISTAポリペプチドによって媒介される細胞シグナル伝達活性等の間接的活性である。PD−L3またはVISTAの生物学的活性は、本明細書に記載されている。例えば、本発明のPD−L3もしくはVISTAポリペプチドおよびPD−L3もしくはVISTAアゴニストまたはアンタゴニストは、以下の活性のうちの1つ以上を有し得る:(1)CD4+およびCD8+T細胞増殖を抑制もしくは促進する、(2)サイトカイン産生を抑制もしくは促進する、(3)T細胞と骨髄由来のAPCとの間の同族相互作用中のT細胞応答を負に制御する制御リガンドとして機能する、(4)早期のTCR活性化を抑制し、細胞分裂を停止させることによって、CD4+T細胞応答を負に制御するが、アポトーシスへの最小の直接的影響を伴う、(5)APCとT細胞との間の同族相互作用中の抗原特異的T細胞活性化を抑制もしくは促進する、および/または(6)T細胞媒介性免疫応答を抑制もしくは促進する、(7)免疫細胞、例えば、Tリンパ球の活性化を調節する、ならびに(8)生物、例えば、マウスもしくはヒト生物の免疫応答、例えば、炎症性免疫応答を調節する。
【0117】
〔00143〕 したがって、本発明の別の実施形態は、1つ以上のPD−L3またはVISTA活性を調節する単離PD−L3またはVISTAタンパク質およびポリペプチドを特徴とする。これらのポリペプチドは、シグナルペプチドドメイン、IgVドメイン、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインのうちの1つ以上を有し、好ましくは、PD−L3またはVISTA活性を有する、PD−L3またはVISTAポリペプチドを含む。
【0118】
〔00144〕 さらなる好ましいPD−L3またはVISTAポリペプチドは、少なくとも1つの細胞外ドメイン、ならびにシグナルペプチドドメイン、IgVドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインのうちの1つ以上を有し得、好ましくは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本明細書における配列番号1または3のヌクレオチド配列の補体を含む核酸分子にハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされる。例示される単離ヒトおよびマウスPD−L3またはVISTA cDNAのヌクレオチドおよびアミノ酸配列ならびにヒトPD−L3またはVISTAポリペプチドの予測されるアミノ酸配列が、本明細書における配列表に含有される。
【0119】
〔00145〕 ヒトVISTAまたはPD−L3もしくはVISTAは、T細胞転写プロファイリングスクリーンにおいて上方制御される分子として同定された。発明者によるマウスCD4
+T細胞cDNAライブラリから回収された同一の930bp遺伝子産物の特徴付けは、大きさおよび配列を裏付けた。コンピュータ上での配列分析および構造分析は、成熟時の309個のアミノ酸のI型膜貫通タンパク質を予測する。その細胞外ドメインは、23個のアミノ酸のストーク領域、21個の残基の膜貫通セグメント、および97個のアミノ酸の細胞質ドメインに結合される136個のアミノ酸の単一の細胞外Ig−Vドメインを含有する。VISTAの細胞質テールは、いかなるシグナル伝達ドメインをも含有しない。VISTA Ig−VドメインでのBLAST配列検索は、B7ファミリーのPD−L1を、ボーダーラインの有意なe値スコアを有する最も近い進化的に関連したタンパク質と同定した。B7ファミリーメンバーであるPD−L1、PD−L2、B7−H3、およびB7−H4との構造に基づくVISTAの配列アラインメントは、全てのIg−Vドメインタンパク質において系統的に保存されるいくつかのアミノ酸を強調する。
【0120】
〔00146〕 本発明の種々の態様を、以下の項においてさらに詳細に説明する。
〔0127〕 I.PD−L3またはVISTA単離核酸分子
〔00147〕 本発明の一態様は、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドまた
はその生物学的に活性な部分をコードする単離核酸分子、ならびにPD−L3もしくはVISTAをコードする核酸分子(例えば、PD−L3もしくはVISTA mRNA)を特定するハイブリダイゼーションプローブとして使用されるのに十分な核酸フラグメント、およびPD−L3もしくはVISTA核酸分子の増幅または変異のためのPCRプライマーとして使用されるフラグメントに関する。本明細書において使用される「核酸分子」という用語は、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)およびRNA分子(例えば、mRNA)、ならびにヌクレオチド類似体を用いて生成されるDNAまたはRNAの類似体を含むよう意図されている。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であり得るが、好ましくは、二本鎖DNAである。
【0121】
〔00148〕
「単離核酸分子」という用語は、核酸の天然源に存在する他の核酸分子から分離される核酸分子を含む。例えば、ゲノムDNAに関して、「単離」という用語は、ゲノムDNAが自然に伴う染色体から分離される核酸分子を含む。好ましくは、「単離」核酸分子は、核酸が由来する生物のゲノムDNA中で自然に核酸に隣接する配列(すなわち、核酸分子の5’および3’末端に配置される配列)を含まない。例えば、種々の実施形態において、単離PD−L3またはVISTA核酸分子は、核酸分子が由来する細胞のゲノムDNA中で自然に核酸分子に隣接する、約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kb、または0.1kb未満のヌクレオチド配列を含有し得る。さらに、cDNA分子等の「単離」核酸分子は、組換え技術によって産生されるとき、他の細胞物質または培養培地を実質的に含まない場合もあるか、あるいは化学的に合成されるとき、化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない場合もある。
【0122】
〔00149〕
本発明の核酸分子、例えば、配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列またはその部分を有する核酸分子は、標準の分子生物学的技術および本明細書に提供される配列情報を用いて単離され得る。ハイブリダイゼーションプローブとして、配列番号1もしくは3の核酸配列の全てもしくは一部分を用いて、(例えば、Sambrook,J.et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.2nd,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold
Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989に記載されるように)標準のハイブリダイゼーションおよびクローニング技術を用いることによって、PD−L3またはVISTA核酸分子を単離することができる。
【0123】
〔00150〕
さらに、配列番号1もしくは3の全てもしくは一部分を包含する核酸分子またはオルソログもしくは変異体を、配列番号1、2、3、4、もしくは5の配列に基づいて設計される合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって単離することができる。
【0124】
〔00151〕
標準のPCR増幅技術に従って、本発明の核酸分子を、鋳型としてcDNA、mRNA、またはあるいはゲノムDNAを用いて、かつ適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅することができる。そのように増幅された核酸分子を、適切なベクターにクローニングし、かつDNA配列分析で特徴付けることができる。さらに、PD−L3ヌクレオチド配列に対応するオリゴヌクレオチドを、例えば、自動DNA合成機を用いて、標準の合成技術によって調製することができる。
【0125】
〔00152〕
好ましい実施形態において、本発明の核酸分子をコードする単離PD−L3またはVISTAは、配列番号1もしくは3に示されるヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含む。別の実施形態では、本発明の核酸分子は、配列番号1もしくは3に示されるヌクレオチド配列またはこれらのヌクレオチド配列のうちのいずれかの部分の補体である核酸分子を含む。配列番号1もしくは3に示されるヌクレオチド配列に相補的な核酸分子は、それが、それぞれ、配列番号1もしくは3に示されるヌクレオチド配列にハイブリダイズし、それによって、安定した二重鎖を形成することができるように、配列番号1もしくは3に示されるヌクレオチド配列に十分に相補的な核酸分子である。
【0126】
〔00153〕
さらに別の好ましい実施形態では、本発明の単離核酸分子は、配列番号1もしくは3に示されるヌクレオチド配列の全長、またはこれらのヌクレオチド配列のうちのいずれかの部分と少なくとも約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のヌクレオチド配列を含む。
【0127】
〔00154〕
さらに、本発明の核酸分子は、配列番号1もしくは3の核酸配列の部分、例えば、プローブもしくはプライマーとして使用され得るフラグメント、またはPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの部分、例えば、PD−L3もしくはVISTA−ポリペプチドの生物学的に活性な部分をコードするフラグメントのみを含み得る。ヒトPD−L2遺伝子のクローニングから決定されるヌクレオチド配列は、他の種からの他のPD−L2ファミリーメンバーならびにPD−L3またはVISTA相同体の特定および/またはクローニングにおける使用のために設計されるプローブおよびプライマーの生成を可能にする。プローブ/プライマーは、典型的には、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドは、典型的には、ストリンジェントな条件下で、配列番号1もしくは3のセンス配列、配列番号1もしくは3のアンチセンス配列、あるいは配列番号1もしくは3の自然発生対立遺伝子変異体または変異体の少なくとも約12または15、好ましくは、約20または25、より好ましくは、約30、35、40、45、50、55、60、65、または75個の連続ヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。
【0128】
〔00155〕
一実施形態において、本発明の核酸分子は、約50〜100より大きい、100〜150、150〜200、200〜250、250〜300、300〜350、350〜400、400〜450、450〜500、500〜550、550〜600、600〜650、650〜700、700〜750、750〜800、800〜850、850〜900、900〜950以上のヌクレオチド長のヌクレオチド配列を含み、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1もしくは3の核酸分子またはその補体にハイブリダイズする。さらなる実施形態では、本発明の核酸分子は、約880〜900より大きい、900〜950、950〜1000、1000〜1050、1050〜1100、1100〜1150以上のヌクレオチド長のヌクレオチド配列を含み、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1もしくは3の核酸分子またはその補体にハイブリダイズする。さらに別の実施形態では、本発明の核酸分子は、50〜100より大きい、100〜150、150〜200、200〜250、250〜300以上のヌクレオチド長のヌクレオチド配列を含み、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1もしくは3においてコード領域を含む核酸分子またはその補体にハイブリダイズする。さらにさらなる実施形態では、本発明の核酸分子は、約50〜100より大きい、100〜150、150〜200、200〜250、250〜300、300〜350、350〜400、400〜450、450〜500、500〜550、55
0〜600、600〜650、650〜700、700〜750、750〜800、850〜900、900〜950以上のヌクレオチド長のヌクレオチド配列を含み、配列番号1もしくは3のコード領域を含む配列の少なくとも約15(すなわち、15隣接)のヌクレオチドまたはその補体を含み、ストリンジェントな条件下で、配列番号1もしくは3に示されるヌクレオチド配列を含む核酸分子またはその補体にハイブリダイズする。
【0129】
〔00156〕
PD−L3もしくはVISTヌクレオチド配列に基づくプローブを、同一もしくは相同ポリペプチドをコードする転写物またはゲノム配列を検出するために使用することができる。好ましい実施形態では、プローブは、それに付着される標識基をさらに含み、例えば、標識基は、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補助因子であり得る。例えば、対象由来の細胞の試料におけるPD−L3もしくはVISTAをコードする核酸のレベルを測定する、例えば、PD−L3またはVISTA mRNAのレベルを検出することによって、またはゲノムPD−L3もしくはVIST遺伝子が変異または欠失したかを決定することによって、かかるプローブを、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドを誤発現する細胞または組織を特定するための診断検査キットの一部として使用することができる。
【0130】
〔00157〕
PD−L3もしくはVISTAの生物学的活性(例えば、その天然結合パートナー(複数を含む)に結合し、かつ/または免疫細胞活性を調節する能力)を有するポリペプチドをコードする配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列の一部分を単離することによって、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドのコードされた部分を発現することによって(例えば、インビトロでの組換え発現によって)、かつPD−L3もしくはVISTAポリペプチドのコードされた部分の活性を評価することによって、「PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの生物学的に活性な部分」をコードする核酸フラグメントを調製することができる。
【0131】
〔00158〕
本発明は、遺伝暗号の縮重のため、配列番号1もしくは3に示されるヌクレオチド配列とは異なり、したがって、配列番号1もしくは3に示されるヌクレオチド配列によってコードされるものと同一のPD−L3またはVISTAポリペプチドをコードする核酸分子をさらに包含する。別の実施形態では、本発明の単離核酸分子は、配列番号2、4、または5に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチドを有する。
【0132】
〔00159〕
当業者であれば、配列番号1および3に示されるPD−L3またはVISTヌクレオチド配列に加えて、PD−L3またはVISTAポリペプチドのアミノ酸配列の変化につながるDNA配列多型が集団(例えば、ヒト集団)内に存在し得ることを理解するであろう。PD−L3またはVIST遺伝子におけるかかる遺伝的多型は、天然対立遺伝子変異のため、集団内の個人の間に存在し得る。本明細書において使用される「遺伝子」および「組換え遺伝子」という用語は、PD−L3またはVISTAポリペプチド、好ましくは、哺乳類PD−L3またはVISTAポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む核酸分子を指し、非コード制御配列、およびイントロンをさらに含むことができる。
【0133】
〔00160〕
ヒトまたはマウスPD−L3もしくはVISTAの対立遺伝子変異体は、機能的および非機能的なPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの両方を含む。機能的な対立遺伝子変異体は、天然PD−L3もしくはVISTA結合パートナー(複数を含む)に結合す
る能力、ならびに/またはCD4+およびCD8+T細胞増殖およびサイトカイン産生およびリンパ球活性化を調節する能力を維持する、ヒトまたはマウスPD−L3もしくはVISTAポリペプチド自然発生アミノ酸配列変異体である。機能的な対立遺伝子変異体は、典型的には、配列番号2、4、もしくは5の1つ以上のアミノ酸の同類置換のみを含有するか、またはポリペプチドの重要ではない領域における重要ではない残基の置換、欠失、もしくは挿入を含有する。
【0134】
〔00161〕
非機能的な対立遺伝子変異体は、天然PD−L3もしくはVISTA結合パートナーに結合する能力、および/または本明細書に記載のPD−L3もしくはVISTA活性のうちのいずれをも調節する能力を有しない、ヒトまたはマウスPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの自然発生アミノ酸配列変異体である。非機能的な対立遺伝子変異体は、典型的には、配列番号2、4、または5のアミノ酸配列の非同類置換、欠失、もしくは挿入、または途中切断、あるいはポリペプチドの重要な残基または重要な領域、例えば、IgVドメインにおける置換、挿入、もしくは欠失を含有する。
【0135】
〔00162〕
本発明は、ヒトまたはマウスPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの非ヒト、非マウスオルソログをさらに提供する。ヒトまたはマウスPD−L3もしくはVISTAポリペプチドのオルソログは、非ヒト、非マウス生物から単離されるポリペプチドであり、本明細書に開示のヒトおよびマウスPD−L3もしくはVISTAポリペプチドと同一の結合活性および/またはリンパ球活性化調節活性、ならびにCD4+およびCD8+T細胞増殖およびサイトカイン産生を調節する能力を有する。ヒトまたはマウスPD−L3ポリペプチドのオルソログは、配列番号2、4、もしくは5と実質的に同一のアミノ酸配列を含むとして、容易に特定され得る。
【0136】
〔00163〕
さらに、他のPD−L3またはVISTAファミリーメンバーをコードし、したがって、配列番号1もしくは3のPD−L3またはVISTA配列とは異なるヌクレオチド配列を有する核酸分子は、本発明の範囲内に収まるよう意図されている。例えば、別のPD−L3またはVISTA cDNAは、マウスもしくはヒトPD−L3またはVISTAのヌクレオチド配列に基づいて特定され得る。さらに、異なる種由来のPD−L3またはVISTAポリペプチドをコードし、したがって、配列番号1もしくは3のPD−L3またはVISTA配列とは異なるヌクレオチド配列を有する核酸分子は、本発明の範囲内に収まるよう意図されている。例えば、サルPD−L3またはVISTA cDNAを、マウスもしくはヒトPD−L3またはVISTAのヌクレオチド配列に基づいて特定することができる。
【0137】
〔00164〕
本発明のPD−L3もしくはVISTA cDNAの天然対立遺伝子変異体および相同体に対応する核酸分子を、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、標準のハイブリダイゼーション技術に従って、ハイブリダイゼーションプローブとして、本明細書に開示のcDNAを用いて、本明細書に開示のPD−L2核酸またはその部分とのそれらの相同性に基づいて単離することができる。PD−L3もしくはVIST遺伝子と同一の染色体または遺伝子座にマッピングすることによって、本発明のPD−L3もしくはVISTA cDNAの天然対立遺伝子変異体および相同体に対応する核酸分子をさらに単離することができる。
【0138】
〔00165〕
したがって、別の実施形態では、単離本発明の核酸分子は、少なくとも15、20、2
5、30以上のヌクレオチド長であり、ストリンジェントな条件下で、配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列のコード領域を含む核酸分子にハイブリダイズする。他の実施形態では、核酸は、少なくとも700、750、800、850、880〜900、900〜950、950〜1000、1000〜1050、1050〜1100、1100〜1150以上のヌクレオチド長である。
【0139】
〔00166〕
本明細書において使用される「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」という用語は、相互に著しく同一または相同のヌクレオチド配列が相互にハイブリダイズされたままとなる、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件を説明するよう意図される。好ましくは、その条件は、相互に少なくとも約70%、より好ましくは、少なくとも約80%、さらにより好ましくは、少なくとも約85%または90%同一の配列が相互にハイブリダイズされたままの条件である。かかるストリンジェントな条件は、当業者に既知であり、Molecular Biology,Ausubel et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc(1995),第2項、第4項、および第6項における現在のプロトコルで見出すことができる。さらなるストリンジェントな条件を、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、第7章、第9章、および第11章で見出すことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な例には、約65〜70℃の4倍もしくは6倍の塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でのハイブリダイゼーション(または約42〜50℃の4倍のSSCに加えて50%のホルムアミド中でハイブリダイゼーション)、その後、1×SSC中で約65〜70℃での1回以上の洗浄が挙げられる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のさらに好ましい非限定的な例には、45℃の6倍のSSC中でのハイブリダイゼーション、その後、65℃の0.2倍のSSC、0.1%のSDS中での1回以上の洗浄が挙げられる。高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な例には、約65〜70℃の1倍のSSC中でのハイブリダイゼーション(または約42〜50℃の1倍のSSCに加えて50%のホルムアミド中でのハイブリダイゼーション)、その後、約65〜70℃の0.3倍のSSC中での1回以上の洗浄が挙げられる。低下したストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の好ましい非限定的な例には、約50〜60℃の4倍または6倍のSSC中でのハイブリダイゼーション(またはあるいは約40〜45℃の6倍のSSCに加えて50%のホルムアミド中でのハイブリダイゼーション)その後、約50〜60℃の2倍のSSC中での1回以上の洗浄が挙げられる。上述の値に対して中間の範囲、例えば、65〜70℃または42〜50℃はまた、本発明によって包含されるよう意図される。SSPE(1倍のSSPEは、0.15MのNaCl、10mMのNaH2PO4、および1.25mMのEDTA、pH7.4である)を、ハイブリダイゼーションにおいて、かつ洗浄緩衝液中でSSC(1倍のSSCは、0.15MのNaClおよび15mMのクエン酸ナトリウムである)の代わりに用いることができ、ハイブリダイゼーションが完了した後、それぞれ洗浄を15分間行う。50個未満の塩基対の長さであると予想されるハイブリッドに対するハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(Tm)よりも5〜10℃低いはずであり、Tmは、以下の等式に従って決定される。18個未満の塩基対の長さのハイブリッドについては、Tm(℃)−2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)である。18〜49個の塩基対の長さのハイブリッドについては、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)であり、Nは、ハイブリッド中の塩基の数であり、[Na+1]は、ハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である(1倍のSSCの[Na+]=0.165M)。当業者であれば、遮断剤(例えば、BSAまたはサケもしくはニシン精子担体DNA)、洗剤(例えば、SDS)、キレート剤(例えば、EDTA)、Ficoll、PVP等を含むが、それらに限定
されない追加の試薬を、膜、例えば、ニトロセルロースまたはナイロン膜への核酸分子の非特異的なハイブリダイゼーションを減少させるために、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄緩衝液に添加してもよいことも認識する。特に、ナイロン膜を用いる場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のさらなる好ましい非限定的な例は、約65℃の0.25〜0.5MのNaH2PO4、7%のSDS中でのハイブリダイゼーション、その後の65℃の0.02MのNaH2PO4、1%のSDS中での1回以上の洗浄であり、例えば、Church and Gilbert(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA81:1991−1995を参照されたい(またはあるいは、0.2倍のSSC、1%のSDS)。
【0140】
〔00167〕
好ましくは、ストリンジェントな条件下で、配列番号1もしくは3の配列にハイブリダイズする単離本発明の核酸分子は、自然発生核酸分子に対応する。本明細書において使用される「自然発生」核酸分子とは、自然に発生する(すなわち、天然ポリペプチドをコードする)ヌクレオチド配列を有するRNAまたはDNA分子を指す。
【0141】
〔00168〕
集団内に存在し得るPD−L3またはVISTA配列の自然発生対立遺伝子変異体に加えて、当業者であれば、変異によって配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列に変化を導入することができ、それによって、PD−L3またはVISTAポリペプチドの機能的能力を変化させることなく、コードされたPD−L3またはVISTAポリペプチドのアミノ酸配列の変化をもたらすことをさらに理解する。例えば、「非必須」アミノ酸残基でアミノ酸置換をもたらすヌクレオチド置換を配列番号1もしくは3の配列で行うことができる。「非必須」アミノ酸残基が、生物学的活性を変化させることなく、PD−L3またはVISTAの野生型配列(例えば、配列番号2、4、もしくは5の配列)から変化することができる残基である一方で、「必須」アミノ酸残基は、生物学的活性に必要とされる。例えば、本発明のPD−L3またはVISTAポリペプチド、例えば、細胞外ドメイン中に存在するものの間に保存されるアミノ酸残基は、変質に特に従順でないと予測される。さらに、本発明のPD−L3またはVISTAポリペプチドとPD−L3またはVISTAファミリーの他のメンバーとの間に保存される追加のアミノ酸残基は、変更に適切ではない可能性が高い。
【0142】
〔00169〕
したがって、本発明の別の態様は、活性に必須ではないアミノ酸残基の変化を含有するPD−L3またはVISTAポリペプチドをコードする核酸分子に関する。かかるPD−L3またはVISTAポリペプチドは、配列番号2、4、もしくは5とはアミノ酸配列において異なるが、生物学的活性を保持する。一実施形態において、単離核酸分子は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ポリペプチドは、配列番号2、4、もしくは5と少なくとも約71%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上同一のアミノ酸配列を含む。
【0143】
〔00170〕
配列番号2、4、もしくは5のポリペプチドと同一のPD−L3またはVISTAポリペプチドをコードする単離核酸分子を、1つ以上のアミノ酸置換、付加、または欠失が、コードされるポリペプチドに導入されるように、1つ以上のヌクレオチド置換、付加、または欠失を配列番号1もしくは3のヌクレオチド配列に導入することによって作成することができる。部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発等の標準の技術によって、変異を配列番号1もしくは3に導入することができる。好ましくは、保存アミノ酸置換が1つ以上の予測される非必須アミノ酸残基で行われる。「保存アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似した側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられる置換である。類似した側鎖を
有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。したがって、PD−L3またはVISTAポリペプチド中の予測される非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同一の側鎖ファミリー由来の別のアミノ酸残基に置き換えられる。あるいは、別の実施形態では、飽和変異誘発等によって、変異を、PD−L3またはVISTAコード配列の全てまたは一部分に沿って無作為に導入することができ、活性を保持する変異体を特定するために、結果として生じる変異体を、PD−L3またはVISTA生物学的活性についてスクリーニングすることができる。配列番号1もしくは3の変異誘発後、コードされるポリペプチドを組換えによって発現することができ、ポリペプチドの活性を決定することができる。
【0144】
〔00171〕
好ましい実施形態において、変異体PD−L3またはVISTAポリペプチドを、天然PD−L3もしくはVISTA結合パートナーの活性に結合し、かつ/またはそれを調節する能力、細胞内もしくは細胞間シグナル伝達を調節する能力、Tリンパ球の活性化を調節する能力、および/または生物の免疫応答を調節する能力についてアッセイすることができる。
【0145】
〔00172〕
本発明のさらに別の態様は、PD−L3もしくはVISTAPD−L3もしくはVISTAまたはVISTA融合タンパク質をコードする単離核酸分子に関する。非PD−L3もしくはVISTAタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする第2のヌクレオチド配列に作動可能に結合されるPD−L3もしくはVISTAPD−L3もしくはVISTAまたはVISTAタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする少なくとも第1のヌクレオチド配列を含むかかる核酸分子を、標準の組換えDNA技術によって調製することができる。
【0146】
〔00173〕
上述のPD−L3またはVISTAポリペプチドをコードする核酸分子に加えて、本発明の別の態様は、それに対してアンチセンスである単離核酸分子に関する。「アンチセンス」核酸は、ポリペプチドをコードする「センス」核酸に相補的、例えば、二本鎖cDNA分子のコード鎖に相補的、またはmRNA配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。したがって、アンチセンス核酸は、センス核酸に水素結合することができる。アンチセンス核酸は、PD−L3もしくはVISTAコード鎖全体に相補的であり得るか、またはその部分のみに相補的であり得る。一実施形態において、アンチセンス核酸分子は、PD−L3またはVISTAをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の「コード領域」に対してアンチセンスである。「コード領域」という用語は、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域を指す。別の実施形態では、アンチセンス核酸分子は、PD−Lをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の「非コード領域」に対してアンチセンスである。「非コード領域」という用語は、アミノ酸に翻訳されないコード領域(5’および3’非翻訳領域とも称される)に隣接する5’および3’配列を指す。本明細書に開示のヒトまたはマウスPD−L3またはVISTAPD−L3またはVISTAまたはVISTAをコードするコード鎖配列を考慮して、本発明のアンチセンス核酸は、ワトソン・クリック塩基対の規則に従って設計することができる。アンチセンス核酸分子は、PD−L3もしくはVISTA mRNAのコード領域全体に相補的であり得るが、より好まし
くは、PD−L3もしくはVISTA mRNAのコード領域または非コード領域の一部分のみに対してアンチセンスであるオリゴヌクレオチドである。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、PD−L3またはVISTAまたはVISTA mRNAの翻訳開始部位を包囲する領域に相補的であり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50ヌクレオチド長であり得る。本発明のアンチセンス核酸分子を、当分野で既知の手順を用いる化学合成および酵素的ライゲーション反応を用いて構築することができる。例えば、自然発生ヌクレオチド、または分子の生物学的安定性を増加させるか、またはアンチセンス核酸とセンス核酸との間に形成される二重鎖、例えば、ホスホロチオエート誘導体の物理的安定性を増加させるよう設計される様々に修飾されたヌクレオチドを用いて、アンチセンス核酸分子(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)を化学的に合成することができ、かつアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。アンチセンス核酸を生成するために使用することができる修飾ヌクレオチドの例には、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン−、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、ベータ−D−ガラクトシルケウオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルケウオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、偽ウラシル、ケウオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンが挙げられる。あるいは、アンチセンス核酸を、その中で核酸がアンチセンス配向(すなわち、挿入された核酸から転写されるRNAは、以下の項においてさらに説明される関心の標的核酸に対するアンチセンス配向である)でサブクローニングされた発現ベクターを用いて、生物学的に産生することができる。
【0147】
〔00174〕
本発明のアンチセンス核酸分子は、典型的には、対象に投与されるか、またはそれらが、PD−L3もしくはVISTAPD−L3もしくはVISTAまたはVISTAポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAとハイブリダイズするか、あるいはそれに結合し、それによって、例えば、転写および/または翻訳を阻害することによって、ポリペプチドの発現を阻害するように、原位置で生成される。ハイブリダイゼーションは、安定した二重鎖を形成する従来のヌクレオチド相補性によるものであり得るか、または例えば、DNA二重鎖に結合するアンチセンス核酸分子の場合、二重らせんの主溝における特定の相互作用を介するものであり得る。本発明のアンチセンス核酸分子の投与経路の例として、組織部位での直接注入が挙げられる。あるいは、アンチセンス核酸分子を、選択された細胞を標的とするために修飾し、その後、全身投与することができる。例えば、全身投与のために、アンチセンス分子が、例えば、アンチセンス核酸分子を、細胞表面受容体または抗原に結合するペプチドまたは抗体に結合させることによって、選択された細胞表面上で発現される受容体または抗原に特異的に結合するように、アンチセンス分子を修飾することができる。アンチセンス核酸分子を、本明細書に記載のベクターを用いて、細胞に送達することもできる。アンチセンス分子の十分な細胞内濃度を達成するために、アンチセンス核酸分子が、強力なpol IIまたはpol IIIプロモーターの制御下に置かれるベクター構築物が好ましい。
【0148】
〔00175〕
さらに別の実施形態では、本発明のアンチセンス核酸分子は、αアノマー核酸分子である。αアノマー核酸分子は、通常のβユニットに反して、鎖が相互に対して平行に走る相補的RNAで、特定の二本鎖ハイブリッドを形成する(Gaultier et al.(1987)Nucleic Acids Res.15:6625−6641)。アンチセンス核酸分子は、2’−o−メチルリボヌクレオチド(Inoue et al.(1987)Nucleic Acids Res.15:6131−6148)またはキメラRNA−DNA類似体(Inoue et al.(1987)FEBS Lett.215:327−330)を含むこともできる。
【0149】
〔00176〕
さらに別の実施形態では、本発明のアンチセンス核酸は、リボザイムである。リボザイムは、mRNA等の一本鎖核酸を切断することができるリボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNA分子であり、それらは、それに対する相補的領域を有する。したがって、リボザイム(例えば、(Haseloff and Gerlach(1988)Nature
334:585−591に記載される)ハンマーヘッド型リボザイム)を使用して、PD−L3もしくはVISTA mRNA転写物を触媒的に切断し、それによって、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA mRNAの翻訳を阻害することができる。PD−L3またはVISTAをコードする核酸への特異性を有するリボザイムを、本明細書に開示のPD−L3またはVISTA cDNA(すなわち、配列番号1もしくは3)のヌクレオチド配列に基づいて設計することができる。例えば、テトラヒメナL−19 IVS RNAの誘導体を構築することができ、その中で、活性部位のヌクレオチド配列は、PD−L3もしくはVISTAPD−L3もしくはVISTAまたはVISTAをコードするmRNAにおいて切断されるヌクレオチド配列に相補的である。例えば、Cechらの米国特許第4,987,071号およびCechらの米国特許第5,116,742号を参照されたい。あるいは、PD−L3またはVISTA mRNAを使用して、RNA分子のプールから特定のリボヌクレアーゼ活性を有する触媒RNAを選択することができる。例えば、Bartel,D.and Szostak,J.W.(1993)Science 261:1411−1418を参照されたい。
【0150】
〔00177〕
あるいは、PD−L3もしくはVISTAの制御領域(例えば、PD−L3もしくはVISTAプロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的なヌクレオチド配列を標的とすることによって、PD−L3もしくはVISTA遺伝子発現を阻害することができ、標的細胞内でのPD−L3遺伝子の転写を阻止する三重らせん構造を形成する。概して、Helene,C(1991)Anticancer Drug Des.6(6):569−84、Helene,C et al.(1992)Ann.N.Y.Acad.Sci.660:27−36、およびMaher,L.J.(1992)Bioessays 14(12):807−15を参照されたい。
【0151】
〔00178〕
さらに別の実施形態では、例えば、分子の安定性、ハイブリダイゼーション、または溶解性を改善するために、本発明のPD−L3またはVISTA核酸分子を、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格で修飾することができる。例えば、ペプチド核酸を生成するために、核酸分子のデオキシリボースリン酸骨格を修飾することができる(Hyrup,B.and Nielsen,P.E.(1996)Bioorg.Med.Chem.4(1):5−23を参照のこと)。本明細書において使用される、「ペプチド核酸」または「PNA」という用語は、その中でデオキシリボースリン酸骨格が偽ペプチド骨格に置き換えられ、かつ4つの天然核酸塩基のみが保持される核酸模倣物、例えば、DNA模倣物
を指す。PNAの中性骨格が、低イオン強度の条件下でのDNAおよびRNAへの特定のハイブリダイゼーションを可能にすると示されている。Hyrup and Nielsen(1996)(上記参照)およびPerry−O’Keefe et al.(1996)Proc Natl.Acad.Sci.USA93:14670−675に記載される標準の固相ペプチド合成プロトコルを用いて、PNAオリゴマーの合成を行うことができる。
【0152】
〔00179〕
PD−L3またはVISTA核酸分子のPNAを、治療的および診断的適用において使用することができる。例えば、PNAを、例えば、転写もしくは翻訳停止の誘導または複製の阻害による、遺伝子発現の配列特異的調節のためのアンチセンスまたは抗遺伝子作用物質として使用することができる。PD−L3またはVISTA核酸分子のPNAを、遺伝子における単一塩基対変異の分析(例えば、PNA指向性PCRクランピングによる)において、他の酵素(例えば、S1ヌクレアーゼ(Hyrup and Nielsen(1996)上記参照)と組み合わせて使用される場合に「人工制限酵素」として、またはDNA配列決定もしくはハイブリダイゼーションのためのプローブもしくはプライマーとして(Hyrup and Nielsen(1996)上記参照、Perry−O’Keefe et al.(1996)上記参照)使用することもできる。
【0153】
〔00180〕
別の実施形態では、(例えば、それらの安定性または細胞取り込みを強化するために)親油基もしくは他のヘルパー基をPNAに付着させることによって、PNA−DNAの形成によって、またはリポソームの使用もしくは当分野で既知の他の薬物送達技術によって、PD−L3もしくはVISTAのPNAを修飾することができる。例えば、PNAおよびDNAの有利な特性を組み合わせ得るPD−L3もしくはVISTA核酸分子のPNA−DNAキメラを生成することができる。かかるキメラにより、PNA部分が高い結合親和性および特異性を提供しながら、DNA認識酵素(例えば、RNAse HおよびDNAポリメラーゼ)がDNA部分と相互作用することが可能になる。PNA−DNAキメラを、塩基の積み重ね、核酸塩基間の結合数、および配向の観点から選択される適切な長さのリンカーを用いて結合することができる(Hyrup and Nielsen(1996)上記参照)。Hyrup and Nielsen(1996)上記参照およびFinn P.J.et al.(1996)Nucleic Acids Res.24(17):3357−63に記載されるように、PNA−DNAキメラの合成を行うことができる。例えば、標準のホスホラミダイトカップリング化学を用いてDNA鎖を固体支持体上で合成することができ、修飾ヌクレオシド類似体、例えば、5’−(4−メトキシトリチル)アミノ−5’−デオキシ−チミジンホスホラミダイトを、PNAとDNAの5’末端との間の架橋として使用することができる(Mag、M.et al.(1989)Nucleic Acids Res.17:5973−88)。PNAモノマーは、その後、段階的様式でカップリングされて、5’PNAセグメントおよび3’DNAセグメントを用いてキメラ分子を産生する(Finn P.J.et al.(1996)上記参照)。あるいは、キメラ分子を、5’DNAセグメントおよび3’PNAセグメントを用いて合成することができる(Peterser,K.H.et al.(1975)Bioorganic Med.Chem.Lett.5:1119−11124)。
【0154】
〔00181〕
他の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、(例えば、インビボで宿主細胞受容体を標的とするための)ペプチド等の他の付加基、または細胞膜(例えば、Letsinger
et al.(1989)Proc Natl.Acad.Sci.USA 86:6553−6556、Lemaitre et al.(1987)Proc Natl.Acad.Sci.USA 84:648−652、PCT公開第WO88/09810
号を参照のこと)、または血液脳関門(例えば、PCT公開第WO89/10134号を参照のこと)にわたって輸送を促進する作用物質を含むことができる。加えて、オリゴヌクレオチドを、ハイブリダイゼーション誘発型切断剤(例えば、Krol et al.(1988)Biotechniques 6:958−976を参照のこと)または挿入剤(例えば、Zon(1988)Pharm.Res.5:539−549を参照のこと)で修飾することができる。この目的を達成するために、オリゴヌクレオチドは、別の分子(例えば、ペプチド、ハイブリダイゼーション誘発型架橋剤、輸送剤、またはハイブリダイゼーション誘発型切断剤)に抱合される。
【0155】
〔00182〕
あるいは、細胞株または微生物内の内在性PD−L3またはVISTA遺伝子の発現特性は、異種DNA調節要素を安定した細胞株またはクローニングされた微生物のゲノムに挿入して、挿入された調節要素が内在性PD−L3またはVIST遺伝子と作動可能に結合するようにすることによって改変することができる。例えば、通常「転写していない」内在性PD−L3もしくはVIST遺伝子、すなわち、通常発現されないか、または非常に低いレベルで細胞株もしくは微生物内で発現されるPD−L3もしくはVISTA遺伝子を、その細胞株または微生物内で通常発現される遺伝子産物の発現を促進することができる調節要素を挿入することによって活性化することができる。あるいは、転写していない内在性PD−L3またはVIST遺伝子を、複数の細胞型にわたって機能する乱交雑調節要素の挿入によって活性化することができる。
【0156】
〔00183〕
異種調節要素を、当業者に周知であり、かつ、例えば、Chappelの米国特許第5,272,071号、1991年5月16日公開のPCT公開第WO91/06667号に記載される標的化相同組換え等の技術を用いて、それが内在性PD−L3またはVIST遺伝子に作動可能に結合されるように、安定した細胞株またはクローニング微生物に挿入ことができる。
【0157】
II.単離PD−L3またはVISTAポリペプチドおよび抗PD−L3またはVISTA抗体
〔00184〕 本発明の一態様は、単離PD−L3またはVISTAポリペプチド、およびその生物学的に活性な部分、ならびに抗PD−L3またはVISTA抗体を産生する免疫原としての使用に好適なポリペプチドフラグメントに関する。一実施形態において、天然PD−L3またはVISTAポリペプチドを、標準のタンパク質精製技術を用いる適切な精製スキームによって、細胞または組織源から単離することができる。別の実施形態では、PD−L3またはVISTAポリペプチドは、組換えDNA技術によって産生される。組換え発現の代替法として、PD−L3またはVISTAタンパク質またはポリペプチドを、標準のペプチド合成技術を用いて化学的に合成することができる。
【0158】
〔00185〕
「単離」もしくは「精製」ポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分は、細胞物質、またはPD−L3もしくはVISTAポリペプチドが由来する細胞もしくは組織源由来の他の夾雑タンパク質を実質的に含まないか、あるいは化学的に合成されるとき、化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という言い回しは、PD−L3またはVISTAポリペプチドの調製物を含み、その中で、ポリペプチドは、それが単離もしくは組換えによって産生される細胞の細胞成分から分離される。一実施形態において、「を実質的に含まない細胞物質」という言い回しは、約30%(乾燥重量)未満の非PD−L3またはVISTAタンパク質(本明細書において、「夾雑タンパク質」とも称される)、より好ましくは、約20%未満の非PD−L3またはVISTAタンパク質、さらにより好ましくは、約10%未満の非PD−L3またはVIS
TAタンパク質、および最も好ましくは、約5%未満の非PD−L3またはVISTAタンパク質を有するPD−L3またはVISTAポリペプチドの調製物を含む。PD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分が組換えによって産生されるとき、それはまた、好ましくは、培養培地を実質的に含まない、すなわち、培養培地は、タンパク質調製物の体積の約20%未満、より好ましくは、約10%未満、および最も好ましくは、約5%未満を占める。
【0159】
〔00186〕
「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という言い回しは、その中でポリペプチドがポリペプチドの合成に関与する化学的前駆体または他の化学物質から分離されるPD−L3またはVISTAポリペプチドの調製物を含む。一実施形態において、「化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含まない」という言い回しは、約30%(乾燥重量)未満の化学的前駆体または非PD−L3もしくはVISTA化学物質、より好ましくは、約20%未満の化学的前駆体または非PD−L3もしくはVISTA化学物質、さらにより好ましくは、約10%未満の化学的前駆体または非PD−L3もしくはVISTA化学物質、および最も好ましくは、約5%未満の化学的前駆体または非PD−L3もしくはVISTA化学物質を有するPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの調製物を含む。
【0160】
〔00187〕
本明細書において使用される、PD−L3またはVISTAポリペプチドの「生物学的に活性な部分」は、PD−L3またはVISTA分子と、非PD−L3またはVISTA分子、例えば、PD−L3またはVISTAの天然リガンドとの間の相互作用に関与するPD−L3またはVISTAポリペプチドのフラグメントを含む。PD−L3またはVISTAポリペプチドの生物学的に活性な部分は、全長PD−L3もしくはVISTAポリペプチドよりも少ないアミノ酸を含み、かつ少なくとも1つのPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの活性を呈する、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドのアミノ酸配列に十分に同一であるか、またはそれ由来のアミノ酸配列、例えば、配列番号2、4、もしくは5に示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含む。典型的には、生物学的に活性な部分は、少なくとも1つのPD−L3またはVISTAポリペプチドの活性、例えば、抗CD3へのCD4T細胞増殖性応答の調節(抑制)、抗原特異的様式での同族CD4T細胞の増殖性応答の抑制、特定のサイトカイン等の発現への影響を有するドメインまたはモチーフを含む。PD−L3またはVISTAポリペプチドの生物学的に活性な部分は、例えば、25、50、75、100、125、150、175、200、225またはそれ以上のアミノ酸長のポリペプチドであり得る。PD−L3またはVISTAポリペプチドの生物学的に活性な部分を、PD−L3またはVISTA媒介性活性、例えば、免疫細胞活性化を調節する作用物質を開発するための標的として使用することができる。
【0161】
〔00188〕
一実施形態において、PD−L3またはVISTAポリペプチドの生物学的に活性な部分は、細胞外ドメインの少なくとも一部分を含む。本発明のPD−L3またはVISTAポリペプチドの好ましい生物学的に活性な部分が、細胞外ドメインの少なくとも一部分(例えば、IgVを含む)、およびシグナルペプチドドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインのうちの1つ以上を含有し得ることを理解されたい。さらに、その中でポリペプチドの他の領域が除去される他の生物学的に活性な部分を、組換え技術によって調製し、かつ天然PD−L3またはVISTAポリペプチドの機能的活性のうちの1つ以上について評価することができる。
【0162】
〔00189〕
好ましい実施形態において、PD−L3またはVISTAポリペプチドは、配列番号2
、4、もしくは5に示されるアミノ酸配列を有する。他の実施形態では、PD−L3またはVISTAポリペプチドは、配列番号2、4、もしくは5と実質的に同一であり、配列番号2、4、もしくは5のポリペプチドの機能的活性を保持するが、上述の天然対立遺伝子変異または変異誘発のため、アミノ酸配列において異なる。
【0163】
〔00190〕
本発明の核酸およびポリペプチド配列はさらに、「問い合わせ配列」として使用され、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定するために、公開データベースに対して検索を行うことができる。かかる検索を、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて行うことができる。本発明のPD−L3またはVISTA核酸分子と相同のヌクレオチド配列を得るために、BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて行うことができる。本発明のPD−L3またはVISTAポリペプチド分子と相同のアミノ酸配列を得るために、BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=3を用いて行うことができる。比較目的のためにギャップドアラインメントを得るために、ギャップドBLASTを、Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402に記載されるように利用することができる。BLASTおよびギャップドBLASTプログラムを利用するとき、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)の初期パラメータを使用することができる。National Center for Biotechnology Informationのホームページを参照されたい。
【0164】
〔00191〕
本発明はまた、PD−L3またはVISTAキメラまたは融合タンパク質を提供する。本明細書において使用される、PD−L3もしくはVIST「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、非PD−L3もしくはVISTAポリペプチドに作動可能に結合されるPD−L3もしくはVISTAポリペプチドを含む。「PD−L3またはVISTAポリペプチド」が、PD−L3またはVISTA分子に対応するポリペプチドを有するアミノ酸配列を指す一方で、「非PD−L3またはVISTAポリペプチド」は、PD−L3またはVISTAポリペプチドに実質的に相同しないポリペプチド、例えば、PD−L3またはVISTAポリペプチドとは異なり、かつ同一もしくは異なる生物に由来するポリペプチドに対応するポリペプチドを有するアミノ酸配列を指す。PD−L3またはVISTA融合タンパク質内で、PD−L3またはVISTAポリペプチドは、PD−L3またはVISTAポリペプチドの全てもしくは一部分に相当し得る。好ましい実施形態において、PD−L3またはVISTA融合タンパク質は、PD−L3またはVISTAポリペプチドの少なくとも1つの生物学的に活性な部分を含む。別の好ましい実施形態では、PD−L3またはVISTA融合タンパク質は、PD−L3またはVISTAポリペプチドの少なくとも2つのドメインを含む。融合タンパク質内で、「作動可能に結合される」という用語は、PD−L3またはVISTAポリペプチドおよび非PD−L3またはVISTAポリペプチドが、インフレームで相互に融合されることを示すよう意図されている。非PD−L3またはVISTAポリペプチドは、PD−L3またはVISTAポリペプチドのN末端またはC末端に融合され得、PD−L3またはVISTAポリペプチドの溶解性、結合親和性、安定性、または結合価を変化させる部分に対応する。
【0165】
〔00192〕
例えば、一実施形態において、融合タンパク質は、その中でPD−L3またはVISTA配列がGST配列のC末端に融合される、GST−PD−L3またはVISTA融合タンパク質である。かかる融合タンパク質は、組換えPD−L3またはVISTAの精製を促進することができる。別の実施形態では、融合タンパク質は、そのN末端で異種シグナ
ル配列を含有するPD−L3またはVISTAポリペプチドである。ある特定の宿主細胞(例えば、哺乳類宿主細胞)において、PD−L3またはVISTAの発現および/または分泌を、異種シグナル配列の使用を介して増加させることができる。好ましい実施形態において、融合タンパク質は、その中でPD−L3またはVISTA配列がIg分子の部分に融合される、Ig−PD−L3またはVISTA融合タンパク質である。融合タンパク質のIg部分は、免疫グロブリン定常領域、例えば、ヒトCガンマ1ドメインまたはCガンマ4ドメイン(例えば、ヒトIgCガンマlまたはヒトIgCガンマ4のヒンジ、CH2、およびCH3領域を含むことができる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Caponらの米国特許第5,116,964号、同第5,580,756号、同第5,844,095号等を参照のこと)。結果として生じる融合タンパク質は、変化したPD−L3またはVISTA溶解性、結合親和性、安定性、および/または結合価(すなわち、1つの分子当たりの結合部位の数)を有し得、タンパク質精製の効率を増加させ得る。
【0166】
〔00193〕
特に好ましいPD−L3またはVISTA Ig融合タンパク質は、免疫グロブリン定常領域(例えば、Fc領域)に結合されるPD−L3またはVISTAの細胞外ドメイン部分を含む。免疫グロブリン定常領域は、免疫グロブリン構造固有のエフェクター活性を現象させるか、または排除する遺伝的修飾を含有し得る。例えば、PD−L3またはVISTAポリペプチドの細胞外部分をコードするDNAを、例えば、国際特許第WO97/28267号において教示される部位特異的変異誘発によって修飾されるヒトIgGガンマ1および/またはIgGガンマ4のヒンジ、CH2、およびCH3領域をコードするDNAに結合することができる。本発明のPD−L3またはVISTA融合タンパク質を、薬学的組成物に組み込み、対象にインビボ投与することができる。PD−L3またはVISTA融合タンパク質を使用して、PD−L3またはVISTA結合パートナーの生物学的利用能に影響を及ぼすことができる。PD−L3またはVISTA融合タンパク質の使用は、免疫応答の調節から恩恵を受けるであろう状態または障害の治療に治療的に有用であり得る。さらに、本発明のPD−L3またはVISTA−融合タンパク質を、対象において抗PD−L3またはVISTA抗体を産生し、PD−L3またはVISTA結合タンパク質を精製し、かつスクリーニングアッセイにおいて、PD−L3またはVISTAとその天然結合パートナーとの相互作用を阻害する分子を特定する免疫原として使用することができる。
【0167】
〔00194〕
好ましくは、本発明のPD−L3もしくはVISTAキメラまたは融合タンパク質は、標準の組換えDNA技術によって産生される。
【0168】
〔00195〕
本発明はまた、PD−L3もしくはVISTAアゴニスト(模倣体)またはPD−L3もしくはVISTAアンタゴニストのいずれかとして機能するPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの変異体に関する。PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの変異体を、変異誘発、例えば、離散点変異、またはPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの切断によって生成することができる。PD−L3もしくはVISTAポリペプチドのアゴニストは、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの自然発生形態の生物学的活性と実質的に同一の活性、またはそのサブセットを保持することができる。PD−L3またはVISTAポリペプチドのアンタゴニストは、例えば、PD−L3またはVISTAポリペプチドのPD−L3またはVISTA媒介性活性を競合的に調節することによって、PD−L3またはVISTAポリペプチドの自然発生形態の活性のうちの1つ以上を阻害することができる。したがって、限定された機能を有する変異体による治療によって、特定の生物学的効果を誘発することができる。一実施形態において、ポリペプチドの自然
発生形態の生物学的活性のサブセットを有する変異体での対象の治療は、PD−L3またはVISTAポリペプチドの自然発生形態での治療と比較して、対象における副作用が少ない。
【0169】
〔00196〕
一実施形態において、PD−L3もしくはVISTAアゴニスト(模倣体)またはPD−L3もしくはVISTAアンタゴニストのいずれかとして機能するPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの変異体を、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドことたはアンタゴニスト活性について、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの変異体、例えば、切断変異体の組み合わせライブラリをスクリーニングすることによって特定することができる。一実施形態において、PD−L3またはVISTA変異体の変化に富んだライブラリは、核酸レベルでの組み合わせ変異誘発によって生成され、変化に富んだ遺伝子ライブラリによってコードされる。縮重組の可能性のあるPD−L3もしくはVISTA配列が、個別のポリペプチドとして、またはあるいは、その中に縮重組のPD−L3もしくはVISTA配列を含有する一組のより大きい融合タンパク質(例えば、ファージディスプレイ用)として発現可能であるように、PD−L3もしくはVISTA変異体の変化に富んだライブラリを、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的に連結することによって産生することができる。縮重オリゴヌクレオチド配列から可能性のあるPD−L3またはVISTA変異体のライブラリを産生するために使用することができる様々な方法が存在する。縮重遺伝子配列の化学合成を、自動DNA合成機内で行い、その後、合成遺伝子を、適切な発現ベクターに連結することができる。縮重組の遺伝子の使用は、1つの混合物において、所望の組の可能性のあるPD−L3またはVISTA配列をコードする配列全ての提供を可能にする。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は、当分野で既知である(例えば、Narang,S.A.(1983)Tetrahedron 39:3、Itakura et al.(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323、Itakura et al.(1984)Science 198:1056、Ike et al.(1983)Nucleic Acids Res.11:477を参照のこと)。
【0170】
〔00197〕
さらに、PD−L3またはVISTAポリペプチドコード配列のフラグメントのライブラリ加を使用して、スクリーニングおよびその後のPD−L3またはVISTAポリペプチドの変異体の選択のために、PD−L3またはVISTAフラグメントの変化に富んだ集団を生成することができる。一実施形態において、コード配列フラグメントのライブラリを、ニッキングが1つの分子当たり約1回のみ発生する条件下で、PD−L3またはVISTAコード配列の二本鎖PCRフラグメントをヌクレアーゼで処理し、二本鎖DNAを変性させ、DNAを復元して、異なるニック産物由来のセンス/アンチセンス対を含む二本鎖DNAを形成し、S1ヌクレアーゼで処理することによって再編成された二重鎖から一本鎖部分を除去し、かつ結果として生じるフラグメントライブラリを発現ベクターに連結させることによって生成することができる。この方法によって、種々の大きさののPD−L3またはVISTAポリペプチドのN末端、C末端、および内部フラグメントをコードする発現ライブラリを得ることができる。
【0171】
〔00198〕
点変異または切断によって作製される組み合わせライブラリの遺伝子産物のスクリーニング、および選択された特性を有する遺伝子産物のcDNAライブラリのスクリーニングのためのいくつかの技術が当分野で既知である。かかる技術は、PD−L3またはVISTAポリペプチドの組み合わせ変異誘発により生成される遺伝子ライブラリの迅速なスクリーニングに適応可能である。大きな遺伝子ライブラリをスクリーニングするために、高スループット分析に適した、最も広く使用される技術は、典型的には、遺伝子ライブラリ
を複製可能な発現ベクターにクローニングすること、適切な細胞を結果として生じるベクターのライブラリで形質転換すること、および所望の活性の検出がその産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を促進する条件下で、組み合わせ遺伝子を発現することを含む。ライブラリにおける機能的変異体の頻度を強化する新しい技術である、再帰的アンサンブル変異誘発(REM)を、PD−L3またはVISTA変異体を特定するためのスクリーニングアッセイと組み合わせて使用することができる(Arkin and Youvan(1992)Proc Natl.Acad.Sci.USA 89:7811−7815、Delagrave et al.(1993)Protein Eng.6(3):327−331)。
【0172】
〔00199〕
自然発生アミノ酸のみから成るPD−L3またはVISTAポリペプチドに加えて、PD−L3またはVISTAペプチド模倣物も提供される。ペプチド類似体は、鋳型ペプチドの特性に類似した特性を有する非ペプチド薬物として製薬業界において一般に使用される。これらの種類の非ペプチド化合物は、「ペプチド模倣体」または「ペプチド模倣物」と称され(参照により本明細書に組み込まれる、Fauchere,J.(1986)Adv.Drug Res.15:29、Veber and Freidinger(1985)TINS p.392、およびEvans et al.(1987)J.Med.Chem 30:1229)、通常、コンピュータ化分子モデリングモデルを用いて開発される。治療的に有用なペプチドに構造的に類似したペプチド模倣体を使用して、同等の治療または予防効果をもたらすことができる。概して、ヒトまたはマウスPD−L3もしくはVISTA等のパラダイムポリペプチド(すなわち、生物学的または薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似したペプチド模倣物は、当分野で既知であり、かつ以下の参考文献:Spatola,A.F.in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids,Peptides,and Proteins Weinstein,B.,ed.,Marcel Dekker,New York,p.267(1983)、Spatola,A.F.,Vega Data(March1983),Vol.1,Issue 3,“Peptide Backbone Modifications”、Morley,J.S.(1980)Trends.Pharm.Sci.pp.463−468、Hudson,D.et al.(1979)Int.J.Pept.Prot.Res.14:177−185(−−CH2NH−−、CH2CH2−−)、Spatola,A.F.et al.(1986)Life.Sci.38:1243−1249(−−CH2−−S)、Hann,M.M.(1982)J.Chem.SoC Perkin.Trans.I 307−314(−−CH−−CH−−、シスおよびトランス)、Almquist,R.G.et al.(1980)J.Med.Chem.23:1392−1398(−−COCH2−−)、Jennings−White,C et al.(1982)Tetrahedron Lett.23:2533(−−COCH2−−)、Szelke,M.et al.、欧州特許出願第EP45665号(1982)CA:97:39405(−−CH(OH)CH2−−)、Holladay,M.W.et al.(1983)Tetrahedron.Lett.24:4401−4404(−−C(OH)CH2−−)、およびHruby,V.J.(1982)Life Sci.31:189−199(−−CH2−−S−−)(それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる)にさらに記載される方法によって、−−CH2NH−−、−−CH2S−−、−−CH2−−CH2−−、−−CH.dbd.CH−−(シスおよびトランス)、−−COCH2−−、−−CH(OH)CH2−−、ならびに−−CH2SO−−からなる群から選択される結合に任意で置き換えられる1つ以上のペプチド結合を有する。特に好ましい非ペプチド結合は、−−CH2NH−−である。かかるペプチド模倣体は、例えば、より経済的な産生、より高い化学安定性、強化された薬理学的特性(半減期、吸収、効力、有効性等)、変化した特異性(例えば、広範囲の生物学的活性)、低減した抗原性等を含むポリペプチド
実施形態に勝る有意な利点を有し得る。ペプチド模倣物の標識化は、通常、直接的に、またはスペーサ(例えば、アミド基)を介して、定量的構造活性データおよび/または分子モデリングによって予測されるペプチド模倣物上の非干渉位置(複数を含む)への1つ以上の標識の共有結合を伴う。かかる非干渉位置は、概して、ペプチド模倣物が結合して治療効果をもたらす巨大分子(複数を含む)との直接接触しない位置である。ペプチド模倣物の誘導体化(例えば、標識化)は、ペプチド模倣物の所望の生物学的または薬理学的活性を大幅に妨害すべきではない。
【0173】
〔00200〕
同一の種類のD−アミノ酸(例えば、L−リジンの代わりにD−リジン)によるPD−L3またはVISTAアミノ酸配列の1つ以上のアミノ酸の系統的置換を使用して、より安定したペプチドを生成することができる。加えて、PD−L3もしくはVISTAアミノ酸配列または実質的に同一の配列変異を含む拘束されたペプチドを、当分野で既知の方法(参照により本明細書に組み込まれる、Rizo and Gierasch(1992)Annu.Rev.Biochem.61:387)によって、例えば、ペプチドを環化する分子内ジスルフィド架橋を形成することができる内部システイン残基を添加することによって生成することができる。本明細書において特定されるPD−L3またはVISTAポリペプチドのアミノ酸配列は、当業者が、PD−L3またはVISTAペプチド配列およびその配列変異体に対応するポリペプチドを産生することができるようにする。かかるポリペプチドを、高い頻度でより大きいポリペプチドの一部として、PD−L3またはVISTAペプチド配列をコードするポリヌクレオチドの発現によって、原核または真核細胞宿主細胞中で産生することができる。あるいは、かかるペプチドを、化学的方法によって合成することができる。組換え宿主における異種ポリペプチドの発現、ポリペプチドの化学合成、およびインビトロ翻訳のための方法は、当分野で周知である。ある特定のアミノ末端および/もしくはカルボキシ末端修飾ならびに/またはコア配列へのペプチド拡張は、強化された安定性、増加した効力および/もしくは有効性、血清プロテアーゼへの耐性、望ましい薬物動態学的特性等の有利な物理的、化学的、生化学的、および薬理学的特性を提供することができる。ペプチドを治療的に使用して、例えば、患者における共刺激を変化させることによって、疾患を治療することができる。
【0174】
〔00201〕
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体調製のために、標準の技術を用いて、単離PD−L3もしくはVISTAポリペプチド、またはその部分もしくまたはフラグメントを、PD−L3もしくはVISTAに結合する抗体を生成する免疫原として使用することができる。全長PD−L3もしくはVISTAポリペプチドを使用することができるか、またはあるいは、本発明は、免疫原としての使用のために、PD−L3もしくはVISTAの抗原ペプチドフラグメントを提供する。一実施形態において、PD−L3またはVISTAの抗原ペプチドは、配列番号2、4、もしくは5に示されるアミノ酸配列の少なくとも8個のアミノ酸残基を含み、かつペプチドに対して産生される抗体が、PD−L3またはVISTAポリペプチドを有する特定の免疫複合体を形成するように、PD−L3またはVISTAのエピトープを包含する。好ましくは、抗原ペプチドは、少なくとも10個のアミノ酸残基、より好ましくは、少なくとも15個のアミノ酸残基、さらにより好ましくは、少なくとも20個のアミノ酸残基、および最も好ましくは、少なくとも30個のアミノ酸残基を含む。抗原ペプチドによって包含される好ましいエピトープは、ポリペプチドの細胞外ドメイン内に配置されるPD−L3またはVISTAの領域、例えば、親水性領域、ならびに高抗原性を有する領域である。
【0175】
〔00202〕
PD−L3またはVISTA免疫原は、典型的には、好適な対象(例えば、ウサギ、ヤギ、マウス、または他の哺乳動物)を免疫原で免疫することによって、抗体を調製するた
めに使用される。適切な免疫原性調製物は、例えば、組換えによって発現されるPD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたは化学的に合成されるPD−L3もしくはVISTAポリペプチドを含有し得る。調製物は、完全フロインドもしくは不完全アジュバント等のアジュバント、または類似した免疫刺激剤をさらに含み得る。免疫原性PD−L3またはVISTA調製物での好適な対象の免疫化は、ポリクローナル抗PD−L3またはVISTA抗体応答を誘導する。
【0176】
〔00203〕
したがって、本発明の別の態様は、抗PD−L3またはVISTA抗体に関する。本明細書において使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、PD−L3またはVISTA等の抗原に特異的に結合する(それと免疫反応する)抗原結合部位を含有する分子を指す。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例には、抗体をペプシン等の酵素で処理することによって生成することができるF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。本発明は、PD−L3またはVISTA分子に結合するポリクローナルおよびモノクローナル抗体を提供する。本明細書において使用される「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、PD−L3またはVISTAの特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位の1つの種のみを含有する抗体分子の集団を指す。したがって、モノクローナル抗体組成物は、典型的には、それが免疫反応する特定のPD−L3またはVISTAポリペプチドに対する単一結合親和性を示す。
【0177】
〔00204〕
ポリクローナル抗PD−L3またはVISTA抗体を、上述のように、好適な対象をPD−L3またはVISTA免疫原、例えば、PD−L3またはVISTA−Ig融合タンパク質で免疫することによって、調製することができる。免疫された対象における抗PD−L3またはVISTA抗体力価を、固定化PD−L3またはVISTAを用いて、酵素免疫測定法(ELISA)等の標準の技術によって長期にわたって監視することができる。所望される場合、PD−L3またはVISTAに対して指向される抗体分子を、哺乳動物(例えば、血液)から単離し、タンパク質Aクロマトグラフィー等の周知の技術によってさらに精製し、IgG画分を得ることができる。免疫化後の適切な時点で、例えば、抗PD−L3もしくはVISTA抗体力価が最高である時点で、抗体産生細胞を対象から得て、Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495−497によって最初に説明されたハイブリドーマ技術(Brown et al.(1981)J.Immunol.127:539−46、Brown et al.(1980)J.Biol.Chem.255:4980−83、Yeh et al.(1976)Proc Natl.Acad.Sci.USA 76:2927−31、およびYeh et al.(1982)Int.J.Cancer 29:269−75も参照のこと)、近年のヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al.(1983)Immunol.Today 4:72)、EBVハイブリドーマ技術(Cole et al.(1985)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96)、またはトリオーマ技術等の標準の技術によってモノクローナル抗体を調製するために使用することができる。モノクローナル抗体ハイブリドーマを産生するための技術が周知である(概して、Kenneth,R.H.inMonoclonal Antibodies:A New Dimension In Biological Analyses,Plenum Publishing Corp.,New York,N.Y.(1980);Lemer,E.A.(1981)Yale J.Biol.Med.54:387−402;Gefter,M.L.et al.(1977)Somatic
Cell Genet.3:231−36を参照のこと)。簡潔に述べると、不死化細胞株(典型的には、骨髄腫)が、上述のように、PD−L3またはVISTA免疫原で免
疫された哺乳動物由来のリンパ球(典型的には、脾細胞)に融合され、結果として生じるハイブリドーマ細胞の培養上清が、PD−L3またはVISTAに結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを特定するためにスクリーニングされる。リンパ球および不死化細胞株を融合させるために使用される多くの周知のプロトコルのうちのいずれかを、抗PD−L3またはVISTAモノクローナル抗体生成の目的で適用することができる(例えば、Galfre,G.et al.(1977)Nature 266:55052、Gefter et al.(1977)(上記参照)、Lerner(1981)(上記参照)、およびKenneth(1980)(上記参照)を参照のこと)。さらに、当業者であれば、同様に有用なかかる方法の多くの変形が存在することを理解する。典型的には、不死化細胞株(例えば、骨髄腫細胞株)は、リンパ球と同一の哺乳類種由来である。例えば、マウスハイブリドーマを、本発明の免疫原性調製物で免疫されたマウス由来のリンパ球を不死化マウス細胞株で融合させることによって作製することができる。好ましい不死化細胞株は、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含有する培養培地(「HAT培地」)に感受性があるマウス骨髄腫細胞株である。いくつかの骨髄腫細胞株、例えば、P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653、またはSp2/O−Ag14骨髄腫株のうちのいずれかを、標準の技術に従って、融合パートナーとして使用することができる。これらの骨髄腫株は、ATCCから入手可能である。典型的には、HAT感受性マウス骨髄腫細胞は、ポリエチレングリコール(「PEG」)を用いてマウス脾細胞に融合される。融合に起因するハイブリドーマ細胞は、その後、融合していない骨髄腫細胞および非生産的に融合した骨髄腫細胞を死滅させるHAT培地を用いる選択される(融合していない脾細胞は、形質転換されないため、数日後に死亡する)。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば、標準のELISAアッセイを用いて、ハイブリドーマ培養上清をPD−L3またはVISTAに結合する抗体についてスクリーニングすることによって検出される。
【0178】
〔00205〕
PD−L3またはVISTAに結合する抗体を産生するための特定の方法を、当分野で既知の方法および実施例に記載の方法を用いて達成することができる。モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマの調製の代替として、モノクローナル抗PD−L3抗体を、PD−L3またはVISTAを有する組換え組み合わせ免疫グロブリンライブラリ(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリ)をスクリーニングすることによって特定かつ単離し、それによって、PD−L3またはVISTAに結合する免疫グロブリンライブラリメンバーを単離することができる。ファージディスプレイライブラリを生成およびスクリーニングするためのキットが市販されている。
【0179】
〔00206〕
上述のように、これらの抗体は、例えば、IgVドメインまたは他の特定のドメイン中のPD−L3もしくはVISTAの特定のエピトープに結合するものを特定し、かつ/またはPD−L3もしくはVISTAタンパク質に対して高親和性および結合活性を有する抗体を選択するためにスクリーニングされる。加えて、これらの抗体は、インビトロおよびインビボでのPD−L3もしくはVISTAの特定の機能および免疫および免疫細胞への影響を調節するものを特定するためにスクリーニングされる。例えば、CD4+もしくはCD8+T細胞によるサイトカイン産生、CD28共刺激、CD4+T細胞増殖、およびナイーブおよび記憶CD4+T細胞の増殖等を含む、PD−L3もしくはVISTAによって負に制御される免疫機能への特定の抗PD−L3もしくはVISTA抗体の調節作用がある場合、それを確認するために、アッセイを行うことができる。好ましい実施形態において、これらの抗PD−L3もしくはVISTA抗体が、インビボで正反対に挙動する、すなわち、それらが免疫抑制性であるときに、PD−L3もしくはVISTA−Igの存在が、PD−L3もしくはVISTA−Igによる抑制を強化する場合に、インビトロでの可能性のある治療的抗PD−L3もしくはVISTA抗体を特定するためにアッセ
イを行う。本発明は、136アミノ酸細胞外ドメイン、例えば、アミノ酸1〜50、50〜100、100〜136に特異的に結合する抗VISTA抗体、IgVに特異的に結合する抗体、ストーク領域に特異的に結合する抗体、膜貫通領域に特異的に結合する抗体、および細胞質の領域VISTAに特異的に結合する抗体、ならびにそれらの使用を包含する。これらの特定の領域は、本出願において特定される。
【0180】
〔00207〕
さらに、標準の組換えDNA技術を用いて作製することができる、ヒトおよび非ヒト部分の両方を含むキメラおよびヒト化モノクローナル抗体等の組換え抗PD−L3またはVISTA抗体は、本発明の範囲内である。かかるキメラおよびヒト化モノクローナル抗体を、例えば、Robinsonらの国際出願第PCT/US86/02269号、Akiraらの欧州特許出願第184,187号、Taniguchi,M.の欧州特許出願第171,496号、Morrisonらの欧州特許出願第173,494号、NeubergerらのPCT国際公開第WO86/01533号、Cabillyらの米国特許第4,816,567号、Cabillyらの欧州特許出願第125,023号、Better et al.(1988)Science 240:1041−1043、Liu
et al.(1987)Proc Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443、Liu et al.(1987)J.Immunol.139:3521−3526、Sun et al.(1987)Proc Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218、Nishimura et al.(1987)Cancer Res.47:999−1005、Wood et al.(1985)Nature 314:446−449、Shaw et al.(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559、Morrison,S.L.(1985)Science 229:1202−1207、Oi et al.(1986)Biotechniques 4:214、Winterの米国特許第5,225,539号、Jones et al.(1986)Nature 321:552−525、Verhoeyen et al.(1988)Science 239:1534、およびBeidler et al.(1988)J.Immunol.141:4053−4060に記載の方法を用いて、当分野で既知の組換えDNA技術によって産生することができる。
【0181】
〔00208〕
抗PD−L3もしくはVISTA抗体(例えば、モノクローナル抗体)を使用して、親和性クロマトグラフィーまたは免疫沈降等の標準の技術によって、PD−L3もしくはVISTAを単離することができる。抗PD−L3もしくはVISTA抗体は、細胞由来の天然PD−L3もしくはVISTAの精製および宿主細胞内で発現される組換えによって産生されたPD−L3もしくはVISTAの精製を促進することができる。さらに、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの量およびその発現のパターンを評価するために、抗PD−L3もしくはVISTA抗体を使用して、(例えば、細胞溶解物または細胞上清中の)PD−L3もしくはVISTAポリペプチドを検出することができる。抗PD−L3もしくはVISTA抗体を診断的に使用して、例えば、所与の治療計画の有効性を決定するために、臨床試験手順の一環として、組織中のポリペプチド濃度を監視することができる。検出を、抗体を検出可能な物質に結合(すなわち、物理的に結合)させることによって促進することができる。検出可能な物質の例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質が挙げられる。好適な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、好適な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジンビオチンおよびアビジンビオチンが挙げられ、好適な蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリトリンが挙げられ
、発光物質の例には、ルミノールが挙げられ、生物発光物質の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ、好適な放射性物質の例には、1251、1311、35S、または3Hが挙げられる。
【0182】
III.組換え発現ベクターおよび宿主細胞
〔00209〕
本発明の別の態様は、PD−L3またはVISTAポリペプチド(またはその部分)をコードする核酸分子を含有するベクター、好ましくは発現ベクターに関する。本明細書において使用される「ベクター」という用語は、それに結合された別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの1つの種類には、追加のDNAセグメントを連結することができる環状の二本鎖DNAループを指す「プラスミド」がある。ベクターの別の種類には、追加のDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができるウイルスベクターがある。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自己複製の能力がある(例えば、複製の細菌起源を有する細菌性ベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それによって、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある特定のベクターは、それらが作動可能に結合される遺伝子の発現を指向することができる。かかるベクターは、本明細書において、「発現ベクター」と称される。概して、組換えDNA技術において実用的な発現ベクターは、多くの場合、プラスミドの形態である。プラスミドが最も一般的に使用されるベクターの形態であるため、本明細書において、「プラスミド」および「ベクター」を同義に使用することができる。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損性レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ関連ウイルス)等のかかる他の発現ベクターの形態を含むよう意図されている。
【0183】
〔00210〕
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における核酸の発現に好適な形態の本発明の核酸を含み、組換え発現ベクターが、発現される核酸配列に作動可能に結合される、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択される1つ以上の制御配列を含むことを意味する。組換え発現ベクター内で「作動可能に結合される」とは、関心のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で(例えば、インビトロ転写翻訳系において、またはベクターが宿主細胞に導入される際の宿主細胞において)、制御配列(複数を含む)に結合されることを意味するよう意図されている。「制御配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むよう意図されている。かかる制御配列は、例えば、Goeddel(1990)Methods Enzymol.185:3−7に記載されている。制御配列は、多くの種類の宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を指向する配列、およびある特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指向する配列(例えば、組織特異的制御配列)を含む。当業者であれば、発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等の要因に依存し得ることを理解する。本発明の発現ベクターを、宿主細胞に導入し、それによって、本明細書に記載の核酸によってコードされる、融合タンパク質またはペプチドを含むタンパク質またはペプチド(例えば、PD−L3もしくはVISTAポリペプチド、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの変異体形態、融合タンパク質等)を産生することができる。
【0184】
〔00211〕
本発明の組換え発現ベクターを、原核または真核細胞におけるPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの発現のために設計することができる。例えば、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドを、大腸菌等の細菌性細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを用いて)、酵母細胞、または哺乳類細胞において発現することができる。好適な
宿主細胞は、Goeddel(1990)(上記参照)においてさらに考察される。あるいは、組換え発現ベクターを、例えば、T7プロモーター制御配列およびT7ポリメラーゼを用いて、インビトロで転写および翻訳することができる。精製された融合タンパク質を、PD−L3もしくはVISTA活性アッセイ(例えば、以下で詳細に説明される直接アッセイまたは競合アッセイ)において利用することができるか、または例えば、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドに特異的な抗体を生成することができる。別の実施形態では、PD−L3またはVISTA発現ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母サッカロミセス・セレビシエにおける発現のためのベクターの例には、pYepSecl(Baldari et al.(1987)EMBO J.6:229−234)、pMFa(Kurjan and Herskowitz(1982)Cell 30:933−943)、pJRY88(Schultz et al.(1987)Gene 54:113−123)、pYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,Calif.)、およびpicZ(Invitrogen Corp,San Diego,Calif.)が挙げられる。あるいは、PD−L3またはVISTAポリペプチドを、バキュロウイルス発現ベクターを用いて、昆虫細胞において発現することができる。培養された昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)におけるポリペプチドの発現に利用可能なバキュロウイルスベクターには、pAcシリーズ(Smith et al.(1983)Mol.Cell Biol.3:2156−2165)およびpVLシリーズ(Lucklow and Summers(1989)Virology 170:31−39)が含まれる。さらに別の実施形態では、本発明の核酸を、哺乳類発現ベクターを用いて、哺乳類細胞において発現する。哺乳類発現ベクターの例には、pCDM8(Seed,B.(1987)Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufman et al.(1987)EMBO J.6:187−195)が挙げられる。哺乳類細胞で使用されるとき、発現ベクターの制御機能は、多くの場合、ウイルス調節要素によって提供される。例えば、一般に使用されているプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40由来である。原核細胞および真核細胞の両方における他の好適な発現系については、Sambrook,J.et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual.2nd ed.,Cold Spring Harbor
Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989の第16章および第17章を参照されたい。
【0185】
〔00212〕
別の実施形態では、組換え哺乳類発現ベクターは、特定の細胞型における核酸の発現を優先的に指向することができる(例えば、組織特異的調節要素を使用して核酸を発現する)。組織特異的調節要素は、当分野で既知である。好適な組織特異的プロモーターの非限定的な例には、アルブミンプロモーター(肝臓特異的、Pinkert et al.(1987)Genes Dev.1:268−277)、リンパ球特異的プロモーター(Calame and Eaton(1988)Adv.Immunol.43:235−275)、T細胞受容体の特定のプロモーター(Winoto and Baltimore(1989)EMBO J.8:729−733)および免疫グロブリン(Banerji et al.(1983)Cell 33:729−740、Queen and Baltimore(1983)Cell 33:741−748)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、ニューロフィラメントプロモーター、Byrne and
Ruddle(1989)Proc Natl.Acad.Sci.USA 86:5473−5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlund et al.(1985)Science 230:912−916)、ならびに乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター、米国特許第4,873,316号および欧州出願公開第264,166号)が挙げられる。発生的に調節されるプロモーターは、例えば、マウスホックス
プロモーター(Kessel and Gruss(1990)Science 249:374−379)およびαフェトプロテインプロモーター(Campes and Tilghman(1989)Genes Dev.3:537−546)によっても包含される。
【0186】
〔00213〕
本発明は、アンチセンス配向で発現ベクターにクローニングされる本発明のDNA分子を含む組換え発現ベクターをさらに提供する。すなわち、DNA分子は、PD−L3またはVISTA mRNAに対してアンチセンスであるRNA分子の発現(DNA分子の転写による)を可能にする様式で、制御配列に作動可能に結合される。様々な細胞型におけるアンチセンスRNA分子の連続発現を指向する、アンチセンス配向でクローニングされる核酸分子に作動可能に結合される制御配列、例えば、ウイルスプロモーターおよび/もしくはエンハンサーを選択することができるか、またはアンチセンスRNAの構成的、組織特異的、もしくは細胞型特異的発現を指向する制御配列を選択することができる。アンチセンス発現ベクターは、その中でアンチセンス核酸が高効率の調節領域の制御下で産生される組換えプラスミド、ファージミド、または弱毒化ウイルスの形態であり得、その活性を、ベクターが導入される細胞型で決定することができる。アンチセンス遺伝子を用いた遺伝子発現の制御についての考察に関して、Weintraub,H.et al.,Antisense RNA as a molecular tool for geneticanalysis,Reviews−Trends in Genetics,Vol.1(1)1986を参照されたい。
【0187】
〔00214〕
本発明の別の態様は、本発明のPD−L3もしくはVISTA核酸分子、例えば、組換え発現ベクター内のPD−L3もしくはVISTA核酸分子、またはそれが宿主細胞のゲノムの特定の部位に相同的に組換えることを可能にする配列を含有するPD−L3もしくはVISTA核酸分子が導入される宿主細胞に関する。「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書において同義に使用される。かかる用語が、特定の対象細胞のみならず、かかる細胞の子孫または潜在的子孫も指すことが理解される。変異または環境の影響のいずれかの理由から、ある特定の修飾が後世で発生するため、かかる子孫は、事実上、親細胞と同一でない場合もあるが、依然として、本明細書において使用される用語の範囲内に含まれる。宿主細胞は、任意の原核または真核細胞であり得る。ベクターDNAを、従来の形質転換またはトランスフェクション技術を介して、原核または真核細胞に導入することができる。本明細書において使用される「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、または電気穿孔を含む、当技術分野で認識されている、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞に導入するための様々な技術を指すよう意図されている。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするための好適な方法を、Sambrook et al.(Molecular Cloning:A Laboratory Manual.2nd,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)、および他の実験の手引きにおいて見出すことができる。これらの組み込み体を同定および選択するために、選択可能なマーカーをコードする遺伝子(例えば、抗生物質への耐性)は、概して、関心の遺伝子とともに宿主細胞に導入される。好ましい選択可能なマーカーは、G418、ハイグロマイシン、およびメトトレキサート等の薬物に耐性を付与するマーカーを含む。培養中の原核または真核細胞宿主細胞等の本発明の宿主細胞を使用して、を使用して、PD−L3またはVISTAポリペプチドを産生する(すなわち、を発現する)ことができる。したがって、本発明は、本発明の宿主細胞を用いてPD−L3またはVISTAポリペプチドを産生するための方法をさらに提供する。一
実施形態において、本方法は、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドが産生されるように、(その中にPD−L3もしくはVISTAポリペプチドをコードする組換え発現ベクターが導入された)本発明の宿主細胞を好適な培地で培養することを含む。別の実施形態では、本方法はさらに、培地または宿主細胞からPD−L3もしくはVISTAポリペプチドを単離することを含む。
【0188】
〔00215〕
本発明の宿主細胞を使用して、非ヒト遺伝子導入動物を産生することもできる。例えば、一実施形態において、本発明の宿主細胞は、その中でPD−L3もしくはVISTA−コード配列が導入された受精卵母細胞または胚幹細胞である。ひいては、かかる宿主細胞を使用して、外因性PD−L3もしくはVISTA配列を、内在性PD−L3もしくはVISTA配列がその中で変化したそれらのゲノムまたは相同組換え動物に導入した、非ヒト遺伝子導入動物を作製することができる。かかる動物は、PD−L3もしくはVISTAの機能および/または活性の研究、ならびにPD−L3もしくはVISTA活性の調節因子の同定および/または評価に有用である。本明細書において使用される「遺伝子導入動物」は、非ヒト動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ラットまたはマウス等の齧歯類であり、それらの動物の細胞のうちの1つ以上は、導入遺伝子を含む。遺伝子導入動物の他の例には、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両生類等が挙げられる。導入遺伝子は、遺伝子導入動物がそれから発達し、かつ成熟動物のゲノムに残存する細胞のゲノムに組み込まれ、それによって、遺伝子導入動物の1つ以上の細胞型または組織におけるコードされた遺伝子産物の発現を指向する外因性DNAである。本明細書において使用される「相同組換え動物」は、動物の発達の前に、内在性PD−L3またはVIST遺伝子が、内在性遺伝子と、動物の細胞、例えば、動物の胚細胞に導入される外因性DNA分子との間の相同組換えによって変化した、非ヒト動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、マウスである。PD−L3またはVISTAをコードする核酸を、例えば、マイクロインジェクションによって、レトロウイルス感染によって、および卵母細胞を偽妊娠した雌里親動物において発生させることにより、受精卵母細胞の雄前核に導入することによって、本発明の遺伝子導入動物を作製することができる。配列番号1もしくは4のPD−L3またはVISTA cDNA配列を、導入遺伝子として、非ヒト動物のゲノムに導入することができる。あるいは、サルもしくはラットPD−L3またはVIST遺伝子等のヒトPD−L3またはVIST遺伝子の非ヒト相同体を、導入遺伝子として使用することができる。あるいは、別のPD−L3またはVISTAファミリーメンバー等のPD−L3またはVIST遺伝子相同体を、配列番号1もしくは3のPD−L3またはVISTA cDNA配列へのハイブリダイゼーションに基づいて単離することができ(上の第I項においてさらに説明される)、かつ導入遺伝子として使用することができる。導入遺伝子の発現の効率を増加させるために、イントロン配列およびポリアデニル化シグナルが、導入遺伝子に包含され得る。組織特異的制御配列(複数を含む)を、PD−L3またはVISTA導入遺伝子に作動可能に結合させて、PD−L3またはVISTAポリペプチドの発現を特定の細胞に指向することができる。胚操作およびマイクロインジェクションを介して遺伝子導入動物、特にマウス等の動物を生成するための方法は、当分野で定着しており、例えば、両方ともにLederらの米国特許第4,736,866号および同第4,870,009号、Wagnerらの米国特許第4,873,191号、およびHogan,B.,Manipulating the Mouse Embryo(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986)において記載されている。類似の方法が、他の遺伝子導入動物の産生のために使用される。遺伝子導入創始動物を、そのゲノム中のPD−L3もしくはVISTA導入遺伝子の存在および/または動物の組織もしくは細胞におけるPD−L3もしくはVISTA mRNAの発現に基づいて同定することができる。ひいては、遺伝子導入創始動物を用いて、導入遺伝子を担持する追加の動物を繁殖させることができる。さらに、PD−L3またはVISTAポリペプチド
をコードする導入遺伝子を担持する遺伝子導入動物をさらに繁殖させて、他の導入遺伝子を担持する他の遺伝子導入動物にすることができる。
【0189】
〔00216〕
相同組換え動物を作製するために、欠失、付加、または置換が導入され、それによって、PD−L3またはVIST遺伝子を変化させる、例えば、機能的に撹乱する、PD−L3またはVIST遺伝子の少なくとも一部分を含有するベクターが調製される。PD−L3またはVIST遺伝子は、ヒトまたはマウス遺伝子(例えば、配列番号1もしくは3のcDNA)であり得る。
【0190】
〔00217〕
別の実施形態では、導入遺伝子の制御された発現を可能にする選択された系を含有する遺伝子導入非ヒト動物を産生することができる。かかる系の一例には、バクテリオファージPIのcre/loxPリコンビナーゼ系がある。cre/loxPリコンビナーゼ系の説明については、例えば、Lakso et al.(1992)Proc Natl.Acad.Sci.USA 89:6232−6236を参照されたい。リコンビナーゼ系の別の例には、サッカロミセス・セレビシエのFLPリコンビナーゼ系がある(O’Gorman et al.(1991)Science 251:1351−1355)。導入遺伝子の発現を制御するためにcre/loxPリコンビナーゼ系が使用される場合、Creリコンビナーゼおよび選択されたポリペプチドの両方をコードする導入遺伝子を含有する動物が必要とされる。かかる動物は、「2つの」遺伝子導入動物の構築を介して、例えば、一方が、選択されたポリペプチドをコードする導入遺伝子を含有し、他方が、リコンビナーゼをコードする導入遺伝子を含有する、2つの遺伝子導入動物を交配させることによって提供され得る。
【0191】
〔00218〕
本明細書に記載の非ヒト遺伝子導入動物のクローンを、Wilmut,I.et al.(1997)Nature 385:810−813ならびにPCT国際公開第WO97/07668号および同第WO97/07669号に記載される方法に従って産生することもできる。手短に述べると、遺伝子導入動物由来の細胞、例えば、体細胞を単離および誘導して、成長周期から脱してGO期に入らせることができる。その後、静止細胞を、例えば、電気パルスの使用を介して、静止細胞が単離された同一の種の動物由来の除核卵母細胞に融合することができる。構築物された卵母細胞は、次に、桑実胚または胞胚期に進化するように培養され、その後、偽妊娠した雌里親動物に移される。この雌里親動物由来の子孫は、細胞、例えば、体細胞が単離される動物のクローンである。
【0192】
IV.薬学的組成物
〔00219〕 本発明のPD−L3もしくはVISTA分子、例えば、PD−L3もしくはVISTA核酸分子、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドのフラグメント、および抗PD−L3もしくはVISTA抗体(本明細書において、「活性化合物」または「調節剤」とも称される)を、投与に好適な薬学的組成物に組み込むことができる。かかる組成物は、典型的には、核酸分子、ポリペプチド、または抗体、および担体、例えば、薬学的に許容される担体を含む。本明細書において使用される「薬学的に許容される担体」という言い回しは、薬学的投与に適合する任意および全ての溶媒、分散媒、被覆物、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含むよう意図されている。薬学的に活性な物質へのかかる媒体および作用物質の使用は、当分野で周知である。任意の従来の媒体または作用物質が活性化合物に適合する場合を除いて、組成物におけるその使用が企図される。補助的な活性化合物を、組成物に組み込むこともできる。
【0193】
〔00220〕
上述のように、かかる組成物は、所望の抗原、例えば、腫瘍抗原、またはToll様の受容体アゴニスト、アルファおよびベータインターフェロン等の1型インターフェロン、ならびにアゴニストCD40抗体および抗体フラグメント、好ましくは、抗ヒトCD40アゴニスト抗体および抗体フラグメント等のCD40アゴニスト等の別の免疫調節化合物、またはPD−L1、PD−L2、CTLA4融合タンパク質等の他の免疫エンハンサーもしくは抑制因子およびそれに特異的な抗体をさらに含み得る。
【0194】
〔00221〕
いくつかの好ましい実施形態では、組成物またはPD−L3もしくはVISTAに基づく治療は、抗原または他の免疫アゴニストをさらに含む。組成物または治療において存在するとき、抗原を、組み合わせの他の成分との併用で、抗原に対する免疫応答を発生させるのに効果的な量で投与することができる。例えば、抗原を、約100μg/kg〜約100mg/kgの量で投与することができる。いくつかの実施形態において、抗原を、約10μg/kg〜約10mg/kgの量で投与することができる。いくつかの実施形態において、抗原を、約1mg/kg〜約5mg/kgの量で投与することができる。しかしながら、免疫応答を発生させるのに効果的な量を構成する特定の量の抗原は、例えば、投与される特定の抗原、投与される特定のアゴニスト、およびそれらの量;投与される特定のアゴニスト、およびその量;免疫系の状態;アゴニストおよび抗原の投与方法および順序;製剤が投与される種;ならびに所望の治療結果等のある特定の要因にある程度依存する。したがって、有効な量の抗原を構成する量を一般に説明するのは実用的ではない。しかしながら、当業者は、かかる要因を十分に考慮して、適切な量を容易に決定することができる。
【0195】
〔0176〕
抗原は、例えば、CD8+T細胞応答、NKT細胞応答、γ/δT細胞応答、またはTh1抗体応答のうちの1つ以上を含むTh1免疫応答をもたらすことができる任意の物質であり得る。好適な抗原には、ペプチド;ポリペプチド;脂質;糖脂質;多糖類;炭水化物;ポリヌクレオチド;プリオン;生細菌または不活性化細菌、ウイルスまたは真菌類;および細菌性、ウイルス性、真菌性、原虫、腫瘍由来、または生物由来抗原、毒素、またはトキソイドが含まれるが、それらに限定されない。
【0196】
〔0177〕
さらに、ある特定の現在実験的な抗原、特に、強力な免疫応答をもたらさない組換えタンパク質、糖タンパク質、およびペプチド等の物質を、本発明のアジュバント組み合わせ物と関連して使用することができる。例示的な実験的サブユニット抗原は、アデノウイルス、AIDS、水疱瘡、サイトメガロウイルス、デング熱、猫白血病、家禽ペスト、A型肝炎、B型肝炎、HSV−1、HSV−2、豚コレラ、A型インフルエンザ、B型インフルエンザ、日本脳炎、麻疹、パラインフルエンザ、狂犬病、呼吸器合胞体ウイルス、ロタウイルス、疣贅、および黄熱等のウイルス性疾患に関連した抗原を含む。
【0197】
〔0178〕
一実施形態において、抗原は、癌抗原または腫瘍抗原であり得る。癌抗原および腫瘍抗原という擁護は、同義に使用され、癌細胞によって差次的に発現される抗原を指す。したがって、癌細胞に対する免疫応答を差次的に標的化する癌抗原を開発することができる。したがって、癌抗原は、腫瘍特異的免疫応答を潜在的に刺激し得る。ある特定の癌抗原は、必ずしも発現されるわけではないが、正常細胞によってコードされる。これらの抗原のうちのいくつかは、正常細胞において、通常サイレント(すなわち、発現されない)と見なされ得、それらは、ある特定の分化段階でのみ発現され、かつ時間的に発現される(例えば、胚抗原および胎児性抗原)。他の癌抗原は、例えば、癌遺伝子(例えば、活性化ラス癌遺伝子)、抑制遺伝子(例えば、変異体p53)等の変異体細胞遺伝子、または内部
欠失または染色体転座に起因する融合タンパク質によってコードされ得る。さらに他の癌抗原は、RNAおよびDNA腫瘍ウイルスによって担持される遺伝子等のウイルス遺伝子によってコードされ得る。
【0198】
〔0179〕
腫瘍抗原の例には、MAGE、MART−1/Melan−A、gp100、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPUV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(ADAbp)、サイクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)−C017−1A/GA733、癌胎児性抗原(CEA)ならびにその抗原エピトープCAP−1およびCAP−2、etv6、am11、前立腺特異抗原(PSA)ならびにその抗原エピトープPSA−1、PSA−2、およびPSA−3、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、T細胞受容体/CD3−ゼータ鎖、腫瘍抗原のMAGE−ファミリー(例えば、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A5、MAGE−A6、MAGE−A7、MAGE−A8、MAGE−A9、MAGE−A10、MAGE−A11、MAGE−A12、MAGE−Xp2(MAGE−B2)、MAGE−Xp3(MAGE−B3)、MAGE−Xp4(MAGE−B4)、MAGE−C1、MAGE−C2、MAGE−C3、MAGE−C4、MAGE−C5)、腫瘍抗原のGAGE−ファミリー(例えば、GAGE−1、GAGE−2、GAGE−3、GAGE−4、GAGE−5、GAGE−6、GAGE−7、GAGE−8、GAGE−9)、BAGE、RAGE、LAGE−1、NAG、GnT−V、MUM−1、CDK4、チロシナーゼ、p53、MUCファミリー、HER2/neu、p21ras、RCAS1、αフェトプロテイン、εカドヘリン、α、βカテニン、γカテニン、p120ctn、gp10.sup.Pmel117、PRAME、NY−ESO−1、cdc27、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質(APC)、フォドリン、コネキシン37、Ig−イディオタイプ、p15、gp75、GM2およびGD2ガングリオシド、ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質等のウイルス産物、腫瘍抗原のSmadファミリー、Imp−1、PIA、EBV−コードされた核抗原(EBNA)−1、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX−1、SSX−2(HOM−MEL−40)、SSX−3、SSX−4、SSX−5、SCP−1、およびCT−7、ならびにc−erbB−2が挙げられる。
【0199】
〔0180〕
癌または腫瘍およびかかる腫瘍と関連している(が排他的ではない)特定の腫瘍抗原には、急性リンパ芽球性白血病(etv6、am11、サイクロフィリンb)、B細胞リンパ腫(Ig−イディオタイプ)、神経膠腫(E−カドヘリン、αカテニン、βカテニン、γカテニン、p120ctn)、膀胱癌(p21ras)、胆道癌(p21ras)、乳癌(MUCファミリー、HER2 neu、c−erbB−2)、子宮頸癌(p53、p21ras)、結腸癌(p21ras、HER2 neu、c−erbB−2、MUCファミリー)、結腸直腸癌(結腸直腸関連抗原(CRC)−CO17−1 A GA733、APC)、絨毛腫(CEA)、上皮細胞癌(サイクロフィリンb)、胃癌(HER2 neu、c−erbB−2、ga733糖タンパク質)、肝細胞癌(αフェトプロテイン)、ホジキンリンパ腫(Imp−1、EBNA−1)、肺癌(CEA、MAGE−3、NY−ESO−1)、リンパ球様細胞由来の白血病(サイクロフィリンb)、黒色腫(p5タンパク質、gp75、腫瘍胎児抗原、GM2およびGD2ガングリオシド、Melan−A/MART−1、cdc27、MAGE−3、p21ras、gp100.sup.Pmel117)、骨髄腫(MUCファミリー、p21ras)、非小細胞肺癌(HER2/neu、c−erbB−2)、鼻咽腔癌(Imp−1、EBNA−1)、卵巣癌(MUCファミリー、HER2/neu、c−erbB−2)、前立腺癌(前立腺特異抗原(PSA)ならびにその抗原エピトープPSA−1、PSA−2、およびPSA−3、PSMA、HER2/neu、c−erbB−2、ga733糖タンパク質)、腎臓癌(HER2/neu、c−erbB−2)、頸部および食道の扁平上皮癌(ヒト乳頭腫ウイルス
タンパク質等のウイルス産物)、精巣癌(NY−ESO−1)、ならびにT細胞白血病(HTLV−1エピトープ)が含まれる。
【0200】
〔00222〕
本発明の薬学的組成物は、その目的とする投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例には、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(局所)、経粘膜、および直腸投与が挙げられる。非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含むことができる:注入用の水、食塩液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒等の無菌希釈液;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化物質;エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩等の緩衝液;および塩化ナトリウムまたはブドウ糖等の張度の調整用の作用物質。pHを、塩酸または水酸化ナトリウム等の酸または塩基で調整することができる。非経口調製物を、ガラスまたはプラスチックで作製されるアンプル、使い捨てシリンジ、または複数回投与バイアル内に封入することができる。
【0201】
〔00223〕
注入用途に好適な薬学的組成物は、無菌水溶液(水溶性である)または分散液、および無菌注入溶液または分散液の即時調製用の無菌粉末を含む。静脈内投与のために、好適な担体は、生理食塩水、静菌水、クレモホールEL.TM.(BASF,Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。全ての場合において、組成物は、無菌でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度まで流動性であるべきである。それは、製造および保存の条件下で安定しなければならず、細菌および真菌類等の微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、ならびにそれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性を、例えば、レシチン等の被覆物の使用によって、分散時の所要の粒径の維持によって、かつ界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の阻止を、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等で達成することができる。多くの場合において、組成物中に、等張剤、例えば、糖類、マンニトール等の多価アルコール、ソルビトール、および塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注入可能な組成物の長期吸収を、組成物中に吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによって実現することができる。
【0202】
〔00224〕
上に列挙される成分のうちの1つまたは組み合わせを有する適切な溶媒中で、活性化合物(例えば、PD−L3もしくはVISTA核酸分子、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドのフラグメント、抗PD−L3もしくはVISTA抗体、または抗PD−L3もしくはVISTA抗体と抗PD−L1抗体との組み合わせ等の調節剤)を所要の量組み込むことによって、無菌注入溶液を調製することができ、その後、必要に応じて、濾過による殺菌が続く。概して、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒および上に列挙される成分の所要の他の成分を含有する無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注入溶液の調製のための無菌粉末について、好ましい調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、活性成分に加えて、先に無菌濾過されたその溶液由来の任意のさらなる所望の成分の粉末を産出する。
【0203】
〔00225〕
経口組成物は、概して、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらをゼラチンカプセルに封入することができるか、または錠剤に圧縮することができる。治療のための経口投
与の目的で、活性化合物を、賦形剤と組み込むことができ、錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用することができる。マウスウォッシュ用のための流動性担体を用いて、経口組成物を調製することもでき、流動性担体中の化合物は、経口適用され、滞留され、かつ喀出されるか、または嚥下される。薬学的に適合性のある結合剤、および/またはアジュバント物質を、組成物の一部として含むことができる。錠剤、丸剤、カプセル、トローチ等は、以下の成分または類似した性質の化合物のうちのいずれをも含有することができる:微結晶性セルロース、トラガカントゴム、もしくはゼラチン等の結合剤;デンプンもしくは乳糖等の賦形剤;アルギン酸、Primogel、もしくはトウモロコシデンプン等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはSterote等の滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素等の流動促進剤;蔗糖もしくはサッカリン等の甘味剤;またはペパーミント、メチルサリチル酸、もしくはオレンジ香味料等の香味剤。
【0204】
〔00226〕
吸入による投与のために、化合物は、好適な推進剤、例えば、二酸化炭素等のガスを含有する加圧容器もしくは分配器、またはネブライザから、エアゾル噴霧の形態で送達される。
【0205】
〔00227〕
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段により得る。経粘膜または経皮投与のために、浸透されるバリアに適切な浸透剤が、製剤において使用される。かかる浸透剤は、概して、当分野で既知であり、例えば、経粘膜投与において、洗剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与を、鼻内噴霧または坐剤の使用を介して達成することができる。経皮投与について、活性化合物は、概して、当分野で既知のように、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、またはクリームに製剤化される。
【0206】
〔00228〕
化合物を、直腸送達のために、坐剤(例えば、ココアバター等の従来の坐剤基剤および他のグリセリドを有する)または停留浣腸剤の形態で調製することができる。一実施形態において、活性化合物は、化合物を身体からの迅速な排除から保護する、移植片およびマイクロカプセル化送達系を含む、制御放出製剤等の担体で調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸等の生分解性かつ生体適合性のポリマーを使用することができる。かかる製剤の調製方法は、当業者には明らかである。物質をAlza CorporationおよびNova
Pharmaceuticals,Incから商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞に標的化されるリポソームを含む)を、薬学的に許容される担体として使用することもできる。これらを、当業者に既知の方法に従って、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるように調製することができる。
【0207】
〔00229〕
経口または非経口組成物を、投与の容易さおよび投与量の均一性のために、投与単位形態で製剤化することが特に有利である。本明細書において使用される投与単位形態とは、単位投与量として治療される対象に適した物理的に分離した単位を指し、それぞれの単位は、所要の薬学的担体に関連して所望の治療効果をもたらすよう計算された既定の量の活性化合物を含有する。本発明の投与単位形態の規格は、活性化合物の特有の特性および達成される特定の治療効果、ならびに個人の治療のためにかかる活性化合物を配合する分野固有の制限によって指示され、かつそれらに直接依存している。
【0208】
〔00230〕
かかる化合物の毒性および治療的有効性を、細胞培養物または実験的動物における標準
の薬学的処置によって決定することができる。細胞培養物アッセイおよび動物研究から入手されるデータを、ヒトでの使用に対する投与量の範囲を策定する際に使用することができる。かかる化合物の投与量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性を有しないED50を含む血中濃度の範囲内にある。投与量は、採用される剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。本発明の方法において使用される任意の化合物について、治療的に効果的な用量を、細胞培養物アッセイから最初に推定することができる。用量は、細胞培養物において決定されるIC50(すなわち、症状の50%の抑制を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて策定され得る。かかる情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿濃度を、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0209】
〔00231〕
本明細書で定義されるように、治療的に有効な量のタンパク質またはポリペプチド(すなわち、効果的な投与量)は、約0.001〜30mg/kg体重、好ましくは、約0.01〜25mg/kg体重、より好ましくは、約0.1〜20mg/kg体重、およびさらにより好ましくは、約1〜10mg/kg、2〜9mg/kg、3〜8mg/kg、4〜7mg/kg、または5〜6mg/kg体重に及ぶ。当業者であれば、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の総体的な健康および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含むが、それらに限定されないある特定の要因が、対象を効果的に治療するのに必要とされる用量に影響を与え得ることを理解する。さらに、治療的に有効な量のタンパク質、ポリペプチド、もしくは抗体での対象の治療は、単回治療を含み得るか、または好ましくは、一連の治療を含み得る。
【0210】
〔00232〕
好ましい実施例において、対象は、1週間に1回、約1〜10週間、好ましくは、2〜8週間、より好ましくは、約3〜7週間、およびさらにより好ましくは、約4、5、もしくは6週間、約0.1〜20mg/kg体重の範囲の抗体、タンパク質、またはポリペプチドで治療される。治療に使用される抗体、タンパク質、またはポリペプチドの効果的な投与量が、特定の治療の間に増加し得るか、または減少し得ることも理解される。投与量の変化は、本明細書に記載される診断アッセイの結果に起因し得、かつそれから明らかになる。
【0211】
〔00233〕
本発明は、PD−L3またはVISTAの発現または活性を調節する作用物質を包含する。作用物質は、例えば、小分子であり得る。例えば、かかる小分子は、ペプチド、ペプチド模倣物、アミノ酸、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、1モル当たり約10,000グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物(すなわち、ヘテロ有機および/またはガノメタリック化合物を含む)、1モル当たり約5,000グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、1モル当たり約1,000グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、1モル当たり約500グラム未満の分子量を有する有機または無機化合物、ならびにかかる化合物の塩、エステル、および他の薬学的に許容される形態を含むが、それらに限定されない。小分子作用物質の適切な用量が、通常の技術を有する医師、獣医、または研究者の知識の範囲内のいくつかの要因に依存することが理解される。小分子の用量(複数を含む)は、例えば、同一性、寸法、および治療される対象または処理される試料の状態に応じて、さらには、該当する場合、組成物が投与される経路、および施術者が所望とする小分子の本発明の核酸またはポリペプチドへの影響に応じて変化する。
【0212】
〔00234〕
例示的な用量は、対象体重または試料重量の1キログラム当たりの小分子のミリグラムもしくはマイクログラム量(例えば、1キログラム当たり約1マイクログラム〜1キログラム当たり約500ミリグラム、1キログラム当たり約100マイクログラム〜1キログラム当たり約5ミリグラム、または1キログラム当たり約1マイクログラム〜1キログラム当たり約50マイクログラム)を含む。小分子の適切な用量が、調節される発現または活性に関して、小分子の効力に依存することがさらに理解される。かかる適切な用量を、本明細書に記載のアッセイを用いて決定することができる。本発明のポリペプチドまたは核酸の発現または活性を調節するために、これらの小分子のうちの1つ以上が動物(例えば、ヒト)に投与されるとき、医師、獣医、または研究者は、例えば、最初は比較的低い用量を処方し、その後、適切な応答が得られるまで、用量を増加させてもよい。加えて、任意の特定の動物対象における特定の用量レベルが、採用される特定の化合物の活性、対象の年齢、体重、総合的な健康、性別、および食生活、投与回数、投与経路、排泄の速度、任意の薬物組み合わせ、ならびに調節される発現または活性の程度を含む様々な要因に依存することが理解される。
【0213】
〔00235〕
さらに、抗体(もしくはそのフラグメント)を、細胞毒素等の治療部分、治療薬、または放射性金属イオンに抱合することができる。細胞毒素または細胞毒性作用物質は、細胞に有害な任意の作用物質を含む。例には、タクソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラセンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、ならびにそれらの類似体または相同体が挙げられる。治療薬は、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルダカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、ならびにシス−ジクロロジアンミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラ、ならびにアントラマイシン(AMC))、および抗分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)を含むが、それらに限定されない。
【0214】
〔00236〕
本発明の抱合体を、所与の生物学的応答を修飾するために使用することができ、薬物部分は、古典的な化学治療薬に制限されると解釈されるべきではない。例えば、薬物部分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであり得る。かかるポリペプチドは、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素、またはジフテリア毒素等の毒素;腫瘍壊死因子、アルファ−インターフェロン、ベータ−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子、組織プラスミノーゲン活性化因子等のタンパク質;または例えば、リンフォカイン、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「EL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」)等の生物学的応答修飾剤、または他の成長因子を含み得る。かかる治療部分を抗体に抱合させる技術が周知である。
【0215】
〔00237〕
本発明の核酸分子を、ベクターに挿入し、遺伝子治療ベクターとして使用することがで
きる。遺伝子治療ベクターを、例えば、静脈内注入、局所投与(米国特許第5,328,470号を参照のこと)、または定位注入(例えば、Chen et al.(1994)Proc Natl.Acad.Sci.USA 91:3054−3057を参照のこと)によって対象に送達することができる。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物は、許容される希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含むことができるか、または、遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれる徐放性マトリックスを含むことができる。あるいは、完全な遺伝子送達ベクターを、組換え細胞、例えば、レトロウイルスベクターから無傷で産生することができる場合、薬学的調製物は、遺伝子送達系を産生する1つ以上の細胞を含むことができる。薬学的組成物を、投与に関する説明書とともに、容器、パック、または分配器内に含めることができる。
【0216】
V.本発明の使用および方法
〔00238〕 PD−L3またはVISTA分子、例えば、PD−L3またはVISTA核酸分子、ポリペプチド、ポリペプチド相同体、ならびに本明細書に記載の抗体および抗体フラグメントを、以下の方法のうちの1つ以上において使用することができる:a)スクリーニングアッセイ、b)予測医学(例えば、診断アッセイ、予後アッセイ、および臨床試験の監視)、ならびにc)治療方法(例えば、治療的および予防的、例えば、免疫応答の上方調節または下方調節による)。本明細書に記載されるように、本発明のPD−L3もしくはVISTAポリペプチドは、以下の活性のうちの1つ以上を有する:1)その天然結合パートナーへの結合および/またはその活性の調節、2)細胞内または細胞間シグナル伝達の調節、3)Tリンパ球の活性化の調節、4)生物、例えば、マウスまたはヒト等の哺乳類生物の免疫応答の調節。本発明の単離核酸分子を使用して、例えば、以下にさらに説明されるように、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドを発現し(例えば、遺伝子治療適用における宿主細胞中の組換え発現ベクターを介して)、PD−L3もしくはVISTA mRNA(例えば、生体試料における)またはPD−L3もしくはVIST遺伝子における遺伝子変化を検出し、かつPD−L3もしくはVISTA活性を調節することができる。PD−L3もしくはVISTAポリペプチドを使用して、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの不十分もしくは過剰な産生またはPD−L3もしくはVISTA阻害剤の産生を特徴とする状態または障害を治療することができる。加えて、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドを使用して、自然発生PD−L3もしくはVISTA結合パートナー(複数を含む)に関してスクリーニングすること、PD−L3もしくはVISTA活性を調節する薬物または化合物に関してスクリーニングすること、ならびにPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの不十分もしくは過剰な産生、またはPD−L3もしくはVISTA野生型ポリペプチドと比較して、異常な活性または望ましくない活性を減少させるPD−L3もしくはVISTAポリペプチド形態の産生を特徴とする状態または障害(例えば、重症複合型免疫不全等の免疫系障害、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、リンパ球増殖性症候群、炎症性腸疾患、アレルギー、喘息、移植片対宿主疾患、および移植拒絶反応;細菌およびウイルス等の感染性病原体への免疫応答;ならびにリンパ腫および白血病等の免疫系の癌)を治療することができる。さらに、本発明の抗PD−L3もしくはVISTA抗体を使用して、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドを検出および単離すること、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの生物学的利用能を制御すること、および例えば、PD−L3もしくはVISTAとその天然結合パートナー(複数を含む)との間の相互作用を調節することによって、PD−L3もしくはVISTA活性を調節することができる。
【0217】
A.スクリーニングアッセイ:
〔00239〕 本発明は、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドに結合するか、例えば、PD−L3もしくはVISTA発現またはPD−L3もしくはVISTA活性への刺激効果または阻害効果を有するか、あるいはPD−L3もしくはVISTAとその天然結合パートナー(複数を含む)との間の相互作用への刺激効果または阻害効果を有する
調節因子、すなわち、候補もしくは試験化合物または作用物質(例えば、ペプチド、ペプチド模倣物、小分子、もしくは他の薬物)を特定するための方法(本明細書において、「スクリーニングアッセイ」とも称される)を提供する。
【0218】
〔00240〕
一実施形態において、本発明は、PD−L3もしくはVISTAタンパク質またはポリペプチドもしくはその生物学的に活性な部分に結合する、例えば、その天然結合パートナー(複数を含む)と相互作用するPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの能力を調節する候補または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。別の実施形態では、本発明は、PD−L3もしくはVISTAタンパク質またはポリペプチドもしくはその生物学的に活性な部分に結合するか、あるいはその活性を調節する候補または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。好ましい実施形態において、本発明は、本明細書に特定されるか、またはPD−L3もしくはVISTAとその天然結合パートナー(複数を含む)との間の相互作用へのその影響に基づくもの等のPD−L3もしくはVISTAによって負に制御される免疫機能への刺激効果または阻害効果を有する候補もしくは試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。これらのPD−L3またはVISTA関連機能は、例として、T細胞によるサイトカイン産生(例えば、II−2、ガンマインターフェロン)を阻害すること、中程度のCD28共刺激を抑制すること、CD4+およびCD8+T細胞増殖を阻害すること、の増殖未処理のおよび記憶CD4+T細胞を抑制すること、およびアポトーシスを誘導することなくTCR活性化を抑制することを含む。本発明の試験化合物を、以下を含む、当分野で既知の組み合わせライブラリ法における多数のアプローチのうちのいずれかを用いて得ることができる:生物学的ライブラリ、空間的にアドレス可能な平行固相または溶液相ライブラリ、デコンボリューションを必要とする合成ライブラリ法、1ビーズ1化合物ライブラリ法、および親和性クロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリ法。生物学的ライブラリアプローチがペプチドライブラリに限定されているが、他の4つのアプローチは、化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは小分子ライブラリに適用可能である(Lam、K.S.(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
【0219】
〔00241〕
一実施形態において、アッセイは、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分を発現する細胞が試験化合物と接触され、かつPD−L3もしくはVISTA活性を調節する試験化合物の能力が決定される、細胞に基づくアッセイである。PD−L3もしくはVISTA活性を調節する試験化合物の能力の決定を、例えば、その天然結合パートナー(複数を含む)に結合し、かつ免疫細胞活性を調節するPD−L3もしくはVISTAの能力を監視することによって達成することができる。免疫細胞は、例えば、T細胞、B細胞、または骨髄性細胞であり得る。(決定される)その対抗受容体に結合するPD−L3もしくはVISTAを調節する試験化合物の能力の決定を、例えば、PD−L3もしくはVISTAと放射性同位体または酵素標識を結合させて、PD−L3もしくはVISTA対抗受容体を発現するT細胞に結合するPD−L3もしくはVISTAを調節する試験化合物の能力を監視することによって達成することができる。複合体中の標識化PD−L3もしくはVISTA化合物を検出するによって、PD−L3もしくはVISTAへの化合物の結合を決定することができるように、PD−L3もしくはVISTAに結合する試験化合物の能力の決定を、例えば、化合物と放射性同位体または酵素標識を結合させることによって達成することができる。
【0220】
〔00242〕
相互作用物のうちのいずれも標識することなく、PD−L3またはVISTAと相互作用する化合物の能力を決定することも、本発明の範囲内である。例えば、マイクロフィジオメーターを使用して、化合物またはPD−L3もしくはVISTAのいずれも標識する
ことなく、化合物のPD−L3もしくはVISTAとの相互作用を検出することができる(McConnell,H.M.et al.(1992)Science 257:1906−1912)。本明細書において使用される「マイクロフィジオメーター」(例えば、細胞センサ)は、光アドレス可能な電位差センサ(LAPS)を用いて、細胞がその環境を酸性化する速度を測定する分析機器である。この酸性化速度の変化を、化合物とPD−L3もしくはVISTAとの間の相互作用の指標として使用することができる。
【0221】
〔00234〕
別の実施形態では、アッセイは、PD−L3もしくはVISTA結合パートナーを発現するT細胞を試験化合物と接触させること、およびPD−L3もしくはVISTA結合パートナーの活性を調節する(例えば、刺激するか、または阻害する)試験化合物の能力を決定することを含む、細胞に基づくアッセイである。PD−L3もしくはVISTA結合パートナーの活性を調節する試験化合物の能力の決定を、例えば、PD−L3もしくはVISTA結合パートナーに結合するか、またはそれと相互作用するPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの能力を決定することによって達成することができる。
【0222】
〔00244〕
PD−L3もしくはVISTA結合パートナーに結合するか、またはそれと相互作用するPD−L3もしくはVISTAポリペプチド、または生物学的に活性なそのフラグメントの能力の決定を、直接結合を決定するための上述の方法のうちの1つによって達成することができる。好ましい実施形態において、PD−L3もしくはVISTA結合パートナーに結合するか、またはそれと相互作用するPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの能力の決定を、結合パートナーの活性を決定することによって達成することができる。例えば、結合パートナーの活性を、第2の細胞メッセンジャー(例えば、チロシンキナーゼまたはホスファターゼ活性)の誘導を検出すること、適切な基質の触媒/酵素的活性を検出すること、受容体遺伝子(検出可能なマーカー、例えば、ルシフェラーゼをコードする核酸に作動可能に結合される標的応答性調節要素を含む)の誘導を検出すること、または標的制御された細胞応答を検出することによって決定することができる。例えば、天然PD−L3またはVISTA結合パートナーに結合するか、またはそれと相互作用するPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの能力の決定は、増殖アッセイにおいて免疫細胞共刺激または阻害を調節する化合物の能力を測定すること、またはPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの部分を認識する抗体に結合するPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの能力を妨害することによって達成することができる。一実施形態において、T細胞活性化を調節する化合物を、化合物のT細胞増殖またはサイトカイン産生を調節する能力を決定することによって特定することができる。好ましい実施形態において、T細胞活性化を調節する化合物を、2つ以上の抗原濃度で化合物のT細胞増殖またはサイトカイン産生を調節する能力を決定することによって特定することができる。
【0223】
〔00245〕
さらに別の実施形態では、本発明のアッセイは、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分が試験化合物と接触され、かつPD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分に結合する試験化合物の能力が決定される、細胞を含まないアッセイである。本発明のアッセイにおいて使用される好ましいPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの生物学的に活性な部分は、非PD−L3もしくはVISTA分子との相互作用に関与するフラグメント、例えば、PD−L3もしくはVISTA結合パートナーに結合する細胞外ドメインの少なくとも一部分を含む。試験化合物とPD−L3もしくはVISTAポリペプチドとの結合を、上述のように、直接的または間接的にのいずれかで決定することができる。
【0224】
〔00246〕
別の実施形態では、アッセイは、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分が試験化合物と接触され、かつPD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分の活性を調節する(例えば、刺激または阻害する)試験化合物の能力が決定される、細胞を含まないアッセイである。PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの活性を調節する試験化合物の能力の決定を、例えば、上述の直接結合を決定するための方法のうちの1つを用いて、PD−L3もしくはVISTA結合パートナーに結合するPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの能力を決定することによって達成することができる。本発明の細胞を含まないアッセイは、ポリペプチド(例えば、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分、あるいはPD−L3もしくはVISTAが結合する結合パートナー)の可溶性および/または膜結合形態の両方の使用に適している。膜結合がポリペプチドを形成する、細胞を含まないアッセイが使用される場合(例えば、細胞表面PD−L3またはVISTA)、ポリペプチドの膜結合形態が溶液中で維持されるように、可溶化剤を利用することが望ましくあり得る。かかる可溶化剤の例には、n−オクチルグルコシド、n−ドデシルグルコシド、n−ドデシルマルトシド、オクタノイル−N−メチルグルカミド、デカノイル−N−メチルグルカミド、Triton.RTM.X−100、Triton.RTM.X−114、Thesit、イソトリデシポリ(エチレングリコールエーテル)n、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンミニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンミニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート(CHAPSO)、またはN−ドデシル.dbd.N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート等の非イオン洗剤が挙げられる。
【0225】
〔00247〕
上述の本発明のアッセイ方法のうちの2つ以上の実施形態において、PD−L3もしくはVISTAまたはその結合パートナーのうちのいずれかを固定化して、それらのポリペプチドのうちの1つ、またはそれら両方の非複合形態からの複合形態の分離を促進し、かつアッセイの自動化を適応させることが望ましくあり得る。試験化合物のPD−L3もしくはVISTAポリペプチドへの結合、または候補化合物の存在下および不在下でのPD−L3もしくはVISTAポリペプチドのその結合パートナーとの相互作用を、反応物を含有するのに好適な任意の容器内で達成することができる。かかる容器の例には、マイクロタイタープレート、試験管、および微小遠心管が挙げられる。一実施形態において、それらのポリペプチドのうちの1つ、またはそれら両方がマトリックスに結合されることを可能にするドメインを添加する融合タンパク質を提供することができる。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/PD−L3もしくはVISTA融合タンパク質またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼ/結合パートナー融合タンパク質を、グルタチオンセファロースビーズ(Sigma Chemical,St.Louis,Mo.)またはグルタチオン誘導体化マイクロタイタープレート上に吸着させることができ、次いで、それは、試験化合物あるいは試験化合物および非吸着結合パートナーポリペプチドまたはPD−L3もしくはVISTAポリペプチドのいずれかと合わせられ、混合物は、複合体形成につながる条件下で(例えば、塩およびpHにおいて生理学的条件で)インキュベートされる。インキュベーション後、ビーズまたはマイクロタイタープレートウェルを洗浄して任意の非結合成分を除去し、ビーズの場合はマトリックスを固定化し、複合体形成は、例えば、上述のように、直接的または間接的にのいずれかで決定される。あるいは、複合体をマトリックスから解離することができ、PD−L3もしくはVISTA結合または活性のレベルが標準の技術を用いて決定される。マトリックス上でポリペプチドを固定化するための他の技術を、本発明のスクリーニングアッセイにおいて使用することもできる。代替実施形態では、PD−L3またはVISTAポリペプチドの活性を調節する試験化合物の能力の決定を、例えば、PD−L3またはVISTA結合パートナーの細胞質ドメインと相互作用することにより、PD−L3またはVISTAの下流で機能する分子の活性を調節する試験化合物の能力を決定することによって達成することができる。例えば
、第2のメッセンジャーのレベル、適切な標的上での相互作用分子の活性、または相互作用物質の適切な標的への結合を、先述のように決定することができる。
【0226】
〔00248〕
別の実施形態では、PD−L3もしくはVISTA発現の調節因子が、細胞が候補化合物と接触される方法において同定され、細胞内でのPD−L3もしくはVISTA mRNAまたはポリペプチドの発現が決定される。候補化合物の存在下でのPD−L3もしくはVISTA mRNAまたはポリペプチドの発現レベルは、候補化合物の不在下でのPD−L3もしくはVISTA mRNAまたはポリペプチドの発現レベルと比較される。次いで、変化が統計的に有意である場合、候補化合物を、この比較に基づいて、PD−L3もしくはVISTA発現の調節因子として特定することができる。
【0227】
〔00249〕
本発明のさらに別の態様では、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドを、2ハイブリッドアッセイまたは3ハイブリッドアッセイ(例えば、米国特許第5,283,317号、Zervos et al.(1993)Cell 72:223−232、Madura et al.(1993)J.Biol.Chem.268:12046−12054、Battel et al.(1993)Biotechniques 14:920−924、Iwabuchi et al.(1993)Oncogene 8:1693−1696、およびBrent WO94/10300を参照のこと)において、「ベイトタンパク質」として使用して、PD−L3もしくはVISTA(「PD−L3もしくはVISTA結合タンパク質」、「PD−L3もしくはVISTA結合パートナー」、または「PD−L3もしくはVISTA−bp」)に結合するか、またはそれと相互作用する他のポリペプチドを同定することができ、かつPD−L3もしくはVISTA活性に関与する。かかるPD−L3もしくはVISTA結合タンパク質は、例えば、PD−L3もしくはVISTA媒介性シグナル伝達経路の下流要素として、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたはPD−L3もしくはVISTA標的によるシグナルの伝播にも関与する可能性が高い。あるいは、かかるPD−L3もしくはVISTA結合ポリペプチドは、PD−L3もしくはVISTA阻害物質であり得る。2ハイブリッド法は、分離可能なDNA結合および活性化ドメインから成る大部分の転写因子のモジュール性質に基づいている。簡潔に述べると、アッセイは、2つの異なるDNA構築物を利用する。一方の構築物において、PD−L3またはVISTAポリペプチドをコードする遺伝子は、既知の転写因子(例えば、GAL−4)のDNA結合ドメインをコードする遺伝子に融合される。他方の構築物において、未同定ポリペプチド(「プレイ」または「試料」)をコードするDNA配列のライブラリからのDNA配列は、既知の転写因子の活性化ドメインをコードする遺伝子に融合される。「ベイト」および「プレイ」ポリペプチドがインビボで相互作用して、PD−L3またはVISTA依存性複合体を形成することができると、転写因子のDNA結合および活性化ドメインが近接にされる。この接近は、転写因子に応答して転写制御部位に作動可能に結合される受容体遺伝子(例えば、LacZ)の転写を可能にする。受容体遺伝子の発現を検出することができ、機能的な転写因子を含有する細胞コロニーを単離かつ使用して、PD−L3またはVISTAポリペプチドと相互作用するポリペプチドをコードするクローニングされた遺伝子を得ることができる。
【0228】
〔00250〕
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のアッセイのうちの2つ以上の組み合わせに関する。例えば、調節剤を、細胞に基づくアッセイまたは細胞を含まないアッセイを用いて同定することができ、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの活性を調節する作用物質の能力を、例えば、細胞形質転換および/または腫瘍形成の動物モデル等の動物において、インビボで確認することができる。
【0229】
〔00251〕
本発明はさらに、上述のスクリーニングアッセイによって特定される新規の作用物質に関する。したがって、適切な動物モデルにおいて、本明細書に記載されるように特定される作用物質をさらに使用することは、本発明の範囲内である。例えば、本明細書に記載されるように同定される作用物質(例えば、PD−L3もしくはVISTA調節剤、アンチセンスPD−L3もしくはVISTA核酸分子、PD−L3もしくはVISTA特異的抗体、またはPD−L3もしくはVISTA結合パートナー)を、動物モデルにおいて使用して、かかる作用物質での治療の有効性、毒性、または副作用を決定することができる。あるいは、本明細書に記載されるように特定される作用物質を、動物モデルにおいて使用して、かかる作用物質の作用機構を決定することができる。さらに、本発明は、本明細書に記載の治療のための上述のスクリーニングアッセイによって同定される新規の作用物質の使用に関する。
【0230】
B.検出アッセイ
〔00252〕 本明細書で特定されるcDNA配列の部分またはフラグメント(および対応する完全遺伝子配列)を、多数の方法において、ポリヌクレオチド試薬として使用することができる。例えば、これらの配列を使用して、(i)染色体上でそれらのそれぞれの遺伝子をマッピングし、したがって、遺伝的疾患と関連する遺伝子領域を位置付けること、(ii)微量生体試料から個人を特定すること(組織型判定)、および(iii)生体試料の法医学的同定を支援することができる。これらの適用は、以下の項で説明される。
【0231】
1.染色体マッピング
〔00253〕 遺伝子の配列(または配列の一部分)が単離されると、この配列を使用して、染色体上で遺伝子の位置をマッピングことができる。このプロセスは、染色体マッピングと呼ばれている。したがって、本明細書に記載のPD−L3もしくはVISTヌクレオチド配列の部分またはフラグメントを使用して、染色体上でPD−L3もしくはVIST遺伝子の位置をマッピングすることができる。染色体へのPD−L3もしくはVISTA配列のマッピングは、これらの配列を疾患に関連した遺伝子と相関させる重要な第1のステップである。簡潔に述べると、PD−L3もしくはVISTヌクレオチド配列からPCRプライマー(好ましくは、長さ15−25bp)を調製することによって、PD−L3もしくはVIST遺伝子を染色体にマッピングすることができる。PD−L3もしくはVISTA配列のコンピュータ分析を使用して、ゲノムDNA中の2つ以上のエクソンにまたがらないプライマーを予測することができ、したがって、増幅プロセスを複雑化する。次いで、これらのプライマーを、個別のヒト染色体を含有する体細胞ハイブリッドのPCRスクリーニングのために使用することができる。PD−L3もしくはVISTA配列に対応するヒト遺伝子を含有するそれらのハイブリッドのみが、増幅されたフラグメントを産出する。体細胞ハイブリッドは、異なる哺乳動物由来の体細胞(例えば、ヒトおよびマウス細胞)を融合させることによって調製される。ヒトおよびマウス細胞のハイブリッドが成長かつ分裂すると、それらは、ランダムな順序でヒト染色体を次第に失うが、マウス染色体を保持する。特定の酵素を欠乏するという理由から、マウス細胞が成長することができないが、ヒト細胞は成長することができる培地を用いることによって、必要とされる酵素をコードする遺伝子を含有する1つのヒト染色体が保持される。種々の培地を用いることによって、ハイブリッド細胞株のパネルを確立することができる。パネル中のそれぞれの細胞株は、単一のヒト染色体または少数のヒト染色体のいずれか、および一式のマウス染色体を含有し、個別の遺伝子の特定のヒト染色体への容易なマッピングを可能にする(D’Eustachio,P.et al.(1983)Science 220:919−924)。ヒト染色体のフラグメントのみを含有する体細胞ハイブリッドを、転座および欠失を有するヒト染色体を用いて産生することもできる。
【0232】
〔00254〕
体細胞ハイブリッドのPCRマッピングは、特定の配列を特定の染色体に割り当てる迅速な方法である。単一の温度循環器を用いて、1日につき3つ以上の配列を割り当てることができる。PD−L3またはVISTヌクレオチド配列を用いてオリゴヌクレオチドプライマーを設計することにより、特定の染色体由来のフラグメントのパネルを用いて亜局在化を達成することができる。PD−L3またはVISTA配列をその染色体にマッピングするために同様に使用することができる他のマッピング戦略には、in situハイブリダイゼーション(Fan,Y.et al.(1990)Proc Natl.Acad.Sci.USA 87:6223−27に記載される)、標識化された流動分類染色体での事前スクリーニング、および染色体特異的cDNAライブラリへのハイブリダイゼーションによる事前選択が含まれる。
【0233】
〔00255〕
さらに中期染色体スプレッドへのDNA配列の蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を使用して、1つのステップにおいて、正確な染色体位置を提供することができる。分裂が紡錘体を破壊するコルセミド等の化学物質によって中期でブロックされた細胞を用いて、染色体スプレッドを作製することができる。染色体をトリプシンで簡潔に処理し、その後、ギムザで染色することができる。染色体が個別に同定されるように、明帯および暗帯のパターンがそれぞれの染色体上で発現する。FISH技術を、長さが500個または600個の塩基という短いDNA配列に使用することができる。しかしながら、1,000個より多い塩基を有するクローンは、簡単な検出のために、十分なシグナル強度で、特有の染色体位置に結合する可能性がより高い。好ましくは、1,000個の塩基、およびより好ましくは、2,000個の塩基が、適切な時間内に良好な結果を得るのに十分である。この技術の概説については、Verma et al.,Human
Chromosomes:A Manual of basic Techniques(Pergamon Press,New York 1988)を参照されたい。染色体マッピングのための試薬を個別に使用して、その染色体上に単一の染色体もしくは単一の部位をマーキングすることができるか、または複数の部位および/もしくは複数の染色体をマーキングために、試薬のパネルを使用することができる。遺伝子の非コード領域に対応する試薬は、実際、マッピング目的に好ましい。コード配列は、遺伝子ファミリー内に保存される可能性がより高く、したがって、染色体マッピング中の交差ハイブリダイゼーションの可能性を増加させる。
【0234】
〔00256〕
いったん配列が正確な染色体位置にマッピングされると、染色体上の配列の物理的位置を、遺伝子マップデータと相関させることができる。最終的には、数人の個人由来の遺伝子の完全配列決定を行って、変異の存在を確認し、かつ多型から変異を区別することができる。
【0235】
2.組織型判定
〔00257〕 本発明のPD−L3またはVISTA配列を使用して、微量の生体試料から個人を特定することもできる。さらに、本発明の配列を使用して、個人のゲノムの選択された部分の実際の塩基毎のDNA配列を決定する代替の技術を提供することができる。したがって、本明細書に記載のPD−L3またはVISTヌクレオチド配列を使用して、配列の5’および3’末端から2つのPCRプライマーを調製することができる。次いで、これらのプライマーを使用して、個人のDNAを増幅し、その後、それを配列決定することができる。
【0236】
〔00258〕
この様式で調製される個人からの対応するDNA配列のパネルは、それぞれの個人が、
対立遺伝子の相違の理由から、特有の一式のかかるDNA配列を有するため、特有の個人特定情報を提供することができる。本発明の配列を使用して、かかる特定情報配列を個人および組織から得ることができる。本発明のPD−L3またはVISTヌクレオチド配列は、ヒトゲノム部分を特異的に表す。対立遺伝子変異は、これらの配列のコード領域においてある程度発生し、非コード領域において大いに発生する。個々のヒト間の対立遺伝子変異が、500個の塩基毎に約1回の頻度で発生すると推定される。本明細書に記載の配列のそれぞれを、ある程度、個人由来のDNAを特定目的のために比較することができる基準として使用することができる。より多数の多型が非コード領域で発生するため、個人を区別するのにより少ない配列しか必要とされない。配列番号1もしくは4の非コード配列は、それぞれが100個の塩基の非コード増幅配列を産出する恐らく10〜1,000個のプライマーのパネルにより個人確認を無理なく提供することができる。配列番号3もしくは6のコード配列等の予測されたコード配列が使用される場合、個人確認のためのより適切な数のプライマーは、500〜2000個であろう。
【0237】
〔00259〕
本明細書に記載のPD−L3またはVISTヌクレオチド配列由来の試薬のパネルが、個人についての特有の特定情報データベースを生成ために使用される場合、それらの同一の試薬を後に使用して、その個人由来の組織を特定することができる。特有の特定情報データベースを用いて、生きている個人または死んでいる個人の確認を、極小の組織試料から行うことができる。
【0238】
〔00260〕 3.法生物学におけるPD−L3またはVISTA配列の使用
DNAに基づく特定技術を法生物学において使用することもできる。本発明の配列を使用して、例えば、別の「識別マーカー」(すなわち、特定の個人に特有の別のDNA配列)によって、DNAに基づく法医学的同定の信頼性を強化することができる、ヒトゲノムにおいて特定の遺伝子座に標的化されるポリヌクレオチド試薬、例えば、PCRプライマーを提供することができる。上述のように、実際の塩基配列情報を、識別のために、制限酵素により生成されるフラグメントによって形成されるパターンの正確な代替案として使用することができる。多数の多型が非コード領域において発生するため、配列番号1もしくは3の非コード領域に標的化される配列は、この使用に特に適切であり、この技術を用いて個人を区別するのをより容易にする。ポリヌクレオチド試薬の例には、PD−L3もしくはVISTヌクレオチド配列またはその部分、例えば、少なくとも20個の塩基、好ましくは、少なくとも30個の塩基の長さを有する、配列番号1もしくは3の非コード領域由来のフラグメントが挙げられる。特定の組織、例えば、リンパ球を特定するために、さらに本明細書に記載のPD−L3もしくはVISTヌクレオチド配列を使用して、ポリヌクレオチド試薬、例えば、in situハイブリダイゼーション技術において使用することができる、例えば、標識化されたプローブまたは標識可能なプローブを提供することができる。これは、法医学者が出所不明の組織を提示される場合に、非常に有用であり得る。かかるPD−L3もしくはVISTAプローブのパネルを使用して、種毎に、および/または臓器の種類毎に組織を特定することができる。類似の様式で、これらの試薬、例えば、PD−L3もしくはVISTAプライマーまたはプローブを使用して、汚染について組織培養物をスクリーニングする(すなわち、培養物中の異なる種類の細胞の混合物の存在についてスクリーニングする)ことができる。
【0239】
C.予測医学
〔00261〕 本発明はまた、予後(予測)目的のために、診断アッセイ、予後アッセイ、および監視臨床試験が使用され、それによって、個人を予防的に治療する予測医学の分野に関する。したがって、本発明の一態様は、生体試料(例えば、血液、血清、細胞、または組織)との関連で、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドおよび/または核酸発現、ならびにPD−L3もしくはVISTA活性を決定し、それによって、個人が、
異常なまたは望ましくないPD−L3もしくはVISTA発現または活性に関連した疾患または障害にかかっているか、または障害を発現する危険性があるかを決定するための診断アッセイに関する。本発明はまた、個人が、PD−L3もしくはVISTAポリペプチド、核酸発現または活性に関連した障害を発現する危険性があるかを決定するための予後(または予測)アッセイを提供する。例えば、PD−L3もしくはVIST遺伝子における変異を、生体試料においてアッセイすることができる。かかるアッセイを、予後または予測目的ために使用し、それによって、PD−L3もしくはVISTAポリペプチド、核酸発現または活性を特徴とするか、あるいはそれに関連した障害の発現の前に、個人を予防的に治療することができる。
【0240】
〔00262〕
本発明の別の態様は、臨床試験における、PD−L3もしくはVISTAの発現または活性への作用物質(例えば、薬物、化合物)の影響の監視に関する。これらおよび他の作用物質は、以下の項でより詳細に説明される。
【0241】
1.診断アッセイ
〔00263〕 生体試料におけるPD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたは核酸の存在または不在を検出するための例示的な方法は、試験対象から生体試料を入手すること、およびPD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたは核酸の存在が、生体試料において検出されるように、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドをコードするPD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたは核酸(例えば、mRNAまたはゲノムDNA)を検出することができる生体試料を化合物または作用物質と接触させることを含む。PD−L3もしくはVISTA mRNAまたはゲノムDNAの検出に好ましい作用物質は、PD−L3もしくはVISTA mRNAまたはゲノムDNAにハイブリダイズすることができる標識化核酸プローブである。核酸プローブは、例えば、少なくとも15、30、50、100、250、もしくは500ヌクレオチド長であり、かつおよび十分なストリンジェントな条件下で、PD−L3もしくはVISTA mRNAまたはゲノムDNAに特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチド等の、配列番号1もしくは3に説明されるPD−L3もしくはVISTA核酸またはその部分であり得る。本発明の診断アッセイでの使用に好適な他のプローブが、本明細書に記載される。PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの検出に好ましい作用物質は、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドに結合することができる抗体、好ましくは、検出可能な標識を有する抗体である。抗体は、ポリクローナル、またはより好ましくは、モノクローナルであり得る。無傷抗体またはそのフラグメント(例えば、FabもしくはF(ab’)2)を使用することができる。プローブまたは抗体に関して、「標識化」という用語は、検出可能な物質を、プローブまたは抗体に結合(すなわち、物理的に結合)させることによるプローブまたは抗体の直接標識化、ならびに直接的に標識化される別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接標識化を包含するよう意図されている。間接標識化の例には、蛍光標識された二次抗体を用いた一次抗体の検出、およびDNAプローブを蛍光標識されたストレプトアビジンで検出することができるように、ビオチンでのDNAプローブの末端標識化が挙げられる。「生体試料」という用語は、対象から単離される組織、細胞、および体液、ならびに対象内に存在する組織、細胞、および体液を含むよう意図される。すなわち、本発明の検出方法を使用して、生体試料におけるPD−L3もしくはVISTA mRNA、ポリペプチド、またはゲノムDNAをインビトロならびにインビボで検出することができる。例えば、PD−L2 mRNAの検出のためのインビトロ技術は、ノーザンハイブリダイゼーションおよびin situハイブリダイゼーションを含む。PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの検出のためのインビトロ技術は、酵素免疫測定法(ELISA)、ウエスタンブロット法、免疫沈降、および免疫蛍光を含む。PD−L3もしくはVISTAゲノムDNAの検出のためのインビトロ技術は、サザンハイブリダイゼーションを含む。さらに、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの検出のための
インビボ技術は、対象に、標識化された抗PD−L3またはVISTA抗体を導入することを含む。例えば、抗体を、対象におけるその存在および位置を標準の画像法によって検出することができる放射性マーカーで標識化することができる。一実施形態において、生体試料は、試験対象由来のポリペプチド分子を含有する。あるいは、生体試料は、試験対象由来のmRNA分子または試験対象由来のゲノムDNA分子を含有することができる。好ましい生体試料は、従来の手段で対象から単離される血清試料である。別の実施形態では、本方法は、対照対象から対照生体試料を得ること、PD−L3もしくはVISTAポリペプチド、mRNAまたはゲノムDNAの存在が生体試料において検出されるように、対照試料をPD−L3もしくはVISTAポリペプチド、mRNA、またはゲノムDNAを検出することができる化合物または作用物質と接触させること、および対照試料におけるPD−L3もしくはVISTAポリペプチド、mRNAまたはゲノムDNAの存在を、試験試料におけるPD−L3もしくはVISTAポリペプチド、mRNAまたはゲノムDNAの存在と比較することをさらに含む。
【0242】
〔00264〕
本発明は、生体試料におけるPD−L3またはVISTAの存在を検出するためのキットも包含する。例えば、キットは、生体試料におけるPD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたはmRNAを検出することができる標識化化合物または作用物質、試料中のPD−L3もしくはVISTAの量を決定するための手段、および試料中のPD−L3もしくはVISTAの量を基準と比較するための手段を含むことができる。化合物または作用物質を好適な容器内に包装することができる。キットは、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたは核酸を検出するキットの使用に関する説明書をさらに含むことができる。
【0243】
2.予後アッセイ
〔00265〕 さらに本明細書に記載の診断方法を利用して、PD−L3もしくはVISTA発現または活性に関連した異常なまたは望ましくない疾患もしくは障害を有するか、あるいはそれを発現する危険性がある対象を特定することができる。本明細書において使用される「異常な」という用語は、野生型PD−L3もしくはVISTA発現または活性から逸脱するPD−L3もしくはVISTA発現または活性を含む。異常な発現または活性は、増加もしくは減少した発現または活性、ならびに発現の野生型発生パターンまたは発現の細胞内パターンに従わない発現または活性を含む。例えば、異常なPD−L3もしくはVISTA発現または活性は、PD−L3もしくはVIST遺伝子における変異がPD−L3もしくはVIST遺伝子に過少発現または過剰発現させる場合、およびかかる変異が非機能的PD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたは野生型様式では機能しないポリペプチド、例えば、PD−L3もしくはVISTA結合パートナーと相互作用しないポリペプチド、または非PD−L3もしくはVISTA結合パートナーと相互作用するポリペプチドをもたらす状況を含むよう意図されている。本明細書において使用される「望ましくない」という用語は、免疫細胞活性化等の生物学的応答に関与する望ましくない現象を含む。例えば、望ましくないという用語は、対象において所望されないPD−L3もしくはVISTA発現または活性を含む。
【0244】
〔00266〕
前述の診断アッセイまたは以下のアッセイ等の本明細書に記載のアッセイを利用して、自己免疫、アレルギー性、もしくは炎症性障害等の自己免疫障害、免疫不全障害、免疫系障害または癌等の、PD−L3もしくはVISTAポリペプチド活性または核酸発現における誤制御に関連した障害を有するか、あるいはそれを発現する危険性がある対象を特定することができる。したがって、本発明は、試験試料が対象から得られ、かつPD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたは核酸(例えば、mRNAまたはゲノムDNA)が検出される、異常なまたは望ましくないPD−L3もしくはVISTA発現または活性に
関連した疾患もしくは障害を同定するための方法を提供し、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたは核酸の存在が、異常なまたは望ましくないPD−L3もしくはVISTA発現または活性に関連した疾患もしくは障害を有するか、あるいはそれを発現する危険性がある対象の診断に用いられる。本明細書において使用される「試験試料」とは、関心の対象から得られる生体試料を指す。例えば、試験試料は、体液(例えば、脳脊髄液もしくは血清)、細胞試料、または組織であり得る。
【0245】
〔00267〕
さらに、本明細書に記載の予後アッセイを使用して、対象に、作用物質(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物、ポリペプチド、ペプチド、核酸、小分子、もしくは他の薬物候補)を投与して、異常なまたは望ましくないPD−L3もしくはVISTA発現または活性に関連した疾患もしくは障害を治療することができるかを決定することができる。例えば、かかる方法を使用して、対象を、自己免疫障害、免疫不全障害、免疫系の癌、またはアレルギー性もしくは炎症性障害に対する作用物質で効果的に治療することができるかを決定することができる。したがって、本発明は、対象を、試験試料が得られ、かつPD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたは核酸発現もしくは活性が検出される、異常なまたは望ましくないPD−L3もしくはVISTA発現または活性に関連した障害に対する作用物質で効果的に治療することができるかを決定するための方法を提供する(例えば、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたは核酸発現もしくは活性の不在が、異常なまたは望ましくないPD−L3もしくはVISTA発現または活性に関連した障害を治療する作用物質を投与され得る対象の診断に用いられる)。本発明の方法を使用して、PD−L3もしくはVIST遺伝子における遺伝子変化を検出し、それによって、変化した遺伝子を有する対象が、自己免疫障害、免疫不全障害、免疫系の癌、アレルギー性障害、または炎症性障害等のPD−L3もしくはVISTAポリペプチド活性または核酸発現における誤制御を特徴とする障害の危険性があるかを決定することもできる。本明細書に記載の方法は、例えば、PD−L3もしくはVIST遺伝子を伴う疾患もしくは疾病の症状または家族歴を呈する患者を診断する臨床環境において好都合に使用することができる、例えば、本明細書に記載の少なくとも1つのプローブ核酸または抗体試薬を含む予め包装された診断キットを利用することによって行うことができる。さらに、PD−L3もしくはVISTAが発現される任意の細胞型または組織を、本明細書に記載の予後アッセイにおいて利用することができる。
【0246】
〔00268〕 3.臨床試験中の効果の監視。
PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの発現または活性への作用物質(例えば、薬物)の効果の監視(例えば、細胞増殖および/もしくは遊走の調節)を基本的な薬物スクリーニングのみならず、臨床試験においても適用することができる。例えば、PD−L3もしくはVIST遺伝子発現、ポリペプチドレベルを増加させるか、またはPD−L3もしくはVISTA活性を上方制御するための、本明細書に記載されるスクリーニングアッセイによって決定された作用物質の有効性を、減少したPD−L3もしくはVIST遺伝子発現、ポリペプチドレベル、または下方制御されたPD−L3もしくはVISTA活性を呈する対象の臨床試験において監視することができる。あるいは、PD−L3もしくはVIST遺伝子発現、ポリペプチドレベルを減少させるか、またはPD−L3もしくはVISTA活性を下方制御する、スクリーニングアッセイによって決定された作用物質の有効性を、増加したPD−L3もしくはVIST遺伝子発現、ポリペプチドレベル、またはPD−L3もしくはVISTA活性を呈する対象の臨床試験において監視することができる。上述のように、PD−L3もしくはVISTAは、APC(マクロファージおよび骨髄樹状細胞)、ならびにCD4+T細胞を含む多くの造血細胞型上で発現され、より具体的には、CD11c
+DC、CD4
+T細胞(Foxp3
’エフェクターT細胞およびFoxp3
+nTregの両方を含む)、CD8
+T細胞、およびGrl
+顆粒球上で発現され、およびB細胞およびNK細胞上で低レベルで発現される。かかる臨床試験において
、PD−L3もしくはVIST遺伝子、および好ましくは、例えば、PD−L3もしくはVISTA関連障害に関与している他の遺伝子の発現または活性を、特定の細胞の表現型の「読み出し」またはマーカーとして使用することができる。
【0247】
〔00269〕
例であって、制限するものではないが、PD−L3もしくはVISTA活性(例えば、本明細書に記載のスクリーニングアッセイにおいて特定される)を調節する作用物質(例えば、化合物、薬物、または小分子)での処置によって細胞内で調節されるPD−L3もしくはVISTAを含む遺伝子を特定することができる。したがって、例えば、臨床試験において、PD−L3もしくはVISTA関連障害への作用物質の効果を研究するために、細胞を単離し、RNAを調製して、それぞれ、PD−L3もしくはVISTAおよびPD−L3もしくはVISTA関連障害に関与した他の遺伝子の発現レベルについて分析することができる。遺伝子発現のレベル(例えば、遺伝子発現パターン)を、本明細書に記載されるように、ノーザンブロット分析またはRT−PCRによって、またはあるいは本明細書に記載される方法のうちの1つによって産生されるポリペプチドの量を測定することによって、またはPD−L3もしくはVISTAまたは他の遺伝子の活性のレベルを測定することによって定量化することができる。このようにして、遺伝子発現パターンは、作用物質への細胞の生理学的応答を示すマーカーとしての機能を果たすことができる。したがって、この応答状態を、作用物質での個人の治療前および治療中の様々な時点で決定することができる。好ましい実施形態において、本発明は、作用物質(例えば、本明細書に記載のスクリーニングアッセイによって特定されるアゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物、ポリペプチド、ペプチド、核酸、小分子、または他の薬物候補)での対象の治療の有効性を監視するための方法を提供し、本方法は、(i)作用物質の投与前に対象から投与前試料を得るステップ、(ii)投与前試料におけるPD−L3もしくはVISTAポリペプチド、mRNA、またはゲノムDNAの発現レベルを検出するステップ、(iii)対象から1つ以上の投与後試料を得るステップ、(iv)投与後試料におけるPD−L3もしくはVISTAポリペプチド、mRNA、またはゲノムDNAの発現もしくは活性のレベルを検出するステップ、(v)投与前試料におけるPD−L3もしくはVISTAポリペプチド、mRNA、またはゲノムDNAの発現もしくは活性のレベルと、1つの投与後試料もしくは複数の投与後試料におけるPD−L3もしくはVISTAポリペプチド、mRNA、またはゲノムDNAの発現もしくは活性のレベルと比較するステップ、および(vi)それに応じて対象への作用物質の投与を変更するステップを含む。例えば、作用物質の投与を増加させることは、PD−L3もしくはVISTAの発現または活性を検出されたレベルよりも高いレベルに増加させる、すなわち、作用物質の有効性を増加させるのに望ましくあり得る。あるいは、作用物質の投与を減少させることは、PD−L3もしくはVISTAの発現または活性を検出されたレベルよりも低いレベルに減少させる、すなわち、作用物質の有効性を減少させるのに望ましくあり得る。かかる実施形態に従って、PD−L3もしくはVISTA発現または活性を、観察可能な表現型応答の不在下でさえも、作用物質の有効性の指標として使用することができる。
【0248】
D.治療法
〔00270〕 本発明は、PD−L3もしくはVISTAタンパク質の不十分もしくは過剰な産生、またはPD−L3もしくはVISTA野生型タンパク質と比較して減少したか、あるいは異常な活性を有するPD−L3もしくはVISTAタンパク質形態の産生を特徴とする障害の危険性がある(またはかかりやすい)対象を治療する予防法および治療法の両方を提供する。さらに、本発明の抗PD−L3もしくはVISTA抗体を使用して、PD−L3もしくはVISTAタンパク質を検出および単離し、PD−L3もしくはVISTAタンパク質の生物学的利用能を制御し、かつ例えば、PD−L3もしくはVISTAのその対抗受容体との相互作用を調節することによって、PD−L3もしくはVISTA活性を調節することができる。
【0249】
1.予防法
〔00271〕 一態様では、本発明は、対象において、主題のPD−L3もしくはVISTAポリペプチド、またはPD−L3もしくはVISTA発現または少なくとも1つのPD−L3もしくはVISTA活性を調節する作用物質を投与することによって、異常なまたは望ましくないPD−L3もしくはVISTA発現または活性に関連した疾患または状態を予防するための方法を提供する。異常なまたは望ましくないPD−L3もしくはVISTA発現または活性によって引き起こされるか、または助長される疾患または障害の危険性のある対象を、例えば、本明細書に記載の診断アッセイもしくは予後アッセイのうちのいずれか、またはそれらの組み合わせによって特定することができる。予防薬の投与は、疾患または障害が予防されるか、またはあるいは、その進行を遅延させるように、PD−L3もしくはVISTA異常の特徴を示す症状が顕在化する前に起こり得る。PD−L3もしくはVISTA異常の種類、例えば、PD−L3もしくはVISTAポリペプチド、PD−L3もしくはVISTAアゴニスト、またはPD−L3もしくはVISTAアンタゴニスト(例えば、抗PD−L3もしくはVISTA抗体)に応じて、作用物質を対象の治療に使用することができる。適切な作用物質を、本明細書に記載のスクリーニングアッセイに基づいて決定することができる。
【0250】
2.治療法
〔00272〕 本発明の重要な態様は、PD−L3もしくはVISTA発現もしくは活性またはその天然結合パートナーとの相互作用を調節する方法に関する。治療に関連して、PD−L3もしくはVISTAは、CD28共刺激を阻害し、免疫細胞のTCR活性化を阻害し、活性化免疫細胞(CD4+およびCD8+T細胞)の増殖を阻害し、T細胞(IL−2、ガンマインターフェロン)によるサイトカイン産生を阻害し、かつ阻害シグナルを免疫細胞に伝送することを実証した。したがって、免疫応答を調節するために、PD−L3もしくはVISTAの活性および/または発現、ならびにT細胞上でのPD−L3もしくはVISTAとその結合パートナーとの間の相互作用を調節することができる。PD−L3もしくはVISTAが(T細胞上の)阻害性受容体に結合するため、PD−L3もしくはVISTA活性の上方制御は、免疫応答の下方制御をもたらすはずであり、一方で、PD−L3もしくはVISTA活性の下方制御は、免疫応答の上方制御をもたらすはずである。好ましい実施形態において、PD−L3もしくはVISTAは、阻害性受容体に結合する。上述のように、直観に反した方法で、PD−L3もしくはVISTA−Ig融合タンパク質の抑制活性をインビトロで(PD−L3もしくはVISTA−Igの存在下で)強化する、本出願者によって産生されるPD−L3もしくはVISTA特異的抗体(すなわち、これらの抗体は、サイトカイン産生、T細胞増殖、分化、または活性化、および前述の他の機能へのPD−L3またはVISTAの効果等のPD−L3もしくはVISTA関連活性の抑制を強化する)は、インビボにおいて予想されるであろう挙動とは反対に挙動する、すなわち、これらの抗体は、インビボで免疫抑制であると見出された。
【0251】
〔00273〕
本発明の調節法は、細胞をPD−L3もしくはVISTAポリペプチド、または細胞と関連したPD−L3もしくはVISTAポリペプチド活性のうちの1つ以上を調節する作用物質、例えば、PD−L3もしくはVISTAの発現もしくは活性を調節し、かつ/またはPD−L3もしくはVISTAのその天然結合パートナーとの相互作用を調節する作用物質と接触させることを含む。PD−L3もしくはVISTAポリペプチド活性を調節する作用物質は、核酸またはポリペプチド、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの自然発生結合パートナー、PD−L3もしくはVISTA抗体、PD−L3もしくはVISTAアゴニストまたはアンタゴニスト、PD−L3もしくはVISTAアゴニストまたはアンタゴニストのペプチド模倣物、PD−L3もしくはVISTAペプチド模倣物、または他の小分子等の本明細書に記載の作用物質であり得る。PD−L3もしくはVIS
TAの可溶型を使用して、PD−L3もしくはVISTAのその天然結合パートナー(複数を含む)もしくはリガンドのうちのいずれかへの結合を妨害することもできる。
【0252】
〔00274〕
PD−L3もしくはVISTAの発現を調節する作用物質は、例えば、アンチセンス核酸分子、三重オリゴヌクレオチド、リボザイム、またはPD−L3もしくはVISTAポリペプチドの発現用の組換えベクターである。例えば、PD−L3もしくはVISTAポリペプチド翻訳開始部位の周辺領域に相補的なオリゴヌクレオチドを合成することができる。1つ以上のアンチセンスオリゴヌクレオチドを、細胞培地に、典型的には200μg/mL添加することができるか、または患者に投与して、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの合成を阻止することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、細胞に取り込まれ、PD−L3もしくはVISTA mRNAにハイブリダイズして、翻訳を阻止する。あるいは、二本鎖DNAに結合して、三重構築物を形成して、DNA巻戻しおよび転写を阻止するオリゴヌクレオチドを使用することができる。いずれかの結果として、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの合成が、ブロックされる。PD−L3もしくはVISTA発現が調節されるとき、好ましくは、かかる調節は、PD−L3もしくはVIST遺伝子ノックアウト以外の手段で発生する。
【0253】
〔00275〕
細胞中のPD−L3もしくはVISTAの量を制御するという理由に基づいて発現を調節する作用物質は、細胞中のPD−L3もしくはVISTA活性の総量も調節する。一実施形態において、PD−L3もしくはVISTAを調節する作用物質は、1つ以上のPD−L3もしくはVISTA活性を刺激する。かかる刺激作用物質の例には、活性PD−L3もしくはVISTAポリペプチドおよび細胞に導入されたPD−L3もしくはVISTAをコードする核酸分子が挙げられる。別の実施形態では、本作用物質は、1つ以上のPD−L3もしくはVISTA活性を阻害する。かかる阻害作用物質の例には、アンチセンスPD−L3もしくはVISTA核酸分子、抗PD−L3もしくはVISTA抗体、PD−L3もしくはVISTA阻害剤、および主題のスクリーニングアッセイにおいて特定される化合物が挙げられる。さらに好ましい実施形態では、阻害作用物質は、抗PD−L3もしくはVISTA抗体および抗PD−L1もしくは抗PD−L2抗体の組み合わせである。これらの調節法を、(例えば、細胞を作用物質と接触させることによって)インビトロで、またはあるいは、作用物質を細胞と接触させることによって(例えば、対象に作用物質を投与することによって)インビボで行うことができる。したがって、本発明は、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの上方調節または下方調節から恩恵を受けるであろう状態または障害、例えば、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたは核酸分子の望ましくない、不十分な、もしくは異常な発現または活性を特徴とする障害に苦しむ個人を治療する方法を提供する。一実施形態において、本方法は、作用物質(例えば、本明細書に記載のスクリーニングアッセイによって特定される作用物質)、またはPD−L3もしくはVISTA発現または活性を調節する(例えば、を上方制御もしくは下方制御する)作用物質の組み合わせを投与することを含む。別の実施形態では、本方法は、減少した、異常な、または望ましくないPD−L3もしくはVISTA発現または活性を補う治療として、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたは核酸分子を投与することを含む。
【0254】
〔00276〕
主題のPD−L3またはVISTA結合剤で治療可能な疾患は、先に特定されており、種々の炎症性、自己免疫、癌、アレルギー性、および感染性障害を含む。特に好ましい適応症は、多発性硬化症である。
【0255】
〔00277〕
PD−L3もしくはVISTA活性の刺激は、PD−L3もしくはVISTAが異常に下方制御される状況、および/または増加したPD−L3もしくはVISTA活性が有益な効果を有する可能性がある状況において望ましい。同様に、PD−L3もしくはVISTA活性の阻害は、PD−L3もしくはVISTAが異常に上方制御される状況、および/または減少したPD−L3もしくはVISTA活性有益な効果を有する可能性がある状況において望ましい。PD−L3もしくはVISTA(すなわち、PD−L3もしくはVISTAアンタゴニスト)の下方調節に用いる例示的な作用物質には、例えば、アンチセンス核酸分子、PD−L3もしくはVISTAを認識かつブロックする抗体、PD−L3もしくはVISTAを認識かつブロックする抗体の組み合わせ、およびPD−L3もしくはVISTA対抗受容体を認識かつブロックする抗体、ならびに免疫細胞上でのPD−L3もしくはVISTAのその自然発生結合パートナー(複数を含む)との相互作用をブロックする化合物(例えば、可溶性の一価PD−L3もしくはVISTA分子、抗原提示細胞上の受容体に結合しないPD−L3もしくはVISTA分子の可溶型、PD−L3もしくはVISTA結合パートナーの可溶型、および主題のスクリーニングアッセイにおいて同定される化合物)が含まれる。PD−L3もしくはVISTA(すなわち、PD−L3もしくはVISTAアゴニスト)の上方調節に用いる例示的な作用物質には、例えば、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドをコードする核酸分子、PD−L3もしくはVISTAの多価形態、PD−L3もしくはVISTAの発現を増加させる化合物、PD−L3もしくはVISTAのその自然発生結合パートナーとの相互作用を強化する化合物、およびPD−L3もしくはVISTAを発現する細胞が含まれる。
【0256】
〔00278〕 3.免疫応答の下方制御
〔00279〕 PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの阻害性機能を上方制御し、それによって、免疫応答を下方制御するための本発明の実施形態が多数存在する。下方制御は、すでに進行中の免疫応答を阻害もしくはブロックする形態であり得るか、または免疫応答の誘導を阻止することを含み得る。活性化免疫細胞の機能を、免疫細胞応答を下方制御することによって、もしくは免疫細胞内で特定のアネルギーを誘導することによって、またはそれら両方によって阻害することができる。例えば、PD−L3もしくはVISTAが阻害性受容体に結合する実施形態において、阻害性受容体に結合するPD−L3もしくはVISTAの形態、例えば、細胞表面上の多価PD−L3もしくはVISTAを使用して、免疫応答を下方調節することができる。本発明の一実施形態において、PD−L3もしくはVISTA活性を刺激するために使用される活性化抗体は、二重特異性抗体である。例えば、かかる抗体は、PD−L3もしくはVISTA結合部位、および免疫細胞、例えば、T細胞、B細胞、または骨髄性細胞上の細胞表面受容体を標的化する別の結合部位を含み得る。一実施形態において、PD−L3もしくはVISTA結合部位を含むことに加えて、かかる抗体は、分子を特定の細胞集団に標的化するために、B細胞抗原受容体、T細胞抗原受容体、またはFc受容体に結合する結合部位をさらに含み得る。二重特異性抗体のためのこの第2の抗原の選択は、阻害ののために標的化される細胞集団の選択における柔軟性を提供する。PD−L3もしくはVISTA活性を促進するか、またはPD−L3もしくはVISTAのその天然結合パートナーとの相互作用を強化する作用物質(例えば、PD−L3もしくはVISTA活性化抗体またはPD−L3もしくはVISTA活性化小分子)を、免疫細胞増殖および/またはエフェクター機能を阻害するそれらの能力、またはインビトロアッセイに添加されるときにアネルギーを誘導するそれらの能力によって特定することができる。例えば、細胞を、活性化受容体を介してシグナル変換を刺激する作用物質の存在下で培養することができる。いくつかの当技術分野で認識される細胞活性化の読み出しを採用して、例えば、活性化作用物質の存在下で、細胞増殖またはエフェクター機能(例えば、抗体産生、サイトカイン産生、食作用)を測定することができる。この活性化をブロックする試験作用物質の能力を、測定される増殖またはエフェクター機能の減少に影響を及ぼす作用物質の能力を測定することによって容易に決定することができる。一実施形態において、低抗原濃度で、PD−L3もしくはVISTA免疫
細胞相互作用は、強力なB7−CD28シグナルを阻害する。別の実施形態では、高抗原濃度で、PD−L3もしくはVISTA免疫細胞相互作用は、サイトカイン産生を減少させるが、T細胞増殖を阻害しない場合もある。したがって、活性化をブロックする試験化合物の能力を、抗原の異なる濃度でサイトカイン産生および/または増殖を測定することによって決定することができる。
【0257】
〔00280〕
本発明の一実施形態において、特定の抗原に対する耐性は、抗原と、PD−L3もしくはVISTAアゴニストとを共投与することによって誘導される。例えば、耐性を、特定のポリペプチドに誘導することができる。一実施形態において、免疫応答が望ましくないアレルゲンまたは外来ポリペプチドへの免疫応答を阻害することができる。例えば、第VIII因子を受ける患者は、この凝固因子に対する抗体を高い頻度で生成する。PD−L3もしくはVISTA活性、またはその天然結合パートナーとの相互作用を刺激する作用物質と、組換え第VIII因子との共投与(または例えば、交差結合による、PD−L3もしくはVISTAの第VIII因子への物理的結合)は、免疫応答の下方調節をもたらし得る。
【0258】
〔00281〕
一実施形態において、PD−L3もしくはVISTAアゴニスト、および免疫細胞上の共刺激受容体の活性をブロックすることができる別の作用物質を使用して、免疫応答を下方調節することができる。例示的な分子は、他のPDリガンドのアゴニスト形態、CTLA−4の可溶型、抗B7−1抗体、抗B7−2抗体、またはそれらの組み合わせを含む。あるいは、2つの別個のペプチド(例えば、B7−2および/またはB7−1ポリペプチドのブロッキング形態を有するPD−L3もしくはVISTAポリペプチド)、または抗体の組み合わせ(例えば、抗B7−2および/または抗B7−1モノクローナル抗体をブロックするPD−L3もしくはVISTAポリペプチドに対する活性化抗体)を、単一の組成物として合わせることができるか、または別々に(同時に、もしくは連続的に)投与して、対象における免疫細胞媒介性免疫応答を下方制御することができる。さらに、B7−1および/またはB7−1活性を有する1つ以上のポリペプチドに加えて、PD−L3もしくはVISTAポリペプチド活性を有する治療的に活性な量の1つ以上のペプチドを、他の下方調節試薬と併せて使用して、免疫応答に影響を与えることができる。他の免疫調節試薬の例には、共刺激シグナルをブロックする抗体(例えば、CD28もしくはICOSに対して)、CTLA4を介して阻害シグナルを活性化する抗体、および/または他の免疫細胞マーカーに対する(例えば、CD40、CD40リガンド、もしくはサイトカインに対する)抗体、融合タンパク質(例えば、CTLA4−FcもしくはPD−1−Fc)、ならびに免疫抑制薬(例えば、ラパマイシン、シクロスポリンA、もしくはFK506)が挙げられる。PD−L3もしくはVISTAポリペプチドはまた、細胞の破壊によって免疫細胞機能をブロックする治療薬の作成において有用であり得る。例えば、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの部分を、毒素に結合させて、それが結合する細胞の破壊を誘発することができる細胞毒性薬を作製することができる。
【0259】
〔00282〕
細胞毒性薬を作製するために、本発明のポリペプチドを、当分野で既知の技術を用いて、毒素に結合させるか、または作動可能に付着させることができる。本発明のポリペプチドまたは抗体に抱合することができる多種多様の毒素が既知である。例には多数の有用な植物、真菌、もしくはさらには細菌由来の毒素が挙げられ、例としては、種々のA鎖毒素、特にリシンA鎖;サポリンもしくはゲロニン等のリボソーム不活性化タンパク質;アルファサルシン;アスペルギリン;レストリクトシン;および胎盤リボヌクレアーゼ等のリボヌクレアーゼ、血管新生、ジフテリア毒素、またはシュードモナス外毒素を含む。本発明との関連での使用に好ましい毒素部分は、炭水化物残基、脱グリコシル化A鎖を修飾ま
たは除去するように処理された毒素A鎖である(米国特許第5,776,427号)。
【0260】
〔00283〕
患者へのかかる細胞毒性薬(例えば、PD−L3もしくはVISTAリシン(単独で、もしくはPD−L1−リシンとの併用で))のうちの1つまたはそれらの組み合わせの注入は、特に、活性化免疫細胞がより大量のPD−L3もしくはVISTA結合パートナーを発現するという事実を踏まえて、免疫細胞の死亡をもたらし得る。例えば、PD−1が活性化リンパ球の表面上に誘導されるため、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドを使用して、Fc−R依存性機序によって、または細胞毒性薬(例えば、リシン、サポリン、もしくはカリケアマイシン)をPD−L3もしくはVISTAポリペプチドに抱合させることによる消失によって、これらの特定の細胞の除去を標的とすることができる。別の一実施形態において、毒素は、死亡PD−L3もしくはVISTA発現抗原提示細胞を標的とするために、抗PD−L3もしくはVISTA抗体に抱合することができる。さらなる実施形態では、PD−L3もしくはVISTA抗体毒素は、二重特異性抗体であり得る。かかる二重特異性抗体は、例えば、ある特定の種類の細胞、例えば、Bリンパ球、単球、樹枝状細胞、またはランゲルハンス細胞でのみ見出されるマーカーを用いた特定の細胞集団の標的化に有用である。PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTA免疫細胞相互作用を活性化する(したがって、PD−L3もしくはVISTAの負のシグナル伝達機能を刺激する)ことによる免疫応答の下方制御は、例えば、組織、皮膚、および臓器移植術の状況における、移植片対宿主疾患(GVHD)もしくはアレルギーにおける、または全身性エリテマトーデスおよび多発性硬化症等の自己免疫疾患における免疫応答の下方調節に有用である。例えば、免疫細胞機能の妨害は、組織移植術における組織破壊の減少をもたらす。典型的には、組織移植片において、移植片の拒絶は、免疫細胞がそれを異物と認識することで開始され、その後、移植片を破壊する免疫反応が起こる。移植術の前、または移植術時の、PD−L3もしくはVISTAの活性または免疫細胞上でのPD−L3もしくはVISTAのその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用を促進する分子(PD−L3もしくはVISTAポリペプチドの可溶性多量体形態等)の単独投与または別の下方調節剤との併用投与は、共刺激シグナルの生成を阻害することができる。さらに、PD−L3もしくはVISTA活性の促進は、免疫細胞をアネルギー化するのにも十分であり得、それによって、対象における耐性を誘導する。
【0261】
〔00284〕
対象における十分な免疫抑制または耐性を達成するために、他の分子の共刺激機能をブロックすることも望ましくあり得る。例えば、移植術の前、または移植術時に、これらの抗原またはこれらの抗原に対するブロッキング抗体のそれぞれの活性を有するペプチドの組み合わせの可溶型を投与することにより(単一の組成物内で別々に、またはともに)、B7−1およびB7−2の機能をブロックすることが望ましくあり得る。あるいは、PD−L3またはVISTAの阻害活性を促進し、かつB7−1および/またはB7−2の共刺激活性を阻害することが望ましくあり得る。本発明の下方調節法に関連して使用することができる他の下方調節剤は、例えば、CTLA4、CTLA4の可溶型を介して阻害シグナルを伝送する作用物質、CTLA4を介して阻害シグナルを活性化する抗体、他の免疫細胞マーカーに対するブロッキング抗体、もしくは他の受容体リガンド対の可溶型(例えば、CD40とCD40リガンドとの間の相互作用を破壊する作用物質(例えば、抗CD40リガンド抗体))、サイトカインに対する抗体、または免疫抑制薬を含む。例えば、PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAのその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用の活性化は、自己免疫疾患の治療に有用である。多くの自己免疫障害は、自己組織に反応し、かつ疾患の病理学に関わるサイトカインおよび自己抗体の産生を促進する免疫細胞の不適切な活性化の結果である。自己反応性免疫細胞の活性化を阻止することによって、疾患の症状を減少させるか、または排除することができる。PD−L3もしくはVISTAの活性またはPD−L3もしくはVISTAの
その天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用を促進する作用物質の投与は、疾患の長期緩和につながるであろう自己反応性免疫細胞の抗原特異的耐性を誘導し得る。さらに、B7分子の受容体−リガンド相互作用を破壊することにより免疫細胞の共刺激をブロックする作用物質と、共刺激受容体との共投与は、免疫細胞活性化を阻害して、疾患プロセスに関与し得る自己抗体またはサイトカインの産生を阻止するのに有用であり得る。自己免疫障害を予防または緩和する試薬の有効性を、いくつかの十分に特徴化されたヒト自己免疫疾患の動物モデルを用いて決定することができる。例には、マウス実験的自己免疫性脳炎、MRL/lpr/lprマウスまたはNZBハイブリッドマウスにおける全身性エリテマトーデス、マウス自己免疫性コラーゲン関節炎、NODマウスおよびBBラットにおける糖尿病、およびマウス実験的重症筋無力症が挙げられる(Paul ed.,Fundamental Immunology,Raven Press,New York,1989,pp.840−856を参照のこと)。
【0262】
〔00285〕
例えば、IgE産生を阻害することによる免疫細胞活性化の阻害は、アレルギーおよびアレルギー反応の治療において、治療的に有用である。PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAのその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用を促進する作用物質を、アレルギー性対象に投与して、対象における免疫細胞媒介性アレルギー性応答を阻害することができる。PD−L3もしくはVISTA活性またはその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用の刺激は、適切なMHC分子と併せてアレルゲンへの曝露を伴い得る。アレルギー反応は、アレルゲンの進入経路およびマスト細胞または好塩基球上でのIgEの沈着のパターンに応じて、本来、全身性または局所であり得る。したがって、免疫細胞媒介性アレルギー性応答を、PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTA免疫細胞相互作用を促進する作用物質の投与によって、局所的または全身的に阻害することができる。
【0263】
〔00286〕
PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAのその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用の刺激を介する免疫細胞活性化の阻害も、免疫細胞の病原性感染(例えば、ウイルスまたは細菌)において治療的に重要であり得る。例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS)において、ウイルス複製は、免疫細胞活性化によって刺激される。PD−L3もしくはVISTA活性の刺激は、ウイルス複製の阻害をもたらし得、それによって、AIDSの経過を改善する。
【0264】
〔00287〕
PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAのその天然結合パートナーとの相互作用の刺激を介する免疫応答の下方制御も、自己組織の自己免疫発作の治療に有用であり得る。したがって、PD−L3もしくはVISTA活性またはその天然結合パートナーへのPD−L3もしくはVISTA結合を増加させることによって、自己免疫発作によって引き起こされるか、または悪影響を及ぼされる状態(例えば、心疾患、心筋梗塞、またはアテローム性動脈硬化症)を改善(ameliorate)または改善(improve)することができる。したがって、PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAのその対抗受容体との相互作用を刺激することによって、自己免疫障害等の自己免疫発作によって悪影響を及ぼされる状態(ならびに心疾患、心筋梗塞、およびアテローム性動脈硬化症等の状態)を調節することは、本発明の範囲内である。
【0265】
4.免疫応答の上方制御
〔00288〕 免疫応答の上方制御としてのPD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAとその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用の
阻害も、治療において有用である。免疫応答の上方制御は、既存の免疫応答を強化するか、または最初の免疫応答を誘発する形態であり得る。例えば、PD−L3もしくはVISTA活性の阻害を介する免疫応答の強化は、微生物、例えば、細菌、ウイルス、もしくは寄生虫感染の場合、または免疫抑制の場合に有用である。例えば、一実施形態において、PD−L3もしくはVISTA活性を阻害する作用物質、例えば、PD−L3もしくはVISTAに対する非活性化抗体(すなわち、ブロッキング抗体)、またはPD−L3もしくはVISTAの可溶型は、ウイルス、細菌、もしくは寄生虫のより迅速または完全な排除をもたらす抗体および細胞媒介性応答の上方制御が有益であろう状況において、治療的に有用である。これらの状態には、ヘルペスまたは帯状疱疹等のウイルス性皮膚疾患が含まれ、その場合、かかる作用物質を局所的に皮膚に送達することができる。加えて、インフルエンザ、風邪、および脳炎等の全身性ウイルス性疾患は、かかる作用物質の全身投与によって緩和され得る。ある特定の事例において、免疫応答をさらに増強するために、免疫応答を上方制御する他の作用物質、例えば、共刺激受容体を介してシグナルを変換するB7ファミリーメンバーの形態をさらに投与することが望ましくあり得る。
【0266】
〔00289〕
あるいは、免疫細胞を患者から除去すること、インビトロで免疫細胞をPD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAとその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用を阻害する作用物質と接触させること、およびインビトロで刺激された免疫細胞を患者に再導入することによって、感染患者における免疫応答を強化することができる。別の実施形態では、免疫応答を強化する方法は、患者から感染細胞、例えば、ウイルス感染細胞を単離すること、細胞がそれらの表面でPD−L3もしくはVISTA分子の全てまたは一部を発現するように、それらをその天然結合パートナー(複数を含む)に結合できないPD−L3もしくはVISTAの形態をコードする核酸分子でトランスフェクトすること、およびトランスフェクト細胞を患者に再導入することを含む。トランスフェクト細胞は、阻害シグナルを予防し、それによって、インビボで免疫細胞を活性化することができる場合もある。
【0267】
〔00290〕
種々のポリペプチド、例えば、ポリペプチド由来の病原体に対するワクチンにおいて、PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAとその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用を阻害する作用物質を予防的に使用することができる。病原体、例えば、ウイルスに対する免疫を、適切なアジュバントにおいて、PD−L3もしくはVISTA活性を阻害する作用物質に加えて、ウイルスポリペプチドをワクチン接種することによって誘導することができる。あるいは、病原性抗原およびPD−L3もしくはVISTAの免疫細胞との相互作用をブロックするPD−L3もしくはVISTAの形態の両方をコードする遺伝子を含むベクターを、ワクチン接種に使用することができる。核酸ワクチンを、様々な手段で、例えば、注入(例えば、筋肉内、皮内、または分子を皮膚に注入するために粒子加速器もしくは圧縮ガスを使用する遺伝子銃を用いたDNA被覆金粒子の表皮への微粒子銃注入(Haynes et al.(1996)J.Biotechnol.44:37))によって投与することができる。あるいは、核酸ワクチンを非侵襲的手段で投与することができる。例えば、純粋なDNAもしくは脂質製剤化DNAを、呼吸器系に送達するか、またはDNAの経口送達によって、他の部分、例えば、パイエル板を標的化することができる(Schubbert(1997)Proc
Natl.Acad.Sci.USA 94:961)。弱毒化微生物を、粘膜面への送達のために使用することができる(Sizemore et al.(1995)Science 270:29)。
【0268】
〔00291〕
別の実施形態では、ワクチン中の抗原は、自己抗原である。かかるワクチンは、生物に
おける耐性の調節において有用である。自己抗原およびPD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAのその天然結合パートナーとの相互作用をブロックする作用物質での免疫化は、耐性を破壊する(すなわち、自己抗原の耐性を妨害する)ことができる。かかるワクチンは、ミョウバン等のアジュバントまたはサイトカイン(例えば、GM−CSF、IL−12、B7−1、もしくはB7−2)も含み得る。一実施形態において、PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAとその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用を阻害する作用物質を、例えば、トランスフェクトされて、PD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたはブロッキング抗体ならびにMHCクラスIα鎖ポリペプチドおよびベータ2マイクログロブリンを共発現する細胞によって、MHCクラスIポリペプチドで投与し、T細胞の活性化をもたらし、感染から免疫を提供することができる。例えば、ワクチンが有用であるウイルス病原体には、B型肝炎、C型肝炎、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、HIV−1、HIV−2、結核、マラリアおよび住血吸虫症が含まれる。
【0269】
〔00292〕
別の適用では、PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAとその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用の阻害は、腫瘍免疫の治療において有用であり得る。腫瘍細胞(例えば、肉腫、黒色腫、リンパ腫、白血病、神経芽細胞腫、または癌腫)を、PD−L3もしくはVISTA活性を阻害する核酸分子でトランスフェクトすることができる。これらの分子は、例えば、PD−L3もしくはVISTAに対してアンチセンスであるか、または非活性化抗PD−L3もしくはVISTA抗体をコードすることができる核酸分子であり得る。これらの分子は、抗PD−L3もしくはVISTA抗体の可変領域であり得る。所望される場合、腫瘍細胞を、共刺激を活性化する他のポリペプチド(例えば、B7−1またはB7−2)でトランスフェクトすることができる。トランスフェクトされた腫瘍細胞は、患者に戻され、PD−L3もしくはVISTA活性の阻害(例えば、局所的阻害)をもたらす。あるいは、遺伝子治療技術を使用して、インビボでのトランスフェクションのために腫瘍細胞を標的化することができる。
【0270】
〔00293〕
腫瘍細胞への免疫応答の刺激を、PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAとその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用を阻害することによって、患者を、PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAとその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用を阻害する作用物質で治療することによって達成することもできる。かかる作用物質の好ましい例には、例えば、アンチセンス核酸分子、PD−L3もしくはVISTAを認識かつブロックする抗体、および免疫細胞上でのPD−L3もしくはVISTAのその自然発生結合パートナー(複数を含む)との相互作用をブロックする化合物(例えば、可溶性一価PD−L3もしくはVISTA分子、抗原提示細胞上でFc受容体に結合しないPD−L3もしくはVISTA分子の可溶型、PD−L3もしくはVISTA結合パートナー(複数を含む)の可溶型、および主題のスクリーニングアッセイにおいて同定される化合物)が挙げられる。加えて、MHCクラスIもしくはMHCクラスII分子を欠乏するか、または十分な量のMHCクラスIもしくはMHCクラスII分子を発現しそこなう腫瘍細胞を、MHCクラスIα鎖ポリペプチドおよびベータ2マイクログロブリンポリペプチドまたはMHCクラスIIα鎖ポリペプチドおよびMHCクラスIIβ鎖ポリペプチドの全てまたは一部(例えば、細胞質ドメイン切断型部分)をコードする核酸でトランスフェクトすることができ、それによって、細胞表面上でMHCクラスIもしくはMHCクラスIIポリペプチドを発現する。ポリペプチドまたはアンチセンス核酸を阻害するPD−L3もしくはVISTAとの適切なMHCクラスIまたはクラスIIの発現は、トランスフェクト腫瘍細胞に対するT細胞媒介性免疫応答を誘導する。任意で、不変鎖等のMHCクラスII関連ポリペプチドの発現をブロックするアンチセンス構築物をコードする遺伝子を、ポリペプチドまたはアン
チセンス核酸を阻害するPD−L3もしくはVISTAをコードするDNAで同時トランスフェクトして、腫瘍関連抗原の提示を促進し、かつ腫瘍特異的免疫を誘導することもできる。B7−陰性マウス腫瘍細胞によるB7−1の発現が、マウスにおける腫瘍拒絶および腫瘍誘発に対する長期保護を伴うT細胞媒介性特異的免疫を誘導することが示されている(Chen,L.et al.(1992)Cell 71:1093−1102、Townsend,S.E.and Allison,J.P.(1993)Science 259:368−370、Baskar,S.et al.(1993)Proc Natl.Acad.Sci.90:5687−5690)。したがって、ヒト対象における免疫細胞媒介性免疫応答の誘導は、対象における腫瘍特異的耐性を克服するのに十分であり得る。別の実施形態では、既存の耐性が克服されるように、免疫応答を、PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAとその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用の阻害によって刺激することができる。例えば、対象が著しい免疫応答を開始することができない抗原、例えば、腫瘍特異的抗原に対する免疫応答を、能動免疫化のプロセスにおける外来抗原への応答を高めるアジュバントとして使用することができる、PD−L3もしくはVISTAの活性またはその天然結合パートナーに結合するPD−L3もしくはVISTAの能力を阻害する作用物質を投与することによって誘導することができる。
【0271】
〔00294〕
一実施形態において、免疫細胞は、対象から得られ、かつPD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAとその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用を阻害する作用物質の存在下において、エクスビボで培養され、免疫細胞集団を増殖する。さらなる実施形態では、免疫細胞は、その後、対象に投与される。例えば、当分野で既知のように、免疫細胞に一次活性化シグナルおよび共刺激シグナルを提供することによって、免疫細胞を刺激して、インビトロで増殖することができる。PD−L3もしくはVISTAポリペプチドまたはPD−L3もしくはVISTA活性を阻害する作用物質の種々の形態を使用して、免疫細胞の増殖を共刺激することもできる。一実施形態において、免疫細胞は、PCT出願第WO94/29436号に記載の方法に従ってエクスビボで培養される。共刺激分子は、可溶性であり得、細胞膜に付着されるか、またはビーズ等の固体表面に付着され得る。
【0272】
〔00295〕
さらなる実施形態では、本明細書に記載の方法のうちのいずれかを行う際、1つ以上の追加の作用物質を投与することによって免疫応答を上方制御することは、本発明の範囲内である。例えば、サイトカイン、アジュバント、または共刺激分子もしくはそれらのリガンドの刺激型等の免疫応答を刺激することで既知の他の作用物質を、PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAとその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用を阻害する作用物質と併せて使用することができる。
【0273】
E.T細胞上でのPD−L3もしくはVISTA活性またはその対抗受容体とのPD
−L3もしくはVISTA相互作用の調節によって調節されるサイトカインの特定
〔00296〕 本明細書に記載のPD−L3もしくはVISTA分子を使用して、PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはV1STAとその天然結合パートナー(複数を含む)との相互作用の調節によって産生されるか、またはその産生が免疫細胞内でそれに応答して強化もしくは阻害されるサイトカインを特定することができる。免疫細胞を、一次活性化シグナルで最適以下にインビトロ刺激することができ、例えば、T細胞を、ホルボールエステル、抗CD3抗体、または好ましくはMHCクラスII分子と会合した抗原で刺激し、例えば、B7ファミリー抗原の刺激型によって、例えば、B7ポリペプチドをコードし、かつその表面上でペプチドを発現する核酸でトランスフェクトされた細胞によって、またはペプチドの可溶性刺激型によって共刺激シグナルを与えるこ
とができる。その後、細胞を、PD−L3もしくはVISTAを発現する細胞(例えば、PD−L3もしくはVISTAに対する抗体)と接触させることができる。培地に放出される既知のサイトカインを、ELISAによって、またはサイトカインをブロックする抗体の免疫細胞増殖またはサイトカインによって誘導される他の細胞型の増殖を阻害する能力によって特定することができる。例えば、IL−4 ELISAキットは、IL−7ブロッキング抗体として、Genzyme(Cambridge,Mass.)から入手可能である。IL−9およびIL−12に対するブロッキング抗体は、Genetics Institute(Cambridge,Mass.)から入手可能である。PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAとその結合パートナー(複数を含む)との相互作用の刺激もしくはブロックのサイトカインプロファイルへの影響を次いで決定することができる。上述のように、かつ実施例に示されるように、PD−L3もしくはVISTAは、免疫細胞によるIL−2およびガンマインターフェロンの発現を抑制するようである。
【0274】
〔00297〕
上述のインビトロ免疫細胞共刺激アッセイを、PD−L3もしくはVISTA活性の調節によって調節することができる新規のサイトカインを特定するための方法において使用することもできる。例えば、CD28/CTLA4経路の刺激が、IL−2分泌を強化するように見える場合、ICOS経路の刺激は、IL−10分泌を強化するようである(Hutloffet al.(1999)Nature 397:263)。共刺激時、例えば、免疫細胞増殖時に誘導される特定の活性が、ブロッキング抗体を既知のサイトカインに添加することによって阻害することができない場合、活性は、未知のサイトカインの作用に起因し得る。共刺激後、このサイトカインを、従来の方法で培地から精製することができ、その活性を、免疫細胞増殖を誘導するその能力によって測定することができる。
【0275】
〔00298〕
耐性の誘導の役割を果たし得るサイトカインを特定するために、上述のインビトロT細胞共刺激アッセイを使用することができる。この場合、T細胞は、一次活性化シグナルを与えられ、かつ選択されたサイトカインと接触するが、共刺激シグナルは与えられない。免疫細胞を洗浄し、静置させた後、その細胞は、一次活性化シグナルおよび共刺激シグナルの両方に曝露される。免疫細胞が応答しない(例えば、サイトカインを増殖または産生しない)場合、それらは耐性化されており、サイトカインは、耐性の誘導を阻止しなかったこととなる。しかしながら、免疫細胞が応答する場合、耐性の誘導は、サイトカインによって阻止されている。耐性の誘導を阻止することができるこれらのサイトカインを、移植レシピエントまたは自己免疫疾患を有する対象における耐性を誘導するより効率的な手段として、Bリンパ球抗原をブロックする試薬と併せて、インビボでの妨害のために標的とすることができる。例えば、対象に、PD−L3もしくはVISTA活性またはPD−L3もしくはVISTAの結合パートナーとの相互作用を促進する作用物質に加えて、サイトカインブロッキング抗体を投与することができる。
【0276】
〔00299〕
したがって、要約すると、Treg細胞によって発現されるプログラム死リガンド(PDL)ファミリーの新規の成員が現在同定されている。この新規のタンパク質は、PD−L3もしくはVISTAと命名されている。このPD−Lファミリーの受容体は、単一のIgVドメインを含有するI型膜貫通タンパク質である一方で、リガンドは、IgVおよびIgC細胞外ドメインの両方を発現するI型膜貫通タンパク質である。PDLファミリーの他のメンバーと同様に、PD−L3もしくはVISTAは、T細胞のαCD3増殖をインビトロで共刺激する。加えて、PD−L3もしくはVISTAの発現は、αCD3活性化Tregを増加させ、αGITRの存在下で減少する。
【0277】
〔00300〕
第2のTNF様のタンパク質が、αCD3/αGITR刺激時に上方制御されると特定されている。このタンパク質は、Treg−sTNFと命名されている。これらのタンパク質は、免疫の接触依存性およびパラクリン抑制に関与し得、したがって、免疫応答を調節する(例えば、阻害または刺激する)のに、かつTregシグナル伝達を伴う疾患および状態の治療において有用である。例えば、PD−L3もしくはVISTAタンパク質を、免疫細胞活性化を刺激または強化するための共刺激シグナルとして使用することができる。PD−L3もしくはVISTAタンパク質およびPD−L3もしくはVISTA結合剤ならびにPD−L3もしくはVISTAアゴニストおよびアンタゴニストは、T細胞免疫の制御が所望される免疫状態の治療、例えば、T細胞活性化、分化、および増殖の調節、具体的には、CD4+およびCD8+T細胞増殖、サイトカイン産生、ならびにT細胞と骨髄由来のAPCとの間の同族相互作用中のT細胞応答の調節において特に有用である。
【0278】
〔00301〕 本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、制限するものとして解釈されるべきではない。本出願を通して引用される全ての参考文献、特許、および公開された特許出願の内容、ならびに図および配列表は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0279】
〔00302〕 以下の材料および方法を、以下の実施例において使用した:
材料および方法
発現プロファイリング
〔00303〕 Treg細胞の確立された発現プロファイルとの比較を促進するために、標準の成長および活性化条件を採用した(McHugh,et al.(2002)上記参照)。簡潔に述べると、新鮮な単離Treg細胞(約96%陽性)を、抗GITR(DTA−1)を伴い、あるいは伴わずに、10%胎児ウシ血清および抗CD3で予め被覆された24ウェルプレート中の100単位IL−2を補充した完全RPMI培地に、106/mLで接種した(Shimizu,et al.(2002)上記参照)。細胞を、37℃で0〜12時間培養し、RNAを精製し、その後、Affymetrix(登録商標)マウスゲノムA430オリゴヌクレオチドアレイを用いて分析した。
【0280】
〔00304〕
静止または活性化CD4+CD25+T細胞群からのデータを比較することにより、遺伝子発現パターンが、当分野で確立されたパターンに類似することが見出された(Gavin,et al.(2002)上記参照、McHugh,et al.(2002)上記参照)。GIRTシグナル伝達によって制御される遺伝子を特定するために、遺伝子発現プロファイルを、抗GITR処理を伴い、あるいは伴なう、異なる細胞集団間で比較した。以前に特徴付けられていないPD−L3またはVISTAおよびTreg−sTNFを含む既知の遺伝子ならびに未知の遺伝子の一覧表を編集した。
【0281】
マウス
〔00305〕 C57BL/6マウス、およびΟΤΙΙ CD4遺伝子導入マウスをJackson Laboratoryから購入した。FoxP3−GFP受容体マウスは、Fontenot,J.D.、Rasmussen,J.P.、Williams,L.M.、Dooley,J.L.、Farr,A.G.、およびRudensky,A.Y.(2005).Regulatory T cell lineage specification by the forkhead transcription factor foxp3.Immunity22,329−341に以前に記載されたようなものであり、寛大にも、Alexander Rudensky,Universi
ty of Washington School of Medicine,Seattle,WAによって提供された。PD−1 KOマウスは、寛大にも、Dr.Tasuku Honjo(Kyoto University,Japan)(Nishimura,H.、Nose,M.、Hiai,H.、Minato,N.、およびHonjo,T.(1999).Development of lupus−like autoimmune diseases by disruption of the PD−1 gene encoding an ITIM motif−carrying immunoreceptor.Immunity 11,141−151、Nishimura,H.、Okazaki,T.、Tanaka,Y.、Nakatani,K.、Hara,M.、Matsumori,A.、Sasayama,S.、Mizoguchi,A.、Hiai,H.、Minato,N.、およびHonjo,T.(2001).Autoimmune dilated cardiomyopathy in PD−1 receptor−deficient mice.Science 291,319−322)によって提供された。全ての動物を、Dartmouth Medical Schoolの病原体を含まない施設で維持した。
【0282】
抗体、細胞株、および試薬:
〔00306〕 抗体αCD3(2C11)、αCD28(PV−1)、αCD4(GK1.5)、αCD8(53−6.7)、αCD11b(Ml/70)、αF4/80(BM8)、αCD11c(N418)、αNK1.1(PK136)、αGr1(RB6−8C5)、αPD−L1(MIN5)、αPD−L2(TY25)、αB7−H3(M3.2D7)、αB7−H4(188)を、Ebioscienceから購入した。LPS(Sigma)、組換えマウスIFN□(Peprotech)、ヒトLL−2(Peprotech)、可溶性PD−L1−Ig融合タンパク質(R&D systems)を、指示された濃度で使用した。完全フロイントアジュバント(CFA)およびトリオボアルブミン(OVA)を、Sigmaから購入した。MHCII分子I−Adおよび共刺激分子B7−2を発現するCHO細胞株は、親切にもDr.Arlene Sharpe(Harvard Medical School)から提供された。
PD−L3またはVISTAの分子クローニング、レトロウイルス産生、および細胞のレトロウイルス形質導入
〔00307〕 全長PD−L3またはVISTAを、精製マウスCD4+T細胞からクローニングした。全てのRNAを、Qiagen RWAminiキットを用いてCD4+T細胞から単離した。cDNAを、Bio−Rad iScriptTM cDNA合成キットを用いて生成した。全長PD−L3またはVISTAを増幅し、レトロウイルスベクターpMSCV−IRES−GFPのECorl−Xhol部位(Zhang,X.およびRen,R.(1998)Bcr−Abl efficiently induces a myeloproliferative disease and production of excess interleukin−3 and granulocyte−macrophage colony−stimulating factor in mice:a novel model for chronic myelogenous leukemia.Blood 92、3829−3840)にクローニングし、その中で、IRES−GFPフラグメントは、RFPに置き換えられ、したがって、RFPのN末端に融合されるPD−L3またはVISTAの融合タンパク質をもたらした。ヘルパーを含まないレトロウイルスを、エコトロピックパッケージングベクターpCL−Eco(IMGENEX corp.)とともに、PD−L3またはVISTA−RFPレトロウイルスベクターの一過性トランスフェクションによって、HEK293T細胞において生成した。マウスT細胞株EL4細胞または骨髄由来DCのレトロウイルス形質導入を、8μg/mLポリブレン(Sigma)の存在下で、室温で45分間の2000rpmでのスピン感染によって実行した。
【0283】
PD−L3またはVISTA−Ig融合タンパク質の産生
〔00308〕 PD−L3またはVISTAの細胞外ドメイン(アミノ酸32〜190)を増幅し、親ベクターCDM7BのSpel−BamHI部位(Hollenbaugh,D.、Douthwright,J.、McDonald,V.、およびAruffo,A.(1995)J Immunol Methods 188,1−7...)にクローニングした。このベクターは、ヒトIgG 1の定常領域およびヒンジ領域の変異型を含有し、Fc受容体への結合を大幅に低下させた。結果として得られたベクターCDM7B−PD−L3またはVISTAを、DHFR発現ベクターpSV−dhfr(Mclvor,R.S.およびSimonsen,C.C.(1990)Nucleic Acids Res 18,7025−7032)でCHO(dhfr−)細胞株(ATCC番号CRL−9096)に同時トランスフェクトした。PD−L3またはVISTA−Igを発現する安定したCHO細胞クローンを、ヌクレオチドを有しないMEMアルファ培地(Invitrogen)において選択した。0.5〜1μMのメトトレキサート(Sigma M9929)でのさらなる増幅は、高レベルの可溶性PD−L3またはVISTA−Ig融合タンパク質を発現するクローンを産出した。融合タンパク質を、標準のタンパク質Gカラム親和性クロマトグラフィーを用いて、培養上清からさらに精製した。
【0284】
PD−L3またはVISTAモノクローナル抗体の生成
〔00309〕 アルメニアンハムスターを、PD−L3またはVISTA−RFPを過剰発現するEL4細胞で週に4回免疫し、その後、CFA中で乳化されたPD−L3またはVISTA−Ig融合タンパク質で追加免疫した。追加免疫の4週間後、ハムスターを、可溶性PD−L3またはVISTA−Ig融合タンパク質で再度追加免疫した。最後の追加免疫の4日後、ハムスター脾臓細胞を採取し、標準のハイブリドーマ融合技術(Shulman,M.、Wilde,C.D.、およびKohler,G.(1978)A better cell line for making hybridomas secreting specific antibodies.Nature 276,269−270)を用いて、骨髄腫細胞株SP2/0−Ag14(ATCC番号CRL−1581)に融合した。PD−L3またはVISTA特異的抗体を分泌するハイブリドーマクローンを、希釈を制限した後に選択し、ELISAおよびフローサイトメトリー法の両方によってスクリーニングした。
【0285】
RNAおよびRT−PCR
〔00310〕 種々のマウス組織試料または精製造血細胞型由来の全てのRNAを、TrizolTM(Invitrogen)方法を用いて会社の指示に従って収集した。cDNAを、iScriptTM cDNA合成キット(Bio−Rad)を用いて調製した。同量の組織cDNA(10ng)を、RT−PCR反応のために使用して、全長PD−L3またはVISTAを増幅した。PCR産物を、1%のアガロースゲルに通過させた後に観察した。
【0286】
フローサイトメトリー
〔00311〕 フローサイトメトリー分析を、FACSCAN上でCellQuest
software(BD Bioscience)を用いて行った。データ分析を、FlowJoソフトウェア(Treestar)を用いて行った。
【0287】
細胞調製
〔00312〕 全てのCD4+T細胞を、全てのCD4+T細胞単離キット(Miltenyi)を用いて、未処理のマウスから単離した。適応があれば、濃縮されたCD4+T細胞を、ナイーブ(CD44低CD25〜CD62L高)および記憶(CD44高CD25〜CD62L低)の集団にフロー分類した。インビトロ増殖アッセイについて、CD4+T細胞を、37℃で10分間、5μMのCFSE(分子プローブ)で標識化し、刺激
する前に2回洗浄した。
【0288】
インビトロプレート結合T細胞活性化アッセイ
〔00313〕 精製CD4+T細胞(1ウェル当たり100,000個の細胞)を、抗CD3(クローン2C11)および指示された濃度比のPD−L3もしくはVISTA−Igまたは対照−Igのいずれかの存在下で、96×平底ウェルプレート中で培養した。例えば、一連の滴定において、96ウェルプレートを、PBS中で4℃で一晩混合された、2.5μg/mLのαCD3および1.25μg/mL(2:1の比率)、2.5g/mL(1:1の比率)、5μg/mL(1:2の比率)、もしくは10μg/mL(1:4の比率)のPD−L3もしくはVISTA−Igまたは対照−Igタンパク質で被覆した。CD4+T細胞を添加する前に、ウェルをPBSで3回洗浄した。複製培養物は、10%のFBS、10mMのHEPES、50μMのβ−ME、ペニシリン/ストレプトマイシン/L−グルタミンを補充した完全RPMI1640培地中に存在した。適応があれば、PD−L3またはVISTA−Igの阻害効果を救助するために、100U/mLのヒトIL−2(PeproTech)または滴定量の□CD28(クローンPV−1、Bio X細胞)のいずれかを、□CD3とともに被覆した。培養物を、3日目にGFSEプロファイルについて、または示されるように時間的経過に従って分析した。
【0289】
骨髄由来DCの培養、レトロウイルス形質導入、および遺伝子導入CD4+T細胞の刺激
〔00314〕 骨髄由来DCを、Lutz,M.B.、Kukutsch,N.、Ogilvie,A.L.、Rossner,S.、Koch,F.、Romani,N.、およびSchuler,G.(1999)(An advanced culture method for generating large quantities of highly pure dendritic cells from mouse
bone marrow. J Immunol Methods 223,77−92)、Son,Y.I.、Egawa,S.、Tatsumi,T.、Redlinger,R.E.,Jr.、Kalinski,P.、およびKanto,T.(2002).(A novel bulk−culture method for generating mature dendritic cells from mouse bone marrow cells.J Immunol Methods 262,145−157)に記載されるように、いくつかの修正を伴って生成した。簡潔に述べると、0日目に、骨髄細胞を、27G針で洗い流すことによって、脛骨および大腿から単離した。赤血球溶解後、1〜2×106個の骨髄細胞を、6×ウェル細胞培養プレート(Nunc,Inc.)中に20ng/mLのGM−CSF(Peprotech Inc)を含有する1mLの完全RPMI1640培地中で再懸濁した。RFPまたはPD−L3もしくはVISTA−RFPレトロウイルスのいずれかを含有する2mLの上清を、骨髄細胞に添加した。ポリブレン(Sigma)も8μg/mLの最終濃度で添加した。プレートを室温で45分間、2000rpmで回転させて、感染を実行した。次いで、細胞を、新鮮な培地を添加する前にさらに2時間培養した。+1日目、+3日目、+5日目、および+7日目に、同様の感染手順を繰り返した。緩く付着した細胞(90%がCD11c+)を、+10日目に収集し、CD11c+RFP+二重陽性細胞を分類して、遺伝子導入OT−IICD4+T細胞を刺激するために使用した。OT−IIT細胞増殖アッセイについて、100,000個のCFSE標識化OT−IICD4+T細胞を、滴定量の合成OVA323−339ペプチド(Anaspec)の存在下で、30,000個の分類されたRFP+またはPD−L3もしくはVISTA−RFP+BMDCを有する96ウェル丸底プレート中で培養した。OT−IIT細胞の増殖を、72時間時点でCFSEプロファイルを試験することによって分析した。
【0290】
免疫化に応答したPD−L3またはVISTAの発現研究
〔00315〕 遺伝子導入マウスDO11.10を免疫するために、300μgのOVA(Sigma)をCFA(200μL)中で乳化し、マウスの側腹部に皮下注入した。流入領域および非流入領域鼠径リンパ節を、指示された時点で採取した。単一細胞懸濁液を調製し、フローサイトメトリーを用いてPD−L3またはVISTAおよび他の表面マーカーの発現について分析した。
【0291】
PD−L3またはVISTAの阻害活性
〔00316〕 CD4+およびCD8+T細胞抗原受容体遺伝子導入T細胞および抗原刺激を伴ってインビトロでPD−L1を過剰発現する抗原提示細胞を用いて、PD−L1の阻害活性を明らかにした(Carter,et al.(2002)Eur.J.Immunol.32:634−43)。同様に、全長PD−L3またはVISTAを発現する本明細書に開示のレンチベクターを、クラスII主要組織適合遺伝子複合体(MHC)およびクラスIMHCを発現する細胞株に形質導入した。空ベクター形質導入抗原提示細胞またはPD−L3もしくはVISTA形質導入抗原提示細胞によって示される抗原へのTEa Tgまたは2C遺伝子導入T細胞の応答を、確立された方法に従って決定する。
【0292】
〔00317〕 タンパク質発現。
リンパ球、単球、および樹枝状細胞サブセット、ならびに非造血組織における発現パターンを、本明細書に開示のウサギαPD−L3またはVISTA抗体と組み合わせて、標準のプロトコルを用いて、RT−PCRおよびウエスタンブロット分析によって決定する。
【0293】
〔00318〕 モノクローナル抗体産生。
PD−L3またはVISTAを、マウスB細胞株A20で過剰発現させ、組換え細胞株を使用して、アルメニアンハムスターを免疫した。5回の細胞免疫化後、ハムスターを、CFA中で乳化された精製PD−L3またはVISTA−Ig融合タンパク質で追加免疫した。4週間後、最終追加免疫を可溶性PD−L3またはVISTA−Igで提供した。その後、ハムスター脾細胞のSP2/0細胞との融合を、4日目に行った。ELISAによってPD−L3またはVISTA−Ig融合タンパク質を認識し、かつPD−L3またはVISTAを染色したが、マウスT細胞株EL4上で過剰発現されるPD−L1は染色しなかった16個の異なるクローンを特定した。それらのクローンのうちの11個をうまくサブクローニングし、細胞および組織上の内在性PD−L3またはVISTAを染色し、かつPD−L3またはVISTA機能をブロックするそれらの能力の評価のために調製した。
【0294】
増殖アッセイ:
〔00319〕 インビトロCD4T細胞増殖アッセイを、PD−L3またはVISTA
モノクローナル抗体活性をスクリーニングするよう設計した。このアッセイにおいて、T細胞を、T細胞受容体を架橋するマイクロプレートウェル中の固定化抗CD3で刺激した。ヒトIgGのFc部分に融合されるPD−L3またはVISTAの細胞外ドメインから成るPD−L3またはVISTA−Ig融合タンパク質を用いて、PD−L3またはVISTA モノクローナル抗体の活性を、2つの異なる形状で検出した。第1に、モノクローナル抗体がαCD3で共固定化されたとき、それは、添加された可溶性PD−L3またはVISTA−Ig融合タンパク質の存在下でのみ、T細胞増殖を強力に阻害した。この活性は、ウェル中の固定化モノクローナル抗体に結合するPD−L3またはVISTA−Igの能力に依存した。このアッセイ形態を用いて、高い、中程度の、または低い抑制活性を有したクローンを特定した。第2に、モノクローナル抗体を可溶性試薬としてアッセイに添加したとき、それは、固定化PD−L3またはVISTA−Ig融合タンパク質と共同作用することによって、T細胞増殖に強力な抑制活性を発揮した。このアッセイ形態において、種々の抑制活性を有するクローンを同定した。
【0295】
実施例1:PD−L3またはVISTAのクローニングおよび配列分析
〔00320〕 PD−L3またはVISTAおよびTreg−sTNFを、休止Treg、αCD3で活性化したTreg、およびαCD3/αGITRで活性化したTregの包括的な転写プロファイリングによって特定した。Treg上でのGITRの誘発がそれらの接触依存性抑制活性を消滅させることを示しているため、αGITRをこの分析のために選択した(Shimizu,et al.(2002)上記参照)。PD−L3またはVISTAおよびTreg−sTNFを、それらの特有の発現パターン(表1)に基づいて、AFFIMETRIX(登録商標)DNAアレイ上で特定した。PD−L3またはVISTAは、αCD3活性化Tregにおける発現の増加およびαGITRの存在下での発現の減少を呈し、Treg−sTNFは、発現におけるαCD3/αGITR依存的増加を呈した。
【0296】
〔00321〕 精製CD4+CD25+T細胞を、培養物中で一晩、なし、αCD3、またはαCD3/αGITRで刺激し、RNAをリアルタイムPCR分析のために単離した。列記した発現は、アクチンに対する相対量である。
【0297】
【表1】
【0298】
〔00322〕 活性化対休止CD25+CD4+nTregのアフィメトリクス分析は、未知の機能を有するが、Igスーパーファミリーに対する配列相同性を有する遺伝子産物(RIKEN cDNA 4632428N05、または4632428N05Rik)の発現を明らかにした。
【0299】
〔00323〕 より具体的には、930bp遺伝子産物を、予測した寸法および配列と一致したCD4+T細胞cDNAライブラリからクローニングした。コンピュータ上の配列分析および構造分析は、成熟時に、159個のアミノ酸の細胞外ドメイン、22個のアミノ酸の膜貫通ドメイン、および95個のアミノ酸の細胞質テールを有する、309個のアミノ酸の膜貫通タンパク質を予測する(
図1A)。アミノ酸配列アラインメントは、PD−L1、PD−L2、B7−H3、およびB7−H4等のB7ファミリーリガンドに相同であり、かつB7ファミリー受容体(すなわち、PD−1、CTLA−4、CD28、BTLA、ICOS)にも相同である細胞外免疫グロブリン(Ig)−V様のドメインを明らかにする(
図1B−C)。B7ファミリーリガンドと受容体との間のIg−Vドメインの配列同一性は、概してあまり高くないが(40%未満)、4632428N05RikのIg−Vドメインは、B7ファミリーリガンドPD−L1およびPD−L2との最も高い相同性を有する。配列アラインメントは、B7ファミリーリガンドの特徴を示す、鎖内ジスルフィド結合形成に重要ないくつかの高度に保存されたシステイン(
図1B)も明らかにする(Sica et al.,(2003)Immunity 18,849−861)。
【0300】
〔00324〕 4632428N05Rikの細胞外ドメインは、Ig−Vドメインのみを含有し、Ig−Cドメインを欠失する(
図1B〜C)。この特有の特性は、B7ファミリー受容体の特徴を示し、4632428N05RikをIg−VおよびIg−Cドメインの両方を含有する全ての他のB7ファミリーリガンドから区別する(Freema
n、G.J.(2008)Proc Natl Acad Sci USA 105,10275−10276、Lazar−Molnar et al.,(2008)Proc Natl Acad Sci USA 105,10483−10488、Lin et al.,(2008),Proc Natl Acad Sci USA 105,3011−3016、Schwartz et al.,(2001),Nature
410,604−608、Stamper et al.,(2001),Nature 410,608−61)。一貫して、PhyMLアルゴリズム(系統発生最大尤度)を用いる系統発生分析は、4632428N05Rikを、B7ファミリーリガンドよりもB7ファミリー受容体、具体的には、PD−1に近い進化距離で配置した(
図2)(Guindon,S.and Gascuel,O.(2003)A simple,fast,and accurate algorithm to estimate large phylogenies by maximum likelihood.Syst Biol 52,696−704)。しかしながら、PD−L3またはVISTAの細胞質テールは、B7ファミリー受容体のシグネチャードメインである任意のシグナル伝達ドメイン(例えば、ITIM、ITAM、またはITSM)を含有しない(Sharpe,A.H.and Freeman,G.J.(2002)B7−CD28 superfamily.Nat Rev Immunol 2,116−126)。したがって、阻害性受容体PD−1とのその密接な進化的関係にもかかわらず、4632428N05Rikが、B7リガンドファミリーの新規の成員を表すと仮定される。これらの構造および系統発生学的特性に基づいて、この分子を、リガンドとして表されるPD−1(PD−L3またはVISTA)と名付けた。PD−L3またはVISTAも、77%の配列同一性を共有するマウスオルソログとヒトオルソログとの間で高度に保存される(
図1D)。
【0301】
〔00325〕 マウスPD−L3またはVISTAをコードする核酸配列は、本明細書において配列番号1として記述され、マウスPD−L3またはVISTAタンパク質配列は、配列番号2として記述される。
【0302】
〔00326〕 PD−L3またはVISTAのヒト相同体は、染色体10(72.9Mb)上に配置され、6個のエクソンから成り、それによって、311残基タンパク質をコードする4689個の塩基長の転写物を生成する。ヒト相同体mRNAコード配列は、GENBANK受入番号NM_022153において提供され、タンパク質配列は、NP_071436と指定される。ヒトPD−L3またはVISTAをコードする核酸配列は、本明細書において配列番号3と説明され、ヒトPD−L3またはVISTAタンパク質配列は、配列番号4と説明される。マウスおよびヒト遺伝子は、74%の相同性を共有し、タンパク質レベルにおいて68%同一である。相同体を、染色体20(27.7Mb、GENBANK受入番号BC098723)上で、ドブネズミ、ならびにトラフグおよびゼブラフィッシュにおいて同定した。特定の実施形態において、本発明のPD−L3またはVISTAタンパク質は、配列番号5に説明される共通のアミノ酸配列を共有する。
【0303】
実施例2:RT−PCR分析およびフローサイトメトリーによるPD−L3またはVISTAの発現研究
〔00327〕
図3の実験に示されるように、RT−PCR分析を用いて、マウス組織におけるPD−L3もしくはVISTAのmRNA発現パターンを決定した(
図3A)。PD−L3もしくはVISTAは、大部分が、造血組織(脾臓、胸腺、骨髄)または白血球の十分な浸潤を伴う組織(すなわち、肺)上で発現される。弱い発現が、非造血組織(すなわち、心臓、腎臓、脳、および卵巣)においても検出された。いくつかの造血細胞型の分析は、腹腔マクロファージ、脾臓CD11b+単球、CD11c+DC、CD4+T細胞、およびCD8+T細胞上でのPD−L3もしくはVISTAの発現を明らかにするが、B細胞上においてはより低い発現レベルである(
図3B)。この発現パターンは、大
部分は、GNF(Genomics Institute of Novartis Research Foundation)遺伝子アレイデータベース(Su et al.,(2002),Proc Natl Acad Sci USA 99,4465−4470)、ならびにNCBI GEO(遺伝子発現オムニバス)データベースとも一致している(
図4A〜D)。
【0304】
〔00328〕 タンパク質発現を研究するために、PD−L3またはVISTA特異的ハムスター8D8および6E7モノクローナル抗体を産生した。特異性を、PD−L3またはVISTA過剰発現マウスEL4T細胞上でのポジティブ染色法によって実証するが、PD−Ll過剰発現EL4細胞上ではネガティブ染色法で実証する(
図5)。
【0305】
〔00329〕 PD−L3またはVISTAに対するポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方を産生した。ウサギ抗PD−UまたはVISTA抗体を用いることによって、PD−L3またはVISTAタンパク質は、リンパ器官に局在化され、脳組織において顕著に見出された。特定されたモノクローナル抗体のうち、PD−L3またはVISTAクローン8D8の特異性をさらに評価した。この分析において、クローン8D8を、CTLA−4、PD−1、PD−L1、PD−L2、B7−1、B7−2、PD−L3またはVISTA、およびh1gを含むPD−L様のIg融合タンパク質分子のパネルに対する結合について試験した。この分析の結果は、8D8 αPDL−3がPD−L3またはVISTAに高度に特異的であったことを示した。
【0306】
〔00330〕 具体的には、抗PD−L3またはVISTA モノクローナル抗体クローン8D8を用いて、PD−L3またはVISTA発現を、フローサイトメトリーによって造血細胞上で分析した。Foxp3GFPノックイン受容体マウスを使用して、CD4+nTreg(34)を区別した。末梢リンパ器官(脾臓およびリンパ節)において、全てのCD4+T細胞サブセット(全てのCD4+T細胞、またはFoxp3未処理T細胞およびFoxp3+nTreg細胞、ならびに記憶CD4+T細胞を参照のこと)上で著しい発現が見られる一方で、CD8+T細胞は、著しく少ない量の表面PD−L3またはVISTAを発現する(
図3C)。胸腺において、PD−L3またはVISTA発現は、CD4+CD8+二重陽性胸腺細胞上では陰性であり、CD4一重陽性細胞上では低く、CD8一重陽性細胞上では検出可能である。次に、高PD−L3またはVISTA発現とCD11bマーカーとの強力な相関関係を、F4/80マクロファージおよび骨髄性CD11c+DCの両方を含む脾細胞および腹腔細胞の両方において見ることができる(
図3D〜E)。その一方で、B細胞およびNK細胞は、PD−L3またはVISTA発現に対して大抵陰性である。わずかな割合のGr−1+顆粒球は、PD−L3またはVISTAも発現する(
図3F)。
【0307】
〔00331〕 差次的発現パターンは、異なるリンパ器官由来の細胞の同一の系列上に示される(
図3G)。CD4+T細胞およびCD11b中間単球について、発現レベルは、腸間膜リンパ節>末梢リンパ節および脾臓>腹膜腔および血液のパターンに従う。このパターンは、CD11b高細胞ではあまり顕著ではない。このデータは、ある特定の細胞型上でのPD−L3またはVISTA発現を、細胞成熟および/もしくは組織微環境によって制御することができることを示唆する。
【0308】
〔00332〕 新鮮に単離された細胞に加えて、PD−L3またはVISTA発現を、活性化を伴うインビトロ培養時および活性化を伴わないインビトロ培養時に、脾臓CD4+T細胞、CD11b高単球、およびCD11c+DC上で分析した(
図6)。PD−L3またはVISTAおよび他のB7ファミリーリガンド(例えば、PD−L1、PD−L2、B7−H3およびB7−H4)の発現について分析する前に、脾臓細胞を、培地、または抗CD3(T細胞を活性化するため)、またはIFN□およびLPS(単球および
DCを活性化するため)のいずれかと24時間培養した。この比較は、これらの分子間の特徴的な発現パターンを明らかにした。PD−L3またはVISTA発現は、活性化状態にかかわらず、インビトロ培養時に全ての細胞型上で喪失される。対照的に、PD−L1発現は、刺激時にCD4+T細胞上で、または培地単独での培養時にCD11b高単球およびCD11c+DC上で上方制御され、刺激に直面してさらに強化される。PD−L2、B7−H3、およびB7−H4の発現は、使用した培養条件下では顕著ではない。インビトロでのPD−L3またはVISTA発現の喪失は、他のB7ファミリーリガンドと比較すると特有であるが、組織微環境を模倣しそこなう最適ではない培養条件を反映し得る。
【0309】
〔00333〕 PD−L3またはVISTA発現をインビボで制御する方法に対処するために、CD4TCR遺伝子導入マウスDO11.10を、完全フロイントアジュバント(CFA)中で乳化された同族抗原トリオボアルブミン(OVA)で免疫した。免疫化後24時間時点で、流入領域リンパ節由来の細胞を、PD−L3またはVISTA発現について分析した(
図7A)。アジュバント単独ではなく、抗原(CFA/OVA)での免疫化は、F4/80+マクロファージおよびCD11c+DCの混合集団を含有したCD11b+PD−L3またはV1STA+骨髄性細胞集団を大幅に増加させた。PD−L1およびPD−L2とのさらなる比較は、かかる炎症性免疫応答中に、PD−L1が最も高い構成的発現レベルを有するが、PD−L3またはVISTAが最も高度に上方制御されることを明らかにする(
図7B)。全体として、これらのデータは、PD−L3またはVISTAの骨髄性APC上での発現が、免疫応答を制御し、かつT細胞免疫を調整するその役割に寄与し得る免疫系によって強固に制御されることを強く示唆する。
【0310】
〔00334〕 そのAPC上で増加した発現とは対照的に、PD−L3またはVISTA発現は、免疫化時のより遅れた時点で(すなわち、24時間時点ではなく、48時間時点で)活性化DO11.10CD4+T細胞上で減少する(
図8)。この結果は、能動的免疫応答中に、CD4T細胞上でのPD−L3またはVISTAインビボ発現を、その活性化状態およびサイトカイン微環境によって制御することができることを示唆する。
【0311】
実施例3:PD−L3またはVISTシグナル伝達のCD4+およびCD8+T細胞応答への機能的影響
〔00335〕 PD−L3またはVISTA−Ig融合タンパク質を産生して、CD4+T細胞応答におけるPD−L3またはVISTAの制御的役割を試験した。PD−L3またはVISTA−Ig融合タンパク質は、ヒトIgG1 Fc領域に融合されるPD−L3またはVISTAの細胞外ドメインを含有する。マイクロプレート上での固定化の際に、PD−L3またはVISTA−Igは、停止した細胞分裂によって決定されるように、プレート結合された抗CD3刺激に応答して、バルク精製されたCD4+およびCD8+T細胞の増殖を抑制したが、対照Igは制御しなかった(
図9A〜B)。PD−L3またはVISTA Ig融合タンパク質は、ELISAによって決定されるように、抗CD3抗体のプラスチックウェルへの吸収に影響を与えず(データ示されず)、したがって、非特異的阻害効果の可能性を除外した。PD−1 KO CD4+T細胞も抑制され(
図9C)、PD−1が、PD−L3またはVISTAの受容体ではないことを示す。PD−L1−IgおよびPD−L3またはVISTA−Igの阻害効果も直接比較した(
図10)。滴定量のIg融合タンパク質が、□CD3とともにマイクロプレートに吸収されて、CD4+T細胞を刺激するとき、PD−L3またはVISTA−Igは、PD−L1−Ig融合タンパク質に類似した阻害性有効性を示した。
【0312】
〔00336〕 バルク精製されたCD4+T細胞が種々のサブセットを含有するため、分類されたナイーブ(CD25−CD44低CD62L高)および記憶(CD25−CD44高CD62L低)CD4+T細胞サブセットへのPD−L3またはVISTA−I
gの影響を評価した(
図11)。記憶細胞上での有効性ははるかに低いが、PD−L3またはVISTAが、両方のサブセットの増殖を抑制することができることが示される。
【0313】
〔00337〕 PD−L3またはVISTA媒介性抑制の機構をさらに理解するために、初期のTCR活性化マーカーおよびアポトーシスの発現を、T細胞活性化後にPD−L3またはVISTA−Igの存在下または不在下で測定した。細胞増殖への負の影響と一致して、早期の活性化マーカーCD69、CD44、およびCD62Lの発現における包括的な抑制が存在する(補足
図12A)。その一方で、PD−L3またはVISTA−Ig融合タンパク質は、アポトーシスを誘導しなかった。逆に、TCR活性化の早期(24時間)および後期(48時間)の両方で、対照−IgよりもPD−L3もしくはVISTAまたはVISTA−Igの存在下で、より少ないアポトーシス(アネキシンV+7AAD細胞の割合によって決定される)が見られた(
図12B)。例えば、24時間時点で、全体の「非ゲート化」集団において、約27%の細胞が、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA−Igの存在下でアポトーシスであったが、約39%の対照細胞が、アポトーシスであった。生細胞R1ゲート内の細胞を試験する際、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA−Igで処理したときに、約72.6%の対照細胞がアポトーシスになった一方で、43.5%の細胞のみがアポトーシスになったという理由から、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA−Igが、活性化誘導細胞死(ACID)を強力に阻害したことは明らかである。類似の結果が48時間時点で見られた。したがって、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAは、早期のTCR活性化を抑制し、かつ細胞分裂を停止させて、アポトーシスに最小限に直接影響しか与えずに、CD4+T細胞応答を負に制御するようである。この抑制機構は、B7−H4の抑制機構に類似している(Sica,G.L.、Choi,I.H.、Zhu,G、Tamada,K.、Wang,S.D.、Tamura,H.、Chapoval,A.I.、Flies,D.B.、Bajorath,J.、およびChen,L.(2003)B7−H4,a molecule of the B7 family,negatively regulates T cell immunity.Immunity 18,849−861)。
【0314】
〔00338〕 2ステップアッセイを開発して、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA−Igが予備活性化CD4T細胞を抑制することができるか、かつその抑制効果がどのくらい持続的であるかを決定した。PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA−Ig融合タンパク質の抑制効果が、活性化後24時間時点でのその除去後に持続することが示される(
図9D)。加えて、未処理および予備活性化CD4+T細胞の両方ともに、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA−Igによって抑制することができた(
図9Di、9Diii、および9Div)。
【0315】
〔00339〕 次に、CD4+T細胞サイトカイン産生へのPD−L3もしくはVISTAまたはVISTA−Igの影響を分析した。PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA−Igは、Th1サイトカインIL−2およびバルク精製されたCD4+T細胞培養物由来のIFNアルファの産生を抑制した(
図13A〜B)。別個のナイーブ(CD25〜CD44低CD62L高)および記憶(CD25〜CD44高CD62L低)CD4+T細胞集団へのPD−L3もしくはVISTAまたはVISTAの影響をさらに試験した。記憶CD4+T細胞が、CD4+細胞コンパートメント内でのサイトカイン産生のための主な供給源であり、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAがこの産生を抑制することができることが示される(
図13C〜D)。CD8+T細胞由来のIFNアルファ産生へのPD−L3もしくはVISTAまたはVISTAの類似した阻害効果も示された(
図13E)。CD4+およびCD8+T細胞によるサイトカイン産生へのPD−L3もしくはVISTAまたはVISTAのこの阻害効果は、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAが免疫応答を下方制御する阻害リガンドであるという仮定と一致
する。
【0316】
〔00340〕 次に、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAの阻害効果を克服することができる因子を決定するように研究を設計した。PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAがIL−2産生を抑制し、かつIL−2がT細胞生存および増殖に不可欠であることを前提に、我々は、IL−2がPD−L3もしくはVISTAまたはVISTAの阻害活性を回避し得ると仮定する。
図14Aに示されるように、外因性IL−2は、細胞増殖へのPD−L3もしくはVISTAまたはVISTA−Igの抑制効果を部分的に逆転したが、IL−15、IL−7、もしくはIL−23は、逆転しなかった。高レベルのIL−2による不完全な救助は、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTシグナル伝達が、単にIL−2産生よりも広範のT細胞活性化経路を標的化することを示す。その一方で、抗CD28アゴニスト抗体によって提供される強力な共刺激シグナルが、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA−Ig媒介抑制を完全に逆転した(
図14B)のに対して、中程度のレベルの共刺激は、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTシグナル伝達によって依然として抑制される(
図14C)。この結果は、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA媒介性免疫抑制が、炎症程度の低い状態下でより効果的であるが、強力な正の共刺激シグナルによって必然的に圧倒されることを示唆する。この点において、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAは、この特性をPD−L1およびB7−H4等の他の抑制性B7ファミリーリガンドと共有する(Sica et al.,(2003),Immunity 18,849−861、Carter et al.,(2002)、Eur J Immunol 32,634−643)。
【0317】
〔00341〕 PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA−Ig融合タンパク質に加えて、APC上で発現されるPD−L3もしくはVISTAまたはVISTAが、APCとT細胞との間の同族相互作用中に、抗原特異的T細胞活性化を抑制することができることを確認することが必要である。この目的のために、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA−RFPもしくはRFP制御タンパク質を、MHCIIおよびB7−2分子を安定的に発現する人工抗原提示細胞株(CHO−APC)内でレトロウイルス形質導入を介して過剰発現させた(Latchman et al.,(2001),Nat Immunol 2,261−268)。CHO内でPD−L3もしくはVISTAまたはVISTAを発現させる際の1つの課題は、恐らくPD−L3もしくはVISTAまたはVISTA表面局在化への支持を欠如する未知の環境のため、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAの大部分が、細胞表面を局在化しそこなったことである(データ示されず)。PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAの細胞質テール上に存在する、制御のモードを示唆する明瞭なモチーフが存在しないが、我々は、テールがその細胞内局在化に貢献し得ることを推測する。したがって、テールのないPD−L3もしくはVISTAまたはVISTA変異体を設計し、それがCHO細胞表面をうまく局在化することを見出した(データ示されず)。
【0318】
〔00342〕 T細胞応答を刺激するために、CHO−PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAもしくはCHO−RFP細胞を、抗原性OVAペプチドの存在下で、DO11.10 CD4+T細胞とともにインキュベートした。
図15A〜Cに示されるように、CHO−PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAは、CHO−RFP細胞の増殖よりも少ないDO11.10細胞の増殖を誘導した。この抑制効果は、より低いペプチド濃度においてより顕著であり、より強力な刺激シグナルが、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAの抑制効果を克服するという考えと一致する。
【0319】
〔00343〕 加えて、天然APCへの全長PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAの阻害効果を確認した。インビトロで培養された骨髄由来樹枝状細胞(BMDC
)は、高レベルのPD−L3もしくはVISTAまたはVISTAを発現しない(
図16)。PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA−RFPもしくはRFPを、10日間の培養期間中に、レトロウイルス形質導入によってBMDCで発現した。形質導入された細胞を、RFP発現に基づいて均一集団に分類した。形質導入されたDC上でのPD−L3もしくはVISTAまたはVISTAの発現レベルを、抗PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA モノクローナル抗体で染色することによって推定し、新鮮に単離された腹腔マクロファージ上でのレベルに類似していることが見出され、したがって、生理学的発現範囲内である(
図16)。次いで、分類されたBMDCを使用して、OVAペプチドの存在下で、OVA特異的遺伝子導入CD4+T細胞(OTII)を刺激した(
図15D)。その中で、BMDC上でのPD−L3もしくはVISTAまたはVISTAの発現が、同族CD4+T細胞増殖性応答を抑制したことが示される。この結果は、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA−Ig融合タンパク質およびCHO−APC細胞を用いた先のデータと一致しており、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAがT細胞媒介性免疫応答を抑制することを示唆する。
【0320】
実施例4:多発性硬化症動物モデル(EAE)における抗PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA抗体の評価
〔00344〕□PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAモノクローナル抗体が、インビボでT細胞応答を抑制するようであったため、□PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAを試験して、それがT細胞媒介性自己免疫疾患を阻害することができるかを評価した。実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)モデルを用いて、炎症性疾患への□PDL−L3モノクローナル抗体の機能的影響を決定した。EAEは、広く使用されているヒト自己免疫疾患多発性硬化症のマウスモデルである。EAEを、アジュバント中でのミエリン抗原での免疫化またはミエリン特異的T細胞の養子免疫伝達のいずれかによって誘導することができ、種々のエフェクターT細胞、B細胞、およびマクロファージの炎症性浸潤物、ならびに中枢神経系の脱髄をもたらす。
【0321】
〔00345〕 外来抗原として大量のモノクローナル抗体の流入によるアナフィラキシーの誘導を回避するために、αPDL−L3モノクローナル抗体を、受動的EAEモデルにおいて試験した。この養子免疫伝達EAEモデルにおいて、ドナーSJLマウスを、CFAおよびPLPペプチドで免疫した。10日目に、全てのリンパ球を流入領域リンパ節から単離し、PLPペプチド、IL−23(20ng/mL)、および抗IFNg(10μg/mL)で4日間インビトロ培養した。その後、拡張したCD4T細胞を精製し、ナイーブレシピエントマウスに養子導入した。この分析は、αPDL−L3モノクローナル抗体が疾患発症を遅延させ、かつ疾患の重症度を低下させ、それによって、疾患の進行曲線を著しく変化させたことを示す(
図17)。加えて、それは、かなりの割合のマウスにおいて重症度を低下させ、生存率を約22%から75%を超えて大幅に増加させた。これは、EAEにおけるαPDL−L3モノクローナル抗体の活性がインビトロデータと一致していることを実証しており、種々の炎症性疾患における新規の免疫制御試薬としてのこの試薬の使用を実証する。
【0322】
〔00346〕 実施例5:CNSにおけるVISTAの発現
〔00347〕 CNSにおけるVISTAの発現ももたらされた。これらのアッセイは、疾患を有するマウスにおいて、VISTA発現がCD11b+細胞上で著しく低下し(76%から33%)(
図23)、VISTAの喪失が強化された炎症に対して許容的であり得るという仮定に一致することを明らかにした。これは興味深く、極度に高いレベルのVISTAを発現する腫瘍において、本明細書の炎症性骨髄性細胞を、MDSCと対比するときに機能的に重要である可能性が高い。EAEマウスが、T細胞活性化を強力に抑制し、疾患32を和らげ得る、増加した数の骨髄由来の抑制因子細胞(CD11b+Ly−6C高MDSC)を脾臓中に有することが報告されている。我々のデータは、VISTA
がEAEにおいて骨髄性媒介性抑制の役割を果たし得るという仮定を強く支持する。
【0323】
〔00348〕 実施例6:EAEにおけるT細胞の運命および機能へのVISTAの影響
〔00349〕 我々は、EAEにおけるT細胞の運命および機能へのVISTAの影響をアッセイする実験も行った。我々は、VISTAが、病原性脳炎誘発性T細胞の発生、クローン性T細胞増殖、T細胞極性、寿命、およびTeffからTregへの変換を変化させるかを評価することを望んだ。我々は、EAEにおけるT細胞の運命へのVISTA遮断の影響を研究した。より高い疾患スコアに一致して、疾患経過終了時のCNSの分析は、13F3(□VISTA)処理群においてより著しいIL17A産生CD4+T細胞浸潤(0.66から11%)を確認した(
図24)。
【0324】
〔00350〕 実施例7:PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA遺伝子導入およびノックアウトマウス
〔00351〕 胎児のレンチウイルス感染を用いて、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAを普遍的に発現する4匹の遺伝子導入マウスを産生した。これらのマウスは、ヒト伸長因子1プロモーターの制御下で、全長PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAを発現する。これらのマウスを、レンチウイルスベクターpWPTを用いて生成した。他のPD−L1ファミリーの成員(Appay,et al.(2002)J.Immunol.168:5954−8)と同様に、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAが、αCD3T細胞増殖をインビトロで共刺激するように機能しながら、負の制御因子としてインビボで機能することが予期される。この点において、これらのマウスが自己免疫を自発的に発現することが予想され、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA遺伝子導入マウス(すなわち、体液性免疫応答、T細胞プライミング等)におけるインビボ免疫応答を評価して、全身性自己免疫疾患の発現を評価する。
【0325】
〔00352〕 ノックアウトマウスでは、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAは、相同組換えによって不活性化される。全長PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA配列を含有するBACクローンを、INVITROGE(商標)(Carlsbad,CA)から購入した。PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAを標的とするベクターを、ネオマイシン遺伝子の上流にあるPD−L3もしくはVISTAまたはVISTA遺伝子の第2のエクソンの5’末端に配置される1.6kbフラグメント、およびネオマイシン遺伝子の下流にあるPD−L3もしくはVISTAまたはVIST遺伝子の第3のエクソンの3’末端に配置される5kbフラグメントを挿入することによって生成した。B6由来の胚幹(ES)細胞を、ベクターを標的化するPD−L3もしくはVISTAまたはVISTAで電気穿孔し、組換えクローンを選択する。次に、選択されたクローンをC57BL/6胚盤胞に注入し、結果として生じるキメラ雄子孫をFLP有害マウスと交配させて、ネオマイシンカセットを除去する。子孫における標的化対立遺伝子の伝送を、ゲノムDNA由来のPCRによって決定する。第2および第3のエクソンは、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTAドメインを含有し、したがって、結果として生じるマウスは、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA分子の不活性化形態のみを有する。
【0326】
〔00353〕 抗原へのT細胞応答の評価、体液性免疫応答、顕性自己免疫(例えば、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患)、および誘発性自己免疫疾患(実験的自己免疫性脳脊髄炎)に対する増加した感受性を含む、PD−L3もしくはVISTAまたはVISTA欠乏マウスの全体的な免疫能力を、他のPD−L−/−マウスを用いて決定する(Chen(2004)上記参照)。
【0327】
〔00354〕 実施例8:コラーゲン誘導関節炎動物モデルにおいて試験されたPD
−L3もしくはVISTAまたはVISTA特異的抗体
〔00355〕
図18の実験に示されるように、雄DBA/1Jマウスを、それらのテールの根元で、CFA(ヒト型結核菌3.5mg/mL)中の100μgニワトリII型コラーゲン(C−II)を含有する100μgのエマルジョンで免疫し、免疫後21日目にIPを100μgの水性C−IIで追加免疫した。それぞれの治療群(n=6)のマウスは、示されるように、処置されていないマウス(NT−黒色の円)、300μgのハムスターIgGを注入したマウス(Ham Ig−黒色の四角形)、または300μgのモノクローナル抗体「7c9」を注入したマウス(赤色の三角形)もしくは「13F3」を注入したマウス(緑色の三角形)のいずれかであった。注入物を2日間毎に与えた。それぞれのマウスのそれぞれの手の関節の腫脹を、指示された日に0〜4のスケールでスコア化した。示される関節炎スコアは、それぞれの治療群におけるマウスの全ての手の合計スコアを群内のマウスの数で割ったスコアである。
【0328】
〔00356〕 実施例9:特定のVISTAモノクローナル抗体によるVISTA遮断は、インビトロでのT細胞応答を強化する
〔00357〕 VISTA媒介性抑制を中和するVISTA特異的モノクローナル抗体(13F3)を特定した(
図19)。CD11
高骨髄性APCを未処理のマウスから精製し、13F3の存在下または不在下でOT−II遺伝子導入CD4
+T細胞を刺激した。その中和作用に一致して、13F3は、CD11
高骨髄性細胞によって刺激されたT細胞増殖を強化し、高レベルのVISTAを発現することを示した。
【0329】
〔00358〕 実施例10:抗VISTAは、抗腫瘍免疫を強化する
〔00359〕 T細胞活性化を強化する抗VISTAの能力のため、我々は、抗VISTAが免疫原性腫瘍への保護的免疫応答を強化するかを評価した。我々が豊富な経験を有するモデルは、膀胱癌腫、MB49である。MB49は、男性抗原を発現し、したがって、雌マウスにおいて軽度に免疫原性であるが、免疫介入がなければ、増殖し、雌マウスを死滅させる。□VISTA治療の有効性を試験するために、雌マウスに、MB49腫瘍細胞を皮下に投与(皮下投与)し、□VISTAで処置した。その数日後、マウスを安楽死させるまで腫瘍の寸法を測定した。
図20において容易に見ることができるように、抗VISTA治療は、腫瘍成長を大いに低下させる。これは、細胞媒介性免疫(CMI)応答を強化する抗VISTAの能力に起因すると考えられる。
【0330】
〔00360〕 実施例11:4匹のマウス腫瘍モデルにおける腫瘍退縮への□VISTAの効果
〔00361〕 免疫原性膀胱癌腫瘍MB49における実験は、モノクローナル抗体 13F3を用いたVISTAの中和が、宿主を腫瘍成長から保護することを示している。データは、VISTAが、MDSCを非常に高度に発現するため、腫瘍の微環境においてかなりの負の免疫制御の役割を果たすことを示す。免疫原性(MB49)および高度に非免疫原性(B16)の腫瘍モデルの成長への抗マウスVISTAの効果を試験する研究はさらに、αVISTA治療の有効性を確認し、作用機序を明らかにし、最適な用量およびタイミングを選択するための基準を提供する。それぞれの腫瘍モデルについての論理的根拠が以下に詳述される。
【0331】
【表2】
【0332】
〔00362〕 雌マウスにおけるMB49:我々は、このマウスモデルにおける有効性をすでに示した。このモデルのMDSCは、上昇したレベルのVISTAも発現する(図示されず)。このモデルにおいて、H−Y抗原の存在のため、MB49腫瘍は、適度に免疫原性である。抗VISTA治療が効果的であることが判明しているため、我々は、このモデルを「陽性」対照として使用して、抗VISTA治療の投与(1〜100μgのマウス;およびタイミング(腫瘍接種の日、または腫瘍の4、7、10日後;治療的介入)を決定する。
【0333】
〔00363〕 雄マウスにおけるMB49:雌マウスに効果的な用量およびタイミングを用いて、(腫瘍の免疫原性がより低い)雄マウスにおける抗VISTA治療の有効性を決定する。
【0334】
〔00364〕 B16黒色腫:抗CTLA−4モノクローナル抗体がこのモデルにおいて非常に効果的であることが示され、かつマウスモデルがヒトにおける成功を予測するのに有益な非免疫原性腫瘍を表す。投与計画およびタイミングは、MB49モデルにおいて効果的であると示された投与計画およびタイミングに類似している。
【0335】
〔00365〕 ID8卵巣癌:VISTA発現がMDSC上では非常に高度であることが示されたのはこのモデルにおいてである。ID8腫瘍を有するマウスを、腫瘍接種時、または接種後5日目、15日目、25日目にαVISTAで治療する。
【0336】
〔00366〕 方法。
B6 WTマウスを使用して、上記の全てのマウス腫瘍モデルの寛解に最適な抗VISTA治療の用量およびタイミングを決定する。使用するモデルは、上の表に列記されている。
【0337】
〔00367〕 この用量およびタイミングアッセイの読み出しは、腫瘍成長動態である。MB49およびB16の研究について、全ての腫瘍研究を、皮内(i.d.)接種を介して行い、したがって腫瘍の大きさを容易に測定することができる。腫瘍の測定結果を、カリパスを用いて2〜3日毎に収集する。これらのモデルのそれぞれにおいて、抗VISTAまたは対照抗体の影響を、腫瘍成長を遅延させるか、または腫瘍退縮を促進する能力について試験する。ルシフェラーゼ形質導入ID8を用いてID8の成長を行い、IVIS Workstationを用いて全身造影を行う。加えて、宿主生存も決定する。
【0338】
〔00368〕 腫瘍成長についてのデータを、平均腫瘍容積±標準誤差として表し、群の間の差異を、両側ANOVAによって分析する。0.05未満の確率(p)値を、統計的に有意であると見なす。生存データを、群の間の生存の差異の有意性を検証するために使用するウィルコクソン順位検定およびlog順位検定を伴うカプラン・マイヤー法を
用いて分析する。B16モデルにおいて、白斑を発現するマウスの頻度を決定する。
【0339】
〔00369〕 これらの方法を用いて、非免疫原性腫瘍モデルのうちのいくつかのうちの対照抗体で治療されるマウスと比較して、抗VISTA モノクローナル抗体で治療されるマウスにおける遅延した腫瘍成長および/または腫瘍退縮を得る。抗VISTA治療が免疫原性腫瘍モデルにおける腫瘍成長を遅延させることはすでに示されている。これらの腫瘍モデルのそれぞれが、それら独自の特定の成長動態、および腫瘍成長を与え、かつ免疫を抑制する予想されるVISTAへの依存を有するとして、マウスに、腫瘍接種時または腫瘍接種後のいずれかの時点でモノクローナル抗体を投与する。さらに、少なくとも3つの異なる濃度のumVISTAモノクローナル抗体を試験して、治療的有用性に最適な用量を決定する。
【0340】
〔00370〕
図21A〜Eに示されるように、VISTAモノクローナル抗体処置は、マウスを、A.MB49、B.MCA105、もしくはC.EG7腫瘍細胞を皮下投与、またはD.D8−ルシフェラーゼ腫瘍細胞を腹腔内投与のいずれかで接種し、+1日目から1日おきにVISTA モノクローナル抗体13F3で処置した(300μg)、これらの4つの全ての腫瘍モデルで腫瘍成長を低下させた。皮下腫瘍成長を監視した。ID8−ルシフェラーゼ腫瘍について、マウスを、30日目にXenogen IVISを用いて撮像した。E.腫瘍を有するマウスにおける骨髄性白血球上でのVISTA発現も決定した。流入領域リンパ節および腫瘍組織(腹水)を、VISTA発現について分析した。これらの所見は、VISTA上で発現されるMDSCが、保護抗腫瘍免疫の発達を妨害する主要な抑制分子であり、□VISTAがこの抑制活性を解除して、免疫介入を可能にし、かつ腫瘍成長を遅延させることを示す。これらの所見は、自己免疫疾患における骨髄性細胞上のVISTAが、炎症の程度を制御する際に極めて重要な機能を果たすという結論も支持する。
【0341】
〔00371〕 実施例12:自己免疫治療に有用なオリゴマーVISTAおよびVISTA融合タンパク質の合成
〔00372〕 インビトロでの可溶性VISTA−Igは抑制性ではなく、細胞への結合を容易に検出することもできない。対照的に、プラスチックに結合されるこの分子は、大いに抑制性である。加えて、インビボでVISTA−Igを用いた研究は、明白な活性を示さなかった(データ示されず)。これらの研究に関して、作成されたVISTA−Igは、FcR結合を妨げるCH2−CH3ドメインにおける変異を有し、したがって、インビボでは細胞親和性ではない。最近の研究は、四量体PD−L1が、単量体PD−L126よりも100倍高く(Kd6×10−8M)PD−1に結合し、細胞への結合が容易に検出可能であったことを示している。四量体PD−L1をインビボで試験しなかったが、インビトロで、天然PD−L1で機能的抑制をブロックすることが示された。類似した方法を用いて、VISTA経路を標的化し、かつインビトロおよびインビボで強力な免疫抑制活性を誘発するオリゴマーを作製する。
【0342】
〔00373〕 かかるオリゴマーを、VISTAまたはそのフラグメント、例えば、細胞外ドメインまたはその部分がオリゴマーの構成要素として使用される少なくとも50、75、100、125、150、175、もしくは200アミノ酸長の単量体細胞外ドメインを用いて構築する。これらの方法において、本発明者は、確立したMHC四量体技術を利用する。これらの方法において、二価から七価に及ぶ結合価を有する一連のVISTA複合体を生成するために、VISTA細胞外ドメイン構築物またはフラグメントを、(上で同定された)様々なオリゴマー化ドメインのN末端に結合させる。
【0343】
〔00374〕 これによって、二量体、三量体、四量体、五量体、および七量体会合体の安定した形成を指向する高親和性コイルドコイルドメインに基づいて、一連の非共有
オリゴマーを作成する。これらのオリゴマー構築物を、宿主細胞、例えば、大腸菌において発現させる。大腸菌における発現が達成されたとき、次いで、発現したオリゴマーを再び折り畳み、標準の研究室プロトコルを用いて封入体から精製する。このアプローチは、生物学的および構造的分析のために、MHC−ペプチド複合体および三量体GITRL66を含む上質の物質を日常的に産生している。次いで、単離オリゴマータンパク質を、SDS−PAGE、分析的ゲル濾過、分析的超遠心分離、および質量分析によって評価する。これらの品質管理手段は、インビトロおよびインビボ研究のための均質で十分に特徴づけられた物質の利用能を確実にする。それぞれの個々のVISTA複合体が、VISTA受容体に結合される細胞表面と生産的に相互作用するよう配置されるため、これらの構築物の並列構成は、結合価がオリゴマー状態に等しい分子をもたらす。上記の構築物は、オリゴマー状態の高度の安定性および均質性を有する(非共有コイルドコイルオリゴマー化ドメインは、95℃の融解温度を呈する七量体配列を除いて、典型的には、100℃を超える融解温度を呈する)。
【0344】
〔00375〕 加えて、細胞親和性または非細胞親和性のいずれかの二量体VISTA−Igを四量体化する。IgG1 FcとインフレームのVISTAのFc融合構築物(野生型IgG1および既存の非FcR結合IgG1の両方)を、酵素的ビオチン化のためにN末端BirA部位で修飾し、pIRES2−EGFPベクターにクローニングする。酵素的ビオチン化は、アビジン多量体化の際に、特定の単一残基修飾および配向を可能にする。このアプローチは、B7−1、PD−L1、PD−L2、およびTIM−3を含む多数のIg−融合タンパク質の生成のために使用されている。発現したタンパク質を、その後、インビトロで酵素的にビオチン化し、サイズ排除HPLCによって精製し、PE−アビジンを用いて四量体化する。結果として生じる細胞親和性または非細胞親和性の四量体をインビボで評価する。
【0345】
〔00376〕 これらの改変された多量体VISTAタンパク質は、自己免疫および他の状態を治療する際に有用であり、VISTA経路における介入および免疫抑制を治療的に正当化する。
【0346】
〔00377〕 実施例13:免疫抑制を誘導するためのVISTAアデノウイルスベクター
〔00378〕 組換えアデノ関連ウイルス(AAV)を用いた遺伝子導入は、遺伝子治療における大きな技術的発展をもたらしている。特に、PD−L1遺伝子、またはCTLA4−IgおよびCD40−IgのAAVを介した遺伝子送達は、ループスおよび心臓移植の自己免疫疾患モデルにおける治療的有効性を達成している。これらの方法を使用して、全長VISTAまたはオリゴマーVISTA細胞外ドメインのいずれかを送達し、それらの治療効果を、EAEモデルにおいて評価する。全長マウスVISTAまたはオリゴマーVISTA細胞外ドメインのいずれかを発現する組換えアデノウイルスベクターを、Adeno−XTM Expression System(Clontech)を用いて、製造者の指示に従って作成する。簡潔に述べると、VISTAを、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下で、E1およびE3を欠失したpAdDEST系発現ベクターにクローニングする。次いで、アデノウイルスを発現するVISTAおよび対照lacZを、細胞溶解物から精製する。VISTAの体系的過剰発現について、アデノウイルスを、免疫化を介する疾患誘導の前もしくは直後、または疾患発症後のいずれかの時点で、静脈内尾静脈注入(1×109プラーク形成単位[Pfu])によってマウスに投与する。対照マウスは、100μlのPBSを受ける。疾患の発症および変化を、異なる疾患進行パターンを呈し、かつヒトMS患者の臨床症状の2つのはっきりと異なる形態を表すSJLマウスおよびC57BL/6マウスの両方で監視する
〔00379〕 実施例14:改変されたタンパク質およびアデノウイルスベクターでの機能的研究
〔00380〕 マウスに、改変されたVISTAおよび/またはアデノウイルスベクターも投与する(1匹のマウスにつき5〜100μgのタンパク質を週に3回)。投与後、T細胞増殖、分化、ならびにEAE発現を決定する。
【0347】
〔00381〕 実施例15:VISTAの構造的研究およびVISTA機能分子決定因子の決定
〔00382〕 組織化されたシグナル伝達複合体の親和性、特異性、オリゴマー状態、ならびに形成および局在化は、免疫機能への重要な寄与因子である。受容体−リガンド細胞外ドメインの組織化が、非共有結合した細胞質シグナル伝達および足場分子の動員、組織化、および機能を直接制御するため、これらの特性の全てが、シグナル伝達および免疫制御に影響を与える。VISTAの高分解能結晶構造を、細菌、昆虫、および哺乳類発現系、ならびにハイスループット結晶化および構造決定アプローチを含む技術を用いて決定する。結晶学的に観察されたジスルフィド結合パターンを実証するために、我々の公開されたΤIΜ−3およびヒトDcR359の研究の支持に成功したアプローチを用いて、高分解能質量分析を活用する。これらの構造結果に基づいて、変化したオリゴマー特性を有する一連の変異体、ならびにVISTA IgVドメインの任意の摂動領域の近くの変異体を設計する。これらの変異体タンパク質は、VISTA機能へのさらなる直接的な機構的洞察を提供し、本明細書で特定される自己免疫、アレルギー性、および炎症性疾患等の免疫抑制が所望される治療薬において有用であるはずである。これらの変異体、特に、オリゴマーを、インビトロ系で試験し、疾患の進行、疾患の寛解、または動物を自己免疫もしくは炎症状態の発現から保護することへの免疫抑制効果を評価するために、動物自己免疫および炎症性疾患モデルにおいて評価する。
【0348】
〔00383〕 これらのオリゴマーVISTAタンパク質は、自己免疫における免疫介入の標的として、VISTA経路および機能を活性化する。この介入は、免疫を抑制し、自己免疫性抑制が所望される自己免疫疾患および他の状態への治療的有用性を発揮する。これは、EAEおよびコラーゲン誘導関節炎動物モデル等の異なる自己免疫および炎症性モデルに、オリゴマー化VISTAタンパク質を投与することによって達成される。加えて、上述のように、全長VISTAまたはVISTAオリゴマーを過剰発現するアデノウイルスベクターが、インビボで構築および試験される。これらの研究は、VISTAオリゴマーの免疫抑制効果を裏付ける。
【0349】
〔00384〕 実施例16:条件付きの過剰発現VISTA遺伝子導入マウス株(VISTA遺伝子導入マウス株:R26StopFL VISTA(VISTA))を用いた実験
〔00385〕 loxPに隣接したSTOPカセットに先導されるVISTAの全長cDNAを含有する標的構築物は、普遍的に発現されるROSA26遺伝子座に標的化されている。複数の正しく標的化されたR26StopFL/−VISTA子マウスが産まれ、繁殖させてCMV−Cre欠失株60にする。VISTA×CMV−creにおける予備データは、GFPおよび高まったVISTA発現を確認する。これらのマウスの免疫状態(抗原へのT細胞応答、抗体力価等)に関する研究は、抑制された表現型を確認する。VISTA株を、CD4−cre、CD11c−cre、およびLys−Creと異種交配させて、VISTA発現の系統位置が抑制に影響を与えるかを決定する。T細胞の表現型および機能は、VISTAの過剰発現がTregの生成をもたらすかも決定する。これらの研究において、OVA−免疫cre×VISTA株由来のTregを、WT宿主に養子導入して、抗原免疫化が、過剰発現されたVISTAの存在下で、抗原特異的Tregを誘導するかを確かめる。これは、VISTAがTreg分化に影響を与えることを検証するはずである。
【0350】
〔00386〕 加えて、研究をEAEモデルにおいて達成し、それによって、疾患発
現に対するVISTAタンパク質の異なる系列への影響(CD4−、CD11c−、Lys−creで異種交配することによる)を評価する。疾患を、VISTA変異体の系列限定過剰発現によって、またはCMV×VISTA変異体において抑制することができると想定して、疾患発現の時間的制御も、Cre−ERT2×VISTA□を使用している。タモキシフェンの投与を介して、疾患発症の前もしくは疾患発症時、または疾患のピーク時に、VISTAの過剰発現を誘導して、VISTAが、免疫の誘導および/またはエフェクター相に影響を与えることができるかを決定することができる。BMキメラマウスを用いて、VISTAの時間的に限定された過剰発現を、造血コンパートメントに限定することができる。時間窓の制御を理解するために、VISTAを過剰発現させ、VISTAを遺伝的にオンにし、その後、抗VISTA モノクローナル抗体の投与で血清学的にオフにする。これらの研究は、自己免疫疾患の発現および進行を制御するために、VISTAがいつ、どこで作用しなければならないかを決定する。
【0351】
〔00387〕 実施例17:抗VISTA抗体CD40/TLRアゴニストワクチンの効果
〔00388〕
図22に示されるように、ワクチン有効性への抗VISTA抗体の効果を分析する実験を行った。これらの結果は、抗VISTAが、CD40/TLRワクチンの治療的有効性を強化することを示す。C57BL/6マウスを、1X105転移性B16.F10黒色腫細胞に皮下曝露した。4日後に、マウスに、抗VISTA(200ugを週に3回)を伴い、または伴わずに、100μgの腫瘍関連抗原△V、100μgのαCD40 FGK45(CD40アゴニスト抗体)、および100μgのS−27609(TLR7アゴニスト)でワクチン投与した。腫瘍の成長をカリパス測定によって監視した。
【0352】
〔00389〕 本発明を説明したが、以下の特許請求の範囲が提供される。これらの特許請求の範囲は、本明細書に記載の全ての一般、および特定の特徴、ならびに言い回しとして、中に収まり得る範囲の全ての記述を網羅するよう意図されている。