(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6175180
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】フットカバー
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
A41B11/00 Z
A41B11/00 J
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-247140(P2016-247140)
(22)【出願日】2016年12月20日
【審査請求日】2017年3月3日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 麻美
(72)【発明者】
【氏名】川端 洋明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 陽子
【審査官】
田中 尋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−023772(JP,A)
【文献】
特開2004−011081(JP,A)
【文献】
特開2014−205935(JP,A)
【文献】
実開平06−083707(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0094892(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B11/00−11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の足の足裏面を載せる足底部と足の爪先側甲部ないし踵部を覆う被覆部とを備え、該被覆部の上端部に足を出し入れする履き口部が設けられたパンプス用のフットカバーであって、
爪先領域と、該爪先領域の後側に連続する屈曲領域と、該屈曲領域の後側に連続する後部領域とを有し、
前記爪先領域では、該爪先領域の足底部が水平方向に延びかつ該爪先領域の被覆部が足の末節骨から基節骨までの爪先側の甲部ないし両側部を覆うように形成され、
前記屈曲領域では、該屈曲領域の足底部が足の基節骨と中足骨との間の中足趾節関節で屈曲したときの湾曲形状に沿うように形成されかつ該屈曲領域の被覆部が中足趾節関節を含む範囲の両側部を覆うように形成され、
前記後部領域では、該後部領域の足底部が前記屈曲領域から後方に向かって上方に向かうように傾斜しかつ該後部領域の被覆部が足の中足骨から踵骨までの両側部ないし後側部を覆うように形成されている、フットカバー。
【請求項2】
請求項1に記載のフットカバーにおいて、
前記被覆部は、前記爪先領域から前記屈曲領域を経て前記後部領域の前部に亘る部分に位置する前側被覆部と、該後部領域の踵側に位置する後側被覆部と、を有し、
前記前側および後側被覆部の各々は、前記足底部との接合前の展開状態で略U字形の帯状に形成されていて、外周縁が該足底部の外周縁に接合されるように構成されている、フットカバー。
【請求項3】
請求項2に記載のフットカバーにおいて、
前記展開状態の前側被覆部は、前記爪先領域で外甲側および内甲側の各外周縁が足の爪先側から中足趾節関節に向かって互いに離れるように略弧状に拡がり、前記屈曲領域で該外周縁間の足幅方向の幅が最大となり、該屈曲領域から前記後部領域の前部に亘って該各外周縁が該最大の幅に対応する位置から後方に向かって足幅方向中央に向かうように傾斜している、フットカバー。
【請求項4】
請求項2に記載のフットカバーにおいて、
前記展開状態の前側被覆部は、前記爪先領域で外甲側および内甲側の各外周縁が足の爪先側から中足趾節関節に向かって互いに離れるように略弧状に拡がり、前記屈曲領域で該外周縁間の足幅方向の幅が最大となり、該屈曲領域から前記後部領域の前部に亘って該各外周縁が該最大の幅に対応する位置から後方に向かって足幅方向中央位置を通る前後方向と平行な方向に延びている、フットカバー。
【請求項5】
請求項1または2に記載のフットカバーにおいて、
前記爪先領域の前記足底部と、前記後部領域の該足底部とのなす角度θ1がθ1=25°〜60°である、フットカバー。
【請求項6】
請求項1または2に記載のフットカバーにおいて、
前記後部領域の被覆部を、前記足底部の足幅方向中央位置を通る前後方向の鉛直面に沿って切断線で切断したときに、該切断線と展開状態における該被覆部の後端縁とのなす角度θ3がθ3=135°〜170°である、フットカバー。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のフットカバーにおいて、
前記爪先領域における前記被覆部の内面には、足の爪先側甲部に対する該被覆部のずれを防止するための爪先側防滑部が設けられている、フットカバー。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のフットカバーにおいて、
前記後部領域において、足の踵部の両側部ないし後側部に位置する前記被覆部の内面には、足の踵部に対する該被覆部のずれを防止するための踵側防滑部が設けられている、フットカバー。
【請求項9】
請求項8に記載のフットカバーにおいて、
前記踵側防滑部は、フットカバーの側面視で足の踵骨における後端部の上下方向中央位置を上下に跨ぐように配置されている、フットカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンプス用のフットカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、足の爪先側よりも踵側が高くなるように形成された婦人用のパンプスに用いられるフットカバーとして、例えば特許文献1のようなフットカバーが提案されている。
【0003】
特許文献1には、足の足裏面を載せる足底部と足の爪先側甲部ないし踵部を覆う側辺部、踵部および爪先部からなる被覆部とにより伸縮可能に構成され、該被覆部の上端部に足を出し入れする履き口部が設けられたフットカバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−47433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のフットカバーでは、足底部および被覆部を、爪先側から踵側に亘って足裏面全体が水平面に接地した状態における足の形状に合うようになっている。すなわち、特許文献1のフットカバーにおいて、足底部および被覆部は、フットカバーを着用した者(以下「着用者」という)がパンプスを履いていない状態における足の形状に適合するように構成されている。このため、特許文献1のフットカバーを着用した者が足の爪先側よりも踵側が高くなるように形成された婦人用のパンプスを履いたときに、フットカバーの履き口部を形成する被覆部の上端部に余分なしわが発生しやすくなっていた。その結果、特許文献1のフットカバーでは、フットカバーがパンプス内で足の踵側から容易に脱げやすくなってしまい、着用者がフットカバーを着用した状態でパンプスを心地よく履き続けることができないという問題があった。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、フットカバーがパンプス内で足の踵側から容易に脱げないようにして、着用者がフットカバーを着用した状態でパンプスを心地よく履き続けることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係るパンプス用のフットカバーでは、足底部および被腹部の形状に工夫を加えることにより、フットカバーがパンプス内で足の踵側から容易に脱げないようにした。
【0008】
具体的に
、本発明の第
1の形態はパンプス用のフットカバーに係るものであり、このフットカバーは、着用者の足の足裏面を載せる足底部と足の爪先側甲部ないし踵部を覆う被覆部とを備え、該被覆部の上端部に足を出し入れする履き口部が設けられている。このフットカバーは、爪先領域と、該爪先領域の後側に連続する屈曲領域と、該屈曲領域の後側に連続する後部領域とを有している。爪先領域では、該爪先領域の足底部が水平方向に延びかつ該爪先領域の被覆部が足の末節骨から基節骨までの爪先側の甲部ないし両側部を覆うように形成されている。また、屈曲領域では、該屈曲領域の足底部が足の基節骨と中足骨との間の中足趾節関節で屈曲したときの湾曲形状に沿うように形成されかつ該屈曲領域の被覆部が中足趾節関節を含む範囲の両側部を覆うように形成されている。さらに、後部領域では、該後部領域の足底部が屈曲領域から後方に向かって上方に向かうように傾斜しかつ該後部領域の被覆部が足の中足骨から踵骨までの両側部ないし後側部を覆うように形成されていることを特徴とする。
【0009】
第
1の形態では、爪先領域と、爪先領域の後側に連続する屈曲領域と、屈曲領域の後側に連続する後部領域とを有しており、特に屈曲領域では、足底部が中足趾節関節で屈曲したときの湾曲形状に沿うように形成されかつ被覆部が中足趾節関節を含む範囲の両側部を覆うように形成されている。すなわち、フットカバーを構成する足底部および被覆部は、屈曲領域を中核として爪先領域から後部領域に亘りパンプスを履いた着用者の足の形状に適合するように構成されている。また、フットカバーがパンプスを履いた着用者の足の形状に適合することにより、フットカバーの履き口部を形成する被覆部の上端部において余分なしわの発生が抑制されるようになる。その結果、第
1の形態では
、フットカバーがパンプス内で足の踵側から容易に脱げないようになり、着用者がフットカバーを着用した状態でパンプスを心地よく履き続けることができる。
【0010】
第
2の形態は、第
1の形態において、被覆部は、爪先領域から屈曲領域を経て後部領域の前部に亘る部分に位置する前側被覆部と、該後部領域の踵側に位置する後側被覆部と、を有している。そして、前側および後側被覆部の各々は、足底部との接合前の展開状態で略U字形の帯状に形成されていて、外周縁が該足底部の外周縁に接合されるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
第
2の形態では、前側および後側被覆部により、必要最低限の部材のみで足裏面および爪先側甲部ないし踵部を覆うフットカバーを立体的に構成することができ、かつ被覆部における継ぎ目の数を少なくすることができる。
【0012】
第
3の形態は、第
2の形態において、展開状態の前側被覆部は、爪先領域で外甲側および内甲側の各外周縁が足の爪先側から中足趾節関節に向かって互いに離れるように略弧状に拡がり、屈曲領域で該外周縁間の足幅方向の幅が最大となり、該屈曲領域から後部領域の前部に亘って該各外周縁が該最大の幅に対応する位置から後方に向かって足幅方向中央に向かうように傾斜していることを特徴とする。
【0013】
第
3の形態では、屈曲領域から後部領域の前部に亘って各外周縁が最大の幅に対応する位置から後方に向かって足幅方向中央に向かうように傾斜している。すなわち、展開状態の前側被覆部は、全体を吊り下げたときの外周縁が最大幅に対応する位置から足の踵部に向かって上方に傾斜するように構成されている。このため、上記のように傾斜した前側被覆部の外周縁に足底部の外周縁が接合されたフットカバーを型崩れのない状態で起立させたとき、前側被覆部の外周縁と足底部の外周縁との継ぎ目部分が屈曲領域から後部領域の前部に亘って上方に向かって傾斜するようになる。その結果、前側被覆部の外周縁に接合される足底部を、屈曲領域から後部領域に亘り着用者がパンプスを履いた状態の足の形状に沿わせやすくすることができる。
【0014】
第
4の形態は、第
2の形態において、展開状態の前側被覆部は、爪先領域で外甲側および内甲側の各外周縁が足の爪先側から中足趾節関節に向かって互いに離れるように略弧状に拡がり、屈曲領域で該外周縁間の足幅方向の幅が最大となり、該屈曲領域から後部領域の前部に亘って該各外周縁が該最大の幅に対応する位置から後方に向かって足幅方向中央位置を通る前後方向と平行な方向に延びていることを特徴とする。
【0015】
この第
4の形態では、前側被覆部の外周縁に足底部の外周縁が接合されたフットカバーを型崩れのない状態で起立させたとき、上記第
3の形態と比較して、前側被覆部の外周縁と足底部の外周縁との継ぎ目部分が屈曲領域から後部領域の前部に亘って上方に向かって緩やかに傾斜するようになる。このため、フットカバーを、足の爪先側よりも踵側の高さが比較的低いパンプスを履いた着用者の足の形状に対して適合させることが可能となる。
【0016】
第
5の形態は、第
1または第
2の形態において、爪先領域の足底部と、後部領域の足底部とのなす角度θ1がθ1=25°〜60°であることを特徴とする。
【0017】
この第
5の形態では、角度θ1がθ1=25°〜60°であれば、フットカバーを、足の爪先側よりも踵側が高くなるように形成されたパンプスを履いた着用者の足の形状に対して十分に適合させることができる。
【0018】
第
6の形態は、第
1または第
2の形態において、後部領域の被覆部を、足底部の足幅方向中央位置を通る前後方向の鉛直面に沿って切断線で切断したときに、該切断線と展開状態における該被覆部の後端縁とのなす角度θ3がθ3=135°〜170°であることを特徴とする。
【0019】
この第
6の形態では、角度θ3がθ3=135°〜170°であれば、第
5の形態と同様に、フットカバーを、足の爪先側よりも踵側が高くなるように形成されたパンプスを履いた着用者の足の形状に対して十分に適合させることができる。
【0020】
第
7の形態は、第
1〜第
6の形態のいずれか1つの形態において、爪先領域における被覆部の内面には、足の爪先側甲部に対する該被覆部のずれを防止するための爪先側防滑部が設けられていることを特徴とする。
【0021】
この第
7の形態では、爪先側防滑部によって、着用者の足の爪先側甲部と被覆部とのずれが生じにくくなり、着用者がフットカバーを着用した状態でパンプスをより一層心地よく履き続けることができる。
【0022】
第
8の形態は、第
1〜第
7の形態のいずれか1つの形態において、後部領域において、足の踵部の両側部ないし後側部に位置する被覆部の内面には、足の踵部に対する該被覆部のずれを防止するための踵側防滑部が設けられていることを特徴とする。
【0023】
この第
8の形態では、踵側防滑部によって、着用者の足における踵部の両側部ないし後側部と被覆部とのずれが生じにくくなり、着用者がフットカバーを着用した状態でパンプスをより一層心地よく履き続けることができる。
【0024】
第
9の形態は、第
8の形態において、踵側防滑部は、フットカバーの側面視で足の踵骨における後端部の上下方向中央位置を上下に跨ぐように配置されていることを特徴とする。
【0025】
この第
9の形態では、踵側防滑部が足の踵骨における後端部の上下方向中央位置を上下に跨ぐように配置されているため、踵側防滑部により足の踵骨の上下移動が抑制されることになる。その結果、足の踵部の両側部ないし後側部と被覆部とのずれが生じにくくなるという踵側防滑部の上記効果をより一層高めることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によると、フットカバーがパンプス内で足の踵側から容易に脱げないようになり、着用者がフットカバーを着用した状態でパンプスを心地よく履き続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るフットカバーの全体斜視図である。
【
図2】
図2は、フットカバーに人体の足の構造を重ねた状態を足の外甲側から見て示す側面図である。
【
図3】
図3は、フットカバーに人体の足の構造を重ねた状態を示す平面図である。
【
図4】
図4は、展開状態の足底部に人体の足の構造を重ねた状態を示す平面図である。
【
図5】
図5は、展開状態の足底部上に被覆部を重ね合わせた状態の展開図である。
【
図6】
図6は、フットカバーの変形例を示す
図5相当図である。
【
図7】
図7は、
図3に示したフットカバーの被覆部を、仮想線Cを通る前後方向の鉛直面に沿って切断したときの仮想的な展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
図1〜
図3は、本発明の実施形態に係るフットカバー1の全体を示しており、このフットカバー1は、主にパンプス(特に足の爪先側よりも踵側が高くなるように形成された婦人用の靴)に適したフットカバーとして使用されるものである。このフットカバー1を着用した着用者がパンプスを履いたときに、フットカバー1はパンプス内に隠れて外部に露出しないようになっている。
【0030】
ここで、フットカバー1は、人体の左足Lに着用させたときのフットカバー1(左足用フットカバー)のみを例示している。右足用フットカバーは、左足用フットカバーのものと左右対称になるように構成されているので、以下の説明では左足用フットカバーのみについて説明し、右足用フットカバーの説明は省略する。
【0031】
また、以下の説明において、上方(上側)および下方(下側)とはフットカバー1の上下方向の位置関係を表し、前方(前側)および後方(後側)とはフットカバー1の前後方向の位置関係を表し、内甲側および外甲側とはフットカバー1の足幅方向の位置関係を表すものとする。
【0032】
図1〜
図3に示すように、フットカバー1は、着用者の足の足裏面と爪先側甲部ないし踵部とを覆うように構成されている。具体的に、フットカバー1は、着用者の足の足裏面を載せる足底部2と、足の爪先側甲部ないし踵部を覆う被覆部3とを備えている。これら足底部2および被覆部3は、それぞれ、伸縮可能な生地からなり、生地が伸張した状態で着用される。被覆部3の上端部には、足を出し入れするための履き口部7が設けられている。履き口部7は、足の爪先側甲部ないし踵部に対し隙間がない状態でフィットするように形成されている。
【0033】
足底部2および被覆部3は、予め、足の踵部が爪先部よりも高くなるように足の基節骨PPと中足骨MTとの間の中足趾節関節MP(いわゆるMP関節)で屈曲したときの足の形状に沿って湾曲形成されている。すなわち、フットカバー1は、足底部2および被覆部3が足の中足趾節関節MPの位置を基準にしてパンプスを履いた着用者の足の形状に適合するように構成されている。具体的に、フットカバー1は、足の爪先側甲部の位置に対応する爪先領域Xと、爪先領域Xの後側に連続しかつ足の中足趾節関節MPの位置に対応する屈曲領域Yと、屈曲領域Yの後側に連続する後部領域Zとを有している。
【0034】
また、被覆部3は、爪先領域Xから屈曲領域Yを経て後部領域Zの前部に亘る部分に位置する前側被覆部4と、後部領域Zの踵側に位置する後側被覆部5と、を有している。ここで、符号6(
図1〜3参照)は、
図5に示す前側被覆部4の各後端部4cと後側被覆部5の各前端部5bとが縫合(接合)された継ぎ部である。
【0035】
図2および
図3に示すように、爪先領域Xでは、足底部2が水平方向に延びている一方、被覆部3が足の末節骨DPから基節骨PPまでの爪先側の甲部ないし両側部を覆うように形成されている。屈曲領域Yでは、足底部2が足の中足趾節関節MPで屈曲したときの湾曲形状に沿うように形成されている一方、被覆部3が中足趾節関節MPを含む範囲の両側部を覆うように形成されている。後部領域Zでは、足底部2が屈曲領域Yから後方に向かって上方に向かうように傾斜している一方、被覆部3が足の中足骨MTから踵骨HLまでの両側部ないし後側部を覆うように形成されている。
【0036】
ここで、
図2に示すように、本実施形態では、爪先領域Xの足底部2と後部領域Zの足底部2とのなす角度θ1が約45°になるように設定されている。そして、角度θ1がθ1=45°であるとき、フットカバー1は、その後端部に対応する位置(
図2に示すhの位置)が水平面(
図2に示す仮想線F)からおよそ9cmの高さになるように構成されている。なお、角度θ1は特にこの角度に限定されず、角度θ1を所定の角度範囲で設定することが可能である。角度θ1における適正な角度範囲については後述する。
【0037】
また、
図1〜
図3に示すように、爪先領域Xにおいて、被覆部3の内面には、足の爪先側甲部に対する被覆部3のずれを防止するための左右一対の爪先側防滑部11,11が設けられている。具体的に、各爪先側防滑部11は、前側被覆部4の内面に塗布されたシリコン材からなり、略円形状に形成されている。爪先側防滑部11,11の各々は、例えば足の第2基節骨PP2および第4中節骨IP4のそれぞれに当接するように配置されている(
図3参照)。
【0038】
さらに、後部領域Zにおいて、足の踵部の両側部ないし後側部に位置する被覆部3の内面には、足の踵部に対する被覆部3のずれを防止するための上下一対の踵側防滑部12,12が設けられている。具体的に、各踵側防滑部12は、後側被覆部5の内面に塗布されたシリコン材からなり、足の踵部の両側部ないし後側部を覆うように略長方形の帯状に形成されている。踵側防滑部12,12は、例えば足の踵骨HLにおける後端部の上下方向中央位置(踵骨HL後側の尖った部分の位置)を上下に跨ぐように配置されている(
図2参照)。
【0039】
次に、フットカバー1を展開した状態の具体的構成を説明する。
【0040】
図4に示すように、フットカバー1を展開した状態における足底部2の前後方向において、爪先領域Xは、足の爪先側に位置する足底部2の前端部2b(足幅方向に延びる仮想線L1の位置)から第2基節骨PP2の後端部に対応する位置(足幅方向に延びる仮想線L2の位置)までの範囲を占めている。屈曲領域Yは、上記仮想線L2の位置から第5中足骨MT5の前端部に対応する位置(足幅方向に延びる仮想線L3の位置)までの範囲を占めている。後部領域Zは、上記仮想線L3の位置から足底部2の後端部2c(足幅方向に延びる仮想線L4の位置)までの範囲を占めている。
【0041】
また、フットカバー1を展開した状態において、足底部2は、爪先領域Xで外甲側および内甲側の各外周縁2aが仮想線L1の位置から後方に向かって互いに離れるように略弧状に拡がっている。また、足底部2は、爪先領域Xの後部に位置するa1,a2間を結んだ足幅方向に延びる仮想線Aの位置で外周縁2a,2a間の足幅方向の幅が最大となっている。そして、仮想線Aの位置(すなわち爪先領域Xの後部)から屈曲領域Yを経て後部領域Zに亘る領域間では、足底部2の各外周縁2aが上記仮想線Aの位置から足の踵部(踵骨HL)に対応する位置に向かって足幅方向中央(前後方向に延びる仮想線C)に向かうように傾斜している。なお、本実施形態では、足底部2が仮想線Cを対称軸として左右に線対称に形成された形態を例示しているが、足底部2はこの形態に限定されない。
【0042】
一方、
図5に示すように、フットカバー1を展開した状態において、前側および後側被覆部4,5の各々は、足底部2との縫合(接合)前の展開状態で略U字形の帯状に形成されていて、前側被覆部4の各後端部4cと後側被覆部5の各前端部5bとが縫合されるようになっている。前側被覆部4は、展開状態において、前端部4bを足底部2の前端部2bの位置(仮想線L1の位置)に合わせた状態で各外周縁4aが足底部2の各外周縁2aに縫合されるように構成されている。一方、後側被覆部5は、展開状態において、後端部5cを足底部2の後端部2cの位置(仮想線L4の位置)に合わせた状態で各外周縁5aが足底部2の各外周縁2aに縫合されるように構成されている。
【0043】
なお、本実施形態では、足底部2と前側および後側被覆部4,5とを縫合することにより接合した形態を例示しているが、接着剤による接着や溶着などの接合方法により、足底部2と前側および後側被覆部4,5とを接合してもよい。また、本実施形態では、足底部2と前側および後側被覆部4,5とを縫合することにより接合した形態を例示しているが、足底部および被覆部を、例えばホールガーメント(登録商標)編み機などを用いた三次元編成により一体的に編成して構成してもよい。
【0044】
前側被覆部4は、フットカバー1を展開した状態において、外甲側および内甲側の外周縁4a,4aの各々が爪先領域Xにおける仮想線L1の位置から屈曲領域Y(
図4に示す足の中足趾節関節MPに対応する位置)に向かって互いに離れるように略弧状に拡がっている。また、屈曲領域Yでは、
図5に示すb1,b2間を結んだ足幅方向に延びる仮想線Bの位置(屈曲領域Yの後部)で前側被覆部4における外周縁4a,4a間の足幅方向の幅が最大となっている。さらに、爪先領域Xおよび屈曲領域Yにおいて、前側被覆部4は、各外周縁4aが足底部2の各外周縁2aよりも大きな曲線形状になるように形成されている。すなわち、爪先領域Xおよび屈曲領域Yにおいて、前側被覆部4は、各外周縁4aの曲率が足底部2における各外周縁2aの曲率よりも小さくなるように形成されている。そして、屈曲領域Yにおける仮想線Bの位置から後部領域Zの前部に亘る領域間では、前側被覆部4の各外周縁4aが上記仮想線Bの位置から後方に向かって仮想線C(足幅方向中央)に向かうように略直線状に傾斜している。
【0045】
後側被覆部5は、フットカバー1を展開した状態において、後部領域Zの踵部に対応する位置で外甲側および内甲側における外周縁5a,5aの各々が仮想線L4の位置から前方に向かって互いに離れるように略弧状に拡がっている。また、後側被覆部5は、前端部5bに対応するd1,d2間を結んだ足幅方向に延びる仮想線Dの位置で外周縁5a,5a間の足幅方向の幅が最大となり、かつこの最大幅が仮想線Bの位置に対応する前側被覆部4の最大幅よりも大きくなるように形成されている。さらに、後側被覆部5は、各外周縁5aが足底部2における後部領域Zの各外周縁2aよりも大きな曲線形状になるように形成されている。すなわち、後側被覆部5は、各外周縁5aの曲率が足底部2における後部領域Zの各外周縁2aの曲率よりも小さくなるように形成されている。
【0046】
なお、本実施形態では、前側および後側被覆部4,5の各々が仮想線Cを対称軸として左右に線対称に形成された形態を例示しているが、足底部2と同様に、前側および後側被覆部4,5の各々はこの形態に限定されない。
【0047】
[実施形態の作用効果]
上述のように、足底部2および被覆部3は、予め、足の踵部が爪先部よりも高くなるように足の中足趾節関節MPで屈曲したときの足の形状に沿って湾曲形成されている。具体的に、フットカバー1は、爪先領域Xと、屈曲領域Yと、後部領域Zとを有しており、特に屈曲領域Yでは、足底部2が中足趾節関節MPで屈曲したときの湾曲形状に沿うように形成されかつ被覆部3が中足趾節関節MPを含む範囲の両側部を覆うように形成されている。すなわち、フットカバー1を構成する足底部2および被覆部3は、屈曲領域Yを中核として爪先領域Xから後部領域Zに亘りパンプスを履いた着用者の足の形状に適合するように構成されている。また、フットカバー1がパンプスを履いた着用者の足の形状に適合することにより、フットカバー1の履き口部7を形成する被覆部3の上端部において余分なしわの発生が抑制されるようになる。その結果、本発明の実施形態では、フットカバー1がパンプス内で足の踵側から容易に脱げないようになり、着用者がフットカバー1を着用した状態でパンプスを心地よく履き続けることができる。
【0048】
また、前側および後側被覆部4,5の各々は、足底部2との縫合前の展開状態で略U字形の帯状に形成されていて、外周縁4a,5aの各々が足底部2の外周縁2aに縫合(接合)されるように構成されている。このため、必要最低限の部材のみで足裏面および爪先側甲部ないし踵部を覆うフットカバー1を立体的に構成することができ、かつ被覆部3における継ぎ目の数を少なくすることができる。
【0049】
また、展開状態の前側被覆部4は、屈曲領域Yから後部領域Zの前部に亘って各外周縁4aが最大の幅に対応する位置(仮想線Bの位置)から後方に向かって足幅方向中央に向かうように傾斜している。すなわち、展開状態の前側被覆部4は、全体を吊り下げたときの各外周縁4aが最大幅に対応する位置(仮想線Bの位置)から足の踵部に向かって上方に傾斜するように構成されている。このため、上記傾斜した前側被覆部4の各外周縁4aに足底部2の各外周縁2aが縫合されたフットカバー1を型崩れのない状態で起立させたとき、前側被覆部4の外周縁4aと足底部2の外周縁2aとの継ぎ目部分が屈曲領域Yから後部領域Zの前部に亘って上方に向かって傾斜するようになる。その結果、前側被覆部4に縫合される足底部2を、屈曲領域Yから後部領域Zに亘り着用者がパンプスを履いた状態の足の形状に沿わせやすくすることができる。
【0050】
また、爪先領域Xにおける被覆部3(前側被覆部4)の内面には、足の爪先側甲部に対する被覆部3のずれを防止するための爪先側防滑部11,11が設けられている。このため、着用者の足の爪先側甲部と被覆部3とのずれが生じにくくなり、着用者がフットカバー1を着用した状態でパンプスをより一層心地よく履き続けることができる。
【0051】
また、後部領域Zにおいて、足の踵部の両側部ないし後側部に位置する被覆部3(後側被覆部5)の内面には、足の踵部に対する被覆部3のずれを防止するための踵側防滑部12,12が設けられている。このため、着用者の足における踵部の両側部ないし後側部と被覆部3とのずれが生じにくくなり、着用者がフットカバー1を着用した状態でパンプスをより一層心地よく履き続けることができる。
【0052】
さらに、踵側防滑部12が足の踵骨HLにおける後端部の上下方向中央位置を上下に跨ぐように配置されているため、踵側防滑部12により足の踵骨HLの上下移動が抑制されることになる。その結果、足の踵部の両側部ないし後側部と被覆部3とのずれが生じにくくなるという踵側防滑部12,12の上記効果をより一層高めることができる。
【0053】
[実施形態の変形例]
図6は、上記実施形態の変形例を示すものである。なお、以下に示す変形例に係るフットカバー1の他の構成は、上記実施形態に係るフットカバー1の構成と同様である。このため、以下の説明では、
図1〜
図5と同じ部分について同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0054】
図6に示すように、この変形例に係る展開状態の前側被覆部4において、前端部4bの位置(仮想線L1の位置)から最大幅に対応する位置(仮想線Bの位置)に亘る形状が上記実施形態の前側被覆部4と同様に形成されている一方、仮想線Bから後部領域Zの前部に亘って各外周縁4aが仮想線Bの位置から後方に向かって仮想線Cと平行に延びている。この前側被覆部4を備えるフットカバー1では、爪先領域Xの足底部2と後部領域Zの足底部2とのなす角度θ1が約25°になり、爪先領域Xの足底部2に対する後部領域Zの足底部2後側の高さがおよそ5cmになるように設定されている。
【0055】
このように、前側被覆部4の各外周縁4aに足底部2の各外周縁2aが縫合されたフットカバー1を型崩れのない状態で起立させたとき、上記実施形態と比較して、前側被覆部4の各外周縁4aと足底部2の各外周縁2aとの継ぎ目部分が屈曲領域Yから後部領域Zの前部に亘って上方に向かって緩やかに傾斜するようになる。したがって、この変形例では、フットカバー1を、足の爪先側よりも踵側の高さが比較的低いパンプスを履いた着用者の足の形状に対して適合させることが可能となる。
【0056】
[その他の実施形態]
上記実施形態では爪先領域Xの足底部2と後部領域Zの足底部2とのなす角度θ1が約45°となる形態を示す一方、上記実施形態の変形例では角度θ1が約25°となる形態を示した。しかしながら、角度θ1は上記いずれの角度にも限定されない。そして、本発明では、角度θ1がθ1=25°〜60°であるのが好ましい。角度θ1がこのような範囲にあるとき、フットカバー1は、その後端部(
図2に示すh)の位置が水平面(
図2に示す仮想線F)からおよそ5cm〜9cmの高さになるように構成される。このように、角度θ1が上記範囲にあれば、フットカバー1を、足の爪先側よりも踵側が高くなるように形成されたパンプスを履いた着用者の足の形状に対して十分に適合させることができる。
【0057】
また、
図2を参照して、角度θ1が上記範囲にあるとき、フットカバー1の前端部から後端部(図に示すhの位置)までを結んだ仮想線S2と水平面(仮想線F)とのなす角度θ2はθ2=18°〜40°となる。
【0058】
さらに、
図7は、
図3に示すフットカバー1の被覆部3を、足底部2の足幅方向中央の位置(仮想線C)を通る前後方向の鉛直面に沿って切断したときの仮想的な展開状態を示している。角度θ1がθ1=25°〜60°であるとき、
図7を参照して、足幅方向中央の仮想線Cと、仮想線Cの位置で切断された被覆部3(後側被覆部5)の後端縁(仮想線E)とのなす角度θ3はθ3=135°〜170°となる。角度θ3がこのような範囲にあっても、フットカバーを、足の爪先側よりも踵側が高くなるように形成されたパンプスを履いた着用者の足の形状に対して十分に適合させることができる。
【0059】
以上、本発明についての実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態のみに限定されず、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、足の爪先側よりも踵側が高くなるように形成された婦人用のパンプスに適したフットカバーとして産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1:フットカバー
2:足底部
3:被覆部
4:前側被覆部
5:後側被覆部
6:継ぎ部
7:履き口部
11:爪先側防滑部
12:踵側防滑部
X:爪先領域
Y:屈曲領域
Z:後部領域
DP:末節骨
PP:基節骨
MT:中足骨
HL:踵骨
MP:中足趾節関節
【要約】
【課題】フットカバーがパンプス内で足の踵側から容易に脱げないようにして、着用者がフットカバーを着用した状態でパンプスを心地よく履き続けることができるようにする。
【解決手段】フットカバー1は、着用者の足の足裏面を載せる足底部2と足の爪先側甲部ないし踵部を覆う被覆部3とを備えており、被覆部3の上端部に足を出し入れする履き口部7が設けられたパンプス用のフットカバーである。そして、足底部2および被覆部3は、予め、足の踵部が爪先部よりも高くなるように足の基節骨PPと中足骨MTとの間の中足趾節関節MPで屈曲したときの足の形状に沿って湾曲形成されている。
【選択図】
図2