特許第6175192号(P6175192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6175192触媒組成物およびエチレンのオリゴマ化のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6175192
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】触媒組成物およびエチレンのオリゴマ化のための方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/24 20060101AFI20170724BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20170724BHJP
   C07C 11/107 20060101ALI20170724BHJP
   C07C 2/22 20060101ALI20170724BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170724BHJP
【FI】
   B01J31/24 Z
   C07C11/02
   C07C11/107
   C07C2/22
   !C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-528647(P2016-528647)
(86)(22)【出願日】2014年7月28日
(65)【公表番号】特表2016-529098(P2016-529098A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】IB2014063485
(87)【国際公開番号】WO2015015402
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2016年1月26日
(31)【優先権主張番号】13178362.3
(32)【優先日】2013年7月29日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】62/008,237
(32)【優先日】2014年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502132128
【氏名又は名称】サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】391009659
【氏名又は名称】リンデ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Linde Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェール アニナ
(72)【発明者】
【氏名】マイスヴィンクル アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ベルト ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー ベルント ハー
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ペレケ ノルメン
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンタール ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ハルフ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】アル−ハズミ モハメド エイチ
(72)【発明者】
【氏名】アル−カタニ アブドゥラ
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−517528(JP,A)
【文献】 特表2006−511625(JP,A)
【文献】 特表2011−518034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
C07C 2/22
C07C 11/02
C07C 11/107
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)クロム化合物と、
(b)一般構造
(A)RP−N(R)−P(R)−NRまたは
(B)RP−N(R)−P(XR)RもしくはRP−N(R)−P(XR(式中、X=OもしくはSである)
(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立して、C〜C10−アルキル、C〜C20−アリール、C〜C10−シクロアルキル、アラルキル、アルキルアリール、もしくはトリアルキルシリルである)の配位子、または(A)および(B)の任意の環状誘導体の配位子であって、PNPN単位またはPNP単位のPまたはN原子の少なくとも1つが、環システムの一部であり、前記環システムが、構造(A)または(B)の1つ以上の構成化合物から置換により形成される、配位子と、
(c)活性剤または助触媒と、
を含むことを特徴とする、エチレンのオリゴマ化のための触媒組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の触媒組成物であって、
前記クロム化合物が、Cr(II)もしくはCr(III)の有機塩、無機塩、配位錯体、有機金属錯体、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せであることを特徴とする触媒組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の触媒組成物であって、
前記クロム化合物が、CrCl(THF)、Cr(III)アセチルアセトネート、Cr(III)オクタノエート、クロムヘキサカルボニル、Cr(III)−2−エチルヘキサノエート、(ベンゼン)トリカルボニル−クロム、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せであることを特徴とする触媒組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の触媒組成物であって、
、R、R、R、R、R、R、およびRがそれぞれ独立して、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、トリル、またはキシリルであることを特徴とする触媒組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の触媒組成物であって、
前記活性剤または助触媒が、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアミノキサン(MMAO)、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せであることを特徴とする触媒組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の触媒組成物であって、
前記配位子が、PhPN(i−Pr)P(Ph)NMePhP−N(i−Pr)−P(Ph)−N(i−Pr)Ph、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)−N(Me)C11、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)S(i−Pr)、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)OC、PhP−N(i−Pr)P(Ph)OCH、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せであることを特徴とする触媒組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の触媒組成物であって、
香族炭化水素、直鎖脂肪族炭化水素、環状脂肪族炭化水素、直鎖オレフィン、エーテル、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せである溶媒を更に含むことを特徴とする触媒組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の触媒組成物であって、
前記クロム化合物の濃度が、0.01から100mmol/Lまでであることを特徴とする触媒組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の触媒組成物であって、
配位子/Crモル比が0.5から50までであることを特徴とする触媒組成物。
【請求項10】
請求項5から9のいずれか1項に記載の触媒組成物であって、
Al/Crモル比が1:1から1000:1までであることを特徴とする触媒組成物。
【請求項11】
少なくとも
(a)クロム化合物と、
(b)一般構造
(A)RP−N(R)−P(R)−NRまたは
(B)RP−N(R)−P(XR)RもしくはRP−N(R)−P(XR
(式中、
X=OもしくはSであり、
、R、R、R、R、R、RおよびRは独立して、C〜C10−アルキル、C〜C20−アリール、C〜C10−シクロアルキル、アラルキル、アルキルアリール、もしくはトリアルキルシリルである)の配位子、または(A)および(B)の任意の環状誘導体の配位子であって、PNPN単位またはPNP単位のPまたはN原子の少なくとも1つが、環システムの一部であり、前記環システムが、構造(A)または(B)の1つ以上の構成化合物から置換により形成される、配位子と、
(c)活性剤または助触媒と、
を合わせることにより得られることを特徴とする、エチレンのオリゴマ化のための触媒組成物。
【請求項12】
エチレンの三量体化および/または四量体化のための方法であって、反応器中で請求項1から11のいずれか1項に記載の触媒組成物をエチレンの気相にさらすことと、オリゴマ化を行うこととを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、
前記オリゴマ化が、圧力1から200barまでで実施されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の方法であって、
前記オリゴマ化が、温度10から200℃までで実施されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか1項に記載の方法であって、
平均滞留時間が10分から20時間までであることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒組成物、ならびにエチレンのオリゴマ化のための方法、特にエチレンの三量体化および四量体化のために関する。
【背景技術】
【0002】
コモノマグレードの1−ヘキセンおよび1−オクテンを含む、直鎖アルファオレフィン(LAO)の製造のための既存の方法は、エチレンのオリゴマ化によるものである。これらの方法は、共通して、鎖長4、6、8などのエチレンオリゴマの生成物分布を生じる。これは、競合する鎖成長および置換反応工程により大きく左右される化学的機構によるものであり、シュルツ−フローリまたはポアソン生成物分布を生じる。
【0003】
マーケティングの観点から、この生成物分布は、一連のアルファオレフィン製造業者に手ごわい難題を提起する。その理由は、提供されるそれぞれの市場区分が、市場規模および成長、地理、フラグメント化などに関して、非常に異なる挙動を呈するからである。したがって、製造業者にとって、市場の要求に適応することは非常に難しい。これは、所定の経済的文脈において、一連の生成物の一部は高い需要を有するであろうが、同時に他の生成物の取り分が全く市場向きでないか、わずかなニッチでのみ市場向きであるであろうことによる。今のところ、最高の価値のLAO生成物は、ポリマ産業ではコモノマグレードの1−ヘキセンであるが、1−オクテンの需要も相当の速度で増大している。
【0004】
国際公開第2009/006979A2号は、触媒組成物ならびにエチレンの二量体化、三量体化および/または四量体化のための方法を記載している。触媒組成物は、クロム化合物と、例えば一般構造RP−N(R)−P(R)−N(R)−Hの配位子と、活性剤として機能する助触媒とを含む。配位子の置換基R、R、R、RおよびRは独立して、(特に)C〜C10−アルキル、アリールおよび置換されたアリールを含むいくつかの官能基である。
【0005】
クロム源は、CrCl(THF)、Cr(III)アセチルアセトネート、Cr(III)オクタノエート、Cr−ヘキサカルボニル、Cr(III)−2−エチルヘキサノエートおよび(ベンゼン)トリカルボニル−クロム(THF=テトラヒドロフラン)である。
【0006】
助触媒(co−catalyst)または活性剤は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサンまたは前述のうちの少なくとも1つを含む組合せである。この先行技術は、選択的なエチレンのオリゴマ化反応のための触媒系の部類を開示している。
【0007】
例えば、1つの実施形態は、この部類の触媒系から選択される特定の触媒組成物を使用して、エチレンを高度に選択的に三量体化して、1−ヘキセンを高収率で与える。
【0008】
この触媒成分の選択は、クロム源としてCrCl(THF)、活性剤としてトリエチルアルミニウム、および触媒活性錯体のための配位子として(Ph)P−N(i−Pr)−P(Ph)−N(i−Pr)−H(Ph=フェニル基、i−Pr=イソプロピル基)を含む。この配位子は、典型的なPNPN−H骨格を特徴とするため、この部類の化合物は、その置換基の正確な性質にかかわらず、多くの場合、「PNPN−H配位子」と呼ばれる。
【0009】
国際公開第2010/115520A1号は、既に国際公開第2009/006979A2号に開示された一般型の本質的に変性された触媒系を記載している。これらの変性された系は、既に知られていた同じPNPN−H型配位子を利用している。しかし、現在、「変性剤」が系に添加されており、これは(限定されるものではないが)[HE]X、[HER]X、[HER]X、[HER]Xまたは[ER]X(式中、E=NまたはPであり、X=Cl、BrまたはIであり、R=アルキル、シクロアルキル、アシル、アリール、アルケニル、アルキニルなどである)型のアンモニウムまたはホスホニウム塩である。
【0010】
好ましい実施形態は、例えば、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド一水和物、トリエチルアミン−ヒドロクロリドなどの変性剤を含む。また、「[ER]X型」変性剤として、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリドを有利に使用できる。これは、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリドが安価であり、豊富に供給され、反応溶液によく溶解するからである。ハロゲン含有変性剤により、触媒系は、オリゴマ化条件下において、インサイチュで形成される、結果として生じる触媒活性種において、[Cr]/[ハロゲン]モル比を独立して調節できる。
【0011】
技術的規模では、上記の先行技術のオリゴマ化技術は、主に1−ブテンおよび1−ヘキセンの製造に適し、この1−ブテンおよび1−ヘキセンは、ポリエチレン(PE)製造におけるコモノマとして、特に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のために使用される。今のところ、PE製造のために使用されるコモノマの大部分は1−ブテンであり、続いて1−ヘキセンの需要が増大している。しかし、高い引張強度および耐クラック性を特徴とするいくつかの高品質PE材料は、コモノマとして1−オクテンを必要とする。これまで、最大量の1−オクテンは、一連のLAOプロセスまたはフィッシャ・トロプシュ流(Fischer−Tropsch stream)からの抽出から得られている。これらの技術は、幾分多量の1−オクテン以外の生成物に悩まされるので、それらの経済的な実行可能性は、技術的および経済的な境界条件で大きく異なる。これは、局所的な境界条件下で、一連の生成物について、インフラストラクチャ、市場アクセスおよび価格の動向に関係する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際特許出願公開第2009/006979号パンフレット
【特許文献2】国際特許出願公開第2010/115520号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、1−オクテンへの選択率がより高い触媒系および方法を利用可能にすることが望ましい。1−ヘキセンも価値のあるコモノマであるので、1−ヘキセン/1−オクテンを組み合わせた方法も、同様に経済的に興味深い。
【課題を解決するための手段】
【0014】
ある実施形態では、触媒組成物は、
(a)クロム化合物と、
(b)一般構造
(A)RP−N(R)−P(R)−NRまたは
(B)RP−N(R)−P(XR)RもしくはRP−N(R)−P(XR(式中、X=OもしくはSである)(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立して、C〜C10−アルキル、C〜C20−アリール、C〜C10−シクロアルキル、アラルキル、アルキルアリール、もしくはトリアルキルシリルである)の配位子、または(A)および(B)の任意の環状誘導体の配位子であって、PNPN単位またはPNP単位のPまたはN原子の少なくとも1つが、環システムの一部であり、環システムが、構造(A)または(B)の1つ以上の構成化合物から置換により形成される、配位子と、
(c)活性剤または助触媒と、
を含む。
【0015】
別の実施形態では、触媒を得る方法は、少なくとも(a)クロム化合物と、(b)上記の一般構造(A)または(B)の配位子と、(c)活性剤または助触媒とを混合することを含む。
【0016】
更に別の実施形態では、エチレンの三量体化および/または四量体化のための方法は、上記の触媒組成物をエチレンの気相に反応器中でさらすことと、オリゴマ化を行うこととを含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書では、触媒組成物およびオリゴマ化のための1−オクテンへの選択率が高く、先行技術の不利益を克服する方法が記載される。特に、より高い選択率で1−オクテンの製造を可能にする触媒および方法が提供されるものとし、1−ヘキセン/1−オクテンを組み合わせて製造する方法も対象とする。触媒組成物は、(a)クロム化合物と、(b)一般構造
(A)RP−N(R)−P(R)−NRまたは
(B)RP−N(R)−P(XR)RもしくはRP−N(R)−P(XR(式中、X=OもしくはSである)
(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立して、C〜C10−アルキル、C〜C20−アリール、C〜C10−シクロアルキル、アラルキル、アルキルアリール、もしくはトリアルキルシリルである)の配位子、または(A)および(B)の任意の環状誘導体の配位子であって、PNPN単位またはPNP単位のPもしくはN原子の少なくとも1つが、環システムの一部であり、環システムが、構造(A)または(B)の1つ以上の構成化合物から置換により形成される配位子と、(c)活性剤または助触媒とを含む。理解される通り、(A)および(B)の任意の環状誘導体は、配位子として利用されることができ、PNPN単位(構造(A))またはPNP単位(構造(B))のPまたはN原子のうちの少なくとも1つは、環の一部であり、この環は、構造(A)または(B)の1つ以上の構成化合物から置換により形成され、すなわち、構成化合物1個当たり、(定義された)2つの基R〜R全体もしくはH、(定義された)2つの基R〜Rのそれぞれからの1つの原子、または(定義された)基R〜R全体もしくはHおよび別の(定義された)基R〜Rからの1原子を形式上除去し、形式上このように形成された原子価が不飽和の部位を、構成化合物1個当たり、1つの共有結合により結合させて、所定の部位に最初に存在していた原子価と同じ原子価を提供することにより形成される。
【0018】
このような環状誘導体の例は、次の通りであってもよい。
【化1】
【0019】
好ましくは、クロム化合物が、Cr(II)またはCr(III)の有機または無機塩、配位錯体および有機金属錯体である。
【0020】
最も好ましくは、クロム化合物が、CrCl(THF)、Cr(III)アセチルアセトネート、Cr(III)オクタノエート、クロムヘキサカルボニル、Cr(III)−2−エチルヘキサノエート、(ベンゼン)トリカルボニル−クロム、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せである。
【0021】
、R、R、R、R、R、RおよびRが、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、トリル、キシリル、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せであることも好ましい。
【0022】
1つの実施形態では、活性剤または助触媒が、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアミノキサン(MMAO)、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せである。
【0023】
最も好ましいのは、触媒組成物であって、配位子が、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)−N(i−Pr)Ph、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)−N(Me)C、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)S(i−Pr)、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)OC、PhP−N(i−Pr)P(Ph)OCH、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せである、触媒組成物である。
【0024】
溶媒、好ましくは芳香族炭化水素、直鎖および環状脂肪族炭化水素、直鎖オレフィンならびにエーテル、好ましくは、トルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、クメン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せ、最も好ましくは、トルエンまたはクロロベンゼンを更に含む触媒組成物も、好ましく提供される。
【0025】
1つの実施形態では、クロム化合物の濃度が、0.01から100mmol/Lまで、好ましくは、0.1から10mmol/Lである。
【0026】
配位子/Crモル比は、好ましくは、0.5から50まで、好ましくは、0.8から2.0である。Al/Crモル比は、好ましくは、1:1から1000:1まで、好ましくは、10:1から200:1である。
【0027】
当業者に自明であるように、触媒組成物を提供するための成分(a)から(c)は、多かれ少なかれ出発材料として考えられるが、遊離化合物(free compound)(a)〜(c)が混合されて触媒組成物を形成する際に変換されてもよい。この点について、本発明による触媒組成物は、少なくとも(a)クロム化合物と、(b)一般構造
(A)RP−N(R)−P(R)−NRまたは
(B)RP−N(R)−P(XR)RもしくはRP−N(R)−P(XR(式中、X=OもしくはS)
(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立して、C〜C10−アルキル、C〜C20−アリール、C〜C10−シクロアルキル、アラルキル、アルキルアリール、もしくはトリアルキルシリルである)の配位子または(A)および(B)の任意の環状誘導体の配位子であって、PNPN単位またはPNP単位のPまたはN原子の少なくとも1つが、環システムの一部であり、環システムが、構造(A)または(B)の1つ以上の構成化合物から置換により形成される、配位子と、(c)活性剤または助触媒とを混合することにより得られるとも示され得る。
【0028】
エチレンの三量体化および/または四量体化のための方法であって、本発明による触媒組成物をエチレンの気相に反応器中でさらすことと、オリゴマ化を行うこととを含む方法も、本発明による。有機金属触媒を使用して、オリゴマ化を行う要件および条件は、当技術で周知である。好ましくは、オリゴマ化が、圧力1から200bar、好ましくは、10から50barで実施される。
【0029】
オリゴマ化が、温度10から200℃まで、好ましくは、20から100℃で実施されることも好ましい。
【0030】
1つの実施形態では、方法は、連続的に、半連続的にまたは不連続的に実施される。
【0031】
最後に、平均滞留時間は、10分から20時間まで、好ましくは、1から4時間であってもよい。
【0032】
驚くべきことに、本発明の触媒組成物は、1−オクテンへの選択率および活性が著しく増大したエチレンのオリゴマ化を提供することが見出された。更に、先行技術に基づいて、それぞれの配位子構造がうまく修正され、1−オクテンの選択率を増大することが見出された。好ましい実施形態では、プロセス全体の選択率の制御に影響を与える適切な助触媒および溶媒を用いて、選択率が更に増大され得ることも見出された。
【0033】
次に、本発明の更なる利点および特徴が、下記の実施例の節に示される。
【実施例】
【0034】
配位子に関して、2つの実質的な実施形態があることが見出された。第1の実施形態では、構造RP−N(R)−P(R)−NRを有する配位子が使用される。第2の実施形態では、配位子は、RP−N(R)−P(XR)RまたはRP−N(R)−P(XR(式中、X=OもしくはS)である。第1の実施形態の配位子は、以下に示される様々な合成アプローチによって入手できる。
【0035】
【化2】
【0036】
うまく合成されたこの第1の実施形態の具体的な配位子も、以下に示される。
【0037】
【化3】
【0038】
[PhPN(i−Pr)P(Ph)NRの調製のための一般的な手順]
2mmolの適切な第二級アミンを、1.25mLのBuLi(ヘキサン中1.6M)により、0℃でトルエン中でリチウム化し、室温(r.t.:room temperature)で4時間撹拌した。その後、リチウム化されたアミンの溶液を、0.77g(2mmol)のPhPN(Pr)P(Ph)Clのトルエン中溶液に0℃で移し、r.t.で24時間撹拌した。溶液を濾過し、乾燥するまで蒸発させると、油または固体が残り、これを低温のn−ペンタンで洗浄した。
【0039】
全ての場合において、PhP(Pr)NPClの調製は、クロス R.J.;グリーン,H.T.;キート,R.「J.Chem.Soc.Dalton Trans.」1976、1424〜1428頁に与えられる通り行った。
【0040】
[PhPN(i−Pr)P(Ph)NMe(1)の調製]
0.77g(2mmol)のPhP(Pr)NPClをトルエン中に溶解させ、10mLのジメチルアミン(THF中2M)とトルエンの混合物中に0℃でゆっくりと移した。溶液を12時間(h)室温で撹拌すると、溶液が濁った。全ての揮発性化合物を蒸発させた後、残留物を高温のn−ヘキサン中に溶解させ、濾過した。−40℃で静置する間に、純粋なPhPN(Pr)P(Ph)NMeの白色結晶が溶液から沈殿した(31P−NMR C:48.0;91.0ppmのブロードシグナル)。
【0041】
例えば、下記のさらなる配位子が、この方法を使用して合成された。
PhPN(i−Pr)P(Ph)N(i−Pr)Ph (2)
PhPN(i−Pr)P(Ph)N(Me)C11 (3)
【0042】
[オリゴマ化の実施例]
標準的なエチレンのオリゴマ化が実施された。ディップチューブ、サーモウェル、気体混入スターラ(gas entrainment stirrer)、冷却コイル、温度、圧力およびスターラ速度用制御ユニット(全てデータ取得システムに接続される)を備えた300mlの圧力反応器を、乾燥アルゴンで不活性化した。天秤上のアルミニウム加圧気体シリンダにより、等圧のエチレン供給を維持し、コンピュータ処理したデータ取得システムにより、経時的にエチレンの消費量を監視した。
【0043】
実験を行う前に、反応器を減圧下で100℃まで数時間加熱し、微量の水、酸素および酸化不純物を除去した。
【0044】
触媒調製のために、適切な量の配位子およびクロム前駆体を秤量し、不活性雰囲気下のシュレンク管に入れた。75mlの体積の無水の溶媒を添加して、マグネチックスターラにより溶液を撹拌した。Cr化合物および配位子を溶解させた後、5mlのMMAO−3Aの溶液(ヘプタン中7wt%のAl)を添加した。溶液を直ちに反応器に移し、反応を開始させた。反応は、エチレンの最大取込み量(80g)に達したとき、または設定時間後にエチレン導入バルブを閉め、室温に冷却し、圧力を下げ、反応器を開放することによるいずれかで停止した。
【0045】
液体生成混合物を希釈HClでクエンチし、既知の量のドデカヒドロトリフェニレンを内部標準として用いた、ガスクロマトグラフィを使用して分析した。固体を濾過し、乾燥させて秤量した。
【0046】
触媒性能テストの結果を表1に示す。特に表1は、PNPN(R’)(R”)型の配位子を使用した触媒テストの結果を示し、標準反応条件は、pエチレン=30bar、T=60℃、助触媒=5mLのMMAO−3A(ヘプタン中7wt%のAl、おおよその組成[(CH0.7(iC0.3AlO])、75mLの溶媒、[Cr]=0.034mmol、[配位子]/[Cr]=1.25mol/molとした。
【0047】
【表1】
【0048】
C4、C6、C8およびC10+の列の値は、重量パーセントでのそれぞれの収率である。これらの列の括弧内の値は、C6またはC8画分のそれぞれの選択率(重量パーセント)である。例えば、表1において、配位子1では、C8列は、反応からの生成物が44.0重量パーセントのC8を含有し、このC8画分の99.3重量パーセントが1−オクテンからなることを意味する。
【0049】
結果は、形成された均一触媒系が、好ましい1−ヘキセンおよび1−オクテンへの選択率を示した、C6/C8比率がN末端の置換基の性質により、好ましくは、溶媒により調節できることを示す。
【0050】
第2の実施形態によると、構造(B)による配位子が使用された。
【0051】
特に、下記の構造の配位子が合成された。
【化4】
【化5】
【化6】
【0052】
第2の実施形態のいくつかの配位子の調製の詳細は、次の通りである。
【0053】
[PNP(OR)/PNP(SR)配位子の合成]
(PhPN(Pr)P(Ph)S(Pr)の調製 (A))
0.77g(2mmol)のPhP(Pr)NPClをトルエン中に溶解させ、0.381g(5mmol)の2−プロパンチオール、1mL(7mmol)のトリエチルアミンおよびトルエンの混合物中にr.t.でゆっくりと移した。溶液を24時間、40℃で撹拌すると、溶液が濁った。濾過し、全ての揮発性化合物を蒸発させた後、無色の油が残った。(31P−NMR C:46.4ppm ブロード;91.7ppm d;J=26Hz)
【0054】
(PhPN(Pr)P(Ph)OEtの調製 (B))
0.77g(2mmol)のPhPN(Pr)P(Ph)Cl、1mL(7mmol)のトリエチルアミン、0.233mL(4mmol)のエタノールおよびトルエンの混合物を、50℃で6日間撹拌した。濁った溶液を濾過し、乾燥するまで蒸発させて、無色の油を得た。(31P−NMR CDCl:39.5ppm ブロード;129.7ppm d、J=20.6Hz)
【0055】
(PhPN(Pr)P(Ph)OMeの調製 (C))
0.77g(2mmol)のPhPN(Pr)P(Ph)Cl、1mL(7mmol)のトリエチルアミン、0.162mL(4mmol)のメタノールおよびトルエンの混合物を、50℃で2日間撹拌した。濁った溶液を濾過し、乾燥するまで蒸発させて、無色の油を得た。(31P−NMR CDCl:36.3ppm ブロード;133.3ppm d、J=19.6Hz)
【0056】
PhP(Pr)NPClの調製は、クロス R.J.;グリーン,H.T.;キート,R.「J.Chem.Soc.Dalton Trans.」1976、1424〜1428頁に従って行った。
【0057】
上記の実験手順に従い、触媒のオリゴマ化テストを実施した。
【0058】
触媒性能テストの結果を表2に示す。均一触媒系は、1−ヘキセンおよび1−オクテンへの好ましい選択率を示した。表2では、標準的な反応条件は、pエチレン=30bar、T=60℃、助触媒=5mLのMMAO−3A(ヘプタン中7wt%のAl)、75mLの溶媒、[Cr]=0.034mmol、[配位子]/[Cr]=1.25である。
【0059】
【表2】
【0060】
要約すると、触媒組成物は、(a)クロム化合物、好ましくは、Cr(II)またはCr(III)の有機塩もしくは無機塩、配位錯体、または有機金属錯体であるクロム化合物、より好ましくは、CrCl(THF)、Cr(III)アセチルアセトネート、Cr(III)オクタノエート、クロムヘキサカルボニル、Cr(III)−2−エチルヘキサノエート、(ベンゼン)トリカルボニル−クロム、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せであるクロム化合物と、(b)一般構造
(A)RP−N(R)−P(R)−NRまたは
(B)RP−N(R)−P(XR)RもしくはRP−N(R)−P(XR
(式中、X=OもしくはSであり、R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立して、C〜C10−アルキル、C〜C20−アリール、C〜C10−シクロアルキル、アラルキル、アルキルアリール、もしくはトリアルキルシリルである)の配位子、または(A)および(B)の任意の環状誘導体の配位子であって、PNPN単位またはPNP単位のPまたはN原子の少なくとも1つが、環システムの一部であり、環システムが、構造(A)または(B)の1つ以上の構成化合物から置換により形成される配位子、好ましくは、R、R、R、R、R、R、RおよびRがメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、トリル、もしくはキシリルである、配位子と、(c)活性剤または助触媒であって、好ましくは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアミノキサン(MMAO)、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せである活性剤または助触媒とを含み;より好ましくは、配位子(A)がPhP−N(i−Pr)−P(Ph)−N(i−Pr)Ph、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)−N(Me)C、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)S(i−Pr)、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)OC、PhP−N(i−Pr)P(Ph)OCH、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せであり任意選択で、下記の条件の1つ以上が適用される:触媒組成物が溶媒、好ましくは芳香族炭化水素、直鎖脂肪族炭化水素、環状脂肪族炭化水素、直鎖オレフィン、直鎖エーテル、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せ、より好ましくはトルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、クメン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せ、最も好ましくは、トルエンまたはクロロベンゼンを更に含む;クロム化合物の濃度が、0.01から100mmol/Lまで、好ましくは、0.1から10mmol/Lである;配位子/Crモル比が、0.5から50まで、好ましくは、0.8から2.0である;およびAl/Crモル比が、1:1から1000:1まで、好ましくは、10:1から200:1である。
【0061】
前述の触媒組成物の製造のための方法は、(a)クロム化合物、好ましくは、Cr(II)またはCr(III)の有機塩もしくは無機塩、配位錯体、または有機金属錯体であるクロム化合物、より好ましくは、CrCl(THF)、Cr(III)アセチルアセトネート、Cr(III)オクタノエート、クロムヘキサカルボニル、Cr(III)−2−エチルヘキサノエート、(ベンゼン)トリカルボニル−クロム、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せであるクロム化合物と、(b)一般構造
(A)RP−N(R)−P(R)−NRまたは
(B)RP−N(R)−P(XR)RもしくはRP−N(R)−P(XR
(式中、X=OもしくはSであり、R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立して、C〜C10−アルキル、C〜C20−アリール、C〜C10−シクロアルキル、アラルキル、アルキルアリール、もしくはトリアルキルシリルである)の配位子、あるいは(A)または(B)の任意の環状誘導体の配位子であって、PNPN単位またはPNP単位のPまたはN原子の少なくとも1つが、環システムの一部であり、環システムが、構造(A)または(B)の1つ以上の構成化合物から置換により形成される配位子、好ましくは、R、R、R、R、R、R、RまたはRがメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、トリル、キシリル、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せである、配位子と、(c)活性剤または助触媒であって、好ましくは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアミノキサン(MMAO)、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せである活性剤または助触媒とを混合することを含み;より好ましくは、配位子(A)がPhP−N(i−Pr)−P(Ph)−N(i−Pr)Ph、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)−N(Me)C、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)S(i−Pr)、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)OC、PhP−N(i−Pr)P(Ph)OCH、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せであり;任意選択で、下記の条件の1つ以上が適用される:溶媒、好ましくは芳香族炭化水素、直鎖もしくは環状脂肪族炭化水素、直鎖オレフィン、直鎖エーテル、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せ、より好ましくはトルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、クメン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せ、最も好ましくは、トルエンまたはクロロベンゼンが任意選択で混合される;クロム化合物の濃度が、0.01から100mmol/Lまで、好ましくは、0.1から10mmol/Lである;配位子/Crモル比が、0.5から50まで、好ましくは、0.8から2.0である;およびAl/Crモル比が、1:1から1000:1まで、好ましくは、10:1から200:1である。
【0062】
エチレンの三量体化および/または四量体化のための方法は、触媒組成物をエチレンの気相に反応器中でさらすことと、オリゴマ化を行うこととを含み、触媒組成物が、(a)クロム化合物、好ましくは、Cr(II)またはCr(III)の有機塩もしくは無機塩、配位錯体、または有機金属錯体であるクロム化合物、より好ましくは、CrCl(THF)、Cr(III)アセチルアセトネート、Cr(III)オクタノエート、クロムヘキサカルボニル、Cr(III)−2−エチルヘキサノエート、(ベンゼン)トリカルボニル−クロム、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せであるクロム化合物と、(b)一般構造
(A)RP−N(R)−P(R)−NRまたは
(B)RP−N(R)−P(XR)RもしくはRP−N(R)−P(XR
(式中、X=OもしくはSであり、R、R、R、R、R、R、RおよびRは独立して、C〜C10−アルキル、C〜C20−アリール、C〜C10−シクロアルキル、アラルキル、アルキルアリール、もしくはトリアルキルシリルである)の配位子、または(A)および(B)の任意の環状誘導体の配位子であって、PNPN単位またはPNP単位のPもしくはN原子の少なくとも1つが、環システムの一部であり、環システムが、構造(A)または(B)の1つ以上の構成化合物から置換により形成される配位子、好ましくは、R、R、R、R、R、R、RおよびRがメチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、トリル、キシリル、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せである、配位子と、(c)活性剤または助触媒であって、好ましくは、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアミノキサン(MMAO)、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せである活性剤または助触媒とを含み;より好ましくは、配位子(A)がPhP−N(i−Pr)−P(Ph)−N(i−Pr)Ph、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)−N(Me)C、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)S(i−Pr)、PhP−N(i−Pr)−P(Ph)OC、もしくはPhP−N(i−Pr)P(Ph)OCH、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せであり;任意選択で、下記の条件の1つ以上が適用される:触媒組成物が溶媒、好ましくは芳香族炭化水素、直鎖および環状脂肪族炭化水素、直鎖オレフィン、直鎖エーテル、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せ、より好ましくはトルエン、ベンゼン、エチルベンゼン、クメン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロベンゼン、または前述のうちの少なくとも1つを含む組合せ、最も好ましくは、トルエンまたはクロロベンゼンを更に含む;クロム化合物の濃度が、0.01から100mmol/Lまで、好ましくは、0.1から10mmol/Lである;配位子/Crモル比が、0.5から50まで、好ましくは、0.8から2.0である;およびAl/Crモル比が、1:1から1000:1まで、好ましくは、10:1から200:1である;オリゴマ化が、圧力1から200bar、好ましくは、10から50barで実施される;オリゴマ化が、温度10から200℃まで、好ましくは、20から100℃で実施される;およびオリゴマ化の間の平均滞留時間が、10分から20時間まで、好ましくは、1から4時間である。
【0063】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに単数であることを規定しない限り、複数の指示物を含む。「または」は「および/または」を意味する。同じ成分または特性に向けられる全ての範囲の末端の点は、包含され、独立して組み合わせることができる(例えば、「25wt%以下、または5wt%から20wt%」の範囲は、末端の点、および「5wt%から25wt%」の範囲の全ての中間の値などを包含する)。より広い範囲に加え、より狭い範囲またはより具体的な群の開示は、より広い範囲またはより大きな群の放棄ではない。特に別に定義されない限り、本明細書で使用される技術的および科学的用語は、この発明が属する技術の業者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。「組合せ」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物、およびこれらに類するものを包含する。
【0064】
本明細書で使用するとき、用語「ヒドロカルビル」および「炭化水素」は、広く炭素および水素を含む、任意選択で1から3個のヘテロ原子、例えば、酸素、窒素、ハロゲン、ケイ素、硫黄、またはこれらの組合せを含む置換基を指し;「アルキル」は、直鎖または分枝鎖の飽和した一価の炭化水素基を指し;「アルキレン」は、直鎖または分枝鎖の飽和した二価の炭化水素基を指し;「アルキリデン」は、直鎖または分枝鎖の飽和した二価の炭化水素基であって、両方の原子価が単一の共通の炭素原子にある炭化水素基を指し;「アルケニル」は、直鎖または分枝鎖の一価の炭化水素基であって、少なくとも2個の炭素が炭素−炭素二重結合により結合した炭化水素基を指し;「シクロアルキル」は、非芳香族の一価の単環式または多環式炭化水素基であって、少なくとも3個の炭素原子を有する炭化水素基を指し;「シクロアルケニル」は、非芳香族の環状の二価の炭化水素基であって、少なくとも3個の炭素原子を有し、不飽和度が少なくとも1である炭化水素基を指し;「アリール」は、芳香族の一価の基であって、芳香環に炭素のみを含有する基を指し;「アリーレン」は、芳香族の二価の基であって、芳香環に炭素のみを含有する基を指し;「アルキルアリール」は、上記で定義されたアルキル基で置換されたアリール基を指し、4−メチルフェニルが例示的なアルキルアリール基であり;「アリールアルキル」は、上記で定義されたアリール基で置換されたアルキル基を指し、ベンジルが例示的なアリールアルキル基であり;「アシル」は、上記で定義されたアルキル基であって、示された数の炭素原子がカルボニル炭素ブリッジ(−C(=O)−)を介して結合したアルキル基を指し;「アルコキシ」は、上記で定義されたアルキル基であって、示された数の炭素原子が酸素ブリッジ(−O−)を介して結合したアルキル基を指し;「アリールオキシ」は、上記で定義されたアリール基であって、示された数の炭素原子が酸素ブリッジ(−O−)を介して結合したアリール基を指す。
【0065】
別段の指示がない限り、前述の基のそれぞれは、非置換であってもまたは置換されていてもよいが、ただし置換が、化合物の合成、安定性、または使用に著しく悪影響を与えない場合に限る。本明細書で使用する用語「置換された」は、指定された原子または基の少なくとも1つの水素が、別の基で置き換えられていることを意味するが、ただし指定された原子の通常の原子価を超えない場合に限る。置換基がオキソ(すなわち、=O)である場合、原子上の2個の水素が置き換えられる。置換基および/または変数の組合せは、置換が、化合物の合成または使用に著しく悪影響を与えない場合に限り許される。「置換された」位置に存在し得る例示的な基としては、限定するものではないが、シアノ;ヒドロキシル;ニトロ;アジド;アルカノイル(例えば、C2〜6アルカノイル基、例えば、アシル);カルボキサミド;C1〜6もしくはC1〜3アルキル、シクロアルキル、アルケニル、およびアルキニル(少なくとも1つの不飽和結合および2から8個、もしくは2から6個の炭素原子を有する基を含む);C1〜6もしくはC1〜3アルコキシ;C6〜10アリールオキシ、例えばフェノキシ;C1〜6アルキルチオ;C1〜6もしくはC1〜3アルキルスルフィニル;C1〜6もしくはC1〜3アルキルスルホニル;アミノジ(C1〜6もしくはC1〜3)アルキル;少なくとも1つの芳香環を有するC6〜12アリール(例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、もしくはこれに類するものであって、それぞれの環は置換もしくは非置換の芳香族である);1〜3個の分離した環もしくは縮合環および6から18個の環の炭素原子を有するC7〜19アリールアルキル;または1から3個の分離した環もしくは縮合環および6から18個の環の炭素原子を有するアリールアルコキシ(ベンジルオキシが例示的なアリールアルコキシである)が挙げられる。
【0066】
引用された全ての特許、特許出願、および他の参考文献は、その全体を本願に引用して援用する。しかし、本出願の用語が、援用された参考文献の用語と矛盾または対立する場合、本出願の用語が、援用された参考文献の対立する用語よりも優先する。
【0067】
前述の説明、特許請求の範囲および/または添付の図面で開示された特徴は、別々におよびそれらの任意の組合せで、本発明を多様な形態で理解するための材料であり得る。