(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一壁部及び前記第二壁部が、前記筒本体の周方向全体に形成され、前記供給口に連通する環状通路部を構成する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃焼器用筒体。
前記第一壁部及び前記第二壁部が、筒状に形成されて前記環状通路部と前記筒本体の外側の空間とを連通する筒状通路部を構成する請求項4から請求項8のいずれか一項に記載の燃焼器用筒体。
前記筒状通路部の周方向位置が、前記筒本体のうち前記燃焼ガスの流通方向の上流側の端部において前記筒本体の周方向に複数配列されたバーナの中心の周方向位置に一致する請求項10又は請求項11に記載の燃焼器用筒体。
前記供給口延設部が、前記筒本体の外側の空間のうち、前記第一壁部よりも前記燃焼ガスの流通方向の下流側の第一空間と、前記第二壁部よりも前記燃焼ガスの流通方向の上流側の第二空間と、を相互に連通する連通部を備える請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の燃焼器用筒体。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して、本発明による燃焼器用筒体、燃焼器、ガスタービンを実施するための形態を説明する。しかし、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0036】
〔第一実施形態〕
はじめに、
図1〜6を参照して第一実施形態に係る燃焼器用筒体、燃焼器、ガスタービンについて説明する。
図1に示すように、本実施形態のガスタービンGTは、圧縮機1と、燃焼器2と、タービン3と、を備える。
圧縮機1は、空気を空気取込口から作動流体として取り込んで圧縮空気を生成する。
燃焼器2は、圧縮機1の吐出口に接続されている。燃焼器2は、圧縮機1から吐出された圧縮空気に燃料を噴射して高温・高圧の燃焼ガスを発生させる。
タービン3は、燃焼器2から送り出された燃焼ガスの熱エネルギをロータ4の回転エネルギに変換して駆動力を発生させる。タービン3は、発生させた駆動力をロータ4に連結された発電機Geに伝達する。
【0037】
本実施形態のガスタービンGTには、圧縮機1で圧縮した圧縮空気の一部を抽気し、圧縮空気よりも高い圧力に昇圧する昇圧装置5がさらに設けられている。昇圧装置5は、圧縮空気を圧縮機1から燃焼器2に供給する圧縮空気供給流路6の途中から分岐して圧縮空気の一部を抽気する分岐流路7に設けられ、例えば電動モータMにより駆動される。
昇圧装置5で昇圧された抽気昇圧空気は、昇圧空気流路8を通って燃焼器2に供給され、後述する燃焼器2の尾筒21を冷却する空気(以下、冷却空気と呼ぶ。)として使用される。尾筒21の冷却に使用された後の冷却空気は、戻し流路9を通って圧縮空気供給流路6に戻され、圧縮空気供給流路6を流れる圧縮空気の主流と合流した後、燃焼器2において燃料を燃焼させるための燃焼用空気として再利用される。
【0038】
すなわち、本実施形態のガスタービンGTは、圧縮機1から供給されて燃焼器2において燃焼用空気として使用される圧縮空気の一部を、燃焼器2の尾筒21を冷却する冷却空気として用いた後、この冷却空気を回収して圧縮空気の主流と共に燃焼器2における燃焼用空気として再利用する回収式空気冷却構造(クローズド冷却サイクル構造)を備える。主流(圧縮空気供給流路6)から抽気された圧縮空気の一部は、
図1に示すように、燃焼器2の尾筒21の冷却のみに使用されることに限らず、例えば、燃焼器2の尾筒21の冷却に加えてタービン3の静翼や動翼などの冷却にも使用されてもよい。
【0039】
燃焼器2は、略円筒形状の外観を有し、例えば
図2に示すように、主にガスタービンGTの車室10(ケーシング)内に形成された車室内部空間10Aに配置される。燃焼器2を配した車室内部空間10Aには、圧縮機1において圧縮された圧縮空気が導入されて充満している。燃焼器2は、燃焼器本体11と、燃焼器用筒体12と、を備える。
燃焼器本体11は、供給された燃料と圧縮機1から吐出された圧縮空気とを反応させる燃焼室として機能する。燃焼器用筒体12は、燃焼器本体11から流入した燃焼ガスをタービン3に送る。
【0040】
燃焼器本体11は、円筒状の内筒13と、内筒13内に配されて燃料を噴射するバーナ14と、を備える。
内筒13の一方の開口は、車室内部空間10Aに充満した圧縮空気を内筒13内に導入する上流側の開口である。内筒13の他方の開口は、下流側の開口であり、後述する尾筒21が連結される。
バーナ14には、パイロットバーナ15とメインバーナ16とがある。パイロットバーナ15は、内筒13の中心軸に沿って設けられる。パイロットバーナ15は、外部から供給される燃料を噴射し、燃料を拡散燃焼させる。メインバーナ16は、内筒13内に複数設けられる。複数のメインバーナ16は、パイロットバーナ15を囲むように内筒13の周方向に間隔をあけて配列される。各メインバーナ16は、内筒13の中心軸に平行するように延びている。メインバーナ16は、燃料を噴射し、この燃料と圧縮空気とを予め混合して予混合気を生成した上で、この予混合気を噴射して予混合燃焼させる。
【0041】
燃焼器用筒体12は、
図2〜6に示すように、尾筒(筒本体)21と、第一冷却通路22と、第二冷却通路23と、音響ライナ24と、を備える。
尾筒21は、軸線に沿って延びており、内部に燃焼器本体11から流入した燃焼ガスCgの流速を速めてタービン3に導入する。尾筒21の一方の開口は、前述した燃焼器本体11の内筒13(
図2参照)の下流側の開口に接続される。尾筒21の他方の開口は、タービン3に接続される。尾筒21の内部には、燃焼器本体11から流入した燃焼ガスCgが流れる。
図3〜6では、燃焼ガスCgが尾筒21の内部において紙面の左側(上流側)から右側(下流側)に流れる。尾筒21の外側の空間、すなわち車室内部空間10Aにおいては、圧縮機1から吐出された圧縮空気Caが前述した内筒13の上流側の開口に向かうように、尾筒21内における燃焼ガスCgの流通方向と逆向きに流れる。
【0042】
第一冷却通路22は、尾筒21の壁部内のうち燃焼ガスCgの流通方向の上流側に位置する上流側領域21Aに形成される。第一冷却通路22は、尾筒21の外周面21cに開口する供給口25を有する。これにより、第一冷却通路22は、車室内部空間10Aから供給口25を通じて圧縮空気(流体)Caを第一冷却空気(第一冷却流体)として導入することで、尾筒21の上流側領域21Aを冷却する。
【0043】
本実施形態の第一冷却通路22は、尾筒21の軸線方向に沿って延びている。第一冷却通路22は、尾筒21の周方向に間隔をあけて複数配列されている。
各第一冷却通路22の供給口25は、尾筒21の上流側領域21Aに設けられた音響ライナ24に対して燃焼ガスCgの流通方向の両側に一つずつ設けられている。音響ライナ24よりも燃焼ガスCgの流通方向の下流側に位置する複数の第一冷却通路22の供給口25A(以下、下流側供給口25Aと呼ぶ。)は、尾筒21の周方向に一列に並んでいる。
各第一冷却通路22は、尾筒21の外周面21cに開口して第一冷却空気を尾筒21の外部に排出する排出口26を有する。第一冷却通路22の排出口26は音響ライナ24の内部に開口する。すなわち、第一冷却空気は、尾筒21の上流側領域21Aを冷却した上で音響ライナ24内に排出される。
【0044】
第二冷却通路23は、尾筒21の壁部内のうち尾筒21の上流側領域21Aに対して燃焼ガスCgの流通方向の下流側に連続して位置する下流側領域21Bに形成される。第二冷却通路23は、前述した昇圧装置5(
図1参照)で昇圧された抽気昇圧空気が第二冷却空気(第二冷却流体)として第二冷却通路23に供給されることで、尾筒21の下流側領域21Bを冷却する。第二冷却通路23は、尾筒21の外周面21cのうち下流側供給口25Aよりも下流側において開口して第二冷却空気を車室内部空間10Aに排出する排出口27を有する。
【0045】
本実施形態の第二冷却通路23は、尾筒21の軸線方向に沿って延びている。第二冷却通路23は、尾筒21の周方向に間隔をあけて複数配列されている。
各第二冷却通路23の排出口27は、燃焼ガスCgの流通方向上流側に位置する第二冷却通路23の長手方向の第一端部に設けられている。複数の第二冷却通路23の排出口27は、尾筒21の周方向に一列に並んでいる。
各第二冷却通路23は、尾筒21の外周面21cに開口して第二冷却空気を第二冷却通路23内に導入するための供給口28を有する。第二冷却通路23の供給口28は、第二冷却通路23の長手方向の第二端部に設けられ、タービン3側に位置する尾筒21の下流側端部に位置する。
【0046】
尾筒21の下流側端部の外周面21cには、尾筒21の周方向全体に形成されて、複数の第二冷却通路23の供給口28を一括して覆うと共に、第二冷却通路23の供給口28に連通する導入空間を形成する環状通路部29(マニホールド)が設けられている。環状通路部29は、その導入空間が車室内部空間10Aに連通しないように形成されている。これにより、第二冷却空気(昇圧装置5で昇圧された抽気昇圧空気)は、環状通路部29内を介して、各第二冷却通路23の供給口28から各第二冷却通路23に供給される。
【0047】
第二冷却通路23に供給された第二冷却空気は、尾筒21の下流側領域21Bを冷却した上で車室内部空間10Aに排出される。第二冷却空気は、第二冷却通路23において尾筒21の壁部を冷却することで加熱されるため、第二冷却通路23の排出口27から排出される際には、第二冷却通路23の供給口28における第二冷却空気の温度、及び、車室内部空間10Aに充満する圧縮空気Caの温度よりも高い高温空気(高温流体)となる。車室内部空間10Aに排出された高温空気(第二冷却空気)は、車室内部空間10A内に充満する圧縮空気Caと合流することで、燃焼用空気として再利用される。
【0048】
音響ライナ24は、上流側領域21Aにおける尾筒21の外周に設けられている。音響ライナ24の一部は、尾筒21の壁部によって構成されている。音響ライナ24の内部空間は、尾筒21の壁部を貫通して形成された多数の音響穴24Aを介して尾筒21の内部に連通する。このため、前述した第一冷却通路22は、音響穴24Aと干渉しない位置に設けられる。音響ライナ24は、ガスタービンGTの燃焼振動(燃焼器2内の圧力変動、速度変動、発熱率変動がフィードバックすることで発生する自励振動)を低減する。
上記のように音響ライナ24に音響穴24Aが設けられることで、前述した第一冷却通路22の排出口26から音響ライナ24内に排出された第一冷却空気は、音響穴24Aを介して尾筒21の内部に流出する。
【0049】
前述した燃焼器用筒体12は、
図4〜6に示すように、供給口延設部30を備える。
供給口延設部30は、第一冷却通路22の下流側供給口25Aと第二冷却通路23の排出口27との間において尾筒21の外周面21cから離間する方向に延びる第一壁部31を備える。供給口延設部30は、下流側供給口25Aよりも燃焼ガスCgの流通方向の上流側において尾筒21の外周面21cから離間する方向に延びる第二壁部32をさらに備える。本実施形態では、第二壁部32が第一冷却通路22の下流側供給口25Aと音響ライナ24との間に配される。
【0050】
これら第一壁部31及び第二壁部32の間には、第一冷却空気となる圧縮空気Caを車室内部空間10Aから第一冷却通路22の下流側供給口25Aまで案内する案内通路33が形成される。車室内部空間10Aに対する案内通路33の開口部33Aは、尾筒21の外周面21cから少なくとも尾筒21の径方向外側に離間して位置する。本実施形態では、案内通路33の開口部33Aが、尾筒21の径方向の外側に向いている。すなわち、本実施形態では、第一壁部31及び第二壁部32が尾筒21の径方向外側に延びている。
尾筒21の外周面21cに対する案内通路33の開口部33Aの高さ位置は、特に限定されなくてよいが、例えば
図4のように音響ライナ24よりも低く位置してもよいし、例えば音響ライナ24よりも高く位置してもよい。
【0051】
本実施形態では、第一壁部31及び第二壁部32が、尾筒21の周方向全体に形成され、下流側供給口25Aに連通する環状通路部34を構成している。第一壁部31及び第二壁部32は、筒状に形成されて環状通路部34と車室内部空間10Aとを連通する筒状通路部35も構成している。
【0052】
言い換えれば、環状通路部34及び筒状通路部35のうち下流側供給口25Aよりも燃焼ガスCgの流通方向下流側の部分が第一壁部31によって構成されている。環状通路部34及び筒状通路部35のうち下流側供給口25Aよりも燃焼ガスCgの流通方向上流側の部分が第二壁部32によって構成されている。
これら環状通路部34及び筒状通路部35によって前述した案内通路33が形成されている。車室内部空間10Aに対する筒状通路部35の開口が案内通路33の開口部33Aとなっている。本実施形態の筒状通路部35は、尾筒21の径方向に直線状に延びている。これによって、案内通路33の開口部33Aが尾筒21の径方向外側に向く。
【0053】
本実施形態の供給口延設部30は、車室内部空間10Aのうち、第一壁部31よりも燃焼ガスCgの流通方向下流側の第一空間10A1と、第二壁部32よりも燃焼ガスCgの流通方向上流側の第二空間10A2と、を相互に連通する連通部36を備える。本実施形態では、筒状通路部35が尾筒21の周方向に間隔をあけて複数配列されることで、周方向に隣り合う筒状通路部35の間の隙間が上記した連通部36として機能する。
【0054】
尾筒21の周方向に複数配列された筒状通路部35の周方向位置は、例えば
図5に示すように、尾筒21の周方向に複数配列された下流側供給口25Aの周方向位置に一致してもよいが、例えば下流側供給口25Aの周方向位置に対して尾筒21の周方向にずれて位置してもよい。
各筒状通路部35は、例えば
図5に示すように、一つの下流側供給口25Aと尾筒21の径方向に重なるように設けられてもよいが、例えば複数の下流側供給口25Aと尾筒21の径方向に重なるように設けられてもよい。各筒状通路部35は、例えば下流側供給口25Aと尾筒21の径方向に重ならないように設けられてもよい。
【0055】
各筒状通路部35は、例えば
図5に示すように、尾筒21の径方向外側から見て円形の筒状に形成されてもよいが、例えば正方形の筒状に形成されてもよいし、例えば尾筒21の周方向に延びる楕円形あるいは矩形の筒状に形成されてもよい。
【0056】
本実施形態の供給口延設部30は、尾筒21の外周面21cに支持されている。具体的に説明すれば、供給口延設部30は、例えば溶接、ロー付けなどによって尾筒21の外周面21cに固定されている。
図4〜6においては、供給口延設部30の環状通路部34が、尾筒21の外周面21cに固定されている。
上記した供給口延設部30は、第一冷却通路22の下流側供給口25Aのみに対して設けられることに限らず、例えば第一冷却通路22の両方の供給口25に対して設けられてもよい。
【0057】
以上のように構成される本実施形態の燃焼器用筒体12では、第一冷却通路22の下流側供給口25Aと第二冷却通路23の排出口27との間に供給口延設部30の第一壁部31が設けられる。このため、車室内部空間10Aにおいて圧縮空気Caが尾筒21内における燃焼ガスCgの流通方向と逆向きに流れても、第一壁部31によって、第二冷却通路23の排出口27から排出された高温空気(尾筒21の壁部を冷却することで加熱された第二冷却空気)が、下流側供給口25Aから第一冷却通路22に入り込むことを防止できる。
本実施形態の燃焼器用筒体12において、第一冷却通路22の下流側供給口25Aよりも燃焼ガスCgの流通方向上流側には、供給口延設部30の第二壁部32が設けられている。このため、仮に、第二冷却通路23の排出口27から排出された高温空気(第二冷却空気)が、車室内部空間10Aにおける圧縮空気Caの流れによって、第一冷却通路22の下流側供給口25Aよりも燃焼ガスCgの流通方向上流側に回り込んだとしても、第二壁部32によって下流側供給口25Aに近づくことを防止できる。したがって、高温空気が、下流側供給口25Aよりも燃焼ガスCgの流通方向上流側に回り込んだ後に、下流側供給口25Aから第一冷却通路22に入り込むことも防止できる。
【0058】
本実施形態の燃焼器用筒体12では、第一壁部31及び第二壁部32からなる供給口延設部30が尾筒21の外周面21cから離間した位置において、車室内部空間10Aに開口する。尾筒21の外周面21cから離間した領域には、第二冷却通路23の排出口27から排出された高温空気が届きにくい。このため、尾筒21の外周面21cから離間した領域に存在する上記高温空気よりも低温の圧縮空気Caを第一冷却流体として、第一冷却通路22に導入することが可能となる。
以上のことから、本実施形態の燃焼器用筒体12、これを備える燃焼器2及びガスタービンGTによれば、第二冷却通路23の排出口27から排出された高温空気が第一冷却通路22に入り込むことをより確実に防止して、第一冷却通路22に導入される低温の第一冷却流体によって尾筒21の上流側領域21Aを効率よく冷却することができる。すなわち、燃焼器用筒体12の冷却効率の向上を図ることができる。
【0059】
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、尾筒21の外周面21cから離間して位置する供給口延設部30の案内通路33の開口部33Aが、尾筒21の径方向の外側に向いているため、尾筒21の外周面21cに開口する第二冷却通路23の排出口27から排出された高温空気(第二冷却空気)が、案内通路33に入り込むことを好適に防止できる。
本実施形態の燃焼器用筒体12において、案内通路33の開口部33Aを尾筒21の径方向外側に向ける構造は、簡単に作成可能である。例えば、直線状に延びる環状通路部34や筒状通路部35を作成すること、及び、これら環状通路部34や筒状通路部35が尾筒21の径方向外側に延びるように設置することは容易である。すなわち、供給口延設部30の作成及び設置を容易に行うことができる。したがって、供給口延設部30を備える燃焼器用筒体12を安価に製造できる。
【0060】
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、供給口延設部30が、尾筒21の外周面21c上において環状通路部34及び筒状通路部35を順次連ねることで構成される。筒状通路部35が案内通路33の開口部33Aを構成する。すなわち、筒状通路部35によって、圧縮空気Caを案内通路33内に導入する開口部33Aの領域が限定されるため、第二冷却通路23の排出口27から排出された高温空気(第二冷却空気)が、案内通路33に入り込むことを好適に防止できる。
本実施形態の燃焼器用筒体12において、車室内部空間10Aから筒状通路部35の内部空間に導入された圧縮空気Ca(第一冷却空気)は、環状通路部34の内部空間に導入されることで、尾筒21の周方向全体に行き渡る。このため、筒状通路部35が尾筒21の周方向の一部だけに設けられても、圧縮空気Caを周方向全体に配列された複数の第一冷却通路22に導入することができる。
【0061】
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、供給口延設部30が、車室内部空間10Aのうち、第一壁部31よりも燃焼ガスCgの流通方向下流側の第一空間10A1と、第二壁部32よりも燃焼ガスCgの流通方向上流側の第二空間10A2と、を相互に連通する連通部36を備える。このため、車室内部空間10Aの圧縮空気Caの流れによって、第二冷却通路23の排出口27から排出された高温空気が、車室内部空間10Aの圧縮空気Caの流れに合流して、第一空間10A1から連通部36を通じて第二空間10A2に流れる。これにより、高温空気が径方向外側に流れることを防ぐことができる。したがって、尾筒21の外周面21cから径方向外側に延びる第一壁部31及び第二壁部32の長さを小さく抑えることができる。
本実施形態の燃焼器用筒体12では、供給口延設部30の連通部36が周方向に隣り合う筒状通路部35の間の隙間によって構成される。前述したように直線状に延びる筒状通路部35は簡単に作成できるため、供給口延設部30の連通部36を簡単に構成することが可能である。
【0062】
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、供給口延設部30が溶接によって尾筒21の外周面21cに固定される。このため、供給口延設部30と尾筒21の外周面21cとの間に隙間が生じることを確実に防止できる。したがって、車室内部空間10Aから供給口延設部30の案内通路33に導入された圧縮空気Caが供給口延設部30と尾筒21の外周面21cとの間の隙間から車室内部空間10Aに漏れ出すことを防いで、圧縮空気Caを効率よく第一冷却通路22に導入することが可能となる。
【0063】
〔第二実施形態〕
次に、
図7,8を参照して本発明に係る燃焼器用筒体、燃焼器、ガスタービンの第二実施形態について説明する。第二実施形態において、上記第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0064】
図7,8に示すように、本実施形態の燃焼器2は、第一実施形態と同様の燃焼器本体11(
図2参照)及び燃焼器用筒体12を備える。燃焼器本体11は、第一実施形態と同様の内筒13(
図2参照)と、パイロットバーナ15及びメインバーナ(バーナ)16を有するバーナ14を備える。
パイロットバーナ15及びメインバーナ16は、第一実施形態においても説明したように、内筒13内に配される、すなわち、尾筒21のうち燃焼ガスCgの流通方向の上流側の端部に配される。パイロットバーナ15は内筒13の中心軸に沿って設けられる。複数(
図7においては八つ)のメインバーナ16は、パイロットバーナ15を囲むように内筒13の周方向に配列される。本実施形態では、メインバーナ16が内筒13の周方向に等間隔で配列される。メインバーナ16の数は任意であってよい。
【0065】
本実施形態の燃焼器用筒体12は、第一実施形態と同様の環状通路部34及び複数の筒状通路部35を有する供給口延設部30を備える。
本実施形態では、各筒状通路部35の周方向位置が、メインバーナ16の中心の周方向位置に一致している。その上で、本実施形態では、複数の筒状通路部35が尾筒21の周方向に等間隔に配列されている。
【0066】
本実施形態では、筒状通路部35の数は、
図7のようにメインバーナ16の数に一致しているが、少なくとも複数の筒状通路部35が尾筒21の周方向に等間隔に配列されれば、例えばメインバーナ16の数よりも多くても少なくてもよい。
筒状通路部35の数がメインバーナ16の数よりも少ない場合、筒状通路部35の数は例えばメインバーナ16の数の1/2、1/3、1/4、・・・などに設定されればよい。筒状通路部35の数がメインバーナ16の数よりも多い場合、筒状通路部35の数は例えばメインバーナ16の数の整数倍(2倍、3倍、4倍…)に設定されればよい。この場合、複数の筒状通路部35の一部の周方向位置が、メインバーナ16の中心の周方向位置に一致し、残りの筒状通路部35の周方向位置は、メインバーナ16の中心の周方向位置に対して尾筒21の周方向にずれて位置する。
【0067】
本実施形態の尾筒21では、例えば
図8に示すように、尾筒21の周方向に複数配列された第一冷却通路22の下流側供給口25Aの一部が、メインバーナ16の中心の周方向位置に一致するように配された筒状通路部35の周方向位置と一致するとよい。
【0068】
以上のように構成される本実施形態の燃焼器用筒体12、これを備える燃焼器2及びガスタービンGTによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、尾筒21の上流側領域21A(
図3,4参照)をさらに効率よく冷却することが可能となる。具体的に説明すれば、メインバーナ16による尾筒21の上流側領域21Aの壁部の加熱量は、メインバーナ16の中心の周方向位置に対応する尾筒21の周方向部分において最も大きく、周方向に隣り合うメインバーナ16の間に位置する尾筒21の周方向部分において小さい。ここで、本実施形態の燃焼器用筒体12では、筒状通路部35の周方向位置がメインバーナ16の中心の周方向位置に一致している。このため、筒状通路部35から環状通路部34に導入された第一冷却空気は、最短距離で尾筒21の壁部のうちメインバーナ16によって最も大きく加熱される部分に到達する。すなわち、メインバーナ16によって最も大きく加熱される尾筒21の壁部の部分を効率よく冷却できる。したがって、少量の第一冷却空気によって尾筒21の壁部を効率よく冷却することが可能となる。
【0069】
本実施形態では、複数の筒状通路部35が尾筒21の周方向に等間隔に配列されているため、環状通路部34に導入された第一冷却流体による尾筒21の上流側領域21Aの冷却が、尾筒21の周方向で不均等になることを抑制できる。したがって、燃焼器用筒体12の均一な冷却をより効果的に行うことができる。燃焼器用筒体12の均一な冷却を図ることができることで、燃焼器用筒体12の冷却に要する第一冷却流体の量を削減することが可能となる。
【0070】
〔第三実施形態〕
次に、
図9を参照して本発明に係る燃焼器用筒体、燃焼器、ガスタービンの第三実施形態について説明する。第三実施形態において、第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0071】
図9に示すように、本実施形態の燃焼器用筒体12は、第一実施形態と同様の環状通路部34及び筒状通路部35を有する供給口延設部30を備える。環状通路部34及び筒状通路部35のうち下流側供給口25Aよりも燃焼ガスCgの流通方向下流側の部分は、第一壁部31によって構成されている。環状通路部34及び筒状通路部35のうち下流側供給口25Aよりも燃焼ガスCgの流通方向上流側の部分は、第二壁部32によって構成されている。
【0072】
本実施形態では、供給口延設部30が第一壁部31及び第二壁部32における熱伝導を低減する断熱層37を備える。
図示例では、断熱層37が第一壁部31及び第二壁部32のうち車室内部空間10A側の面に設けられているが、例えば案内通路33側の面に設けられてもよい。この断熱層37は、例えば熱伝導率の小さい溶射材(例えば熱伝導率の小さいセラミックス系材料)を第一壁部31及び第二壁部32の表面(車室内部空間10A側の面や案内通路33側の面)に溶射することで得られる。
断熱層37は、例えば第一壁部31や第二壁部32をそれぞれの厚さ方向に分割して形成し、分割された第一壁部31や第二壁部32の隙間に形成される空気層であってもよい。
【0073】
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、断熱層37によって、第二冷却通路23の排出口27から排出された高温空気の熱が、第一壁部31や第二壁部32を介して供給口延設部30の案内通路33に導入された第一冷却空気に伝わることを抑制できる。すなわち、案内通路33に導入された第一冷却空気が加熱されることを抑制できるため、第一冷却空気によって尾筒21の上流側領域21Aを効率よく冷却することができる。
【0074】
上記した第三実施形態の構成は、前述した第二実施形態の燃焼器用筒体にも適用可能である。
【0075】
〔第四実施形態〕
次に、
図10を参照して本発明に係る燃焼器用筒体、燃焼器、ガスタービンの第四実施形態について説明する。第四実施形態において、第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0076】
図10に示すように、本実施形態の燃焼器用筒体12は、第一実施形態と同様に構成されている。ただし、本実施形態において、燃焼器用筒体12の供給口延設部30は尾筒21の外周面21cに支持されていない。本実施形態の供給口延設部30は、音響ライナ24に支持されている。具体的に説明すれば、供給口延設部30は、支持部38を介して音響ライナ24に固定されている。支持部38は、例えば溶接やロー付けなどによって供給口延設部30及び音響ライナ24に対して接続される。図示例では、支持部38が、環状通路部34に接続されているが、例えば筒状通路部35に接続されてもよい。
支持部38は、例えば音響ライナ24から供給口延設部30まで延びる棒状に形成されてもよい。この場合、支持部38は尾筒21の周方向に複数配列されるとよい。支持部38は、例えば尾筒21の周方向に延びる円弧状あるいは円環状に形成されてもよい。
【0077】
以上のように構成される本実施形態の燃焼器用筒体12、これを備える燃焼器2及びガスタービンGTによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、供給口延設部30が音響ライナ24に支持されるため、供給口延設部30を尾筒21の外周面21cに固定する必要が無くなる。したがって、供給口延設部30を尾筒21に溶接等によって固定する場合と比較して、供給口延設部30の固定に基づく尾筒21の熱応力が増加することを防止できる。
【0078】
上記した第四実施形態の構成は、前述した第二〜第三実施形態の構成にも適用可能である。
【0079】
〔第五実施形態〕
次に、
図11,12を参照して本発明に係る燃焼器用筒体、燃焼器、ガスタービンの第五実施形態について説明する。第五実施形態において、第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0080】
図11,12に示すように、本実施形態の燃焼器用筒体12は、第一実施形態と同様の第一壁部31及び第二壁部32を有する供給口延設部30を備える。第一壁部31及び第二壁部32の間には、第一冷却空気となる圧縮空気Caを車室内部空間10Aから第一冷却通路22の下流側供給口25Aまで案内する案内通路33が形成される。車室内部空間10Aに対する案内通路33の開口部33Aは、尾筒21の外周面21cから離間して位置する。
【0081】
ただし、本実施形態では、案内通路33の開口部33Aが、燃焼ガスCgの流通方向下流側に向くと共に、第二冷却通路23の排出口27よりも燃焼ガスCgの流通方向下流側に位置する。このため、本実施形態の第一壁部31及び第二壁部32は、尾筒21の外周面21cから尾筒21の径方向外側に延びた上で、第二冷却通路23の排出口27よりも燃焼ガスCgの流通方向下流側まで延びるように湾曲している、あるいは、折り曲げられている。これにより、第一壁部31及び第二壁部32のうち燃焼ガスCgの流通方向下流側に延びる部分では、第二壁部32が第一壁部31よりも尾筒21の径方向外側に位置する。
図示例では、燃焼ガスCgの流通方向下流側に延びる第一壁部31の延出方向先端が、第二壁部32の延出方向先端よりも燃焼ガスCgの流通方向下流側に位置するが、少なくとも第二壁部32の延出方向先端よりも燃焼ガスCgの流通方向上流側に位置しなければよい。
【0082】
本実施形態の燃焼器用筒体12では、第一壁部31及び第二壁部32が、第一実施形態と同様の環状通路部34を構成する。第一壁部31及び第二壁部32は、第二実施形態と同様の筒状通路部35も構成している。
ただし、本実施形態では、前述したように案内通路33の開口部33Aが燃焼ガスCgの流通方向下流側に向くため、筒状通路部35は環状通路部34から第二冷却通路23の排出口27よりも燃焼ガスCgの流通方向下流側まで直線状に延びている。本実施形態では、複数の筒状通路部35が尾筒21の周方向に間隔をあけて配列されている。
尾筒21の周方向に複数配列された筒状通路部35の周方向位置は、例えば
図12に示すように、尾筒21の周方向に複数配列された下流側供給口25Aの周方向位置に一致してもよいが、例えば下流側供給口25Aの周方向位置に対して尾筒21の周方向にずれて位置してもよい。
【0083】
以上のように構成される本実施形態の燃焼器用筒体12、これを備える燃焼器2及びガスタービンGTによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、尾筒21の外周面21cから離間して位置する供給口延設部30の案内通路33の開口部33Aが、燃焼ガスCgの流通方向下流側に向くと共に、第二冷却通路23の排出口27よりも燃焼ガスCgの流通方向下流側に位置する。このため、尾筒21の外周面21cに開口する第二冷却通路23の排出口27から排出された高温空気(第二冷却空気)が、案内通路33に入り込むことを好適に防止できる。
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、案内通路33の開口部33Aが燃焼ガスCgの流通方向下流側に向くため、車室内部空間10Aにおいて燃焼ガスCgの流通方向下流側から上流側に流れる圧縮空気Caを効率よく導入することができる。
【0084】
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、第一実施形態のように案内通路33の開口部33Aを尾筒21の径方向外側に向ける場合と比較して、第一壁部31及び第二壁部32のうち尾筒21の外周面21cから尾筒21の径方向外側に延びる部分の長さを短く抑えることが可能となる。
【0085】
上記第五実施形態の構成は、前述した第二〜第四実施形態の構成にも適用可能である。
【0086】
〔第六実施形態〕
次に、
図13〜15を参照して本発明に係る燃焼器用筒体、燃焼器、ガスタービンの第六実施形態について説明する。第六実施形態において、第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0087】
図13〜15に示すように、本実施形態の燃焼器用筒体12は、第一実施形態と同様の第一壁部31及び第二壁部32を有する供給口延設部30を備える。第一壁部31及び第二壁部32の間には、第一冷却空気となる圧縮空気Caを車室内部空間10Aから第一冷却通路22の下流側供給口25Aまで案内する案内通路33が形成される。車室内部空間10Aに対する案内通路33の開口部33Aは、尾筒21の外周面21cから離間して位置する。案内通路33の開口部33Aは尾筒21の径方向の外側に向いており、第一壁部31及び第二壁部32が尾筒21の径方向外側に延びている。
ただし、本実施形態では、第一壁部31及び第二壁部32が、尾筒21の周方向全体に形成され、下流側供給口25Aに連通する環状通路部34のみを構成している。すなわち、本実施形態の燃焼器用筒体12は環状通路部34を備えるが、第一実施形態のような筒状通路部35は備えない。したがって、本実施形態における案内通路33の開口部33Aは、尾筒21の周方向全体に形成される。
【0088】
図13,14に例示する供給口延設部30は、第一実施形態と同様に、車室内部空間10Aのうち、第一壁部31よりも燃焼ガスCgの流通方向下流側の第一空間10A1と、第二壁部32よりも燃焼ガスCgの流通方向上流側の第二空間10A2と、を相互に連通する連通部36Aを備える。
本実施形態の連通部36Aは、第一壁部31と第二壁部32との間に設けられた筒状部材によって構成される。筒状部材の両端は、上記した第一空間10A1及び第二空間10A2に開口する。図示例において、筒状部材は尾筒21の周方向に間隔をあけて複数配列されているが、これに限ることはない。
一方、
図15に例示する供給口延設部30は、連通部36A(
図13,14参照)を備えず、第一壁部31及び第二壁部32のみを有する。
【0089】
以上のように構成される本実施形態の燃焼器用筒体12、これを備える燃焼器2及びガスタービンGTによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、供給口延設部30の第一壁部31及び第二壁部32が環状通路部34のみを構成するため、単純な形状の第一壁部31及び第二壁部32を用いて供給口延設部30を作成することができる。したがって、燃焼器用筒体12を安価に製造できる。
【0090】
上記した第六実施形態の構成は、前述した第三〜第五実施形態の燃焼器用筒体にも適用可能である。
【0091】
〔第七実施形態〕
次に、
図16を参照して本発明に係る燃焼器用筒体、燃焼器、ガスタービンの第七実施形態について説明する。第七実施形態において、第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0092】
図16に示すように、本実施形態の燃焼器用筒体12は、第一実施形態と同様の第一壁部31及び第二壁部32を有する供給口延設部30を備える。第一壁部31及び第二壁部32の間には、第一冷却空気となる圧縮空気Caを車室内部空間10Aから第一冷却通路22の下流側供給口25Aまで案内する案内通路33が形成される。車室内部空間10Aに対する案内通路33の開口部33Aは、尾筒21の外周面21cから離間して位置する。
【0093】
ただし、本実施形態の供給口延設部30は、尾筒21に一体に形成されている。すなわち、第一壁部31及び第二壁部32が尾筒21の外周面から突出するように尾筒21に一体に形成されている。
案内通路33の開口部33Aは、例えば第六実施形態の場合と同様に尾筒21の周方向全体に形成されてもよいし、例えば第一実施形態の筒状通路部35の場合と同様に第一壁部31及び第二壁部32が筒状をなして尾筒21の周方向に複数に分割して形成されてもよい。複数の開口部33Aを形成する場合、供給口延設部30は、例えば複数の第一冷却通路22の下流側供給口25Aに対して一つずつ設けられてもよい。
【0094】
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、供給口延設部30が尾筒21に一体に形成されることで、供給口延設部30を尾筒21に溶接等によって固定する場合と比較して、供給口延設部30の固定に基づく尾筒21の熱応力が増加することを防止できる。
【0095】
上記した第七実施形態の構成は、前述した第二〜第六実施形態の燃焼器用筒体にも適用可能である。
【0096】
〔第八実施形態〕
次に、
図17〜20を参照して本発明に係る燃焼器用筒体、燃焼器、ガスタービンの第八実施形態について説明する。第八実施形態において、上記した実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0097】
図17,18に示すように、本実施形態の燃焼器用筒体12では、
図15に示した第六実施形態の第二例と同様に、第一壁部31及び第二壁部32が、尾筒21の周方向全体に形成され、下流側供給口25Aに連通する環状通路部34のみを構成している。このため、案内通路33の開口部33Aは、尾筒21の周方向全体に形成される。
本実施形態の燃焼器用筒体12は、尾筒21の外側の空間から環状通路部34への圧縮空気Caの流入を阻止する阻止部39を備える。阻止部39は、尾筒21の径方向で互いに相対する位置に一対設けられている。
【0098】
本実施形態において、各阻止部39は、環状通路部34からなる案内通路33の開口部33Aを覆う。各阻止部39は、開口部33A全体を覆うのではなく、開口部33Aのうち尾筒21の周方向の一部を覆っている。すなわち、
図17におけるB−B矢視断面図は、
図15に例示した断面形状となる。尾筒21の周方向に延びる各阻止部39の角度範囲αは、例えば60°から90°までの範囲で設定されるとよい。一対の阻止部39は、互いに同じ大きさに形成されている。
【0099】
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、圧縮空気Caが尾筒21に対してその軸線に交差する方向に流れる場合であっても、圧縮空気Caを効率よく下流側供給口25Aから第一冷却通路22に導入して、尾筒21の上流側領域21Aをより効率的に冷却することが可能となる。以下、詳細に説明する。
【0100】
例えば
図17に示すように、車室内部空間10Aのうち尾筒21の近傍における圧縮空気Caの流れ方向に、尾筒21の軸方向に直交する流れ方向(
図17において下から上に向かう方向)の成分が含まれる場合、圧縮空気Caは尾筒21の外周に沿って周方向に流れる。この際、尾筒21の外周近傍における周方向の流速分布及び静圧分布は、
図19,20に示すグラフのようになる。
図19,20のグラフにおいては、尾筒21のうち圧縮空気Caの流れ方向下流側の周方向位置を基準位置(0°)としており、尾筒21のうち流れ方向上流側の周方向位置が180°となっている。
図19,20のグラフにおいては、尾筒21のうち流れ方向上流側と下流側の中間の周方向位置(中間周方向位置)がそれぞれ90°、−90°となっている。
【0101】
図19,20のグラフによれば、尾筒21の外周近傍における圧縮空気Caの流速は、尾筒21の流れ方向上流側の位置から中間周方向位置に向かうにしたがって速くなり、中間周方向位置から流れ方向下流側の位置に向かうにしたがって遅くなる。これに伴い、尾筒21の外周近傍における圧縮空気Caの静圧は、尾筒21の流れ方向上流側の位置から中間周方向位置に向かうにしたがって低下し、中間周方向位置から流れ方向下流側の位置に向かうにしたがって上昇する。
【0102】
このため、阻止部39を設けない場合には、案内通路33における尾筒21の中間周方向位置およびその近傍における静圧が低いことで、圧縮空気Caは、中間周方向位置やその近傍に位置する下流側供給口25Aから第一冷却通路22に導入され難くなる。
これに対し、
図17のように、阻止部39が尾筒21の中間周方向位置を基準とした位置に配されている場合には、案内通路33における尾筒21の中間周方向位置およびその近傍における静圧の低下を抑えることができる。これにより、中間周方向位置やその近傍に位置する下流側供給口25Aから第一冷却通路22に対して、圧縮空気Caを効率よく導入して、尾筒21の上流側領域21Aをより効率的に冷却することができる。
【0103】
上記した第八実施形態の構成は、第一壁部31及び第二壁部32が少なくとも環状通路部34を構成する燃焼器用筒体に適用可能である。すなわち、第八実施形態の構成は、環状通路部34を有する第一〜第七実施形態の燃焼器用筒体にも適用可能である。
例えば
図4のように第一壁部31及び第二壁部32が環状通路部34及び筒状通路部35を構成する場合、阻止部39は、上記第八実施形態のように案内通路33の開口部33Aに設けられてもよいが、例えば、筒状通路部35の内部や、環状通路部34と筒状通路部35との境界に設けられてもよい。
【0104】
〔第九実施形態〕
次に、
図21を参照して本発明に係る燃焼器用筒体、燃焼器、ガスタービンの第九実施形態について説明する。第九実施形態において、上記した実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0105】
図21に示すように、本実施形態の燃焼器用筒体12は、
図15に示した第六実施形態の第二例や
図17,18に示した第八実施形態と同様に、第一壁部31及び第二壁部32が、尾筒21の周方向全体に形成され、下流側供給口25Aに連通する環状通路部34のみを構成している。このため、案内通路33の開口部33Aは、尾筒21の周方向全体に形成される。
図21におけるD−D矢視断面図は、
図15に例示した断面形状となる。
【0106】
本実施形態の燃焼器用筒体12は、環状通路部34を尾筒21の周方向に区画する仕切部300を備える。本実施形態において、仕切部300は、尾筒21の径方向で互いに相対する位置に一対形成されている。
本実施形態において、各仕切部300は、尾筒21の周方向に間隔をあけて配された複数の仕切板部301によって構成されている。本実施形態では、各仕切部300が二つの仕切板部301によって構成されている。これにより、環状通路部34は、尾筒21の周方向に配列される偶数(図示例では四つ)の分割環状通路部34A,34B,34C,34Dに区画される。各仕切部300における二つの仕切板部301の周方向の間隔、すなわち、二つの仕切板部301の間隔の角度範囲βは、例えば60°から90°までの範囲で設定されるとよい。
【0107】
本実施形態の燃焼器用筒体12によれば、圧縮空気Caが尾筒21に対してその軸線に交差する方向に流れる場合であっても、圧縮空気Caを効率よく下流側供給口25Aから第一冷却通路22に導入して、尾筒21の上流側領域21Aをより効率的に冷却することが可能となる。以下、詳細に説明する。
【0108】
例えば
図21に示すように、車室内部空間10Aのうち尾筒21の近傍における圧縮空気Caの流れ方向に、尾筒21の軸方向に直交する流れ方向(
図21において下から上に向かう方向)の成分が含まれる場合、圧縮空気Caは車室内部空間10Aにおいて尾筒21の外周に沿って周方向に流れる。この際、尾筒21の外周近傍における周方向の流速分布及び静圧分布は、第八実施形態において示した
図19,20のグラフと同様になる。
このため、仕切部300を設けない場合、圧縮空気Caは、尾筒21の中間周方向位置(
図21において90°、−90°となる位置)やその近傍に位置する下流側供給口25Aから第一冷却通路22に導入され難くなる。
【0109】
これに対し、
図21のように、仕切部300が尾筒21の中間周方向位置を基準とした位置に配される場合、各分割環状通路部34A,34B,34C,34Dにおいては、圧縮空気Caの尾筒21の周方向の流れが仕切部300によって妨げられる。このため、各分割環状通路部34A,34B,34C,34Dにおける静圧低下を抑制することができる。特に、中間周方向位置に位置する分割環状通路部34C,34Dにおける静圧低下を抑制できる。したがって、尾筒21の中間周方向位置やその近傍に位置する下流側供給口25Aから第一冷却通路22に対して、圧縮空気Caを効率よく導入して、尾筒21の上流側領域21Aをより効率的に冷却することができる。
【0110】
上記した第九実施形態の構成は、第一壁部31及び第二壁部32が少なくとも環状通路部34を構成する燃焼器用筒体に適用可能である。すなわち、第九実施形態の構成は、環状通路部34を有する第一〜第八実施形態の燃焼器用筒体にも適用可能である。
【0111】
〔第十実施形態〕
次に、本発明に係る燃焼器用筒体、燃焼器、ガスタービンの第十実施形態について説明する。
本実施形態に係る燃焼器用筒体は、
図1〜21に例示した第一〜第九実施形態と同様に、第一壁部31及び第二壁部32が、尾筒21の周方向全体に形成され、下流側供給口25Aに連通する環状通路部34を構成するものである。本実施形態では、環状通路部34のうち尾筒21の周方向に直交する通路断面積は、例えば尾筒21の外周面21cに対する下流側供給口25Aの開口面積の50倍以上である。
【0112】
本実施形態の燃焼器用筒体によれば、環状通路部34の通路断面積を下流側供給口25Aの開口面積の50倍以上とすることで、車室内部空間10Aから環状通路部34に導入された第一冷却空気(圧縮空気Ca)が環状通路部34をその周方向に流れる際の圧力損失を抑制できる。すなわち、第一冷却空気が環状通路部34の周方向に流れても環状通路部34内の静圧が低下することを抑制できるため、環状通路部34内の第一冷却空気を効率よく第一冷却通路22に導入することができる。環状通路部34においてその周方向に圧力差が生じることを抑制できるため、周方向に配列された複数の第一冷却流路に導入される第一冷却空気の流量に差が生じることを抑制できる。
本実施形態の燃焼器用筒体によれば、第一冷却空気が環状通路部34から下流側供給口25Aを通して第一冷却通路22に導入される際の抵抗も小さく抑えることができるため、第一冷却空気をスムーズに第一冷却通路22に導入することができる。
【0113】
〔第十一実施形態〕
次に、
図22,23を参照して本発明に係る燃焼器用筒体、燃焼器、ガスタービンの第十一実施形態について説明する。第十一実施形態において、第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。
【0114】
図22,23に示すように、本実施形態の燃焼器用筒体12Aは、第一実施形態と同様の尾筒21(筒本体)と、第一冷却通路22と、第二冷却通路23と、音響ライナ24と、を備える。ただし、本実施形態の燃焼器用筒体12Aは、第一実施形態の供給口延設部30(
図4,5参照)を備えず、代わりに、案内壁部40A,40Bを備える。
【0115】
案内壁部40A,40Bは、第一冷却通路22の下流側供給口25Aと第二冷却通路23の排出口27との間において、尾筒21の外周面21cから離間する方向に延びて形成されている。本実施形態において、案内壁部40A,40Bは、尾筒21の径方向外側に延びている。案内壁部40A,40Bは、車室内部空間10Aにおいて燃焼ガスCgの流通方向下流側から上流側に向けて流れる圧縮空気Ca(流体)を、下流側供給口25Aに対して尾筒21の周方向に案内すると共に、下流側供給口25Aよりも燃焼ガスCgの流通方向上流側に案内する。
図22,23における符号f1、f2は、それぞれ車室内部空間10Aにおいて圧縮空気Caが案内壁部40A,40Bによって案内される方向を示す。
【0116】
図22に例示する案内壁部40Aは、尾筒21の径方向外側から見て、下流側供給口25Aに対して尾筒21の周方向両側に向かうにしたがって、燃焼ガスCgの流通方向上流側に傾斜するように形成されている。
図22に例示する案内壁部40Aは、尾筒21の径方向外側から見て、下流側供給口25Aを周方向から挟み込むように形成されている。案内壁部40Aは、
図22のように尾筒21の径方向外側から見てU字状(円弧状)に形成されてもよいが、例えばV字状に形成されてもよい。
【0117】
図23に例示する案内壁部40Bは、尾筒21の径方向外側から見て、第一冷却通路22の下流側供給口25Aと第二冷却通路23の排出口27との間において尾筒21の周方向に延びる第一板状壁部41と、第一板状壁部41の延在方向の第一端部41Aから燃焼ガスCgの流通方向上流側に延びる第二板状壁部42と、第一板状壁部41の延在方向の第二端部41Bから燃焼ガスCgの流通方向下流側に延びる第三板状壁部43と、を備える。
【0118】
第一板状壁部41の第一端部41A及び第二端部41Bは、第一冷却通路22の下流側供給口25A及び第二冷却通路23の排出口27に対して、互いに尾筒21の周方向逆側にずれて位置する。第一板状壁部41の第一端部41Aは第二端部41Bに対して燃焼ガスCgの流通方向上流側に位置する。すなわち、第一板状壁部41は、尾筒21の径方向外側から見て、尾筒21の周方向に対して燃焼ガスCgの流通方向に傾斜した方向に延びている。
【0119】
第二板状壁部42は、第一冷却通路22の下流側供給口25Aに対して尾筒21の周方向の一方側に隣り合せて位置する。第二板状壁部42は、下流側供給口25Aよりも燃焼ガスCgの流通方向上流側に延びている。
第三板状壁部43は、第二冷却通路23の排出口27に対して尾筒21の周方向の他方側に隣り合せて位置する。第三板状壁部43は、下流側供給口25Aよりも燃焼ガスCgの流通方向下流側に延びている。
【0120】
以上のように構成される本実施形態の燃焼器用筒体12Aによれば、車室内部空間10Aにおいて圧縮空気Caが尾筒21内における燃焼ガスCgの流通方向と逆向きに流れても、案内壁部40A,40Bによって、第二冷却通路23の排出口27から排出された高温空気が、下流側供給口25Aから第一冷却通路22に入り込むことを防止できる。
【0121】
車室内部空間10Aにおいて燃焼ガスCgの流通方向と逆向きに流れる圧縮空気Caは、案内壁部40A,40Bによって、尾筒21の周方向に案内され、かつ、下流側供給口25Aよりも燃焼ガスCgの流通方向上流側に案内される。このため、高温空気が、車室内部空間10Aにおける圧縮空気Caの流れによって、下流側供給口25Aよりも燃焼ガスCgの流通方向上流側に回り込んでも、案内壁部40A,40Bによって下流側供給口25Aに近づくことを防止できる。したがって、高温空気が、下流側供給口25Aよりも燃焼ガスCgの流通方向上流側に回り込んだ後に下流側供給口25Aから第一冷却通路22に入り込むことも防止できる。
【0122】
以上のことから、本実施形態の燃焼器用筒体12A、これを備える燃焼器2及びガスタービンGTによれば、第二冷却通路23の排出口27から排出された高温空気が第一冷却通路22に入り込むことをより確実に防止して、第一冷却通路22に導入される低温の第一冷却流体によって尾筒21の上流側領域21Aを効率よく冷却することができる。すなわち、燃焼器用筒体12Aの冷却効率の向上を図ることができる。
【0123】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0124】
例えば、第一〜第七実施形態において、供給口延設部30の第一壁部31及び第二壁部32は、例えば
図24,25に示すように、筒状に形成されると共に尾筒21の周方向に間隔をあけて配列され、各下流側供給口25Aに連通する複数の筒状通路部35のみを構成してもよい。すなわち、供給口延設部30は、複数の筒状通路部35を備えるが、環状通路部34を備えなくてもよい。この場合でも、第一実施形態の場合と同様に、周方向に隣り合う筒状通路部35の間の隙間が連通部36として機能する。
【0125】
第一〜第九実施形態において、第一壁部31及び第二壁部32は、例えば尾筒21の外周面21cから尾筒21の径方向外側に向かうにしたがって燃焼ガスCgの流通方向下流側に傾斜する方向に延びてもよい。
【0126】
第一〜第九実施形態において、供給口延設部30は、第一冷却通路22の供給口25に対して設けられずに、第二冷却通路23の排出口27に対して設けられてもよい。この場合には、第二冷却通路23の排出口27から排出された高温空気が、供給口延設部30が尾筒21の外周面21cから離間した位置において車室内部空間10Aに排出される。このため、尾筒21の外周面21cにおいて車室内部空間10Aに直接開口する第一冷却通路22の供給口25に到達し難くなる。すなわち、高温空気が第一冷却通路22に入り込むことを防止できる。
【0127】
第五実施形態において、案内通路33の開口部33Aは、燃焼ガスCgの流通方向下流側以外の方向に向いてもよい。第五実施形態において、開口部33Aは、第二冷却通路23の排出口27よりも燃焼ガスCgの流通方向上流側に位置してもよいし、燃焼ガスCgの流通方向における排出口27の位置と一致するように位置してもよい。
より具体的に説明すれば、例えば、案内通路33の開口部33Aが第二冷却通路23の排出口27よりも燃焼ガスCgの流通方向下流側に位置する場合、開口部33Aは燃焼ガスCgの流通方向下流側以外の任意の方向に向いていてもよい。
例えば、案内通路33の開口部33Aが燃焼ガスCgの流通方向下流側に対して尾筒21の径方向外側に傾けた方向に向く場合、あるいは、尾筒21の径方向外側に向く場合、開口部33Aは、第二冷却通路23の排出口27よりも燃焼ガスCgの流通方向上流側に位置してもよいし、燃焼ガスCgの流通方向における排出口27の位置と一致するように位置してもよい。
これらの場合でも、第五実施形態の場合と同様に、第二冷却通路23の排出口27から排出された高温空気が、案内通路33に入り込むことを好適に防止できる。