(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体の合計モル数の60%以上が、上記非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体と同じ単量体であることを特徴とする請求項1に記載の三層共押出ポリイミドフィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の一形態について、以下に説明する。
【0013】
本発明は、三層共押出でポリアミド酸溶液を支持体上に流延し、非熱可塑性ポリイミド層の両面に熱可塑性ポリイミド層を積層した三層ポリイミドフィルムを製造する方法であって、支持体に直接接しない熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸溶液中には、化学脱水剤及びイミド化触媒を含有させず、支持体に直接接する熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸溶液中には、イミド化触媒を含有せしめ、かつ、非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸溶液中には、化学脱水剤及びイミド化触媒を含有せしめることを特徴とする三層共押出ポリイミドフィルムの製造方法に関する。
【0014】
本発明における非熱可塑性ポリイミドとは、一般に加熱しても軟化、接着性を示さないポリイミドをいう。本発明では、非熱可塑性ポリイミドを単独で製膜して得られたフィルムに対して450℃、1分間加熱を行っても、シワが入ったり伸びたりせず、形状を保持しているポリイミド、若しくは、DSC(示差走査熱量測定)で、実質的にガラス転移温度を有しないポリイミドをいう。
【0015】
また、熱可塑性ポリイミドとは、一般的にDSC(示差走査熱量測定)で、ガラス転移温度を有するポリイミドをいう。本発明における熱可塑性ポリイミドは、前記ガラス転移温度が、150℃〜350℃であるものをいう。
【0016】
三層ポリイミドフィルムの非熱可塑性ポリイミド層に用いる芳香族酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びそれらの誘導体を挙げることが可能であって、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を好ましく用いることができる。
【0017】
中でも、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸二無水物であることが好ましく、製造時の溶媒溶解性の面で、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がさらに好ましい。
【0018】
三層ポリイミドフィルムの非熱可塑性ポリイミド層で用いる芳香族ジアミンは特に制限されないが、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン及びそれらの誘導体などが挙げられ、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を好ましく用いることができる。
【0019】
中でも、非熱可塑性ポリイミドを構成するジアミンとしては、熱可塑性ブロックを形成する面で2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを用いることが好ましく、線膨張係数及び強度の制御の面でp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いることが好ましい。
【0020】
なお、非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸が、分子中に熱可塑性ブロック成分を有するポリアミド酸であることは、非熱可塑性ポリイミドと熱可塑性ポリイミドとの密着性を向上させることができる点で好ましい。
【0021】
三層ポリイミドフィルムの熱可塑性ポリイミド層で用いる芳香族酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びそれらの誘導体を挙げることが可能であり、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を好ましく用いることができる。
【0022】
中でも、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種の酸二無水物であることが好ましく、フレキシブル金属張積層板の銅箔引き剥がし強度を高める面で3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いることが好ましく、フレキシブル金属張積層板の銅箔引き剥がし強度を高めたままで、半田耐熱性の向上とさせる点で、ピロメリット酸二無水物と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を併用することが好ましい。
【0023】
三層ポリイミドフィルムの熱可塑性ポリイミド層で用いる芳香族ジアミンは特に制限されないが、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン及びそれらの誘導体などが挙げられ、これらを単独で、または任意の割合で混合した混合物を好ましく用いることができる。
【0024】
中でも、熱可塑性ポリイミドを構成する2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンは、金属箔張積層板の金属箔の引き剥がし強度を向上させる点で好ましい。
【0025】
三層ポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミド層の両面に熱可塑性ポリイミド層を形成したものであり、両面金属張積層板を製造でき、フレキシブルプリント配線板の軽量化、小型化、高密度化を実現できる点で好ましい。
【0026】
三層ポリイミドフィルムの製造方法としては、三層共押出により、同時に三層ポリアミド酸を支持体に流延して、三層ポリイミドフィルムを製造する。その際、支持体に直接接する熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸溶液中には、イミド化触媒を含有させ、非熱可塑性ポリイミド層には、化学脱水剤及びイミド化触媒を含有させることで、支持体上に直接接するポリアミド酸のイミド化が進行し、自己支持性が発現し、膜強度が高くなり、支持体上への部分的な貼り付きを低減でき、三層ゲルフィルムを引き剥がすことが可能となる。また、イミド化反応が進行すると、ポリアミド酸とポリイミドとの溶媒に対する溶解度の差により、溶剤が染み出し、支持体から、三層ゲルフィルムを容易に剥がせるようになる。このため、支持体に直接接するポリアミド酸溶液中に、化学脱水剤及びイミド化触媒を含有させることが更に好ましい。
【0027】
支持体に接しない熱可塑性ポリイミド層は、支持体に直接接する熱可塑性ポリイミド層及び、非熱可塑性ポリイミド層に含まれる化学脱水剤及びイミド化触媒が、加熱時に通過するため、化学脱水剤及びイミド化触媒を含有させる必要が無く、コストの面で、化学脱水剤及びイミド化触媒を含有させない方が良い。
【0028】
また、支持体に直接接する熱可塑性ポリイミド層と、支持体に接しない熱可塑性ポリイミド層の特性差を小さくするため、支持体に接しない熱可塑性ポリイミド層には、化学脱水剤及びイミド化触媒を含まない方が良い。
【0029】
支持体に直接接する熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸溶液にイミド化触媒を含有させることの有用性について述べる。
【0030】
非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸溶液に含まれる化学脱水剤及びイミド化触媒は、加熱時に、フィルム表面に抜けようとするが、支持体に直接接している熱可塑性ポリイミド層(以下、熱可塑性B面)側は、支持体があるため、抜けるスペースが小さい。それ故に、支持体に接していない熱可塑性ポリイミド層(以下、熱可塑性A面)側から、多く抜けることになる。その際、非熱可塑性ポリイミド層内で未反応であった化学脱水剤とイミド化触媒とにより、熱可塑性B面と比較して熱可塑性A面はイミド化反応が進行しやすく、熱可塑性B面と熱可塑性A面との間にイミド化反応の進行度合いに差が生じる。本発明者は、この差が、三層ポリイミドフィルムにおける熱可塑性A面と熱可塑性B面との間の特性差の原因であると考えており、イミド化反応の進行度合いの差を補うように、熱可塑性B面にイミド化触媒を含ませることが有用となる。
【0031】
熱可塑性B面側の熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸溶液に、イミド化触媒を含有させない場合、熱可塑性A面と熱可塑性B面とにおいて、層の剥れの有無、または、金属箔の引き剥がし強度に差異が生じることがあるが、熱可塑性B面の熱可塑性ポリイミド層のポリアミド酸溶液にイミド化触媒を含有させることで、熱可塑性A面と熱可塑性B面との間の特性の差異は小さくなる。また、イミド化触媒と化学脱水剤を併用することで、より効率良く、熱可塑性A面と熱可塑性B面との間の特性の差異を小さくすることができる。
【0032】
三層ポリイミドフィルムの製造方法としては、三層共押出により、同時に三層ポリアミド酸溶液を三層の薄膜状体として支持体に流延して、支持体上で加熱した後、三層ゲルフィルムを支持体から剥がし、200℃以上の高温で加熱して、三層ポリイミドフィルムを製造する。
【0033】
三層ポリアミド酸溶液は、非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸溶液の層の両面に、熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸溶液の層を形成している。非熱可塑性層を形成するポリアミド酸溶液中に、化学脱水剤及びイミド化触媒を含有しており、熱可塑性A面を形成するポリアミド酸溶液には、化学脱水剤及びイミド化触媒を含んでいないが、熱可塑性B面を形成するポリアミド酸溶液には、イミド化触媒を含有している。熱可塑性B面を形成するポリアミド酸溶液には、イミド化触媒と化学脱水剤とを併用して用いることができる。熱可塑性B面を形成するポリアミド酸溶液に、イミド化触媒を含有させることで、支持体上に直接接するポリアミド酸のイミド化反応が進行し、自己支持性が発現し、膜強度が高くなる。その結果、支持体上への部分的な貼り付きを低減し、支持体上に剥離カスを残すことなく多層ゲルフィルムを引き剥がすことが可能となる。また、イミド化反応が進行すると、ポリアミド酸とポリイミドとの溶媒溶解度の差により、溶剤が染み出し、支持体から、多層ゲルフィルムを容易に剥がせるようになる。このため、熱可塑性B面を形成するポリアミド酸溶液中に、イミド化触媒を含有させることが有用となる。
【0034】
多層共押出で、熱可塑性ポリイミド層のポリアミド酸溶液が支持体上に流延し、当該ポリアミド酸溶液が支持体上で乾燥することによって得られる多層ゲルフィルムは、支持体上の乾燥温度が、熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度よりも低い温度であっても、部分的にポリアミド酸骨格が残っていれば、ガラス転移温度は低下するし、多層ゲルフィルムの残溶媒量によっても、軟化しやすくなる。これにより、支持体上の乾燥だけでは、少なくとも部分的に、支持体から引き剥がすに耐える強度が多層ゲルフィルムに発現しておらず、熱可塑性ポリイミドの多層ゲルフィルムが部分的に支持体に貼り付いたままになることがあった。一方、熱可塑性ポリイミド層のポリアミド酸溶液が、支持体に直接接する場合、熱可塑性ポリイミド層になるポリアミド酸溶液に、イミド化触媒を含有させることで、多層ゲルフィルムに強度を発現させることができ、支持体から引き剥がす際に、多層ゲルフィルムが支持体に貼り付くことを低減できるようになる。また、イミド化触媒に化学脱水剤を併用することで、イミド化反応がより進行しやすくなり、多層ゲルフィルムの強度をより高めることができるようになる。
【0035】
ここで、熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体の合計モル数の60%以上が、非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体と同じ単量体であるとは、熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体の合計モル数(総モル数)を基準にして、当該合計モル数の60%以上が、非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体と同じ単量体であることを意図している。そして、上記数値は、(同種モル数)/(総モル数)の算出式で算出される。
【0036】
熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体とジアミン単量体との合計モル数の60%以上が、非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体と同じ単量体であれば、三層ゲルフィルムの熱可塑性ポリイミド層が支持体に貼り付くことは少なくなる。当該数値は、70%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましい。
【0037】
熱可塑性B面のポリアミド酸溶液には、イミド化触媒が含まれているが、イミド化触媒の含有量は、イミド化触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.05〜2.0モルが好ましく、0.05〜1.0モルがより好ましく、さらには0.1〜0.8モルが特に好ましい。
【0038】
化学脱水剤をイミド化触媒と併用して用いる場合、化学脱水剤の含有量は、化学脱水剤及びイミド化触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.5〜4.5モルが好ましく、1.0〜4.0モルがさらに好ましい。
【0039】
また、非熱可塑性ポリイミド層のポリアミド酸溶液には、化学脱水剤とイミド化触媒とが含まれているが、化学脱水剤の含有量は、化学脱水剤及びイミド化触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.5〜4.5モルが好ましく、1.0〜4.0モルがさらに好ましい。
【0040】
イミド化触媒の含有量は、化学脱水剤及びイミド化触媒を含有せしめる溶液に含まれるポリアミド酸中のアミド酸ユニット1モルに対して、0.05〜2.0モルが好ましく、0.05〜1.0モルがより好ましく、さらには0.1〜0.8モルが特に好ましい。
【0041】
イミド化時間に関しては、実質的にイミド化および乾燥が完結するために十分な時間を取ればよく、一義的に限定されるものではないが、一般的には、化学脱水剤を用いる化学キュア法を採用する場合、1〜600秒程度で適宜設定される。
【0042】
イミド化法には一般に、化学キュア法、熱キュア法があるが、本発明では、化学脱水剤を使用するイミド化法を化学キュア法、化学脱水剤を使用しないイミド化法を熱キュア法として定義する。
【0043】
熱可塑性B面側の熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸溶液が、イミド化触媒を含まない場合、熱可塑性A面と熱可塑性B面とにおいて、層の剥れの有無、または、金属箔の引き剥がし強度に差異が生じることがあるが、前記の差異は、熱可塑性ポリイミド層及び非熱可塑性ポリイミド層の構造、並びに、熱可塑性ポリイミド層の厚みに応じて、異なる。
【0044】
熱可塑性ポリイミドの構造と非熱可塑性ポリイミドの構造とが異なる場合(例えば、熱可塑性ポリイミドを形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体の合計モル数の60%未満が、非熱可塑性ポリイミドを形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体と同じ単量体である場合)、非熱可塑性ポリイミドのゲルフィルムから、熱可塑性ポリイミドのゲルフィルムが剥がれやすくなり、三層ゲルフィルムを支持体から引き剥がす際に、熱可塑性ポリイミドのゲルフィルム(熱可塑性B面側)が部分的に支持体に貼り付いたままになることがあった。これにより、熱可塑性B面に剥れ痕が残り、フレキシブル金属張積層板に加工した際に、熱可塑性B面側の外観不良、又は、銅箔との引き剥がし強度にばらつきが生じることがあった。これは、非熱可塑性ポリイミド層のポリアミド酸のイミド化速度が、熱可塑性ポリイミド層のポリアミド酸のイミド化速度よりも大きいことが影響していると考えられる。しかし、熱可塑性B面のポリアミド酸溶液にイミド化触媒を含有させることで、非熱可塑性ポリイミドのポリアミド酸のイミド化速度と、熱可塑性ポリイミドのポリアミド酸のイミド化速度とが近づき、熱可塑性ポリイミドのゲルフィルムが支持体に貼り付くことが低減する。これにより、熱可塑性A面と熱可塑性B面との間の特性の差を小さくすることができる。
【0045】
熱可塑性ポリイミドの構造と非熱可塑性ポリイミドの構造が類似の場合(例えば、熱可塑性ポリイミドを形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体の合計モル数の60%以上が、非熱可塑性ポリイミドを形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体と同じ単量体である場合)、構造が類似しているために、非熱可塑性ポリイミドのポリアミド酸のイミド化速度と、熱可塑性ポリイミドのポリアミド酸のイミド化速度との差が小さく、熱可塑性ポリイミドの三層ゲルフィルムが支持体に貼り付くことはもともと低減している。
【0046】
しかし、三層ポリイミドフィルムの熱可塑性A面の熱可塑性ポリイミド層と熱可塑性B面の熱可塑性ポリイミド層との厚みが2.5μm以上となった場合、熱可塑性A面と熱可塑性B面とで、金属箔の引き剥がし強度に差異が生じることがあった。これは、熱可塑性A面のポリアミド酸のイミド化反応速度と熱可塑性B面のポリアミド酸のイミド化反応速度との間に差異が生じることと、熱可塑性ポリイミドが非熱可塑性ポリイミドに特性も似てきていることに影響していると考えられる。これは、前記で述べたように、非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸溶液に含まれる化学脱水剤及びイミド化触媒が、熱可塑性A面側から抜けやすく、熱可塑性B面から抜けにくいためであると考えられ、抜け易さの差異を補う形で、熱可塑性B面のポリアミド酸溶液にイミド化触媒を含ませることで、熱可塑性A面と熱可塑性B面との間の特性の差を小さくできるようになる。一方、熱可塑性A面のポリアミド酸溶液にイミド化触媒を含有させると、熱可塑性B面のポリアミド酸溶液のイミド化触媒の効果を小さくしてしまうため、熱可塑性A面のポリアミド酸溶液にはイミド化触媒を含有させない方が良い。
【0047】
ここで、熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体の合計モル数の60%以上が、非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体と同じ単量体であるとは、熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体の合計モル数(総モル数)を基準にして、当該合計モル数の60%以上が、非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体と同じ単量体であることを意図している。そして、上記数値は、(同種モル数)/(総モル数)の算出式で算出される。
【0048】
熱可塑性ポリイミドを形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体とジアミン単量体との合計モル数の60%以上が、非熱可塑性ポリイミドを形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体と同じ単量体であれば、三層ゲルフィルムの熱可塑性ポリイミド層が支持体に貼り付くことは少なくなる。当該数値は、70%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましい。また、比率の上限は、99%以下が好ましく、98%以下がさらに好ましい。
【0049】
イミド化する際にポリイミド層に対してかける張力としては、1kg/m〜15kg/mの範囲内とすることが好ましく、5kg/m〜10kg/mの範囲内とすることが特に好ましい。張力が上記範囲よりも小さい場合、フィルム搬送時にたるみや蛇行が生じ、巻取り時にシワが入ったり、均一に巻き取れない等の問題が生じる可能性がある。逆に上記範囲よりも大きい場合、強い張力がかかった状態で高温加熱されるため、金属張積層板用基材を用いて作製される金属張積層板の寸法特性が悪化することがある。
【0050】
三層ポリイミドフィルムの厚みとしては、7.5μm以上、125μm以下が好ましい。三層ポリイミドフィルム中の非熱可塑性ポリイミド層の少なくとも片面の熱可塑性ポリイミド層の厚みは、1.7μ以上、35μm以下が好ましく、1.7μm以上、10μm以下がさらに好ましく、1.7μm以上、8μm以下が特に好ましい。1.7μm未満であると、金属箔表面の粗度にもよるが、銅箔との密着性が悪くなることがある。また、35μmよりも厚い場合、金属箔張積層板の金属箔をエッチングした後の寸法変化率が、マイナス側に大きくなることがある。
【0051】
以下に、三層共押出により三層ポリイミドフィルムの製造方法について述べる。
【0052】
一般的に用いられる方法について説明すると、三層ダイから押出された前記の溶液を、平滑な支持体上に連続的に押し出し、次いで、前記支持体上の三層の薄膜状体の溶媒の少なくとも一部を揮散せしめることで、自己支持性を有する三層ゲルフィルムを得る。支持体上の三層ポリアミド酸を最高温度100〜200℃で加熱することが好ましい。
【0053】
さらに、当該三層ゲルフィルムを前記支持体上から剥離する。最後に、当該三層ゲルフィルムを高温(250−600℃)で充分に加熱処理することによって、溶媒を実質的に除去すると共にイミド化を完全に進行させ、これによって三層ポリイミドフィルムを得ることができる。支持体から引き剥がした三層ゲルフィルムは、ポリアミド酸からポリイミドへの硬化の中間段階にあり、自己支持性を有し、下記式(1)
(A−B)×100/B・・・・式(1)
式(1)中、A,Bは以下のものを表す。
A:三層膜の重量
B:三層膜を450℃で20分間加熱した後の重量
から算出される揮発分含量は、5〜200重量%の範囲、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは30〜80重量%の範囲にある。この範囲の三層ゲルフィルムを用いることが好適であり、焼成過程でのフィルムの破断、乾燥ムラによるフィルムの色調ムラ、特性ばらつき等の不具合を抑制できる点で好ましい。また、熱可塑性ポリイミド層の熔融流動性を向上させる目的で、意図的にイミド化率を低くする及び/又は溶媒を残留させてもよい。
【0054】
本発明に係る支持体とは、三層ダイから押出された三層液膜を流延するものであって、当該支持体上で三層液膜を加熱乾燥せしめ、三層液膜に対して自己支持性を付与するものである。該支持体の形状は特に問わないが、接着フィルムの生産性を考慮すると、ドラム状若しくはベルト状であることが好ましい。また、該支持体の材質も特に問わず、金属、プラスチック、ガラス、磁器などが挙げられ、好ましくは金属であり、更に好ましくは耐腐食性に優れるSUS材である。また、支持体に対して、Cr、Ni、Snなどの金属メッキをしても良い。
【0055】
上記の三層ダイとしては各種構造のものが使用できるが、例えば複数層のフィルム製造用のTダイス等が使用できる。また、従来既知のあらゆる構造のものを好適に使用可能であるが、特に好適に使用可能なものとして、フィードブロックTダイやマルチマニホールドTダイが例示される。
【0056】
本発明においてポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、ポリアミド酸を溶解する溶媒であればいかなるものも用いることができるが、アミド系溶媒、すなわち、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどを例示することができる。中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドを特に好ましく用いることができる。
【0057】
本発明において非熱可塑性ポリアミド酸の重合にはいかなるモノマーの添加方法を用いても良い。代表的な重合方法として、次のような方法が挙げられる。すなわち、
1)芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物とを重合する方法、
2)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマーを得る。続いて、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物とが実質的に等モルとなるように、芳香族ジアミン化合物を用いて、上記プレポリマーを重合させる方法、
3)芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る。続いてここに芳香族ジアミン化合物を追加添加後、全工程において芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物とが実質的に等モルとなるように、芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて、上記プレポリマーを重合する方法、
4)芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解および/または分散させた後、実質的に等モルとなるように、芳香族ジアミン化合物を用いて、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物とを重合させる方法、
5)実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの混合物を有機極性溶媒中で反応させて、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを重合する方法、
などのような方法である。これらの方法を単独で用いても良いし、部分的に組み合わせて用いることもできる。
【0058】
中でも、非熱可塑性ポリイミド層のポリアミド酸は、下記の工程(a)〜(c)で得られることが好ましい。
(a)芳香族酸二無水物と、これに対し過剰モル量の芳香族ジアミンとを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマーを得る、
(b)続いて、ここに芳香族ジアミンを追加添加する、
(c)更に、全工程における芳香族酸二無水物と芳香族ジアミンとが実質的に等モルとなるように芳香族酸二無水物を添加して、プレポリマーを重合し、ポリアミド酸溶液を得る。
【0059】
前記方法の中でも、(a)で得られたプレポリマーが、熱可塑性ブロック成分となることが好ましい。次に、プレポリマーが熱可塑性ブロック成分であるかの判定方法について述べる。
【0060】
(熱可塑性ブロック成分の判定方法)
プレポリマー製造時に使用した酸二無水物とジアミンとを等モル量に補正して(使用した酸二無水物が複数種である場合、その比率は固定し、また使用したジアミンが複数種である場合も、その比率は固定した。)得られたポリアミド酸溶液を、コンマコーターを用いてアルミ箔上に流延し、130℃×100秒で加熱した後、アルミ箔から自己支持性のゲルフィルムを引き剥がして、金属枠に固定する。その後、300℃×20秒、450℃×1分熱処理した際に、フィルムが軟化したり、溶融したりして、外観が変形している場合、酸二無水物およびジアミンは、熱可塑性ブロック成分を含んでいると判定した。
【0061】
熱可塑性ブロック成分となりうる酸二無水物及びジアミンは特に制限されないが、酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を必須成分として用いることが好ましく、粘弾性と耐熱性のバランスがとれる面で、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物を必須成分として用いることがさらに好ましい。また、ジアミンとしては、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを必須成分として用いることが好ましい。
【0062】
熱可塑性ポリイミドの熱可塑性ポリアミド酸の製造方法は、(a)酸二無水物又はジアミンと、これに対して過剰モル量のジアミン又は酸二無水物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基又は酸無水物を有するプレポリマーを得る工程、(b)続いて、全工程における酸二無水物とジアミンとの比が、決めた比になるように、酸二無水物又はジアミンを添加して、プレポリマーを重合することが好ましい。(b)で、酸二無水物又はジアミンを添加する方法として、粉末を投入する方法、予め酸二無水物を有機極性溶媒に溶解した酸溶液を投入する方法等があるが、反応が均一に進行しやすい面で、酸溶液を投入する方法が好ましい。
【0063】
重合時の固形成分濃度は、10〜30重量%であることが好ましい。固形成分濃度は、重合速度、重合粘度で決めることができる。重合粘度は、熱可塑性ポリイミドのポリアミド酸溶液を、支持体フィルムに塗工する場合、又は非熱可塑性ポリイミドと共押出する場合に合わせて設定することができるが、塗工する場合、例えば、固形成分濃度14重量%において重合粘度は100poise以下であることが好ましい。また、共押出する場合、例えば、固形成分濃度14重量%において重合粘度が100poise〜1200poiseであることが好ましく、150poise〜800poiseは、得られる三層ポリイミドフィルムの膜厚を均一にできるので更に好ましい。前記で説明した芳香族酸二無水物と芳香族ジアミンとは、三層ポリイミドフィルムの特性及び生産性を考慮し、順番を変更して用いることができる。
【0064】
また、摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性等のフィルムの諸特性を改善する目的でフィラーを添加することもできる。フィラーとしては特に制限されないが、好ましい例としてはシリカ、酸化チタン、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などが挙げられる。
【0065】
フィルムの摺動性改善のためにフィラーを添加する場合、フィラーの粒子径は0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μmである。粒子径がこの範囲を下回ると摺動性改善の効果が発現しにくく、この範囲を上回ると高精細な配線パターンを作成し難くなる傾向にある。また、フィラーを添加する場合、フィラーの分散状態も重要であり、20μm以上の平均直径を有するフィラーの凝集物が50個/m
2以下、好ましくは40個/m
2以下にするのが好ましい。20μm以上の平均直径を有するフィラー凝集物がこの範囲よりも多いと、接着剤塗工時に接着剤をはじいたり、高精細配線パターンを作成したときに接着面積の減少をきたしてフレキシブルプリント基板そのものの絶縁信頼性を落とす傾向にある。
【0066】
フィラーの添加は、例えば、
(1)重合前または途中に重合反応液へフィラーを添加する方法
(2)重合完了後、3本ロールなどを用いてフィラーを混錬する方法
(3)フィラーを含む分散液を用意し、これをポリアミド酸有機溶媒溶液に混合する方法
(4)ビーズミル等によりフィラーを分散する方法
などいかなる方法を用いてもよいが、フィラーを含む分散液をポリアミド酸溶液に混合する方法、特に製膜直前に混合する方法が、製造ラインのフィラーによる汚染が最も少なくてすむため、好ましい。
【0067】
フィラーを含む分散液を用意する場合、当該分散液としては、ポリアミド酸の重合溶媒と同じ溶媒を用いるのが好ましい。また、フィラーを良好に分散させ、また分散状態を安定化させるために、分散剤、増粘剤等をフィルム物性に影響を及ぼさない範囲内で用いることもできる。
【0068】
ポリイミドは、ポリイミドの前駆体、即ちポリアミド酸からの脱水転化反応により得られ、当該転化反応を行う方法としては、熱によってのみ行う熱キュア法と、脱水剤を使用する化学キュア法の2法が最も広く知られている。しかしながら、生産性に優れていることから、化学キュア法の採用がより好ましい。熱キュア法と化学キュア法とでは、イミド化触媒を用いることがイミド化反応を早く進行させる面で好ましい。
【0069】
化学脱水剤とは、ポリアミック酸に対する脱水閉環剤であり、その主成分として、脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N’−ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪族酸無水物、アリールスルホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物またはそれら2種以上の混合物を好ましく用いることができる。その中でも特に、脂肪族酸無水物及び芳香族酸無水物が良好に作用する。また、イミド化触媒とは硬化剤のポリアミック酸に対する脱水閉環作用を促進する効果を有する成分であるが、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミンを用いることができる。そのうち、イミダゾ−ル、ベンズイミダゾ−ル、イソキノリン、キノリン、またはβ−ピコリンなどの含窒素複素環化合物であることが好ましい。さらに、脱水剤及びイミド化触媒からなる溶液中に、有機極性溶媒を導入することも適宜選択されうる。
【0070】
三層ポリイミドフィルムの製造方法として、予め製造しておいた非熱可塑性ポリイミドフィルムに、熱可塑性ポリアミド酸溶液を塗布・乾燥した後、200℃以上の高温で加熱して三層ポリイミドフィルムを製造する方法があるが、工程数が多く、生産性の面で、三層共押出で三層ポリイミドフィルムを製造することが好ましい。
【0071】
本発明にかかるフレキシブル金属張積層板の製造方法について説明すると、以下の通りであるが、これに限定されるものでない。
【0072】
本発明にかかるフレキシブル金属張積層板の製造方法は、上記三層ポリイミドフィルムに金属箔(例えば、銅箔)を貼り合わせる工程を含むことが好ましい。フレキシブル金属積層板で用いられる銅箔は、厚みは1〜25μmを用いることができ、圧延銅箔、電解銅箔のどちらを用いても良い。
【0073】
三層ポリイミドフィルムと金属箔とを貼り合わせる方法としては、例えば、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置、またはダブルベルトプレス(DBP)による連続処理を用いることができる。中でも、装置構成が単純であり保守コストの面で有利であるという点から、一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置を用いることが好ましい。
【0074】
ここでいう「一対以上の金属ロールを有する熱ロールラミネート装置」とは、材料を加熱加圧するための金属ロールを有している装置であればよく、その具体的な装置構成は特に限定されるものではない。
【0075】
なお、三層ポリイミドフィルムと金属箔とを熱ラミネートにより貼り合わせる工程を、以下、「熱ラミネート工程」と称する。
【0076】
上記熱ラミネート工程を実施する手段(以下、「熱ラミネート手段」ともいう)の具体的な構成は特に限定されるものではないが、得られる積層板の外観を良好なものとするために、加圧面と金属箔との間に保護材料を配置することが好ましい。
【0077】
上記保護材料としては、熱ラミネート工程の加熱温度に耐えうる材料、例えば、非熱可塑性ポリイミドフィルム等の耐熱性プラスチック、銅箔、アルミニウム箔、SUS箔等の金属箔等が挙げられる。中でも、耐熱性、再使用性等のバランスが優れる点から、非熱可塑性ポリイミドフィルム、もしくは、ガラス転移温度(Tg)がラミネート温度よりも50℃以上高い熱可塑性ポリイミドからなるフィルムが好ましく用いられる。熱可塑性ポリイミドを使用する場合、上記の条件を満たすものを選択することによって、熱可塑性ポリイミドのロールへの付着を防ぐことができる。
【0078】
また、保護材料の厚みが薄いと、ラミネート時の緩衝並びに保護の役目を十分に果たさなくなるため、非熱可塑性ポリイミドフィルムの厚みは75μm以上であることが好ましい。
【0079】
また、この保護材料は、必ずしも1層である必要はなく、異なる特性を有する2層以上の多層構造(例えば、三層構造)でもよい。
【0080】
また、ラミネート温度が高温の場合、保護材料をそのままラミネートに用いると、急激な熱膨張により、得られるフレキシブル金属張積層板の外観や寸法安定性が充分でない場合がある。従って、ラミネート前に、保護材料に予備加熱を施すことが好ましい。このように、保護材料の予備加熱を行った後、ラミネートする場合、保護材料の熱膨張が終了しているため、フレキシブル金属張積層板の外観や寸法特性に影響を与えることが抑制される。
【0081】
予備加熱の手段としては、保護材料を加熱ロールに抱かせるなどして接触させる方法が挙げられる。接触時間としては、1秒間以上が好ましく、3秒間以上がさらに好ましい。接触時間が上記よりも短い場合、保護材料の熱膨張が終了しないままラミネートが行われるため、ラミネート時に保護材料の急激な熱膨張が起こり、得られるフレキシブル金属張積層板の外観や寸法特性が悪化することがある。保護材料を加熱ロールに抱かせる距離については、特に限定されず、加熱ロールの径と上記接触時間とから適宜調整すればよい。
【0082】
上記熱ラミネート手段における被積層材料の加熱方式は、特に限定されるものではなく、例えば、熱循環方式、熱風加熱方式、誘導加熱方式等、所定の温度で加熱しうる従来公知の方式を採用した加熱手段を用いることができる。同様に、上記熱ラミネート手段における被積層材料の加圧方式も、特に限定されるものではなく、例えば、油圧方式、空気圧方式、ギャップ間圧力方式等、所定の圧力を加えることができる従来公知の方式を採用した加圧手段を用いることができる。
【0083】
上記熱ラミネート工程における加熱温度、すなわちラミネート温度は、三層ポリイミドフィルムの熱可塑性ポリイミドのガラス転移温度(Tg)+50℃以上の温度であることが好ましく、Tg+100℃以上がより好ましい。Tg+50℃以上の温度であれば、三層ポリイミドフィルムと金属箔とを良好に熱ラミネートすることができる。また、Tg+100℃以上であれば、ラミネート速度を上昇させて生産性をより向上させることができる。
【0084】
特に、本発明の三層ポリイミドフィルムのコアとして使用しているポリイミドフィルムは、ラミネートを行った場合に、熱応力の緩和が有効に作用するように設計しているため、寸法安定性に優れたフレキシブル金属張積層板が、生産性良く得られる。
【0085】
フレキシブル金属張積層板の加熱ロールへの接触時間は、0.1秒間以上が好ましく、より好ましくは0.2秒間以上、0.5秒間以上が特に好ましい。接触時間が上記範囲より短い場合、緩和効果が十分に発生しない場合がある。接触時間の上限は、5秒間以下が好ましい。5秒間よりも長く接触させても緩和効果が、より大きくなるわけではなく、ラミネート速度の低下やラインの取り回しに制約が生じるため好ましくない。
【0086】
また、ラミネート後に加熱ロールにフレキシブル金属張積層板を接触させて徐冷を行ったとしても、依然としてフレキシブル金属張積層板と室温との差は大きく、また、残留歪みを緩和しきれていない場合もある。そのため、加熱ロールに接触させて徐冷した後のフレキシブル金属張積層板は、保護材料を配したままの状態で、後加熱工程を行うことが好ましい。この際の張力は、1〜10N/cmの範囲とすることが好ましい。また、後加熱の雰囲気温度は(温度−200℃)〜(ラミネート温度+100℃)の範囲とすることが好ましい。
【0087】
ここでいう「雰囲気温度」とは、フレキシブル金属張積層板の両面に密着させている保護材料の外表面温度をいう。実際のフレキシブル金属張積層板の温度は、保護材料の厚みによって多少変化するが、保護材料の表面の温度を上記範囲内にすれば、後加熱の効果を発現させることが可能である。保護材料の外表面温度の測定は、熱電対や温度計などを用いて行うことができる。
【0088】
上記熱ラミネート工程におけるラミネート速度は、0.5m/分以上であることが好ましく、1.0m/分以上であることがより好ましい。0.5m/分以上であれば、十分な熱ラミネートが可能になり、さらに、1.0m/分以上であれば、生産性をより一層向上させることができる。
【0089】
上記熱ラミネート工程における圧力、すなわちラミネート圧力は、高ければ高いほどラミネート温度を低く、かつラミネート速度を速くすることができる利点があるが、一般に、ラミネート圧力が高すぎると、得られる積層板の寸法変化が悪化する傾向がある。逆に、ラミネート圧力が低すぎると、得られる積層板の金属箔の接着強度が低くなる。そのため、ラミネート圧力は、49〜490N/cm(5〜50kgf/cm)の範囲内であることが好ましく、98〜294N/cm(10〜30kgf/cm)の範囲内であることがより好ましい。この範囲内であれば、ラミネート温度、ラミネート速度、およびラミネート圧力の三条件を良好なものにすることができ、生産性をより一層向上することができる。
【0090】
上記ラミネート工程における接着フィルム張力は、0.01〜4N/cmの範囲内であることが好ましく、0.02〜2.5N/cmの範囲内であることがより好ましく、0.05〜1.5N/cmの範囲内であることが特に好ましい。張力が上記範囲を下回ると、ラミネートの搬送時に、たるみや蛇行が生じ、均一に加熱ロールに送り込まれないために、外観の良好なフレキシブル金属張積層板を得ることが困難となることがある。逆に、上記範囲を上回ると、接着層のTgと貯蔵弾性率の制御とでは緩和できないほど張力の影響が強くなり、寸法安定性が劣ることがある。
【0091】
本発明に係るフレキシブル金属張積層板を得るためには、連続的に被積層材料を加熱しながら圧着する熱ラミネート装置を用いることが好ましい。さらに、この熱ラミネート装置では、熱ラミネート手段の前段に、被積層材料を繰り出す被積層材料繰出手段を設けてもよいし、熱ラミネート手段の後段に、被積層材料を巻き取る被積層材料巻取手段を設けてもよい。これらの手段を設けることで、上記熱ラミネート装置の生産性をより一層向上させることができる。
【0092】
上記被積層材料繰出手段および被積層材料巻取手段の具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えば、接着フィルムや金属箔、あるいは得られる積層板を巻き取ることのできる公知のロール状巻取機等を挙げることができる。
【0093】
さらに、保護材料を巻き取ったり繰り出したりする保護材料巻取手段や保護材料繰出手段を設けると、より好ましい。これら保護材料巻取手段・保護材料繰出手段を備えていれば、熱ラミネート工程で、一度使用された保護材料を巻き取って繰り出し側に再度設置することで、保護材料を再使用することができる。
【0094】
また、保護材料を巻き取る際に、保護材料の両端部を揃えるために、端部位置検出手段および巻取位置修正手段を設けてもよい。これによって、精度よく保護材料の端部を揃えて巻き取ることができるので、再使用の効率を高めることができる。なお、これら保護材料巻取手段、保護材料繰出手段、端部位置検出手段および巻取位置修正手段の具体的な構成は特に限定されるものではなく、従来公知の各種装置を用いることができる。
【0095】
フレキシブル金属張積層板の三層ポリイミドフィルムと金属箔の引き剥がし強度は、10N/cm以上が好ましい。
【0096】
本発明は、以下のように構成することも可能である。
【0097】
好ましい実施形態としては、上記支持体に直接接する熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸溶液中に、化学脱水剤及びイミド化触媒を含有せしめることが好ましい。
【0098】
好ましい実施態様としては、上記熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体の合計モル数の60%以上が、上記非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸を構成する酸二無水物単量体及びジアミン単量体と同じ単量体であることが好ましい。
【0099】
好ましい実施態様としては、上記三層ポリイミドフィルムの熱可塑性ポリイミド層の厚みが、2.5μm以上、10μm以下であることが好ましい。
【0100】
好ましい実施形態としては、上記非熱可塑性ポリイミド層を形成するポリアミド酸が、分子中に熱可塑性ブロック成分を有するポリアミド酸であることが好ましい。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、合成例、実施例及び比較例における三層ポリイミドフィルムと金属箔の引き剥がし強度の評価法は次の通りである。
【0102】
(金属張積層板の作製方法)
三層ポリイミドフィルムの両面に厚さが18μmの圧延銅箔(BHY−22B−T;日鉱金属製)、さらにその両側に保護材料(アピカル125NPI;カネカ製)を配して、熱ロールラミネート機を用いて、ラミネート温度380℃、ラミネート圧力294N/cm(30kgf/cm)、ラミネート速度1.0m/分の条件で連続的に熱ラミネートを行い、フレキシブル金属張積層板を作製した。
【0103】
(金属箔の引き剥がし強度)
JIS C6471の「6.5 引きはがし強さ」に従って、サンプルを作製し、3mm幅の金属箔部分を、90度の剥離角度、200mm/分の条件で剥離し、その荷重を測定した。支持体上に直接接する熱可塑性ポリイミド層側をB面、それと反対側をA面とした。
【0104】
(半田耐熱性評価)
フレキシブル金属張積層板から3cm×3cmの試験片を切り出し、常態時と吸湿時との半田耐熱性評価を実施した。常態時は、試験片を23℃/55%RHで24時間調整した後、加温した半田浴を用い、フロートで30秒放置した。その後、半田浴に触れた側の銅箔をエッチングし、膨れが無いか確認した。膨れが無い半田浴の温度を表に記載した。また、吸湿時は、試験片を85℃/85%RHで24時間調整した後、加温した半田浴を用い、フロートで30秒放置した。その後、半田浴に触れた側の銅箔をエッチングし、膨れが無いか確認した。膨れが無い半田浴の温度を表に記載した。
【0105】
以下に、合成例で用いるモノマーの略称を示す。
DMF :N,N−ジメチルホルムアミド
BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
ODA :4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
PDA :p−フェニレンジアミン
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
以下に、ポリアミド酸溶液の合成例を示す。
【0106】
(合成例1)
10℃に冷却したDMF(1173.5g)に、BAPP(57.3g:0.140mol)、ODA(18.6g:0.093mol)、を溶解した。ここに、BTDA(30.0g:0.093mol)、PMDA(25.4g:0.116mol)を添加して、30分間均一に攪拌し、プレポリマーを得た。
【0107】
この溶液にPDA(25.2g:0.233mol)を溶解した後、PMDA(46.9g:0.215mol)を溶解し、別途調製してあったPMDAの7.2重量%DMF溶液を注意深く115.1g(PMDA:0.038mol)添加し、粘度が2500poise程度に達したところで添加を止めた。1時間撹拌を行って、23℃での回転粘度が2600ポイズのポリアミド酸溶液を得た。
【0108】
得られたポリアミド酸溶液を、コンマコーターを用いてアルミ箔上に流延し、130℃×100秒で加熱した後、アルミ箔から自己支持性のゲルフィルムを引き剥がして、金属枠に固定した。その後、300℃×20秒、450℃×1分熱処理した際に、フィルムの外観に変形が無く、当該フィルムを非熱可塑性と判定した。
【0109】
なお、プレポリマーを製造する際に用いた、酸二無水物とジアミンとを等モル量にして合成したポリアミド酸溶液を、コンマコーターを用いてアルミ箔上に流延し、130℃×100秒で加熱した後、アルミ箔から自己支持性のゲルフィルムを引き剥がして、金属枠に固定した。その後、300℃×20秒、450℃×1分熱処理した際に、フィルムが溶融し、外観が変形しており、当該フィルムを熱可塑性ブロック成分と判定した。
【0110】
(合成例2)
10℃に冷却したDMF(1612.5g)に、ODA(147.0g:0.734mol)を溶解した。ここに、PMDA(211.3g:0.969mol)を添加して、30分間均一に攪拌し、プレポリマーを得た。
【0111】
この溶液にPDA(20g:0.185mol)を溶解した後、別途調製してあったPDAの5重量%DMF溶液を注意深く119.3g(PDA:0.055mol)添加し、粘度が2500poise程度に達したところで添加を止めた。1時間撹拌を行って、23℃での回転粘度が2700ポイズのポリアミック酸溶液を得た。
【0112】
得られたポリアミド酸溶液を、コンマコーターを用いてアルミ箔上に流延し、130℃×100秒で加熱した後、アルミ箔から自己支持性のゲルフィルムを引き剥がして、金属枠に固定した。その後、300℃×20秒、450℃×1分熱処理した際に、フィルムの外観に変形が無く、当該フィルムを非熱可塑性と判定した。
【0113】
なお、プレポリマーを製造する際に用いた、酸二無水物とジアミンを等モル量にして合成したポリアミド酸溶液を、コンマコーターを用いてアルミ箔上に流延し、130℃×100秒で加熱した後、アルミ箔から自己支持性のゲルフィルムを引き剥がして、金属枠に固定した。その後、300℃×20秒、450℃×1分熱処理した際に、フィルムの外観に変形が無く、当該フィルムを熱可塑性ブロック成分では無いと判定した。
【0114】
(合成例3)
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)937.6gに、BPDA(85.6g:0.291mol)を添加した後、BAPP(118.6g:0.289mol)を添加し、固形成分濃度約17%で粘度が23℃において800poiseのポリアミド酸溶液を得た。その後、DMFを加え、固形成分濃度14重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0115】
(合成例4)
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)843.4gに、BAPP(118.6g:0.289mol)を溶解した。ここに、BPDA(12.7g:0.043mol)を投入し、50℃に加熱した後、10℃に冷却し、PMDA(48.6g:0.223mol)を添加し、プレポリマーを得た。
【0116】
その後、別途調製してあったPMDAの7重量%DMF溶液65.4g(PMDA:0.021mol)を注意深く添加し、固形成分濃度約17%で粘度が23℃において800poiseのポリアミド酸溶液を得た。その後、DMFを加え、固形成分濃度14重量%のポリアミド酸溶液を得た。
【0117】
(
参考例1)
リップ幅200mmのマルチマニホールド式の3層共押出三層ダイを用い、合成例3で得られたポリアミド酸溶液/合成例1で得られたポリアミド酸溶液/合成例3で得られたポリアミド酸溶液の順の3層構造でアルミ箔上に押出し流延した。次いで、この三層膜を150℃×100秒で加熱した後、自己支持性を有する三層ゲルフィルムを引き剥がして、金属枠に固定し、250℃×40秒、300℃×60秒、350℃×60秒、370℃×30秒で乾燥・イミド化し、熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層の厚みが、2.7μm/12.6μm/2.7μmの三層ポリイミドフィルムを得た。
【0118】
この際、合成例1で得られたポリアミド酸溶液は、三層ダイに投入する直前に、このポリアミック酸溶液100gに対して、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比33.0g/8.3g/58.6g)からなる硬化剤(化学脱水剤およびイミド化触媒)を80g添加し、ミキサーで混合した。
【0119】
また、合成例3で得られたポリアミド酸溶液は、支持体上に直接接する面(B面)のポリアミド酸溶液のみ、三層ダイに投入する直前に、このポリアミック酸溶液100gに対して、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比33.0g/8.3g/58.6g)からなる硬化剤(化学脱水剤およびイミド化触媒)を20g添加し、ミキサーで混合した。
【0120】
支持体に接していない面(A面)のポリアミド酸溶液には、化学脱水剤及びイミド化触媒は添加しなかった。
【0121】
三層ポリイミドフィルムを用い金属張積層板を作製した後、金属箔の引き剥がし強度と半田耐熱性を測定した。結果は表1〜3にまとめた。
【0122】
(比較例1)
合成例3のポリアミド酸溶液(支持体上に直接接する面(B面)のポリアミド酸溶液)に、化学脱水剤及びイミド化触媒を添加しなかったことを除き、
参考例1と同様に実施した。B面の熱可塑性ポリイミド層に、部分的に剥離した痕があった。三層ポリイミドフィルムを用いて金属張積層板を作製した後、金属箔の引き剥がし強度と半田耐熱性を測定した。結果は表1〜3にまとめた。
【0123】
(
参考例2)
リップ幅200mmのマルチマニホールド式の3層共押出三層ダイを用い、合成例4で得られたポリアミド酸溶液/合成例1で得られたポリアミド酸溶液/合成例4で得られたポリアミド酸溶液の順の3層構造でアルミ箔上に押出し流延した。次いで、この三層膜を150℃×100秒で加熱した後、自己支持性を有する三層ゲルフィルムを引き剥がして、金属枠に固定し、250℃×40秒、300℃×60秒、350℃×60秒、370℃×30秒で乾燥・イミド化し、熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層の厚みが、2.7μm/12.6μm/2.7μmの三層ポリイミドフィルムを得た。
【0124】
この際、合成例1で得られたポリアミド酸溶液は、三層ダイに投入する直前に、このポリアミック酸溶液100gに対して、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比33.0g/8.3g/58.6g)からなる硬化剤(化学脱水剤およびイミド化触媒)を80g添加し、ミキサーで混合した。
【0125】
また、合成例4で得られたポリアミド酸溶液は、B面のポリアミド酸溶液のみ、三層ダイに投入する直前に、このポリアミック酸溶液100gに対して、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比33.0g/8.3g/58.6g)からなる硬化剤(化学脱水剤およびイミド化触媒)を20g添加し、ミキサーで混合した。
【0126】
三層ポリイミドフィルムを用いて金属張積層板を作製した後、金属箔の引き剥がし強度と半田耐熱性とを測定した。結果は表1〜3にまとめた。
【0127】
(比較例2)
合成例4のポリアミド酸溶液(支持体上に直接接する面(B面)のポリアミド酸溶液)に、化学脱水剤及びイミド化触媒を添加しなかったことを除き、
参考例2と同様に実施した。三層ポリイミドフィルムを用いて金属張積層板を作製した後、金属箔の引き剥がし強度と半田耐熱性とを測定した。結果は表1〜3にまとめた。B面の熱可塑性ポリイミド層に、剥離した痕は無かったが、A面とB面とで金属箔の引き剥がし強度に差があった。
【0128】
(
参考例3)
熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層の厚みが、4.2μm/16.6μm/4.2μmの三層ポリイミドフィルムを得た以外は、
参考例2と同様に実施した。三層ポリイミドフィルムを用いて金属張積層板を作製した後、金属箔の引き剥がし強度と半田耐熱性とを測定した。結果は表1〜3にまとめた。
【0129】
(比較例3)
合成例4のポリアミド酸溶液(支持体上に直接接する面(B面)のポリアミド酸溶液)に、化学脱水剤及びイミド化触媒を添加しなかったことを除き、
参考例3と同様に実施した。三層ポリイミドフィルムを用い金属張積層板を作製した後、金属箔の引き剥がし強度と半田耐熱性とを測定した。結果は表1〜3にまとめた。B面の熱可塑性ポリイミド層に、剥離した痕は無かったが、A面とB面で金属箔の引き剥がし強度に差があった。
【0130】
(比較例4)
合成例1のポリアミド酸溶液の代わりに、合成例2のポリアミド酸溶液を用い、このポリアミック酸溶液100gに対して、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比33.0g/8.3g/58.6g)からなる硬化剤(化学脱水剤およびイミド化触媒)を80g添加すること以外は、
参考例3と同様に実施した。三層ポリイミドフィルムを用いて金属張積層板を作製した後、金属箔の引き剥がし強度と半田耐熱性とを測定した。結果は表1〜3にまとめた。支持体上に直接接していたB面の熱可塑性ポリイミド層に、剥離した痕は無く、A面とB面とで金属箔の引き剥がし強度にも差が無かったが、引き剥がし強度が低くなった。
【0131】
(比較例5)
リップ幅200mmのマルチマニホールド式の3層共押出三層ダイを用い、合成例4で得られたポリアミド酸溶液/合成例1で得られたポリアミド酸溶液/合成例4で得られたポリアミド酸溶液の順の3層構造でアルミ箔上に押出し流延した。次いで、この三層膜を150℃×100秒で加熱した後、自己支持性を有する三層ゲルフィルムを引き剥がして、金属枠に固定し、250℃×40秒、300℃×60秒、350℃×60秒、370℃×30秒で乾燥・イミド化し、熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層の厚みが、4.2μm/16.6μm/4.2μmの三層ポリイミドフィルムを得た。
【0132】
この際、合成例1で得られたポリアミド酸溶液は、三層ダイに投入する直前に、このポリアミック酸溶液100gに対して、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比33.0g/8.3g/58.6g)からなる硬化剤(化学脱水剤およびイミド化触媒)を80g添加し、ミキサーで混合した。
【0133】
また、合成例4で得られたポリアミド酸溶液は、支持体上に直接接するB面のポリアミド酸溶液には、化学脱水剤及びイミド化触媒を添加せず、A面のポリアミド酸溶液にのみ、三層ダイに投入する直前に、このポリアミック酸溶液100gに対して、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比33.0g/8.3g/58.6g)からなる硬化剤(化学脱水剤およびイミド化触媒)を20g添加し、ミキサーで混合した。
【0134】
三層ポリイミドフィルムを用い金属張積層板を作製した後、金属箔の引き剥がし強度と半田耐熱性とを測定した。結果は表1〜3にまとめた。支持体上に直接接していたB面の熱可塑性ポリイミド層に、剥離した痕は無かったが、A面とB面とで金属箔の引き剥がし強度に差があった。
【0135】
(比較例6)
リップ幅200mmのマルチマニホールド式の3層共押出三層ダイを用い、合成例4で得られたポリアミド酸溶液/合成例1で得られたポリアミド酸溶液/合成例4で得られたポリアミド酸溶液の順の3層構造でアルミ箔上に押出し流延した。次いで、この三層膜を150℃×100秒で加熱した後、自己支持性を有する三層ゲルフィルムを引き剥がして、金属枠に固定し、250℃×40秒、300℃×60秒、350℃×60秒、370℃×30秒で乾燥・イミド化し、熱可塑性ポリイミド層/非熱可塑性ポリイミド層/熱可塑性ポリイミド層の厚みが、4.2μm/16.6μm/4.2μmの三層ポリイミドフィルムを得た。
【0136】
この際、合成例1で得られたポリアミド酸溶液は、三層ダイに投入する直前に、このポリアミック酸溶液100gに対して、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比33.0g/8.3g/58.6g)からなる硬化剤(化学脱水剤およびイミド化触媒)を80g添加し、ミキサーで混合した。
【0137】
また、合成例4で得られたポリアミド酸溶液は、A面とB面との両方のポリアミド酸溶液に、三層ダイに投入する直前に、このポリアミック酸溶液100gに対して、無水酢酸/イソキノリン/DMF(重量比33.0g/8.3g/58.6g)からなる硬化剤(化学脱水剤およびイミド化触媒)を20g添加し、ミキサーで混合した。
【0138】
三層ポリイミドフィルムを用いて金属張積層板を作製した後、金属箔の引き剥がし強度と半田耐熱性とを測定した。結果は表1〜3にまとめた。支持体上に直接接していたB面の熱可塑性ポリイミド層に、剥離した痕は無かったが、A面とB面とで金属箔の引き剥がし強度に差があった。
【0139】
(実施例4)
合成例3のポリアミド酸溶液(支持体上に直接接する面(B面)のポリアミド酸溶液)に、三層ダイに投入する直前に、このポリアミック酸溶液100gに対して、イソキノリン/DMF(重量比8.3g/58.6g)からなる硬化剤(イミド化触媒のみ)を14g添加し、ミキサーで混合したことを除き、
参考例1と同様に実施した。三層ポリイミドフィルムを用いて金属張積層板を作製した後、金属箔の引き剥がし強度と半田耐熱性を測定した。結果は表1〜3にまとめた。
【0140】
(実施例5)
合成例4のポリアミド酸溶液(支持体上に直接接する面(B面)のポリアミド酸溶液)に、三層ダイに投入する直前に、このポリアミック酸溶液100gに対して、イソキノリン/DMF(重量比8.3g/58.6g)からなる硬化剤(イミド化触媒のみ)を14g添加し、ミキサーで混合したことを除き、
参考例3と同様に実施した。三層ポリイミドフィルムを用い金属張積層板を作製した後、金属箔の引き剥がし強度と半田耐熱性とを測定した。結果は表1〜3にまとめた。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】