特許第6175254号(P6175254)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6175254
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】クッションシート
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/15 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
   A47C27/15 A
   A47C27/15 B
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-50877(P2013-50877)
(22)【出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2014-97277(P2014-97277A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-229602(P2012-229602)
(32)【優先日】2012年10月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508103861
【氏名又は名称】辻一株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101823
【弁理士】
【氏名又は名称】大前 要
(74)【代理人】
【識別番号】100117293
【弁理士】
【氏名又は名称】板東 義文
(72)【発明者】
【氏名】辻井 勇人
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−000804(JP,U)
【文献】 特開2000−262358(JP,A)
【文献】 特開平10−243843(JP,A)
【文献】 特開2007−061295(JP,A)
【文献】 特開2000−157370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00−27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
簀子になるクッションシートであって、
樹脂製シートと、
前記樹脂製シートの上に設けられ、特定の機能を持たせた、前記樹脂製シートよりも硬質の機能性シートとを備え、
前記樹脂製シート及び前記機能性シートには、前記シートの幅方向又は長さ方向に引っ張り広げることで簀子穴に可逆的に変形する、これらを厚み方向に貫通する複数個の切り込みが設けられており、
前記簀子穴に変形した時にできる、前記機能性シートの厚み分の空気層は、少なくとも3mmの厚みを有する、クッションシート。
【請求項2】
前記複数個の切り込みは、平面視で、互いに逆方向に向いた2種類の、深皿の断面形状を有している第1及び第2の切り込みを含み、
前記第1の切り込みが、複数個、シートの幅方向及び長さ方向に並んでおり、かつその間を割り込むように、平面視で逆方向を向いた前記第2の切り込みが、複数個、ピッチをずらせて、シートの幅方向及び長さ方向に並んでいる、請求項1に記載のクッションシート。
【請求項3】
前記機能性シートは、吸湿性、消臭性、防ダニ性、吸水性、抗菌防臭性、吸湿発熱性及び吸水速乾性からなる群より選ばれる特定の機能を有する請求項1又は2に記載のクッションシート。
【請求項4】
前記樹脂製シートは、発泡ポリエチレン又はEVAフォームで形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のクッションシート。
【請求項5】
前記樹脂製シートの表面及び/又は裏面に、前記シートの幅方向又は長さ方向に窪みの通路が設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のクッションシート。
【請求項6】
前記樹脂製シートの厚み部分には、前記シートの幅方向又は長さ方向に貫通する貫通路が設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のクッションシート。
【請求項7】
当該クッションシートの端縁の一方に凸部を設け、他方の端縁に凸部を受け入れる凹部を設け、複数個連結され得るようにした、請求項1〜6のいずれか1項に記載のクッションシート。
【請求項8】
前記樹脂製シート及び/又は前記機能性シートには難燃・防炎加工が施されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のクッションシート。
【請求項9】
簀子になるクッションシートであって、
樹脂製シートと、
前記樹脂製シートの上に設けられ、特定の機能を持たせた機能性シートとを備え、
前記樹脂製シート及び前記機能性シートには、前記シートの幅方向又は長さ方向に引っ張り広げることで簀子穴に可逆的に変形する、これらを厚み方向に貫通する複数個の切り込みが設けられており、
前記樹脂性シートの下面に補強材層が設けられ、
前記切り込みは、前記補強材層をも貫通している、クッションシート。
【請求項10】
前記補強材層は、かえしのある針を突き刺して機械的に繊維を結合させたニードルパンチ不織布で形成されている請求項9に記載のクッションシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にクッションシートに関し、より特定的には、断熱性又は通気性を必要とするあらゆる生活シーンの中で、大きく使え、かつコンパクトに収納できるクッションシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、敷布団や敷いた後の床がじっとりするという悩みを解決するために、図12に示すような通気性のよい簀子(すのこ)1を用いて、簀子1の上に敷布団を敷いて寝ていた。簀子1は、太い木の角材2の上に薄い木の板3を直角に打ち付けたもので、空気の通り道となる簀子穴1aがあるため風通しのよいのが特徴である。簀子1を用いると、涼しい寝心地をキープでき、汚れにくく、雑菌、カビが繁殖しにくいので、清潔である。図のような、単純な構造の簀子の他に、桐スタンド式の簀子ベッド、ぐるぐる丸めて立てて収納する桐ロール式の簀子ベッドも提案されている。
【0003】
また、弾性体よりなるシート状素材に設けたスリットを広げることによって貫通孔を形成するようにしたクッション材も開示されている(例えば特許文献1参照)。また、弾性体よりなるシート状素材に設けたスリットを広げることによって貫通孔を形成するようにしたクッション材を被覆材で包み込んで一体化したクッションも開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−226088号公報
【特許文献2】特開2011−000143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
簀子1は確かに、涼しい寝心地をキープできる。しかしながら、従来の簀子ベッドは嵩張るものであり、片付けても場所を取り、部屋が狭くなるという問題点があった。木製の場合、重くなり、片付けにも労力を要し、改良が求められていた。取り扱いによっては、硬いので怪我をするということもあった。また特許文献1に開示のクッション材では、繰り返し伸縮させると、ちぎれたり亀裂が走ったりすることがあり、繰り返し使用することが困難で、耐久性がないという問題点があった。また、特許文献2に開示のクッション材では、もとの形に縮めることができず、片付けるときに場所を取るという問題点があり、また吸湿性などの特定の機能が付与されるものではなかった。
【0006】
このような背景のもと、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、樹脂製シートに機能性シートを重ねて貼り合せ、簀子を形成すると、できた簀子穴は、その上に敷布団が置かれたときには、空気の溜まり場となり、断熱効果が生じること、また、耐久性が増すことを見出し、本発明に到達した。
【0007】
本発明は、従来の簀子の長所を生かしつつ、コンパクトに収納でき、かつ大きく使え、しかも繰り返し使える、機能性のある、伸縮自在、さらに断熱効果のあるクッションシートを提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、寝ている間に布団の除湿を行うことができるクッションシートを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、結露によるカビの発生のない、ダニの発生のない、細菌の発生のない、そして汗などのイヤな臭いが付着しない多機能性を有するクッションシートを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、災害時の防災商品、災害グッズとして使用できるクッションシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るクッションシートは、簀子になるクッションシートであって、樹脂製シートと、該樹脂製シートの上に設けられ特定の機能を持たせた、上記樹脂製シートよりも硬質の機能性シートとを備える。上記樹脂製シート及び上記機能性シートには、上記シートの幅方向又は長さ方向に引っ張り広げることで簀子穴に可逆的に変形する、これらを厚み方向に貫通する複数個の切り込みが設けられている。上記簀子穴に変形した時にできる、上記機能性シートの厚み分の空気層は、少なくとも3mmの厚みを有する。
【0012】
本発明に係るクッションシートによれば、幅方向又は長さ方向に引っ張り広げることで、簀子になる。機能性シートは樹脂製シートより硬質であり、樹脂製シートが柔らかい材料で形成されても、簀子穴は、支えを必要とせず、そのままの形状を保持し、自立する。簀子穴が空気の溜まり場となり断熱効果を有するので、保温性が良い。また元に縮めることができるので、嵩張らずコンパクトになる。
【0013】
上記機能性シートは、吸湿性、消臭性、防ダニ性、吸水性、抗菌防臭性、吸湿発熱性及び吸水速乾性からなる群より選ばれる特定の機能を有するのが好ましい。
【0014】
上記複数個の切り込みは、平面視で、互いに逆方向に向いた2種類の、深皿の断面形状を有している第1及び第2の切り込みを含み、上記第1の切り込みが、複数個、シートの幅方向及び長さ方向に並んでおり、かつその間を割り込むように、平面視で逆方向を向いた上記第2の切り込みが、複数個、ピッチをずらせて、シートの幅方向及び長さ方向に並んでいるのが好ましい。
【0015】
上記簀子穴の形状は、平面視において、互いに対向する山部と谷部とそれらの両端をつなぐ一対の連結部からなり、上記連結部は、平面視において、二等辺三角形の頂角を形成した一対の等辺からなり、押し縮めたり、引っ張り広げることで、上記山部が反対の方向に向き変わり、上記谷部にくっついたり離れたりする。
【0016】
上記吸湿性シートは、ポリアクリル酸ナトリウム塩を主成分とするポリマーを直接紡糸し、繊維形状化させてなる高吸水・高吸湿性繊維が好ましいが、シリカゲルなどを用いることもできる。吸湿性を持たせることにより、このクッションシートの上に敷布団を敷き、就寝すると、汗をかいても、水が吸収され、汗ばんでベトつく感じが無く、快眠が得られる。
【0017】
上記樹脂製シートはポリエチレン、ポリウレタン、酢酸ビニル共重合体(EVA),合成ゴム、スポンジ、ポリプロピレン発泡体、ポリ塩化ビニル、発泡ポリエチレン、EVAフォームなどで形成されるのが好ましい。この中でも、硬質系の発泡ポリエチレン、EVAフォームはより好ましい。簀子穴の形状の維持および後述する断熱効果が高められるためである。樹脂製シートを、発泡ポリウレタンで形成することも可能である。この場合、強度を持たせるために、樹脂を含浸させてもよい。
【0018】
上記切り込みの形状は、幅方向又は長さ方向に引っ張り広げることで、約2倍のサイズになるように選ばれているのが好ましい。このようにすることにより、収納時、半分の体積になり、コンパクトになる。また材料コストからみても、約2倍の大きさにして使えるので、原材料費は2倍の大きさのものの半分となる。廃棄の際にも、廃棄物の量は2倍の大きさのものの半分となる。
【0019】
この発明の好ましい実施態様によれば、上記樹脂製シートの表面及び/又は裏面に、上記シートの幅方向又は長さ方向に窪みの通路が設けられていてもよい。窪みの通路は空気の通り道になり、通気性を生じる。
【0020】
この発明のまた好ましい実施態様によれば、上記樹脂製シートの厚み部分に、上記シートの幅方向又は長さ方向に、貫通路が設けられていてもよい。貫通路は空気の通り道になり、通気性を生じる。
【0021】
当該クッションシートは2個連結されるように構成してもよい。連結部において、一方のクッションシートの端縁には、凸部が設けられ、他方のクッションシートの端縁には、凸部を受け入れる凹部が設けられているのが好ましい。嵌め込みタイプで、当該クッションシートは2個連結できる。また、一方のクッションシートの端縁には、着脱自在のフック又はパイルからなる布製テープが設けられていてもよい、これらにより当該クッションシートを、複数個、幅方向又は長さ方向につなぐことができる。つなぎ合わせることで、さらに大きく使える。
【0022】
この発明のさらに好ましい実施態様によれば、当該クッションシートの端縁の一方に凸部を設け、他方の端縁に凸部を受け入れる凹部を設け、複数個連結され得るようにしている。複数個連結することにより、スペースの自由度ができ、広範囲に使用することができる。
【0023】
上記機能性シートは、帝人製ベルオアシス(登録商標)、東洋紡製モイスファン(登録商標)、B型シリカゲル、エクオス(登録商標)などの吸湿吸水繊維や、その他防ダニ及び消臭、抗菌防臭・吸湿発熱・吸水速乾機能などのすべての機能性素材の使用が可能である。
【0024】
上記樹脂製シート及び/又は上記機能性シートには難燃・防炎加工が施されているのが好ましい。繊維を燃えにくくする方法には、大きく分けて2つの方法がある。1つは、繊維そのものに燃えにくい素材を使うことである。素材自体が難燃・防炎性に優れたものとしてメタ系アラミドなどがあり、化学繊維の場合は、原料樹脂に難燃・防炎剤を練り込んで難燃・防炎素材とすることもできる。もう1つの方法は、綿などの生地に難燃・防炎剤を加えて加工(難燃・防炎後加工)を行うことである。難燃・防炎剤には、リン系難燃・防炎剤、ハロゲン系難燃・防炎剤、金属水酸化物難燃・防炎剤などがある。この中でも、難燃・防炎化綿を混ぜることにより実現するのが好ましい。難燃性、防炎性、断熱性、保湿性、通気性を持たせることにより、災害時の防災商品、災害グッズとして使用することができる。
【0025】
この発明の他の局面に従う簀子になるクッションシートは、樹脂製シートと、上記樹脂製シートの上に設けられ、特定の機能を持たせた機能性シートとを備え、上記樹脂製シート及び上記機能性シートには、上記シートの幅方向又は長さ方向に引っ張り広げることで簀子穴に可逆的に変形する、これらを厚み方向に貫通する複数個の切り込みが設けられている。上記樹脂性シートの下面にもろさを改善するための補強材層が設けられ、上記切り込みは、上記補強材層をも貫通している。補強材層は、ニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布などの不織布、綿布、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アクリルなどの生地などで形成される。この中でも、かえしのある針を突き刺して機械的に繊維を結合させたニードルパンチ不織布が好ましい。

【発明の効果】
【0026】
本発明に係るクッションシートによれば、幅方向又は長さ方向に引っ張り広げることで、簀子になる。簀子穴は、その上に敷布団が置かれたときには、空気の溜まり場となり、断熱性の効果が生じ、保温性が生じる。上記機能性シートを設けることにより、機能の付加に加えて、引っ張り広げたり、押し縮めたりの繰り返し動作に耐える強度を持たせることができる。機能性シートに、吸湿性、防ダニ、吸水、抗菌、防臭、発熱又は速乾性などの特定の機能を持たせることができる。原則洗えるので、衛生的に使用できる。省スペースで大量に保管が可能である。柔軟性があり、破損しにくいので、取り扱いが簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施例1に係るクッションシートの動作を説明する図である。
図2】本発明に係るクッションシートが断熱効果を発揮することを説明する図である。
図3】簀子穴と切り込みの平面視における関係を示す図である。
図4】実施例2に係るクッションシートの斜視図である。
図5】実施例3に係るクッションシートの斜視図である。
図6】実施例4に係る多機能性を有するクッションシートの斜視図である。
図7】実施例5に係るクッションシートの斜視図である。
図8】実施例5の変形例に係るクッションシートの斜視図である。
図9】実施例6に係るクッションシートの斜視図である。
図10】実施例7に係るクッションシートの斜視図である。
図11】実施例8に係るクッションシートを示す斜視図である。
図12】従来の簀子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
断熱性がよく、コンパクトに収納でき、かつ大きく使え、しかも繰り返し使えるクッションシートを得るという目的を、クッションシートを構成する樹脂製シートに機能性シートを重ねて貼り合せ、これらのシートの幅方向又は長さ方向に引っ張り広げることで簀子穴に可逆的に変形する、これらのシートを厚み方向に貫通する複数個の切り込みを設けることによって実現した。以下、この発明の実施例を、図を用いて説明する。なお、図面は、比例尺で描かれていない。同一又は相当する部分には、同一の参照番号を付す。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の実施例1に係るクッションシートの動作を説明する図である。(A)は、引っ張り広げる前のクッションシートの斜視図であり、(B)は、引っ張り広げた後のクッションシートの斜視図であり、いずれも部分拡大図を併記している。
【0030】
これらの図に示すクッションシート4は、敷布団(図示せず)の下に敷くことで、簀子マットを構築できるものである。クッションシート4は、樹脂製シート5と、樹脂製シート5の上にボンドで接着して設けられた機能性シートの一例である吸湿性シート6とを備える。接着は、スプレー糊を用いた手貼り又はシンター加工で行うことができる。樹脂製シート5の素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリウレタン、EVA,合成ゴム、スポンジ、ポリプロピレン発泡体、ポリ塩化ビニル、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン、発泡EVAを使用することができる。樹脂製シート5の厚みは好ましくは3mm〜200mmであり、機能性シートである吸湿性シート6の厚みは好ましくは3mm〜50mmである。
【0031】
樹脂製シート5及び吸湿性シート6には、これらのシートの幅方向又は長さ方向に引っ張り広げることで簀子穴7に可逆的に変形する、平面上に屈曲して延び且つこれらを厚み方向にこれらのシート5,6を貫通する切り込み8が設けられている。切り込み8は可逆的に簀子穴7に変形して、そのまま形を保持し、安定化する。そして、機能性シートである吸湿性シート6が、吸湿性の機能の付加に加えて、引っ張り広げたり、押し縮めたりの繰り返し動作に耐える強度を樹脂製シート5に与えるのである。切り込み8の形状は、引っ張り広げることで、クッションシートが引っ張り方向に2倍のサイズになるように選ばれている。簀子穴7は、敷布団がその上に敷かれたとき、空気の溜まり場となり、断熱効果を与える。
【0032】
本発明において断熱効果が生じた理由を考察すると、図2を参照して、本発明に係るクッションシート4では、機能性シート6を樹脂製シート5の上に重ねて貼り付けているのが特徴である。クッションシート4を幅方向又は長さ方向に引っ張り広げて、切り込みを簀子穴7に変形させて、敷布団14をその上に敷き、人15がその上に横たわる場合を考える。簀子穴7は空気の溜まり場であり、機能性シート6の厚み分の空気層と樹脂製シート5の厚み分の空気層とからなる。樹脂製シート5が柔らかい場合、樹脂製シート5の厚み分の空気層は圧縮されると押し潰される場合がある。機能性シート6は樹脂製シート5に比べて硬質であるので、樹脂製シート5の厚み分の空気層が人15の体重により厚み方向に潰れても、機能性シート6の厚み分の空気層は人15の体重程度では潰れずに残る。空気層は熱伝導率が低い(空気の熱伝導率(W/m・K)は室温付近で0.0241、ちなみに鉄は84、木材は0.15〜0.25、ポリエチレンは0.41である)ので、断熱効果を強く発揮する。本発明に係るクッションシートは上記空気層の存在により大きな断熱効果を有するのであると考えている。なお、樹脂製シート5が、発泡ポリエチレン又はEVAフォームのような硬質の材料で形成された場合には、その厚み分の空気層は、人15の体重程度では潰れずに残る。
【0033】
機能性シート6の好ましい厚みは3mm〜50mmである。鉄筋コンクリートのマンション、体育館などの床の上に直接敷布団を敷いて寝ると体温が取られて底冷えするが、床の上に本発明に係るクッションシートを介在させて敷布団を敷くと、断熱効果を発揮し、温かい。災害時の防災商品、災害グッズとして使用することができる。
【0034】
なお、上記樹脂製シート及び機能性シートには難燃・防炎加工を施してもよい。これにより官需に対応することができる。
【0035】
複数個の切り込み8は、平面視で、互いに逆方向に向いた2種類の、あたかも深皿の断面形状の如き平面視形状を有している第1及び第2の切り込み8p、8qを含む。その並び方について説明すると、第1の切り込み8pが、複数個、シートの幅方向及び長さ方向に並んでいる。その間を割り込むように、平面視で逆方向を向いた第2の切り込み8qが、複数個、ピッチをずらせて、シートの幅方向及び長さ方向に並んでいる。
【0036】
本発明に係るクッションシート4は、引っ張り広げることで、簀子になる。簀子穴7は、空気の溜まり場となり、断熱効果が生じ、保温性を高める。また、幅方向又は長さ方向に押し縮めることにより、簀子穴7は元の切り込み8の形状に戻る。このように、本発明に係るクッションシート4は、引っ張り広げたり、また元に縮めることができるので、大きく使用できるし、また、コンパクトに収納できる。そして、上記機能性シートが、上記の機能の付加に加えて、引っ張り広げたり、押し縮めたりの繰り返し動作に耐える強度を与える。
【0037】
吸湿性シート6は、ポリアクリル酸ナトリウム塩を主成分とするポリマーを直接紡糸し、繊維形状化させてなる高吸水・高吸湿性繊維であるベルオアシス(登録商標)(帝人株式会社製)で形成されている。ベルオアシス(登録商標)で形成された吸湿性シート6は、木綿の約7倍、B型シリカゲルの約2倍の吸湿能力を有する。大きな表面積により素早く吸水し、圧力を加えても容易に水分を逃がさない。難燃・防炎性でもあり、安心できる。アンモニアに対する消臭性が強く、天日干しに繰り返し使用が可能である。軽くてソフト、しなやかな風合いを有する。高吸水・高吸湿性繊維として、モイスファイン(登録商標)(東洋紡製)、ペアクール(登録商標)(旭化成製)も使用することができる。吸湿性シート6は、シリカゲルで形成されてもよい。
【0038】
実施例1に係るクッションシート4によれば、吸湿性シート6を備えるので、この上に敷布団を敷いて寝ると、布団の除湿を寝ている間に行うことができる。また、敷布団の幅方向又は長さ方向に引っ張り広げることで、簀子になるので、断熱効果が生じる。引っ張り広げることで、大きく使える。また逆方向に押し縮めることにより、元の切り込み形状に戻すことができるので、コンパクトに収納できる。
【0039】
図3(A)(B)は、切り込み8が、当該シートの幅方向又は長さ方向に引っ張り広げられることで、簀子穴7に可逆的に変形して安定化する動作を説明する図である。図3(B)とその分解図である図3(D)に示すように、切り込み8は、平面視で縁に壁のある深皿の断面形状をしており、引っ張り広げられる方向に切り込まれた一対の切り込み端部8a,8aと、該一対の切り込み端部8a,8aの後端同士を結ぶように切り込まれた切り込み連結部8bからなる。切り込み連結部8bは、平面視で、中央が窪んでいる。簀子穴7の形状は、図3(A)とその分解図である図3(C)に示すように、平面視において、互いに対向する山部7aと谷部7bと、それらの両端をつなぐ一対の連結部7cからなる。一対の連結部7cは、それぞれ二等辺三角形の頂角を形成した一対の等辺からなる。
【0040】
図3(A)と(B)に示すように、簀子穴7が元の切り込み8に戻る時、連結部7cの一対の等辺のそれぞれの辺がくっつき、そして、山部7aが反対の方向に反転して向きを変え、谷部7bとくっつく。逆に、引っ張り広げると、切り込み8の山部になる部分が反転して、山部7aになる。図3(A)における山部7aの形状と、図3(B)におけるその反転形状はいずれも安定な状態となっている。
【0041】
本実施例では、機能性シートの一例として吸湿性シートを例示したが、他に消臭性、防ダニ性、吸水性、抗菌防臭性、吸湿発熱性及び吸水速乾性などの全ての機能性素材の使用が可能である。
【実施例2】
【0042】
図4(A)は、実施例2に係るクッションシートの斜視図である。実施例2に係るクッションシートは、実施例1に係るクッションシートが2個連結されてなる。連結部において、一方のクッションシートの端縁には、凸部4aが設けられ、他方のクッションシートの端縁には、凸部4aを受け入れる凹部4bが設けられている。凸部4aと凹部4bの嵌め込みで2つのクッションシートが連結される。例えば約45cmのクッションシートが2個連結されて、図4(B)に示すように、引っ張り広げることで、約200cmの簀子ができる。コンパクトに収納でき、かつ広く使える。
【実施例3】
【0043】
図5は、実施例3に係るクッションシートの分解斜視図である。実施例3に係るクッションシートは、実施例1に係る樹脂製シート5及び吸湿性シート6を備えるクッションシート4を、幅方向又は長さ方向に引っ張り広げてなるものである。引っ張り広げてなるクッションシート4の切り込み8の断面が現われる2つの側面に、側面保護部材9aが設けられている。側面保護部材9aは、機械的強度を弱くしている切り込み8の端を隠し、クッションシート4の強度を上げる働きをする。側面保護部材9aは、樹脂製シート、不織布、生地又は特定の機能を持たせた機能性素材層で形成するのが好ましい。
【実施例4】
【0044】
図6は、実施例4に係るクッションシートの分解斜視図である。この図は概念を分かり易く描いたもので、比例尺では描かれていない。実施例4に係るクッションシートは、実施例3に係る側面保護部材9aを備えるクッションシート4の表面及び裏面に、不織布、生地又は特定の機能を持たせた機能性素材層からなる縮み防止部材9bを設けたものである。縮み防止部材9bは、幅方向又は長さ方向にクッションシート4が縮み、引っ張り広げる前の元の形状に戻るのを防止するためのものである。縮み防止部材9bには、厚み部分を貫通する貫通孔10が設けられている。貫通孔10は、空気の溜まり場となり、断熱効果を生じる。縮み防止部材9bの厚みは3mm〜200mmである。
【0045】
なお、実施例4では、表面と裏面の双方に縮み防止部材9bを設けた場合を例示したが、この発明はこれに限られるものでなく、いずれか一方だけでもよい。
【0046】
上記不織布は、ニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布を含む全ての不織布を含む。上記生地は、綿布、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アクリルの全ての生地を含む。上記機能性素材層は、帝人製ベルオアシス(登録商標)、東洋紡製モイスファン(登録商標)、B型シリカゲル、エクオス(登録商標)などの吸湿吸水繊維や、その他防ダニ及び抗菌防臭・吸湿発熱・吸水速乾機能などのすべての機能性素材の使用が可能である。
【実施例5】
【0047】
実施例1では、樹脂製シートの表面が平坦な場合を例示したが、図7(A)(B)に示すように、樹脂製シート5の裏面に、シートの幅方向又は長さ方向に、窪み5aが設けられていてもよい。窪み5aは空気の通り道となり、通気性を生じる。窪み5aは、樹脂製シート5の表面を削ること、又は金型でプレスすることによって形成される。
【0048】
樹脂製シート5の窪み5aは、図8(A)に示すように、樹脂製シート5の表面及び裏面の双方に形成することもできる。空気の通り道がさらに多くなり、通気性がより高まり、快適な睡眠を確保できる。また窪み5aの形状として、図8(B)に示すように断面が矩形状の窪み5aであってもよい。
【実施例6】
【0049】
実施例5では、樹脂製シートの表面又は裏面に窪みを形成する場合を例示したが、図9(A)に示すように、樹脂製シート5の厚み部分に、シートの幅方向又は長さ方向に貫通する貫通路5bを設けてもよい。このような貫通路5bを有する樹脂製シート5は、図9(B)に示すような貫通路5bを有する樹脂製マット11を刃物12でスライスすることによって形成される。貫通路5bもまた空気の通り道となり、通気性を生じる。
【実施例7】
【0050】
図1に示す実施例1では、2層構造のクッションシートを例示したが、この発明はこれに限られるものでなく、図10に示すように、樹脂製シート5の裏面に補強材層13を設けた3層構造としてもよい。機能性シート6が、機能の付加に加えて、引っ張り広げたり、押し縮めたりの繰り返し動作に耐える強度を与えることは既に述べたが、補強材層13がさらに強度を高める。補強材層13は、ニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布などで形成される。この中でも、ニードルパンチ不織布が好ましい。ニードルパンチ不織布は、かえしのある針を突き刺して機械的に繊維を結合させたものであり、3次元的に繊維が絡んでいるので、繊維と繊維の隙間に空気の溜まり場が多くでき、空気層ができ、断熱効果にも寄与する。このような補強材層を設けることは、上述の実施例のいずれにも応用することができる。この補強材層に機能性を持つ機能性綿を混合してもよい。3層構造に限定されるものでなく、強度を高めるために、また更なる機能を持たせるために、4層、5層とさらなる層を追加してもよい。
【実施例8】
【0051】
実施例2では、クッションシートが2個連結された場合を例示したが、図11(A)に示すように、クッションシート4の端縁の一方に凸部4aを設け、他方の端縁に凸部4aを受け入れる凹部4bを設けることにより、図11(B)に示すように、数多くのクッションを連結することができる。このように構成すると、体育館などの広い床の上にクッションシートを多数敷き並べることができる。4個連結するのが適切である。災害時の防災商品、災害グッズとして提供できる。また、図11(C)に示すように、補強材層13を樹脂製シート5の裏面に設けることで、機能性シート6と協同して、樹脂製シート5のもろさが改善される。
【0052】
本発明に係るクッションシート及び多機能性を有するクッションシートは、布団の下に敷く簀子の代替、押入れ簀子、除湿マット、お風呂マット、パーテション、すだれ、クッション、座布団、カーペットクッション材、その他の生活シーンの中で断熱性又は通気性の確保を目的として使用される多機能シートに広く利用することができる。
【0053】
上記実施例では、切り込みの形状として、深皿の断面形状の如き平面視形状を有している切り込みを例示したが、この発明はこれに限られるものでなく、引っ張り広げることで、空気の溜まり場となる穴に可逆的に変形する切り込み形状はいずれも使用することができる。
【0054】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係るクッションシートは、あらゆる生活シーンの中で断熱性又は通気性の確保を目的として使用される。吸湿、防ダニ、吸水、抗菌、防臭、発熱又は速乾性などの特定の機能を持たせながら、耐久性のあるクッションシートとして広く利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 簀子
2 角材
3 板
4 クッションシート
4a 凸部
4b 凹部
5 樹脂製シート
5a 窪み
5b 貫通路
6 機能性シート
1a,7 簀子穴
8 切り込み
8p 第1の切り込み
8q 第2の切り込み
9a 側面保護部材
9b 縮み防止部材
10 貫通孔
11 樹脂製マット
12 刃物
13 補強材層
14 敷布団
15 人
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12