特許第6175259号(P6175259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6175259酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6175259
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/16 20060101AFI20170724BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   C08G59/16
   C08F290/14
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-62834(P2013-62834)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2013-227534(P2013-227534A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2015年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-69520(P2012-69520)
(32)【優先日】2012年3月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(72)【発明者】
【氏名】福西 佐季子
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝治
(72)【発明者】
【氏名】宮内 信輔
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 太一
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2878486(JP,B2)
【文献】 特開2006−284784(JP,A)
【文献】 特開2007−099741(JP,A)
【文献】 特開2007−264433(JP,A)
【文献】 特開2008−179611(JP,A)
【文献】 特開2009−083482(JP,A)
【文献】 特開2009−155256(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/119622(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/125949(WO,A1)
【文献】 特開2012−206968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00 − 59/72
C08F 283/01
C08F 290/00 − 290/14
C08F 299/00 − 299/08
C08G 63/00 − 63/91
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
(式中、環Arは縮合多環式炭化水素環、環Arは脂肪族炭化水素環、単環式芳香族炭化水素環、縮合多環式芳香族炭化水素環、ビフェニル環又はジフェニルC1−10アルカン環を示し、Rはシアノ基、ハロゲン原子又は炭化水素基、Rは炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基、Rは水素又はアルキル基を示し、Aはアルキレン基を示す。kは0〜4の整数、m及びnは0以上の整数、pは1以上の整数である)
で表される繰り返し単位を有する酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂。
【請求項2】
環Arがナフタレン環である請求項1記載の酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂。
【請求項3】
環Arが縮合多環式芳香族炭化水素環、ビフェニル環又はジフェニルC1−10アルカン環である請求項1又は2記載の酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂。
【請求項4】
下記式(2)
【化2】
(式中、環Ar、R、R、R、A、k、m及びnは前記に同じ)
で表されるフルオレン含有エポキシ(メタ)アクリレートと、下記式(3)
【化3】
(式中、環Arは前記に同じ)
で表されるテトラカルボン酸二無水物とを反応させる請求項1〜3のいずれかに記載の酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂のヒドロキシル基がジカルボン酸無水物で封止された酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂。
【請求項6】
ジカルボン酸無水物が無水不飽和脂環族ジカルボン酸である請求項5記載の酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂と、ジカルボン酸無水物とを反応させる請求項5又は6記載の酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の製造方法。
【請求項8】
請求項5又は6記載の酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂と、光重合開始剤とを含む樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、他の多官能性(メタ)アクリレートを含む請求項8記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項8又は9記載の樹脂組成物が硬化した硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオレン骨格(詳細には、9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格)を有する新規な酸無水物変性アクリル系樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオレン骨格(9,9−ビスフェニルフルオレン骨格など)を有する樹脂は、高いガラス転移温度を有し、耐熱性に優れ、かつ高屈折率であり、光学特性にも優れているため、インク材料、発光材料(例えば、有機EL用発光材料など)、有機半導体、黒鉛化前駆体、コート剤(例えば、LED(発光ダイオード)用素子のコート剤などの光学用オーバーコート剤又はハードコート剤など)、レンズ(ピックアップレンズ、マイクロレンズ、眼鏡レンズなど)、偏光膜(例えば、液晶ディスプレイ用偏光膜など)、LCD(液晶ディスプレイ)などの光学材料に幅広く使用されている。
【0003】
このようなフルオレン骨格を有する化合物は、アクリル系の硬化樹脂としても使用されており、特許第3268771号公報(特許文献1)には、ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシアクリレートをテトラカルボン酸二無水物と反応させることにより、オリゴマー化した後、ジカルボン酸無水物で末端封鎖して得られる光重合性不飽和化合物が開示されている。さらに、特許第4847006号公報(特許文献2)には、ビスキシレノールフルオレン骨格を有するエポキシアクリレート樹脂をテトラカルボン酸又はその二無水物と反応させ、得られる反応生成物とジカルボン酸又はその無水物とを反応させて得られるフルオレン含有アルカリ可溶型放射線重合性不飽和樹脂が開示されている。これらの文献では、耐熱性や光学特性に優れるエポキシアクリレートに対して、酸無水物を反応させることにより、アルカリ性水溶液に対する溶解性を向上させている。
【0004】
しかし、これらのフルオレン含有アクリル系樹脂でも、屈折率は十分ではなかった。さらに、これらのフルオレン含有アクリル系樹脂はゲル化し易く、特に、エポキシアクリレート樹脂にテトラカルボン酸二無水物を反応させると、分子量が増大し、取り扱い性が低かった。
【0005】
一方、特開2007−99741号公報(特許文献3)には、高屈折率、高耐熱化、低粘度化などの特性を向上できる有用な化合物、特に高耐熱を有し、かつ硬化物の応力を緩和できる有用な化合物として、ビスナフトールフルオレン骨格を有する化合物が提案されている。この文献には、ビスナフトールフルオレン骨格を有する化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるエポキシ樹脂、ビスナフトールフルオレン骨格を有する化合物と(メタ)アクリル酸系単量体との反応生成物であるアクリル系樹脂が記載されている。
【0006】
しかし、この文献では、エポキシ樹脂やアクリル系樹脂を調製した例は記載されていない。さらに、基板などの支持体に対する密着性が低く、アルカリ可溶性も低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3268771号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特許第4847006号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2007−99741号公報(特許請求の範囲、段落[0005][0065]、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、高い屈折率を有する新規な酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、アルカリ可溶性及び基板などの支持体に対する密着性を向上できる新規な酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、種々の特性(光学特性、耐熱性、寸法安定性など)に優れた新規な酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、ゲルの発生を抑制し、取り扱い性を向上できる新規な酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレートに、テトラカルボン酸二無水物を反応させて得られる新規な酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂が高い屈折率を有することを見いだし、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂は、下記式(1)
【0014】
【化1】
【0015】
(式中、環Arは縮合多環式炭化水素環、環Arは炭化水素環を示し、R1はシアノ基、ハロゲン原子又は炭化水素基、R2は炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基、Rは水素又はアルキル基を示し、Aはアルキレン基を示す。kは0〜4の整数、m及びnは0以上の整数、pは1以上の整数である)
で表される繰り返し単位を有する。前記式(1)において、環Arはナフタレン環であってもよい。環Arは多環式芳香族炭化水素環であってもよい。
【0016】
本発明には、下記式(2)
【0017】
【化2】
【0018】
(式中、環Ar、R1、R2、R、A、k、m及びnは前記に同じ)
で表されるフルオレン含有エポキシ(メタ)アクリレートと、下記式(3)
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、環Arは前記に同じ)
で表されるテトラカルボン酸二無水物とを反応させる前記酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の製造方法も含まれる。
【0021】
本発明には、前記酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂のヒドロキシル基がジカルボン酸無水物で封止された酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂も含まれる。前記ジカルボン酸無水物は無水不飽和脂環族ジカルボン酸であってもよい。
【0022】
本発明には、前記酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂と、ジカルボン酸無水物とを反応させる前記酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の製造方法も含まれる。
【0023】
また、本発明には、前記酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(封止された酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂)と、重合開始剤(光重合開始剤など)とを含む樹脂組成物(又は硬化性組成物)が含まれる。このような樹脂組成物は、さらに、他の多官能性(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。さらに、本発明には、この樹脂組成物が硬化した硬化物も含まれる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有するエポキシ(メタ)アクリレートとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られる新規な酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂が高い屈折率を有する。また、アルカリ可溶性を向上でき、かつ基板などの支持体に対する密着性を向上できる。また、種々の特性(光学特性、耐熱性、寸法安定性など)にも優れている。さらに、酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の末端ヒドロキシル基をジカルボン酸無水物で封止することにより、嵩高いフルオレン含有アクリル系樹脂を用いているにも拘わらず、ゲルの発生(特に経時でのゲル化)を抑制し、取り扱い性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂]
本発明の酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂は、前記式(1)で表される繰り返し単位(又はユニット)を有する酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂[酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(1)]であってもよい。
【0026】
前記式(1)において、環Arで表される縮合多環式炭化水素環としては、縮合二環式炭化水素環(例えば、インデン環、ナフタレン環などのC8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素環)、縮合三環式炭化水素環(アントラセン環、フェナントレン環など)などの縮合2乃至4環式炭化水素環などが挙げられる。好ましい縮合多環式炭化水素環としては、少なくともベンゼン環を含む縮合多環式芳香族炭化水素環(ナフタレン環、アントラセン環など)が挙げられ、特にナフタレン環が好ましい。なお、フルオレンの9位に置換する2つの環Arは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。さらに、フルオレンの9位に置換する環Arの置換位置は、特に限定されず、例えば、フルオレンの9位に置換するナフチル基は、1−ナフチル基、2−ナフチル基などであってもよい。
【0027】
で表される置換基としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などが挙げられ、特に、シアノ基又はアルキル基(特にアルキル基)である場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−6アルキル基(例えば、C1−4アルキル基、特にメチル基)などが例示できる。なお、kが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレン(又はフルオレン骨格)を構成する2つのベンゼン環に置換する基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0028】
で表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−20アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)、アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(又はトリル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基など)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ナフチル基などのC6−10アリール基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのC1−20アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)などのエーテル基;アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基などのC1−20アルキルチオ基など)、シクロアルキルチオ基(シクロへキシルチオ基などのC5−10シクロアルキルチオ基など)、アリールチオ基(チオフェノキシ基などのC6−10アリールチオ基)、アラルキルチオ基(例えば、ベンジルチオ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルチオ基)などのチオエーテル基;アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0029】
これらのうち、基Rは、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基であるのが好ましく、特に、好ましい基Rは、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)など]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)などである。特に、環Arがベンゼン環である場合、基Rは、C1−4アルキル基、アリール基及びハロゲン原子から選択された基であってもよい。
【0030】
なお、同一の環Arにおいて、mが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Arにおいて、基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。さらに、好ましい置換数mは、0〜8、好ましくは0〜6(例えば、1〜5)、さらに好ましくは0〜4、特に0〜2(例えば、0〜1)であってもよい。なお、2つの環Arにおいて、置換数mは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0031】
基Aは、アルキレン基である。アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、プロピリデン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−10アルキレン基が挙げられる。これらのうち、エチレン基、プロピレン基などのC2−4アルキレン基が好ましい。
【0032】
オキシアルキレン基の繰り返し数nは、0以上の整数であり、通常、0〜10程度であり、好ましくは0〜5、さらに好ましくは0〜3(特に0〜2)程度である。さらに、オキシアルキレン基の繰り返し数nは、通常0又は1(特に0)である。
【0033】
は、水素又はアルキル基である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基などのC1−10アルキル基などが挙げられる。これらのうち、水素原子、メチル基などのC1−4アルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基(特に水素原子)が特に好ましい。
【0034】
環Arで表される炭化水素環としては、例えば、芳香族炭化水素環、脂肪族炭化水素環などが挙げられる。
【0035】
芳香族炭化水素環としては、例えば、単環式芳香族炭化水素環(ベンゼン環など)、縮合多環式芳香族炭化水素環(インデン環、ナフタレン環などのC8−20縮合二環式炭化水素環、アセナフチレン環、フルオレン環、フェナレン環、アントラセン環、フェナントレン環などの縮合三環式炭化水素環、ピレン環、ナフタセン環などの縮合四環式炭化水素環など)、非縮合多環式芳香族炭化水素環(ビフェニル環、ジフェニルエーテル環、ジフェニルチオエーテル環、ジフェニルスルホン環、ベンゾフェノン環、ジフェニルメタン環やジフェニルプロパン環などのジフェニルC1−10アルカン環など)などが挙げられる。
【0036】
脂肪族炭化水素環としては、前記芳香族炭化水素環に水素添加された環、例えば、飽和脂肪族炭化水素環(例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンなどのC3−10シクロアルカン環、テトラリン環など)、不飽和脂肪族炭化水素環(例えば、シクロヘキセンなどのC4−10シクロアルケン環など)などが挙げられる。
【0037】
これらのうち、環Arは、ベンゼン環やナフタレン環などの単環式又は縮合多環式芳香族炭化水素環、ビフェニル環やベンゾフェノン環などの非縮合多環式芳香族炭化水素環が好ましく、耐吸湿性に優れる点から、ビフェニル環などの非縮合多環式芳香族炭化水素環が特に好ましい。
【0038】
繰り返し単位の繰り返し数pは、1以上の整数であり、通常、1〜100程度であり、好ましくは2〜50、さらに好ましくは3〜30(特に5〜20)程度である。
【0039】
酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(基準樹脂:ポリスチレン)を用いて測定したとき、1000〜20000(例えば、1500〜18000)程度の範囲から選択でき、例えば、1000〜15000、好ましくは2000〜12000、さらに好ましくは3000〜10000(特に4000〜8000)程度であってもよく、通常2000〜18000(例えば、2500〜15000、好ましくは3000〜10000、さらに好ましくは3500〜8000、特に4000〜7000)程度であってもよい。分子量が大きすぎると、粘度が上昇して取り扱い性が低下し、また、アルカリ現像時に溶解しない。逆に小さすぎると、酸無水物による変性効果を向上できない。
【0040】
[酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の製造方法]
酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂は、特に限定されないが、前記式(2)で表されるフルオレン含有エポキシ(メタ)アクリレート[フルオレン含有エポキシ(メタ)アクリレート(2)]と、前記式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物[テトラカルボン酸二無水物(3)]とを反応させることにより製造できる。
【0041】
前記式(2)で表されるフルオレン含有エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸類((メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル)とを反応させることにより製造してもよい。
【0042】
9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有するエポキシ化合物としては、前記式(2)で表されるフルオレン含有アクリル系樹脂に対応するエポキシ化合物、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−グリシジルオキシ−1−ナフチル)フルオレンなど]などが挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリル酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸C1−3アルキルエステルなどが挙げられる。
【0044】
前記エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸類との反応において、(メタ)アクリル酸類の割合は、前記エポキシ化合物1モルに対して、前記エポキシ化合物が約2モル(1.8〜2.2モル)となる割合で使用される。
【0045】
反応は触媒の存在下で行ってもよく、触媒としては、慣用の酸触媒(p−トルエンスルホン酸など)であってもよいが、慣用の塩基性触媒を好ましく使用できる。
【0046】
塩基性触媒としては、例えば、脂肪族アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン類など)、脂環族アミン類(シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミンなど)、芳香族アミン類(アニリン、ジエチルアニリンなど)、複素環式アミン類(4−ジメチルアミノピリジン、モルホリン、ピペリジンなど)、第4級アンモニウム塩(塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムハライド、塩化ベンジルトリメチルアンモニウムなどのベンジルトリアルキルアンモニウムハライドなど)、金属アルコキシド(例えば、カリウムt−ブトキシドなど)などが挙げられる。
【0047】
これらの塩基性触媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの塩基性触媒のうち、4−ジメチルアミノピリジンなどの複素環式アミン類、臭化テトラエチルアンモニウムなどのテトラアルキルアンモニウムハライドなどが汎用される。
【0048】
触媒の使用量は、触媒の種類に応じて調整でき、前記エポキシ化合物100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、さらに好ましくは0.1〜1重量部(特に0.2〜0.5重量部)程度であってもよい。
【0049】
反応はラジカル重合禁止剤の非存在下で行ってもよいが、通常、ラジカル重合禁止剤の存在下で行うことができる。ラジカル重合禁止剤としては、慣用のラジカル重合禁止剤、例えば、ハイドロキノン、メトキノン、ピロガロール、t−ブチルカテコール、フェノチアジンなどが例示できる。これらのラジカル重合禁止剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのラジカル重合禁止剤のうち、メトキノンなどが汎用される。
【0050】
ラジカル重合禁止剤の使用量は、ラジカル重合禁止剤の種類に応じて調整でき、前記エポキシ化合物100重量部に対して、例えば、0.01〜3重量部、好ましくは0.03〜2重量部、さらに好ましくは0.05〜1重量部(特に0.1〜0.5重量部)程度であってもよい。
【0051】
前記エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸類との反応は、無溶媒中で行ってもよいが、反応性などの点から、溶媒中で行ってもよい。溶媒としては、前記エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸類に対して不活性な又は非反応性の溶媒であれば特に限定されず、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルムなど)、アルコール類(エタノール、イソプロパノールなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのC1−4アルキルセロソルブ、プロピレングリコールモノC1−4アルキルエーテルなどのプロピレングリコールモノメチルエーテルなど)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテートなどのC1−4アルキルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールモノC1−4アルキルエーテルアセテートなど)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトールなどのC1−4アルキルカルビトール類など)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒のうち、セロソルブ類やセロソルブアセテート類(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールモノC1−4アルキルエーテルアセテートなど)が汎用される。
【0052】
溶媒の使用量は、前記エポキシ化合物及び(メタ)アクリル酸類の総量100重量部に対して、例えば、10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部、さらに好ましくは30〜100重量部(特に50〜80重量部)程度であってもよい。
【0053】
反応温度や反応時間は、使用する原料の種類に応じて適宜選択できる。反応温度は、例えば、50〜200℃、好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは100〜150℃程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは2〜24時間程度であってもよい。なお、反応は、不活性雰囲気(窒素、ヘリウム、アルゴンなどの雰囲気)下で行ってもよい。
【0054】
前記式(2)で表される具体的なフルオレン含有エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、9,9−ビス{6−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]−2−ナフチル}フルオレン、9,9−ビス{5−[3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ]−1−ナフチル}フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン、これらの化合物に対応し、前記式(2)においてnが1以上である化合物などが挙げられる。
【0055】
式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、アレーンテトラカルボン酸(例えば、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸などのC6−20アレーン−テトラカルボン酸など)、ジアリールテトラカルボン酸[例えば、ビフェニルテトラカルボン酸類(3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸など)などのジC6−10アリールテトラカルボン酸など]、ビス(ジカルボキシアリール)アルカン[例えば、3,3’,4,4’−テトラカルボキシジフェニルメタン、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパンなどのビス(ジカルボキシC6−10アリール)C1−10アルカンなど]、ビス(ジカルボキシアリール)エーテル[例えば、4,4’−オキシジフタル酸などのビス(ジカルボキシC6−10アリール)エーテルなど]、ビス(ジカルボキシアリール)ケトン[例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸)などのビス(ジカルボキシC6−10アリール)ケトンなど]、ビス(ジカルボキシアリール)スルホン[例えば、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸)などのビス(ジカルボキシC6−10アリール)スルホンなど]などの芳香族テトラカルボン酸の二無水物、これらの芳香族テトラカルボン酸の二無水物の水添物などが挙げられる。
【0056】
フルオレン含有エポキシ(メタ)アクリレート(2)とテトラカルボン酸二無水物(3)との反応において、テトラカルボン酸二無水物(3)の割合は、フルオレン含有エポキシ(メタ)アクリレート1モルに対して、テトラカルボン酸二無水物が約0.2モル(0.05〜1.0モル程度)となる割合で使用される。
【0057】
フルオレン含有エポキシ(メタ)アクリレート(2)とテトラカルボン酸二無水物(3)との反応は、無溶媒中で行ってもよいが、反応性などの点から、溶媒中で行ってもよい。溶媒は、フルオレン含有エポキシ(メタ)アクリレート(2)の製造で用いられた溶媒から選択でき、通常、フルオレン含有エポキシ(メタ)アクリレート(2)の製造で用いられた溶媒と同一の溶媒が用いられる。
【0058】
溶媒の使用量は、フルオレン含有エポキシ(メタ)アクリレート(2)及びテトラカルボン酸二無水物(3)の総量100重量部に対して、例えば、10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部、さらに好ましくは30〜100重量部(特に50〜80重量部)程度であってもよい。
【0059】
反応温度や反応時間は、使用する原料の種類に応じて適宜選択できる。反応温度は、例えば、50〜200℃、好ましくは70〜180℃、さらに好ましくは80〜150℃程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは2〜24時間程度であってもよい。なお、反応は、不活性雰囲気(窒素、ヘリウム、アルゴンなどの雰囲気)下で行ってもよい。
【0060】
[末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(4)]
酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂は、酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(1)のヒドロキシル基(末端ヒドロキシル基)をジカルボン酸無水物で封止した酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(4)であってもよい。本発明では、酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(1)の末端ヒドロキシル基をジカルボン酸無水物で封止することにより、分子量を調整できるとともに、ゲルの発生を抑制でき、取り扱い性をさらに向上できる。
【0061】
酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(4)は、酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(1)とジカルボン酸無水物とを反応させることにより得られ、前記式(3)の環Ar、環Ar、R1、R2、R、A、k、m及びnは、前記式(1)と同一である。本発明では、酸無水物として、テトラカルボン酸二無水物に加えて、末端封止剤としてジカルボン酸無水物を用いることにより、末端ヒドロキシル基の割合を調整でき、取り扱い性を向上できる。
【0062】
ジカルボン酸無水物としては、例えば、無水コハク酸などの無水飽和脂肪族ジカルボン酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸などの無水不飽和脂肪族ジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの無水飽和脂環族ジカルボン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などの無水不飽和脂環族ジカルボン酸、無水フタル酸などの無水芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸無水物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのジカルボン酸無水物のうち、ベンゼン環やナフタレン環などの単環式又は縮合多環式芳香族炭化水素環を有するジカルボン酸無水物、シクロヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素環を有するジカルボン酸無水物、シクロヘキセンなどの不飽和脂肪族炭化水素環を有するジカルボン酸無水物などが好ましく、光学特性を向上でき、かつ重合性基を付与できる点から、不飽和脂肪族炭化水素環を有するジカルボン酸無水物、例えば、シクロヘキセンなどのC4−10シクロアルケン環を有するジカルボン酸無水物(例えば、テトラヒドロ無水フタル酸など)が特に好ましい。
【0063】
末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(4)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(基準樹脂:ポリスチレン)を用いて測定したとき、1000〜20000(例えば、1500〜18000)程度の範囲から選択でき、例えば、1000〜15000、好ましくは2000〜12000、さらに好ましくは3000〜100000(特に4000〜8000)程度であってもよく、通常2000〜18000(例えば、2500〜15000、好ましくは3000〜10000、さらに好ましくは3500〜8000、特に4000〜7000)程度であってもよい。分子量が大きすぎると、粘度が上昇して取り扱い性が低下し、逆に小さすぎると、酸無水物による変性効果が小さい。
【0064】
なお、末端封鎖酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(4)において、末端ヒドロキシル基の封鎖率(酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(1)の末端ヒドロキシル基の封鎖割合)は、例えば、10%以上、好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上、特に70%以上であってもよい。
【0065】
[末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(4)の製造方法]
末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(4)は、特に限定されないが、酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(1)とジカルボン酸無水物とを反応させることにより製造できる。
【0066】
酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(1)とジカルボン酸無水物との反応において、ジカルボン酸無水物の割合は、酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(1)1モルに対して、ジカルボン酸無水物が過剰となる割合、例えば、1モル以上(例えば、1〜2モル程度)の割合で使用される。ジカルボン酸無水物の割合が少なすぎると、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に確保できない。
【0067】
酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(1)とジカルボン酸無水物との反応は、無溶媒中で行ってもよいが、反応性などの点から、溶媒中で行ってもよい。溶媒は、フルオレン含有アクリル系樹脂(1)の製造で用いられた溶媒から選択でき、通常、酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(1)の製造で用いられた溶媒と同一の溶媒用いられる。
【0068】
溶媒の使用量は、酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(1)及びジカルボン酸無水物の総量100重量部に対して、例えば、10〜200重量部、好ましくは20〜150重量部、さらに好ましくは30〜100重量部(特に50〜80重量部)程度であってもよい。
【0069】
反応温度や反応時間は、使用する原料の種類に応じて適宜選択できる。反応温度は、例えば、50〜200℃、好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃程度であってもよい。また、反応時間は、例えば、30分〜48時間、通常、1〜36時間、好ましくは2〜24時間程度であってもよい。なお、反応は、不活性雰囲気(窒素、ヘリウム、アルゴンなどの雰囲気)下で行ってもよい。
【0070】
[酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の用途]
本発明の酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂[酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(1)及び末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(4)。以下、同様]は、9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格(特にビスナフトールフルオレン骨格)を有しており、高耐熱性、高屈折率、低線膨張性などのフルオレン骨格特有の特性を有している。しかも、このようなフルオレン骨格を有しているにもかかわらず、低粘度でありハンドリング性に優れている。そのため、本発明の酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂は、熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂として好適に使用できる。熱又は光硬化性樹脂は、通常、重合開始剤などを含む樹脂組成物を構成してもよい。本発明には、このような前記酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂を含む樹脂組成物(酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂組成物)も含む。
【0071】
熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂(熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂成分)は、前記酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂のみで構成してもよく、他の多官能性(メタ)アクリレートと組み合わせてもよい。樹脂組成物を本発明のフルオレン含有アクリル系樹脂のみで構成すると、硬化物に9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格を高濃度で導入することができる。他の多官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、二官能性(メタ)アクリレート{アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのC2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリC2−4アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートなど}、三官能以上の多官能性(メタ)アクリレート[グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレートなどのトリ又はテトラオールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールテトラ乃至ヘキサ(メタ)アクリレートなど]、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの他の多官能性(メタ)アクリレートは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0072】
他の多官能性(メタ)アクリレートの割合は、フルオレン含有アクリル系樹脂100重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましくは2〜60重量部、さらに好ましくは5〜30重量部程度であってもよく、通常3〜50重量部(例えば、5〜40重量部)程度であってもよい。
【0073】
なお、前記樹脂組成物は、必要に応じて、重合開始剤、希釈剤などを含んでいてもよい。
【0074】
重合開始剤には、熱重合開始剤や光重合開始剤が含まれる。熱重合開始剤と光重合開始剤とを組み合わせてもよい。熱重合開始剤としては、ジアルキルパーオキサイド類(ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなど)、ジアシルパーオキサイド類[ジアルカノイルパーオキサイド(ラウロイルパーオキサイドなど)、ジアロイルパーオキサイド(ベンゾイルパーオキサイドなど)など]、過酸エステル類(過酢酸t−ブチルなど)、ケトンパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類などの有機過酸化物;アゾニトリル化合物[2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)など]、アゾアミド化合物、アゾアミジン化合物などのアゾ化合物などが含まれる。熱重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0075】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など)、アセトフェノン類(アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなど)、アミノアセトフェノン類{2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノアミノプロパノン−1など}、アントラキノン類(アントラキノン、2−メチルアントラキノンなど)、チオキサントン類(2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントンなど)、ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなど)、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノンなど)、キサントン類などが例示できる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
また、光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤としては、第3級アミン類{例えば、トリアルキルアミン、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミンなど)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸エチルなど]、N,N−ジメチルアミノ安息香酸アミル[p−(ジメチルアミノ)安息香酸アミルなど]などのジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)などのビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのジアルキルアミノベンゾフェノンなど}などの慣用の光増感剤などが挙げられる。光増感剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0077】
重合開始剤(および光増感剤の総量)の使用量は、フルオレン含有アクリル系樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部(例えば、1〜30重量部)、好ましくは1〜20重量部(例えば、5〜15重量部)、さらに好ましくは1.5〜10重量部程度であってもよい。また、光増感剤の使用量は、重合開始剤(光重合開始剤)100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは10〜150重量部、さらに好ましくは20〜100重量部程度であってもよい。
【0078】
希釈剤としては、反応性希釈剤、非反応性希釈剤(溶媒)が含まれる。反応性希釈剤としては、特に限定されず、重合性単量体、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル[(メタ)アクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸アルキルなど]、メタアクリル酸シクロアルキル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなど]、(メタ)アクリル酸アリール[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど]、(ポリ)オキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート(ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート)、N−置換(メタ)アクリルアミド(N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートなどを好適に使用できる。これらの化合物は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0079】
反応性希釈剤の割合は、フルオレン含有アクリル系樹脂100重量部に対して、例えば、1〜1000重量部、好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部程度であってもよい。
【0080】
溶媒としては、酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(1)の製造で用いられた溶媒から選択できる。溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
溶媒の割合は、例えば、フルオレン含有アクリル系樹脂100重量部に対して、1〜500重量部の範囲から選択でき、例えば、10〜400重量部、好ましくは20〜300重量部、さらに好ましくは30〜200重量部程度であってもよい。
【0082】
また、酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂組成物は、慣用の添加剤、例えば、着色剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、レベリング剤、シランカップリング剤、重合禁止剤(又は熱重合禁止剤)、界面活性剤などを含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0083】
本発明には、酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂又は酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂組成物の硬化物も含まれる。このような硬化物は、酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂又は酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂組成物を硬化処理することにより製造できる。例えば、フィルム状の硬化物は、基材に対して、酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂又は酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂組成物を塗布して塗膜(又は薄膜)を形成した後、硬化処理を施すことにより製造してもよい。本発明では、基材に対して高い密着性を有する塗膜を形成できる。
【0084】
なお、フィルム状の塗膜(又は薄膜)の厚みは、用途に応じて選択でき、例えば、0.1〜1000μm、好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは5〜300μm程度であってもよい。
【0085】
このような方法では、酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂を使用するため、多量の希釈剤(溶媒、重合性希釈剤など)による希釈や、低粘度化のための加熱などを要しなくても、硬化物を製造できる。そのため、硬化物に高濃度で9,9−ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格を導入させやすく、優れた特性(高屈折率、高耐熱性など)を有する硬化物を容易に製造できる。
【0086】
なお、硬化処理としては、加熱処理、光照射処理などが挙げられる。加熱処理と光照射処理を組み合わせてもよい。加熱処理において、加熱温度は、例えば、50〜250℃、好ましくは60〜200℃、さらに好ましくは70〜150℃程度であってもよい。
【0087】
また、光照射処理(露光処理)において、光照射エネルギー量は、用途、塗膜の膜厚などによって異なるが、通常、0.1〜10000mJ/cm、好ましくは1〜8000mJ/cm、さらに好ましくは10〜5000mJ/cm程度であってもよい。
【実施例】
【0088】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例における各物性値は、以下に示す方法により測定した。なお、実施例中の「部」は特にことわりのない限り、重量基準である。
【0089】
[重量平均分子量]
重量平均分子量は、溶出液として10体積%酢酸テトラヒドロフラン溶液を用い、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)により、ゲル浸透クロマトグラフィー(基準樹脂:ポリスチレン)によって測定した。
【0090】
[屈折率]
多波長アッベ屈折計((株)アタゴ製、DR−M2<循環式恒温水槽 60−C3使用>)を用い、25℃を保持し、589nmでの屈折率を測定した。
【0091】
実施例1
(BNFGの合成)
まず、特開2007−99741号公報に記載の実施例1の方法に準じて、フルオレノンとβ−ナフトールとを反応させて、目的の9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン(以下、BNFと称する場合がある)を得た。さらに、特開2009−155256号公報の比較例1に従いBNFにエピクロロヒドリンを反応させて、9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン(BNFG)を得た。
【0092】
(フルオレン含有エポキシ(メタ)アクリレートの合成)
フラスコに、BNFG14.07g(0.025モル)、アクリル酸3.6g(0.05モル)3.6g、メトキノン0.03g、テトラエチルアンモニウムブロミド0.05g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)9.9gを仕込み、120℃で7時間反応させ、常温まで放置冷却させた。
【0093】
(酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の合成)
得られた反応液に、ビフェニルテトラカルボン酸(s−BPDA)4.4g(0.014モル)、PGMEA6.6gを仕込み、110℃で4時間反応させた。反応終了後、常温まで放置冷却し、得られた酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の分子量を測定した結果、4000〜6000であった。
【0094】
実施例2
実施例1で得られた反応液に、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸(TPHA)0.83g(0.005モル)、PGMEA9.9gを仕込み、90℃で6時間反応させた。反応終了後、常温まで放置冷却し、得られた末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の分子量を測定した結果、4,900であった。
【0095】
さらに、得られた末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の固形分100重量部に対して、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製「イルガキュア184」)3重量部を加えて均一に溶解させた後、常温でマイクロスライドガラス(松浪硝子(株)製「S9224」)上に塗布し、スピンコーター(ミカサ(株)製)にて均一化した(0.5μm以下)。その後、UV照射機(H015−L31:アイグラフィックス(株)製)を用いて、500mJ/cmでガラスに光照射し、硬化膜を作製した。得られた硬化膜について、屈折率を測定したところ、屈折率(25℃)は1.63であった。
【0096】
また、得られた末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂67重量部(固形分)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート33重量部、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製「イルガキュア184」)3重量部、および界面活性剤(DIC製、「メガファックF−556」、割合1000ppm)を、PGMEAに溶解したコーティング液を、ガラス基板(3×3cm)上に、厚み2μmとなるように、スピンコートした。そして、ホットプレートにて、温度80℃で3分間プレベークしたのち、マスクを介して、高圧水銀灯を用いて500mJ/cmで露光し、未露光部を有する硬化膜を作成し、30℃で、1.0重量%炭酸ナトリウム水溶液で現像(又は洗浄、アルカリ現像)し、現像時間(未露光部がなくなるまでの時間)を測定したところ、2.0分であった。
【0097】
実施例3
実施例1で得られたフルオレン含有エポキシ(メタ)アクリレートを放置冷却せずにs−BPDA及びPGMEAを仕込むこと以外は実施例2と同様にして反応を行って末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂を製造し、硬化膜を形成した。末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の分子量は5,900であり、硬化膜の屈折率は1.64であった。
【0098】
実施例4
実施例1で得られた酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂を放置冷却せずにTPHA及びPGMEAを仕込むこと以外は実施例2と同様にして反応を行って末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂を製造し、硬化膜を形成した。末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の分子量は7,000であり、硬化膜の屈折率は1.64であった。
【0099】
実施例5
実施例1において、110℃に代えて130℃で反応させたこと以外は、実施例1と同様にして反応させた。そして、実施例2において、実施例1で得られた反応液に代えて、この反応により得られた反応液を用いたこと以外は実施例2と同様にして反応を行って末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂を製造し、硬化膜を形成した。末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の分子量は8,900であり、硬化膜の屈折率は1.63であった。また、硬化膜の現像時間は、4.0分であった。
【0100】
実施例6
実施例2において、110℃に代えて130℃で反応させ、TPHA0.83g(0.005モル)に代えて、無水フタル酸0.005モルを用いたこと以外は、実施例2と同様にして反応を行って末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂を製造し、硬化膜を形成した。末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の分子量は9,300であり、硬化膜の屈折率は1.63であった。また、硬化膜の現像時間は、3.0分であった。
【0101】
実施例7
実施例1において、s−BPDA4.4g(0.014モル)に代えて、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物(BTDA)0.014モルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして反応させた。そして、実施例2において、実施例1で得られた反応液に代えて、この反応により得られた反応液を用いたこと以外は実施例2と同様にして反応を行って末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂を製造し、硬化膜を形成した。末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の分子量は12,400であり、硬化膜の屈折率は1.62であった。また、硬化膜の現像時間は、3.5分であった。
【0102】
実施例8
実施例1において、s−BPDA4.4g(0.014モル)に代えて、ピロメリット酸無水物(PMDA)0.014モルを用いたこと以外は、実施例1と同様にして反応させた。そして、実施例2において、実施例1で得られた反応液に代えて、この反応により得られた反応液を用いたこと以外は実施例2と同様にして反応を行って末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂を製造し、硬化膜を形成した。末端封止酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂の分子量は16,600であり、硬化膜の屈折率は1.62であった。また、硬化膜の現像時間は、4.0分であった。
【0103】
比較例1
9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレン(BNFG)の代わりに、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン(BPFG)0.025モルを使用する以外は実施例2と同様にして反応を行ってフルオレン含有アクリル系樹脂を製造し、硬化膜を形成した。末端封止フルオレン含有アクリル樹脂の分子量は14,400であり、硬化膜の屈折率は1.60であった。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂は、高耐熱性、高屈折率などの優れた特性を有しつつ、ハンドリング性においても優れており、種々の熱又は光硬化性(メタ)アクリル系樹脂用途として使用できる。
【0105】
具体的には、本発明の酸無水物変性フルオレン含有アクリル系樹脂(又は本発明のフルオレン含有アクリル系樹脂を用いて得られる硬化物)は、インク材料、発光材料(例えば、有機EL用発光材料など)、有機半導体、黒鉛化前駆体、ガス分離膜(例えば、COガス分離膜など)、コート剤(例えば、LED(発光ダイオード)用素子のコート剤などの光学用オーバーコート剤又はハードコート剤など)、レンズ[ピックアップレンズ(例えば、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)用ピックアップレンズなど)、マイクロレンズ(例えば、液晶プロジェクター用マイクロレンズなど)、眼鏡レンズなど]、偏光膜(例えば、液晶ディスプレイ用偏光膜など)、反射防止フィルム(又は反射防止膜、例えば、表示デバイス用反射防止フィルムなど)、タッチパネル用フィルム、フレキシブル基板用フィルム、ディスプレイ用フィルム[例えば、PDP(プラズマディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)、OLED(有機ELディスプレイ)、VFD(真空蛍光ディスプレイ)、SED(表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)、FED(電界放出ディスプレイ)、NED(ナノ・エミッシブ・ディスプレイ)、ブラウン管、電子ペーパーなどのディスプレイ(特に薄型ディスプレイ)用フィルム(フィルタ、保護フィルムなど)など]、オーバーコート、フレキシブルフィルム基板、異方性導電接着フィルム(ACF)、カラーフィルタ[例えば、レンズフィルタ、ディスプレイ用カラーフィルタなど]、液晶表示装置用ネガ型フォトレジスト[例えば、TFTアレイエッチング用フォトレジスト、顔料分散型フォトレジスト、染料型フォトレジスト、保護膜など]、層間絶縁膜、ソルダーレジスト、液晶ディスプレイ用フォトスペーサー、燃料電池用膜、光ファイバー、光導波路、ホログラムなどに好適に使用できる。特に、本発明のフルオレン含有アクリル系樹脂は、光学材料用途に好適に利用でき、このような光学材料の形状としては、例えば、フィルム又はシート状、板状、レンズ状、管状などが挙げられる。