(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6175269
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】多軸フライス加工
(51)【国際特許分類】
B23C 1/08 20060101AFI20170724BHJP
B23C 1/12 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
B23C1/08
B23C1/12
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-83778(P2013-83778)
(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公開番号】特開2013-230546(P2013-230546A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2016年3月18日
(31)【優先権主張番号】13/445,142
(32)【優先日】2012年4月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596134851
【氏名又は名称】ロッキード・マーチン・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブ エル. ビクセル
【審査官】
永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第10147649(DE,A1)
【文献】
特開昭60−044206(JP,A)
【文献】
特開2002−331433(JP,A)
【文献】
特開2006−123047(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02161098(EP,A1)
【文献】
特開2012−240131(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3170695(JP,U)
【文献】
特開平06−277922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 1/08
B23C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作物に対して所望の輪郭を切削するフライス装置であって、
ヘッドおよび工作物間に切削方向の相対運動が印加されるような方法により機械加工される少なくとも1つの前記ヘッドおよび前記工作物を移動するよう構成されたフライス盤により坦持される前記ヘッドと、
離間する平行なスピンドルZ軸周りの回転のための前記ヘッド上にて支持され、機械加工作業における使用のために適応されたそれぞれの回転カッタを含む、第1および第2のスピンドルと、
前記ヘッドおよびフライス盤間にて動作可能に接続され、ヘッド軸周りに前記ヘッドを回転するように構成された回転ヘッド位置決め器と、
前記回転ヘッド位置決め器に接続され、スピンドル経路間の所望のステップ距離を提供するスピンドル食違い角を達成するために必要となる前記ヘッドの回転を前記回転ヘッド位置決め器に命令することより、工作物において、所望の切削跡を提供するよう構成される、食違い制御器と、
動作可能となるように前記第1のスピンドルに接続され、回転Z軸に沿って前記第1のスピンドルの前記軸の位置を調節するよう構成される、第1のスピンドルZ軸アクチュエータと、を含み、
前記第1のスピンドルと前記第2のスピンドルとを結ぶ方向に沿って前記工作物を切削する時に、前記切削方向に対して後方のスピンドルの軸の位置を前方のスピンドルの軸の位置よりも前記工作物側となるように前記第1のスピンドルZ軸アクチュエータが調整することが可能である、フライス装置。
【請求項2】
前記食違い制御器が、前記切削長さに沿って、所望の変動的な切削跡を有する切削を形成するために必要とされる前記切削方向に沿って移動しながら、切削の間、0となる食違い角と最大食違い角との間の食違い角の提供範囲で前記スピンドル食違い角を変化させることを必要とする前記ヘッドを回転するよう構成される、請求項1に記載のフライス装置。
【請求項3】
前記ヘッドが、それぞれのスピンドル軸周りの前記スピンドルの回転運動を駆動するよう構成される、請求項1または請求項2に記載のフライス装置。
【請求項4】
動作可能となるように前記スピンドルに接続され、それぞれのスピンドル軸周りの回転において前記スピンドルを駆動するよう構成される、前記ヘッドにより坦持する少なくとも1つのヘッドモータを含む、請求項3に記載のフライス装置。
【請求項5】
前記回転ヘッド位置決め器が、
前記ヘッドにより坦持するヘッド回転器モータと、
前記ヘッドにより坦持され、前記ヘッド回転器モータおよび前記ヘッド間に、動作可能となるように接続される、ヘッド回転器ギアと、
を含む、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のフライス装置。
【請求項6】
前記ヘッド軸が、前記ヘッド回転器モータのモータ中心線に同軸上に整列され、前記第1および第2のスピンドル軸に平行に配置される、請求項5に記載のフライス装置。
【請求項7】
前記回転カッタは、先端部が丸みを帯びている、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のフライス装置。
【請求項8】
工作物に対して所望の輪郭を切削するフライス装置であって、
ヘッドおよび工作物間に切削方向の相対運動が印加されるような方法により機械加工される少なくとも1つの前記ヘッドおよび前記工作物を移動するよう構成されたフライス盤により坦持されるヘッドと、
離間する平行なスピンドルZ軸周りの回転のための前記ヘッド上にて支持され、機械加工作業に用いられるよう適応されたそれぞれの回転カッタを含む、第1および第2のスピンドルと、
前記第1のスピンドルに動作可能に接続され、前記第1のスピンドルの前記軸の位置を調節するよう構成される、第1のスピンドルZ軸アクチュエータと、
を含み、
前記第1のスピンドルと前記第2のスピンドルとを結ぶ方向に沿って前記工作物を切削する時に、前記切削方向に対して後方のスピンドルの軸の位置を前方のスピンドルの軸の位置よりも前記工作物側となるように前記第1のスピンドルZ軸アクチュエータが調整することが可能である、フライス装置。
【請求項9】
動作可能となるように前記第2のスピンドルに接続され、回転Z軸に沿って前記第2のスピンドルの前記軸の位置を調節するよう構成される、第2のスピンドルZ軸アクチュエータを含む、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のフライス装置。
【請求項10】
前記第1および第2のZ軸アクチュエータに接続され、それぞれの回転Z軸に沿って互いに対して独立的に前記第1および第2のスピンドルを移動するよう構成されたZ軸位置制御器を含む、請求項9に記載のフライス装置。
【請求項11】
1つ以上のさらなるスピンドルZ軸アクチュエータが、それぞれ、動作可能となるように1つ以上のさらなるスピンドルに接続され、それぞれの回転Z軸に沿って互いに対して独立的に前記1つ以上のさらなるスピンドルを移動するよう構成される、請求項9もしくは請求項10に記載のフライス装置。
【請求項12】
前記第1、第2および1つ以上のさらなるスピンドル軸アクチュエータに接続され、前記それぞれの回転Z軸に沿って、互いに対して独立的に前記第1、第2および1つ以上のさらなるスピンドルを移動するよう構成される、Z軸位置制御器を含む、請求項11に記載のフライス装置。
【請求項13】
前記1つ以上のさらなるスピンドルは、第3のスピンドルを含み、
前記第1のスピンドルと前記第2のスピンドルと前記第3のスピンドルとを結ぶ方向に沿って前記工作物を切削する時に、前記第1、第2および1つ以上のさらなるスピンドル軸アクチュエータが、前記第3のスピンドルの軸の位置を前記第2のスピンドルの軸の位置よりも前記工作物側となるように調整し、前記第2のスピンドルの軸の位置を前記第1のスピンドルの軸の位置よりも前記工作物側となるように調整し、前記第1のスピンドルの軸の位置と前記第2のスピンドルの軸の位置との差が、前記第2のスピンドルの軸の位置と前記第3のスピンドルの軸の位置との差がよりも大きくなるように調整することが可能であり、
前記第1のスピンドルは、前記切削方向の前方に配置され、
前記第3のスピンドルは、前記切削方向の後方に配置される、請求項12に記載のフライス装置。
【請求項14】
前記ヘッドに対する少なくとも1つの前記スピンドルの角度は、前記ヘッド軸から測定される前記切削方向に対して後方に調節することができるように構成される、請求項1乃至請求項13のいずれかに記載のフライス装置。
【請求項15】
前記ヘッドに対する後方への少なくとも1つの前記スピンドルの角度が、切削中に調節される、請求項14に記載のフライス装置。
【請求項16】
前記ヘッドに対する少なくとも1つのスピンドルの角度が、前記ヘッド軸から測定される前記切削方向に対して横方向および後方に調節される、請求項1乃至請求項15のいずれかに記載のフライス装置。
【請求項17】
前記ヘッド軸から測定される前記切削方向に対する横方向および後方への少なくとも1つの前記スピンドルの角度が、切削中に調節される、請求項16に記載のフライス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、工作物において輪郭を切削するためのフライスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多軸フライスシステムは、垂直ドリル作業において用いられることに対して周知であり、一般に、回転のためにヘッド上で支持され且つ近接して離間する2つ以上の穴が1回の作業で穿孔されるようそれぞれのドリルビットを坦持する、2つ以上のドリルスピンドルを備える。多軸コンピュータ数値制御(CNC)ガントリー型フライスシステムは、単一ベッド上での同時並列処理において同等の部品を生成するために一致して移動する2つ以上のスピンドルを備えることが知られている。類似する単一のスピンドル機械が単一の部品のみを生成し得る係るシステムは、同一サイクル時間において2つ以上の部品を生成する能力を有する。単一部品に対して穿孔加工および切削加工または旋盤加工を同時に行うようプログラムされた機械操作システムおよび制御器を備える多軸旋盤も当該技術分野において知られている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
工作物に対して所望の輪郭を切削するためのフライス装置が提供される。本装置は、ヘッドと機械加工される工作物との間に切削方向の相対運動が印加されるよう、ヘッドおよび/または工作物を移動させるよう構成されたフライス盤により坦持されるよう構成されたヘッドを備える。第1スピンドルおよび第2スピンドルは、離間する平行なスピンドルZ軸周りの回転のためにヘッド上で支持され、機械加工作業に用いられるよう適応されたそれぞれの回転カッタを備える。回転ヘッド位置決め器は、ヘッドとフライス盤との間で動作可能に連結され、ヘッド軸周りにヘッドを回転可能に配置するよう構成される。食違い制御器は、回転ヘッド位置決め器に接続され、スピンドル経路間で所望のステップ距離を提供するであろうスピンドル食違い角を達成するために要求される分量だけヘッドを回転させることを回転ヘッド位置決め器に命令することにより、工作物において所望の切削跡(cut swath)を提供するよう構成され得る。
【0004】
ヘッドと機械加工される工作物との間に切削方向の相対運動が印加されるよう、ヘッドおよび工作物のうちの少なくとも1つを移動させるよう適応されたフライス盤により坦持されるよう構成されたヘッドを備えるフライス装置も提供される。スピンドルは、離間する平行なスピンドルZ軸周りの回転のためにヘッド上で支持され、機械加工作業に用いられるよう適応されたそれぞれの回転カッタを備える。スピンドルZ軸アクチュエータは各スピンドルに動作可能に接続され、スピンドルのZ軸位置を独立的に調節するよう構成される。
【0005】
ヘッド軸周りの回転のためにフライス盤上で支持されたヘッドと、それぞれ離間する平行なスピンドル軸周りの回転のためにヘッド上で支持された第1スピンドルおよび第2スピンドルと、を備えるフライス装置を用いて工作物に対して所望の輪郭を切削するための方法も提供される。本方法は、ヘッド軸およびスピンドル軸が所望の切削方向に対して略垂直に配向されるようヘッドを配置することと、ヘッドをヘッド軸周りに回転させることにより所望の切削方向に対するスピンドル食違い角を調節することと、スピンドルをそれぞれのスピンドル軸周りに回転させることと、ヘッドと工作物との間に所望の切削方向の相対運動が印加されるよう且つスピンドルのうちの少なくとも1つが工作物に係合するようヘッドおよび機械加工される工作物のうちの少なくとも1つを移動させることにより所望の切削方向において工作物表面上で切削することと、を含む。
【0006】
以上のおよび他の特徴および利点は、以下に示す本発明の1つまたは複数の実施形態に関する以下の詳細な説明および図面との関連において、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】エンドミルカッタを有するスピンドルが取り付けられた単一ヘッド多軸フライス装置であって、工作物に対して切削方向に移動し、切削方向に対する食違い角が0となるスピンドルを示すためにヘッド回転がない状態で工作物を切削する、単一ヘッド多軸フライス装置の正面・側面・上面の概略等角図である。
【
図2】切削方向に対して食違い関係にあるスピンドルを示すために、切削方向に対して回転されたヘッドを示す、
図1の装置の正面・側面・上面の概略等角図である。
【
図3】
図2において示されるようにヘッドが切削方向に対して回転された状態にある、
図1の装置および工作物の概略上面図である。
【
図4】切削方向に対して食違い関係にあるスピンドルを示すためにヘッドが回転された状態で装置が工作物に対して切削方向に移動して工作物を切削するにつれて、工作物に対するそれぞれの切削深さを変化させるために、それぞれのZ軸に沿って上下方向に移動するスピンドルを示す、
図2において示されるようにヘッドが切削方向に対して回転された状態にある
図1の装置の正面・側面・上面の概略等角図である。
【
図5】先端部が丸みを帯びたカッタが取り付けられた
図1の装置の、
図4の線5−5に沿った概略断片部分断面側面図である。
【
図6】後続スピンドルが先行スピンドルよりも連続的により深く切削する状態を示す、先端部が丸みを帯びたカッタが取り付けられた
図1の装置の概略断片部分断面側面図である。
【
図7】側部切削に適応されたカッタを有するスピンドルが取り付けられ、連続的な切削を工作物に対して横方向に形成するために小さい食違い角で工作物に対して切削方向に移動して工作物を切削する状態を示す、
図1の装置の概略断片断面図である。
【
図8】ヘッドが切削方向に対して回転され且つスピンドルが切削方向に対して後方に向けられた状態を示す、先端部が丸みを帯びたカッタを有するスピンドルが取り付けられた
図1の装置の正面・側面・上面の概略等角図である。
【
図10】
図9の線10−10に沿った
図9の装置の概略部分断面上面図である。
【
図11】直立壁、床面、および中間コーナーを工作物に形成するためにヘッドが切削方向に対してわずかに回転され且つスピンドルが切削方向に対して後方および横方向に傾けられた状態にある、
図8の装置の概略前方端面図である。
【
図13A】
図1〜
図12のフライス装置を用いて工作物に所望の輪郭を切削するための方法を示すフローチャートである。
【
図13B】
図1〜
図12のフライス装置を用いて工作物に所望の輪郭を切削するための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
工作物に対して所望の輪郭を切削するためのフライス装置は、
図1〜
図6において全般的に10で示される。装置10はヘッド14を坦持するよう構成されたフライス盤12を備え得る。フライス盤12は、ヘッド14と機械加工される工作物16との間に切削の方向すなわち切削方向11の相対運動が印加されるよう、ヘッド14および工作物16のうちの少なくとも1つを移動させるよう構成され得る。これらの図面において、スピンドル18は、離間する平行なスピンドルZ軸19回りの回転のためにヘッド14上で支持され得、機械加工作業に用いられるよう適応されたそれぞれの回転カッタ20を備え得る。
【0009】
図1〜
図4において最もよく示されるように、装置10は、ヘッド14とフライス盤12との間で動作可能に接続され且つ運動制御プロセッサ13による指示にしたがってヘッド14をヘッド軸15周りに回転可能に配置するよう構成された、回転ヘッド位置決め器22も備え得る。食違い制御器24は、回転ヘッド位置決め器22に接続され得、所望の切削跡が工作物16において切削されることを可能にするであろう切削方向11に対する所望のスピンドル食違い角度すなわち食違い角S(すなわち、達成可能なスピンドル食違い角の値の範囲内にある、切削方向11に対するスピンドル軸19のずれの角度)を達成するにあたり要求される分量だけヘッド14を回転させることを回転ヘッド位置決め器22に対して指令することにより所望の切削跡(すなわち、
図6において示されるようにスピンドルZ軸19に対して略垂直である工作物表面において切削方向11に対して横方向に測定された切削幅、または、
図7において示されるようにスピンドルZ軸19に対して略平行である工作物表面において切削方向11に対して横方向に測定された切削深さのいずれか)を工作物16において提供するよう構成され得る。
【0010】
換言すると、
図3において最もよく示されるように、食違い制御器24は、切削方向11と、スピンドル軸19に交差し且つスピンドル軸19に対して垂直に配向された仮想線と、の間で測定される食違い角Sを変動させるよう構成され得る。食違い制御器24は、所望の切削跡を提供するにあたり必要となる任意のスピンドル食違い角Sを達成するために必要となる分量だけヘッド14を回転させることを回転ヘッド位置決め器22に対して実行させることにより、係る変動を生じさせることを行うよう構成され得る。さらに換言すると、食違い制御器24は、切削作業において回転カッタ20により工作物16において形成される切削跡を調節するために切削方向に対して何らかの程度の整合または食違いのいずれかをスピンドル軸19に生じさせるようプログラムされ得る。さらに換言すると、食違い制御器24は、切削方向11に対するカッタ20の整列の偏りを制御するよう構成され得る。スピンドル軸19のこの食違いは、所与の工作物16を機械加工するにあたり要求されるパスの個数を低減させ、それによりガイドの摩耗、電力消費、および部品作業時間(part run time)が軽減されることとなる。複数のスピンドル18を単一のヘッド14上に取り付けることにより、単位インチあたりのヘッドの動きに対してより多くのカッタパスが形成されることとなり、したがって部品を製作するにあたり要求されるヘッドパスの個数が低減される。
【0011】
食違い制御器24は、食違い角Sを、0から最大食違い角までの望ましい食違い角Sの範囲内で変化させるにあたり要求される分量だけヘッド14を回転させるよう構成され得る。食違い制御器24は、切削作業中に、切削方向に沿って移動し、所望の変動的切削跡を切削長さに沿って有する切削を形成するにあたり要求される分量だけ食違い角Sを調節しながら、このことを実行するよう構成され得る。ヘッド回転により食違い角Sを制御することにより、カッタアレイは、このように壁部またはフランジ等の部品特徴を作成するために段階的に調節され得る。スピンドル食違い角Sを調節してカッタ20を配置すると、その結果として、工作物16上で単一の経路が切削されるか、または工作物上で離間する別個の平行経路が切削され得る。このようにしてカッタ経路の間に壁部またはフランジが形成される。
図7において示されるように、ヘッド14は、スピンドル軸19がスピンドル軸19に対して略平行である工作物壁部に係合するよう配置され得、スピンドル食違い角Sは、スピンドルカッタ20が横方向にオフセットするよう配置され、それにより連続的により深い切削が横方向に工作物16に対して形成されるよう、調節され得る。
【0012】
この配列により、1つのマシン12が、高い許容誤差プロファイルを要求する複雑な工作物表面を仕上げる際の生産性を3倍以上にすることが可能となる。この機能性は、プログラミング汎用性を高め、滑らかな輪郭面を生成するにあたり望ましいステップ距離がパス間で提供されることを可能にする、さらに高度な運動を要求する。より高度なこの運動は、マシンが、単一のカッタのみよりもむしろカッタアレイの回転位置を制御することができるようにすることを必要とする。ステップ距離は、カッタが連続するカッタパス間でオフセットされる距離である。多数の制御プログラムは、切削される工作物表面の局部半径、使用されるカッタの半径、および所望の表面仕上げを含み得るいくつかの要因を考慮することにより、所与の用途に対する望ましいまたは「適切」なステップ距離を導き出す。端部表面または先端部が平坦であるカッタを用いて輪郭面を製作することは困難であり、小径先端部を有するカッタを用いると、パス間距離が大きすぎる場合は不規則面が形成されることとなるであろう。同様に、滑らかな表面を形成するためには、ステップ距離が小さくなるとパスの個数も線形的に増すこととなるであろう。カッタ先端部半径と工作物輪郭における半径との間の一致がより近接するにしたがって、望ましい表面品質を達成するためには、より少ないパスが必要となる。
【0013】
図1において示されるように、回転ヘッド位置決め器22はヘッド回転器モータ28およびヘッド回転器ギア30を備え得る。なお、このヘッド回転器ギア30はヘッド回転器モータ28とヘッド14との間で動作可能に接続される。ヘッド軸15は、ヘッド回転器モータ28のモータ中心線32に対して同軸状に整列され得、スピンドル軸19に対して平行に配置され得る。
【0014】
図5において示されるように、ヘッド14は、ヘッド14により坦持される少なくとも1つのヘッドモータ26を介して、それぞれのスピンドル軸19周りのスピンドル18の回転運動を駆動するよう構成され得る。少なくとも1つのヘッドモータ26は、スピンドル18に動作可能に接続され得、それぞれのスピンドル軸19周りの回転においてスピンドル18を駆動するよう構成され得る。ヘッド14は、スピンドル18のうちの1つまたは複数を逆方向に回転させるよう、さらに構成され得る。このことは、回転力をスピンドル18のうちの選択された1つに分配するための簡単な噛合い歯車を用いて行われ得る。ヘッド14は、所与の作業において不要であるスピンドル18のうちの任意の1つまたは複数から分離するよう上昇するようにも構成され得る。
【0015】
図5において示されるように、1つまたは複数のスピンドルのZ軸アクチュエータ34は、それぞれ1つまたは複数のスピンドル18に動作可能に接続され得、所望の輪郭が工作物16において切削され得るようそれぞれの回転Z軸19に沿って(
図4および
図5において示されるように)互いに対して独立的にスピンドル18を移動させるよう、構成され得る。Z軸位置制御器36もスピンドルZ軸アクチュエータ34に接続され得、所望の輪郭が工作物16において切削され得るようそれぞれのZ軸19に沿って互いに対して独立的にスピンドル18を移動させるよう構成され得る。各Z軸位置制御器はそれぞれのZ軸に沿って+/−1”の範囲内でそのスピンドルを移動させるよう構成され得る。一方、他の実施形態において、位置制御器は、そのZ軸に沿ってより大きい範囲でまたはより小さい範囲でスピンドルを移動させるよう構成され得る。代替的に、3つのスピンドル18の配列のうちの中央スピンドルが固定され、残りの外側の2つのみがぞれぞれのZ軸に沿って移動可能であり得る。この配列においては、2つのZ軸アクチュエータ34のみが、2つの外側のスピンドル18にそれぞれ動作可能に接続されること、および、これらのスピンドルを互いに対して且つ中央スピンドルに対して独立的に移動させるよう構成されることが、要求されるであろう。
【0016】
例えば
図6において示されるように、より広い切削よりもむしろより深い切削が単一切削パスで工作物表面17において形成されることが望まれる場合、選択された切削方向11に対するスピンドル食違い角Sとして0が選択され得、1つまたは複数の後続スピンドルに対する切削深さは、先頭スピンドルよりも深く切削するよう、調節され得る。また、先頭スピンドルに後続する各スピンドル18に対する切削深さは、先行するスピンドル18よりも連続的により深く切削するよう設定され得る。近接する連続スピンドル18間のスピンドルZ軸位置の差異は約0.20”となり得、最後の2つの近接する連続スピンドル18間のスピンドル軸位置の差異は、仕上げ切削を行うためには、例えば約0.020”等、先行スピンドル18のスピンドル軸間の差異よりも小さくなり得る。
【0017】
当該技術分野において知られているように、回転カッタは先端部が丸みを帯びたカッタ29であり得、カッタ29は
図8〜
図12において示されるように螺旋状の刃先と、完全球形ノーズまたは部分球形先端部すなわち丸みを帯びた先端部のいずれかと、を有し得る。先端部が丸みを帯びているため、カッタが工作物のコーナーに入り込むことが可能となる。それにより、
図11において示される結果として形成された部品において、応力集中を軽減するために必要となる丸みを帯びた遷移部分が形成されることとなる。
【0018】
本装置は、スピンドル18のうちの1つまたは複数を、ヘッド角Hおよび方位角Hの範囲内で移動させるよう構成され得る。なお、ヘッド角Hは、
図8において示されるようにスピンドルの回転軸19とヘッド軸15との間で測定される、スピンドル18がヘッド14から伸びる角度であり、方位角Aは、
図12において示されるようにスピンドルの回転軸19と切削方向11との間で測定される、スピンドル18がヘッド14から伸びる角度である。スピンドル18のうちの1つまたは複数は、例えば、
図8〜
図11において示されるように、後方に向けられた、すなわち方位角180度である、または切削方向11の逆方向である、ヘッド角Hを有し得る。このことは、工作物表面17とスピンドル18との間の接触点においてスピンドル軸19と工作物表面17との間で測定される望ましい表面係合角αが許容範囲内に保持されるようにして、行われ得る。係る表面係合角α(および/または表面係合角αを中心とする許容角度範囲)の保持は、例えば先端部が丸みを帯びたカッタ29をスピンドル18が備える場合に、有利であり得る。先端部が丸みを帯びたカッタ29を用いる場合、その先端部が丸みを帯びたカッタ29の比較的低速で移動する中軸部25が、工作物16と接触しないよう傾斜させることが望ましい。それにより、カッタ20の中軸部25における比較的低い角速度の動きが、切削品質に悪影響を有することがなくなるであろう。
【0019】
図11および
図12において示されるように、装置10がスピンドル18のうちの1つまたは複数を移動させるよう構成されたヘッド角Hおよび方位角Aの範囲は、スピンドル軸と、切削方向11およびヘッド軸15に対して略平行に配向された工作物壁面21と、の間の望ましい表面係合角α(および/または望ましい表面係合角αを中心とする許容角度範囲)が保持されることが可能となるような角度の組み合わせを含み得る。
図11において最もよく示されるように、スピンドル18のうちの1つは、また再び先端部が丸みを帯びたカッタ29の中軸部25が工作物16と接触しないよう保持される一方で、工作物壁面21と、ヘッド軸15に対して略垂直に配置された工作物床面23との間の、丸みが与えられた遷移部分27を切削するために、傾けられ得る。
図11において示されるようにヘッド14により坦持されるスピンドル18が傾けられ、その結果、スピンドル18のうちの1つが工作物床面23に係合し工作物床面23を切削するよう傾けられ、その一方で、他のスピンドル18が工作物壁面21に係合し工作物壁面21を切削するように傾けられ、第3のスピンドル18が工作物壁面21と床面23との間の丸みが与えられた遷移部分27に係合し係る遷移部分27を切削するように傾けられ得る。すなわち、単一のパスでこれらの切削のすべてが行われる。
【0020】
図8および
図9において示されるように、本装置は、工作物表面における輪郭を追随しながら所望の表面係合角αが保持されるよう、切削を行う間にスピンドルのうちの1つまたは複数のヘッド角Hを自動的および連続的に調節するよう構成され得る。
図11および
図12において示されるように、本装置は、切削を行う間に、工作物壁面21または丸みが与えられた遷移部分27における輪郭を追随しながら所望の表面係合角αが保持されるよう、スピンドル18のうちの少なくとも1つのヘッド角Hおよび方位角Aを自動的および連続的に調節するようにも構成され得る。
【0021】
実際に、
図13におけるフローチャートにおいて示されるように、工作物16に対して所望の輪郭を切削するにあたっては第1に、ヘッド14は、ヘッド軸15およびスピンドル軸19が作業ステップ40において示されるように所望の切削方向11に対して略垂直に配向されるよう、配置され得る。次いでスピンドル食違い角Sは、作業ステップ44、46、および50において示されるようにヘッド14をヘッド軸15周りに回転させることにより所望の切削方向11に対して調節(0から最大食違い角までの範囲内で)され得る。作業ステップ52において示されるように、スピンドル18のうちの1つまたは複数のヘッド角Hおよび/または方位角Aは、スピンドル軸19と工作物16との間の所望の表面係合角αが達成されるよう、調節され得る。スピンドル18およびそれらの回転カッタ20は、作業ステップ56において示されるように、それぞれのスピンドルZ軸19周りに回転され得る。機械加工は、作業ステップ58において示されるようにヘッド14と工作物16との間に所望の切削方向11の相対運動が印加されるようヘッド14および工作物16のうちの少なくとも1つが他方に対して移動される前または間に、前述のステップのうちの1つまたは複数を実行することにより開始され得る。作業ステップ60において示されるように、各カッタの切削深さは、それぞれのスピンドル18をそのスピンドルZ軸19に沿って所望のスピンドルZ軸位置に移動させることにより、調節され得る。スピンドル18は、それぞれの回転Z軸19に沿って互いに対して独立的に移動され得る。それぞれの回転Z軸に沿ったスピンドル18の相対運動は、好適には+/−1の範囲内にあり得るが、Z軸運動のより大きい範囲内またはより小さい範囲内にもあり得る。作業ステップ62において示されるように、ヘッド軸15からの各スピンドル18のヘッド角Hおよび/または方位角Aは、切削作業の間、各スピンドル18が工作物17の輪郭に沿って上昇するにつれてスピンドル18と工作物表面17との間のそれぞれの接触点においてスピンドル18のそれぞれのスピンドル軸と工作物表面17との間の望ましい表面係合角αが保持されるよう、連続的に調節され得る。
【0022】
所望により、1つまたは複数のスピンドル18は作業ステップ42において示されるように、切削作業の前または間のいずれかにおいて、取り外し、引き抜き、および/または格納により分離され得る。換言すると、1つまたは複数のスピンドルは、各スピンドルが切削作業中に工作物に接触しないそれぞれの位置に分離および移動され得る。このことは、例えば分離されたスピンドル18(単数または複数)が所望の形状を達成するにあたり不必要である場合、または1つまたは複数のスピンドル18が工作物16に対して望ましくない形状を導入するあるいは所望の形状の達成を妨害する場合に、行われ得る。
【0023】
上記の説明にしたがって構築および操作される多軸フライス装置は、単一のコンピュータ数値制御機械と同一のフロアスペースを使用しながらも、用いられたヘッドの個数倍の生産性で、工作物に対する複雑な輪郭の機械加工を行うことが可能である。したがって、上述のように、時間要件、電力要件、摩耗、およびメンテナンス要件は、部品毎に低減され得る。さらに、スピンドルの独立的動きにより、係る機械は、1つまたは複数のスピンドルを完全に格納することが可能となり、その結果、本装置は、単一スピンドル作業または二重スピンドル作業が有利となる用途において、および既知の多軸機械が、作業の再開前に多軸ヘッドの交換または1つまたは複数のスピンドルの取り外しを要求する用途において、単一スピンドル機械または二重スピンドル機械として動作することが可能となる。1つまたは複数のスピンドルまたはカッタに機械的故障が生じ得る可能性を考慮すると、上述の説明にしたがって構築された機械は、任意の故障したスピンドルまたはカッタを検出および格納すること、および残りのスピンドルを用いて切削作業を継続し、修理が行えるようになるまで製造ラインの稼働を継続するために必要に応じてその動作を変更することが可能となるようプログラムされ得る。自由度が増加されることも、非回転切削ヘッドおよびリーマ、レーザ、またはウォータージェット等の装置を含む異なる種類のカッタが用いられる機械加工処理において有用であり得る。
【0024】
本説明は、本発明の限定を説明するよりもむしろ請求項に記載の本発明の実施形態を例示するものである。本説明の言語はしたがってもっぱら説明を旨とするものであり非限定的である。明らかに、本説明が教示する内容とは異なる本発明の修正例も成り立ち得る。請求項の範囲内において、上記の説明とは異なる形で本発明を実施することも可能である。