特許第6175275号(P6175275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6175275
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20170724BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20170724BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   B01J23/63 A
   B01D53/94 222
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   F01N3/10 AZAB
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-103794(P2013-103794)
(22)【出願日】2013年5月16日
(65)【公開番号】特開2014-223585(P2014-223585A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小里 浩隆
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−062683(JP,A)
【文献】 特開2012−154259(JP,A)
【文献】 特開2011−200817(JP,A)
【文献】 特開2014−100661(JP,A)
【文献】 特開2014−100662(JP,A)
【文献】 特開2010−022918(JP,A)
【文献】 特開2010−029752(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0180464(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/73,86−90,94−96
F01N3/00−3/38,9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気管に配置されて該内燃機関から排出される排ガスの浄化を行う排ガス浄化用触媒であって、
基材と、
該基材上に形成された触媒層であって酸化触媒及び/又は還元触媒として機能する金属と該金属を担持する担体とを含み、相互に構成が異なる上下二層若しくは三層以上を有する積層構造の触媒層と、
を備えており、
ここで前記積層構造の触媒層の少なくとも一部には、微量のロジウム(Rh)を担持している微量Rh担持OSC材が備えられており、
前記微量Rh担持OSC材は、前記積層構造の触媒層における表層部分を構成する上層には含まれておらず、且つ、該上層よりも下層側に含まれており、
触媒単位容積(1L)あたりの前記微量Rh担持OSC材に含まれるRh含有量(g/L-cat)は、0.02g/L-cat以下である、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記微量Rh担持OSC材に含まれるRh含有量は、0.004g/L-cat以上0.012g/L-cat以下に規定されている、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記微量Rh担持OSC材におけるRhの担持率(質量%)は、該RhとOSC材との合計質量を100としたときの0.1質量%以上1質量%以下である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記積層構造の触媒層は相互に構成が異なる上下二層であって、前記基材に沿って相対的に該基材に近接する下層と、該触媒層の表層部分を構成する上層と、を有しており、
前記微量Rh担持OSC材は前記下層に含まれており且つ前記上層には含まれていない、請求項1〜3の何れか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
前記下層には、前記金属として白金(Pt)及び/又はパラジウム(Pd)が含まれており、前記上層には、前記金属としてロジウム(Rh)が含まれている、請求項4に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
前記微量Rh担持OSC材のOSC材は、セリア及びジルコニアを主体とする複合酸化物により構成されている、請求項1〜5の何れか一つに記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項7】
前記積層構造の触媒層は、前記微量Rh担持OSC材と混合された状態又は該微量Rh担持OSC材に近接して配置された状態でアルミナを含む、請求項1〜6の何れか一つに記載の排ガス浄化用触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気系に設けられる排ガス浄化用触媒に関する。詳しくは、担体として酸素吸蔵放出能を有する無機材料(すなわちOSC材)を含む排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン等の内燃機関の排ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)等の有害成分を効率よく除去するために、CO、HCの酸化とNOの還元とを同時に行うことができるいわゆる三元触媒が利用されている。
かかる三元触媒としては、一般的にアルミナ(Al)等の金属酸化物からなる多孔質担体に、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等の白金族に属する金属(PGM)を担持させたものが利用されている。このような複数種のPGMからなる触媒金属を備える三元触媒は、理論空燃比(ストイキ:A/F=14.7)近傍の混合気が内燃機関で燃焼して生じる排ガスに対して特に高い排ガス浄化触媒機能を発揮し得る。
【0003】
しかし、実際に内燃機関を使用する場合(典型的には自動車を運転する場合)に供給される混合気の空燃比をストイキ近傍に維持し続けることは難しく、例えば自動車の走行条件などによって混合気の空燃比が燃料過剰(リッチ:A/F<14.7)になったり、酸素過剰(リーン:A/F>14.7)になったりする。そこで、近年、酸素吸蔵放出能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有する無機材料、即ちOSC材を担体に含ませることが一般化している。
例えば、セリア(CeO)とジルコニア(ZrO)を主体とする複合酸化物(以下「CZ複合酸化物」ともいう。)からなるOSC材を備える排ガス浄化用触媒では、上記混合気がリッチになった際の排ガス(リッチ排ガス)が当該触媒に供給された際にはOSC材が吸蔵している酸素を放出することができる。このことによって排ガス中のCO及びHCを酸化され易くする。一方、混合気がリーンになった際の排ガス(リーン排ガス)が当該触媒に供給された際には、OSC材が排ガス中の酸素の一部を吸蔵し、排ガス中の窒素酸化物等を還元され易くする。
例えば下記特許文献1、2には、OSC材を備えた従来の排ガス浄化用触媒の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−24701号公報
【特許文献2】特開2009−19537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、排ガス浄化用触媒において触媒単位容積(L-cat)当たりのOSC材含有量(g/L-cat)を増大させれば当該排ガス浄化用触媒の酸素吸蔵放出能を向上させ、三元触媒の能力を高めることが考えられる。例えば、触媒金属としてのPGMを担持させる担体を全てOSC材とすることができれば、酸素吸蔵放出能の向上が図られる。
しかしながら、CZ複合酸化物等からなるOSC材は耐熱性が低く、PGMの劣化が激しくなるため、高温の排ガス(例えば自動車のエンジンからの排ガス)を処理する排ガス浄化用触媒の耐熱性を所望するレベルに維持するためには、OSC材の触媒単位容積当たりの含有量は制限される。そこで、OSC材自体の単位容積当たりの酸素吸蔵放出能の向上、即ちOSC材自体の質的向上が望まれる。
本発明は、かかるOSC材に関する上記課題を解決するために創出されたものであり、その主な目的は、OSC材自体の単位容積当たりの酸素吸蔵放出能の向上を実現する構成の排ガス浄化用触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するべく、本発明に係る排ガス浄化用触媒は、基材と、該基材上に形成された触媒層であって酸化触媒及び/又は還元触媒として機能する金属(触媒金属、典型的にはPGM)と該金属を担持する担体とを含む触媒層とを備える。
そして、ここで開示される排ガス浄化用触媒では、かかる触媒層の少なくとも一部において、微量のロジウム(Rh)を担持している微量Rh担持OSC材が備えられていることを特徴とする。好ましくは、触媒単位容積(1L)あたりの微量Rh担持OSC材に含まれるRh含有量(g/L-cat)は、0.02g/L-cat以下である。
好ましくは、上記触媒層は、相互に構成が異なる上下二層若しくは三層以上を有する積層構造の触媒層である。
【0007】
本発明者は、従来から使用されている種々の組成のOSC材(典型的にはCZ複合酸化物)に対し、ごく微量のRhを担持させることによって、当該OSC材の酸素吸蔵放出能を著しく向上させることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、ここで開示される排ガス浄化用触媒では、上述のような微量のRhをOSC材に担持させたことによって、当該OSC材の酸素吸蔵放出能の向上を実現することができる。
従って、ここで開示される排ガス浄化用触媒によると、OSC材の単位量当たりの酸素吸蔵放出能を向上させることができ、より効果的な排ガス浄化を行うことができる。
典型的には、かかる微量Rh担持OSC材のOSC材は、セリア及びジルコニアを主体とする複合酸化物により構成されている。CZ複合酸化物は、従来より三元触媒等におけるOSC材として多用されているが、本発明の適用によって単位量当たりの酸素吸蔵放出能を向上させ得る好適な組成のOSC材である。
【0008】
好ましくは、微量Rh担持OSC材に含まれるRh含有量は、触媒単位容積(1L)あたり0.004g/L-cat以上0.012g/L-cat以下に規定され、さらに好ましくは0.006g/L-cat以上0.010g/L-cat以下に規定される。触媒単位容積(1L)あたりのRh含有量が上記規定量よりも少なすぎる場合は所望する効果(OSC材の酸素吸蔵放出能の向上)を奏しない虞があり好ましくない。一方、かかるRh含有量が上記規定量よりも多すぎる場合にはNO浄化能が低下する可能性がある。上記微量Rh担持OSC材におけるRhは、三元触媒において還元触媒として機能する目的ではなく、OSC材の酸素吸蔵放出能の向上を目的とする。かかる目的には、上記のような極めて少量のRh含有量でよく、高価なRhの過剰な使用による排ガス浄化用触媒の製造コスト増を抑制することができる。
また、微量Rh担持OSC材におけるRhの担持率(質量%)が該RhとOSC材との合計質量を100としたときの0.1質量%以上1質量%以下であることを特徴とする。この程度の含有比率でRhを担持させた微量Rh担持OSC材は、特に高価なRhを過剰に使用することなく、当該OSC材の酸素吸蔵放出能を効果的に高めることができる。
【0009】
ここで開示される排ガス浄化用触媒の好適な一態様では、触媒層は相互に構成が異なる上下二層であって、基材に沿って相対的に該基材に近接する下層と、該触媒層の表層部分を構成する上層とを有する。そして、微量Rh担持OSC材は下層に含まれており且つ上層には含まれていないことを特徴とする。
かかる構成のように、相互に構成(例えばPGMの種類や含有量或いは担体の種類や組成)が異なる二層を有する触媒層においては、下層(相対的に基材に近い層)に微量Rh担持OSC材を含有させることが好適である。このことによって、上層に存在する他の触媒金属(典型的にはPt、Pd)と微量Rh担持OSC材中のRhとの合金化を抑制し、触媒層中の触媒金属(典型的にはPGM)の酸化触媒能及び/又は還元触媒能の維持と、OSC材の酸素吸蔵放出能の向上とを両立させることができる。
この態様において、好ましくは、触媒層の下層には、触媒金属としてPt及び/又はPdが含まれており、上層には、触媒金属としてRhが含まれていることを特徴とする。このような貴金属(PGM)の組合せを採用することによって、微量Rh担持OSC材による高い酸素吸蔵放出能を加えて三元触媒として効率のよい排ガス浄化を実現することができる。
【0010】
ここで開示される特に好ましい一態様では、上記触媒層には、微量Rh担持OSC材と混合された状態又は該微量Rh担持OSC材に近接して配置された状態でアルミナ(Al)を含むことを特徴とする。典型的には、該アルミナは触媒金属としてのPGMの担体として含まれる。
微量Rh担持OSC材と混合された状態又は該微量Rh担持OSC材に近接して配置された状態でアルミナを含むことにより、当該微量Rh担持OSC材を含む触媒層における機械的強度や熱耐久性を所望するレベルに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】排ガス浄化用触媒を構成する基材の一例を模式的に示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る排ガス浄化用触媒を模式的に示す断面図である。
図3】各サンプル(1〜3)排ガス浄化用触媒のOSC能の相対評価結果を示したグラフである。
図4】各サンプル(1〜6)排ガス浄化用触媒のOSC能の相対評価結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適ないくつかの実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術知識とに基づいて実施することができる。
【0013】
ここで開示される排ガス浄化用触媒は、上述した特性の微量Rh担持OSC材が触媒層の少なくとも一部に備えられていることで特徴付けられる排ガス浄化用触媒であり、その他の構成は特に限定されない。ここで開示される排ガス浄化用触媒は、後述する触媒金属、担体、基材の種類を適宜選択し、用途に応じて所望する形状に成形することによって種々の内燃機関、特に自動車のガソリンエンジンの排気系(排気管)に配置することができる。
以下の説明では、主として本発明の排ガス浄化用触媒を自動車のガソリンエンジンの排気管に設けられる三元触媒に適用することを前提として説明しているが、ここで開示される排ガス浄化用触媒をかかる用途に限定することを意図したものではない。
【0014】
<基材>
ここで開示される排ガス浄化用触媒の骨格を構成する基材としては、従来この種の用途に用いられる種々の素材及び形態のものを採用することができる。例えば、高耐熱性を有するコージェライト、炭化ケイ素(SiC)等のセラミックス、或いは合金(ステンレス鋼等)製の基材を使用することができる。
形状についても従来の排ガス浄化用触媒と同様でよい。一例として図1に示す排ガス浄化用触媒10のように、外形が円筒形状であるハニカム基材1であって、その筒軸方向に排ガス流路としての貫通孔(セル)2が設けられ、各セル2を仕切る隔壁(リブ壁)4に排ガスが接触可能となっているものが挙げられる。基材1の形状はハニカム形状の他にフォーム形状、ペレット形状などとすることができる。また基材全体の外形については、円筒形に代えて楕円筒形、多角筒形を採用してもよい。
【0015】
<触媒金属>
ここで開示される排ガス浄化用触媒の触媒層に備えられる触媒金属は、種々の酸化触媒や還元触媒として機能し得る金属種が採用され得るが、貴金属、典型的には、PGMであるロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等が挙げられる。ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、銀(Ag)、銅(Cu)等を使用してもよい。特に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属が好ましい。これら貴金属の2種以上が合金化したものを用いてもよい。この中で、還元活性が高いロジウムと、酸化活性が高いパラジウムや白金とを組み合わせて用いることが三元触媒を構築するうえで特に好ましい。或いは他の金属種を含むもの(典型的には合金)であってもよい
かかる触媒金属は、排ガスとの接触面積を高める観点から十分に小さい粒径の微粒子として使用されることが好ましい。典型的には上記金属粒子の平均粒径(TEM観察により求められる粒径の平均値。以下同じ。)は1〜15nm程度であり、10nm以下、7nm以下、更には5nm以下であることが特に好ましい。
かかる貴金属の担持率(担体を100質量%としたときの貴金属含有率)は、1.5質量%以下、例えば0.05質量%以上1.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。担持率が上記範囲より少なすぎると、金属による触媒効果が得られにくい。かかる担持率が上記範囲より多すぎると、金属の粒成長が進行する虞があり、さらにコスト面でも不利である。
【0016】
<担体>
触媒層を構成し、上述した触媒金属を担持する担体としては、従来の排ガス浄化用触媒と同様の無機化合物が使用され得る。比表面積(BET法により測定される比表面積。以下同じ。)がある程度大きい多孔質担体が好適に用いられる。好適な担体としては、例えば、アルミナ(Al)、セリア(CeO)、ジルコニア(ZrO)、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)、及びそれらの固溶体(例えばセリア−ジルコニア複合酸化物(CZ複合酸化物)、或いはそれらの組み合わせが挙げられる。排ガス浄化用触媒の熱安定性を高めるという観点からは、耐熱性のよいアルミナ、ジルコニア等のセラミックスを担体若しくは非担持体(触媒金属を担持させていない触媒層の構成成分をいう。以下同じ。)として触媒層に含ませることが好ましい。
担体又は非担持体の粒子(例えばアルミナ粉末やCZ複合酸化物粉末)としては、比表面積が50〜500m/g(例えば200〜400m/g)であることが耐熱性、構造安定性の観点から好ましい。また、担体粒子の平均粒径は1nm以上500nm以下(より好ましくは10nm以上200nm以下)程度であることが好ましい。
また、このような無機化合物(セラミックス)を担体として使用する場合、好ましくは触媒単位容積(1L)あたりの触媒金属含有量が0.1〜5g/L程度が適当であり、0.2〜2g/L程度が好ましい。触媒金属含有量が多すぎるとコスト的に好ましくなく、少なすぎると排ガス浄化能が低いために好ましくない。なお、本明細書において触媒単位容積(1L)というときは、基材の純容積に加えて内部の空隙(セル)容積を含む(即ち当該空隙(セル)内に形成された触媒層を含む)嵩容積1Lをいう。
【0017】
<OSC材ならびに微量Rh担持OSC材>
ここで開示される排ガス浄化用触媒の触媒層を構築するのに用いられるOSC材自体は、従来からこの種の排ガス浄化用触媒にOSC材として使用されているものであればよく、特に制限はない。典型的には、Ceを含む酸化物、例えばセリア、セリアとジルコニアとを主体とする複合酸化物(セリア−ジルコニア複合酸化物、即ちCZ複合酸化物)が挙げられる。かかるOSC材たるCZ複合酸化物としては、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)及び酸素(O)の3元素のみからなる酸化物であってもよく、例えばイットリウム(Y)、ランタン(La)、ニオブ(Nb)、プラセオジム(Pr)その他の希土類元素を含む4元素又はそれ以上の種類の元素からなる複合酸化物であってもよい。
【0018】
本発明を特徴付ける「微量Rh担持OSC材」は、これら酸素吸蔵放出能を有する酸化物からなるOSC材を担体としてその表面にRh粒子を担持させることにより形成されるものである。Rhを通常の触媒金属(例えば三元触媒においてNOを還元させる還元触媒)として使用する場合と比較して、その含有量はごく微量でよい。CZ複合酸化物等をOSC材(担体)として使用する場合、微量Rh担持OSC材に含まれるRh含有量(g/L-cat)は、0.02g/L-cat以下でよく、0.01g/L-cat以下でもよい。0.012g/L-cat以下がより好ましい。下限としては0.004g/L-cat以上が好ましく、0.005g/L-cat以上がより好ましい。例えば、0.004〜0.012g/L-cat程度が好適な含有量の範囲である。また、微量Rh担持OSC材におけるRhの担持率(質量%)は、該RhとOSC材との合計質量を100としたときの0.1質量%以上(好ましくは0.2質量%以上)であり、1質量%以下(好ましくは0.5質量%以下)が適当である。例えば0.1〜0.45質量%程度が好ましい。
【0019】
<触媒層>
基材上に形成される触媒層は、排ガスを浄化する場として、排ガス浄化用触媒の主体をなすものであり、典型的には触媒金属粒子と、該触媒金属粒子を担持する担体とから構成される。例えば上述した図1に示すハニカム基材1を採用した場合には、当該基材1のセルを構成するリブ壁4上に所定の厚み、気孔率の触媒層が形成される。
触媒層は全体がほぼ同一の構成の一層からなるものでもよいが、図2に示す触媒層6のように、基材1上に形成された相互に異なる上下二層若しくは三層以上を有する積層構造タイプの触媒層6が好ましい。図2に示す積層構造の触媒層6は、基材1に沿って相対的に該基材1に近接する下層6Bと、触媒層6の表層部分を構成する上層6Aとの二層から構成されている。なお、この図の触媒層6は図示しない排気管を排ガスが図中の矢印方向に流れる向き(即ち左側が上流)で描かれている。
このような積層構造の触媒層6は、従来の三元触媒と同様、上層6Aと下層6Bとで担体の種類や該担体に担持される触媒金属の種類や含有割合を異ならせることができる。
このような積層構造タイプの触媒層6によれば、微量Rh担持OSC材を下層6B側のみ若しくは上層6A側のみに含ませることができる。下層6B側のみに微量Rh担持OSC材を含ませることが好ましい。
また、Rhを担持しない従来のOSC材を、微量Rh担持OSC材とともに含有させてもよいし、微量Rh担持OSC材を含まない層に含ませてもよい。
或いはまた、触媒層6は排ガスの流動方向に沿ってその上流側と下流側に区分けされて構成されたものであってもよく、その場合には微量Rh担持OSC材を上流側部分、下流側部分のうちの一方のみに含ませることもできる。
【0020】
また、触媒金属の配置に関しても従来の排ガス浄化用触媒の配置場所や構成に応じて適宜調整することができる。例えば、PGMのうちのPt及び/又はPdを下層6B側に含ませる一方で、触媒金属としてのRhは上層6A側に含ませることができる。
また、好ましくは、微量Rh担持OSC材を備える部分(例えば図2に示す下層6B)にPt及び/又はPdのような酸化触媒として好ましいPGMを含ませる。このことによって、微量Rh担持OSC材の高い酸素吸蔵放出能によりこれら酸化触媒の能力を向上させることができる。この場合、微量Rh担持OSC材とPt及び/又はPdを含む層(例えば図2に示す下層6B)に触媒金属としてのRhを含ませないことが好ましい。このように、PGMも配置場所を異ならせることにより、Pt及び/又はPdとRhとの合金化を抑制することができる。
また、微量Rh担持OSC材を備える部分(例えば上述した積層構造の触媒層6の下層6B)には、耐熱性向上の観点からアルミナ等の高耐熱性セラミックスを担体或いは非担持体として混在させることが好ましい。
【0021】
上述したような構成の排ガス浄化用触媒は、従来と同様の製造方法によって製造することができる。例えば、図2に示すような上下二層の積層構造タイプの触媒層6の構成が異なる排ガス浄化用触媒10を製造するには、先ず、基材1上に下層6Bを形成し、次いで上層6Aを形成するとよい。
具体的には、所望の触媒金属成分(典型的にはPd、Pt、Rh等の所望のPGMをイオンとして含む溶液)と、所望の担体粉末(アルミナ、ジルコニア、CZ複合酸化物からなるOSC材等)とを含む下層形成用スラリーを公知のウォッシュコート法等によってハニカム基材1の表面にコートする。次いで、所望の触媒金属成分(典型的には下層6Bの形成に使用したPGMとは異なるPGM種のイオンを含む溶液)と、所望の担体粉末(アルミナ、ジルコニア、CZ複合酸化物からなるOSC材等)とを含む上層形成用スラリーをウォッシュコート法等によって下層6Bの表面に積層コートする。そして、所定の温度及び時間で乾燥し焼成することによって、基材1上に下層6B及び上層6Aを有する積層構造タイプの触媒層6が構成される。積層構造は二層に限られず三層以上であってもよい。
或いはこのような一度の焼成プロセスに代えて、下層形成用スラリーを基材の表面にコートした後に乾燥及び焼成を行って先ず触媒層の下層を形成し、次いで、上層形成用スラリーを下層の表面にコートして乾燥及び焼成を行って触媒層の上層を形成する二段階の焼成を行うプロセスでもよい。
ウォッシュコートされたスラリーの焼成条件は基材または担体の形状及びサイズによって変動するので、特に限定しないが、典型的には400〜1000℃程度で約1〜5時間程度の焼成を行うことによって、目的の触媒層を形成することができる。また、焼成前の乾燥条件については特に限定されるものではないが、80〜300℃の温度(例えば150〜250℃)で1〜12時間程度の乾燥が好ましい。
また、触媒層6をこのようなウォッシュコート法により形成する場合、基材1の表面、さらに積層構造触媒層の場合には下層6Bの表面にスラリーを好適に密着させるため、スラリーにはバインダーを含有させることが好ましい。かかる目的のバインダーとしては、例えばアルミナゾル、シリカゾル等の使用が好ましい。なお、スラリーの粘度は該スラリーが基材(例えばハニカム基材)1のセル2内へ容易に流入し得るように適宜調整するとよい。
【0022】
ウォッシュコート法を用いて触媒層6を形成する場合、上記のプロセスに代えて、予め所望の触媒金属を担持させた担体を調製しておき、その触媒金属担持済みの担体の粉末を含むスラリーを使用してもよい。
例えば、上述したプロセスによると、Rh成分(例えば硝酸ロジウム水溶液)とOSC材の粉末とを含むスラリーを使用し、当該スラリーがウォッシュコートされた基材を焼成することによって、基材上において焼成後にはじめて微量Rh担持OSC材が形成されるわけであるが、このプロセスに代えて、予め所定のOSC材に微量のRhを担持させた微量Rh担持OSC材を調製しておき、それを含むスラリーを使用してウォッシュコートを行い、該微量Rh担持OSC材を含む触媒層を形成してもよい。
本発明の実施においては、このような予め所定のOSC材に微量のRhを担持させてなる微量Rh担持OSC材(以下「既製微量Rh担持OSC材」という。)の使用が特に好ましい。既製微量Rh担持OSC材としてRhの担持率が該RhとOSC材との合計質量を100としたときの0.1質量%以上1質量%以下のものが容易に調製し得、このようなRh担持率の既製微量Rh担持OSC材は、特に酸素吸蔵放出能に優れるOSC材として好適に採用することができる。
或いはまた、触媒金属成分を含まないで、OSC材やアルミナその他の担体(この段階では全て非担持体)をウォッシュコート法によって予め基材上に形成しておき、その後に従来公知の含浸法等によって所望する触媒金属を担持させてもよい。
【0023】
以下、本発明に関するいくつかの実施例につき説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の試験例はいずれも基材として容積(セル通路の容積も含めた全体の嵩容積をいう)が約2Lである円筒状ハニカム基材(コージェライト製)を使用した。
【0024】
<試験例1:排ガス浄化用触媒の製造(1)>
[スラリー1(下層形成用スラリー)の調製]
適当な濃度の硝酸パラジウム水溶液を適量と、CeとZr(La、Yその他の微量に含まれる希土類元素を包含する。)とのモル比(Ce:Zr等)が3:7であるCZ複合酸化物粉末と、アルミナ粉末とを混合し、250℃で8時間乾燥した後に500℃で4時間の焼成を行い、それぞれPdが担持した状態のCZ複合酸化物粉末とアルミナ粉末とが質量比(又はモル比でも構いません) CZ:Al=3:1で混合されたPd担持混合粉末を得た。
その後、かかるPd担持混合粉末とアルミナバインダーとを質量比97:3で純水と混合し、
スラリー1を調製した。
【0025】
[スラリー2(上層形成用スラリー)の調製]
適当な濃度の硝酸ロジウム水溶液に、CeとZr(La、Yその他の微量に含まれる希土類元素を包含する。)とのモル比(Ce:Zr等)が2:8であるCZ複合酸化物粉末と、アルミナ粉末とを質量比(又はモル比)CZ:Al=3:1で添加、混合し、さらにこれら粉末とアルミナバインダーとを質量比(混合粉末:バインダー)97:3となるように添加し、スラリー2を調製した。ここで、スラリー2におけるRh含有量であるが、該スラリーを用いて触媒層を形成した際に触媒単位容積(1L)あたり0.16g/L-catとなるように調整した。
【0026】
[排ガス浄化用触媒の作製(サンプル1)]
これら調製したスラリー1(下層形成用スラリー)とスラリー2(上層形成用スラリー)とを用いてハニカム基材上に二層構造の触媒層(図2参照)を形成した。
具体的には、先ずスラリー1を用いて基材に対してウォッシュコートを施し、150℃で1時間ほど乾燥することにより、基材の表面(セル内のリブ壁面)に下層(非焼成コート層)を形成した。次いで、スラリー2を用いて基材に対してウォッシュコートを施し、150℃で1時間ほど乾燥することにより下層の表面に上層(非焼成コート層)を積層形成した。その後、500℃で1時間の焼成を行い、上下二層からなる触媒層が形成されたサンプル1の排ガス浄化用触媒を得た。かかるサンプル1の触媒層では、0.16g/L-catの含有量で上層にRhが含まれており、下層にはRhが含まれていない。具体的には以下のとおりである。
サンプル1の二層構造触媒層の構成要素:
上層:アルミナ(Rh担持)、CZ複合酸化物(Rh担持)
下層:アルミナ(Pd担持)、CZ複合酸化物(Pd担持)
【0027】
<試験例2:排ガス浄化用触媒の製造(2)>
[スラリー3(下層形成用スラリー)の調製]
適当な濃度の硝酸ロジウム水溶液に、上記スラリー1の調製で使用したPd担持混合粉末とアルミナバインダーとを質量比(混合粉末:バインダー)97:3となるように添加し、スラリー3を調製した。ここで、スラリー3におけるRh含有量であるが、該スラリーを用いて触媒層を形成した際に触媒単位容積(1L)あたり0.004g/L-catとなるように調整した。
【0028】
[スラリー4(上層形成用スラリー)の調製]
Rh濃度を変更した硝酸ロジウム水溶液を使用することにより、Rh含有量を、触媒層を形成した際に触媒単位容積(1L)あたり0.156g/L-catとなるように調整した以外は、上記のスラリー2を調製したときと同じ材料、プロセスによってスラリー4を調製した。
【0029】
[排ガス浄化用触媒の作製(サンプル2)]
スラリー3(下層形成用スラリー)とスラリー4(上層形成用スラリー)を用いた以外は上記サンプル1の排ガス浄化用触媒作製と同様のプロセスにより、ハニカム基材上に上下二層からなる触媒層が形成されたサンプル2の排ガス浄化用触媒を得た。かかるサンプル2の触媒層では、0.004g/L-catの含有量で下層にRhが含まれており、且つ、0.156g/L-catの含有量で上層にRhが含まれている。具体的には以下のとおりである。
サンプル2の二層構造触媒層の構成要素:
上層:アルミナ(Rh担持)、CZ複合酸化物(Rh担持)
下層:アルミナ(Pd&Rh担持)、CZ複合酸化物(Pd&Rh担持)
【0030】
<試験例3:排ガス浄化用触媒の製造(3)>
[スラリー5(下層形成用スラリー)の調製]
適当な濃度の硝酸ロジウム水溶液を適量と、上記モル比(Ce:Zr等)が3:7であるCZ複合酸化物粉末とを混合し、250℃で8時間乾燥した後に500℃で4時間の焼成を行い、Rhが担持した状態のCZ複合酸化物粉末1(即ち既製微量Rh担持OSC材粉末1)を得た。
その後、かかるRh担持CZ複合酸化物粉末1と、上記Pd担持混合粉末と、アルミナバインダーとを質量比(Rh担持CZ粉末:Pd担持混合粉末:バインダー)=5:92:3で純水と混合し、スラリー5を調製した。ここで、スラリー5におけるRh含有量であるが、該スラリーを用いて触媒層を形成した際に触媒単位容積(1L)あたり0.004g/L-catとなるように調整した。
【0031】
[スラリー6(上層形成用スラリー)の調製]
Rh濃度を変更した硝酸ロジウム水溶液を使用することにより、Rh含有量を、触媒層を形成した際に触媒単位容積(1L)あたり0.156g/L-catとなるように調整した以外は、上記のスラリー2を調製したときと同じ材料、プロセスによってスラリー6を調製した(内容は上記スラリー4と同じである。)。
【0032】
[排ガス浄化用触媒の作製(サンプル3)]
スラリー5(下層形成用スラリー)とスラリー6(上層形成用スラリー)を用いた以外は上記サンプル1の排ガス浄化用触媒作製と同様のプロセスにより、ハニカム基材上に上下二層からなる触媒層が形成されたサンプル3の排ガス浄化用触媒を得た。かかるサンプル3の触媒層では、0.004g/L-catの含有量で下層にRhが含まれており、且つ、0.156g/L-catの含有量で上層にRhが含まれている。具体的には以下のとおりである。
サンプル3の二層構造触媒層の構成要素:
上層:アルミナ(Rh担持)、CZ複合酸化物(Rh担持)
下層:CZ複合酸化物(Rh担持)=既製微量Rh担持OSC材、
アルミナ(Pd担持)、CZ複合酸化物(Pd担持)、
【0033】
<試験例4:排ガス浄化用触媒の製造(4)>
[スラリー7(下層形成用スラリー)の調製]
Rh濃度を変更した硝酸ロジウム水溶液を使用することにより、Rh担持量を異ならせた以外は、上記のCZ複合酸化物粉末1を調製したときと同じ材料、同じプロセスにより、Rhが担持した状態のCZ複合酸化物粉末2(即ち既製微量Rh担持OSC材粉末2)を得た。
その後、かかるRh担持CZ複合酸化物粉末2と、上記Pd担持混合粉末と、アルミナバインダーとを質量比(Rh担持CZ粉末:Pd担持混合粉末:バインダー)=5:92:3で純水と混合し、スラリー7を調製した。ここで、スラリー7におけるRh含有量であるが、該スラリーを用いて触媒層を形成した際に触媒単位容積(1L)あたり0.012g/L-catとなるように調整した。
【0034】
[スラリー8(上層形成用スラリー)の調製]
Rh濃度を変更した硝酸ロジウム水溶液を使用することにより、Rh含有量を、触媒層を形成した際に触媒単位容積(1L)あたり0.148g/L-catとなるように調整した以外は、上記のスラリー2を調製したときと同じ材料、プロセスによってスラリー8を調製した。
【0035】
[排ガス浄化用触媒の作製(サンプル4)]
スラリー7(下層形成用スラリー)とスラリー8(上層形成用スラリー)を用いた以外は上記サンプル1の排ガス浄化用触媒作製と同様のプロセスにより、ハニカム基材上に上下二層からなる触媒層が形成されたサンプル4の排ガス浄化用触媒を得た。かかるサンプル4の触媒層では、0.012g/L-catの含有量で下層にRhが含まれており、且つ、0.148g/L-catの含有量で上層にRhが含まれている。具体的には以下のとおりである。
サンプル4の二層構造触媒層の構成要素:
上層:アルミナ(Rh担持)、CZ複合酸化物(Rh担持)
下層:CZ複合酸化物(Rh担持)=既製微量Rh担持OSC材、
アルミナ(Pd担持)、CZ複合酸化物(Pd担持)、
【0036】
<試験例5:排ガス浄化用触媒の製造(5)>
[スラリー9(下層形成用スラリー)の調製]
Rh濃度を変更した硝酸ロジウム水溶液を使用することにより、Rh担持量を異ならせた以外は、上記のCZ複合酸化物粉末1を調製したときと同じ材料、同じプロセスにより、Rhが担持した状態のCZ複合酸化物粉末3(即ち既製微量Rh担持OSC材粉末3)を得た。
その後、かかるRh担持CZ複合酸化物粉末3と、上記Pd担持混合粉末と、アルミナバインダーとを質量比(Rh担持CZ粉末:Pd担持混合粉末:バインダー)=5:92:3で純水と混合し、スラリー9を調製した。ここで、スラリー9におけるRh含有量であるが、該スラリーを用いて触媒層を形成した際に触媒単位容積(1L)あたり0.02g/L-catとなるように調整した。
【0037】
[スラリー10(上層形成用スラリー)の調製]
Rh濃度を変更した硝酸ロジウム水溶液を使用することにより、Rh含有量を、触媒層を形成した際に触媒単位容積(1L)あたり0.14g/L-catとなるように調整した以外は、上記のスラリー2を調製したときと同じ材料、プロセスによってスラリー10を調製した。
【0038】
[排ガス浄化用触媒の作製(サンプル5)]
スラリー9(下層形成用スラリー)とスラリー10(上層形成用スラリー)を用いた以外は上記サンプル1の排ガス浄化用触媒作製と同様のプロセスにより、ハニカム基材上に上下二層からなる触媒層が形成されたサンプル5の排ガス浄化用触媒を得た。かかるサンプル5の触媒層では、0.02g/L-catの含有量で下層にRhが含まれており、且つ、0.14g/L-catの含有量で上層にRhが含まれている。具体的には以下のとおりである。
サンプル5の二層構造触媒層の構成要素:
上層:アルミナ(Rh担持)、CZ複合酸化物(Rh担持)
下層:CZ複合酸化物(Rh担持)=既製微量Rh担持OSC材、
アルミナ(Pd担持)、CZ複合酸化物(Pd担持)、
【0039】
<試験例6:排ガス浄化用触媒の製造(6)>
[スラリー11(下層形成用スラリー)の調製]
Rh濃度を変更した硝酸ロジウム水溶液を使用することにより、Rh担持量を異ならせた以外は、上記のCZ複合酸化物粉末1を調製したときと同じ材料、同じプロセスにより、Rhが担持した状態のCZ複合酸化物粉末4(即ち既製微量Rh担持OSC材粉末4)を得た。
その後、かかるRh担持CZ複合酸化物粉末4と、上記Pd担持混合粉末と、アルミナバインダーとを質量比(Rh担持CZ粉末:Pd担持混合粉末:バインダー)=5:92:3で純水と混合し、スラリー11を調製した。ここで、スラリー11におけるRh含有量であるが、該スラリーを用いて触媒層を形成した際に触媒単位容積(1L)あたり0.024g/L-catとなるように調整した。
【0040】
[スラリー12(上層形成用スラリー)の調製]
Rh濃度を変更した硝酸ロジウム水溶液を使用することにより、Rh含有量を、触媒層を形成した際に触媒単位容積(1L)あたり0.136g/L-catとなるように調整した以外は、上記のスラリー2を調製したときと同じ材料、プロセスによってスラリー12を調製した。
【0041】
[排ガス浄化用触媒の作製(サンプル6)]
スラリー11(下層形成用スラリー)とスラリー12(上層形成用スラリー)を用いた以外は上記サンプル1の排ガス浄化用触媒作製と同様のプロセスにより、ハニカム基材上に上下二層からなる触媒層が形成されたサンプル6の排ガス浄化用触媒を得た。かかるサンプル6の触媒層では、0.024g/L-catの含有量で下層にRhが含まれており、且つ、0.136g/L-catの含有量で上層にRhが含まれている。具体的には以下のとおりである。
サンプル6の二層構造触媒層の構成要素:
上層:アルミナ(Rh担持)、CZ複合酸化物(Rh担持)
下層:CZ複合酸化物(Rh担持)=既製微量Rh担持OSC材、
アルミナ(Pd担持)、CZ複合酸化物(Pd担持)、
【0042】
<試験例6:OSC能評価試験>
上記得られたサンプル1〜6の排ガス浄化用触媒について、酸素吸蔵放出能(OSC能)を以下のようにして評価した。なお、OSC能の評価をより明瞭にするため、上記のとおりサンプル1〜6の排ガス浄化用触媒の触媒全体のRh含有量は同じである。
先ず、各サンプルに対して以下の耐久試験を行った。即ち、内燃機関の排気系の典型例として排気量4300ccのガソリンエンジンの排気管に各サンプル触媒を配置し、触媒温度(触媒床温)1000℃で50時間、リッチ、ストイキ及びリーンの状態の各排ガスを一定時間ずつ繰り返して供給した。かかる耐久試験後の各サンプルについてOSC能の評価を次のようにして行った。
【0043】
上記耐久試験終了後、各サンプルの排ガス浄化用触媒を、排気量2400ccのガソリンエンジンの排気系に取り付けた。また、各々のサンプルの下流にOセンサを取り付けた。そして、エンジンに供給する混合ガスの空燃比A/Fをリッチとリーンの間で所定時間ごとに交互に切り替えながら、Oセンサの挙動遅れから各サンプルの排ガス浄化用触媒の平均酸素吸放出量(O量)を算出した。結果を図3(サンプル1〜3)及び図4(サンプル1〜6)のグラフに示す。これらグラフに示す結果は、サンプル1の平均酸素吸放出量(O量)を1としたときの他のサンプルの相対値(相対評価)である。
【0044】
サンプル1とサンプル2の比較から、本試験例におけるような積層構造触媒層においては、微量Rh担持OSC材は上層よりも下層側に含ませることにより高いOSC能が得られることがわかる。しかし、サンプル2では、下層の微量Rh担持OSC材にさらにPdが担持されているため、RhがPdと合金化することにより、OSC能のより高い向上を阻んだものと考えられる。
【0045】
また、サンプル2とサンプル3の比較から、触媒層のOSC能の向上には、予め所定のOSC材に微量のRhを担持させてなる粉末材料(即ち上述の「既製微量Rh担持OSC材」)の使用が好ましいことがわかる。
また、サンプル3〜6の比較から、触媒層(下層)のRh担持OSC材(既製微量Rh担持OSC材)に含まれるRh含有量は、触媒単位容積(1L)あたり0.004〜0.012g/L-cat程度が特に好適な範囲であることがわかる。
以上の結果から明らかなように、ここで開示される微量Rh担持OSC材(特に「既製微量Rh担持OSC材」)を採用することによって、OSC材の単位容積当たりのOSC能の向上が図られ、より高性能な三元触媒その他の排ガス浄化用触媒を提供することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 基材
2 セル
4 リブ壁
6 触媒層
6A 上流
6B 下流
10 排ガス浄化用触媒
図1
図2
図3
図4