【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、電気分野、特に電子部品等の封止材に好ましく適用できる材料について種々検討したところ、エポキシ樹脂を含有する樹脂組成物において、無機充填剤としてシリカ及び複合金属水酸化物を併用することにより、難燃性を良好にするだけではなく、流動性にも優れた樹脂組成物とできることを見いだした。また、上記樹脂組成物において、エポキシ樹脂及びエポキシ硬化剤として用いられる複数の化合物の少なくとも1種の融点を100℃以上とすることにより、樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を高くすることができ、耐熱性に優れるものにできるとともに、難燃性も更に向上させることができること、更に、シルセスキオキサンを樹脂組成物に含有させることにより、ガラス転移温度が高い樹脂組成物に更に流動性を付与できることを見いだした。そしてこれらの各成分の相乗的な効果により、得られる樹脂組成物が流動性、耐熱性、及び、難燃性のいずれにも優れた樹脂組成物となることを見出し、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂を含有する封止材用樹脂組成物であって、該封止材用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物、アミン化合物及びフェノール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種、(C)有機基含有シルセスキオキサン、(D)シリカ及び(E)複合金属酸化物を含有してなり、かつ、該エポキシ樹脂、酸無水物、アミン化合物及びフェノール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種は融点が100℃以上であることを特徴とする封止材用樹脂組成物である。
【0009】
また、本発明は、前記(E)成分を、前記(D)成分100質量%に対して3〜50質量%含む上記封止材用樹脂組成物でもある。
更に、本発明は、前記(E)成分の平均粒子径が0.3〜2μmである上記封止材用樹脂組成物でもある。
また、本発明は、前記(D)成分の平均粒子径が5〜50μmであり、かつ、円形度が0.85〜0.98である上記封止材用樹脂組成物でもある。
【0010】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0011】
〔封止材用樹脂組成物〕
本発明の封止材用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)酸無水物、アミン化合物及びフェノール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種、(C)有機基含有シルセスキオキサン、(D)シリカ及び(E)複合金属酸化物を含有してなり、かつ、該エポキシ樹脂、酸無水物、アミン化合物及びフェノール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種は融点が100℃以上であるものである。
上記封止材用樹脂組成物(以下、樹脂組成物ともいう)に含有される各成分は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。また、これらを必須とする限り、他の成分を適宜含むこともできる。他の成分(添加剤)については、後述するとおりである。
【0012】
上記封止材用樹脂組成物において、(D)成分と(E)成分を併用することにより、難燃性を良好にするだけではなく、樹脂組成物の流動性も良好にすることができる。
【0013】
また、上記封止材用樹脂組成物においては、エポキシ樹脂、酸無水物、アミン化合物及びフェノール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種は、融点が100℃以上であることが必要である。これにより、上記封止材用樹脂組成物を用いて得た硬化物のTgを充分に向上させることができ、耐熱性及び難燃性に優れた硬化物を得ることができる。
エポキシ樹脂、酸無水物、アミン化合物及びフェノール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の融点は、102℃以上であることが好ましく、105℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることが更に好ましい。
また、エポキシ樹脂、酸無水物、アミン化合物及びフェノール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の融点の上限が、200℃以下であることが好適である。これにより、(C)成分とより充分に分子レベルで混じり合うことができるため、樹脂組成物により優れた流動性を付与することができる。より好ましくは190℃以下である。
本明細書中、融点とは、不活性雰囲気下で結晶が溶けて液状になる状態の温度(℃)を意味する。したがって、非晶質の化合物や、室温で既に液状のものは、融点を有しない。
当該融点は、例えば、示差走査熱量測定法(DSC)にて測定することができる。
【0014】
本発明の封止材用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、酸無水物、アミン化合物及びフェノール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種は融点が100℃以上であるものであるが、この中でも、少なくともアミン化合物の融点が100℃以上である形態、少なくともエポキシ樹脂の融点が100℃以上である形態、のいずれかが好ましい。より好ましくは、少なくともアミン化合物の融点が100℃以上である形態である。
【0015】
<(A)成分>
(A)成分のエポキシ樹脂としては、分子内に1個以上のエポキシ基を含む樹脂であれば特に限定されず、例えば、下記の樹脂等が挙げられる。
ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;該エポキシ樹脂を、ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等)と更に付加反応させることにより得られる高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール類(フェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、スフェノールS等)と、ホルムアルデヒド、アセトアルテヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、ジシクロペンタジエン、テルペン、クマリン、パラキシリレングリコールジメチルエーテル、ジクロロパラキシリレン、ビスヒドロキシメチルビフェニル等とを縮合反応させて得られる多価フェノール類を、更にエピハロヒドリンと縮合反応することにより得られるノボラック・アラルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等とエピハロヒドリンとの縮合反応により得られる芳香族結晶性エポキシ樹脂;該芳香族結晶性エポキシ樹脂に、更に、上記ビスフェノール類や、テトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等を付加反応させることにより得られる芳香族結晶性エポキシ樹脂の高分子量体;トリスフェノール型エポキシ樹脂;
【0016】
上記ビスフェノール類、芳香族骨格を水素化した脂環式グリコール類(テトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールF、ハイドロキノン、ナフタレンジオール等)、又は、単/多糖類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、PEG600、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、PPG、グリセロール、ジグリセロール、テトラグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン及びその多量体、ペンタエリスリトール及びその多量体、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等)と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られる脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂;該脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂を、上記ビスフェノール類と更に付加反応させることにより得られる高分子量脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂;(3,4−エポキシシクロヘキサン)メチル3′,4′−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等のエポキシシクロへキサン骨格を有するエポキシ樹脂;テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、安息香酸等と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ヒダントインや、シアヌール酸、メラミン、ベンゾグアナミン等と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られる室温で固形の3級アミン含有グリシジルエーテル型エポキシ樹脂;等。
【0017】
これらのエポキシ樹脂の中でも、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。また、より硬化性を高めるため、分子内に2個以上のエポキシ基を含む樹脂(多官能エポキシ樹脂)を用いることが好適である。
なお、本明細書中では、グリシジル基もエポキシ基に含むものとする。
【0018】
上記エポキシ樹脂は、重量平均分子量が200〜20000であるものが好適である。このような分子量のエポキシ樹脂を用いると、より充分に硬化した硬化物を得ることができる。より好ましくは220〜18000、更に好ましくは250〜15000である。
上記重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のポリスチレン換算の分子量として求めることができる。本発明においては、後述の実施例に記載の方法により重量平均分子量を測定する。
【0019】
上記封止材用樹脂組成物におけるエポキシ当量は、強靭な硬化物を得る等の点から、80〜10000g/molであることが好適である。より好ましくは90〜8000g/mol、更に好ましくは100〜5000g/molである。
なお、上記エポキシ当量は、エポキシ硬化剤((B)成分)との組合せにより好ましい値が変わるものであるので、上記範囲内で適宜変更することができる。例えば、硬化剤として、エポキシ基と反応する官能基の当量値が小さく架橋密度が高くなるようなものを用いる場合は、十分に強靭な硬化物を得るためにエポキシ当量が大きめのものを用いるのが好ましく、その逆の場合(硬化剤の当量値が大きい場合)は、エポキシ当量が小さめのものを用いるのが好ましい。
【0020】
(A)成分の含有量としては、特に限定されないが、流動、成形性の点から、封止材用樹脂組成物100質量%に対して、2〜30質量%とすることが好ましい。より好ましくは3〜25質量%、更に好ましくは5〜20質量%である。
【0021】
<(B)成分>
本発明の封止材用樹脂組成物においては、(B)成分として、酸無水物、アミン化合物及びフェノール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いる。
【0022】
(B)成分の酸無水物としては、エポキシ樹脂を硬化させることができるものであれば特に限定されないが、例えばメチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、メチルナジック酸無水物、メチルジシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。耐熱性の点から、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルナジック酸無水物が好ましい。
【0023】
(B)成分のアミン化合物としては、エポキシ樹脂を硬化させることができるものであれば特に限定されないが、例えば、芳香族アミン化合物、脂肪族アミン化合物、脂環族アミン化合物、ポリアミノアミド化合物等が挙げられ、耐熱性の点から芳香族アミン化合物が好ましい。
【0024】
上記芳香族アミン化合物としては、その構造中に芳香環骨格を有するアミン化合物であり、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物、第三級アミン化合物等が挙げられる。また、第一級アミン化合物及び/又は第二級アミン化合物を用いることが好適である。更に、1分子内のアミノ基の数は特に限定されないが、好ましくは1〜10個であり、より好ましくは2〜4個である。
上記芳香族アミン化合物としては、例えば、下記の化合物等が挙げられる。
【0025】
【化1】
【0026】
式中、A
1は、直接結合(−)、−C(CF
3)
2−、−C(CH
3)
2−、又は、−SO
2−を表す。A
2は、直接結合(−)、−C(CF
3)
2−、−C(CH
3)
2−、−S−、−SO
2−、−O−、又は、−(CH
2)
p−を表す。pは、1以上の数であり、例えば、1〜5の数が好ましい。A
3は、同一又は異なって、アミノ基(−NH
2)、又は、メチルアミノ基(−CH
2NH
2)を表す。R
a及びR
bは、同一又は異なって、水素原子(−H)、メチル基(−CH
3)、アミノ基(−NH
2)、又は、フッ素原子(−F)を表す。R
cは、同一又は異なって、水素原子(−H)、又は、メチル基(−CH
3)を表す。
【0027】
上記アミン化合物の分子量は、例えば、100〜1000であることが好適である。1000を超える高分子化合物であると、(C)成分と充分に混じり合うことができないおそれがある。また、100未満であると、耐熱分解性等が充分とはならないおそれがある。より好ましくは100〜800、更に好ましくは100〜600である。
【0028】
(B)成分のフェノール化合物としては、エポキシ樹脂を硬化させることができるものであれば特に限定されないが、例えば多価フェノール化合物等が挙げられる。
【0029】
上記多価フェノール化合物としては、フェノール性水酸基を少なくとも一つ有する芳香族骨格同士が、炭素数が2以上の有機骨格を介して結合してなる構造を有するものを好適に使用することができる。上記多価フェノール化合物において、芳香族骨格とは、フェノール性水酸基を少なくとも一つ有する芳香環である。この芳香族骨格は、フェノール型等の構造を有する部位であり、フェノール型、ハイドロキノン型、ナフトール型、アントラセノール型、ビスフェノール型、ビフェノール型等が好適である。これらの中でもフェノール型が好ましい。また、これらフェノール型等の構造を有する部位は、アルキル基、アルキレン基、アラルキル基、フェニル基、フェニレン基等によって適宜置換されていてもよい。
【0030】
上記多価フェノール化合物において、有機骨格とは、多価フェノール化合物を構成する芳香環骨格同士を結合し、炭素原子を必須とする部位を意味するものである。また、炭素数が2以上の有機骨格としては、環構造を有することが好ましい。環構造とは、脂肪族環、芳香族環等といった環を有する構造であり、環としては、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が好ましい。更に、有機骨格としては、トリアジン環、フォスファゼン環等の窒素原子を含有する環構造及び/又は芳香環を有することが好ましく、中でもトリアジン環及び/又は芳香環を有することが特に好ましい。なお、多価フェノール化合物は、上記以外の芳香族骨格や有機骨格を有していてもよく、また、フェノール性水酸基を少なくとも一つ有する芳香族骨格同士が、炭素数が1の有機骨格(メチレン)を介して結合してなる構造を同時に有していてもよい。
【0031】
(B)成分の含有量としては、強靭な硬化物を得る点から、(A)成分の官能基の当量と、上記酸無水物、アミン化合物及びフェノール化合物の総量の官能基の当量との比((A):(B))として、1.0:0.3〜1.0:3.4とすることが好ましい。より好ましくは1.0:0.4〜1.0:2.5、更に好ましくは1.0:0.5〜1.0:2.0である。
【0032】
<(C)成分>
上記封止材用樹脂組成物においては、(C)成分を含有させることにより、ガラス転移温度が高い樹脂組成物に、更に流動性を付与できる。
【0033】
(C)成分の有機基含有シルセスキオキサン(以下、単に「シルセスキオキサン」ともいう)は、シロキサン結合(Si−O−Si結合)を有し、かつ平均組成式(1):X
aY
bZ
cSiO
dで表される化合物である。このようなシルセスキオキサンを含むことで、耐熱性、耐圧性、機械的・化学的安定性、熱伝導率性に優れる硬化物を与えることが可能となる。また、高温高圧等の過酷な環境下においても各種物性低下が抑制された硬化物を形成でき、半導体封止材等の実装用途等に好適に使用することができる。
【0034】
上記シルセスキオキサンにおいて、シロキサン骨格(シロキサン結合を必須とする主鎖骨格)の構造は、例えば、鎖状(直鎖状又は分岐状)、ラダー状、網状、環状、かご状、キュービック状等が好ましく例示される。中でも、上記シルセスキオキサンの添加量が少量であっても効果が発揮されやすいため、ラダー状、網状、かご状であることが好ましい。より好ましくは、かご状であることである。すなわち、上記シルセスキオキサンは、ポリシルセスオキサンを含むことが好適である。
なお、上記シルセスキオキサンにおけるシロキサン骨格の占める割合としては、シルセスキオキサン100質量%中、10〜80質量%であることが好ましい。より好ましくは15〜70質量%、更に好ましくは20〜50質量%である。
【0035】
上記平均組成式(1):X
aY
bZ
cSiO
dにおいて、Xの好ましい形態は後述するとおりであるが、Yとしては、水酸基又はOR基が好適である。中でもOR基がより好ましく、更に好ましくは、Rが炭素数1〜8のアルキル基であるOR基である。また、Zとしては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等の芳香族残基、及び、不飽和脂肪族残基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい(これらは置換基を有していてもよい)。より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜8のアルキル基、又は、アリール基やアラルキル基等の芳香族残基である。また、Xの係数aは、0≦a<3の数であり、Yの係数bは、0≦b<3の数であり、Zの係数cは、0≦c<3未満の数であり、Oの係数dは、0<d<2の数である。
【0036】
上記シルセスキオキサンは、例えば、下記式(2):
【0037】
【化2】
【0038】
(式中、X、Y及びZは、各々上記と同様である。n
1及びn
2は、重合度を示す。n
1は、0でない正の整数であり、n
2は、0又は正の整数である。)で表すことができる。
なお、「Y/Z−」は、Y又はZが結合していることを表し、「X
1〜2−」は、Xが1又は2個結合していることを表し、「(Z/Y)
1〜2−」は、Z又はYが1個結合するか、Z又はYが2個結合するか、Z及びYが1個ずつ、合計2個結合することを表す。「Si−(X/Y/Z)
3」は、X、Y及びZから選ばれる任意の3種がケイ素原子に結合していることを示す。
上記式(2)において、Si−Om
1とSi−Om
2は、Si−Om
1とSi−Om
2の結合順序を規定するものではなく、例えば、Si−Om
1とSi−Om
2が交互又はランダムに共縮合している形態、Si−Om
1からなるポリシロキサンとSi−Om
2のポリシロキサンが結合している形態等が好適であり、縮合構造は任意である。
【0039】
上記シルセスキオキサンは、上記平均組成式(1)で表すことができるが、該シルセスキオキサンが有するシロキサン骨格(シロキサン結合を必須とする主鎖骨格)は、(SiO
m)
nと表すこともできる。このようなシルセスキオキサンにおける(SiO
m)
n以外の構造は、イミド結合を有する有機骨格(イミド結合を必須とする構造)X、水素原子や水酸基等のY、及び、イミド結合を含まない有機基Zであり、これらは主鎖骨格のケイ素原子に結合することとなる。
X、Y及びZは、「鎖」の形態となった繰り返し単位に含まれてもよく、含まれていなくてもよい。例えば、Xは、側鎖として1分子に1つ以上含まれていればよい。上記(SiO
m)
nにおいて、nは、重合度を表すが、該重合度は、主鎖骨格の重合度を表し、イミド結合を有する有機骨格は、必ずしもn個存在していなくてもよい。言い換えれば、(SiO
m)
nの1つの単位に必ず1つのイミド結合を有する有機骨格が存在していなくてもよい。また、イミド結合を有する有機骨格は、1分子中に1つ以上含まれていればよいが、複数含まれる場合、上述したように、1つのケイ素原子に2以上のイミド結合を有する有機骨格が結合していてもよい。これらは、以下においても同様である。
【0040】
上記主鎖骨格(SiO
m)
nにおいて、mは、1以上、2未満の数であることが好ましい。より好ましくはm=1.5〜1.8である。
上記nは、重合度を表し、1〜5000であることが好ましい。より好ましくは1〜2000、更に好ましくは1〜1000であり、特に好ましくは1〜200である。
上記nが2である場合のシルセスキオキサンとしては、ケイ素原子にイミド結合を有する有機骨格(X)が少なくとも1個結合してなる構成単位(以下、「構成単位(I)」とも称す)が2つ含まれる形態と、該構成単位(I)が1つしか含まれない形態が挙げられる。具体的には、下記式:
【0041】
【化3】
【0042】
(式中、AはY又はZであり、X、Y及びZは、各々上記と同様である。)等が好適であり、同一の構成単位(I)を2つ含むホモポリマーの形態と、異なる構成単位(I)を2つ含むホモポリマーの形態と、当該構成単位(I)を1つしか含まないコポリマーの形態(共縮合構造の形態)がある。
【0043】
上記平均組成式(1)において、Xは、イミド結合を含む有機骨格を表すが、イミド結合を有することで、(A)及び(B)成分との相溶性が良好となる。このようなイミド結合を有する有機骨格が占める割合としては、シルセスキオキサンに含まれるケイ素原子100モルに対して、20〜100モルであることが好ましい。より好ましくは50〜100モル、更に好ましくは70〜100モルである。
【0044】
上記平均組成式(1)におけるXは、下記式(3)で表される構成単位であることが好適である。すなわち、本発明のシルセスキオキサンは、上記平均組成式(1)中のXが、下記式(3):
【0045】
【化4】
【0046】
(式中、R
1は、芳香族、複素環及び脂環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。x及びzは、同一又は異なって、0以上5以下の整数であり、yは、0又は1である。)で表される構成単位である、シルセスキオキサンを含むことが好適である。このようなシルセスキオキサンを含むことで、硬化物の耐熱性が更に向上されることになる。
【0047】
上記式(3)で表される構成単位において、x及びzは、同一又は異なって、0以上5以下の整数である。また、yは、0又は1であり、0であることが好ましい。x+zとしては、0以上10以下の整数であればよいが、3〜7であることが好ましく、より好ましくは3〜5であり、特に好ましくは3である。
【0048】
また上記式(3)中、R
1は、芳香族、複素環及び脂環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。すなわち、R
1が芳香族化合物の環構造(芳香環)を有する基、複素環式化合物の環構造(複素環)を有する基及び脂環式化合物の環構造(脂環)を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることを表す。
上記R
1として具体的には、フェニレン基、ナフチリデン基、ノルボルネンの2価基、(アルキル)シクロヘキシレン基、シクロヘキセニル基等が好ましい。
なお、上記式(3)で表される構成単位は、R
1がフェニレン基である場合には下記式(3−1)で表される構成単位となり、R
1が(アルキル)シクロヘキシレン基である場合には下記式(3−2)で表される構成単位となり、R
1がナフチリデン基である場合には下記式(3−3)で表される構成単位となり、R
1がノルボルネンの2価基である場合には下記式(3−4)で表される構成単位となり、R
1がシクロヘキセニル基である場合には下記式(3−5)で表される構成単位となる。
【0049】
【化5】
【0050】
上記式(3−1)〜(3−5)中、x、y及びzは、各々上記式(3)と同様である。
上記式(3−1)中、R
2〜R
5は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R
2〜R
5としては、全てが水素原子である形態が好ましい。
上記式(3−2)中、R
6〜R
9及びR
6´〜R
9´は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子及び炭素数6〜14の芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R
6〜R
9及びR
6´〜R
9´としては、R
7若しくはR
8がメチル基で残りの全てが水素原子である形態、又は、R
6〜R
9及びR
6´〜R
9´全てが水素原子である形態、又は、R
6〜R
9及びR
6´〜R
9´全てがフッ素原子である形態が好ましい。より好ましくは、R
7又はR
8がメチル基で残りの全てが水素原子である形態である。
【0051】
上記式(3−3)中、R
10〜R
15は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R
10〜R
15としては、全てが水素原子である形態、又は、全てがフッ素原子である形態が好ましい。より好ましくは、全てが水素原子である形態である。
上記式(3−4)中、R
16〜R
21は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R
16〜R
21としては、全てが水素原子である形態、全てがフッ素原子である形態、又は、全てが塩素原子である形態のいずれかの形態が好ましい。より好ましくは、全てが水素原子である形態である。
上記式(3−5)中、R
22〜R
25、R
22´及びR
25´は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R
22〜R
25、R
22´及びR
25´としては、全てが水素原子である形態、全てがフッ素原子である形態、又は、全てが塩素原子である形態のいずれかの形態が好ましい。より好ましくは、全てが水素原子である形態である。
【0052】
上記式(3)で表される構成単位の中でも、下記式(3−6):
【0053】
【化6】
【0054】
(式中、R
26は、芳香族、複素環及び脂環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。)で表される構成単位であることが好適である。すなわち、本発明のシルセスキオキサンは、上記平均組成式(1)中のXが上記式(3−6)で表される構成単位である、シルセスキオキサンを含むことが好適である。なお、上記式(3−6)中のR
26は、上記式(3)において説明したR
1と同様であることが好ましい。
【0055】
上記シルセスキオキサンの特に好ましい形態としては、R
26がフェニレン基であるポリ(γ−フタロイミドプロピルシルセスキオキサン);R
26がメチルシクロヘキシレン基であるポリ{γ−(へキサヒドロ−4−メチルフタルイミド)プロピルシルセスキオキサン};R
26がナフチリデン基であるポリ{γ−(1,8−ナフタルイミド)プロピルシルセスキオキサン};R
26がノルボルネンの2価基であるポリ{γ−(5−ノルボルネン−2,3−イミド)プロピルシルセスキオキサン};R
26がシクロヘキセニル基であるポリ〔(cis−4−シクロヘキセン−1,2−イミド)プロピルシルセスキオキサン〕である。これらの化合物の構造は、
1H−NMR、
13C−NMR、MALDI−TOF−MSを測定して同定することができる。
【0056】
上記シルセスキオキサンを得る方法としては特に限定されないが、例えば、下記の製法(a)及び(b)等が挙げられる。
(a)上記シルセスキオキサンにおけるイミド結合を含む有機骨格Xに対応するアミド結合を有する有機骨格X´と、シロキサン結合とを有する平均組成式X´aYbZcSiOdで表される(シルセスキオキサンからなる)中間体を、イミド化させる工程を含む製造方法。
(b)上記シルセスキオキサンにおけるイミド結合を含む有機骨格Xに対応するイミド結合を有する有機骨格が、ケイ素原子に結合し、かつ加水分解性基を有するシルセスキオキサンよりなる中間体を、加水分解・縮合させる工程を含む製造方法。
【0057】
上記シルセスキオキサンの分子量は、例えば、数平均分子量が100〜10000であることが好適である。10000を超える高分子化合物であると、芳香族アミン化合物とより充分に混じり合うことができないおそれがある。また、100未満であると、耐熱分解性等が充分とはならないおそれがある。より好ましくは100〜800、更に好ましくは100〜600である。また、重量平均分子量は100〜10000であることが好適である。より好ましくは100〜800、更に好ましくは100〜600である。
当該分子量(数平均分子量及び重量平均分子量)は、例えば、後述する測定条件下、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
【0058】
(C)成分の含有量としては、高融点樹脂成分の総量100質量%に対して、10〜500質量%であることが好ましい。より好ましくは20〜400質量%、更に好ましくは30〜300質量%である。なお、「高融点樹脂成分」とは、(A)、(B)成分の内、融点が100℃以上のものを意味する。
(C)成分が10質量%未満であると、封止材用樹脂組成物に充分な流動性を付与することができないおそれがある。また、500質量%を超えると、(C)成分が樹脂組成物中に充分に分散できず、硬化物の架橋構造がより充分に均一とはならず、耐熱性をより高いものすることができないおそれがある。
【0059】
<(D)成分>
(D)成分のシリカとしては、無機充填材として用いられるものであれば特に限定されず、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ等が挙げられる。流動性の点から、好ましくは溶融シリカである。
【0060】
上記(D)成分の平均粒子径は、好ましくは5〜50μmである。より好ましくは7〜45μmであり、更に好ましくは10〜40μmである。
当該平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定により測定することができる。
【0061】
また、上記(D)成分の円形度は、樹脂組成物の流動性に優れたものとする点から、0.85〜0.98であることが好ましい。より好ましくは0.88〜0.98であり、更に好ましくは0.9〜0.98である。
当該円形度とは、粒子の投影像と同等の面積の円の円周と粒子の投影像の周囲長との比で表され、粒子像解析装置などを用いて測定することができる。
【0062】
上記(D)成分の含有量としては、封止材用樹脂組成物100質量%に対して、線膨張係数を低下させる点から、40〜95質量%であることが好ましい。より好ましくは50〜92質量%、更に好ましくは60〜90質量%である。
このように多量の(D)成分を用いることにより、本発明の封止材用樹脂組成物を例えば実装基板の封止材等を得るために用いた場合に、硬化後の基板の反り発生を充分に防ぐことが可能になる。
なお、本発明の封止材用樹脂組成物は、(D)成分を多量に含むものであっても、後述の(E)成分を併用することにより、流動性が良くなり、容易に調製できる。
【0063】
<(E)成分>
(E)成分の複合金属水酸化物としては、例えば、下記一般式(I)で表されるもの等が好ましく挙げられる。
m(M
aO
b)・n(Q
dO
e)・cH
2O ・・・(I)
〔上記式(I)において、MとQは互いに異なる金属元素であり、Mは、Al、Mg、Ca、Ni、Co、Sn、Zn、Cu、Fe及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を表し、Qは、周期表の第4〜12族に属する金属元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素を表す。m、n、a、b、c、d、eは、それぞれ正数であって、互いに同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。Mが複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、Qが複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。〕
【0064】
上記一般式(I)中の金属元素を示すMとしては、Al、Mg、Ca、Ni、Co、Sn、Zn、Cu、Fe及びTiからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素が挙げられ、好ましくは、Al、Mg、Znである。これらは単独でも2種以上でも用いることができる。
また、上記一般式(I)中のもう一つの金属元素を示すQは、周期表の第4〜12族に属する金属元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属元素である。例えば、Fe、Co、Ni、Pd、Cu、Zn等が好ましく挙げられる。これらは単独でも2種以上でも用いることができる。
なお、上記MとQの例示に重複するものがあるが、MとQが互いに異なるように金属元素を選択すればよい。
上記複合金属水酸化物の内、難燃性の点から、MとQの組合せとしては、好ましくはMgとZnの組合せ等である。
【0065】
上記(E)成分の平均粒子径は、好ましくは0.3〜2μmである。上記(D)成分の平均粒子径が上述した好ましい範囲である場合、(E)成分としてこのような平均粒子径を有するものを用いると、(D)成分と(E)成分との粒子径の相違により粒子のすべりが生じやすくなり、樹脂組成物の流動性がより向上する。
(E)成分の平均粒子径は、より好ましくは0.5〜1.8μmであり、更に好ましくは0.7〜1.5μmである。
当該平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定により測定することができる。
【0066】
上記(E)成分の形状は、特に限定されないが、(D)成分との併用による流動性向上効果をより優れたものとする点から、多面体状等であることが好ましい。
上記多面体状としては、偏平な形状ではないものであればよく、例えば、略4面体状、略8面体状、略12面体状、略16面体状等が好ましく挙げられ、球状に近いものがより好ましい。
【0067】
上記(E)成分の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、一例としてMがMgでQがZnの場合について述べると、以下のようである。
まず、水酸化マグネシウム水溶液に硝酸亜鉛化合物を添加し、原料となる部分複合化金属水酸化物を作製する。次いで、この原料を、約800〜1500℃の範囲で焼成することにより、複合化金属酸化物を作製する。この複合化金属酸化物は、m(MgO)・n(ZnO)の組成で示されるが、更に、酢酸を上記複合化金属酸化物に対して約0.1〜6mol%共存する水媒体中の系で強攪拌しながら40℃以上の温度で水和反応させることにより、m(MgO)・n(ZnO)・cH
2Oで示される複合化金属水酸化物を作製することができる。
【0068】
上記(E)成分の含有量としては、(D)成分100質量%に対して、(D)成分との併用による流動性向上効果をより優れたものとする点から、3〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは3.5〜45質量%、更に好ましくは4〜40質量%である。
【0069】
<イミド基を有する化合物>
本発明の樹脂組成物は、更にイミド基を有する化合物を含むことが好ましい。本発明の樹脂組成物が含むシルセスキオキサンが、分子内部に重合性不飽和炭素結合を有するものである場合、イミド基を有する化合物を含むと、シルセスキオキサンが架橋構造を形成することができ、これにより、本発明の樹脂組成物から得られる硬化物をより耐熱性の高いものとすることができる。
【0070】
上記イミド基を有する化合物としては、マレイミド化合物が好ましい。
上記マレイミド化合物としては、ビスマレイミド、例えば、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、N,N’−p,p’−ジフェニルジメチルシリルビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−メチレンビス(3−クロロ−p−フェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジシクロヘキシルメタンビスマレイミド、N,N’−ジメチレンシクロヘキサンビスマレイミド、N,N’−m−キシレンビスマレイミド、N,N’−4,4’−ジフェニルシクロヘキサンビスマレイミド、N−フェニルマレイミドとホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアルデヒドなどのアルデヒド化合物との共縮合物が好適である。また、下記一般式:
【0071】
【化7】
【0072】
(式中、R
27は、
【0073】
【化8】
【0074】
又は、
【0075】
【化9】
【0076】
よりなる2価の基を表す。Q
1は、2つの芳香環に直結する基であり、炭素数1〜10の2価の炭化水素基、6フッ素化されたイソプロピリデン基、カルボニル基、チオ基、スルフィニル基、スルホニル基及びオキシド基からなる群より選ばれる少なくとも一つの基を表す。)で表されるビスマレイミド化合物が好適である。具体的には、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、下記一般式:
【0077】
【化10】
【0078】
(式中、Q
2は、置換基があってもよい芳香環からなる2価の基を表す。nは、繰り返し数を表し、平均で0〜10の数である。)で表される化合物等が好適である。上記Q
2としては、具体的には、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等の2価の基(フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチリデン基等)が好ましい。
【0079】
本発明の樹脂組成物がイミド基を有する化合物を含む場合、シルセスキオキサンとイミド基を有する化合物の配合比率は両者の不飽和結合の当量(モル当量)比で10/90〜90/10、より好ましくは、15/85〜85/15であり、更に好ましくは、20/80〜80/20である。
【0080】
<他の成分>
上記封止材用樹脂組成物は、上述した(A)〜(E)成分以外の添加剤(以下、他の成分とも称す)を含有していてもよい。
上記他の成分としては、例えば、有機溶剤や希釈剤等の揮発成分、硬化促進剤、安定剤、離型剤、カップリング剤、着色剤、可塑剤、可撓化剤、各種ゴム状物、光感光剤、難燃剤、顔料等が挙げられる。これらは、1種でも2種以上でも用いることができる。
【0081】
上記揮発成分としては、特に限定されず、通常使用されるものを使用すればよい。
ここで、本発明の封止材用樹脂組成物は、揮発成分を極力含まないことが望まれる用途、例えば、実装用途、光学用途、オプトデバイス用途、機械部品用途、電機・電子部品用途、自動車部品用途等に用いることができるが、この場合、上記封止材用樹脂組成物100質量%中の揮発成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは実質的に揮発成分を含まないことである。実質的に揮発成分を含まないとは、揮発成分の含有量が、組成物を溶解させることができる量未満であることを意味し、例えば、上記封止材用樹脂組成物100質量%中に1質量%以下であることが好適である。なお、印刷インク用途等のように、揮発成分を含んでもよい用途に用いる場合にあっては、上記封止材用樹脂組成物は揮発成分を含んでいてもよく、このような形態も本発明の好適な実施形態の1つである。
【0082】
上記硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルヘキサデシルホスフォニウムブロマイド、トリブチルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン等の有機リン化合物等が挙げられる。これらは、1種でも2種以上でも用いることができる。
【0083】
上記封止材用樹脂組成物における他の成分の含有量としては、その合計量が、封止材用樹脂組成物の総量100質量%に対して、20質量%以下であることが好適である。より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0084】
上記封止材用樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、上記(B)成分と(C)成分を混合した後、これに(A)、(D)、(E)成分、及び、必要に応じて他の成分を添加して混合することにより製造することができる。
本発明の封止材用樹脂組成物は、(D)、(E)成分の併用、更に(C)成分の使用により流動性及び作業性を良好にできるため、上記各成分との混合工程は、特殊な機械を必要とすることなく容易に行うことができる。
封止材用樹脂組成物が固体である場合は、例えば、ニーダー、ロール、1軸押出混練機、2軸押出混練機等の、加熱混合で通常使用される混合機のいずれを用いても、好適に混合工程を行うことができる。
また、封止材用樹脂組成物が液体である場合は、例えば、ニーダー、ロール、1軸押出混練機、2軸押出混練機、プラネタリミキサー等の、通常使用される混合機のいずれを用いても、好適に混合工程を行うことができる。
【0085】
封止材用樹脂組成物が常温(23℃)で固体である場合は、175℃における粘度が1〜100Pa・sであることが好ましい。封止材用樹脂組成物がこのような適度な粘度を有するものであると、流動性に優れ、トランスファモールド成型等を行う際の成型性にも優れたものとなる。より好ましくは10〜70Pa・sである。
上記固体の封止材用樹脂組成物の粘度は、フローテスタを用いて、175℃で測定することができる。
封止材用樹脂組成物が常温(23℃)で液体である場合は、25℃における粘度が0.1〜200Pa・sであることが好ましい。封止材用樹脂組成物がこのような適度な粘度を有するものであると、流動性に優れ、ポッティング封止等を行う際の充填性に優れたものとなる。より好ましくは1〜100Pa・sである。
上記液体の封止材用樹脂組成物の粘度は、E型粘度計を用いて、25℃で測定することができる。
封止材用樹脂組成物が常温(23℃)で液体である場合は、更に、60℃における粘度が0.5〜60Pa・sであることが好ましい。封止材用樹脂組成物がこのような適度な粘度を有するものであると、流動性に優れ、ポッティング封止等を行う際の充填性に優れたものとなる。より好ましくは1〜50Pa・sである。
上記液体の封止材用樹脂組成物の粘度は、動的粘弾性測定装置を用いて、60℃で測定することができる。
【0086】
〔硬化物〕
本発明の封止材用樹脂組成物は、例えば、熱硬化することにより、硬化物とすることができる。硬化方法は特に限定されず、通常の熱硬化手法を採用すればよい。例えば、熱硬化温度は70〜250℃が好適であり、より好ましくは80〜200℃である。また、硬化時間は1〜15時間が好適であり、より好ましくは2〜10時間である。
上記硬化物の形状は、例えば、異形品等の成形体、フィルム、シート、ペレット等が挙げられる。このように、本発明の封止材用樹脂組成物を用いてなる硬化物(本発明の封止材用樹脂組成物から形成される硬化物)もまた、本発明の好ましい形態の1つである。
【0087】
上記硬化物は、熱機械分析装置(TMA)によるガラス転移温度が230℃以上であることが好適である。これにより、例えば、実装基板の封止材等のエレクトロニクス実装材料に、より好適に利用することができる。より好ましくは240℃以上、更に好ましくは245℃以上、特に好ましくは250℃以上である。
【0088】
上記硬化物は、本発明の封止材用樹脂組成物から得られることに起因して、ガラス転移温度が高く、耐熱性及び難燃性に優れるものであることから、例えば、実装用途、光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、電気・電子部品用途、自動車部品用途、印刷インク用途等の様々な用途に有用なものである。具体的には、封止材等のエレクトロニクス実装材料、ポッティング材、アンダーフィル材、導電性ペースト、絶縁ペースト、ダイポンド材、印刷インク等に好ましく使用される。中でも、エレクトロニクス実装材料に用いることがより好ましく、特に、実装基板の封止材に極めて有用である。封止材として特に好ましくは、半導体封止材である。また、上記硬化物を用いて構成された半導体装置やプリント配線板もまた、本発明の好ましい形態に含まれる。
【0089】
上記封止材は、例えば、半導体部品を封止する際に使用される部材であるが、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じ、例えば、硬化促進剤、安定剤、離型剤、カップリング剤、着色剤、可塑剤、可撓化剤、各種ゴム状物、光感光剤、充填材、難燃剤、顔料等を含むことができる。また、上記封止材は、揮発成分を多量に含むと不具合を生じるおそれがあるため、揮発成分を含まないことが望まれており、例えば、上記封止材100質量%中の揮発成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは実質的に揮発成分を含まないことである。