(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通過路を通過する前記被検出体の厚み方向の一方側に配置される第1コアと、前記被検出体の厚み方向の他方側に配置される第2コアとを有し、軟磁性材料で形成されるコア体を備え、
前記第1コアには、前記第2コアに向かって突出する第1凸部が形成され、
前記第2コアには、前記第1凸部に向かって突出する第2凸部が形成され、
前記被検出体の厚み方向において、前記永久磁石は、前記通過路と前記第1凸部との間に配置され、前記磁気センサは、前記通過路と前記第2凸部との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載のコイン状被検出体識別装置。
前記磁気センサは、磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス素子、ホール素子またはフラックスゲート素子のいずれかであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のコイン状被検出体識別装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
(コイン状被検出体識別装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるコイン状被検出体識別装置1の斜視図である。
図2は、
図1に示すコイン状被検出体識別装置1を上下反転させた状態の縦断面図である。
図3は、
図2に示す第1検出機構4を底面側から示す斜視図である。
【0025】
本形態のコイン状被検出体識別装置1は、コイン状の被検出体であるメダル2の真贋を識別したり、真のメダル2が良品であるのかそれとも不良品であるのか(すなわち、真のメダル2に摩耗や変形等が生じて不良品になっているのか否か)を識別したりするための装置であり、スロットマシン(図示省略)に搭載されて使用される。すなわち、本形態のコイン状被検出体識別装置1は、スロットマシンのメダル投入口から投入されたメダル2の真贋等を識別するための装置である。したがって、以下では、本形態のコイン状被検出体識別装置1を「メダル識別装置1」とする。このメダル識別装置1は、
図1、
図2に示すように、ケース体3と、ケース体3に収容される第1検出機構4および第2検出機構5とを備えている。また、メダル識別装置1の内部には、メダル2が通過する通過路PWが形成されている。メダル2は、金属材料で形成されている。また、メダル2は、円板状に形成されている。
【0026】
以下の説明では、
図1等に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、X1方向側を「右」側、X2方向側を「左」側、Y1方向側を「前」側、Y2方向側を「後(後ろ)」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。本形態では、メダル2は、上側から下側に向かって通過路PWを通過する。すなわち、上下方向は、通過路PWを通過するメダル2の通過方向である。
【0027】
ケース体3は、樹脂材料で形成されている。また、ケース体3は、ケース体3の上面を構成する上面部3aと、ケース体3の前後左右の4つの側面を構成する側面部3bとを有する略直方体の箱状に形成されている。ケース体3の下面は開口している。ケース体3の下面の開口部分は、カバー部材7によって覆われている。このカバー部材7は、薄い平板状に形成されている。また、ケース体3の内部の下端側には、回路基板6が固定されている。上面部3aには、上面部3aの上面から下側に向かって窪む凹部3cが形成されている。凹部3cは、カバー部材17によって覆われている。このカバー部材17は、薄い平板状に形成されている。本形態では、上面部3aの下側に第1検出機構4が配置され、凹部3cに第2検出機構5が配置されている。
【0028】
カバー部材17には、メダル2が通過するスリット状の通過孔17a(
図1参照)が形成されている。上面部3a、回路基板6およびカバー部材7にも、メダル2が通過するスリット状の通過孔が形成されている。上面部3a、回路基板6およびカバー部材7に形成される通過孔および通過孔17aは、通過路PWの一部を構成している。ケース体3には、通過孔17aへメダル2を案内するためのガイド部材(図示省略)が固定されている。
【0029】
回路基板6は、ガラスエポキシ基板等のリジット基板であり、略長方形の平板状に形成されている。回路基板6には、銅箔等の導電性材料からなる導体パターンが形成されている。回路基板6は、その厚み方向が上下方向と一致するようにケース体3の内部に配置されており、第1検出機構4の下面を覆っている。カバー部材17は、金属で形成されている。側面部3bを構成する4つの側面の前後左右の外側面には、平板状に形成される薄い金属板(図示省略)が固定されている。回路基板6、カバー部材17および側面部3bに固定される金属板は、メダル識別装置1の外部の電磁波から第1検出機構4および第2検出機構5を保護するための電磁シールドとして機能している。
【0030】
(第1検出機構および第2検出機構の構成)
図4は、
図3に示す状態から励磁用コイル8、検出用コイル9およびボビン20、21を取り外した状態の斜視図である。
図5は、
図3に示す環状コア11の斜視図である。
図6は、
図3に示す環状コア11の底面図である。
図7は、
図2に示す第2検出機構5の平面図である。
図8は、
図2に示す第2検出機構5の側面図である。
【0031】
第1検出機構4は、
図3、
図4に示すように、励磁用コイル8と、検出用コイル9、10と、励磁用コイル8および検出用コイル9、10が巻回される環状コア11とを備えている。環状コア11は、軟磁性材料によって形成されている。たとえば、環状コア11は、フェライト、アモルファス、パーマロイ等の鉄系の軟磁性材料によって形成されている。また、環状コア11は、薄い平板状に形成されている。たとえば、環状コア11の厚みは、0.5mm程度となっている。
【0032】
本形態では、環状コア11の厚み方向と上下方向とが一致するように、メダル識別装置1が配置されており、メダル2は、上述のように、上側から下側に向かって通過路PWを通過する。すなわち、本形態では、環状コア11の厚み方向とメダル2の通過方向とが一致している。また、前後方向は、通過路PWを通過するメダル2の厚み方向である。なお、本形態の左右方向は、メダル2の通過方向とメダル2の厚み方向とに直交する直交方向である。
【0033】
環状コア11は、環状に形成されている。具体的には、環状コア11は、左右方向に細長い略四角環状に形成されている。この環状コア11は、環状コア11の前側部分を構成するとともに左右方向と平行に配置される略直線状のコア12と、環状コア11の後ろ側部分を構成するとともにコア12と平行に配置される略直線状のコア13と、コア12の右端とコア13の右端とを繋ぐとともに前後方向と平行に配置される直線状の連結コア14と、コア12の左端とコア13の左端とを繋ぐとともに連結コア14と平行に配置される直線状の連結コア15とから構成されている。本形態の環状コア11は、プレスの打ち抜き加工によって形成されており、コア12、13と連結コア14、15とは一体で形成されている。本形態のコア12は、第4コアであり、コア13は、第3コアである。
【0034】
コア12とコア13とは、同形状に形成されており、連結コア14と連結コア15とは、同形状に形成されている。また、環状コア11は、
図6に示すように、前後方向における環状コア11の中心位置を通過する左右方向に平行な中心線CL1に対して線対称な形状に形成されるとともに、左右方向における環状コア11の中心位置を通過する前後方向に平行な中心線CL2に対して線対称な形状に形成されている。
【0035】
コア12には、コア13に向かって(すなわち、後ろ側に向かって)突出する凸部12a、12b、12cが形成されている。凸部12a〜12cの前端(すなわち、凸部12a〜12cの基端)は、コア12の基部12dに繋がっている。凸部12a〜12cは、長方形状に形成されている。凸部12a〜12cの後端面(すなわち、先端面)は、左右方向と平行になっており、凸部12a〜12cの左右の端面は、前後方向と平行になっている。また、凸部12a〜12cの後端面は、前後方向において同じ位置に配置されている。
【0036】
凸部12aは、右端側に配置され、凸部12bは、左端側に配置され、凸部12cは、凸部12aと凸部12bとの間に配置されている。具体的には、凸部12cは、左右方向における凸部12cの中心とコア12の中心とが一致するように配置され、凸部12aと凸部12bとは、中心線CL2を対称軸とする線対称の位置に配置されている。凸部12aと凸部12bとは同形状に形成されており、コア12は、中心線CL2に対して線対称な形状に形成されている。
【0037】
左右方向において、凸部12aと連結コア14との間には、隙間が形成され、凸部12bと連結コア15との間には、隙間が形成されている。また、左右方向において、凸部12aと凸部12cとの間には、隙間が形成され、凸部12bと凸部12cとの間には、隙間が形成されている。また、凸部12aと凸部12cとの間の基部12dの後端面12eと、凸部12bと凸部12cとの間の基部12dの後端面12fとは、前後方向に直交する平面状に形成されるとともに、前後方向において同じ位置に配置されている。凸部12aと連結コア14との間の基部12dの後端面12gと、凸部12bと連結コア15との間の基部12dの後端面12hとは、前後方向に直交する平面状に形成されるとともに、前後方向において同じ位置に配置されている。また、後端面12e、12fは、後端面12g、12hよりも前側に配置されている。
【0038】
上述のように、コア13は、コア12と同形状に形成されており、中心軸CL1を対称軸とする線対称の位置に配置されている。コア13には、コア12に向かって(すなわち、前側に向かって)突出する凸部13a、13b、13cが形成されている。凸部13a〜13cの後端(すなわち、凸部13a〜13cの基端)は、コア13の基部13dに繋がっている。凸部13a〜13cは、凸部12a〜12cと同形状に形成されており、凸部13a〜13cの前端面(すなわち、先端面)は、前後方向において同じ位置に配置されている。
【0039】
左右方向において、凸部13aは、凸部12aと同じ位置に配置され、凸部13bは、凸部12bと同じ位置に配置され、凸部13cは、凸部12cと同じ位置に配置されている。すなわち、凸部13aは、凸部12aに向かって突出し、凸部13bは、凸部12bに向かって突出し、凸部13cは、凸部12cに向かって突出している。コア12と同様に、コア13は、中心線CL2に対して線対称な形状に形成されている。
【0040】
また、左右方向において、凸部13aと連結コア14との間には、隙間が形成され、凸部13bと連結コア15との間には、隙間が形成されている。また、左右方向において、凸部13aと凸部13cとの間には、隙間が形成され、凸部13bと凸部13cとの間には、隙間が形成されている。また、凸部13aと凸部13cとの間の基部13dの前端面13eと、凸部13bと凸部13cとの間の基部13dの前端面13fとは、前後方向に直交する平面状に形成されるとともに、前後方向において同じ位置に配置されている。凸部13aと連結コア14との間の基部13dの前端面13gと、凸部13bと連結コア15との間の基部13dの前端面13hとは、前後方向に直交する平面状に形成されるとともに、前後方向において同じ位置に配置されている。また、前端面13e、13fは、前端面13g、13hよりも後ろ側に配置されている。
【0041】
前後方向における凸部12a〜12cと凸部13a〜13cとの間は、通過路PWの一部となっている。通過路PWは、左右方向に細長い長方形状に形成されている。上述のように、ケース体3には、通過孔17aへメダル2を案内するためのガイド部材が固定されている。このガイド部材は、凸部12a、13aの右端面と凸部12b、13bの左端面との間で、メダル2が通過するように、メダル2を通過孔17aへ案内している。すなわち、凸部12a、13aの右端面と凸部12b、13bの左端面との左右方向の距離L1(
図6参照)は、通過路PWの左右方向の幅と等しくなっている。また、通過路PWの左右方向の幅は、メダル2の外径よりも大きくなっている。すなわち、距離L1は、メダル2の外径よりも大きくなっている。具体的には、通過路PWの左右方向の幅は、スロットマシンのメダル投入口から投入されることが想定されるメダル2であって、最も大きな外径を有するメダル2の外径よりも大きくなっており、この最も大きな外径を有するメダル2の外径よりも距離L1は大きくなっている。
【0042】
また、凸部12c、13cは、左右方向における通過路PWのどの位置をメダル2が通過しても、前後方向から見たときに、凸部12c、13cの全体がメダル2と重なるように形成され、また、配置されている。すなわち、凸部12a、13aの右端面または凸部12b、13bの左端面と、メダル2の外周端とが一致するように、メダル2が通過路PWを通過したとしても、前後方向から見たときに、凸部12c、13cの全体がメダル2と重なるように、凸部12c、13cが形成され配置されている。
【0043】
さらに、前後方向における凸部12a〜12cと凸部13a〜13cとの距離L2(より具体的には、前後方向における凸部12a〜12cの後端面と凸部13a〜13cの前端面との距離L2、
図6参照)は、左右方向における凸部12a、13aの右端面と連結コア14の左端面との距離L3(
図6参照)、および、左右方向における凸部12b、13bの左端面と連結コア15の右端面との距離L4(
図6参照)よりも短くなっている。また、前後方向における凸部12cと凸部13cとの距離L2は、凸部12cと凸部13aとの最短距離(すなわち、凸部12cの右端面の後端と凸部13aの左端面の前端との最短距離)、および、凸部12cと凸部13bとの最短距離(すなわち、凸部12cの左端面の後端と凸部13bの右端面の前端との最短距離)よりも短くなっている。
【0044】
また、左右方向における凸部12a、13aの右端面と凸部12b、13bの右端面との距離L5、および、左右方向における凸部12a、13aの左端面と凸部12b、13bの左端面との距離L6は、メダル2の外径よりも小さくなっている。具体的には、距離L5、L6は、スロットマシンのメダル投入口から投入されることが想定されるメダル2であって、最も小さな外径を有するメダル2の外径よりも小さくなっている。
【0045】
励磁用コイル8は、凸部12a〜12cに巻回されている。具体的には、
図3に示すように、凸部12a〜12cの上下両面、凸部12aの右端面および凸部12bの左端面を覆う略四角筒状のボビン20を介して、励磁用コイル8が凸部12a〜12cに巻回されている。すなわち、励磁用コイル8は、凸部12a〜12cがその内周側に配置されるように、ボビン20を介して凸部12a〜12cに巻回されている。ボビン20の前端面は、コア12の後端面12g、12hに当接している。また、ボビン20には、端子ピン23が固定されている。端子ピン23には、励磁用コイル8が電気的に接続されている。端子ピン23は、下側へ突出しており、端子ピン23の下端側は、回路基板6に電気的に接続されるとともに固定されている。
【0046】
検出用コイル9は、凸部13a〜13cに巻回されている。具体的には、
図3に示すように、凸部13a〜13cの上下両面、凸部13aの右端面および凸部13bの左端面を覆う略四角筒状のボビン21を介して、検出用コイル9が凸部13a〜13cに巻回されている。すなわち、検出用コイル9は、凸部13a〜13cがその内周側に配置されるように、ボビン21を介して凸部13a〜13cに巻回されている。ボビン21の後端面は、コア13の前端面13g、13hに当接している。また、ボビン21には、端子ピン24が固定されている。端子ピン24には、検出用コイル9が電気的に接続されている。端子ピン24は、下側へ突出しており、端子ピン24の下端側は、回路基板6に電気的に接続されるとともに固定されている。
【0047】
検出用コイル10は、凸部13cに巻回されている。具体的には、
図4に示すように、凸部13cの上下両面および左右の両端面を覆う略四角筒状のボビン22を介して、検出用コイル10が凸部13cに巻回されている。すなわち、検出用コイル10は、凸部13cがその内周側に配置されるように、ボビン22を介して凸部13cに巻回されている。ボビン22の後端面は、コア13の前端面13e、13fに当接している。また、ボビン22には、端子ピン25が固定されている。端子ピン25には、検出用コイル10が電気的に接続されている。端子ピン25は、下側へ突出しており、端子ピン25の下端側は、回路基板6に電気的に接続されるとともに固定されている。
【0048】
第2検出機構5は、永久磁石29と、磁気センサ30と、コア体としての環状コア31とを備えている。環状コア31は、環状コア11と同様に、軟磁性材料によって形成されている。たとえば、環状コア31は、フェライト、アモルファス、パーマロイ等の鉄系の軟磁性材料によって形成されている。また、環状コア31は、薄い平板状に形成されており、その厚みは、0.5mm程度となっている。この環状コア31は、その厚み方向と上下方向とが一致するように配置されており、環状コア31の厚み方向とメダル2の通過方向とが一致している。
【0049】
環状コア31は、環状に形成されている。具体的には、環状コア31は、左右方向に細長い略四角環状に形成されている。この環状コア31は、環状コア31の前側部分を構成するとともに左右方向と平行に配置される略直線状のコア32と、環状コア31の後ろ側部分を構成するとともにコア32と平行に配置される略直線状のコア33と、コア32の右端とコア33の右端とを繋ぐとともに前後方向と平行に配置される直線状の連結コア34と、コア32の左端とコア33の左端とを繋ぐとともに連結コア34と平行に配置される直線状の連結コア35とから構成されている。本形態の環状コア31は、プレスの打ち抜き加工によって形成されており、コア32、33と連結コア34、35とは一体で形成されている。本形態のコア32は、第2コアであり、コア33は、第1コアである。また、連結コア34は、第1連結コアであり、連結コア35は、第2連結コアである。
【0050】
コア32とコア33とは、同形状に形成されており、連結コア34と連結コア35とは、同形状に形成されている。環状コア31は、上下方向から見たときに、環状コア31の中心と環状コア11の中心とが略一致するように配置されており、上述の中心線CL1に対して線対称な形状に形成されるとともに、中心線CL2に対して線対称な形状に形成されている。
【0051】
コア32には、コア33に向かって(すなわち、後ろ側に向かって)突出する第2凸部としての凸部32aが形成されている。凸部32aは、長方形状に形成されている。凸部32aの後端面(すなわち、先端面)は、左右方向と平行になっており、凸部32aの左右の端面は、前後方向と平行になっている。また、凸部32aは、左右方向における凸部32aの中心とコア32の中心とが一致するように配置されている。コア33には、コア32に向かって(すなわち、前側に向かって)突出する第1凸部としての凸部33aが形成されている。凸部33aは、凸部32aと同形状に形成されている。また、左右方向において、凸部33aは、凸部32aと同じ位置に配置されている。すなわち、凸部33aは、凸部32aに向かって突出している。
【0052】
永久磁石29は、略長方形の平板状に形成されている。この永久磁石29は、その厚み方向と前後方向とが一致するようにケース体3に固定されている。永久磁石29は、その前面の磁極とその後面の磁極とが異なる磁極となるように着磁されている。磁気センサ30は、磁気抵抗効果素子、磁気インピーダンス素子、ホール素子またはフラックスゲート素子のいずれかである。この磁気センサ30は、基板36に実装されている。基板36は、ケース体3に固定されている。基板36には、図示を省略するリード線の一端が電気的に接続されている。このリード線の他端は、回路基板6に電気的に接続されている。
【0053】
永久磁石29と磁気センサ30とは、通過路PWを挟んで互いに対向配置されている。すなわち、永久磁石29と磁気センサ30との間は、通過路PWの一部となっている。永久磁石29および磁気センサ30は、上下方向における環状コア31の中心と上下方向における永久磁石29および磁気センサ30の中心とが一致するように配置されている。また、永久磁石29および磁気センサ30は、左右方向における凸部32a、33aの中心と左右方向における永久磁石29および磁気センサ30の中心とが一致するように配置されている。また、永久磁石29は、凸部33aの前側に配置され、磁気センサ30は、基板36を介して凸部32aの後ろ側に配置されている。すなわち、前後方向において、永久磁石29は、通過路PWと凸部33aとの間に配置され、磁気センサ30は、通過路PWと凸部32aとの間に配置されている。
【0054】
第1検出機構4は、ケース体3の上面部3aの下側で、ケース体3に保持されている。
図2に示すように、ケース体3には、ボビン20、21の上面が当接するボビン当接面3dと、環状コア11の外周側部分が当接可能なコア支持面3eとが上下方向に直交する平面状に形成されている。また、ケース体3の内側には、端子ピン24、25とケース体3との干渉を防止するための逃げ部3gが形成されている。また、ケース体3には、回路基板6が固定される基板固定面3fが上下方向に直交する平面状に形成されている。
【0055】
第2検出機構5は、上面部3aの凹部3cの中でケース体3に保持されている。すなわち、第1検出機構4を構成する励磁用コイル8、検出用コイル9および環状コア11と、第2検出機構5を構成する永久磁石29、磁気センサ30および環状コア31とは、上下方向において、互いにずれた位置でケース体3に保持されている。また、永久磁石29、磁気センサ30および環状コア31は、励磁用コイル8、検出用コイル9および環状コア11よりも、メダル2の通過方向において上流側に配置されている。凹部3cの底面3hは、上下方向に直交する平面状に形成されており、底面3hに環状コア31の外周側部分が固定されている。
【0056】
(コイン状被検出体識別装置の回路構成)
図9は、
図1に示すメダル識別装置1の回路ブロック図である。
図10は、
図9に示す検出用コイル9からの出力に基づいて生成されるコイル出力信号SG1、検出用コイル10からの出力に基づいて生成されるコイル出力信号SG2および磁気センサ30からの出力に基づいて生成されるセンサ出力信号SG3を説明するための図である。
図11は、
図9に示す磁気センサ30からの出力に基づいて生成されるセンサ出力信号SG3を説明するための図である。
【0057】
図9に示すように、励磁用コイル8を構成する導線の一端には、交流電源41が接続され、励磁用コイル8を構成する導線の他端は接地されている。検出用コイル9を構成する導線の一端は、増幅回路42、整流回路43およびレベル調整回路44を介して制御部としてのMPU(Micro Processing Unit)45に接続され、検出用コイル9を構成する導線の他端は接地されている。検出用コイル10を構成する導線の一端は、増幅回路46、整流回路47およびレベル調整回路48を介してMPU45に接続され、検出用コイル10を構成する導線の他端は接地されている。レベル調整回路44とMPU45との間には、コンパレータ50が並列に接続されている。また、磁気センサ30は、増幅回路51を介してMPU45に接続されている。増幅回路42、46、51、整流回路43、47、レベル調整回路44、48、MPU45およびコンパレータ50は、回路基板6に実装されている。なお、増幅回路51は、基板36に実装されても良い。
【0058】
第1検出機構4では、交流電源41から供給される電力によって励磁用コイル8が環状コア11の内周側に交流磁界を発生させている状態でメダル2が通過路PWを通過すると、メダル2に生じる渦電流の影響によって(すなわち、渦電流損失によって)環状コア11の内周側の交流磁界が変動する。環状コア11の内周側の交流磁界が変動すると、検出用コイル9からの出力のレベルおよび検出用コイル10からの出力のレベルが変動する。
【0059】
上述のように、検出用コイル9を構成する導線の一端は、増幅回路42、整流回路43およびレベル調整回路44を介して、MPU45に接続されており、検出用コイル9からの出力に基づいて生成されるアナログ状のコイル出力信号SG1がレベル調整回路44からMPU45へ入力される。同様に、検出用コイル10を構成する導線の一端は、増幅回路46、整流回路47およびレベル調整回路48を介してMPU45に接続されており、検出用コイル10からの出力に基づいて生成されるアナログ状のコイル出力信号SG2がレベル調整回路48からMPU45へ入力される。
【0060】
本形態では、励磁用コイル8が交流磁界を発生させている状態でメダル2が通過路PWを通過すると、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルが大きくなるように、メダル識別装置1の回路が構成されている。たとえば、1枚のメダル2が第1検出機構4を通過すると、
図10(A)、(B)に示すように信号レベルが変動するコイル出力信号SG1、SG2がMPU45へ入力される。
【0061】
また、上述のように、凸部12a、13aの右端面と凸部12b、13bの左端面との左右方向の距離L1は、通過路PWの左右方向の幅と等しくなっており、検出用コイル9は、凸部13a〜13cの上下両面、凸部13aの右端面および凸部13bの左端面を覆うように、ボビン21を介して凸部13a〜13cに巻回されている。そのため、検出用コイル9からの出力に基づくコイル出力信号SG1の信号レベルは、第1検出機構4を通過するメダル2の材質、厚みおよび外径の影響によって変動する。
【0062】
一方、凸部12c、13cは、凸部12a、13aと凸部12b、13bとの間に配置されるとともに、左右方向における通過路PWのどの位置をメダル2が通過しても、前後方向から見たときに、凸部12c、13cの全体がメダル2と重なるように形成され配置されており、検出用コイル10は、凸部13cに巻回されている。そのため、検出用コイル10からの出力に基づくコイル出力信号SG2の信号レベルは、主として、第1検出機構4を通過するメダル2の材質および厚みの影響によって変動する。
【0063】
ここで、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルは、メダル識別装置1の周囲温度の変動等の影響によって変動することがある。本形態では、メダル識別装置1の周囲温度の変動等が生じても、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルがMPU45での測定可能範囲から外れてしまうのを防止するため、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルが定期的に調整されている。具体的には、コイル出力信号SG1の信号レベルに基づいてMPU45から出力されレベル調整回路44に入力されるレベル調整信号に基づいて、レベル調整回路44がコイル出力信号SG1の信号レベルを定期的に調整し、コイル出力信号SG2の信号レベルに基づいてMPU45から出力されレベル調整回路48に入力されるレベル調整信号に基づいて、レベル調整回路48がコイル出力信号SG2の信号レベルを定期的に調整している。
【0064】
また、本形態では、MPU45は、コイル出力信号SG1の信号レベルが所定の閾値th以上となっているときに、コイル出力信号SG1、SG2の信号値を取得する。具体的には、まず、コンパレータ50が、レベル調整回路44から入力されるコイル出力信号SG1の信号レベルと閾値thとを比較し、比較結果をMPU45へ出力する。また、MPU45は、コイル出力信号SG1の信号レベルが閾値th以上となっているときのコイル出力信号SG1、SG2の信号値を取得する。
【0065】
メダル2の種類によって、その材質、厚みおよび径が変わるため、第1検出機構4を通過するメダル2の種類に応じて、コイル出力信号SG1の信号レベルのピーク値P1、および、コイル出力信号SG2の信号レベルのピーク値P2が変わる。そのため、MPU45は、ピーク値P1とピーク値P2とに基づいて、第1検出機構4を通過するメダル2の材質、厚みおよび径が、メダル識別装置1が搭載されるスロットマシンで使用されるべきメダル2の材質、厚みおよび径に適しているか否かを識別する。
【0066】
具体的には、MPU45は、メダル2が第1検出機構4を通過する前のコイル出力信号SG1の信号レベルである基準値とピーク値P1との差ΔL1が所定の範囲内にあり、かつ、メダル2が環状コア11を通過する前のコイル出力信号SG2の信号レベルである基準値とピーク値P2の差ΔL2が所定の範囲内にある場合に、第1検出機構4を通過するメダル2の材質、厚みおよび径が、メダル識別装置1が搭載されるスロットマシンで使用されるべきメダル2の材質、厚みおよび径に適していると判断し、ΔL1が所定の範囲から外れていたり、ΔL2が所定の範囲から外れていたりする場合に、第1検出機構4を通過するメダル2の材質、厚みおよび径が、メダル識別装置1が搭載されるスロットマシンで使用されるべきメダル2の材質、厚みおよび径に適していないと判断する。
【0067】
上述のように、磁気センサ30は、増幅回路51を介してMPU45に接続されており、磁気センサ30からの出力に基づいて生成されるアナログ状のセンサ出力信号SG3が増幅回路51からMPU45へ入力される。ここで、永久磁石29と磁気センサ30との間をメダル2が通過すると、永久磁石29が発生させる直流磁界の影響で、金属製のメダル2に渦電流が生じる。このとき、メダル2の、永久磁石29よりも上側の部分に生じる渦電流の方向と、メダル2の、永久磁石29よりも下側の部分に生じる渦電流の方向とは逆の方向となる。そのため、この渦電流の影響のみを考慮すると、1枚のメダル2が第2検出機構5を通過した場合に、センサ出力信号SG3の信号レベルは、たとえば、
図11(A)に示すように変動する。なお、渦電流の影響のみを考慮した場合のセンサ出力信号SG3の信号レベルのピーク値およびボトム値は、第2検出機構5を通過する際のメダル2の速度に応じて変動する。
【0068】
また、磁性を有するメダル2が永久磁石29と磁気センサ30との間を通過すると、永久磁石29と磁気センサ30との間の直流磁界が遮られるため、磁気センサ30を通過する直流磁界が変動する。本形態では、永久磁石29が発生させる直流磁界の中を、磁性を有するメダル2が通過すると、センサ出力信号SG3の信号レベルが大きくなるように、メダル識別装置1の回路が構成されており、直流磁界の変動のみを考慮すると、1枚のメダル2が第2検出機構5を通過した場合に、センサ出力信号SG3の信号レベルは、たとえば、
図11(B)に示すように変動する。そのため、メダル2に生じる渦電流の影響と磁気センサ30を通過する直流磁界の変動とを考慮すると、センサ出力信号SG3の信号レベルは、たとえば、
図11(C)に示すように変動する。
【0069】
以上から、非磁性のメダル2が第2検出機構5を通過すると、たとえば、
図11(A)に示すように信号レベルが変動するセンサ出力信号SG3がMPU45に入力され、磁性を有するメダル2が第2検出機構5を通過すると、たとえば、
図11(C)に示すように信号レベルが変動するセンサ出力信号SG3がMPU45に入力される。そのため、MPU45は、センサ出力信号SG3の信号レベルのピーク値P3(
図10参照)に基づいて、第2検出機構5を通過するメダル2が磁性を有するものであるか否かを識別する。
【0070】
具体的には、MPU45は、永久磁石29と磁気センサ30との間にメダル2がないときのセンサ出力信号SG3の信号レベルである基準値とピーク値P3との差ΔL3が所定の範囲内にある場合に、第2検出機構5を通過するメダル2が磁性を有するメダル2であると判断し、ΔL3が所定の範囲から外れている場合に、第2検出機構5を通過するメダル2が非磁性のメダル2であると判断する。なお、第2検出機構5を非磁性のメダル2が通過する場合、メダル識別装置1の周囲温度の変動等の外部要因の変動がなければ、上下方向における永久磁石29および磁気センサ30の中心とメダル2の中心とが一致するときのセンサ出力信号SG3の信号レベルは、永久磁石29と磁気センサ30との間にメダル2がないときのセンサ出力信号SG3の信号レベルと等しくなる。
【0071】
上述のように、磁気センサ30は、検出用コイル9、10よりも上側に配置されている。そのため、メダル2が通過路PWを通過すると、
図10に示すように、センサ出力信号SG3の信号レベルは、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルよりも先に変動する。本形態では、コイル出力信号SG1の信号レベルが閾値th以下となるときには、永久磁石29と磁気センサ30との間をメダル2が完全に通過し終わるように、第1検出機構4および第2検出機構5が配置されている。また、本形態では、コイル出力信号SG1の信号レベルが閾値th以下となったときのセンサ出力信号SG3の信号レベルを基準値としており、この基準値とピーク値P3との差ΔL3に基づいて、第2検出機構5を通過するメダル2が磁性を有するものであるか否かが識別されている。
【0072】
このように、MPU45は、ΔL1、ΔL2に基づいて、第1検出機構4を通過するメダル2の材質、厚みおよび径が、メダル識別装置1が搭載されるスロットマシンで使用されるべきメダル2の材質、厚みおよび径に適しているか否かを識別し、かつ、ΔL3に基づいて、第2検出機構5を通過するメダル2が磁性を有するものであるか否かを識別することで、通過路PWを通過するメダル2の真贋や良不良を識別する。
【0073】
なお、励磁用コイル8が交流磁界を発生させている状態でメダル2が第1検出機構4を通過したときに、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルが小さくなるように、メダル識別装置1の回路が構成されても良い。この場合には、たとえば、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルのボトム値と基準値との差に基づいて、第1検出機構4を通過するメダル2の材質、厚みおよび径が、メダル識別装置1が搭載されるスロットマシンで使用されるべきメダル2の材質、厚みおよび径に適しているか否かが識別される。また、この場合には、たとえば、コイル出力信号SG1の信号レベルが所定の閾値以上となったときのセンサ出力信号SG3の信号レベルを基準値として、この基準値とピーク値P3との差に基づいて、第2検出機構5を通過するメダル2が磁性を有するものであるか否かが識別される。
【0074】
また、磁性を有するメダル2が直流磁界の中を通過したときに、直流磁界の変動のみを考慮した場合のセンサ出力信号SG3の信号レベル(すなわち、
図11(B)に示す信号レベル)が小さくなるように、メダル識別装置1の回路が構成されても良い。この場合であって、かつ、励磁用コイル8が交流磁界を発生させている状態でメダル2が第1検出機構4を通過したときに、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルが大きくなるように、メダル識別装置1の回路が構成されている場合には、たとえば、コイル出力信号SG1の信号レベルが閾値th以下となったときのセンサ出力信号SG3の信号レベルを基準値として、この基準値とセンサ出力信号SG3のボトム値との差に基づいて、第2検出機構5を通過するメダル2が磁性を有するものであるか否かが識別される。
【0075】
また、磁性を有するメダル2が直流磁界の中を通過したときに、直流磁界の変動のみを考慮した場合のセンサ出力信号SG3の信号レベルが小さくなるように、メダル識別装置1の回路が構成される場合であって、かつ、励磁用コイル8が交流磁界を発生させている状態でメダル2が第1検出機構4を通過したときに、コイル出力信号SG1、SG2の信号レベルが小さくなるように、メダル識別装置1の回路が構成される場合には、たとえば、コイル出力信号SG1の信号レベルが所定の閾値以上となったときのセンサ出力信号SG3の信号レベルを基準値として、この基準値とセンサ出力信号SG3のボトム値との差に基づいて、第2検出機構5を通過するメダル2が磁性を有するものであるか否かが識別される。
【0076】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、永久磁石29と磁気センサ30とが通過路PWを挟んで互いに対向配置されている。そのため、本形態では、外径および厚みは等しいが透磁率の異なる複数種類のメダル2を識別することができる。たとえば、材質、外径および厚みは同じであるが表面にニッケルメッキが施されたメダル2と、表面にニッケルメッキが施されていないメダル2とを第1検出機構4を用いて識別することは困難であるが、本形態では、第2検出機構5を用いてこの2種類のメダル2を識別することができる。
【0077】
本形態では、環状コア31は、略四角環状に形成されている。また、本形態では、前後方向において、永久磁石29は、通過路PWと凸部33aとの間に配置され、磁気センサ30は、通過路PWと凸部32aとの間に配置されている。そのため、本形態では、永久磁石29で発生する磁束の、環状コア31からの漏れを低減することが可能になるとともに、永久磁石29で発生し磁気センサ30を通過する磁束の密度を、凸部32a、33aによって高めることが可能になる。したがって、本形態では、メダル2の識別精度を効果的に高めることが可能になる。
【0078】
本形態では、検出用コイル9からの出力に基づくコイル出力信号SG1の信号レベルは、第1検出機構4を通過するメダル2の材質、厚みおよび外径の影響によって変動し、検出用コイル10からの出力に基づくコイル出力信号SG2の信号レベルは、主として、第1検出機構4を通過するメダル2の材質および厚みの影響によって変動する。そのため、本形態では、検出用コイル9を用いて、主として、メダル2の外径を識別し、検出用コイル10を用いて、主としてメダル2の材質や厚みを識別することが可能になる。したがって、本形態では、メダル2の識別精度を高めることが可能になる。
【0079】
本形態では、環状コア11は、略四角環状に形成されている。そのため、本形態では、X方向とY方向とから構成されるXY平面内において任意の方向を向いている外部磁界の中にメダル識別装置1が配置されたとしても、外部磁界に起因する磁路は、通過路PWの、凸部12a〜12cと凸部13a〜13cとの間に形成されない。たとえば、磁力線の向きが後ろ方向を向いている外部磁界(
図12中の矢印)の中にメダル識別装置1が配置されたとしても、
図12に示すように、外部磁界に起因する磁路は、通過路PWの、凸部12a〜12cと凸部13a〜13cとの間に形成されない。同様に、本形態では、環状コア31は、略四角環状に形成されているため、XY平面内において任意の方向を向いている外部磁界の中にメダル識別装置1が配置されたとしても、外部磁界に起因する磁路は、通過路PWの、永久磁石29と磁気センサ30との間に形成されない。すなわち、本形態では、環状コア11、31を磁気シールドとして機能させることが可能になり、その結果、メダル識別装置1の外部磁界に起因するメダル2の識別精度の低下を抑制することが可能になる。なお、上下方向(Z方向)を向いている外部磁界の中にメダル識別装置1が配置されたとしても、上下方向は、検出用コイル9、10および磁気センサ30の感磁方向と直交しているため、メダル識別装置1は、外部磁界の影響を受けにくい。
【0080】
本形態では、第1検出機構4と第2検出機構5とが共通のケース体3に保持されている。そのため、本形態では、メダル識別装置1の構成を簡素化することが可能になる。
【0081】
本形態では、コイル出力信号SG1の信号レベルが閾値th以下となるときに、永久磁石29と磁気センサ30との間をメダル2が完全に通過し終わるように、第1検出機構4および第2検出機構5が配置されている。また、本形態では、コイル出力信号SG1の信号レベルが閾値th以下となったときのセンサ出力信号SG3の信号レベルを基準値とし、この基準値とピーク値P3との差ΔL3に基づいて、第2検出機構5を通過するメダル2が磁性を有するものであるか否かが識別されている。すなわち、本形態では、永久磁石29と磁気センサ30との間をメダル2が通過し終わった直後のセンサ出力信号SG3の値とピーク値P3との差ΔL3に基づいて、磁気センサ30を用いたメダル2の識別を行っている。そのため、本形態では、永久磁石29と磁気センサ30との間にメダル2がない待機時のセンサ出力信号SG3の信号レベルが、メダル識別装置1の周囲温度の変動等によって変動しても、この変動分を相殺することが可能になり、その結果、メダル2を精度良く識別することが可能になる。
【0082】
(第2検出機構の変形例)
図13は、本発明の他の実施の形態にかかるメダル識別装置1を説明するための底面図である。
図14は、
図13に示すメダル識別装置1におけるコイル出力信号SG1、SG2およびセンサ出力信号SG3を説明するための図である。
【0083】
上述した形態では、環状コア11と別に環状コア31が設けられており、環状コア31に形成される凸部33aと通過路PWとの間に永久磁石29が配置され、環状コア31に形成される凸部32aと通過路PWとの間に磁気センサ30が配置されている。この他にもたとえば、
図13に示すように、環状コア11に形成される凸部13cと通過路PWとの間に永久磁石29が配置され、環状コア11に形成される凸部12cと通過路PWとの間に磁気センサ30が配置されても良い。すなわち、上下方向における環状コア11の中心と上下方向における永久磁石29および磁気センサ30の中心とが一致し、左右方向における凸部12c、13cの中心と左右方向における永久磁石29および磁気センサ30の中心とが一致するように永久磁石29および磁気センサ30が配置されるとともに、永久磁石29が凸部13cの前側に配置され、磁気センサ30が凸部12cの後ろ側に配置されても良い。
【0084】
この場合には、環状コア11に加えて、環状コア31を設ける必要がないため、メダル識別装置1の構成を簡素化することが可能になる。なお、この場合には、環状コア11がコア体となり、コア12が第2コアとなり、コア13が第1コアとなり、連結コア14が第1連結コアとなり、連結コア15が第2連結コアとなる。また、凸部12cが第2凸部となり、凸部13cが第1凸部となり、凸部12a、12bが第4凸部となり、凸部13a、13bが第3凸部となる。
【0085】
また、この場合には、MPU45は、コイル出力信号SG1の信号レベルのピーク時におけるセンサ出力信号SG3の値に基づいて、磁気センサ30を用いたメダル2の識別を行うことが好ましい。
図13に示す変形例では、上下方向における永久磁石29および磁気センサ30の中心とメダル2の中心とが一致するときに、上下方向における検出用コイル9の中心とメダル2の中心とが一致するため、上下方向における永久磁石29および磁気センサ30の中心とメダル2の中心とが一致するときに、コイル出力信号SG1の信号レベルはピークとなる。また、上述のように、永久磁石29と磁気センサ30との間を非磁性のメダル2が通過する場合、メダル識別装置1の周囲温度の変動等の外部要因の変動がなければ、上下方向における永久磁石29および磁気センサ30の中心とメダル2の中心とが一致するときに、センサ出力信号SG3の値は、永久磁石29と磁気センサ30との間にメダル2がないときのセンサ出力信号SG3の値と等しくなる。
【0086】
そのため、永久磁石29と磁気センサ30との間をメダル2が通過する直前または直後の待機時のセンサ出力信号SG3の値をMPU45が取得すれば、渦電流の影響のみを考慮した場合のセンサ出力信号SG3の信号レベルのピーク値およびボトム値が第2検出機構5を通過する際のメダル2の速度に応じて変動しても、コイル出力信号SG1の信号レベルのピーク時におけるセンサ出力信号SG3の信号レベルが、待機時のセンサ出力信号SG3の信号レベルと等しくなっているか否かによって、メダル2が磁性を有するものであるか否かを識別することが可能になる(
図14参照)。したがって、メダル2が磁性を有するものであるか否かの識別をより容易に行うことが可能になる。
【0087】
なお、
図13、
図14に示す変形例では、増幅回路51とMPU45との間にローパスフィルタが配置されており、MPU45には、ローパスフィルタを通過した後のセンサ出力信号SG3が入力される。また、励磁用コイル8が交流磁界を発生させている状態でメダル2が第1検出機構4を通過したときに、コイル出力信号SG1の信号レベルが小さくなるように、メダル識別装置1の回路が構成される場合には、コイル出力信号SG1の信号レベルのボトム時におけるセンサ出力信号SG3の値に基づいて、磁気センサ30を用いたメダル2の識別を行えば良い。
【0088】
また、
図13に示す変形例において、検出用コイル10を省略しても良い。この場合には、増幅回路51とMPU45との間に、ローパスフィルタとハイパスフィルタとを並列で配置し、ハイパスフィルタを通過した後のセンサ出力信号とコイル出力信号SG1とに基づいて、通過路PWを通過するメダル2の材質、厚みおよび径が、メダル識別装置1が搭載されるスロットマシンで使用されるべきメダル2の材質、厚みおよび径に適しているか否かを識別しても良い。
【0089】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0090】
上述した形態では、メダル識別装置1は、第1検出機構4と第2検出機構5とを備えている。この他にもたとえば、メダル識別装置1は、第2検出機構5のみを備えていても良い。また、上述した形態では、第2検出機構5を用いて、メダル2が磁性を有するものであるか否かを識別しているが、第2検出機構5を用いて、磁性を有する複数種類のメダル2の透磁率の相違を識別しても良い。また、上述した形態では、第1検出機構4と第2検出機構5とが共通のケース体3に保持されているが、第1検出機構4と第2検出機構5とが別個に形成されたケース体に保持されても良い。
【0091】
上述した形態では、MPU45は、センサ出力信号SG3の基準値とピーク値P3との差ΔL3に基づいて、第2検出機構5を通過するメダル2が磁性を有するものであるか否かを識別している。この他にもたとえば、MPU45は、ピーク値P3の絶対値に基づいて、第2検出機構5を通過するメダル2が磁性を有するものであるか否かを識別しても良い。
【0092】
上述した形態では、コア32、33と連結コア34、35とが一体で形成されている。この他にもたとえば、コア32、33、連結コア34、35の少なくともいずれか1つが別体で形成され、コア32、33と連結コア34、35とが一体化されても良い。また、環状コア31は、たとえば、磁性材料で形成される金属箔と、この金属箔が貼り付けられる薄い樹脂製の補強板とから構成されても良い。同様に、コア12、13、連結コア14、15の少なくともいずれか1つが別体で形成され、コア12、13と連結コア14、15とが一体化されても良い。また、環状コア11は、たとえば、磁性材料で形成される金属箔と、この金属箔が貼り付けられる薄い樹脂製の補強板とから構成されても良い。
【0093】
上述した形態では、第2検出機構5は、環状に形成される環状コア31を備えているが、第2検出機構5は、環状コア31を備えていなくても良い。また、第2検出機構5は、環状コア31に代えて、コア32、33、連結コア34、35の少なくともいずれか1箇所にギャップ(切れ目)が形成されたコア体を備えていても良い。この場合には、ギャップは非磁性材料で埋められても良い。同様に、第1検出機構4は、環状コア11に代えて、コア12、13、連結コア14、15の少なくともいずれか1箇所にギャップ(切れ目)が形成されたコア体を備えていても良い。また、上述した形態では、環状コア11、31は、略四角環状に形成されているが、環状コア11、31は、円環状、楕円環状または長円環状に形成されても良いし、四角環状以外の多角環状に形成されても良い。
【0094】
上述した形態では、メダル識別装置1は、スロットマシンに搭載されて使用されている。この他にもたとえば、メダル識別装置1は、メダル購入機やメダル計数機に搭載されて使用されても良い。また、上述した形態では、スロットマシンで使用されるメダル2を識別するためのメダル識別装置1を例に、本発明のコイン状被検出体識別装置の実施例を説明しているが、本発明が適用されるコイン状被検出体識別装置は、たとえば、ゲーム機で使用されるメダル等の他のコイン状の被検出体を識別するための装置であっても良い。また、本発明におけるコイン状の被検出体は、スロットマシンやゲーム機等で使用されるメダルに限定されず、硬貨であっても良い。なお、メダル購入機は、現金を入れてメダルを購入するための装置であり、スロットマシン間やホール入口に設置されている。また、メダル計数機は、各スロットマシンから集まるメダルの数を数えるための装置である。このメダル計数機は、たとえば、所定台数のスロットマシンに対して1台設置されており(たとえば、島ごとに設置されており)、メダル計数機が設置された島を構成する複数のスロットマシンから集まったメダル2の数を数える。また、メダル計数機は、たとえば、島ごとに集まったメダル2をさらに集めて、その数を数える一括集中処理機である。また、メダル計数機は、たとえば、メダル2を景品に換えるためにメダル2の数を数える装置である。