(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態の一例に係る軸の支持構造を詳細に説明する。
【0017】
図1は、減速機(全体は図示略)G1に適用された軸の支持構造の一例を示したものである。
図2は、その要部断面図である。
【0018】
出力軸10は、ケーシング30に、第1、第2円錐ころ軸受41、42によって支持されている。第1、第2円錐ころ軸受41、42は、共に、内輪41A、42Aおよび外輪41B、42Bを備え、該内輪41A、42Aおよび外輪41B、42Bの間に転動体である円錐ころ41C、42Cが複数組み込まれている。第1、第2円錐ころ軸受41、42は、接触角θ1の背面合わせで配置されている。
【0019】
出力軸10は、減速機構(全体は図示略)50のキャリヤに相当するプレート部11、前記第1、第2円錐ころ軸受41、42がそれぞれ配置される第1、第2大径部13、15、カラー60の配置される小径部17、および相手部材(全体は図示略)の被動軸65と連結される被動軸連結部19を有している。プレート部11の外径はd11(
図1参照)、第1、第2大径部13、15の外径はそれぞれd13、d15、小径部17の外径はd17、被動軸連結部19の外径はd19であり、この順に径が小さくなっている(d11>d13>d15>d17>d19)。
【0020】
この実施形態では、出力軸10は、外径d11のプレート部11と外径d13の第1大径部13との間に、外径d12の第1中間部12を有しており、d11>d12>d13である。第1中間部12と第1大径部13との間には、径差(d12−d13)によって形成される第1段差部21が設けられている。この第1段差部21は、第1円錐ころ軸受41の内輪41Aの軸方向減速機構50側への移動を規制している。
【0021】
また、出力軸10は、外径d13の第1大径部13と外径d15の第2大径部15との間に、外径d14の第2中間部14を有しており、d13>d14>d15である。
【0022】
さらに、出力軸10の(第2円錐ころ軸受42が配置される)第2大径部15には、軸方向幅W1、底部径d24の止め輪溝24が形成されている。止め輪溝24には、止め輪61が嵌め込まれる。止め輪61は、第2円錐ころ軸受42の内輪42Aの反減速機構側への軸方向移動を規制している。
【0023】
より具体的には、この実施形態では、止め輪61と第2円錐ころ軸受42の内輪42Aとの間に比較的幅の広いスペーサ62が配置されると共に、該スペーサ62の反止め輪側(第2円錐ころ軸受42側)に、スペーサ62よりも幅の狭いシム64が配置されている。すなわち、止め輪61は、該スペーサ62とシム64を介して第2円錐ころ軸受42の内輪42Aが反減速機構側へ軸方向移動するのを規制している。
【0024】
出力軸10は、第2円錐ころ軸受42が配置される第2大径部15に隣接して小径部17を有している。第2大径部15と小径部17との間には第2段差部22が形成されている。小径部17には、カラー60が締まり嵌めによって嵌合されている。カラー60の軸方向両端の内周側には、面取り部60C、60Dが形成されている。小径部17の第2大径部15側の端部には、該小径部17の外径d17よりも小さい外径(d26)のアール部26が形成されている。前記カラー60の減速機構側の面取り部60Cは、このアール部26の径方向外側に位置している。
【0025】
小径部17と被動軸連結部19との間には、アール部27が形成されている。カラー60の軸方向長さL60は、小径部17の軸方向長さL17よりも長い。より正確には、カラー60の面取り部60Cと面取り部60Dとの間の締まり嵌め可能域L60Tは、アール部27と小径部17のアール部26との間の締まり嵌め可能域L17Tよりも長い。すなわち、カラー60の減速機構側の面取り部60Cがアール部26の径方向外側に位置していることと相まって、カラー60の締まり嵌め可能域L60Tは、小径部17の締まり嵌め可能域L17Tの全域を含む軸方向位置で、出力軸10の小径部17と嵌合している。
【0026】
なお、この実施形態では、カラー60の相手部材側端部60Aには、該相手部材の被動軸65の一部が直接当接している。
【0027】
この実施形態では、前記止め輪溝24の近傍(以降、便宜上止め輪部SPと称す)の計算上の強度は、Sc1である。一方、小径部17は、a)その外径d17が、第2円錐ころ軸受42が配置される第2大径部15の外径d15より小さく(d17<d15)、b)カラー60が圧入され、かつ、c)小径部17の第2大径部15側には、小径部17の外径d17よりさらに小さな外径d26のアール部26が形成されている。これらa)、b)、c)の構成により、小径部17の計算上の強度Sc2は、前記止め輪部SPの計算上の強度Sc1より低く設定されている(Sc1>Sc2)。すなわち、止め輪部SPの計算上の強度Sc1よりも、小径部17の計算上の強度Sc2を敢えて小さく設定し、止め輪部SPが設計上(計算上)の出力軸10の最弱部とならない設計としている。この構成の技術的意義については、後に詳述する。
【0028】
なお、本実施形態では、減速機G1のケーシング30は、第1円錐ころ軸受41に対応する軸方向位置に、第3段差部33を有している。第1円錐ころ軸受41の外輪41Bは、このケーシング30の第3段差部33によって軸方向反減速機構側への移動が規制されている。また、ケーシング30は、第2円錐ころ軸受42に対応する軸方向位置に、第4段差部34を有している。第2円錐ころ軸受42の外輪42Bは、このケーシング30の第4段差部34によって軸方向減速機構側への移動が規制されている。
【0029】
また、ケーシング30の軸方向端部36には、リング状の付設部材38がボルト39によって連結されている。付設部材38とケーシング30の軸方向端部36との間にはOリング70が介在されている。また、カラー60の外周60Bと付設部材38の内周38Bとの間には、オイルシール72が配置されている。Oリング70とオイルシール72とにより、減速機G1のケーシング30の内部が封止されている。
【0030】
なお、付設部材38の内周側には、減速機構側に突出する突起部38Cが形成されている。この突起部38Cは、付設部材38のケーシング30に対するインロー部を構成している。
【0031】
次に、この軸の支持構造の作用を説明する。
【0032】
まず、本実施形態の解決原理から説明する。
【0033】
軸を支持している軸受の軸方向移動を「止め輪」によって規制する構造としては、1)支持母体側(この実施形態ではケーシング30側)に止め輪溝を形成し、該止め輪溝に径方向内側から嵌め込んだ止め輪によって軸受の外輪の動きを規制する手法と、2)支持される軸側(この実施形態では出力軸10側)に止め輪溝を形成して、該止め輪溝に径方向外側から嵌め込んだ止め輪によって軸受の内輪の動きを規制する手法とがある。
【0034】
支持母体側に止め輪溝を形成する1)の手法の場合には、強度上大きな問題が発生することは少ない。しかし、部材の配置、全体の大きさ、或いは組み付けの順序等の制約上、この実施形態のように、軸側に止め輪溝を形成する2)の手法を採用する場合、形成した止め輪溝によって軸の強度が大きく低下してしまうことがある。
【0035】
ここで、問題なのは、当該止め輪溝を形成したことによって実際に運転されるときの強度の低下の程度を予測するのが難しいということである。より具体的に言うならば、例えば、「この直径のこの素材に対し、この熱処理あるいは表面処理が施され、この幅および深さの止め輪溝が、この加工機械で、この加工方法によってこの加工誤差で軸の表面に形成されたときに、さまざまな使用環境で、さまざまな負荷トルクが掛かる状況において、例えば、軸受のシム調整の適性度がこの程度で、軸がこの程度ぶれて回転するような場合に、実際に最大でどの程度の強度低下が発生し得るか。」という予測が、ばらつきが大きいが故に非常に難しいということである。
【0036】
しかし、たとえ、実際の使用状態における強度の低下の程度が予測しにくいという状況下であっても、製品として成立させるためには、「よほど例外的な状況とならない限り壊れない」という強度は確保されなければならない。このことは、結果として、必要以上に止め輪部の径を大きくしたり、必要以上に強度的に優れた素材を選んだり、必要以上に周到な熱処理を行ったり、あるいは特定の条件下で実際に破壊試験を行う必要があったりするなど、コストの増大や重量の増大が避けられなかった。
【0037】
本実施形態では、こうした事情に対し、実績のある構造によって敢えて「弱部」を形成し、止め輪部SPが軸の計算上の最弱部とならないように構成することで、この事情を克服している。
【0038】
以下、本実施形態における作用を、より具体的に説明する。
【0039】
本実施形態においては、止め輪部SPの計算上の強度(あるいはコンピューターによるシミュレーション上の強度)は、Sc1である。しかし、止め輪部SPの実際の強度Sr1は、上述したように、ばらつきが大きく、設計者は、実際の強度Sr1を予め予測するのは困難である。
【0040】
一方、本実施形態における小径部17は、a)その外径d17が、第2円錐ころ軸受42が配置される第2大径部15の外径d15より小さく、b)カラー60が圧入されており、かつ、c)小径部17の第2大径部15側には、小径部17の外径
d17よりさらに小さな外径d26のアール部26が形成されている。
【0041】
これらa)、b)、c)の構成は、いずれも、小径部17の強度が、止め輪部SPの強度より小さくなる方向に作用し、結果として、小径部17の計算上の強度Sc2は、止め輪部SPの計算上の強度Sc1より低く設定されている(Sc1>Sc2)。すなわち、本実施形態では、止め輪部SPは、計算上の「軸の最弱部」とはなっていない。
【0042】
この小径部17の構造は、前記a)、b)、c)の構成による強度低下に関し、加工のばらつきや使用環境による強度的ばらつきが小さく、計算上の強度Sc2と実際の強度Sr2との乖離が小さい。したがって、高い精度で実際の強度Sr2を推定可能である。
【0043】
特に、この実施形態の場合、カラー60の軸方向長さL60が、小径部17の軸方向長さL17よりも長く、カラー60の締まり嵌め可能域L60Tは、小径部17の締まり嵌め可能域L17Tの全域を含む軸方向位置で、出力軸10の小径部17と嵌合している。つまり、カラー60は、締まり嵌めによる押圧力を、小径部17の軸方向全体に対して均一に付与し得る構成とされている。このため、推定の正確度をより高めることができる。したがって、小径部17に関して「よほど例外的な状況とならない限り壊れない」という強度設計をするのは、それほど難しいことではない。
【0044】
してみると、計算上、小径部17が、止め輪部SPよりも弱部とされており、その小径部17において十分な実強度が確保されているならば、当該小径部17より計算上の強度が高い止め輪部SPにおいても、十分な実強度が確保されていると、考えることができる。これにより、設計の負荷を大きく減少でき、コストの増大や重量の増大を最小限に抑えつつ、特に、必要以上に出力軸10の径を大きくすることなく、強度的に信頼性の極めて高い出力軸10の支持構造を得ることができる。
【0045】
なお、止め輪部SPよりも計算上の強度が低い部分を形成する、という点のみに着目するならば、基本的には、第2大径部15の外径d15よりも小さな外径d17を有する小径部17を形成するという前記a)の構成だけで良いが、a)の構成のみでは、現実にはかなりの径差が必要となる。そのため、a)+b)、すなわち、径が小さく(d15>d17)、かつカラー60が圧入されているという条件を組み合わせるのが最適である。
【0046】
ちなみに、前記c)の構成、すなわち、小径部17の第2大径部15側端部に、小径部17の外径d17よりさらに小さな外径d26のアール部26を形成するという構成は、径差を大きく(あるいは全く)取ることなく弱部を形成できるという点で優れる。ただ、このc)の構成は、a)、b)の構成のみで必要な軸径や強度を達成できるのであれば、必ずしも必要ではない。
【0047】
なお、この実施形態では、止め輪61と第2円錐ころ軸受42の内輪42Aとの間に幅の広いスペーサ62と幅の狭いシム64がペアで配置されている。しかもスペーサ62が、止め輪溝24に近い位置に配置されている。そのため、シム64自体は薄くても、組み立て時に該シム64が止め輪溝24内に落ち込んでしまう恐れがない。この観点で、例えば、シム64自体を止め輪溝24内に落ち込む恐れがないほど幅広に形成した場合には、スペーサは不要である(単一のシムのみでよい)。
【0048】
この実施形態では、シム調整が適正に行われることから、出力軸10の回転をより安定させることができ、低騒音、低振動、長軸受寿命という観点で、優位な支持構造を得ることができる。換言するならば、出力軸10の回転がぶれると、大きな応力集中が止め輪部SPに発生し易くなり、強度低下のばらつきがより大きくなる要因となり易いが、シム調整が適切に行われることにより、第1、第2円錐ころ軸受41、42の与圧力を最適に調整することができる。これにより、出力軸10は、ぶれることなく安定して回転することができ(止め輪部SPでの強度低下のばらつきを抑えることができ)、強度上より優位な支持構造を得ることができる。
【0049】
また、この実施形態では、カラー60の相手部材側端部60Aに、該相手部材の被動軸65の一部が直接当接しているため、該カラー60によって相手部材側からのスラスト力を受け止めることもできる。
【0050】
ところで、軸受の軸方向移動を規制する手法としては、上記実施形態のように、止め輪を用いる手法のほかに、いわゆる軸受ナットを組み込む手法も広く知られている。しかし、軸受ナットによって軸受の内輪の軸方向移動を規制する場合には、該軸受ナットを螺合させるためのねじを、軸の外周に形成する必要がある。この軸受ナットを螺合させるためのねじも、形成による実強度のばらつきが大きく、計算上の強度と実強度との乖離がときに非常に大きくなってしまうことがある。この点で、止め輪溝と同様の問題があると言える。
【0051】
換言するならば、「軸が、軸受が配置される大径部と、該大径部に隣接して設けられた小径部と、を備え、小径部に、カラーが締まり嵌めによって嵌合される」という構成は、軸受の内輪の軸方向の移動が、止め輪によって規制される場合と同様に、軸受ナットによって規制される場合においても、同様に適用することができ、同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
次に、
図3を用いて本発明の他の実施形態の一例を説明する。
【0053】
この実施形態は、強度的に大きなばらつきがある止め輪溝やねじ等の「不確定要素」を出力軸80に形成すること自体を避けるようにしたものである。つまり、出力軸80には、止め輪溝もねじも形成されておらず、カラー82が接着剤によって出力軸80に固定され、該カラー82により、第2円錐ころ軸受42の内輪42Aの軸方向移動が規制されている。
【0054】
出力軸80は、第2円錐ころ軸受42の配置部84とカラー82の配置部88との間で、特に径差を有していない(同一径)。
【0055】
この構成は、部品点数も加工工数も少ないため、例えば、軸に掛かるスラスト荷重が大きくない用途等においては、極めて低コストで合理的な設計が可能であり、かつ径差がない分、結果として、より小型化、軽量化も可能である。
【0057】
図4では、出力軸94は、第2円錐ころ軸受42の配置される大径部90と、該大径部90に隣接して設けられる小径部91とを備え、この小径部91にカラー92が(接着剤によって)固定されている。
【0058】
図4の構成例においても、出力軸94は、強度的に大きなばらつきがある止め輪溝やねじ等の「不確定要素」を有していない。そのため、「意図的に最弱部を形成する」という観点では「段差部」を設計する必要はない。
【0059】
しかし、この
図4の例のように大径部90と小径部91とで形成される段差部95に当接させるようにカラー92を固定する構成とした場合、カラー92の出力軸94上の軸方向位置を精度よく確定させることができる。すなわち、接着剤の塗布されたカラー92を、単に大径部90と小径部91との段差部95に当接するまで押し込むだけで製造誤差レベルの適正な与圧力を、第1、第2円錐ころ軸受41、42に容易に与えることができる。そのため、ぶれの少ない安定した支持構造を容易に得ることができる。
【0060】
なお、
図3および
図4の構成例において、例えば、接着剤のみでは、出力軸80、94のスラスト力を十分に受け止められない可能性がある場合には、カラー82、92を、接着剤と共に、締まり嵌めで組み込むようにしてもよい。これにより、第2円錐ころ軸受42の内輪42Aの移動をより強力な拘束力にて規制することができる。
【0061】
なお、カラー82、92を締まり嵌めで組み込む場合には、組み込みの際に、接着剤が押しのけられる恐れがある。この点に関し、出力軸80、94とカラー82、92との間に接着剤の「溜り溝」を設けるのは有効である。この場合の溜り溝として、例えば、
図4の例の場合は、小径部91の大径部90側の端部に、当該小径部91よりも外径の小さいアール部96を形成し、該アール部96を接着剤の溜り溝として活用するようにしている。なお、この
図4の例では、カラー92の内周にも円周方向の溜り溝87を形成するようにしている。しかし、溜り溝の形成態様は、上記構成例に限定されない。例えば、スパイラル状に形成してもよい。また、溜り溝は、カラー側のみに形成してもよく、軸側のみに形成してもよく、カラーおよび軸の双方に形成してもよく、全く形成しなくてもよい。
【0063】
この
図5の構成例は、
図4の構成例に対し、カラー86と第2円錐ころ軸受42の内輪42Aとの間に、スペーサ97とシム98を配置するようにしたものである。この構成によれば、カラー86の軸方向位置を、段差部99によって確定させた上で、シム98の調整を行うことにより、製造誤差を考慮した上で第1、第2円錐ころ軸受41、42の与圧力を最適に調整することができる。
【0064】
なお、シム98を、単体で組み込むのではなく、スペーサ97とペアで組み込むようにしたのは、薄いシム98が段差部99から落下しないようにするためであり、先の
図1および
図2の実施形態と同様の趣旨である。したがって、この
図5の例においても、シム98自体を、ある程度幅広の単一の部材で構成し、スペーサをなくすような設計としてもよい。なお、いずれの場合も、与圧調整のために組み込まれる厚さの異なるシムあるいはスペーサは、必ずしも1個のシムあるいはスペーサで構成される必要はなく、2以上のシムあるいはスペーサの組み合わせにて所望の厚さを調整・確保するようにしてもよい。
【0065】
なお、
図5の例のように、カラー86を接着剤によって出力軸93に固定し、かつ、スペーサ97とシム98(あるいは単体のシム)を用いて第1、第2円錐ころ軸受41、42の与圧を最適に調整する構成を採用する場合には、当初、内輪42Aの軸方向移動を規制可能なダミーのカラー(図示略)を、出力軸93に嵌合して段差部99に当接させてシム調整を行った後、すなわち、ダミーのカラーと内輪42Aとの間に配置される「厚さの異なるシム」を組み替えて、あるいは、「厚さの異なる複数のシム」を組み込んで、第1、第2円錐ころ軸受41、42に最適(適切)な与圧力を与える1または2以上のシム(あるいはスペーサ)を見出した後、ダミーのカラーを外して、接着剤の塗布されたカラー86を嵌合・固定する組み込み方法を採用するとよい。接着剤は、出力軸93側に塗布してもよく、もちろんカラー86および出力軸93の双方に塗布してもよい。つまり、カラー86と出力軸93との間に接着剤が介在すればよい。ダミーのカラーを、出力軸93に対し比較的大きな隙間で隙間嵌めとなる寸法としておくことにより(ダミーのカラーとして、カラー86より内径の大きいものを使用することにより)、最適なシム調整をより容易に行うことができる。
【0066】
なお、先の
図1〜
図4の例を含め、オイルシール72は、カラー60、82、86、92を固定し、さらに、付設部材38をボルト39でケーシング30に連結した後、最後に装着される。
【0067】
本実施形態では、圧入による連結と接着剤による連結が組み合わされているため、圧入のみによる連結と比較して、スラスト支持力をより向上させることができる。
【0068】
なお、上記実施形態においては、一対の円錐ころ軸受によって減速機の出力軸が支持される構成例が示されていたが、本発明に係る「軸」は、減速機の入力軸でも、あるいは中間軸でもよく、特に出力軸に限定されない。また、そもそも減速機の軸である必要もなく、広く軸を、内輪を有する軸受にて支持する構造に適用可能である。例えば、装置と装置の間を連結する連結軸の支持構造に適用してもよい。
【0069】
また、軸受も、必ずしも円錐ころ軸受に限定されるものではなく、与圧の付与が必要な軸受としては、例えばアンギュラ玉軸受であってもよい、あるいは、与圧の付与が不要な軸受でもよく、例えば、接触角が零度の通常の玉軸受であってもよい。また、上記例からも明らかなように、本発明は、軸を支持している軸受が複数ある場合には、必ずしもその全ての軸受に対して適用されている必要はなく、そのうちの1つに対して適用されていれば足りる。