(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6175312
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】差分容量出力を有する圧力センサ
(51)【国際特許分類】
G01L 9/00 20060101AFI20170724BHJP
G01L 13/06 20060101ALI20170724BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20170724BHJP
B60C 23/04 20060101ALI20170724BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
G01L9/00 305A
G01L13/06 C
H01L29/84 B
B60C23/04 N
B60C23/04 G
B81B3/00
【請求項の数】18
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-176866(P2013-176866)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-48292(P2014-48292A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2016年8月15日
(31)【優先権主張番号】13/598,763
(32)【優先日】2012年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504199127
【氏名又は名称】エヌエックスピー ユーエスエイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NXP USA,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー シー マクネイル
(72)【発明者】
【氏名】イーゼン リン
【審査官】
森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特公平3−65850(JP,B2)
【文献】
特許第5638598(JP,B2)
【文献】
特許第6053357(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L
B81B
H01L29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小電気機械システム(MEMS)圧力センサであって、
回転試験質量であって、該回転試験質量は、
回転軸と第1の端部との間の第1の区画、および、前記回転軸と第2の端部との間の第2の区画を形成するために、その前記第1の端部と前記第2の端部との間でずれた前記回転軸に対して運動するように適合される可動要素を備え、
前記第1の区画は前記回転軸から離間される拡張部分を備え、
前記第2の区画は、前記第1の区画の前記拡張部分の長さにほぼ等しい長さにおいて前記回転軸から離間される拡張部分を備え、それによって、前記回転軸は前記可動要素の質量の中心にある、回転試験質量と、
ダイヤフラムであって、該ダイヤフラムおよび前記回転試験質量を備えるパッケージの外部の第1の流体圧に応答して変形するように構成される、ダイヤフラムと、
前記パッケージの内部の前記ダイヤフラムの表面を、前記回転試験質量の前記第1の区画に沿った点に結合するように構成される連結部とを備え、
前記回転試験質量はダイヤフラムの変形に応答して回転するように構成される、MEMS圧力センサ。
【請求項2】
前記可動要素の前記第2の区画は、
前記結合された可動要素、連結部およびダイヤフラムの質量の中心を前記回転軸に維持するように、前記ダイヤフラムおよび連結部の重量をずらすように構成されるカウンターウェイトをさらに備える、請求項1に記載のMEMS圧力センサ。
【請求項3】
第1の主面および第2の主面をさらに備える前記回転試験質量と、
前記回転軸から第1の距離をおいて前記可動要素の前記第1の区画の前記第1の主面上に配置される第1の可動要素電極と、
前記回転軸から第2の距離をおいて前記可動要素の前記第2の区画の前記第1の主面上に配置される第2の可動要素電極と、
前記第1の可動要素電極と対向するロケーションにおいて前記パッケージの固定表面上に配置される第1の固定電極と、
前記第2の可動要素電極と対向するロケーションにおいて前記パッケージの前記固定表面上に配置される第2の固定電極とをさらに備え、
前記第1の可動要素電極は前記第2の可動要素電極から電気的に絶縁され、
前記第1の固定電極は前記第2の固定電極から電気的に絶縁され、
前記第1の可動要素電極および前記第1の固定電極は第1の可変コンデンサを形成し、
前記第2の可動要素電極および前記第2の固定電極は第2の可変コンデンサを形成する、請求項1に記載のMEMS圧力センサ。
【請求項4】
前記第1の可変コンデンサおよび第2の可変コンデンサに結合され、前記第1の可変コンデンサの第1の容量と前記第2の可変コンデンサの第2の容量との間の差を測定するように構成されるプロセッサをさらに備え、前記第1の容量および第2の容量は前記ダイヤフラムに印加される前記パッケージの外部の前記第1の流体圧に応答する、請求項3に記載のMEMS圧力センサ。
【請求項5】
第2の回転試験質量をさらに備え、該第2の回転試験質量は、
回転軸と第3の端部との間の第3の区画、および、前記回転軸と第4の端部との間の第4の区画を形成するために、その前記第3の端部と前記第4の端部との間でずれた第2の回転軸に対して運動するように適合される前記第2の可動要素を備え、
前記第3の区画は前記第2の回転軸から離間される拡張部分を備え、
前記第4の区画は、前記第3の区画の前記拡張部分の長さにほぼ等しい長さにおいて前記第2の回転軸から離間される拡張部分を備え、それによって、前記第2の回転軸は前記第2の可動要素の質量の中心にある、請求項1に記載のMEMS圧力センサ。
【請求項6】
前記パッケージの内部の前記ダイヤフラムの前記表面を、前記第2の回転試験質量の前記第3の区画に沿った点に結合するように構成される、第2の連結部をさらに備え、
前記第2の回転試験質量は、前記ダイヤフラムの変形に応答して回転するように構成され、
前記第2の回転試験質量の回転は、前記回転試験質量の回転方向とは反対の回転方向にある、請求項5に記載のMEMS圧力センサ。
【請求項7】
前記パッケージの外部の第2の流体圧に応答して変形するように構成される第2のダイヤフラムであって、
前記第2の流体圧は、前記第1の流体圧と関連付けられる第1の流体源とは別個の第2の流体源と関連付けられる、第2のダイヤフラムと、
前記パッケージの内部の前記第2のダイヤフラムの表面を、前記第2の回転試験質量の前記第3の区画に沿った点に結合するように構成される第2の連結部であって、
前記第2の回転試験質量は前記第2のダイヤフラムの変形に応答して回転するように構成される、第2の連結部とをさらに備える、請求項5に記載のMEMS圧力センサ。
【請求項8】
前記第2の回転試験質量の回転は、前記第2のダイヤフラムが受ける圧力の増大に応答した、前記回転試験質量の回転方向と反対の回転方向にあるものである、請求項7に記載のMEMS圧力センサ。
【請求項9】
第1の主面および第2の主面をさらに備える前記回転試験質量と、
前記回転軸から第1の距離をおいて前記可動要素の前記第1の区画の前記第1の主面上に配置される第1の可動要素電極と、
前記回転軸から第2の距離をおいて前記可動要素の前記第2の区画の前記第1の主面上に配置される第2の可動要素電極と、
第3の主面および第4の主面をさらに備える前記第2の回転試験質量と、
前記回転軸から第3の距離をおいて前記可動要素の前記第3の区画の前記第3の主面上に配置される第3の可動要素電極と、
前記回転軸から第4の距離をおいて前記可動要素の前記第4の区画の前記第3の主面上に配置される第4の可動要素電極と、
前記第1の可動要素電極および前記第4の可動要素電極と対向するロケーションにおいて前記パッケージの固定表面上に配置される第1の固定電極と、
前記第2の可動要素電極および前記第3の可動要素電極と対向するロケーションにおいて前記パッケージの前記固定表面上に配置される第2の固定電極とをさらに備え、
前記第1の可動要素電極は前記第2の可動要素電極から電気的に絶縁され、
前記第3の可動要素電極は前記第4の可動要素電極から電気的に絶縁され、
前記第1の固定電極は前記第2の固定電極から電気的に絶縁され、
前記第1の可動要素電極および前記第1の固定電極は第1の可変コンデンサを形成し、
前記第2の可動要素電極および前記第2の固定電極は第2の可変コンデンサを形成し、
前記第3の可動要素電極および前記第2の固定電極は第3の可変コンデンサを形成し、
前記第4の可動要素電極および前記第1の固定電極は第4の可変コンデンサを形成する、請求項7に記載のMEMS圧力センサ。
【請求項10】
前記第1の可変コンデンサ、第2の可変コンデンサ、第3の可変コンデンサ、および第4の可変コンデンサに結合されるプロセッサであって、
前記第1の可変コンデンサの第1の容量と前記第2の可変コンデンサの第2の容量との間の差を測定し、
前記第3の可変コンデンサの第3の容量と前記第4の可変コンデンサの第4の容量との間の差を測定するように構成される、プロセッサをさらに備え、
前記第1の容量および第2の容量は前記ダイヤフラムに印加される前記パッケージの外部の前記第1の流体圧に応答し、
前記第3の容量および第4の容量は前記第2のダイヤフラムに印加される前記パッケージの外部の前記第2の流体圧に応答する、請求項9に記載のMEMS圧力センサ。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記第1の容量、第2の容量、第3の容量、および第4の容量を使用して前記第1の流体圧と前記第2の流体圧との間の差を求めるようにさらに構成される、請求項10に記載のMEMS圧力センサ。
【請求項12】
前記第2のダイヤフラムおよび第2の連結部は、該第2の連結部が該第2のダイヤフラムの変形に応答して運動しないように構成される、請求項9に記載のMEMS圧力センサ。
【請求項13】
タイヤ空気圧監視システムであって、
車両のタイヤ内に据え付けられるように構成されるホイールモジュールであって、
1つまたは複数のセンサからの信号を処理するように構成されるプロセスコントローラと、
前記プロセスコントローラに結合される微小電気機械システム(MEMS)圧力センサであって、該MEMS圧力センサは、
回転試験質量であって、該回転試験質量は、
回転軸と第1の端部との間の第1の区画、および、前記回転軸と第2の端部との間の第2の区画を形成するために、その前記第1の端部と前記第2の端部との間でずれた前記回転軸に対して運動するように適合される可動要素を備え、
前記第1の区画は前記回転軸から離間される拡張部分を含み、
前記第2の区画は、前記第1の区画の前記拡張部分の長さにほぼ等しい長さにおいて前記回転軸から離間される拡張部分を備え、それによって、前記回転軸は前記可動要素の質量の中心にある、回転試験質量と、
前記車両のタイヤの空気圧に応答して変形するように構成される、ダイヤフラムと、
前記パッケージの内部の前記ダイヤフラムの表面を、前記回転試験質量の前記第1の区画に沿った点に結合するように構成される連結部とを備え、
前記回転試験質量は前記ダイヤフラムの変形に応答して回転するように構成される、MEMS圧力センサと、
前記プロセスコントローラに結合され、該プロセスコントローラによって提供されるセンサ情報を送信するように構成されるRF送信機とを備える、ホイールモジュールを備える、タイヤ空気圧監視システム。
【請求項14】
前記MEMS圧力センサは、
第1の主面および第2の主面をさらに備える前記回転試験質量と、
前記回転軸から第1の距離をおいて前記可動要素の前記第1の区画の前記第1の主面上に配置される第1の可動要素電極と、
前記回転軸から第2の距離をおいて前記可動要素の前記第2の区画の前記第1の主面上に配置される第2の可動要素電極と、
前記第1の可動要素電極と対向するロケーションにおいて前記パッケージの固定表面上に配置される第1の固定電極と、
前記第2の可動要素電極と対向するロケーションにおいて前記パッケージの前記固定表面上に配置される第2の固定電極とをさらに備え、
前記第1の可動要素電極は前記第2の可動要素電極から電気的に絶縁され、
前記第1の固定電極は前記第2の固定電極から電気的に絶縁され、
前記第1の可動要素電極および前記第1の固定電極は第1の可変コンデンサを形成し、
前記第2の可動要素電極および前記第2の固定電極は第2の可変コンデンサを形成し、
前記プロセスコントローラは、前記第1の可変コンデンサの第1の容量と前記第2の可変コンデンサの第2の容量との間の差を測定するようにさらに構成され、前記第1の容量および前記第2の容量は前記ダイヤフラムに印加される前記車両のタイヤの前記空気圧に応答する、請求項13に記載のタイヤ空気圧監視システム。
【請求項15】
前記MEMS圧力センサは、前記車両のタイヤの回転によって引き起こされる加速力には無反応である、請求項14に記載のタイヤ空気圧監視システム。
【請求項16】
微小電気機械システム(MEMS)圧力センサであって、
回転試験質量であって、該回転試験質量は、
第1の端部と第2の端部との間で、かつ他の回転軸からずれた第1の回転軸および第2の回転軸に対して運動するように適合される可動要素であって、
該可動要素の第1の区画は前記第1の回転軸と前記第1の端部との間に形成され、前記第1の回転軸および前記第2の回転軸から離間される拡張部分を備え、
該可動要素の第2の区画は前記第2の回転軸と前記第2の端部との間に形成され、前記第2の回転軸および前記第1の回転軸から離間される拡張部分を含み、
前記第2の区画の前記拡張部分の長さは前記第1の区画の前記拡張部分の長さにほぼ等しく、
前記第1の回転軸と前記第2の回転軸との間に第3の区画が形成される、可動要素を備える、回転試験質量と、
第1のダイヤフラムであって、該第1のダイヤフラムおよび前記回転試験質量を備えるパッケージの外部の第1の流体圧に応答して変形するように構成される、第1のダイヤフラムと、
前記パッケージの外部の第2の流体圧に応答して変形するように構成される、第2のダイヤフラムと、
前記パッケージの内部の前記第1のダイヤフラムの表面を、前記第1の回転軸において第1の旋回点に結合するように構成される第1の連結部と、
前記パッケージの内部の前記第2のダイヤフラムの表面を、前記第2の回転軸において第2の旋回点に結合するように構成される第2の連結部とを備える、MEMS圧力センサ。
【請求項17】
第1の主面および第2の主面をさらに備える前記回転試験質量と、
前記第1の回転軸から第1の距離をおいて前記可動要素の前記第1の区画の前記第1の主面上に配置される第1の可動要素電極と、
前記第2の回転軸から第2の距離をおいて前記可動要素の前記第2の区画の前記第1の主面上に配置される第2の可動要素電極と、
前記第1の可動要素電極と対向するロケーションにおいて前記パッケージの固定表面上に配置される第1の固定電極と、
前記第2の可動要素電極と対向するロケーションにおいて前記パッケージの前記固定表面上に配置される第2の固定電極とをさらに備え、
前記第1の可動要素電極は前記第2の可動要素電極から電気的に絶縁され、
前記第1の固定電極は前記第2の固定電極から電気的に絶縁され、
前記第1の可動要素電極および前記第1の固定電極は第1の可変コンデンサを形成し、
前記第2の可動要素電極および前記第2の固定電極は第2の可変コンデンサを形成する、請求項16に記載のMEMS圧力センサ。
【請求項18】
前記第1の可変コンデンサおよび第2の可変コンデンサに結合され、前記第1の可変コンデンサの第1の容量と前記第2の可変コンデンサの第2の容量との間の差を測定するように構成されるプロセッサをさらに備え、前記第1の容量および第2の容量は前記第1のダイヤフラムに印加される前記パッケージの外部の前記第1の流体圧、および前記第2のダイヤフラムに印加される前記パッケージの外部の前記第2の流体圧に応答する、請求項17に記載のMEMS圧力センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には圧力センサに関し、より具体的には、差分容量出力信号を提供する「シーソー」設計を有する圧力センサに関する。
【背景技術】
【0002】
最新の車両は、車両のタイヤ内に適度な空気圧があるか否かを判定するためにセンサを使うことが増えてきている。無線周波数(RF)データリンクを用いるタイヤ内圧力センサを使用する直接タイヤ空気圧監視が、タイヤ空気圧を測定するのに一般的に使用されている。
【0003】
1つのタイプのタイヤ空気圧監視システム(TPMS)では、微小電気機械システム(MEMS)圧力センサデバイスの外部にある圧刺激を検知するように構成されるMEMS圧力センサデバイスが利用される。そのようなMEMS圧力センサデバイスは、センスコンデンサの一方の電極として外部環境に露出したダイヤフラムを使用して、センスコンデンサの他方の電極が固定されている状態で、圧力の変化を容量的に測定する。このように、外部圧力が変化するとダイヤフラムが変形し、それによって、容量信号が変化する。そのようなシステムの1つの欠点は、容量と、蓄電板間の距離との間の反比例関係に起因して、信号の変化が非線形的であるということである。そのようなシステムのもう1つの欠点は、出力信号が、差分容量出力を提供する他のタイプのMEMSセンサと比較して弱いことである。
【0004】
それゆえ、外部圧力変化に関してより線形的な出力信号を提供する圧力センサデバイスを有すること、および、信号レベルを増大するように、出力信号が差分容量から導出されることが望まれている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明は、添付の図面を参照することによってよりよく理解されることができ、その多数の目的、特徴、および利点が当業者に明らかとなる。
【0006】
【
図1】従来のMEMS圧力センサの側断面ビューを示す簡略ブロック図。
【
図2】本発明の実施形態による、MEMS圧力センサデバイスの断面を示す簡略ブロック図。
【
図3】MEMS圧力センサデバイスの一部の上面ビューを示す簡略ブロック図。
【
図4】MEMS圧力センサデバイスの代替的な実施形態の上面ビューを示す簡略ブロック図。
【
図5】差分圧力を測定するための能力を提供するMEMS圧力センサデバイスの別の代替的な実施形態の上面ビューを示す簡略ブロック図。
【
図6】単一の回転試験質量を有する2つのダイヤフラムを設けるMEMS圧力センサデバイスの別の代替的な実施形態の上面ビューを示す簡略ブロック図。
【
図7】
図6に示すMEMS圧力センサデバイスの断面ビューを示す簡略ブロック図。
【
図8】本発明の実施形態とともに使用可能なタイヤ空気圧監視システム800を示す簡略ブロック図。
【0007】
異なる図面において同じ参照符号が使用されている場合、これは、別途記載しない限り、同一の項目であることを示す。図面は必ずしも原寸に比例して描かれてはいない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態は、信号振幅レベルを向上させるために、外部圧力に関する線形出力と、差分容量出力との両方を提供することができるMEMS圧力センサデバイスを提供する。本発明の実施形態は、回転試験質量の両端に構成される電極から容量出力を生成する回転試験質量(たとえば、「シーソー」)を使用することを通じてこれらの利点を提供する。次いで、センサ出力が回転試験質量のこれらの端部から生成される容量間の差を使用して生成されることができる。そのような構成のさらなる利点は、差分容量出力が、外部圧力変化に関して、従来のMEMS圧力センサからの容量出力よりも線形的に変化することである。
【0009】
図1は、従来技術のMEMS圧力センサの側断面ビューを示す簡略ブロック図である。MEMS圧力センサデバイス100は、シリコンウェハのような基板110を含む。本明細書において記載される基板は、ガリウムヒ素、シリコンゲルマニウム、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、シリコン、単結晶シリコンなど、および上記の組み合わせのような、任意の半導体材料または材料の組み合わせであることができる。いくつかの実施形態において、基板は半導体材料のバルク基板ウェハであってもよい。他の実施形態では、基板は、そのうちの少なくとも1つが半導体材料を含む複数の層を含んでもよい。たとえば、基板110は、他の事例においては、絶縁体層を含んでもよい。
【0010】
基板110の上面上には、たとえば、シリコン局所酸化(LOCOS)プロセスによって形成される酸化ケイ素の絶縁層120がある。酸化ケイ素層120の上部上には、空洞領域140の上にダイヤフラム130がある。ダイヤフラム130は、たとえば、ポリシリコンから形成され、空洞140を通じてダイヤフラムにもたらされる外部流体圧に応答して変形可能である。ダイヤフラム130は、CVD技法、PVD技法など、またはそれらの任意の組み合わせのような従来のまたは特許技術を使用して成長または堆積されることができる。ダイヤフラム130をMEMS圧力センサデバイス100の他の要素から電気的に絶縁するために絶縁体層150が形成される。絶縁体層150は、たとえば、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素などを含む様々な材料から形成されることができる。
【0011】
ダイヤフラム130を含む領域の上に基準要素160が形成される。基準要素160は、たとえば、高アスペクト比微小電気機械システム工程を使用して形成されるポリシリコンまたはシリコンから形成されることができる機械的シリコン要素である。基準要素160は、処理中にダイヤフラム130の上に空洞領域を形成すること、および、基準圧力がダイヤフラム130の裏面まで通過することを可能にすることができる貫通孔165を含むことができる。キャップ170が基板ラミネートの上面に付着され、それによって、気密シール領域180が設けられる。キャップ170は、たとえば、ガラスフリット接合、金属共晶接合などを含む様々な既知の処理方法によって基板ラミネートに付着されることができる。気密シール領域180は、それに対して外部圧力が測定される所望の基準圧力を用いて設けられることができる。
【0012】
ダイヤフラム130および基準要素160はセンスコンデンサ165の電極を形成する。センスコンデンサ165の容量は、一部には、空洞領域140内で作用する、MEMS圧力センサデバイス100の外部の圧力に応答したダイヤフラム130の変形に起因して決定される。上述のように、容量は、ダイヤフラム130と基準要素160との間の距離に反比例して変化する。したがって、容量変化と圧力変化との間の関係は非線形的である。
【0013】
図2は、本発明の実施形態による、MEMS圧力センサデバイス200の断面を示す簡略ブロック図である。図示のように、MEMS圧力センサデバイス200は、圧力センサデバイスの外部の圧力にさらされるダイヤフラムと、この場合に差分容量出力を提供することができる回転試験質量との間の連結部を提供する。
【0014】
基板210に絶縁層220が設けられる。
図1と同様に、基板210はシリコンウェハであることができ、絶縁層220は酸化ケイ素であることができる。絶縁層220の上にダイヤフラム230が、電極280および290とともに形成される。再び
図1と同様に、ダイヤフラム230ならびに電極280および290を形成する層はポリシリコンであることができ、従来の技法を使用して形成されることができる。ダイヤフラム230を、電極280および290のようなMEMS圧力センサデバイス100の他の要素から電気的に絶縁するために絶縁体層235が形成される。絶縁体層235は、たとえば、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素などを含む様々な材料から形成されることができる。
【0015】
ダイヤフラム230は、空洞240によって画定される領域を通じてダイヤフラムに印加される流体圧に応答して変形可能である。ダイヤフラム230が変形すると、ダイヤフラムと回転試験質量とを結合する連結部255が、回転試験質量250を旋回点260を中心として回転させる。キャップ270が基板ラミネートの上面に付着され、それによって、気密シール領域273が設けられる。
図1からのキャップと同様に、キャップ270は様々な方法を使用して付着されることができる。
【0016】
ダイヤフラム230の動きによって、回転試験質量250がシーソーと同様に動かされ、すなわち、一方の側(たとえば、側275)が上がると反対側(たとえば、側285)が下がる。回転試験質量250は、回転試験質量が旋回点260を通じて平衡を保たれるように構成されることができる。これには、デバイスがデバイス全体に加えられる加速度に対する感度が低くなる、またはそれに対して無反応になるという効果がある。回転試験質量の側285から構成される電極が固定電極280に関連付けられて、第1の可変センスコンデンサ283が形成される。回転試験質量の側285から構成される電極が固定電極290に関連付けられて、第2の可変センスコンデンサ293が形成される。
【0017】
第1の可変センスコンデンサおよび第2の可変センスコンデンサの容量の変化が組み合わされて、MEMS圧力センサデバイス200から差分出力が提供されることができる。差分出力の1つの利点は、信号が2つの容量を合成したものであり、それゆえより強い信号であることである。差分出力のもう1つの利点は、印加される外圧の変化に応答した差分出力の変化の間の関係が、MEMS圧力センサデバイス100のものよりも線形的であることである。
【0018】
MEMS圧力センサデバイス200の作製は、既知のMEMSプロセスを使用して実行されることができる。
【0019】
図3は、MEMS圧力センサデバイス200の一部の上面ビューを示す簡略ブロック図である。回転試験質量250は、バー領域305によって付着される側275および285にパドルを有するものとして示されている。旋回軸260は、アンカー310によって固定され、回転試験質量の回転運動を可能にする。ダイヤフラム230は、旋回軸260の右にずれているものとして示されており、連結部255によってバー領域に付着されている。一実施形態では、旋回軸260の中心から側285にあるパドルの質量中心まで距離L1は、約300マイクロメートル(ミクロン)である。その同じ実施形態において、旋回軸260の中心から連結部255までの距離L2は約100マイクロメートル(ミクロン)である。ダイヤフラムおよび連結部(ならびに、ダイヤフラムの外側に被着される任意の保護ゲル)は回転試験質量の一方の側(たとえば、図示されているような右側)に重量を加えるため、補償するために回転試験質量の反対側にバランスカウンターウェイト(balance counterweight)320が形成されることができる。バランスカウンターウェイトは、回転試験質量が何らかの加速効果を受けるのを回避するのに役立つ。これは、タイヤ空気圧監視システムのような、圧力センサデバイスが様々な加速度を受ける可能性がある用途に対する配慮とすることができる。
【0020】
図2および
図3の実施形態は、MEMS圧力センサデバイス200の外部の圧力の測定を可能にする。しかしながら、この実施形態は、複数の圧力間の差を測定するには理想的でない場合がある。さらに、オーバーモールドのような追加のパッケージング技法が、挙動を変える、可動構造に対する様々な応力を引き起こす場合がある。以下の実施形態は、これらの問題のいくつかに対処することができる。
【0021】
図4は、本発明の実施形態による、MEMS圧力センサデバイス400の代替的な実施形態の上面ビューを示す簡略ブロック図である。外圧に応答するダイヤフラム410は、2つの回転試験質量420および430の運動を引き起こすことができる。ダイヤフラム410は、一対の連結部435および440を介して2つの回転試験質量に結合される。ダイヤフラム410が外圧によって変形すると、回転試験質量は対向する両方向に回転する。回転試験質量420および430の構成は
図3に示す回転試験質量250のものと同様である。回転試験質量420は対向する両端422および424にパドルを有し、旋回軸426を中心として回転する。加えて、ダイヤフラム410、ならびに連結部435、440の重量効果を相殺するためにカウンターウェイト428が設けられる。同様に、回転試験質量430は対向する両端432および434にパドルを有し、旋回軸436を中心として回転し、カウンターウェイト438を有する。
【0022】
MEMS圧力センサデバイス400として示されている実施形態の1つの利点は、後続の処理(たとえば、オーバーモールド)、温度変化などによってデバイスパッケージに課される任意の何らかの応力が、2つの回転試験質量の等しく反対の運動によって相殺されることができることである。この結果として、圧力センサデバイスによってとられる測定値に対する、応力の影響が低減するか、またはなくなることができる。この実施形態のもう1つの利点は、回転試験質量によって形成される複数のセンスコンデンサがあるために、圧力センサデバイスの信号強度が向上することである。特定用途向け集積回路(ASIC)のような処理デバイスが、単一回転試験質量構成におけるよりも正確に外部圧力効果を求めるために、様々な容量を受信および統合するように構成されることができる。さらに、これは、外圧を受け取るために、ダイヤフラム410につながる外部ポートサイズ(たとえば、基板内に形成される空洞)の増大、または複数のダイヤフラムなしに行われることができる。
【0023】
図5は、本発明の実施形態による、差分圧力を測定するための能力を提供するMEMS圧力センサデバイス500の代替的な実施形態の上面ビューを示す簡略ブロック図である。MEMS圧力センサデバイス400と同様に、一対の回転試験質量が設けられる。しかしながら、この場合、2つのダイヤフラム510、515が設けられ、各々がそれぞれ別個の回転試験質量520および530に関連付けられる。2つのダイヤフラムを有することによって、差分圧力が各ダイヤフラムに印加されることができ、差分圧力が測定されることができる。
【0024】
図5に設けられる各回転試験質量構成は
図3に示したものと同様である。たとえば、回転試験質量520は、端部522および524の各々にパドルを含み、旋回軸526を中心として回転し、ゲルのような任意の追加の負担とともにダイヤフラム510および連結部512に関連付けられる重量を補償するためのカウンターウェイト528を有する。同様に、回転試験質量530は、端部532および534の各々にパドルを含み、旋回軸536を中心として回転し、任意の追加の負担とともに、ダイヤフラム515および連結部517に関連付けられる重量を補償するためのカウンターウェイト538を有する。
【0025】
示されている実施形態では、2つの回転試験質量構成は各端部において固定底部電極540および550を共有する。代替的な実施形態は、2つの回転試験質量に対して別個の固定底部電極を提供する。回転試験質量および固定電極によって形成される可変検知コンデンサによって提供される信号の処理は、様々な電極の構成に応じて変化することを理解されたい。信号を解釈するプロセッサ(たとえば、ASIC)の設計はMEMS圧力センサデバイスの設計と結合される。
【0026】
MEMS圧力センサデバイス500は、ダイヤフラム510に触れる圧力とダイヤフラム515に触れる圧力との間の差分圧力を測定するように構成される。図示のように、回転試験質量は、ダイヤフラムにおける圧力の増大に応答して対向する両方向に回転するように構成される。MEMS圧力センサデバイス400と同様に、回転試験質量の対向する回転がパッケージ応力を相殺することができる。2つの異なる圧力の差分を測定するのに加えて、MEMS圧力センサデバイス500は、パッケージ応力を補償するための基準セルを提供するのに使用されることもできる。基準セルは、たとえば、ダイヤフラム内に穴をあけるか、またはダイヤフラムの下に空洞を設けないことによって、ゼロ圧力感度を有し得る。
【0027】
図6は、単一の回転試験質量で2つのダイヤフラムを設けるMEMS圧力センサデバイスの代替的な実施形態の上面ビューを示す簡略ブロック図である。ダイヤフラム610および620は、それぞれ連結部615および625によって回転試験質量630に結合される。前の実施形態と同様に、ダイヤフラム610および620は、MEMS圧力センサデバイス600の外部の圧力の変化に応答して変形可能であるように構成される。図示のように、回転試験質量630の端部640および650にパドルが形成される。これらのパドルのすべてまたは一部は、下記により十分に説明するように、可変コンデンサの電極として構成されることができる。
【0028】
図7は、
図6に示す代替的な実施形態による、MEMS圧力センサデバイス600の断面ビューを示す簡略ブロック図である。前に説明した実施形態と同様に、たとえば、シリコンウェハから形成されることができる基板705が設けられる。基板705の上面上には、酸化ケイ素のような絶縁層707がある。ダイヤフラム610および620が、電極750および760とともに酸化物層の上に形成され、下記により十分に説明するようなセンスコンデンサの固定部分を形成する。ダイヤフラムおよび電極を形成する層は、たとえば、ポリシリコンから形成されることができる。ダイヤフラムを電極などから電気的に分離するために、絶縁体層709が形成される。絶縁体層709は、この用途に適切な様々な絶縁体材料から形成されることができる。上述のように、ダイヤフラム610および620は、それぞれ連結部615および625によって回転試験質量630に結合される。連結部615および625は、旋回構成710および720によって回転試験質量に結合されることができる。連結部を旋回点を通じて結合することによって、これは、回転試験質量が、外圧によって引き起こされる各ダイヤフラムの変位に応答して独立して回転することを可能にする。外圧は、それぞれ、基板内に形成される空洞730および740を通じてダイヤフラム610および620に印加されることができる。
【0029】
回転試験質量630の端部640および650に電極が形成されることができ、これらは、それぞれ可変コンデンサ770および780を形成するために、固定電極750および760に関連付けられる。これらの可変コンデンサからの信号は、空洞730および740を通じて印加される圧力間の差分圧力を評価するために使用されることができる。
【0030】
図8は、本発明の実施形態とともに使用可能なタイヤ空気圧監視システム800を示す簡略ブロック図である。TPMSは、本発明を具現化する圧力センサデバイスの使用の一例である。タイヤ空気圧監視システム(TPMS)800は、2つの部分、すなわち、ホイールモジュール805と受信機部分855とを含む。ホイールモジュール805は一般的には、車両の1つまたは複数のタイヤ内に位置し、一方で受信機部分845はタイヤの外側に含まれる。
【0031】
ホイールモジュール805は、ホイールモジュールの電源に結合される電力管理回路810を含む。電力管理回路810は、アナログインターフェース815、プロセスコントローラ835、および無線周波数(RF)送信機840を別個に給電する。さらに、圧力センサ820、温度センサ825、および1つまたは複数の種々のセンサ830が、電力管理回路810から直接、またはアナログインターフェース815を通じてのいずれかで電力を受け取ることができる。圧力センサ820の入出力は、アナログインターフェース815の第1の信号入出力に接続される。温度センサ825の入出力は、アナログインターフェース815の第2の信号入出力に接続される。種々のセンサ830の入出力は、アナログインターフェース815の第3の信号入出力に接続される。アナログインターフェース815は、プロセスコントローラ835の入出力にさらに接続される。また、プロセスコントローラ835の入出力は、RF送信機840の入出力に結合される。RF送信機840は、RF信号を送信するためのアンテナを有し、当該RF信号はRF受信機850のアンテナによって受信される。RF周波数として使用される周波数の例は、例としてのみ、300MHz〜1GHzである。
【0032】
受信機部分845は、RF受信機850と、プロセッサ855と、ディスプレイ860とを含む。RF受信機850の出力はプロセッサ855の入力に接続される。ディスプレイ860はプロセッサ855の出力に接続される。
【0033】
動作時、ホイールモジュール805は車両タイヤ内に据え付けられる。圧力センサ820は、当該圧力センサが電源投入されると、タイヤ空気圧を検知するように機能する。圧力センサ820は、
図2および
図3に示されているもののような、本発明の一実施形態を含むことができる。同様に、温度センサ825は、当該温度センサが電源投入されると、タイヤ内の空気の温度を検知するように機能する。温度測定は、可変キャパシタンス、可変抵抗、またはダイオード電圧を使用して行われることができる。種々のセンサ830は、必要に応じて、追加の環境および性能データを測定するように構成されることができる。アナログインターフェース815は、様々なセンサの出力のアナログ−デジタル変換を実行するように機能する。加えて、アナログインターフェース815は、クロック同期および制御信号をセンサに提供すること、基準電圧を提供するとともに圧力および温度測定値に関連付けられるセンサ誤差および非線形誤差の補正を実行すること、ならびに、センサによって提供される差分容量測定値を解釈することのような、他の機能を実行することができる。プロセスコントローラ835は、所与の時間間隔をおいて圧力および温度測定値を収集するとともに、そのデータを第2の時間間隔をおいてRF送信機840を介して送信するように構成されることができる。さらに、ホイールモジュール内のバッテリ電力を管理するために、プロセスコントローラ835は、電力管理回路を使用して、ホイールモジュールの他の構成要素から選択的に電源を接続および接続解除することができる。電力管理回路810は、様々な低電力モードおよびタイミングセンスパラメータを実装するために、内部に組み込まれる電力節約ロジックおよび機能を含むことができる。
【0034】
プロセスコントローラ835は付加的に、タイヤが運動しているときに、タイヤの圧力および温度のみに基づいて、または種々のセンサのうちの1つまたは複数に応答して、識別を目的とする論理回路またはメモリ内のソフトウェアコードを含むことができる。タイヤが運動中であるか否かの判定に応答して、プロセスコントローラ835は、様々なセンサによる測定の測度およびRF送信機840の送信速度によって求められるすべてのバッテリ電力消費に対する制御を提供することができる。プロセスコントローラ835は、圧力センサ820によって指示されるタイヤ空気圧レベルを監視して、タイヤ空気圧が所定の値以下になるか、または第2の所定の値以上になると、低または高圧警告信号をRF送信機840に提供することができる。圧力警告信号はRF受信機850によって受信され、プロセッサ855によって処理されて、車両のユーザに、タイヤ空気圧が所定値を下回って下降しているか、または上回って上昇していることを知らせる。たとえば、プロセッサ855が空気漏れが存在すること(たとえば、タイヤ空気圧が所定の閾値を下回って下降していること)を検出すると、可視的または可聴的のいずれかの警告が、ディスプレイ860に送信される。プロセッサ855は、ソフトウェアを記憶するためのROMのようなプログラム可能メモリを有するマイクロコントローラとして、または説明されている方法を実装するためのハードウェアロジックを有する状態機械として実装されることができる。
【0035】
このように、複数の可変センスコンデンサを使用することを通じて差分信号を提供する様々な圧力センサ構成が作成されることができる。さらに、これらの圧力センサ構成は、圧力センサの外部の圧力の変化に応答するより線形的な信号を提供する。両方の事例において、これらの圧力センサによって生成される信号の処理は、たとえば、温度センサおよび加速度センサのようなタイヤ空気圧監視システム内で使用される他のタイプのセンサに関してより一様になる。これは同様に、プロセッサ設計を単純化することを可能にする。
【0036】
ここまでで、MEMS圧力センサであって、回転軸と第1の端部との間の第1の区画、および、回転軸と第2の端部との間の第2の区画を形成するために、第1の端部と第2の端部との間でずれた回転軸に対して運動するように適合される可動要素を有する回転試験質量であって、第1の区画は回転軸から離間される拡張部分を含み、第2の区画は、第1の区画の拡張部分の長さにほぼ等しい長さにおいて回転軸から離間される拡張部分を含み、それによって、回転軸は可動要素の質量の中心にある、回転試験質量と、ダイヤフラムであって、当該ダイヤフラムおよび回転試験質量を含むパッケージの外部の第1の流体圧に応答して変形するように構成される、ダイヤフラムと、パッケージの内部のダイヤフラムの表面を、回転試験質量の第1の区画に沿った点に結合するように構成される連結部とを含み、回転試験質量はダイヤフラムの変形に応答して回転する、MEMS圧力センサが提供されたことを諒解されたい。
【0037】
上記の実施形態の一態様において、可動要素の第2の区画は、結合された可動要素、連結部およびダイヤフラムの質量の中心を回転軸に維持するように、ダイヤフラムおよび連結部の重量をずらすカウンターウェイトをさらに含む。上記の実施形態の別の態様は、第1の主面および第2の主面をさらに有する回転試験質量と、回転軸から第1の距離をおいて可動要素の第1の区画の第1の主面上に配置される第1の可動要素電極と、回転軸から第2の距離をおいて可動要素の第2の区画の第1の主面上に配置される第2の可動要素電極と、第1の可動要素電極と対向するロケーションにおいてパッケージの固定表面上に配置される第1の固定電極と、第2の可動要素電極と対向するロケーションにおいてパッケージの固定表面上に配置される第2の固定電極とをさらに含む。第1の可動要素電極は、第2の可動要素電極から電気的に絶縁される。第1の固定電極は、第2の固定電極から電気的に絶縁される。第1の可動要素電極および第1の固定電極は第1の可変コンデンサを形成する。第2の可動要素電極および第2の固定電極は第2の可変コンデンサを形成する。さらなる態様では、MEMS圧力センサは、第1の可変コンデンサおよび第2の可変コンデンサに結合されるプロセッサをさらに含む。プロセッサは、第1の可変コンデンサの第1の容量と第2の可変コンデンサの第2の容量との間の差を測定するように構成され、第1の容量および第2の容量はダイヤフラムに印加されるパッケージの外部の第1の流体圧に応答する。
【0038】
上記の実施形態の別の態様は、第2の回転試験質量をさらに含む。第2の回転試験質量は、回転軸と第3の端部との間の第3の区画、および、回転軸と第4の端部との間の第4の区画を形成するために、その第3の端部と第4の端部との間でずれた第2の回転軸に対して運動するように適合される第2の可動要素を含み、第3の区画は第2の回転軸から離間される拡張部分を含み、第4の区画は、第3の区画の拡張部分の長さにほぼ等しい長さにおいて第2の回転軸から離間される拡張部分を含み、それによって、第2の回転軸は第2の可動要素の質量の中心にある。
【0039】
さらなる態様は、パッケージの内部のダイヤフラムの表面を、第2の回転試験質量の第3の区画に沿った点に結合するように構成される、第2の連結部を含む。第2の回転試験質量は、ダイヤフラムの変形に応答して回転するように構成され、第2の回転試験質量の回転は、回転試験質量の回転方向とは反対の回転方向にある。別のさらなる態様は、パッケージの外部の第2の流体圧に応答して変形するように構成される第2のダイヤフラムであって、第2の流体圧は、第1の流体圧と関連付けられる第1の流体源とは別個の第2の流体源と関連付けられる、第2のダイヤフラムと、パッケージの内部の第2のダイヤフラムの表面を、第2の回転試験質量の第3の区画に沿った点に結合するように構成される第2の連結部であって、第2の回転試験質量は第2のダイヤフラムの変形に応答して回転するように構成される、第2の連結部とを含む。上記の態様のさらなる態様では、第2の回転試験質量の回転は、第2のダイヤフラムが受ける圧力の増大に応答した、回転試験質量の回転方向と反対の回転方向にあるものである。
【0040】
上記の態様の別のさらなる態様は、第1の主面および第2の主面を有する回転試験質量と、回転軸から第1の距離をおいて可動要素の第1の区画の第1の主面上に配置される第1の可動要素電極と、回転軸から第2の距離をおいて可動要素の第2の区画の第1の主面上に配置される第2の可動要素電極と、第3の主面および第4の主面をさらに有する第2の回転試験質量と、回転軸から第3の距離をおいて可動要素の第3の区画の第3の主面上に配置される第3の可動要素電極と、回転軸から第4の距離をおいて可動要素の第4の区画の第3の主面上に配置される第4の可動要素電極と、第1の可動要素電極および第4の可動要素電極と対向するロケーションにおいてパッケージの固定表面上に配置される第1の固定電極と、第2の可動要素電極および第3の可動要素電極と対向するロケーションにおいてパッケージの固定表面上に配置される第2の固定電極とを含む。第1の可動要素電極は、第2の可動要素電極から電気的に絶縁される。第3の可動要素電極は、第4の可動要素電極から電気的に絶縁される。第1の固定電極は、第2の固定電極から電気的に絶縁される。第1の可動要素電極および第1の固定電極は第1の可変コンデンサを形成する。第2の可動要素電極および第2の固定電極は第2の可変コンデンサを形成する。第3の可動要素電極および第2の固定電極は第3の可変コンデンサを形成する。第4の可動要素電極および第1の固定電極は第4の可変コンデンサを形成する。この態様のさらなる態様では、MEMS圧力センサは、第1の可変コンデンサ、第2の可変コンデンサ、第3の可変コンデンサ、および第4の可変コンデンサに結合されるプロセッサをさらに含む。プロセッサは、第1の可変コンデンサの第1の容量と第2の可変コンデンサの第2の容量との間の差を測定し、第3の可変コンデンサの第3の容量と第4の可変コンデンサの第4の容量との間の差を測定するように構成される。第1の容量および第2の容量はダイヤフラムに印加されるパッケージの外部の第1の流体圧に応答し、第3の容量および第4の容量は第2のダイヤフラムに印加されるパッケージの外部の第2の流体圧に応答する。この態様のさらなる態様では、プロセッサは、第1の容量、第2の容量、第3の容量、および第4の容量を使用して第1の流体圧と第2の流体圧との間の差を求めるようにさらに構成される。
【0041】
別の態様では、第2のダイヤフラムおよび第2の連結部は、第2の連結部が第2のダイヤフラムの変形に応答して運動しないように構成される。
【0042】
別の態様は、車両のタイヤ内に据え付けられるように構成されるホイールモジュールを有するタイヤ空気圧監視システムを提供する。ホイールモジュールは、1つまたは複数のセンサからの信号を処理するように構成されるプロセスコントローラと、プロセスコントローラに結合されるMEMS圧力センサと、プロセスコントローラに結合され、プロセスコントローラによって提供されるセンサ情報を送信するように構成されるRF送信機とを含む。MEMS圧力センサは、回転軸と第1の端部との間の第1の区画、および、回転軸と第2の端部との間の第2の区画を形成するために、その第1の端部と第2の端部との間でずれた回転軸に対して運動するように適合される可動要素を有する回転試験質量であって、第1の区画は回転軸から離間される拡張部分を含み、第2の区画は、第1の区画の拡張部分の長さにほぼ等しい長さにおいて回転軸から離間される拡張部分を含み、それによって、回転軸は可動要素の質量の中心にある、回転試験質量と、車両のタイヤの空気圧に応答して機能するように構成される、ダイヤフラムと、パッケージの内部のダイヤフラムの表面を、回転試験質量の第1の区画に沿った点に結合するように構成される連結部であって、回転試験質量はダイヤフラムの変形に応答して回転するように構成される、連結部とを含む。
【0043】
上記の実施形態のさらなる態様では、タイヤ空気圧監視システムのMEMS圧力センサは、第1の主面および第2の主面をさらに有する回転試験質量と、回転軸から第1の距離をおいて可動要素の第1の区画の第1の主面上に配置される第1の可動要素電極と、回転軸から第2の距離をおいて可動要素の第2の区画の第1の主面上に配置される第2の可動要素電極と、第1の可動要素電極と対向するロケーションにおいてパッケージの固定表面上に配置される第1の固定電極と、第2の可動要素電極と対向するロケーションにおいてパッケージの固定表面上に配置される第2の固定電極とをさらに含む。第1の可動要素電極は、第2の可動要素電極から電気的に絶縁される。第1の固定電極は、第2の固定電極から電気的に絶縁される。第1の可動要素電極および第1の固定電極は第1の可変コンデンサを形成する。第2の可動要素電極および第2の固定電極は第2の可変コンデンサを形成する。プロセスコントローラは、第1の可変コンデンサの第1の容量と第2の可変コンデンサの第2の容量との間の差を測定するようにさらに構成され、第1の容量および第2の容量はダイヤフラムに印加される車両のタイヤの空気圧に応答する。さらなる態様では、MEMS圧力センサは、車両のタイヤの回転によって引き起こされる加速力には無反応である。
【0044】
別の実施形態は、回転試験質量と、第1のダイヤフラムであって、当該第1のダイヤフラムおよび回転試験質量を備えるパッケージの外部の第1の流体圧に応答して機能するように構成される、第1のダイヤフラムと、パッケージの外部の第2の流体圧に応答して機能するように構成される、第2のダイヤフラムと、パッケージの内部の第1のダイヤフラムの表面を、回転試験質量の第1の回転軸において第1の旋回点に結合するように構成される第1の連結部と、パッケージの内部の第2のダイヤフラムの表面を、回転試験質量の第2の回転軸において第2の旋回点に結合するように構成される第2の連結部とを有するMEMS圧力センサを含む。回転試験質量は、第1の端部と第2の端部との間で、かつ他の回転軸からずれた第1の回転軸および第2の回転軸に対して運動するように適合される可動要素を含み、可動要素の第1の区画は第1の回転軸と第1の端部との間に形成され、第1の回転軸および第2の回転軸から離間される拡張部分を含み、可動要素の第2の区画は第2の回転軸と第2の端部との間に形成され、第2の回転軸および第1の回転軸から離間される拡張部分を含み、第2の区画の拡張部分の長さは第1の区画の拡張部分の長さにほぼ等しく、第1の回転軸と第2の回転軸との間に第3の区画が形成される。
【0045】
上記の実施形態の一態様では、MEMS圧力センサは、第1の主面および第2の主面をさらに有する回転試験質量と、第1の回転軸から第1の距離をおいて可動要素の第1の区画の第1の主面上に配置される第1の可動要素電極と、第2の回転軸から第2の距離をおいて可動要素の第2の区画の第1の主面上に配置される第2の可動要素電極と、第1の可動要素電極と対向するロケーションにおいてパッケージの固定表面上に配置される第1の固定電極と、第2の可動要素電極と対向するロケーションにおいてパッケージの固定表面上に配置される第2の固定電極とをさらに含む。第1の可動要素電極は、第2の可動要素電極から電気的に絶縁される。第1の固定電極は、第2の固定電極から電気的に絶縁される。第1の可動要素電極および第1の固定電極は第1の可変コンデンサを形成する。第2の可動要素電極および第2の固定電極は第2の可変コンデンサを形成する。さらなる態様では、MEMS圧力センサは、第1の可変コンデンサおよび第2の可変コンデンサに結合されるプロセッサをさらに含む。プロセッサは、第1の可変コンデンサの第1の容量と第2の可変コンデンサの第2の容量との間の差を測定するように構成される。第1の容量および第2の容量は第1のダイヤフラムに印加されるパッケージの外部の第1の流体圧、および第2のダイヤフラムに印加されるパッケージの外部の第2の流体圧に応答する。
【0046】
本発明を実装する装置は、大部分について、当業者に既知の電子コンポーネントおよび回路から成っているため、本発明の基礎となる概念の理解および評価のために、ならびに本発明の教示を分かりにくくせず当該教示から注意を逸らさせないために、回路の詳細は上記で例示されているように必要と考えられる範囲を超えては説明されない。
【0047】
その上、本明細書および特許請求の範囲における「正面(front)」、「裏(back)」、「上部(top)」、「底(bottom)」、「上(over)」、「下(under)」などの用語は、存在する場合、説明を目的として使用されており、必ずしも永久的な相対位置を記述するために使用されてはいない。このように使用される用語は、本明細書に記載されている本発明の実施形態がたとえば、本明細書において例示または他の様態で記載されている以外の方向で動作することが可能であるように、適切な状況下で置き換え可能であることが理解される。
【0048】
「プログラム」という用語は、本明細書において使用される場合、コンピュータシステム上での実行のために設計される一連の命令として定義される。プログラム、またはコンピュータプログラムは、サブルーチン、関数、プロシージャ、オブジェクトメソッド、オブジェクトインプリメンテーション、実行可能アプリケーション、アプレット、サーブレット、ソースコード、オブジェクトコード、共有ライブラリ/動的ロードライブラリ、および/または、コンピュータシステム上での実行のために設計される他の一連の命令を含み得る。
【0049】
上記の実施形態のうちのいくつかは、規定通り、様々な異なる情報処理システムを使用して実装することができる。たとえば、
図8およびその説明は、例示的な情報処理アーキテクチャを記載しているが、この例示的なアーキテクチャは本発明の様々な態様の説明における有用な参照を提供するためにのみ提示されている。無論、このアーキテクチャの記載は説明の目的のために簡略化されており、これは、本発明に従って使用することができる多くの異なる種類の適切なアーキテクチャのうちのほんの1つにすぎない。論理ブロック間の境界は例示にすぎないこと、および、代替的な実施形態は、論理ブロックもしくは回路要素を融合し、または様々な論理ブロックもしくは回路要素に対する代替的な機能の分解を課してもよいことを、当業者は認識しよう。
【0050】
したがって、本明細書において描写したアーキテクチャは例示にすぎないこと、および、事実、同じ機能を達成する多くの他のアーキテクチャを実装することができることは理解されたい。要約すると、ただし依然として明確な意味で、同じ機能を達成するための構成要素の任意の構成が、所望の機能が達成されるように効果的に「関連付けられる」。したがって、本明細書における、特定の機能を達成するために結合される任意の2つの構成要素は互いに「関連付けられる」とみなすことができ、それによって、中間の構成要素またはアーキテクチャにかかわりなく、所望の機能が達成される。同様に、そのように関連付けられる任意の2つの構成要素も、所望の機能を達成するために互いに「動作可能に接続されている」または「動作可能に結合されている」とみなすことができる。
【0051】
さらに例として、1つの実施形態では、システム800内のモジュールの例示される要素は、単一の集積回路上または同じデバイス内に位置する回路である。代替的には、システム800は、互いに相互接続される任意の数の別個の集積回路または別個のデバイスを含んでもよい。
【0052】
さらに、上述の動作の機能間の境界は例示にすぎないことを当業者は認識しよう。複数の動作の機能を単一の動作に組み合わせることができ、かつ/または単一の動作の機能を追加の動作に分散させることができる。その上、代替的な実施形態は、特定の動作の複数のインスタンスを含んでもよく、動作の順序は様々な他の実施形態においては変更してもよい。
【0053】
本明細書において、具体的な実施形態を参照して本発明を説明したが、添付の特許請求の範囲に明記されているような本発明の範囲から逸脱することなく様々な改変および変更を為すことができる。たとえば、使用されている回転試験質量によって平衡が保たれることを前提として、種々の形状およびサイズの回転試験質量が使用されることができる。したがって、本明細書および図面は限定的な意味ではなく例示とみなされるべきであり、すべてのこのような改変が本発明の範囲内に含まれることが意図されている。本明細書において具体的な実施形態に関して記載されているいかなる利益、利点、または問題に対する解決策も、任意のまたはすべての請求項の重要な、必要とされる、または基本的な特徴または要素として解釈されるようには意図されていない。
【0054】
本明細書において使用される場合、「結合されている」という用語は、直接結合または機械的結合に限定されるようには意図されていない。
【0055】
さらに、本明細書において使用される場合、「1つ(“a”or“an”)」という用語は、1つまたは2つ以上として定義される。さらに、特許請求の範囲における「少なくとも1つの」および「1つ以上の」のような前置きの語句の使用は、不定冠詞「1つの(“a”or“an”)」による別の請求項要素の導入が、このように導入された請求項要素を含む任意の特定の請求項を、たとえ同じ請求項が前置きの語句「1つ以上の」または「少なくとも1つの」および「1つの(“a”or“an”)」のような不定冠詞を含む場合であっても、1つだけのこのような要素を含む発明に限定することを暗示するように解釈されるべきではない。同じことが、定冠詞の使用についても当てはまる。
【0056】
別途記載されない限り、「第1の」および「第2の」のような用語は、そのような用語が説明する要素間で適宜区別するように使用される。したがって、これらの用語は必ずしも、このような要素の時間的なまたは他の優先順位付けを示すようには意図されていない。