(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
チタン化合物オリゴマーよりなる高屈折率膜材料の製造方法であって、ピラゾロン誘導体の塩酸塩、ヒドラゾン誘導体の塩酸塩、又は、置換基として2級若しくは3級のアルキル基又はアリール基を1つ以上有するヒドラジン誘導体の塩酸塩の存在下において、アルコール溶液中でチタン化合物と水とを反応させてチタン化合物オリゴマー(a)を製造することを特徴とする高屈折率膜材料の製造方法。
上記キレート化剤が、β−ジケトン、β−ケトエステル、多価アルコール、アルカノールアミン及びオキシカルボン酸からなる群より選ばれた1種以上のキレート化剤である請求項2ないし請求項6の何れかの請求項に記載の高屈折率膜材料の製造方法。
製造された上記高屈折率膜材料が、100℃以上150℃未満で成膜する工程に供するためのものである請求項1ないし請求項9の何れかの請求項に記載の高屈折率膜材料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的形態に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0014】
本発明の高屈折率膜材料の製造方法は、チタン化合物オリゴマーよりなる高屈折率膜材料の製造方法であって、ピラゾロン誘導体の塩酸塩、ヒドラゾン誘導体の塩酸塩、又は、置換基として2級若しくは3級のアルキル基を1つ以上有するヒドラジン誘導体の塩酸塩の存在下において、アルコール溶液中でチタン化合物と水とを反応させてチタン化合物オリゴマー(a)を製造することを特徴とする高屈折率膜材料の製造方法である。
【0015】
[チタン化合物]
ここで、上記チタン化合物は、特に限定はないが、下記式(1)で表されるチタンアルコキシド、又は、下記式(1)で表されるチタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物であることが好ましい。
【0016】
【化1】
[式(1)中、R
11、R
12、R
13、R
14は、それぞれ独立に、炭素数1〜18個のアルコキシル基を示す。]
【0017】
チタンアルコキシドとしては、その反応性の面で、アルコキシル基(R
11、R
12、R
13、R
14)の炭素数が1〜15であることが好ましく、炭素数が1〜10であることがより好ましく、炭素数が1〜6であることが特に好ましい。
【0018】
チタンアルコキシドとしては、具体的には、例えば、テトラメトキシチタン、テトラペントキシチタン、テトラヘキソキシチタン、テトラヘプトキシチタン、テトラオクトキシチタン、テトラステアリルオキシチタン、モノメトキシトリエトキシチタン、ジメトキシジエトキシチタン、トリメトキシモノエトキシチタン、モノエトキシトリプロポキシチタン、ジエトキシジプロポキシチタン、トリエトキシモノプロポキシチタン、テトラエトキシチタン、モノエトキシトリブトキシチタン、ジエトキシジブトキシチタン、トリエトキシモノブトキシチタン、モノプロポキシトリブトキシチタン、ジプロポキシジブトキシチタン、トリプロポキシモノブトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、モノブトキシトリヘキソキシチタン、ジブトキシジヘキソキシチタン、トリブトキシモノヘキソキシチタン、モノオクトキシトリプロポキシチタン、ジオクトキシジブトキシチタン、トリオクトキシモノステアリルオキシチタン等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0019】
上記チタン化合物としては、上記チタンアルコキシドでもよいが、上記チタンアルコキシドにキレート化剤が配位した構造を有するチタンキレート化合物も好ましいものとして挙げられる。
かかるキレート化剤としては、特に限定はないが、β−ジケトン、β−ケトエステル、多価アルコール、アルカノールアミン及びオキシカルボン酸からなる群より選ばれた1種以上のキレート化剤であることが、上記チタン化合物の加水分解性を好適に制御する点で好ましい。
【0020】
上記β−ジケトンとしては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、例えば、具体的には、2,4−ペンタンジオン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、ジベンゾイルメタン、テノイルトリフルオロアセトン、1,3−シクロヘキサンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0021】
上記β−ケトエステルとしては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、例えば、具体的には、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル、メチルピバロイルアセテート、メチルイソブチロイルアセテート、カプロイル酢酸メチル、ラウロイル酢酸メチル等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0022】
上記多価アルコールとしては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、例えば、具体的には、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール;グリセリン等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0023】
上記アルカノールアミンとしては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、例えば、具体的には、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−tert−ブチルエタノールアミン、N−tert−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0024】
上記オキシカルボン酸としては、キレート化剤として配位するものであれば特に限定はないが、グリコール酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0025】
本発明の高屈折率膜材料の製造方法は、ピラゾロン誘導体の塩酸塩、ヒドラゾン誘導体の塩酸塩、又は、置換基として2級若しくは3級のアルキル基を1つ以上有するヒドラジン誘導体の塩酸塩の存在下において、アルコール溶液中でチタン化合物と水とを反応させてチタン化合物オリゴマー(a)を製造する。
「ピラゾロン誘導体の塩酸塩」、「ヒドラゾン誘導体の塩酸塩」、「置換基として2級若しくは3級のアルキル基又はアリール基を1つ以上有するヒドラジン誘導体の塩酸塩」(以下、これら3種の塩酸塩を「特定塩酸塩」と略記する)は、チタン化合物と水とを反応させてチタン化合物オリゴマー(a)を製造する際の触媒として作用するが、反応で得られるチタン化合物オリゴマー(a)に反応する場合もある。
【0026】
[ピラゾロン誘導体の塩酸塩]
上記ピラゾロン誘導体の塩酸塩については特に限定はないが、該ピラゾロン誘導体の塩酸塩におけるピラゾロン誘導体が、下記式(2)で示される構造を有するものであることが好ましい。
【0027】
【化2】
[式(2)中、R
21、R
22は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜18個のアルキル基又はアリール基を示す。]
【0028】
上記式(2)におけるR
21、R
22は、炭素数1〜14個のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜10個のアルキル基が特に好ましい。
また、上記式(2)におけるR
21又はR
22が、アリール基の場合、該アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が好ましい。
【0029】
上記ピラゾロン誘導体の塩酸塩におけるピラゾロン誘導体としては、具体的には、例えば、1−フェニル−3−メチル−5−ピラゾロン、1−(4−トリル)−3−メチル−5−ピラゾロン、3−メチル−5−ピラゾロン、1,3−ジメチル−5−ピラゾロン等が挙げられる。これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0030】
[ヒドラゾン誘導体の塩酸塩]
上記ヒドラゾン誘導体の塩酸塩については特に限定はないが、該ヒドラゾン誘導体の塩酸塩におけるヒドラゾン誘導体が、下記式(3)で示される構造を有するものであることが好ましい。
【0031】
【化3】
[式(3)中、R
31、R
32、R
33、R
34は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜18個の2級若しくは3級のアルキル基又はアリール基を示す。]
【0032】
上記式(3)におけるR
31、R
32、R
33、R
34は、炭素数1〜14個のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜10個のアルキル基が特に好ましい。
また、上記式(2)におけるR
31、R
32、R
33又はR
34が、アリール基の場合、該アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が好ましい。
【0033】
上記ヒドラゾン誘導体の塩酸塩におけるヒドラゾン誘導体としては、具体的には、例えば、2−プロパノンジブチルヒドラゾン、バレルアルデヒドジメチルヒドラゾン、2−プロパノンプロピルヒドラゾン、2−プロパノンメチルヒドラゾン、2−プロパノンエチルヒドラゾン、アセトンジエチルヒドラゾン、ブチルアルデヒドジメチルヒドラゾン、2−プロパノンヒドラゾン、プロパナールブチルヒドラゾン、4−ヘプタノンジメチルヒドラゾン、2−ブタノンジエチルヒドラゾン、シクロヘキサノンヒドラゾン、ベンゾフェノンヒドラゾン等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0034】
[置換基として2級若しくは3級のアルキル基又はアリール基を1つ以上有するヒドラジン誘導体の塩酸塩]
上記「置換基として2級若しくは3級のアルキル基又はアリール基を1つ以上有するヒドラジン誘導体の塩酸塩」については特に限定はないが、該ヒドラジン誘導体の塩酸塩におけるヒドラジン誘導体が、下記式(4)で示される構造を有するものであることが好ましい。
【0035】
【化4】
[式(4)中、R
41、R
42、R
43は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜18個のアルキル基又はアリール基を示し、R
44は、炭素数3〜18個の2級若しくは3級のアルキル基又はアリール基を示す。]
【0036】
上記「置換基として2級若しくは3級のアルキル基又はアリール基を1つ以上有するヒドラジン誘導体の塩酸塩」におけるヒドラジン誘導体としては、具体的には、例えば、イソプロピルヒドラジン、2−ブチルヒドラジン、sec−ブチルヒドラジン、tert−ブチルヒドラジン、フェニルヒドラジン、トリルヒドラジン、メチルフェニルヒドラジン、ベンジルフェニルヒドラジン、ナフチルヒドラジン等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0037】
上記の特定塩酸塩を使用することで、得られたチタン化合物オリゴマー(a)の分子構造、及び/又は、水による部分加水分解によってチタン化合物がオリゴマー化されてチタン化合物オリゴマー(a)が得られる際に、該チタン化合物オリゴマー(a)の分子の折り畳まれ構造等を制御することができ、その構造によって、例えば、150℃未満のような低温での成膜によって高屈折率の膜を得ることができる。
【0038】
低温で成膜できる性質(以下、「低温成膜性」と略記する場合がある。)は、膜の表面を、実施例記載の方法で、強く擦過した後の表面状態を目視観察することで評価する。
【0039】
上記特定塩酸塩は、チタン化合物オリゴマー(a)を製造するために均一に反応させる必要があることから、有機溶剤に親和性の高い構造にすることが好ましく、その点から、上記特定塩酸塩の置換基の少なくとも1つは、分岐した構造又はアリール基が存在する構造が好ましい。
すなわち、式(2)におけるR
21、R
22のうちの少なくとも1つ、式(3)におけるR
31、R
32、R
33、R
34のうちの少なくとも1つ、式(4)におけるR
41、R
42、R
43、R
44のうちの少なくともR
44は、分岐した構造又はアリール基が存在する構造が好ましく、2級若しくは3級のアルキル基又はフェニル基が特に好ましい。
【0040】
上記特定塩酸塩を用いて得られる「チタン化合物オリゴマーよりなる高屈折率膜材料」の安定性が優れること、上記特定塩酸塩を用いて得られる「チタン化合物オリゴマーよりなる高屈折率膜材料」を成膜して得られる高屈折率膜に着色が少ないこと、かかる高屈折率膜の屈折率を高くできる等の点から、上記特定塩酸塩は、チタン化合物1モルに対して、0.0001〜1モルの比率であることが好ましく、0.001〜0.5モルの比率であることがより好ましく、0.005〜0.2モルの比率であることが特に好ましい。
【0041】
チタン化合物をオリゴマー化してチタン化合物オリゴマー(a)を製造するために用いる水の量については、チタン化合物1モルに対して水のモル数が0.1〜3モルの比率であることが好ましく、0.3〜2.5モルの比率であることがより好ましく、0.6〜2モルの比率であることが特に好ましく、0.75〜1.8モルの比率であることが更に好ましい。
水の量がこの範囲であると、得られるチタン化合物オリゴマー(a)の安定性、高屈折率の発現、高屈折率膜材料の基材への密着性等の点で好ましい。
【0042】
縮合時には、アルコールを溶剤として用い、上記チタン化合物をアルコール溶液として、反応に供することが均一性の点等から好ましい。
このとき用いられるアルコールとしては特に限定はないが、前記式(1)中のアルキル基R
11〜R
14の何れかのアルキル基を有する1価アルコールが、チタン化合物オリゴマー(a)の反応性を変化させない点等で好ましい。
具体的には、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
これらは、単独又は2種類以上を併用できる。
【0043】
かかるアルコールの使用量は特に限定はないが、縮合してオリゴマー化するために用いる水の量を、水と該アルコールの合計量に対して、0.5〜20質量%の濃度になるように、該アルコールを用いて希釈して用いることが、チタン化合物オリゴマー(a)等の反応物の白濁や、白色沈殿物の発生を抑制する点で好ましく、上記アルコールを用いて、水を0.7〜15質量%の濃度になるように希釈することがより好ましく、1〜10質量%の濃度になるように希釈することが特に好ましい。
【0044】
チタン化合物をアルコールに溶解させておき、そこに、特定塩酸塩と水とをアルコールに溶解させた溶液を添加して反応させてもよいし、チタン化合物と特定塩酸塩とをアルコールに溶解させておき、そこに、水をアルコールに溶解させた溶液を添加して反応させてもよい。また、その組み合わせでもよい。
【0045】
また、「ピラゾロン誘導体、ヒドラゾン誘導体、又は、置換基として2級若しくは3級のアルキル基又はアリール基を1つ以上有するヒドラジン誘導体」とチタン化合物とをアルコール溶液中で混合後、そこに水と塩酸とを反応させることで、「ピラゾロン誘導体、ヒドラゾン誘導体、又は、置換基として2級若しくは3級のアルキル基又はアリール基を1つ以上有するヒドラジン誘導体」は、それぞれ塩酸塩を形成するため、本製造方法も好ましい。
特に、反応を完結させるためにチタン化合物と水とを反応させてチタン化合物オリゴマー(a)を合成する際に還流反応を行うことが好ましい。
【0046】
特に限定はないが、上記添加は「滴下」が好ましく、また、場合により、還流等の熱処理を経由して、チタン化合物オリゴマー(a)を得ることも好ましい。特に、反応を完結させるために、チタン化合物と水とを反応させ、チタン化合物オリゴマー(a)を合成する際の少なくとも最後に還流反応を行うことが好ましい。
【0047】
前記特定塩酸塩の存在下、チタン化合物と水との反応温度は、−30℃〜90℃が好ましく、−10℃〜80℃がより好ましく、0℃〜60℃が特に好ましい。
その反応時間は特に限定はないが、1分〜8時間が好ましく、5分〜6時間がより好ましく、10分〜4時間が特に好ましい。
【0048】
本発明は、上記の「高屈折率膜材料の製造方法」で製造されるものであることを特徴とする高屈折率膜材料でもある。
本発明の高屈折率膜材料は、前記した製造方法で製造されたものに限定されず、前記した製造方法で製造される化学構造と組成とを有する材料であれば、製造方法が異なっていても本発明の高屈折率膜材料に含まれる。
ただし、本発明のチタン化合物オリゴマーよりなる高屈折率膜材料は、上記した製造方法で製造されたものが好ましい。
【0049】
すなわち、前記特定塩酸塩の存在下において、アルコール溶液中でチタン化合物と水とを反応させることが、高屈折率膜材料の製造方法として好ましいが、それは、前記の特定塩酸塩を使用することで、水による部分加水分解によってチタン化合物がオリゴマー化される際に、低温での成膜によって高屈折率の膜を得ることができるような、チタン化合物オリゴマー(a)分子の「折り畳まれ構造」ができるためと考えられる。
【0050】
本発明の製造方法で得られる高屈折率膜材料は、ガラス、プラスチックフィルム等に塗布、乾燥することによって高屈折率膜が得られる。
塗布した後の乾燥は、基材へのダメージを減らすために、200℃以下であることが好ましく、50℃以上180℃以下であることがより好ましく、70℃以上160℃以下であることが特に好ましく、80℃以上150℃以下であることが更に好ましく、100℃以上150℃未満であることが最も好ましい。
上記の高屈折率膜材料の製造方法で製造された上記高屈折率膜材料は、100℃以上150℃未満で成膜可能なものにできて低温成膜性に優れるので、100℃以上150℃未満で成膜可能なものであることが好ましい。
【0051】
また、上記の高屈折率膜材料の製造方法で製造された上記高屈折率膜材料は、100℃以上150℃未満で成膜する工程に供するためのものであることが好ましい。
【0052】
塗布する基材は特に限定はないが、PET、OPP、PE等のプラスチックフィルム;ガラス;金属板等が挙げられる。塗布する基材は、200℃で軟化、劣化等するような基材であることが、本発明の高屈折率膜の低温成膜性という特長を生かすために好ましい。
【0053】
本発明は、前記高屈折率膜材料の製造方法で製造される高屈折率膜材料を成膜してなるものであることを特徴とする高屈折率膜でもある。
かかる高屈折率膜は、光学レンズ、光学フィルター、反射防止膜、光デバイス、LED、分光フィルター等に好適に適用できる。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
[合成例1]
ジエトキシジイソプロポキシチタン25.6g(0.1モル)を100gのエタノールに溶解した後、t−ブチルヒドラジン塩酸塩0.25g(0.002モル)、水2.7g(0.15モル)をエタノール50gに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、30分間還流反応を行い、チタン化合物オリゴマー溶液Lを得た。
【0056】
[合成例2]
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.1モル)、ベンゾフェノンヒドラゾン1.2g(0.006モル)を100gのイソプロパノールに溶解したのち、水1.62g(0.09モル)、塩酸0.22g(0.006モル)、エタノール50gの混合溶液を滴下した。滴下後、30分間還流反応を行い、チタン化合物オリゴマー溶液Mを得た。
【0057】
[合成例3]
テトラブトキシチタン34.4g(0.1モル)を100gの1−ブタノールに溶解した後、1,3−ジメチル−5−ピラゾロン塩酸塩0.59g(0.004モル)、水2.7g(0.15モル)を1−ブタノール50gに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、30分間還流反応を行い、チタン化合物オリゴマー溶液Nを得た。
【0058】
[合成例4]
モノメトキシトリイソプロポキシチタン25.6g(0.1モル)を100gのエタノールに溶解した後、フェニルヒドラジン塩酸塩0.3g(0.002モル)、水3.6g(0.20モル)をエタノール50gに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、30分間還流反応を行い、チタン化合物オリゴマー溶液Oを得た。
【0059】
[合成例5]
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.1モル)、1−フェニル−3−メチルピラゾロン1.0g(0.006モル)を100gのイソプロパノールに溶解したのち、水1.62g(0.09モル)、塩酸0.22g(0.006モル)、エタノール50gの混合溶液を滴下した。滴下後、30分間還流反応を行い、チタン化合物オリゴマー溶液Pを得た。
【0060】
[合成例6]
テトラブトキシチタン34.4g(0.1モル)を100gのエタノールに溶解した後、アセチルアセトン20.0g(0.2モル)を滴下し、混合した。
次に、t−ブチルヒドラジン塩酸塩0.25g(0.002モル)、水2.7g(0.15モル)をエタノール50gに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、30分間還流反応を行い、チタン化合物オリゴマー溶液Qを得た。
【0061】
[合成例7]
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.1モル)を100gのエタノールに溶解した後、アセト酢酸エチル26.0g(0.2モル)を滴下した。
次に、フェニルヒドラジン塩酸塩0.3g(0.002モル)、水2.7g(0.15モル)をエタノール50gに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、30分間還流反応を行い、チタン化合物オリゴマー溶液Rを得た。
【0062】
[合成例8]
テトラブトキシチタン34.4g(0.1モル)を100gの1−ブタノールに溶解した後、ヒドラジン塩酸塩0.14g(0.002モル)、水2.7g(0.15モル)を1−ブタノール50gに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、30分間還流反応を行い、チタン化合物オリゴマー溶液lを得た。
【0063】
[合成例9]
テトライソプロポキシチタン28.4g(0.1モル)を100gのエタノールに溶解した後、ヒドラジン塩酸塩0.14g(0.002モル)、水1.62g(0.09モル)をエタノール50gに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、30分間還流反応を行い、チタン化合物オリゴマー溶液mを得た。
【0064】
[合成例10]
テトラブトキシチタン34.4g(0.1モル)を100gの1−ブタノールに溶解した後、水2.7g(0.15モル)を1−ブタノール27.0gに溶解した溶液を滴下した。滴下終了後、30分間還流反応を行い、チタン化合物オリゴマー溶液nを得た。
【0065】
[合成例11]
合成例2のベンゾフェノンヒドラゾンの代わりに、ヒドラジンを使用して合成を試みたが、合成後の液が白濁し、均一な溶液を得ることができなかった。
【0066】
[合成例12]
モノメトキシトリエトキシチタン21.4g(0.1モル)を100gのエタノールに溶解したのち、水2.7g(0.15モル)、エタノール50gの混合溶液を滴下した。滴下後、30分間還流反応を行ったが、液が白濁し、均一な溶液を得ることができなかった。
【0067】
[評価方法]
<屈折率の測定方法>
上記合成例で合成したチタン化合物オリゴマー溶液を、エタノールを使用して10倍に希釈した後、スライドガラスにバーコーターを用いて塗布した後、熱風循環式乾燥機を使用して120℃にて1分間乾燥して膜を得た。また、400℃の温度にて1時間焼成して膜を得た。
【0068】
この膜の各波長における透過率を測定し、下式に従い、波長600nmでの屈折率を計算した。
R=(1−T
m)/(1+T
m)
n
f2=n
s(1+R)/(1−R)
4n
fd/λ=m
ここで、それぞれ以下を表す。
R:高屈折率膜での反射率
n
f:高屈折率膜の屈折率
m:干渉次数
T
m:高屈折率膜の透過率
n
s:基板の屈折率
d:高屈折率膜の膜厚
【0069】
<低温成膜性の評価方法>
上記合成例で合成したチタン化合物オリゴマー溶液を、エタノールを使用し、10倍に希釈した後、PETフィルムにバーコーターを用いて塗布した後、熱風循環式乾燥機を使用して120℃にて1分間乾燥して膜を得た。
PETフィルム上に形成した膜の低温成膜性の評価方法として、擦過性(表面の機械的強度)を測定した。すなわち、指で強く表面を10回擦過した後の表面状態を以下判定基準で評価した。
【0070】
○:表面の白化なし、膜の脱落なし
△:表面の若干の白化あり、膜の脱落なし
×:表面の白化あり、膜の脱落あり
【0071】
結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0072】
実施例1〜7のチタン化合物オリゴマー(a)よりなる高屈折率膜材料は、屈折率が大きく、かつ、120℃での乾燥、加熱によって、成膜可能であり、低温成膜性に優れていた。
一方、比較例1〜3のチタン化合物オリゴマーは、400℃の温度にて1時間焼成すれば、波長600nmにおける屈折率1.90以上が得られ、擦過性についても、膜の白化や脱落は認められなかったが、120℃の乾燥、加熱では、波長600nmにおける屈折率が小さく、また、低温成膜性にも劣っていた。