【実施例1】
【0035】
図1に、本発明の第1の実施形態になるクリンカ除去装置の側断面図を示し、
図2には、その要部を拡大した側断面図を示す。
図1及び
図2は、AAP(After Air Port)の空気流路中心軸に設けられるスリーブ状部材5の炉外側端部に形成された観察用覗き窓(挿入口)6からランスチューブ2を挿入し、高圧流体を噴射するノズル部1をクリンカ除去対象となる火炉のスロート部10まで延伸させた様子を表す。
【0036】
ここでは、図面の右側がボイラ設備の炉内側、左側が炉外側に相当し、二段燃焼用空気が図示しないウィンドボックスから供給されるAAP内の空気流路にランスチューブ2を挿入し、スロート部10を経て火炉開口部に達するランスチューブ2の先端のノズル部1から火炉内へと噴出空気流9となって噴出する。
【0037】
AAP内の空気流路の炉外には流体導入部7(この部分は断面図でなく側面図で示す)が固定されており、AAP内の空気流路の長手方向中心軸付近には円筒状のスリーブ状部材5が設置されている。このスリーブ状部材5は、炉内側に開口部5aを設けており、また、通常、炉外側の端部開口部は覗き窓6となっている。該覗き窓6は、炉外からAAP内の空気流路及び炉内の状態を観察するためのものである。この覗き窓6は、本発明のクリンカ除去装置を使用する際には、直管状ランスチューブ2の挿入口として開放される。
【0038】
本実施形態のクリンカ除去装置は、ランスチューブ2の内部に図示しない高圧流体供給装置から供給される高圧流体が流れる流路を形成している。即ち、スリーブ状部材5に挿入した短い第1のランスチューブ2−1と次に挿入する中間ランスチューブ2−2の端部など、チューブ端部同士の連結を繰り返すことで、覗き窓(チューブ2の挿入口)6からスロート部10のクリンカ付着箇所までの距離に見合った長さの1つの直管状のランスチューブ2を形成する。
【0039】
本実施の形態では、次の3種類のランスチューブ2−1、2−2、2−3を炉内側から順に連結する。
1)軸方向の先端部近傍の側面に高圧の噴射流体を噴射するノズル1と、その反対側の端部に隣接する中間ランスチューブ2−2との連結部4−1aを備えたノズル1付き第1のランスチューブ2−1
2)軸方向の両端部に隣接する第1、第2のランスチューブ2−1、2−3との連結部4−1b、4−2aをそれぞれ備えた中間ランスチューブ2−2
3)一方の端部に隣接する中間ランスチューブ2−2との連結部4−2bと、その反対側の端部に外部から高圧の噴射流体を導入する流体導入部7を設けた操作用の第2のランスチューブ2−3
第1のランスチューブ2−1に設置されるノズル1は、高圧流体を噴射可能な各種のノズルが適用できる。また、高圧流体としては、例えば、1〜2MPa程度の圧縮空気が適している。気体であれば、水などの液体に比べて、使用後の流体の後処理の必要がなく、また、噴流を受けたボイラ設備の材料に過剰な熱衝撃を与えることが少ない利点がある。但し、クリンカの除去能力は気体の場合、一般に液体(高圧水等)に比べ不利である。
【0040】
各ランスチューブ2−1、2−2、2−3の径は、スリーブ状部材5の内径に併せて上限があるので、十分な噴射圧力と流量が確保できるように、
図1に示す例では、ノズル1の数は1個としている。この場合、空気などの噴射流体の反力により、特に第1のランスチューブ2−1のノズル1に隣接する中間ランスチューブ2−2との連結部4−1aへ作用する力に対する配慮が重要となる。
【0041】
それぞれのノズル1からの噴出流体がクリンカの除去に十分な噴射圧力と流量が確保できる場合には、前記ノズル1に対向するランスチューブ2−1の位置にあるノズル(図示せず)から上述のノズル1の反力を互いに打ち消しあえるような位置に設けても良い。
【0042】
操作用の第2のランスチューブ2−3には、図示しない高圧流体供給装置から供給される高圧の噴射流体を導入する流体導入部7と、作業者が手動で第2のランスチューブ2−3を軸方向に前後移動させたり、周方向に回転させたりするためのハンドル11が設置されている。
【0043】
流体導入部7は、第2のランスチューブ2−3の固定された側の一方向から第2のランスチューブ2−3の内部に噴射流体を導入する基部7−1と、噴射流体をシールしつつ、この基部7−1に対してランスチューブが軸周りに回転自在となるように接続される接続機構7−2とを備えている。
【0044】
これらのランスチューブ2−1、2−2、2−3は、その軸方向長さを、それぞれL5(ノズル付きランスチューブ2−1)、L4(中間ランスチューブ2−2)及びL3(操作用ランスチューブ2−3)とし、炉外の流体導入部7とランスチューブ2−1、2−2、2−3を挿入するスリーブ部材5の挿入口(覗き窓)6までの距離をL1としたとき、それぞれの距離の間には次のような関係が成立するように設定されている。
【0045】
L1>L3、L1>L4、L1>L5
これにより、組み立ての概略の断面模式図を
図3に示すように、先ずノズル1付きランスチューブ2−1を挿入口6よりスリーブ状部材5内に挿し込み、その連結部4−1aに中間ランスチューブ2−2の連結部4−1bを連結することができる。
【0046】
次いで、この中間ランスチューブ2−2をスリーブ状部材5内に挿し込んでゆき、反対側の連結部4−2aに操作用の第2のランスチューブ2−3の連結部4−2bを連結し、1本の直管状ランスチューブ2として一体化させることができる。
【0047】
ここで、バーナのスロート部のみをクリンカ除去の対象とするのであれば、ランスチューブ2の全体を長さ方向に分割することなく、特許文献1記載の発明と同様に1本の長尺のランスチューブ2のみから構成されるようにしても良い。
【0048】
即ち、通常のバーナ使用状態において、図示しないバーナのノズル中心軸にスリーブ状部材5を通じて挿入されるオイルバーナガンは、燃料配管の曲がり部を貫通してバーナノズル内に挿入される部位からノズルの炉内開口部近傍まで到達する長大なものであり、その長さは、例えば5m程度に達する。
【0049】
このため、オイルバーナガンの後方、ボイラ炉外側には、これを抜き差しする際に、障害物が無いようにボイラの設計・配置上の考慮がなされているので、必ずしもクリンカ除去装置の直管状ランスチューブ2を短く「分割」する必要は無い。
【0050】
しかし、直管状ランスチューブ2は、強度や耐熱性とコストとの折り合いから、主に金属製の管材で構成される。外径は一例として50mm前後、肉厚は3〜7mm程度のもので、5mもの長尺物となると、かなりの重量物となる。従って、ボイラ設備の外部から現場への搬入や、据え付け等の作業を少人数の人手によって行うのが困難な場合も多く考えられる。直管状ランスチューブ2が分割されていれば、運搬・組み立て、スリ−ブ状部材5への挿入が人手によって容易に行える。
【0051】
一方、バーナ以外のポート類の場合、当該ポート類の後方であるボイラ炉外側には、長尺の直管状ランスチューブ2を細いスリーブ状部材5に挿入させるための十分な空間が確保されておらず、何らかの干渉物(例えば、
図1に示す流体導入部7)が存在する場合が多い。
【0052】
上述のように
図3は、そのような状態の箇所に本発明のランスチューブ2を挿入し連結していく様子を模式的に表したものである。仮にスリーブ状部材5の挿入口(覗き窓)6からクリンカ8が付着した箇所の距離に合わせて1つの長尺な管で直管状ランスチューブ2を構成すると、前記挿入口6からクリンカ付着箇所までの距離と比べ、短い間隔で覗き窓6の後部に流体導入部7がある場合、直管状ランスチューブ2などが干渉し挿入することが不可能である。
【0053】
このようなことからも、ランスチューブ2は複数個に分割されていることは重要である。
ここで、スリ−ブ状部材5の内径DS>ランスチューブ2の外径DLとなっていることは、いうまでもないが、スリーブ状部材5の内壁面及びランスチューブ2の外周面に曲がりやゆがみが生じていることがある。さらに、ボイラ設備の運転停止直後、スリ−ブ状部材5の炉内側は高温で熱膨張しているのに対し、ランスチューブ2は冷えた状態である。また、冷却が進行することでスリ−ブ状部材5側は収縮してくるので、ランスチューブ2とスリ−ブ状部材5の間には、ある程度の隙間を確保しておくことが必要となる。
【0054】
このとき、スリ−ブ状部材5の内壁面へ直接、ランスチューブ2の外周面が接触する構造であると、長尺物であるランスチューブ2が細長い溝に嵌ったようにスリ−ブ状部材5の内壁と軸方向に長い範囲で線接触する状態となる可能性がある。このため、軸方向前後への抜き差し・移動、除去作業時の回転操作を行う際に、引きずり・固着を生じる可能性、または動作の妨げとなる可能性がある。
【0055】
本実施形態は、ランスチューブ2の外周面に細いリング状の二つのガイド部材3(例えばガイド3−1及びガイド3−2)を設け、ランスチューブ2の外周面は直接スリ−ブ状部材5の内壁面とは接触せず、リング状の部材であるガイド3−1及びガイド3−2を介して接触するような構成を採る。
【0056】
なお、機能的に同様のものであれば、ガイド部材3は細いリング状の形態に限定されるものではない。
炉内側のガイド3−1と炉外側のガイド3−2は、クリンカ除去装置によるクリンカ除去操作時において、両者がともにスリ−ブ状部材5の範囲内に位置するように設けられる。
【0057】
即ち、クリンカ8の除去の対象となる火炉のスロート部10は前後方向(炉内外方向)にある程度の幅があるので、クリンカ8の除去作業を行う際に、ランスチューブ2の先端に設けるノズル1を最も炉内側に移動させたときと、最も炉外側に移動させたときにもガイド3−1及びガイド3−2が共にスリ−ブ状部材5の範囲内に位置することが望ましい。
【0058】
また、特に、炉内側のガイド3−1の配置は、ランスチューブ2−1とランスチューブ2−2の連結部4−1にノズル1から高圧流体を噴射したときの反力が大きく作用することから重要である。本実施形態においては、ノズル1付きのランスチューブ2−1上であって、最もランスチューブ2−1の先端側に近い連結部4−1よりもノズル1側に配置されている。
【0059】
これにより、ノズル1からの高圧流体噴射の反力により連結部4−1に作用するモーメントを低減できる。このモーメントを低減する観点からは、ガイド3−1の配置は、連結部4−1よりもノズル1側であって、なるべく連結部4−1に近いランスチューブ2−1上の位置とすることが望ましい。
【0060】
炉外側のガイド3−2は、除去作業を行う際に直管状ランスチューブ2を炉外側に移動させる操作上、移動を停止させる目印ともなる。
ランスチューブ2−1、2−2の連結部4−1とランスチューブ2−2、2−3の連結部4−2は、ノズル1から高圧流体を噴射したときの反力やランスチューブ軸周りの回転動作に伴う当該連結部のネジ部の変形(カシリ)もしくは折損や緩みに対する抵抗力の高い構造が適している。
【0061】
図4にネジ継ぎ手からなる連結部4−1の一例の概略図を示す。
図4(a)に示す断面図と
図4(b)に示す菊座金14の平面図は、2つのランスチューブ2−1、2−2の端部にそれぞれ雌ネジ、雄ネジを設けた連結部4−1の例であり、2つのランスチューブ2−1、2−2の当たり面に菊座金14を介装させている。なお、前記連結部の雌ネジ、雄ネジ両者の位置関係は左右逆でも良い。
【0062】
図5には他のネジ継ぎ手からなる実施例の連結部4−1の概略図を示し、
図5(a)に側面図、
図5(b)に菊座金14の平面図を示す。
図5(b)に示すように菊座金14の外周に均等に12個の歯15を形成している。そしてランスチューブ2−1、2−2の連結部4−1に用いるときには12個の歯15のうちで必要な歯15だけ残して、その他の歯15を切除する。
図5で示す例では4個の歯15を残しておく。また、ランスチューブ2−1、2−2のそれぞれの当たり面側の外周の一部を、例えば八角柱状とし、八角柱12の各平面に溝13を設け、該溝13に菊座金14の外周に残している4個の歯15を折り曲げてはめ込む。こうして、
図5に示す連結部は、ランスチューブ2−1、2−2の回転動作に伴う当該連結部の緩みを抑制することができる。前記ランスチューブ2−1、2−2の連結部4−1の図示しない雌ネジ、雄ネジの位置関係は左右逆でも良い。
【0063】
図4,
図5に示す連結部4−1、4−2の代わりに、
図6(a)の連結部断面図に示すように、一方のランスチューブ2−2の端部に凸状継ぎ手2−2−aを設け、該凸状継ぎ手2−2−aにばね18を内蔵した突起物16を設け、押し縮めた当該突起物16が他方のランスチューブ2の端部に設けた凹状継ぎ手2−1−aの孔17に嵌るようにして連結する構成としても良い。
【0064】
以上によりランスチューブ2上にネジを加工せずに済むほか、着脱が容易になるので、火炉が設置されている現場での作業者の労力を軽減することができる。
なお、
図6(a)の連結部4−1の断面図に示すように、ランスチューブ2−1−aの外周面には、孔17が貫通していることが望ましい。これによりランスチューブ2−1、2−2同士を脱着する時には外側から突起物16をバネ18の力に抗して押し下げ、ランスチューブ2−2を引き抜くことで容易に脱着できる。
【0065】
さらに
図6(b)の連結部4−1の断面図に示すように、ランスチューブ2−1の孔17には、ランスチューブ2−2の突起物16を収容する窪み部17aを有する形成とし、該窪み部17aの奥側では突起物16の先端部よりも小径の開口部がランスチューブ2−1の外周面に貫通するような構成としておけば、突起物16の先端部がランスチューブ2−1の外周面に飛び出すことなく、他の部材との干渉を避けることができる。
【0066】
このようにして複数のランスチューブ2−1、2−2を繋ぎ合わせ、作業者が軸周り(周方向)に回転させる動作と、前後方向(炉内外)に移動させる動作とを行い、ノズル1から高圧流体を火炉のスロート部10の全面に向けて満遍なく吹き付けることでクリンカを効率良く除去することができる。
【0067】
作業者は、操作用の第2のランスチューブ2−3上のハンドル11(
図1)を利用して一方向の往復動作と回転動作という単純な動作を適宜行うことでクリンカ除去作業を進めることができる。
【0068】
ハンドル操作は炉外からの操作であるので、ボイラ運転停止後、炉内が常温になる前の高温の状態でも着手可能である。特に、ボイラ内の除去作業対象部位が高温の状態であれば、高圧流体噴射に伴う急速な冷却効果により、付着・堆積したクリンカが剥離・脱落しやすくなり、除去作業を迅速・効率的に進めることができる。