特許第6175332号(P6175332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6175332
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】ワイヤ式ウインドウレギュレータ
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/48 20060101AFI20170724BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20170724BHJP
【FI】
   E05F11/48 D
   E05F11/48 B
   B60J1/17 A
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-198391(P2013-198391)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-63839(P2015-63839A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146434
【氏名又は名称】株式会社城南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕規
(72)【発明者】
【氏名】下村 学
(72)【発明者】
【氏名】西 宏幸
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−336439(JP,A)
【文献】 特開2012−158901(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01024242(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/48
B60J 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚板状で上面と下面、表側面と裏側面を備えたブロックであって、
窓ガラス固定用の固定孔を備えるとともに閉じ側ワイヤ配置部と開き側ワイヤ配置部を有し、
閉じ側ワイヤ配置部は、ブロックの表面の段差によって形成され、前記の上面から固定孔の中心に向かう第1ワイヤガイド壁と、第1ワイヤガイド壁の固定孔側から一側下方に前記段差の底面側とつながる第1傾斜ワイヤ溝と、第1傾斜ワイヤ溝の端部に設けた第1ワイヤ係止部及び前記第1ワイヤガイド壁の固定孔側端に設けた閉じ側ワイヤが接する第1ワイヤ規制部とからなり、
開き側ワイヤ配置部は、閉じ側ワイヤ配置部と前記の固定孔を中心とした点対の位置に配置されており、ブロックの表面の段差によって形成され、前記の下面から固定孔の中心に向かう第2ワイヤガイド壁と、第2ワイヤガイド壁の固定孔側から他側上方に前記段差の底面側とつながる第2傾斜ワイヤ溝と、第2傾斜ワイヤ溝の端部に設けた第2ワイヤ係止部及び前記第2ワイヤガイド壁の固定孔側端に設け開き側ワイヤが接する第2ワイヤ規制部とからなる
ことを特徴としたワイヤ式ウインドウレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ式ウインドウレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の窓ガラスを開閉するワイヤ式ウインドウレギュレータには、ドアパネルのパネル空間内において、ワイヤを上方のワイヤガイドと下方のドラム間に張設したものがある。この配索では、ワイヤガイドを巻回してきたワイヤの端部(閉じ側ワイヤ)、及び、ドラムから延びたワイヤの端部(開き側ワイヤ)をキャリアに取り付け、キャリアはガイドレールでガイドされることなく昇降されるレールレスタイプのウインドウレギュレータが知られている。キャリアはガラスの下端部を支持する部材である。
なお、閉じ側ワイヤとは、キャリアを中心に見た場合に、ドラムによって引かれることでキャリアを引き上げ、窓ガラスを閉じ方向へ移動させる側のワイヤ部分であり、開き側ワイヤはその逆に、ドラムによって引かれることによってキャリアを引き下げ、窓ガラスを開き方向へ移動させる側のワイヤ部分のことである。
【0003】
特許文献1のウインドウレギュレータはレールレスタイプであり、ガイドレールにガイドされていないキャリア(キャリアプレート)に、閉じ側ワイヤ(ケーブル)と開き側ワイヤが取付けられている。
このような、ウインドウレギュレータでは、キャリアに閉じ側ワイヤと開き側ワイヤの端部を上下方向で一直線上に配置しているので、キャリアの上下寸法が大きくなってガラスの昇降範囲に影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4365585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、窓ガラスを支持するキャリアの上下寸法を小さくして窓ガラスの昇降範囲を広くとれ、また、配索が容易であり、さらに、窓ガラスの開閉に際してキャリアの姿勢が安定していて窓ガラスをなめらかに開閉できるワイヤ式ウインドウレギュレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ウインドウレギュレータにおいて、ガイドレールにガイドされることなく移動されるキャリアに関し、次の構成を採用する。
キャリアは、厚板状で上面と下面、表側面と裏側面を備えたブロックとする。
ブロックは、窓ガラス固定用の固定孔を備えるとともに閉じ側ワイヤ配置部と開き側ワイヤ配置部を有する。
【0007】
閉じ側ワイヤ配置部は、第1ワイヤガイド壁と、第1傾斜ワイヤ溝と、第1ワイヤ係止部および第1のワイヤ規制部を備える。第1ワイヤガイド壁は、ブロックの表面の段差によって形成され、前記の上面から固定孔の中心に向かう壁である。第1傾斜ワイヤ溝は、前記第1ワイヤガイド壁の固定孔側から一側下方に延びて前記段差の底面側とつながる溝である。第1ワイヤ係止部は前記第1傾斜ワイヤ溝の端部に設ける。第1のワイヤ規制部は、前記第1ワイヤガイド壁の固定孔側端と第1傾斜ワイヤ溝とがつながる位置であって閉じ側ワイヤが接する部分である。
【0008】
開き側ワイヤ配置部は、閉じ側ワイヤ配置部と前記の固定孔を中心とした点対の位置
に配置されており、ブロックの表面の段差によって形成された前記の下面から固定孔の中
心に向かう第2ワイヤガイド壁と、第2ワイヤガイド壁の固定孔側から他側上方に前記段
差の底面側とつながる第2傾斜ワイヤ溝と、第2傾斜ワイヤ溝の端部に設けた第2ワイヤ
係止部及び前記第2ワイヤガイド壁の固定孔側端に設け開き側ワイヤが接する第2のワイ
ヤ規制部とからなる。
【0009】
配索後、ワイヤが緊張されると、閉じ側ワイヤ配置部と開き側ワイヤ配置部は、第1ワイヤガイド壁及び第2ワイヤガイド壁が壁の面としてワイヤに対向すると共に長さ方向では窓ガラスの開閉方向に沿い、前記第1傾斜ワイヤ溝と第2傾斜ワイヤ溝は前記固定孔の中心に対して点対称の位置となる。そして、閉じ側ワイヤは、第1ワイヤ規制部に接すると共に後方から第1ワイヤガイド壁に位置が規制され、開き側ワイヤは、第2ワイヤ規制部に接すると共に前方から第2ワイヤガイド壁に位置が規制される。
【発明の効果】
【0010】
閉じ側ワイヤの第1ワイヤ係止部と開き側ワイヤの第2ワイヤ係止部を固定孔の両側に配置するので、キャリアの上下方向寸法を小さくできる。
一方、ワイヤが緊張されると閉じ側ワイヤと開き側ワイヤとは固定孔の中心を通る一直線上となるので、キャリアの移動が安定しており窓ガラスをスムーズに開閉することが可能である。
【0011】
キャリアは第1、第2のワイヤガイド壁と第1、第2の傾斜ワイヤ溝を備えるので、ワイヤに向かってキャリアが回転し、第1または第2のワイヤガイド壁が緊張状態のワイヤに衝突するような場合、ワイヤの張力でその回転が抑制される。また、ワイヤから離れる方向にキャリアが回転するような場合は、第1、第2のワイヤ規制部間のワイヤ張力によるモーメントによって、キャリアの回転が戻される。このため、窓ガラスの安定した移動を維持できる。
【0012】
ワイヤを緩めた状態でワイヤ端部をキャリアに係合した後、ワイヤを緊張させることによりワイヤ端部がキャリアに強固に係止される。このため、キャリアにワイヤを簡単に、且つ確実に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例に係る自動車用ドアを外側から透視的に示した正面図である。
図2】本発明の実施例を示すウインドウレギュレータの正面図である。
図3】本発明の実施例に係る前フレームの斜視図である。
図4】本発明の実施例に係る前キャリアのワイヤ緊張前における室内側から見た図である。
図5】本発明の実施例に係る前キャリアのワイヤ緊張後における室内側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明に係る自動車用ドア1は、図1に示すように、窓ガラス2とドアフレーム3とドアパネル4及びウインドウレギュレータ5を備える。
ドアフレーム3は前フレーム6と後フレーム7及びこれらの上端部を連結した上フレーム8とからなる。
ドアパネル4は、パネル空間Sを形成する外パネル9と内パネル10から成り、外パネル9と内パネル10の間に前フレーム6と前フレーム7の下部が固定されている。また、パネル空間Sの上方において、前フレーム6と前フレーム7と上フレーム8で囲まれた部分が窓Wになっている。
【0015】
窓ガラス2は、前縁を前フレーム6で案内させるとともに、後縁を後フレーム7で案内させて、上下方向に移動可能に装着してある。また、窓ガラス2の下端前部は前キャリア25で支持され、窓ガラス2の下端後部は後キャリアスライダー26で支持されている。
窓ガラス2を昇降させるウインドウレギュレータ5は、図2に示すように、ワイヤ11(11a,11b,11c)と、ドラム駆動装置12と、ワイヤ11を係合してその方向を転向させるワイヤガイドa〜eと、前フレーム6及びガイドレール13で構成されている。
ドラム駆動装置12は、ワイヤ11を巻回したドラム14とモータ15を有し、モータ15でドラム14を駆動することにより、ワイヤ11を一端側で巻き取るとともに他端側で巻き戻すものである。
【0016】
前フレーム6は、後方が開口したコ字状の断面を有し、窓ガラス2の前縁が上下動可能に挿入される。
パネル空間Sの前下部に位置する前フレーム6の下端部にはワイヤガイドブラケット16が装着され、ワイヤガイドブラケット16の室外側の面の後部及び前部にワイヤガイドaとワイヤガイドbが装着される。ワイヤガイドaとワイヤガイドbは、この実施例において、プーリーによるワイヤガイドであり、それぞれに係合するワイヤ11の経路がぶつからないよう、内外方向へ僅かにずらして取り付けられている。
【0017】
パネル空間Sの前上部に位置する前フレーム6の中間部にはワイヤガイドcが固定される。ワイヤガイドcの上面は湾曲しており、ワイヤ11を係合するガイド溝17が形成されている(図3)。
また、前フレーム6の下端部は、ワイヤガイドブラケット16を介してドアパネル4の内パネル10に固定される。
【0018】
ガイドレール13は、前フレーム6と対をなし、パネル空間Sの後部に立設される。
ガイドレール13の上端部にはワイヤガイドブラケット18が固定され、ワイヤガイドブラケット18の室外側の面には、この実施例において、プーリーであるワイヤガイドdが取り付けられる。
ガイドレール13の下端部にはワイヤガイドブラケット19が固定され、ワイヤガイドブラケット19の室外側の面の後部には、この実施例において、プーリーであるワイヤガイドeが取り付けられる。また、ワイヤガイドブラケット19の室外側の面の前上部にドラム14及びモータ15が取り付けられる。
【0019】
さらに、ガイドレール13に後キャリアスライダー26が摺動自在に嵌合される。
そして、ワイヤガイドブラケット18,19をドアパネル4の内パネル10に固定することにより、ガイドレール13がパネル空間S内に取り付けられる。
【0020】
ワイヤ11は、前キャリア25から下方に延び、ワイヤガイドaの下面に係合してからドラム14に至り(11a)、ドラム14から延びて後上部のワイヤガイドdと係合し、ガイドレール13の内側を通って後キャリアスライダー26に至る(11b)。ついで、後キャリアスライダー26から下方へ延びたワイヤ11(11c)は、ガイドレール13の内側を通って下部のワイヤガイドeに至り、ワイヤガイドeから前下部のワイヤガイドbに至り、さらに、ワイヤガイドbに係合してから上方へ転向し、前フレーム6の内側を通ってワイヤガイドcに至り、そして、ワイヤガイドcのガイド溝17に係合し、前フレーム6の外側を通って前キャリア25に戻る。
前キャリア25は前フレーム6の外側に配置され、ワイヤ11の両端部すなわち、この部分における閉じ側ワイヤ11cと開き側ワイヤ11aは前キャリア25を介して接続される。
【0021】
前キャリア25(図4,5)は、厚板状で上面と下面、表側面と裏側面を備えたブロックである。この実施例では、プラスチックを素材とし、四角形の前側上部の角部と後側下部の角部を除去した形状とされている。なお、この形状に限定する必要はない。
前キャリア25の中央部には窓ガラス固定用の固定孔28が穿設され、前キャリア25の室内側の面(裏側面)において、固定孔28の中心より後側が閉じ側ワイヤ装着部29、前側が開き側ワイヤ装着部30となっている。
【0022】
閉じ側ワイヤ装着部29には、前キャリア25の上面から固定孔28の中心に向かう第1ワイヤガイド壁31と、第1ワイヤガイド壁31の下端から一側(後側下方)に延びる第1傾斜ワイヤ溝32及び第1傾斜ワイヤ溝32の下端に設けた第1ワイヤ係止部33が連続して形成されている。
第1ワイヤガイド壁31は、閉じ側ワイヤ装着部29の表面に形成した段差によるものであり、閉じ側ワイヤ装着部29の前部に窓ガラス2の開閉方向に沿って形成される。
【0023】
第1傾斜ワイヤ溝32は固定孔28の周囲に沿う格好で前キャリア25の後側上部の角部方向へ凸に湾曲している。第1傾斜ワイヤ溝32の幅はワイヤ11の外径よりやや広く、第1傾斜ワイヤ溝32の上端は、閉じ側ワイヤ装着部29の前端側で第1ワイヤガイド壁31を形成している段差の低い側に開口している。また、第1ワイヤガイド壁31の下端と第1傾斜ワイヤ溝32の後側面上端の連結部分は、常時、ワイヤ11が接している第1ワイヤ規制部34となっている。
第1ワイヤ係止部33は、第1傾斜ワイヤ溝32より幅広く、閉じ側ワイヤ装着部29の下端面後部に開口している。
【0024】
開き側ワイヤ装着部30には、前記の閉じ側ワイヤ装着部29と同様に、前キャリア25の下面から固定孔28の中心に向かう第2ワイヤガイド壁35と、第2ワイヤガイド壁35の上端から前側上方に延びる第2傾斜ワイヤ溝36及び第2傾斜ワイヤ溝36の上端に設けた第2ワイヤ係止部37が連続して形成されている。
第2ワイヤガイド壁35は開き側ワイヤ装着部30の後部に窓ガラス2の開閉方向に沿って形成される。
【0025】
第2傾斜ワイヤ溝36は、前キャリア25の、固定孔28の周囲に沿う格好で、前側下部の角部方向に凸に湾曲し、固定孔28の中心に対して第1傾斜ワイヤ溝32と点対称となるよう形成される。第2傾斜ワイヤ溝36の幅はワイヤ11の外径よりやや広く、第2傾斜ワイヤ溝36の下端は開き側ワイヤ装着部30の後端側で第2ワイヤガイド壁35を形成している段差の低い側に開口している。また、第2ワイヤガイド壁35の上端と第2傾斜ワイヤ溝36の前側面下端の連結部分は、常時ワイヤ11と接触した第2ワイヤ規制部38となっている。
第2ワイヤ係止部37は、第2傾斜ワイヤ溝36より幅広く、開き側ワイヤ装着部30の上端面前部に開口している。
【0026】
前フレーム6の外側を通って下方に延びる閉じ側ワイヤ11cの端部は、前キャリア25に対して後側面が第1ワイヤガイド壁31に当接してから第1傾斜ワイヤ溝32に係合し、その先端に設けられた抜け止め用の径大部39が第1ワイヤ係止部33に係止される。
また、開き側ワイヤ11aの端部は、前側面が第2ワイヤガイド壁35に当接してから第2傾斜ワイヤ溝36に係合し、その先端に設けられた径大部39が第2ワイヤ係止部37に係止される。
【0027】
前キャリア25に対し、ワイヤ11は次のようにして取り付けられる。
図4に示すように、ワイヤ11が緩んでいる状態で、前キャリア25を、第1傾斜ワイヤ溝32の上端及び第2傾斜ワイヤ溝36の下端が窓ガラス2の開閉方向に向いて開口し、前キャリア25の固定孔28を中心とした回転方向で第1ワイヤガイド壁31が直線Lより後方へ退避し、第2ワイヤガイド壁35が直線Lより前方へ退避した配置とする。
ワイヤガイドcから下方に延びる閉じ側ワイヤ11cの端部を第1傾斜ワイヤ溝32に係合し、その先端の径大部39を第1ワイヤ係止部33から突出させておく。同様に、ワイヤガイドaから上方に延びる開き側ワイヤ11cの端部を第2傾斜ワイヤ溝36に係合し、その先端の径大部39を第2ワイヤ係止部37から突出させておく。
【0028】
次いで、ワイヤ11を緊張させる。
すると、閉じ側ワイヤ11aの端部に設けた径大部39が第1ワイヤ係止部33に係止され、開き側ワイヤ11cの端部に設けた径大部39が第2ワイヤ係止部37に係止され、第1ワイヤ係止部33と第2ワイヤ係止部37との間に固定孔37を挟んだ間隔(距離)があることから前キャリア25に回転モーメントが作用して閉じ側ワイヤ11cと開き側ワイヤ11aが一直線上に沿う方向に前キャリア25が回転し、閉じ側ワイヤ11cと開き側ワイヤ11aが一直線L上に整列する。
この結果、図5に示すように、閉じ側ワイヤ11cに第1ワイヤガイド壁31が当接し開き側ワイヤ11aに第2ワイヤガイド壁35が当接し、閉じ側ワイヤ11cと開き側ワイヤ11aがワイヤ緊張時の正規位置とされる。
【0029】
モータ15を駆動してドラム14を回転させると、ワイヤガイドcとワイヤガイドb間のワイヤ11とワイヤガイドdとワイヤガイドe間のワイヤ11は同じ方向に移動するので、前キャリア25と後キャリアスライダー26は同時に同じ方向へ昇降し、窓ガラス2が開閉する。この時、後キャリアスライダー26はガイドレール13でガイドされるが、前キャリア25は前フレーム6等のレールでガイドされることなく昇降する。
窓ガラス2を上昇させる際には、閉じ側ワイヤ11cを上方へ引っ張る力によって前キャリア25が図5の反時計回りに回転され、窓ガラス2を下降させる際には、開き側ワイヤ11aを下方へ引っ張る力によって、同じく前キャリア25が図5の反時計回りに回転される。この結果、第1ワイヤガイド壁31あるいは第2ワイヤガイド壁35のいずれかが開き側ワイヤ11aあるいは閉じ側ワイヤ11cと当接し、前キャリア25は前後方向へ振れることなく安定した姿勢を保って昇降し、固定孔28の中心が正確なワイヤ経路上を移動するので、窓ガラス2はスムーズに開閉する。
【0030】
なお、本発明に係るワイヤ式ウインドウレギュレータ5の構造は上記実施例に限定されない。
この発明のウインドウレギュレータ5は、後キャリアスライダー(実施例ではキャリア兼用スライダー26)をガイドするガイドレール13を備えていないレールレスタイプのウインドウレギュレータとしても応用できる。
前キャリア25における第1、第2のワイヤガイド壁31,35は、前キャリア25に取付ける別部材によって形成しても良い。
実施例では、この発明のキャリアを前キャリアとしたが、後キャリアでもよく、ウインドウレギュレータのタイプやキャリアの位置に制限されない。
また、前キャリアの形態に関して、上面、下面、表面側、裏面側などの用語を用いたが、各部材の位置や方向を説明しやすくするためであって、キャリアの姿勢によって変わる相対的なものである。
【符号の説明】
【0031】
1 自動車用ドア
2 窓ガラス
3 ドアフレーム
4 ドアパネル
5 ウインドウレギュレータ
6 前フレーム
7 後フレーム
8 上フレーム
9 外パネル
10 内パネル
11 ワイヤ
12 ドラム駆動装置
13 ガイドレール
14 ドラム
15 モータ
16 ワイヤガイドブラケット
17 ガイド溝
18 ワイヤガイドブラケット
19 ワイヤガイドブラケット
25 前キャリア
26 後キャリアスライダー
28 固定孔
29 閉じ側ワイヤ装着部
30 開き側ワイヤ装着部
31 第1ワイヤガイド壁
32 第1傾斜ワイヤ溝
33 第1ワイヤ係止部
34 第1ワイヤ規制部
35 第2ワイヤガイド壁
36 第2傾斜ワイヤ溝
37 第2ワイヤ係止部
38 第2ワイヤ規制部
39 径大部
a〜e ワイヤガイド
S パネル空間
W 窓
図1
図2
図3
図4
図5