特許第6175369号(P6175369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6175369
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】ロープ
(51)【国際特許分類】
   D07B 5/00 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
   D07B5/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-269441(P2013-269441)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-124451(P2015-124451A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】500041662
【氏名又は名称】株式会社魚津製綱所
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(72)【発明者】
【氏名】追分 輝郎
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 彦三
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏治
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−254699(JP,A)
【文献】 特開平10−212631(JP,A)
【文献】 特開平06−184967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D07B 1/00−9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のストランドで構成されるロープであって、該ロープの側周面を形成する前記ストランドのうち少なくとも一本は、他のストランドに比べて断面径の大きい大径ストランドとしてあり、
該大径ストランドにより、前記他のストランドと比較して半径方向に突き出た凸部が形成されており、
且つ該大径ストランドの側周面には、その長手方向に沿うように反射材が露出していることを特徴とするロープ。
【請求項2】
前記反射材は線状であり、且つ該反射材は前記大径ストランドの側周面に巻き付けてあることを特徴とする請求項1記載のロープ。
【請求項3】
前記大径ストランドは、複数の糸材と、線状の前記反射材と、を撚り合わせた構造であることを特徴とする請求項1記載のロープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のストランドを撚り合わせることによって製作されたロープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロープの外面には凹凸が存在し、その凹凸はロープの撚り方や使用状況によって多少の増減があることが知られている。また、例えば下記特許文献1では、チューブ等を被着した心綱の外周沿いに側ストランドを撚合して膨大部を形成する構成のロープが提案されている。このようなロープの外面の凹凸を増すような構成は、ロープの凹凸をひっかかりとして利用する、所謂滑り止めとして有用だが、凸部自体は、反射、色彩土台としても有効活用できるものである。
【0003】
例えば、下記特許文献2では、再帰性反射機能を有する反射材からなる糸材を単純に撚り合わせたロープが提案されているが、夜間などの暗闇において、斜度を付けてロープを見た場合には反射材の再帰性反射機能が有効に働かず、ロープに対する視認性が低いという問題を抱えている。しかしながら、ロープの凹凸を増し、その凸部に反射材を設けることができれば、反射材に従来以上の有効入射角、反射角を付与することが可能となるため、斜度を付けて見た場合でもロープに対する視認性が従来のものに比べて高くなることは自明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭54−150545号公報
【特許文献2】特開2008−202151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、ロープの特殊な撚り方や、チューブ等、本来のロープではあまり使用されない部材を用いて凹凸を増す構成は、手間がかかると共に、用途・使用状況が限られてくるために汎用性に欠け、また使用状況に伴う凹凸の増減は経時変化しやすいものであって、不安定であるという問題点がある。
【0006】
本発明は上記実情を基に開発されたもので、汎用性があり、且つ、手間のかからない従来のロープの製造工程をそのまま踏襲した方法を用い、反射材を備えた視認性の高いロープの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するための本発明は、複数のストランドで構成されるロープであって、該ロープの側周面を形成する前記ストランドのうち少なくとも一本は、他のストランドに比べて断面径の大きい大径ストランドとしてあり、該大径ストランドにより、前記他のストランドと比較して半径方向に突き出た凸部が形成されており、且つ該大径ストランドの側周面には、その長手方向に沿うように反射材が露出していることを特徴とする。なお、ここでいうロープとは、複数の糸材を単純に撚り合わせたロープだけではなく、芯材となる糸材を有し、その糸材の周囲に更に複数の糸材を撚り合わせたもの等も含むものである。そして、ここでいうストランドとは、複数の原糸から製作されたヤーン同士を撚り合わせて製作された糸材、もしくは、その糸材同士を更に撚り合わせて製作された糸材のことである。
【0008】
また、上記大径ストランドは、複数のヤーン等の糸材を撚り合わせることで製作されると共に、大径ストランドの側周面には、反射材を備えている。なお、ここでいう反射材とは、再帰反射性を有する平糸等のことである。
【0009】
そして、反射材を備える方法としては、大径ストランドの外面を含む、ロープの外面全体に塗装やフィルム被膜、繊維等により、反射材を上被せする方法等も考えられるが、大径ストランドの側周面に露出する反射材の相対量を多くするためには、請求項2記載の発明のように、反射材は線状であり、且つ該反射材は大径ストランドの側周面に巻き付けることが好ましい。
【0010】
更に、ロープの凹凸を減少させる心配がなく、且つ、摩擦や衝撃等の悪条件下でも反射材がロープから剥離しづらくするためには、請求項3記載の発明のように、大径ストランドは、複数の糸材と、線状の反射材と、を撚り合わせた構造にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
ロープの側周面に凹凸を形成する複数のストランドのうち、少なくとも一本は他のストランドに比べて径の大きい、大径ストランドにする構成は、従来のロープの製造工程をそのまま踏襲した方法であり、簡単に反射・色彩土台として有用な凸部を得ることができる。またこの凸部は、すべり止めとしても有用である。そして、本発明の構成は、ロープの特殊な撚り方や、チューブ等、本来のロープではあまり使用されない部材を用いて凹凸を増す等の構成とも併用が容易であり、汎用性が高い。
【0012】
また、凸部を形成する大径ストランドの側周面に反射材を露出させることで、その有効入射角、反射角は従来のものに比べて格段に広く、斜度を付けた状態で見ても視認性が高いロープとなる。
【0013】
そして、請求項2記載の発明のように、線状の反射材を大径ストランドの側周面に巻き付けることで、摩擦や衝撃等の悪条件下でも反射材がロープから剥離しづらいと共に、大径ストランドの側周面に反射材が露出する割合が大きくなるため、より視認性が高く、且つ、長期に渡って使用可能なものとなる。
【0014】
更に、請求項3記載の発明のように、大径ストランドは、複数の糸材と、線状の反射材と、を撚り合わせた構造にすることで、ロープの凹凸を減少させる心配がなく、且つ、摩擦や衝撃等の悪条件下でも反射材がロープから剥離しづらいため、視認性の高さを低下させることなく、使用用途にも縛られないものとなる。
【0015】
そのため、本発明のロープは、道路案内用ロープや、境界周知用ロープとしての使用はもちろんのこと、山岳ロープや山岳ガイドロープ等にも使用することができる、極めて汎用性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)、(b)図は、本発明によるロープの第一実施形態を示す正面図と、横断面図である。
図2】本発明によるロープの第二実施形態を示す正面図である。
図3】本発明によるロープの第三実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図1から図3を参照して詳細に説明する。本発明におけるロープ10の第一実施形態は、図1に示すように、複数のストランド20、30を撚り合わせることによって製作された三つ撚りの甘打のロープ10である。そして、ロープ10の側周面の凹凸は、通常ストランド20、20と、通常ストランド20に比べて径の大きい、大径ストランド30とから形成されており、大径ストランド30がロープ10の凸部(ロープの半径方向に突出している箇所)を形成している。
【0018】
本発明のロープ10は、大別して、リングと呼ばれる機械を使用して、原糸50からヤーン40を製作する工程、ストランダーという機械を使用して、ヤーン40からストランド20、30を製作する工程、クロッサーという機械を使用して、ストランド20、30から、ロープ10を製作する工程、の三つの工程から製作されている。
【0019】
原糸50からヤーン40を製作する工程は、素撚りや単合と呼ばれる、原糸50をそのまま撚ってヤーン40を製作する工程、もしくは、複合と呼ばれる、原糸50から下撚を製作し、その後、下撚からヤーン40を製作する工程である。なお、主に太いロープや擦れに強い設計のロープは複合で、細いロープは単合で製作される傾向があるが、本発明のロープ10に関しては、どちらの工程でヤーン40を製作しても問題ない。
【0020】
ヤーン40からストランド20、30を製作する工程は、複数のヤーン40をストランダーに設置されているボイスに通して撚り合わせ、ストランド20、30を製作する工程、もしくは、複数のヤーン40から糸材を製作し、その後、さらに前記糸材を撚り合わせることでストランド20、30を製作する工程である。なお、本発明のロープ10に関しては、どちらの工程でストランド20、30を製作しても問題ない。そして、本実施形態のストランド20、30は、複数のヤーン40が複層に撚り合わされてなる。そのため、ボイスは複数設置されており、それぞれのボイスを通すことで、ストランド20、30の一層目から三層目までをそれぞれ製作する。なお、ここで言う一層目から三層目とは、ストランド20、30の表面から数えた層準である。つまり、ストランド20、30の最表層(側周面)が一層であり、最内層が三層である。そして、通常ストランド20と、大径ストランド30では、撚り合わせるヤーン40の数が異なり、通常ストランド20を製作するための総糸量に比べ、大径ストランド30を製作するための総糸量が多い。また、通常ストランド20の一層目を製作するためのボイスに比べ、大径ストランド30の一層目を製作するためのボイスの孔の径が大きい。なお、本実施形態では、ストランド20、30は、三層構造だが、本発明のロープ10は、これに限定されるものではない。また、ストランド20、30の撚り方に関しても、従来からある様々な撚り方(交差撚りや平行撚り等)の、どの撚り方で製作しても問題ない。
【0021】
ストランド20、30からロープ10を製作する工程は、クロッサーに設置されているボイスに、ストランド20、30を通してロープ10を製作する工程である。そして、この際の撚る密度を加減することで、ロープ10の硬度を変化させること等が可能であるが、本発明のロープ10は、撚り密度が緩いもの、言い換えるならば、柔らかく仕上げてある甘打であることが望ましい。なお、撚り合わせるストランド20、30の数や撚り方によって、様々な種類(一般的に、三打、八打、十二打、十六打等と呼ばれるもの)があるが、本発明のロープ10は、本実施形態に限定されず、どのような撚り方のものでも問題ない。
【0022】
また、本発明におけるロープ10の原糸50、ヤーン40、ストランド20、30の素材は、ポリエチレンやポリエステル、場合によっては、ステンレスやタングステン等、金属製のものであることが望ましいが、本発明の構成を限定するものではない。
【0023】
なお、例えば、上記工程で12mm径のロープ10を製作する場合、通常ストランド20の糸量は440dtex×330本の145,200dtex、大径ストランド30の糸量は、440dtex×480本の211,200dtexで製作できる。そして、ストランド20、30を製作する際のボイスの孔の径(一層を成形するボイスの径)は、通常ストランド20で5.5mm、大径ストランド30で6.5mmであることが望ましい。そして、ロープ10をストランド20、30から製作する際には、ボイスの孔の径は、15mmであることが望ましい。このような条件下で製作されたロープ10の大径ストランド30の側周面は、通常ストランド20の側周面に比べて、ロープ10の半径方向に0.5mmから2.0mm突き出た構成になる。
【0024】
本発明におけるロープ10の第二実施形態は、図2に示すように、複数のストランド20、30を撚り合わせることによって製作された、三つ撚りの甘打のロープ10であって、ロープ10の側周面の凹凸は、通常ストランド20、20と、通常ストランド20に比べて径の大きい、大径ストランド30とから形成されると共に、大径ストランド30の側周面(大径ストランド30の一層目上)に、反射材60(図では点のハッチが付されたもの)を巻き付けてある。なお、反射材60の巻き付け方としては、本実施形態では、図2に示すように、大径ストランド30の長手方向に向かって、螺旋状に巻き付けてある。
【0025】
反射材60は、例えば、表面に微細なガラスビーズを配列し、表面に加圧型熱着色剤を有したオープンタイプの再帰性反射フィルムを糸状に加工した、片面反射平糸等が望ましい。また、反射材60の色は、反射率を考えると、銀色のものが望ましいが、特に本発明を限定する構成ではない。
【0026】
本発明におけるロープ10の第二実施形態を製作する際には、ヤーン40等の糸材からストランド20、30を製作した後に、大径ストランド30の側周面(大径ストランド30の一層目上)に反射材60を巻き付け、その後、ストランド20、30を撚り合わせることでロープ10を製作している。なお、ストランド20、30からロープ10を製作する際には、ロープの凹凸をなくさないように、また側周面の反射材60を傷めないように、ロープ10の径より、やや大きめの径を有する孔を備えたボイスに通すことが望ましい。また、当然のことであるが、反射材60が、片面反射平糸の場合、ロープ10の側周面に反射材60の反射面が露出するよう巻き付ける。
【0027】
本発明におけるロープ10の第三実施形態は、図3に示すように、複数のストランド20、30を撚り合わせることによって製作された、八打のロープ10であって、ロープ10の側周面の凹凸は、通常ストランド20と、通常ストランド20に比べて径の大きい、大径ストランド30とから形成されている。そして、大径ストランド30は、複数のヤーン40等の糸材のほか、反射材60(図では点のハッチが付されたもの)を併せて撚り合わせたものである。なお反射材60は図3に示すように、大径ストランド30を形成するヤーン40、40等の糸材の網目からはみ出るような形で露出しているため、第二実施形態のロープ10に比べて、摩擦や衝撃等の悪条件下でも反射材60がロープ10から剥離しづらいが、相対的に反射材60がロープ10の側周面に露出する面積は小さいものとなりやすい。
【0028】
なお、上記開示された本発明の実施形態の構造は、あくまで例示である。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示されると共に、当該記載と均等と評価される技術的構成まで含むものである。例えば、本発明の実施形態では、大径ストランド30の側周面に反射材60を備えるものとして、大径ストランド30の側周面に反射材60を巻き付けた上で、その他のストランド20と撚り合わせたもの(図2)や、糸材と反射材60を撚り合わせた大径ストランド30を用いたもの(図3が記載されているが、これに限定されるものではなく、ロープ10として製作した後に、大径ストランド30の側周面に塗装やフィルム被膜、繊維等により、反射材60を上被せしたものや、大径ストランド30を構成するヤーン40等の糸材の素材自体が反射材60であるものでも問題ない。また、通常ストランド20、大径ストランド30共に、1本以上であれば本数は問わない。
【符号の説明】
【0029】
10 ロープ
20 ストランド(通常ストランド)
30 ストランド(大径ストランド)
40 ヤーン
50 原糸
60 反射材
図1
図2
図3