(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(各実施例を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0014】
(定義)
本明細書で使用する主たる用語を以下のとおりに定義する。
「蒸気」:各実施形態では、水蒸気のことを意味するが、気相部分と液相部分との二相状態となる物質の蒸気であればよく、水蒸気に限定されない。
「乾き度」:蒸気中の気相部分の重量割合のことをいう。乾き度[%]=100[%]−湿り度[%]の関係がある。
「湿り蒸気」:乾き度χが0−100[%]の蒸気をいう。
「飽和蒸気」:湿り蒸気の気相部分をいう。乾き飽和蒸気(飽和乾き蒸気)ともいう。
「飽和水」:湿り蒸気の液相部分をいう。
「光の強度」(光強度):光(電磁波)の強さを表す物理量をいい、その称呼や単位に限定はない。例えば、放射強度、光度、光量子束密度など、それぞれ単位が異なるが相互に換算可能な物理量である。
「吸光度」:光が湿り蒸気中を通過した際に光の強度がどの程度弱まるかを示す無次元量であり、光学密度ともいう。吸光度といっても光の吸収のみならず、散乱や反射により光の強度が弱まる場合も含む。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態は、湿り蒸気の流速や流量の影響を考慮した光の強度または吸光度に基づく乾き度を測定する乾き度測定装置に関する。
【0016】
(構成)
図1に、第1本実施形態における乾き度測定装置1aの構成を示す。
図1に示すように、第1実施形態に係る乾き度測定装置1aは、例示的に、光入射部11、受光部12、流速センサ30(第1センサ)、及びコンピュータ装置100を備えて構成される。また、コンピュータ装置100は、機能ブロックとして、計測値補正部101a、及び乾き度測定部102aを備えて構成される。
【0017】
光入射部11は、所定の波長の光を射出する発光手段である。例えば、光入射部11としては、発光ダイオード、スーパールミネッセントダイオード、半導体レーザ、レーザ発振器、蛍光放電管、低圧水銀灯、キセノンランプ、及び電球等が使用可能である。
【0018】
光入射部11には、入射側筒21を接続してもよい。入射側筒21は、配管20の側壁を貫通して設けられ、配管20の側壁に設けられた光透過性のガラス窓(不図示)に接続される。例えば、入射側筒21により伝搬された光は、入射側筒21の端部から入射開口A1を介して光経路Lに沿って配管20の内部に進入する。入射側筒21には、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA:Poly(methyl methacrylate))からなるプラスチック光ファイバ、及び石英ガラスからなるガラス光ファイバ等が使用可能であるが、光入射部11が発した光を伝搬可能であれば、これに限定されない。
【0019】
配管20は、測定対象となる湿り蒸気が流通する配管である。配管20には、入射側筒21から照射され、配管20の内部の湿り蒸気を透過又は反射した光が射出開口A2を介して進入する射出側筒22を接続してもよい。射出側筒22は、配管20の側壁を貫通して設けられ、配管20の側壁に設けられた光透過性のガラス窓(不図示)に接続される。射出側筒22の端部は、配管20の径方向での入射側筒21の端部と対向している。射出側筒22は、配管20のガラス窓を介して光経路Lに沿って配管20内部の湿り蒸気を透過又は反射した光を受光部12に導くことが可能に構成されている。
【0020】
なお、配管20の側壁に入射側筒21を設けずに光入射部11を接近させて設けてもよく、配管20の側壁に射出側筒22を設けずに受光部12を接近させて設けてもよい。
【0021】
受光部12は、配管20内の湿り蒸気を透過又は反射した光を受けて、光の強度及び/又は吸光度を計測する計測手段である。例えば、受光部12としては、フォトダイオード、フォトトランジスタ等の光電変換素子を使用可能である。受光部12は、湿り蒸気を透過又は反射した光の強度に応じた光強度信号Sdをコンピュータ装置100に出力する。
【0022】
また、受光部12として、分光光度計など、光の強度及び/又は吸光度に対応する出力が得られる光学的計測機器を適用することも可能である。この場合、分光光度計は湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度に応じた吸光度信号Saをコンピュータ装置100に出力する。
【0023】
受光部12として分光光度計を用いる場合、具体的に、分光光度計は、湿り蒸気を透過又は反射する光の強度に基づいて、吸光度を演算し、吸光度信号Saとして出力する。ここで、吸光度Aは、入射光強度をI
0、受光した光の強度をIとすると、式(1)のように定義される。
吸光度A=−log
10(I/I
0) …(1)
以上より、湿り蒸気を透過する光の強度を計測できれば、一義的に吸光度Aが特定される。
【0024】
なお、受光部12に吸光度Aを出力させる代わりに、コンピュータ装置100が光の強度を含む光強度信号Sdを入力し、式(1)に基づいて吸光度Aを計算するように構成してもよい。
【0025】
また、本実施形態においては、受光部12は一つのみ設けられているが、受光部12は二つ以上あってもよく、受光部12の数に特に制限はない。さらに、受光部12については、湿り蒸気を透過又は反射する光の強度に対応する物理量を出力可能であれば、任意の構成が適用可能である。
【0026】
流速センサ30(第1センサ)は、配管20に配置されている。配管20内の湿り蒸気の流速fvを検出して流速fvに応じた流速信号Sfvとしてコンピュータ装置100に出力する。また、流速センサ30は、湿り蒸気の液相部分と気相部分のそれぞれの流速を検出することができる。さらに、流速センサ30は、湿り蒸気の液相部分と気相部分の一方の相の流速を検出し、その検出結果に基づいて他の相の流速を演算により求めることができるように構成されていてもよい。
【0027】
また、上述した構成要素のうち、計測値補正部101a、乾き度測定部102aは、所定のソフトウェアプログラムをコンピュータ装置100が実行することにより機能的に実現される機能ブロックである。
【0028】
計測値補正部101aは、測定対象の湿り蒸気を透過又は反射した光の強度及び/又は吸光度の値を補正する補正手段である。具体的には、計測値補正部101aは、受光部12から出力される光強度信号Sd及び/又は吸光度信号Saを入力する。そして、流速信号Sfvに基づいて生成される補正係数αに基づいて、受光部12により出力された光強度信号Sdに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の強度を補正する。また、流速センサ30から出力される流速信号Sfvに基づいて生成される補正係数αに基づいて、受光部12により出力された吸光度信号Saに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度を補正する。
【0029】
乾き度測定部102aは、補正された光の強度又は吸光度に基づいて湿り蒸気の乾き度を測定する測定手段である。具体的に、通常、乾き度は、気相部分の光の強度IV、液相部分の光の強度IWを用いて、以下の式(2)のような関係式として記述することができる。また、乾き度は、気相部分の光の吸光度AV、液相部分の光の吸光度AWを用いて、以下の式(3)のような関係式として記述することができる。
乾き度χ=IV/(IV+IW) …(2)
乾き度χ=AV/(AV+AW) …(3)
一方で、受光部12により計測された光の強度の補正後の乾き度は、気相部分の光の強度IV、液相部分の光の強度IW、及び流速センサ30から出力される流速信号Sfvに基づいて生成される補正係数αを用いて、以下の式(4)のような関係式として記述することができる。また、受光部12により計測された光の吸光度の補正後の乾き度は、気相部分の光の吸光度AV、液相部分の光の吸光度AW、及び補正係数αを用いて、以下の式(5)のような関係式として記述することができる。
乾き度χ'=IV/(IV+α・IW) …(4)
乾き度χ'=AV/(AV+α・AW) …(5)
したがって、乾き度測定部102aは、式(4)を用いる場合には、気相部分の光の強度、液相部分の光の強度、及び補正係数αを代入し、湿り蒸気の流速に応じた乾き度χ'を求めることができる。また、乾き度測定部102aは、式(5)を用いる場合には、気相部分の光の吸光度、液相部分の光の吸光度、及び補正係数αを代入し、湿り蒸気の流速に応じた乾き度χ'を求めることができる。
【0030】
なお、流速センサ30から出力される流速信号Sfvは、単一の信号である必要はなく、複数の信号を有するように構成されていてもよい。例えば、湿り蒸気の気相部分及び液相部分の各々の流速値に対応する二つ以上の信号を有するように構成されていてもよく、乾き度測定部102aは、該二つ以上の信号に基づいて補正係数αを得るように構成されていてもよい。この場合は、補正係数αは、気相部分及び液相部分の流速差などのパラメータが考慮されて、生成されるように構成されていてもよい。
【0031】
また、補正係数αは、上記で説明したように、流速信号Sfvに基づいて演算されることで得られるが、その他の様々な方法によって得ることができる。例えば、流速値と補正係数αとの対応関係をデータテーブルとして不図示の記憶部に予め格納し、計測値補正部101aが、検出された流速値に対応する補正係数αを記憶部から読み出して取得するように構成してもよい。
【0032】
(動作)
次に第1実施形態の動作を説明する。
まず、湿り蒸気が配管20の内部を流れている状態で湿り蒸気の乾き度を測定する場合、光入射部11において光を発する。光入射部11から入射側筒21を伝播した光は、配管20内部の湿り蒸気に照射される。
【0033】
湿り蒸気を透過又は反射した光は、射出側筒22に入射して伝播する。次に、受光部12は射出側筒22から射出された光を受け、光の強度及び/又は吸光度を計測する。次に、受光部12は、湿り蒸気を透過又は反射した光の強度に対応した光強度信号Sdを出力する。また、受光部12は、湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度に対応した吸光度信号Saをコンピュータ装置100に出力する。
【0034】
また、流速センサ30は、配管20内の湿り蒸気の流速fvを検出して流速fvに応じた流速信号Sfvとしてコンピュータ装置100に出力する。
【0035】
次いで、計測値補正部101aは、受光部12から出力される光強度信号Sd及び/又は吸光度信号Saを入力する。また、流速センサ30から出力される流速信号Sfvを入力する。そして、計測値補正部101aは、流速センサ30から出力される流速信号Sfvに基づいて生成される補正係数αに基づいて、受光部12により出力された光強度信号Sdに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の強度を補正する。また、計測値補正部101aは、流速センサ30から出力される流速信号Sfvに基づいて生成される補正係数αに基づいて、受光部12により出力された吸光度信号Saに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度を補正する。
【0036】
次いで、乾き度測定部102aは、補正された、湿り蒸気を透過又は反射した光の強度又は吸光度に基づいて湿り蒸気の乾き度を測定する。
【0037】
(効果)
以上説明した第1実施形態によれば、湿り蒸気の流速に基づいて補正された、湿り蒸気の光の強度または吸光度に基づいて湿り蒸気の乾き度を測定することにより、湿り蒸気の流速に応じた正確な乾き度を測定することができる。
【0038】
(実施形態2)
実施形態2は、湿り蒸気の流速に代えて、流量の影響を考慮した光の強度または吸光度に基づく乾き度を測定する乾き度測定装置に関する。
【0039】
(構成)
図2に、第2本実施形態における乾き度測定装置1bの構成を示す。
図2に示すように、第2実施形態に係る乾き度測定装置1bは、例示的に、光入射部11、受光部12、流量センサ32(第1センサ)、及びコンピュータ装置100を備えて構成される。また、コンピュータ装置100は、機能ブロックとして、計測値補正部101b、及び乾き度測定部102bを備えて構成される。
【0040】
本実施形態では、第1実施形態の流速センサ30の代わりに流量センサ32を備えている点において相違する。他の構成要素について、第1実施形態と同様な部分については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0041】
流量センサ32(第1センサ)は、配管20に配置されている。配管20内の湿り蒸気の流量frを検出して流量frに応じた流速信号Sfrとしてコンピュータ装置100に出力する。また、流量センサ32は、湿り蒸気の液相部分と気相部分のそれぞれの流速を検出することができる。さらに、流量センサ32は、湿り蒸気の液相部分と気相部分の一方の相の流量を検出し、その検出結果に基づいて他の相の流量を演算により求めることができるように構成されていてもよい。なお、第1センサは、第1実施形態の流速センサ30及び本実施形態の流量センサ32の双方(の機能)を備えているように構成されていてもよい。
【0042】
計測値補正部101bは、受光部12から出力される光強度信号Sd及び/又は吸光度信号Saを入力する。そして、計測値補正部101bは、流量センサ32から出力される流量信号Sfrに基づいて生成される補正係数βに基づいて、受光部12により出力された光強度信号Sdに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の強度を補正する。また、計測値補正部101bは、流量センサ32から出力される流量信号Sfrに基づいて生成される補正係数βに基づいて、受光部12により出力された吸光度信号Saに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度を補正する。
【0043】
乾き度測定部102bは、補正された光の強度又は吸光度に基づいて湿り蒸気の乾き度を測定する測定手段である。例えば、受光部12により計測された光の強度の補正後の乾き度は、気相部分の光の強度IV、液相部分の光の強度IW、及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrに基づいて生成される補正係数βを用いて、以下の式(6)のような関係式として記述することができる。また、受光部12により計測された光の吸光度の補正後の乾き度は、気相部分の光の吸光度AV、液相部分の光の吸光度AW、及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrに基づいて生成される補正係数βを用いて、以下の式(7)のような関係式として記述することができる。
乾き度χ'=IV/(IV+β・IW) …(6)
乾き度χ'=AV/(AV+β・AW) …(7)
したがって、乾き度測定部102bは、式(6)を用いる場合には、気相部分の光の強度、液相部分の光の強度、及び補正係数βを代入し、湿り蒸気の流量に応じた乾き度χ'を求めることができる。また、乾き度測定部102bは、式(7)を用いる場合には、気相部分の光の吸光度、液相部分の光の吸光度、及び補正係数βを代入し、湿り蒸気の流量に応じた乾き度χ'を求めることができる。
【0044】
なお、流量センサ32から出力される流量信号Sfrは、単一の信号である必要はなく、複数の信号を有するように構成されていてもよい。例えば、湿り蒸気の気相部分及び液相部分の各々の流量値に対応する二つ以上の信号を有するように構成されていてもよく、乾き度測定部102bは、該二つ以上の信号に基づいて補正係数βを得るように構成されていてもよい。この場合は、補正係数βは、気相部分及び液相部分の流量差などのパラメータが考慮されて、生成されるように構成されていてもよい。
【0045】
また、補正係数βは、上記で説明したように、流量信号Sfrに基づいて演算されることで得られるが、その他の様々な方法によって得ることができる。例えば、流量値と補正係数βとの対応関係をデータテーブルとして不図示の記憶部に予め格納し、計測値補正部101bが、検出された流量値に対応する補正係数βを記憶部から読み出して取得するように構成してもよい。
【0046】
(動作)
次に第2実施形態の動作を説明する。
まず、湿り蒸気が配管20の内部を流れている状態で湿り蒸気の乾き度を測定する場合、光入射部11において光を発する。光入射部11から入射側筒21を伝播した光は、配管20内部の湿り蒸気に照射される。
【0047】
湿り蒸気を透過又は反射した光は、射出側筒22に入射して伝播する。次に、受光部12は射出側筒22から射出された光を受け、光の強度及び/又は吸光度を計測する。次に、受光部12は、湿り蒸気を透過又は反射した光の強度に対応した光強度信号Sdを出力する。また、受光部12は、湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度に対応した吸光度信号Saをコンピュータ装置100に出力する。
【0048】
また、流量センサ32は、配管20内の湿り蒸気の流量frを検出して流量frに応じた流量信号Sfrとしてコンピュータ装置100に出力する。
【0049】
次いで、計測値補正部101bは、受光部12から出力される光強度信号Sd及び/又は吸光度信号Saを入力する。また、計測値補正部101bは、流量センサ32から出力される流量信号Sfrを入力する。そして、計測値補正部101bは、流量センサ32から出力される流量信号Sfrに基づいて生成される補正係数βに基づいて、受光部12により出力された光強度信号Sdに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の強度を補正する。また、計測値補正部101bは、流量センサ30から出力される流量信号Sfrに基づいて生成される補正係数βに基づいて、受光部12により出力された吸光度信号Saに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度を補正する。
【0050】
次いで、乾き度測定部102bは、補正された、湿り蒸気を透過又は反射した光の強度又は吸光度に基づいて湿り蒸気の乾き度を測定する。
【0051】
(効果)
以上説明した第2実施形態によれば、湿り蒸気の流量に基づいて補正された、湿り蒸気の光の強度または吸光度に基づいて湿り蒸気の乾き度を測定することにより、湿り蒸気の流量に応じた正確な乾き度を測定することができる。
【0052】
(実施形態3)
実施形態3は、湿り蒸気の流速及び流量の少なくとも一方に加えて圧力の影響を考慮した光の強度または吸光度に基づく乾き度を測定する乾き度測定装置に関する。
【0053】
(構成)
図3に、第3本実施形態における乾き度測定装置1cの構成を示す。
図3に示すように、第3実施形態に係る乾き度測定装置1cは、例示的に、光入射部11、受光部12、流速センサ30(第1センサ)、流量センサ32(第1センサ)、圧力センサ34(第2センサ)、及びコンピュータ装置100を備えて構成される。また、コンピュータ装置100は、機能ブロックとして、計測値補正部101c、及び乾き度測定部102cを備えて構成される。
【0054】
本実施形態では、第1実施形態及び/又は第2実施形態に圧力センサ34をさらに備えている点において相違する。他の構成要素について、第1実施形態と同様な部分については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0055】
圧力センサ34(第2センサ)は、配管20に配置されている。配管20内の湿り蒸気の圧力pを検出して圧力pに応じた圧力信号Spとしてコンピュータ装置100に出力する。また、圧力センサ34は、湿り蒸気の液相部分と気相部分のそれぞれの圧力を検出することができる。さらに、圧力センサ34は、湿り蒸気の液相部分と気相部分の一方の相の圧力を検出し、その検出結果に基づいて他の相の圧力を演算により求めることができるように構成されていてもよい。
【0056】
計測値補正部101cは、受光部12から出力される光強度信号Sd及び/又は吸光度信号Saを入力する。そして、圧力センサ34から出力される圧力信号Spと、流速センサ30から出力される流速信号Sfv及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrの少なくとも一方と、に基づいて生成される補正係数γに基づいて、受光部12により出力された光強度信号Sdに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の強度を補正する。また、圧力センサ34から出力される圧力信号Spと、流速センサ30から出力される流速信号Sfv及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrの少なくとも一方と、に基づいて生成される補正係数γに基づいて、受光部12により出力された吸光度信号Saに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度を補正する。
【0057】
乾き度測定部102cは、補正された光の強度又は吸光度に基づいて湿り蒸気の乾き度を測定する測定手段である。例えば、受光部12により計測された光の強度の補正後の乾き度は、気相部分の光の強度IV、液相部分の光の強度IW、及び圧力センサ34から出力される圧力信号Spと、流速センサ30から出力される流速信号Sfv及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrの少なくとも一方と、に基づいて生成される補正係数γを用いて、以下の式(8)のような関係式として記述することができる。また、受光部12により計測された光の吸光度の補正後の乾き度は、気相部分の光の吸光度AV、液相部分の光の吸光度AW、及び圧力センサ34から出力される圧力信号Spと、流速センサ30から出力される流速信号Sfv及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrの少なくとも一方と、に基づいて生成される補正係数γを用いて、以下の式(9)のような関係式として記述することができる。
乾き度χ'=IV/(IV+γ・IW) …(8)
乾き度χ'=AV/(AV+γ・AW) …(9)
したがって、乾き度測定部102cは、式(8)を用いる場合には、気相部分の光の強度、液相部分の光の強度、及び補正係数γを代入し、湿り蒸気の圧力に応じた乾き度χ'を求めることができる。また、乾き度測定部102cは、式(9)を用いる場合には、気相部分の光の吸光度、液相部分の光の吸光度、及び補正係数γを代入し、湿り蒸気の圧力に応じた乾き度χ'を求めることができる。
【0058】
なお、圧力センサ34から出力される圧力信号Spは、単一の信号である必要はなく、複数の信号を有するように構成されていてもよい。例えば、湿り蒸気の気相部分及び液相部分の各々の圧力に対応する二つ以上の信号を有するように構成されていてもよく、乾き度測定部102cは、少なくとも該二つ以上の信号に基づいて補正係数γを得るように構成されていてもよい。この場合は、補正係数γは、気相部分及び液相部分の圧力差などのパラメータが考慮されて、生成されるように構成されていてもよい。
【0059】
また、補正係数γは、上記で説明したように、圧力信号Spと、流速センサ30から出力される流速信号Sfv及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrの少なくとも一方と、に基づいて演算されることで得られるが、その他の様々な方法によって得ることができる。例えば、圧力センサ34により検出される圧力と流速センサ30により検出される流速及び流量センサ32により検出される流量の少なくとも一方と、補正係数γと、の対応関係をデータテーブルとして不図示の記憶部に予め格納し、計測値補正部101cが、検出された圧力と流速及び流量の少なくとも一方とに対応する補正係数γを記憶部から読み出して取得するように構成してもよい。
【0060】
(動作)
次に第3実施形態の動作を説明する。
まず、湿り蒸気が配管20の内部を流れている状態で湿り蒸気の乾き度を測定する場合、光入射部11において光を発する。光入射部11から入射側筒21を伝播した光は、配管20内部の湿り蒸気に照射される。
【0061】
湿り蒸気を透過又は反射した光は、射出側筒22に入射して伝播する。次に、受光部12は射出側筒22から射出された光を受け、光の強度及び/又は吸光度を計測する。次に、受光部12は、湿り蒸気を透過又は反射した光の強度に対応した光強度信号Sdを出力する。また、受光部12は、湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度に対応した吸光度信号Saをコンピュータ装置100に出力する。
【0062】
また、圧力センサ34は、配管20内の湿り蒸気の圧力pを検出して流速pに応じた圧力信号Spとしてコンピュータ装置100に出力する。
【0063】
次いで、計測値補正部101cは、受光部12から出力される光強度信号Sd及び/又は吸光度信号Saを入力する。また、圧力センサ34から出力される圧力信号Spを入力する。そして、圧力センサ34から出力される圧力信号Spと、流速センサ30から出力される流速信号Sfv及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrの少なくとも一方と、に基づいて生成される補正係数γに基づいて、受光部12により出力された光強度Sdに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の強度を補正する。また、圧力センサ34から出力される圧力信号Spと、流速センサ30から出力される流速信号Sfv及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrの少なくとも一方と、に基づいて生成される補正係数γに基づいて、受光部12により出力された吸光度信号Saに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度を補正する。
【0064】
次いで、乾き度測定部102cは、補正された、湿り蒸気を透過又は反射した光の強度又は吸光度に基づいて湿り蒸気の乾き度を測定する。
【0065】
(効果)
以上説明した第3実施形態によれば、湿り蒸気の圧力と流速及び流量の少なくとも一方とに基づいて補正された、湿り蒸気の光の強度または吸光度に基づいて湿り蒸気の乾き度を測定することにより、湿り蒸気の圧力と流速及び流量の少なくとも一方とに応じた正確な乾き度を測定することができる。
【0066】
(実施形態4)
実施形態4は、湿り蒸気の流速及び流量の少なくとも一方に加えて温度の影響を考慮した光の強度または吸光度に基づく乾き度を測定する乾き度測定装置に関する。
【0067】
(構成)
図4に、第4実施形態における乾き度測定装置1dの構成を示す。
図4に示すように、第4実施形態に係る乾き度測定装置1dは、例示的に、光入射部11、受光部12、流速センサ30(第1センサ)、流量センサ32(第1センサ)、温度センサ36(第3センサ)、及びコンピュータ装置100を備えて構成される。また、コンピュータ装置100は、機能ブロックとして、計測値補正部101d、及び乾き度測定部102dを備えて構成される。
【0068】
本実施形態では、第1実施形態及び/又は第2実施形態にさらに温度センサ36を備えている点において相違する。他の構成要素について、第1実施形態と同様な部分については、説明を省略する。
【0069】
温度センサ36(第3センサ)は、配管20に配置されている。配管20内の湿り蒸気の温度tを検出して温度tに応じた温度信号Stとしてコンピュータ装置100に出力する。また、温度センサ36は、湿り蒸気の液相部分と気相部分のそれぞれの温度を検出することができる。さらに、温度センサ36は、湿り蒸気の液相部分と気相部分の一方の相の温度を検出し、その検出結果に基づいて他の相の温度を演算により求めることができるように構成されていてもよい。
【0070】
計測値補正部101dは、受光部12から出力される光強度Sd及び/又は吸光度信号Saを入力する。そして、温度センサ36から出力される温度信号Stと、流速センサ30から出力される流速信号Sfv及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrの少なくとも一方と、に基づいて生成される補正係数σに基づいて、受光部12により出力された光強度Sdに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の強度を補正する。また、温度センサ36から出力される温度信号Stと、流速センサ30から出力される流速信号Sfv及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrの少なくとも一方と、に基づいて生成される補正係数σに基づいて、受光部12により出力された吸光度信号Saに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度を補正する。
【0071】
乾き度測定部102dは、補正された光の強度又は吸光度に基づいて湿り蒸気の乾き度を測定する測定手段である。例えば、受光部12により計測された光の強度の補正後の乾き度は、気相部分の光の強度IV、液相部分の光の強度IW、及び温度センサ36から出力される温度信号Stと、流速センサ30から出力される流速信号Sfv及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrの少なくとも一方と、に基づいて生成される補正係数σを用いて、以下の式(10)のような関係式として記述することができる。また、受光部12により計測された光の吸光度の補正後の乾き度は、気相部分の光の吸光度AV、液相部分の光の吸光度AW、及び温度センサ36から出力される温度信号Stと、流速センサ30から出力される流速信号Sfv及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrの少なくとも一方と、に基づいて生成される補正係数γを用いて、以下の式(11)のような関係式として記述することができる。
乾き度χ'=IV/(IV+σ・IW) …(10)
乾き度χ'=AV/(AV+σ・AW) …(11)
したがって、乾き度測定部102dは、式(10)を用いる場合には、気相部分の光の強度、液相部分の光の強度、及び補正係数σを代入し、湿り蒸気の温度に応じた乾き度χ'を求めることができる。また、乾き度測定部102dは、式(11)を用いる場合には、気相部分の光の吸光度、液相部分の光の吸光度、及び補正係数σを代入し、湿り蒸気の温度に応じた乾き度χ'を求めることができる。
【0072】
なお、温度センサ36から出力される温度信号Stは、単一の信号である必要はなく、複数の信号を有するように構成されていてもよい。例えば、湿り蒸気の気相部分及び液相部分の各々の温度に対応する二つ以上の信号を有するように構成されていてもよく、乾き度測定部102dは、少なくとも該二つ以上の信号に基づいて補正係数σを得るように構成されていてもよい。この場合は、補正係数σは、気相部分及び液相部分の圧力差などのパラメータが考慮されて、生成されるように構成されていてもよい。
【0073】
なお、補正係数σは、上記で説明したように、温度信号Stと、流速センサ30から出力される流速信号Sfv及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrの少なくとも一方と、に基づいて演算されることで得られるが、その他の様々な方法によって得ることができる。例えば、温度センサ36により検出される温度と流速センサ30により検出される流速及び流量センサ32により検出される流量の少なくとも一方と、補正係数σと、の対応関係をデータテーブルとして不図示の記憶部に予め格納し、計測値補正部101dが、検出された温度と流速及び流量の少なくとも一方とに対応する補正係数σを記憶部から読み出して取得するように構成されていてもよい。
【0074】
(動作)
次に第4実施形態の動作を説明する。
まず、湿り蒸気が配管20の内部を流れている状態で湿り蒸気の乾き度を測定する場合、光入射部11において光を発する。光入射部11から入射側筒21を伝播した光は、配管20内部の湿り蒸気に照射される。
【0075】
湿り蒸気を透過又は反射した光は、射出側筒22に入射して伝播する。次に、受光部12は射出側筒22から射出された光を受け、光の強度及び/又は吸光度を計測する。次に、受光部12は、湿り蒸気を透過又は反射した光の強度に対応した光強度信号Sdを出力する。また、受光部12は、湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度に対応した吸光度信号Saをコンピュータ装置100に出力する。
【0076】
また、温度センサ36は、配管20内の湿り蒸気の温度tを検出して温度tに応じた温度信号Stとしてコンピュータ装置100に出力する。
【0077】
次いで、計測値補正部101aは、受光部12から出力される光強度信号Sd及び/又は吸光度信号Saを入力する。また、温度センサ36から出力される温度信号Stを入力する。そして、温度センサ36から出力される温度信号Stと、流速センサ30から出力される流速信号Sfv及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrの少なくとも一方と、に基づいて生成される補正係数σに基づいて、受光部12により出力された光強度信号Sdに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の強度を補正する。また、温度センサ36から出力される温度信号Stと、流速センサ30から出力される流速信号Sfv及び流量センサ32から出力される流量信号Sfrの少なくとも一方と、に基づいて生成される補正係数σに基づいて、受光部12により出力された吸光度信号Saに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度を補正する。
【0078】
次いで、乾き度測定部102aは、補正された、湿り蒸気を透過又は反射した光の強度又は吸光度に基づいて湿り蒸気の乾き度を測定する。
【0079】
(効果)
以上説明した第4実施形態によれば、湿り蒸気の温度と流速及び流量の少なくとも一方とに基づいて補正された、湿り蒸気の光の強度または吸光度に基づいて湿り蒸気の乾き度を測定することにより、湿り蒸気の温度と流速及び流量の少なくとも一方とに応じた正確な乾き度を測定することができる。
【0080】
(他の実施形態)
本発明は、上記第1実施形態〜第4実施形態に限定されることなく、種々に組み合わせることができ、変形して適用することが可能であり、各実施形態が有する各構成要素についても、種々に組み合わせることができ、変形して適用することが可能である。例えば、上記第1実施形態の計測値補正部101aは、流速センサ30の流速信号Sfv及び上記第2実施形態の流量センサ32の流量信号Sfrに基づいて生成される補正係数に基づいて、受光部12により出力された吸光度信号Saに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度を補正してもよいし、受光部12により出力された光強度信号Sdに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の強度を補正してもよい。そして、上記第1実施形態の乾き度測定部102aは、それらの補正された光の強度又は吸光度に基づいて乾き度を測定してもよい。
【0081】
また、飽和蒸気は圧力と温度の比が一定であることを考慮して、上記第3実施形態の圧力センサ34で計測された圧力に基づいて、温度を算出することもできる。そして、上記第3実施形態の計測値補正部101cは、上記第4実施形態の温度信号Stに基づいて生成される補正係数σに基づいて、受光部12により出力された吸光度信号Saに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度を補正してもよいし、受光部12により出力された光強度信号Sdに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の強度を補正してもよい。そして、上記第3実施形態の乾き度測定部102cは、それらの補正された光の強度又は吸光度に基づいて乾き度を測定してもよい。
【0082】
さらに、上記第2実施形態の流量センサ32で計測された流量及び上記第3実施形態の圧力センサ34で計測された圧力に基づいて、流速を算出することもできる。そして、上記第1実施形態の計測値補正部101aは、算出された流速に基づく補正係数αに基づいて、受光部12により出力された吸光度信号Saに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の吸光度を補正してもよいし、受光部12により出力された光強度信号Sdに基づく湿り蒸気を透過又は反射した光の強度を補正してもよい。そして、上記第1実施形態の乾き度測定部102aは、それらの補正された光の強度又は吸光度に基づいて乾き度を測定してもよい。
【0083】
またさらに、各実施形態で説明した以外にも、各実施形態の各計測値補正部101a〜101dは、各センサにより検出された流速、流量、圧力および温度の群より選ばれる1又は2以上(の様々な組み合わせ)に基づいて、光の強度または吸光度を補正するように構成されていてよく、各実施形態の各乾き度測定部は、該補正された光の強度または吸光度に基づいて乾き度を測定するように構成されていてもよい。
【0084】
さらにまた、各実施形態の各乾き度測定部102a〜102dは、光の強度又は吸収度に基づいて乾き度を測定する過程において、飽和蒸気の量や飽和水の量も求めることができるように構成されていてもよい。
【0085】
各実施形態における乾き度測定装置1a〜1dは、相関関係記憶部(不図示)を備えるように構成されていてもよい。例えば、相関関係記憶部は、検出された湿り蒸気の流速、流量、圧力および温度の群より選ばれる1又は2以上に基づいて、補正された光の強度または吸光度に基づいて測定された乾き度と、流速、流量、圧力および温度の影響を考慮せず測定された乾き度と、の相関関係をデータテーブルとして格納する。そして、この相関関係記憶部に格納されている相関関係のデータを参照することで、乾き度を測定することもできる。