(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明による油圧制御装置の一実施の形態を説明する。
−第1の実施の形態−
図1は、第1の実施の形態に係る油圧制御装置を備えた作業車両の一例であるホイールローダの側面図である。ホイールローダは、アーム111、バケット112、および、前輪113等を有する前部車体110と、運転室121、機械室122、および、後輪123等を有する後部車体120とで構成される。
【0009】
アーム111はアームシリンダ117の駆動により上下方向に回動(俯仰動)し、バケット112はバケットシリンダ115の駆動により上下方向に回動(クラウドまたはダンプ)する。前部車体110と後部車体120はセンタピン101により互いに回動自在に連結され、ステアリングシリンダ116の伸縮により後部車体120に対し前部車体110が左右に屈折する。
【0010】
機械室122は、上方がエンジンフード128で、側方が開閉可能な建屋カバー129で覆われている。エンジンフード128には、エンジン190の駆動に必要な空気を外部から取り込むための吸気管124iと、排ガスを排出するためのテールパイプ124oが取り付けられている。機械室122内には、エンジン190および排ガス浄化装置160、油圧ポンプや各種弁を備えた油圧回路、運転室121を冷却するエアコン用のコンプレッサ等が配設されている。
【0011】
図2は、第1の実施の形態に係る油圧制御装置を備えたホイールローダの概略構成を示す図である。ホイールローダは、エンジン190と、作業用ポンプ131と、パイロットポンプ132と、チャージポンプ133と、排ガス浄化装置160と、作業用油圧回路HC1と、HST走行回路HC2と、パイロット回路HC3と、ブレーキ回路HC4と、電磁切換弁103と、マニホールドバルブ18と、エアコンユニット169とを備えている。エアコンユニット169のコンプレッサは、エアコンベルトを介してエンジン190により駆動される。
【0012】
排ガス浄化装置160は、エンジン190の排気経路に設けられている。排ガス浄化装置160は、エンジン190の排気ガス中に含まれる粒子状物質(PM)を捕集するフィルタ161と、酸化触媒(不図示)と、再生用燃料噴射装置165とを備えている。フィルタ161の上流側には酸化触媒が配置される。なお、フィルタ161に直接、酸化触媒を担持させてもよい。再生用燃料噴射装置165は、排気経路におけるエンジン190とフィルタ161との間に設けられ、排気経路へ燃料の噴射を行う。
【0013】
作業用ポンプ131、パイロットポンプ132およびチャージポンプ133は、エンジン190により駆動される油圧ポンプである。チャージポンプ133から吐出された圧油は、HST走行回路HC2に導かれ、補充される。図示しないが、HST走行回路HC2は、走行用の油圧モータと、エンジン190により駆動される可変容量型の油圧ポンプとが閉回路接続されている。
【0014】
作業用ポンプ131はアーム111やバケット112からなるフロント作業機を動作させるための油圧源であり、作業用ポンプ131から吐出された圧油は、作業用油圧回路HC1に供給される。作業用油圧回路HC1は、アーム用コントロールバルブ11と、バケット用コントロールバルブ12と、負荷掛け用切換弁102と、絞り104と、メインリリーフ弁136とを含んでいる。メインリリーフ弁136は、作業用ポンプ131から吐出される圧油の最高圧力、すなわち作業用油圧回路HC1の最高圧力を規定する。メインリリーフ弁136の設定圧力Prは、たとえば20MPaである。
【0015】
アーム用コントロールバルブ11は、アーム操作レバー(不図示)により操作され、作業用ポンプ131からアームシリンダ117に供給される圧油の方向と流量を制御してアームシリンダ117の駆動を制御する。バケット用コントロールバルブ12は、バケット操作レバー(不図示)により操作され、作業用ポンプ131からバケットシリンダ115に供給される圧油の方向と流量を制御してバケットシリンダ115の駆動を制御する。アーム操作レバー(不図示)は、アーム111の上昇/下降指令を出力し、バケット操作レバー(不図示)は、バケット112のクラウド/ダンプ指令を出力する。なお、各コントロールバルブ11,12を操作する操作レバーは、油圧パイロット式レバーであってもよいし、電気式レバーであってもよい。
【0016】
アーム用コントロールバルブ11およびバケット用コントロールバルブ12は、オープンセンタ型の方向制御弁であって、作業用ポンプ131とタンク139とを接続するセンタバイパスライン13に設けられている。センタバイパスライン13におけるバケット用コントロールバルブ12の下流側には、排ガス浄化装置160の再生時に、作業用ポンプ131に強制的に油圧負荷をかけるための負荷掛け用切換弁102が設けられている。すなわち、センタバイパスライン13には、アーム用コントロールバルブ11およびバケット用コントロールバルブ12、負荷掛け用切換弁102がタンデムに接続されている。アーム用コントロールバルブ11およびバケット用コントロールバルブ12、負荷掛け用切換弁102は、アーム用コントロールバルブ11の上流側のセンタバイパスライン13から分岐されるパラレル油路14によって、それぞれがパラレルに接続されている。
【0017】
負荷掛け用切換弁102は、通常位置(N)と負荷掛け位置(L)とを有し、PPポートと、PSポートと、T0ポートと、T1ポートと、T2ポートとを有している。PSポートは、センタバイパスライン13に接続されている。PPポートは、パラレル油路14に接続され、さらに逆止弁125を介してセンタバイパスライン13に接続されている。
【0018】
T0,T1,T2ポートは、それぞれタンク139に接続されている。なお、T2ポートは絞り104を介してタンク139に接続され、T0,T1ポートは絞り104を介さずにタンク139に接続されている。
【0019】
負荷掛け用切換弁102は、コントローラ150からの制御信号(励磁電流)により切り換えられる電磁切換弁103によって制御される。コントローラ150から電磁切換弁103のソレノイド103aにオン信号が出力されると電磁切換弁103は位置(B)に切り換えられ、コントローラ150から電磁切換弁103のソレノイド103aにオフ信号が出力されると電磁切換弁103は位置(A)に切り換えられる。
【0020】
電磁切換弁103が位置(B)に切り換わると、負荷掛け用切換弁102のスプールにパイロット圧が作用し、負荷掛け用切換弁102は負荷掛け位置(L)に切り換わる。電磁切換弁103が位置(A)に切り換わると、負荷掛け用切換弁102はバネの弾性力により通常位置(N)に切り換わる。
【0021】
負荷掛け用切換弁102が負荷掛け位置(L)に切り換わると、パラレル油路14やセンタバイパスライン13を介して作業用ポンプ131から供給される圧油が絞り104を介してタンク139に排出される。
負荷掛け用切換弁102が通常位置(N)に切り換わると、パラレル油路14を介して作業用ポンプ131から供給される圧油の流れが遮断され、センタバイパスライン13を介して作業用ポンプ131から供給される圧油はタンク139にそのまま排出される。
【0022】
ブレーキ回路HC4は、アキュムレータ145と、アキュムレータ用のチャージバルブ17と、ブレーキバルブ141と、フロントブレーキ装置142と、リアブレーキ装置143とを備えている。フロントブレーキ装置142は、前輪113を制動する油圧式ブレーキ装置であり、リアブレーキ装置143は、後輪123を制動する油圧式ブレーキ装置である。
【0023】
アキュムレータ145は、パイロットポンプ132から吐出される圧油がチャージバルブ17を介して供給されることによって、フロントブレーキ装置142およびリアブレーキ装置143の駆動に用いられる圧油を蓄える。アキュムレータ145に蓄えられた圧油は、ブレーキペダル147に連動するブレーキバルブ141を通じて、フロントブレーキ装置142やリアブレーキ装置143に供給される。
【0024】
チャージバルブ17は、流量制御弁171と、リリーフ弁172と、分流弁173とを有している。流量制御弁171は、フロントブレーキ装置142用およびリアブレーキ装置143用のアキュムレータ145のうち、圧力の低いアキュムレータ145に対して優先的に圧油を供給するように流量を制御する。
【0025】
分流弁173は、パイロットポンプ132からの圧油がアキュムレータ145側にのみ流れるようにする位置(C)と、パイロットポンプ132からの圧油をアキュムレータ145側だけでなく、マニホールドバルブ18へも流れるようにする位置(D)とを有している。アキュムレータ145に蓄えられる圧力(以下、チャージ圧と記す)がリリーフ弁172の設定圧力以上になると、リリーフ弁172が作動して分流弁173は位置(D)に切り換えられる。チャージ圧がリリーフ弁172の設定圧力未満になると、分流弁173は位置(C)に切り換えられる。
【0026】
分流弁173が位置(C)に切り換えられて、アキュムレータ145にパイロットポンプ132からの圧油が供給されると、チャージ圧が上昇する。このとき、パイロットポンプ132から吐出される圧油の最高圧力はリリーフ弁172により規定される。リリーフ弁172の設定圧力Pbrは、たとえば15MPaである。
【0027】
分流弁173が位置(D)に切り換えられると、マニホールドバルブ18を介してパイロット回路HC3および電磁切換弁103のそれぞれにパイロットポンプ132からの圧油が供給される。マニホールドバルブ18には、パイロット回路HC3の最高圧力を、たとえば4MPaに規定するパイロットレデューシングバルブ18aが設けられている。
【0028】
コントローラ150は、CPUや記憶装置であるROMおよびRAM、その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成され、ホイールローダの各部の制御を行っている。コントローラ150には、エアコンユニット169の動作を制御するためのエアコンスイッチ168と、エアコンユニット169と、再生用燃料噴射装置165と、第1圧力センサ131pと、第2圧力センサ132pと、電磁切換弁103と、差圧センサ166と、エンジンコントローラ192と、ペダル操作量センサ127aとが接続されている。
【0029】
エアコンスイッチ168は、オペレータによって操作され、操作信号をコントローラ150に出力する。差圧センサ166は、フィルタ161の前後差圧DPを検出し、差圧信号をコントローラ150に出力する。第1圧力センサ131pは、作業用ポンプ131の吐出圧Ppを検出し、圧力信号をコントローラ150に出力する。第2圧力センサ132pは、パイロットポンプ132の吐出圧Pbを検出し、圧力信号をコントローラ150に出力する。ペダル操作量センサ127aは、アクセルペダル127のペダル操作量(ペダルストロークまたはペダル角度)を検出し、ペダル操作量信号をコントローラ150に出力する。
【0030】
図3は、第1の実施の形態に係る油圧制御装置におけるコントローラ150の機能を説明する機能ブロック図である。
コントローラ150は、差圧判定部151と、条件判定部152と、弁制御部153と、噴射制御部154と、エアコン制御部155と、目標速度設定部156と、速度判定部157とを機能的に備えている。
【0031】
目標速度設定部156は、ペダル操作量センサ127aで検出したアクセルペダル127のペダル操作量(踏込量)に応じてエンジン190の目標エンジン回転速度(指令速度)Ntを設定する。
図4は、アクセルペダル127の操作量Sと目標エンジン回転速度Ntの関係を示す図である。
【0032】
コントローラ150の記憶装置には、
図4に示すアクセルペダル127の操作量Sに対する目標エンジン回転速度Ntの特性TNのテーブルが記憶されている。目標速度設定部156は、特性TNのテーブルを参照し、ペダル操作量センサ127aで検出された操作量Sに基づいて目標エンジン回転速度Ntを設定する。アクセルペダル127の非操作時(0%)の目標エンジン回転速度Ntはローアイドル回転速度NLに設定される。アクセルペダル127のペダル操作量Sの増加に伴い目標エンジン回転速度Ntは増加する。ペダル最大踏み込み時(100%)の目標エンジン回転速度Ntは定格回転速度NUとなる。つまり、目標エンジン回転速度Ntは、アクセルペダル127を操作することにより、ローアイドル回転速度NLと定格回転速度NUとの間で変更可能である。
【0033】
コントローラ150は、設定した目標エンジン回転速度Ntに対応した制御信号をエンジンコントローラ192に出力する。エンジンコントローラ192には、エンジン190の実エンジン回転速度を検出する回転速度センサ191が接続されている。回転速度センサ191で検出されたエンジン190の実エンジン回転速度に対応する実速度信号は、エンジンコントローラ192を介してコントローラ150に出力される。エンジンコントローラ192は、回転速度センサ191で検出されたエンジン190の実エンジン回転速度Naと、コントローラ150からの目標エンジン回転速度Ntとを比較して、エンジン190の実エンジン回転速度Naを目標エンジン回転速度Ntに近づけるために燃料噴射装置(不図示)を制御する。
【0034】
エアコン制御部155は、エアコンスイッチ168がオンされると、エアコンユニット169の電磁クラッチ169aにオン信号を出力し、エンジン190からの動力が電磁クラッチ169aを介してエアコンユニット169のコンプレッサに伝達されるように電磁クラッチ169aを制御する。エアコン制御部155は、エアコンスイッチ168がオフされると、エアコンユニット169の電磁クラッチ169aにオフ信号を出力し、エンジン190からの動力がエアコンユニット169のコンプレッサに伝達されないように電磁クラッチ169aを制御する。
【0035】
差圧判定部151は、差圧センサ166により検出された差圧DPが閾値DP1以上であるか否かを判定する。条件判定部152は、差圧判定部151により差圧DPが閾値DP1以上であると判定されたときには再生条件が成立していると判定し、差圧判定部151により差圧DPが閾値DP1未満であると判定されたときには再生条件が成立していないと判定する。閾値DP1は、フィルタ161に粒子状物質(PM)が溜まり、排ガス浄化装置160の浄化機能を再生させる開始時期となったことを判定するために設定され、予め記憶装置に記憶されている。
【0036】
弁制御部153は、条件判定部152により再生条件が成立していると判定されたときには電磁切換弁103のソレノイド103aにオン信号を出力し、条件判定部152により再生条件が成立していないと判定されたときには電磁切換弁103のソレノイド103aにオフ信号を出力する。
【0037】
噴射制御部154は、条件判定部152により再生条件が成立していると判定されたときには再生用燃料噴射装置165を作動させて、排気経路へ燃料を噴射し、酸化触媒に燃料を供給する。
【0038】
排ガス浄化装置160のフィルタ161に粒子状物質が蓄積され、エンジン190の排気ガスの排気抵抗が大きくなり、差圧センサ166で検出された差圧DPが閾値DP1以上になると、電磁切換弁103が位置(B)に切り換わる。電磁切換弁103が位置(B)に切り換わると、パイロット圧が負荷掛け用切換弁102に作用して、負荷掛け用切換弁102が位置(L)に切り換わる。また、再生用燃料噴射装置165が作動して、排気経路へ燃料が噴射される。供給された燃料は、酸化触媒によって酸化され、そのときに発生する反応熱によりフィルタ161が加熱され、フィルタ161に蓄積された粒子状物質(PM)が燃焼除去される。
【0039】
フィルタ161で捕集された粒子状物質(PM)は、高温の排気ガスに晒されることにより自己燃焼する。しかし、エンジン190に対する負荷が軽い場合は排気ガスの温度が高温に達せず、自己燃焼できない粒子状物質(PM)が徐々にフィルタ161に堆積する。本実施の形態では、再生条件が成立すると、負荷掛け用切換弁102が位置(L)に切り換わり、作業用ポンプ131から吐出された圧油が絞り104を介してタンク139に排出される。これにより、フロント作業機が操作されていない状態、すなわちアーム用コントロールバルブ11およびバケット用コントロールバルブ12がそれぞれ中立位置にある状態においても、作業用ポンプ131に強制的に油圧負荷を与えて、エンジン190に作用する負荷を上昇させ、エンジン出力を高めることができる。エンジン190の出力が高められることで、排気ガスの温度は上昇し、粒子状物質の燃焼除去効果が促進される。この結果、排ガス浄化装置160の低下した浄化機能が再生され、当初の状態に回復する。
【0040】
なお、フロント作業機が操作されていない状態において、再生条件が成立していない場合には、負荷掛け用切換弁102が位置(N)に切り換えられており、作業用ポンプ131から吐出された圧油は、センタバイパスライン13を介して、そのままタンク139に排出される。
【0041】
速度判定部157は、回転速度センサ191により検出された実エンジン回転速度Naが閾値N1以下であるか否かを判定する。閾値N1は、エンジンストールを防止するために設定される。本実施の形態では、閾値N1は、ローアイドル回転速度NL(たとえば、800rpm)よりも低い回転速度(たとえば、650rpm)に設定され、予め記憶装置に記憶されている(N1<NL)。
【0042】
速度判定部157は、回転速度センサ191により検出された実エンジン回転速度Naが閾値N2以上であるか否かを判定する。閾値N2は、ローアイドル回転速度NLよりも低く、かつ、閾値N1よりも高い回転速度(たとえば、780rpm)に設定され、予め記憶装置に記憶されている(N1<N2<NL)。
【0043】
条件判定部152は、作業用ポンプ131の負荷を軽減する、すなわちアンロードするアンロードモード、および、作業用ポンプ131をアンロードしない通常モードのいずれかを設定する。条件判定部152は、通常モードが設定されている場合において、速度判定部157により実エンジン回転速度Naが閾値N1以下であると判定されたとき(Na≦N1)には、アンロード条件が成立していると判定してモードをアンロードモードに変更する。条件判定部152は、通常モードが設定されている場合において、速度判定部157により実エンジン回転速度Naが閾値N1よりも高いと判定されたとき(Na>N1)には、アンロード条件が成立していないと判定して通常モードを維持する。
【0044】
条件判定部152は、アンロードモードが設定されている場合において、速度判定部157により実エンジン回転速度Naが閾値N2以上であると判定されたとき(Na≧N2)には、解除条件が成立していると判定してモードを通常モードに変更する。条件判定部152は、アンロードモードが設定されている場合において、速度判定部157により実エンジン回転速度Naが閾値N2未満であると判定されたとき(Na<N2)には、解除条件が成立していないと判定してアンロードモードを維持する。
【0045】
弁制御部153は、条件判定部152によりアンロードモードが設定されているときには電磁切換弁103のソレノイド103aにオン信号を出力し、条件判定部152により通常モードが設定されているときには電磁切換弁103のソレノイド103aにオフ信号を出力する。
【0046】
図5は、第1の実施の形態に係る油圧制御装置におけるコントローラ150によるアンロード制御の処理内容を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、たとえば、図示しないイグニッションスイッチのオンにより開始され、図示しない初期設定を行った後、所定の制御周期ごとにステップS100以降の処理が繰り返し実行される。なお、初期設定では通常モードが設定される。
【0047】
ステップS100において、コントローラ150は、回転速度センサ191で検出された実エンジン回転速度Naの情報、および、設定モード(アンロードモード/通常モード)の情報を取得して、ステップS110へ進む。ステップS110において、コントローラ150は、設定されているモードがアンロードモードか否かを判定する。ステップS110で否定判定、すなわち通常モードが設定されていると判定されるとステップS120へ進む。ステップS110で肯定判定、すなわちアンロードモードが設定されていると判定されるとステップS130へ進む。
【0048】
ステップS120において、コントローラ150は、ステップS100で取得した実エンジン回転速度Naが閾値N1以下であるか否かを判定する。ステップS120で肯定判定されると、コントローラ150はアンロード条件が成立していると判定して、ステップS125へ進む。ステップS120で否定判定されると、コントローラ150はアンロード条件が成立していないと判定して、処理を終了する。
【0049】
ステップS125において、コントローラ150は、通常モードからアンロードモードにモードを切り換えるとともに、電磁切換弁103のソレノイド103aにオン信号を出力して、負荷掛け用切換弁102を位置(L)に切り換えて、処理を終了する。
【0050】
ステップS130において、コントローラ150は、ステップS100で取得した実エンジン回転速度Naが閾値N2以上であるか否かを判定する。ステップS130で肯定判定されると、コントローラ150は解除条件が成立していると判定して、ステップS135へ進む。ステップS130で否定判定されると、コントローラ150は解除条件が成立していないと判定して、処理を終了する。
【0051】
ステップS135において、コントローラ150は、アンロードモードから通常モードにモードを切り換えるとともに、電磁切換弁103のソレノイド103aにオフ信号を出力して、負荷掛け用切換弁102を位置(N)に切り換えて、処理を終了する。
【0052】
第1の実施の形態の動作について、荷役作業(トラックへの積み込み作業)を例に説明する。
オペレータは、アクセルペダル127およびステアリングホイール(不図示)を操作して、ホイールローダを前進走行させ、土砂を運搬するトラックにホイールローダを近づける。オペレータは、アーム操作レバーを上げ側に操作して、アーム111を積み込み高さまで上昇させた後、バケット操作レバーをダンプ側に操作して、バケット112を前傾方向に回動させ、すなわちダンプさせ、土砂をトラックへ放土する。
【0053】
ここで、アクセルペダル127が操作されていない状態で、アーム111を積み込み高さの上限まで上昇させた後、すなわちアームシリンダ117がストロークエンドまで動作した後にもアーム操作レバーが上げ側に操作されていると、作業用油圧回路HC1の回路圧、すなわち作業用ポンプ131の吐出圧Ppがメインリリーフ弁136の設定圧力Prまで上昇する。このとき、補機が駆動されていることに起因する負荷がエンジン190に作用していると、実エンジン回転速度Naがローアイドル回転速度NLよりも減少する。補機としては、コンプレッサがエンジン190と接続されたエアコンユニット169や、ブレーキ回路HC4のアキュムレータ145のチャージ圧を上昇させるチャージ圧制御装置等がある。チャージ圧制御装置は、チャージバルブ17と、パイロットポンプ132とを含んで構成される。
【0054】
実エンジン回転速度Naが閾値N1以下になると、アンロードモードが設定され、電磁切換弁103が位置(B)に切り換えられて負荷掛け用切換弁102が位置(L)に切り換えられる(ステップS120→S125)。作業用ポンプ131から吐出された圧油は、パラレル油路14を介して負荷掛け用切換弁102に流れ、絞り104を介してタンク139に排出される。その結果、作業用ポンプ131がアンロードされ、エンジン190の負荷が軽減するため、エンジンストールが防止される。
【0055】
なお、作業用油圧回路HC1の回路圧は、絞り104により、たとえば5MPa程にまで減少する。アンロード中はアームシリンダ117やバケットシリンダ115の作業性が低下するが、オペレータがアーム上げ操作を中断することで、実エンジン回転速度Naは直ちにローアイドル回転速度NLまで回復し、通常モードに復帰するため(ステップS130→S135)、アンロード動作が作業効率に与える影響は小さい。
【0056】
上述した第1の実施の形態による油圧制御装置によれば、次の作用効果が得られる。
(1)実エンジン回転速度Naがローアイドル回転速度NLよりも低いと判定されたとき、アンロード条件が成立していると判定し、負荷掛け用切換弁102を位置(L)に切り換えることで、作業用ポンプ131から吐出された圧油を絞り104を介してタンク139へ逃がすようにした。これにより、作業用ポンプ131の油圧負荷が軽減され、エンジン190の負荷が軽減されるため、エンジンストールの発生を防止することができる。
(2)フィルタ161の再生に用いる負荷掛け用切換弁102を利用して、作業用ポンプ131をアンロードすることができるため、アンロード手段を別に設ける必要がない。すなわち、部品点数を増加させることなく、エンジンストールの防止を実現できる。
(3)エンジンストールが発生する直前の状態を、実エンジン回転速度Naの検出により判断することができる。エンジンストールが発生し得る状況を的確に判断して、油圧ポンプをアンロードさせることで、無駄にアンロードさせることがなく、精度よくエンジンストールの発生を防止することができる。
【0057】
−第2の実施の形態−
図6および
図7を参照して、第2の実施の形態に係る油圧制御装置を説明する。なお、図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。第2の実施の形態に係るホイールローダは、第1の実施の形態に係るホイールローダと同様の構成を有している(
図2参照)。
【0058】
第1の実施の形態(
図3参照)では、条件判定部152は、実エンジン回転速度Naが閾値N1以下となった場合に、アンロード条件が成立していると判定した。これに対して、第2の実施の形態では、
図6および
図7に示すように、条件判定部252は、実エンジン回転速度Naが閾値N1以下であり、かつ、作業用油圧回路HC1の回路圧、すなわち作業用ポンプ131の吐出圧Ppが閾値Pp1以上である場合に、アンロード条件が成立していると判定する。以下、詳しく説明する。
【0059】
図6は、第2の実施の形態に係る油圧制御装置におけるコントローラ250の機能を説明する機能ブロック図である。第2の実施の形態では、第1の実施の形態で説明したコントローラ150に代えて、コントローラ250を備えている。コントローラ250は、第1の実施の形態(
図3参照)で説明したコントローラ150の条件判定部152に代えて条件判定部252を備え、さらに回路圧判定部258を機能的に備えている。
【0060】
回路圧判定部258は、第1圧力センサ131pにより検出された圧力Ppが閾値Pp1以上であるか否かを判定する。閾値Pp1は、エンジンストールを防止するために設定される。本実施の形態では、閾値Pp1はメインリリーフ弁136の設定圧力Pr(たとえば、20MPa)よりも低い値(たとえば、16MPa)に設定され、予め記憶装置に記憶されている(Pp1<Pr)。
【0061】
条件判定部252は、通常モードが設定されている場合において、速度判定部157により実エンジン回転速度Naが閾値N1以下であると判定され(Na≦N1)、かつ、回路圧判定部258により圧力Ppが閾値Pp1以上であると判定されたとき(Pp≧Pp1)には、アンロード条件が成立していると判定してモードをアンロードモードに変更する。条件判定部252は、通常モードが設定されている場合において、速度判定部157により実エンジン回転速度Naが閾値N1よりも高いと判定されたとき(Na>N1)、あるいは、回路圧判定部258により圧力Ppが閾値Pp1未満であると判定されたとき(Pp<Pp1)には、アンロード条件が成立していないと判定して通常モードを維持する。
【0062】
図7は、第2の実施の形態に係る油圧制御装置におけるコントローラ250によるアンロード制御の処理内容を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、たとえば、図示しないイグニッションスイッチのオンにより開始され、図示しない初期設定を行った後、所定の制御周期ごとにステップS200以降の処理が繰り返し実行される。なお、初期設定では通常モードが設定される。
【0063】
図7のフローチャートは、
図5のフローチャートのステップS100に代えてステップS200の処理を追加し、ステップS120とステップS125との間にステップS223の処理を追加したものである。
【0064】
ステップS200において、コントローラ250は、回転速度センサ191で検出された実エンジン回転速度Naの情報、第1圧力センサ131pで検出された圧力Ppの情報、および、設定モード(アンロードモード/通常モード)の情報を取得して、ステップS110へ進む。
【0065】
ステップS120(速度判定処理)において肯定判定されると、ステップS223へ進む。ステップS223において、コントローラ250は、ステップS200で取得した圧力Ppが閾値Pp1以上であるか否かを判定する。ステップS223で肯定判定されると、コントローラ250はアンロード条件が成立していると判定して、ステップS125へ進む。ステップS223で否定判定されると、コントローラ250はアンロード条件が成立していないと判定して、処理を終了する。
【0066】
第2の実施の形態では、ステップS120(速度判定処理)およびステップS223(圧力判定処理)のすべての処理で肯定判定されると、コントローラ250はアンロード条件が成立していると判定して、ステップS125(アンロードモード設定処理)を実行する。一方、ステップS120(速度判定処理)およびステップS223(圧力判定処理)のいずれかの処理で否定判定されると、コントローラ250はアンロード条件が成立していないと判定して、処理を終了する。なお、ステップS120、ステップS223の処理を実行する順番は逆であってもよいし、同時に処理を実行してもよい。
【0067】
このような第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明した作用効果に加え、次の(4)のような作用効果を奏する。
(4)エンジンストールが発生する可能性の高い状態であることを、実エンジン回転速度Naと、作業用油圧回路HC1の圧力Pp(作業用ポンプ131の吐出圧)とにより判断することができる。これにより、第1の実施の形態に比べて、より精度よくエンジンストールの発生を防止することができる。
【0068】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
上述した実施の形態では、作業用ポンプ131を介してエンジン190に作用する負荷を上昇させる再生用の負荷掛け手段、すなわち、方向制御弁11,12とはパラレル油路14によりパラレルに接続される負荷掛け用切換弁102と、負荷掛け用切換弁102とタンク139との間に設けられた絞り104とをアンロード手段として用いる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0069】
図8は、変形例1に係る油圧制御装置を備えたホイールローダの概略構成を示す図である。図中、第1の実施の形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。変形例1に係るホイールローダは、作業用ポンプ131の吐出圧の最高圧力を規定するメインリリーフ弁336が、コントローラ150の制御信号に応じて設定圧力が変更される可変リリーフ弁とされている。変形例1では、再生用負荷掛け手段を備えておらず、メインリリーフ弁336がアンロード手段として機能する。
【0070】
変形例1では、弁制御部153は、条件判定部152によりアンロード条件が成立していないと判定されたとき、すなわち通常モードが設定されているときにはメインリリーフ弁336の設定圧力が第1リリーフセット圧PS1となるように、制御信号をメインリリーフ弁336に出力する。弁制御部153は、条件判定部152によりアンロード条件が成立していると判定されたとき、すなわちアンロードモードが設定されているときにはメインリリーフ弁336の設定圧力が第2リリーフセット圧PS2となるように、制御信号をメインリリーフ弁336に出力する。
【0071】
第1リリーフセット圧PS1は、作業用油圧回路HC1を保護するために、たとえば、20MPaに設定され、予め記憶装置に記憶されている。第2リリーフセット圧PS2は、第1リリーフセット圧PS1よりも低い値であり、エンジンストールの発生を防止するために、たとえば、5MPaに設定され、予め記憶装置に記憶されている。
【0072】
このような変形例1によれば、第1の実施の形態で説明した(1)および(3)作用効果に加え、次の(5)のような作用効果を奏する。
(5)回路保護用のメインリリーフ弁336を利用して、作業用ポンプ131をアンロードすることができるため、アンロード手段を別に設ける必要がない。すなわち、部品点数を増加させることなく、エンジンストールの防止を実現できる。
【0073】
(変形例2)
アンロード手段は、上述した実施の形態や変形例1に限定されない。たとえば、アンロード条件が成立したときに、作業用ポンプ131から吐出した圧油をタンク139に導くように切り換えられる切換弁をアンロード手段として設けるようにしてもよい。
【0074】
(変形例3)
第2の実施の形態では、実エンジン回転速度Naが閾値N1以下であり、かつ、作業用ポンプ131の吐出圧Ppが閾値Pp1以上であると判定されたときに、アンロードモードを設定する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0075】
たとえば、閾値N1に代えて、ローアイドル回転速度NLと同じ値や、ローアイドル回転速度NLよりも僅かに高い値を閾値N3として用いてもよい。この場合、解除条件としては、実エンジン回転速度Naが閾値N3よりも高い閾値N4以上となったときとすることができる。また、解除条件としては、作業用ポンプ131の吐出圧Ppが閾値Pp1よりも低い閾値Pp2以下となった状態が所定時間経過したときとすることもできる。解除スイッチにより、アンロードモードから通常モードに移行させるようにしてもよい。
さらに、この場合、実エンジン回転速度に代えて、目標エンジン回転速度Ntを用いてアンロード条件が成立しているか否かを判定するようにしてもよい。すなわち、目標エンジン回転速度Ntが閾値N3以下であり、かつ、作業用ポンプ131の吐出圧Ppが閾値Pp1以上であると判定されたときに、アンロードモードを設定するようにしてもよい。さらにまた、目標エンジン回転速度Ntに代えて、アクセルペダル127の操作量Sを用いてアンロード条件の成立を判定してもよい。
【0076】
(変形例4)
上述した実施の形態では、2種類のアクチュエータ(アームシリンダ、バケットシリンダ)を備えた作業車両を例について説明したが、本発明はこれに限定されない。少なくとも1種類の作業機用のアクチュエータを備える作業車両に本発明を適用することができる。
【0077】
(変形例5)
上述した実施の形態では、荷役作業におけるエンジンストールの発生を防止する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明によれば、たとえば、エンジン190により、エアコンユニット169やチャージ圧制御装置等の補機が駆動され、エンジン190に負荷が作用した状態で、掘削作業中に、アクセルペダル127を踏みなおしたときなどに発生し得るエンジンストールを防止することもできる。
【0078】
(変形例6)
上述した実施の形態では、HST走行回路HC2を備えたHST駆動形式のホイールローダを例に説明したが、本発明はこれに限定されない。トルクコンバータ(トルコン)を介してエンジン出力をトランスミッションに伝達させる、いわゆるトルコン駆動形式の作業車両の油圧制御装置に本発明を適用することもできる。
【0079】
(変形例7)
上述した実施の形態では、ホイールローダに本発明を適用した例について説明したが、これに限定されることなく、油圧ショベルやフォークリフト、クレーン等の種々の作業車両の油圧制御装置に本発明を適用することができる。
【0080】
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。