(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0012】
本発明の実施形態に係る電子写真感光体(以下、単に「感光体」とも称する。)は、導電性基体と、上記導電性基体上に直接もしくは下引き層(中間層)を介して形成された感光層とを備え、上記感光層は、少なくとも電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダ樹脂とを含有している。
【0013】
本実施形態においては、上記正孔輸送剤が、上記一般式(I)又は一般式(II)で示されるパラ−ターフェニル誘導体を含有することを特徴とする。
【0014】
≪電子写真感光体(感光体)≫
本実施形態に係る電子写真感光体は、上記構成を満たしていれば、すなわち、感光層中の正孔輸送剤が、上記一般式(I)又は一般式(II)で示されるパラ−ターフェニル誘導体を含有していれば、その他は特に限定されない。例えば、上記感光層が、電荷発生剤、正孔輸送剤や電子輸送剤等の電荷輸送剤、及びバインダ樹脂が同一層に含有される層である感光体、いわゆる単層型感光体であってもよい。また、上記感光層が、電荷発生剤及び結着樹脂を含有する電荷発生層と、正孔輸送剤や電子輸送剤等の電荷輸送剤及びバインダ樹脂を含有する電荷輸送層との少なくとも2つの層を積層したものである感光体、いわゆる積層型感光体であってもよい。
【0015】
なお、電荷発生層に結着樹脂を用いる場合はその結着樹脂をベース樹脂と呼び、電荷輸送層に用いる結着樹脂を前述の単層感光体に用いる結着樹脂と同様、バインダ樹脂と呼ぶ。
【0016】
上記単層型感光体は、導電性基体と、上記導電性基体上に、感光層として、電荷発生剤、電荷輸送剤、及びバインダ樹脂が同一層に含有される層とが備えられたものである。そして、上記単層型感光体は、上記導電性基体と、上記感光層とを備えていれば、上記導電性基体上に上記感光層を直接備えていてもよいし、上記導電性基体と上記感光層との間に下引き層としての中間層を備えていてもよい。また、上記感光層が最外層となって露出していてもよいし、上記感光層上に保護層を備えていてもよい。
【0017】
次に、上記積層型感光体は、導電性基体と、上記導電性基体上に、感光層として、電荷発生剤及びベース樹脂を含有する電荷発生層と、電荷輸送剤及びバインダ樹脂を含有する電荷輸送層との少なくとも2つの層を積層した層とが備えられたものである。そして、上記積層型感光体は、上記導電性基体と、上記電荷発生層及び上記電荷輸送層を積層した感光層とを備えていれば、特に限定されない。具体的には、上記積層型感光体は、上記導電性基体上に、上記電荷発生層及び上記電荷輸送層の順で積層したものであってもよいし、上記導電性基体上に、上記電荷輸送層及び上記電荷発生層の順で積層したものであってもよい。また、上記導電性基体上に上記感光層を直接備えていてもよいし、上記導電性基体と上記感光層との間に中間層を備えていてもよい。また、上記電荷輸送層と上記電荷発生層との間に下引き層としての中間層を備えていてもよい。また、上記感光層が最外層となって露出していてもよいし、上記感光層上に保護層を備えていてもよい。
【0018】
また、上記感光体は、上記構成を満たしていれば、すなわち、上記感光層中の正孔輸送剤に、上記一般式(I)又は一般式(II)で示されるパラ−ターフェニル誘導体が含有された感光体であれば、電気特性及び耐摩耗性に優れた感光体が得られる。そして、感光体の構造としては、上述したような、単層型感光体、及び積層型感光体が挙げられる。
【0019】
〔導電性基体〕
上記導電性基体は、電子写真感光体の導電性基体として用いることができるものであれば、特に限定されず、例えば、導電性を有する材料で少なくとも表面部が構成されるもの等が挙げられる。具体的には、導電性を有する材料からなるものであってもよいし、プラスチック材料等の表面を、導電性を有する材料で被覆されたものであってもよい。また、導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドニウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等が挙げられる。また、導電性を有する材料としては、上記導電性を有する材料を1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて、例えば、合金等として用いてもよい。また、上記導電性基体としては、上記の中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが好ましく、より好適な画像を形成することができる電子写真感光体を提供することができる。このことは、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることによると考えられる。
【0020】
上記導電性基体の形状は、特に限定されず、適用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状であっても、ドラム状であってもよい。
【0021】
〔感光層〕
上記単層感光体は、少なくとも電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダ樹脂とを含む一つの感光層を有し、上記積層感光体の感光層としては少なくとも電荷発生剤を含む電荷発生層と、少なくとも正孔輸送剤及びバインダ樹脂を含む電荷輸送層からなる。本実施形態における正孔輸送剤は、後述する一般式(I)又は(II)で示されるパラ−ターフェニル誘導体を含有している。
【0022】
(結着樹脂)
感光体に用いる結着樹脂としては、前述のように単層感光体の感光層もしくは積層感光体の電荷輸送層に用いるバインダ樹脂と、積層感光体の電荷発生層に用いる場合のベース樹脂がある。
【0023】
前記バインダ樹脂は、単層型感光体の感光層及び積層型感光体の電荷輸送層に含まれる結着樹脂として用いることができるものであれば、特に限定されないが、下記一般式(III)又は(IV)で示される骨格のいずれかを有するポリカーボネート樹脂、もしくは下記一般式(V)又は(VI)で示される骨格のいずれかを有するポリアリレート樹脂が好ましい。
【0024】
【化3】
〔式中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、メチル基又は水素原子を示す。〕
【0025】
【化4】
〔式中、R
3は、メチル基又は水素原子を示し、R
4及びR
5は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。n、p及びqは整数を示す。〕
【0026】
上記一般式(III)又は(IV)で示される骨格のいずれかを有するポリカーボネート樹脂、もしくは上記一般式(V)又は(VI)で示される骨格のいずれかを有するポリアリレート樹脂は、種々の製造方法により製造することができる。
【0027】
なお、本実施形態におけるバインダ樹脂には、上記ポリカーボネート樹脂もしくはポリアリレート樹脂以外の樹脂を、本発明の効果を損なわない範囲で加えてもよい。その他の樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂や、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、さらにエポキシアクリレート樹脂、ウレタン−アクリレート共重合樹脂等の光硬化性樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
また、前記ベース樹脂は、積層型感光体の電荷発生層に含まれる結着樹脂として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタン−アクリレート樹脂等が挙げられる。また、前記ベース樹脂としては、前記例示した各ベース樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
なお、前記ベース樹脂は、前記バインダ樹脂と同様のものも例示されているが、同一の感光体においては、通常、バインダ樹脂とは異なる樹脂が選択される。このことは、以下のことによる。積層型感光体を製造する際、通常、電荷発生層、電荷輸送層の順に形成するので、電荷発生層に、電荷輸送層形成用塗布液を塗布することになる。そのため、電荷発生層は、電荷輸送層形成用塗布液の溶剤に溶解しないことが求められる。このため、電荷発生層に含まれる結着樹脂であるベース樹脂は、同一の感光体においては、通常、バインダ樹脂とは異なる樹脂が選択される。
【0030】
(電荷発生剤)
上記電荷発生剤としては、電子写真感光体の電荷発生剤として用いることができるものであれば、特に限定されず、例えば、X型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)、Y型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光導電材料の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。
【0031】
また、上記電荷発生剤は、所望の領域に吸収波長を有するように、上記各電荷発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、上記各電荷発生剤のうち、特に半導体レーザー等の光源を使用したレーザービームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、X型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)等の無金属フタロシアニンやY型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)等のオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。なお、上記フタロシアニン系顔料の結晶形については、特に限定されず、種々のものが使用される。
【0032】
また、350〜550nmの短波長レーザー光源を用いた画像形成装置の場合には、上記電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料、ペリレン系顔料が使用される。
【0033】
(電荷輸送剤)
上記電荷輸送剤としては、一般的に、正孔輸送剤と、電子輸送剤とが挙げられる。
【0034】
本実施形態における正孔輸送剤は、下記一般式(I)又は一般式(II)で示されるパラ−ターフェニル誘導体を含有する。
【0035】
【化5】
〔式中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有してもよいアリール基を示す。R
3〜R
7は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又は置換基を有してもよいアリール基を示す。また、R
3〜R
7は互いに隣接する基同士が結合して環を形成してもよい。〕
【0036】
【化6】
〔式中、R
11及びR
12は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有してもよいアリール基を示す。R
13〜R
17は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルコキシ基又は置換基を有してもよいアリール基を示す。また、R
13〜R
17は互いに隣接する基同士が結合して環を形成してもよい。〕
【0037】
ここでのアルキル基とは、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、ヘプチル、オクチル等が挙げられる。アルキル基の炭素数は、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6である。
【0038】
また、上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポシキ基、イソプロポシキ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘトキシ基、n−ヘプトキシ基、n−オクトキシ基等が挙げられる。アルコキシ基の炭素数は、好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6である。これで結構です。
【0039】
本実施形態においては、上記一般式(I)中のR
3〜R
7は、炭素数2以上のアルキル基又は炭素数2以上のアルコキシ基が好ましく、上記一般式(II)中のR
13〜R
17は、炭素数2以上のアルキル基又は炭素数2以上のアルコキシ基が好ましい。
【0040】
また、上記一般式(I)中のR
3は、アルキル基又はアルコキシ基が好ましく、特に好ましくは炭素数2以上のアルキル基又は炭素数2以上のアルコキシ基である。上記一般式(II)中のR
13は、アルキル基又はアルコキシ基が好ましく、特に好ましくは炭素数2以上のアルキル基又は炭素数2以上のアルコキシ基である。
【0041】
また、上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。また、上記アリール基は、置換基を有していてもよく、置換基数としては、1個以上であればよく、1〜3個であることが好ましい。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0042】
上記一般式(I)又は一般式(II)で示されるパラ−ターフェニル誘導体は、種々の製造方法により製造することができる。下記の式(HTM−1)で示されるパラ−ターフェニル誘導体は、例えば、つぎのようにして製造することができる。
【0043】
(第1のカップリング反応)
アミン化合物(Amine−1)1モルに対して、アリールハライド(AH−1)を1〜2モルの範囲内の値となるように添加し、ホスフィン化合物と、パラジウム化合物とを含む触媒の存在下にて、80〜140℃で1〜8時間撹拌し、次いで、得られた反応液に対して、トルエン等による抽出処理をして、ジアリールアミン化合物(DAA−1)を得ることができる。
【0045】
(第2のカップリング反応)
次に上記ジアリールアミン化合物(DAA−1)1モルに対して、アリールハライドを1〜2モルの範囲内の値となるように添加し、ホスフィン化合物と、パラジウム化合物とを含む触媒の存在下にて、80〜140℃で1〜8時間撹拌し、次いで、得られた反応液に対して、トルエン等による抽出処理をして、トリアリールアミン構造を有する化合物(HTM−1)を得ることができる。
【0047】
なお、本実施形態における正孔輸送剤には、上記化合物以外の正孔輸送剤を、本発明の効果を損なわない範囲で加えてもよい。その他の正孔輸送剤としては、例えば、ベンジジン誘導体、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等が挙げられる。この中でも、トリフェニルアミン系化合物やベンジジン誘導体が好ましく、ベンジジン誘導体がより好ましい。また、これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
ここで、本実施形態における上記感光層中の正孔輸送剤(正孔輸送剤の総重量)と、バインダ樹脂(バインダ樹脂の総重量)との重量比率(正孔輸送剤/バインダ樹脂)は、耐摩耗性の観点から、0.55以下が好ましく、特に好ましくは0.45以下である。
【0049】
また、上記電子輸送剤としては、電子写真感光体の感光層に含まれる電子輸送剤として用いることができるものであれば、特に限定されないが、ケトン構造又はジシアノメチレン構造を有する化合物が好ましい。
【0050】
上記ケトン構造又はジシアノメチレン構造を有する化合物としては、例えば、下記一般式で示される化合物が挙げられる。
【0051】
【化9】
〔式中、R
1〜R
6は、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基もしくは炭素数6〜12のアリール基、又はハロゲン原子を示す。
【0052】
ここでの炭素数1〜8のアルキル基とは、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、ヘプチル、オクチル等が挙げられる。アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。置換基数としては、1個以上であればよく、1〜3個であることが好ましい。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0053】
また、上記炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。また、上記アリール基は、置換基を有していてもよく、置換基数としては、1個以上であればよく、1〜3個であることが好ましい。置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0054】
また、上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子下等が挙げられる。
【0055】
(添加剤)
上記感光体には、電子写真特性及び耐摩耗性に悪影響を与えない範囲で、上記電荷発生剤、上記電荷輸送剤、及び結着樹脂以外の各種添加剤を含有してもよい。上記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、及びレベリング剤等が挙げられる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0056】
≪電子写真感光体の製造方法≫
次に、電子写真感光体の製造方法について説明する。
【0057】
まず、上記単層型感光体の製造方法について説明する。
【0058】
上記単層型感光体は、上記電荷発生剤、上記電荷輸送剤(正孔輸送剤、電子輸送剤)、上記バインダ樹脂、及び必要に応じて各種添加剤等を溶剤に溶解又は分散させた塗布液を、塗布等によって、上記導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、製造することができる。上記塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、ディップコート法等が挙げられる。
【0059】
上記単層型感光体において、上記電荷発生剤、上記電荷輸送剤、及び上記バインダ樹脂の各含有量は、適宜選定され、上記電荷発生剤の含有量は、バインダ樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることがより好ましい。また、上記電子輸送剤の含有量は、バインダ樹脂100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、10〜80質量部であることがより好ましい。また、上記正孔輸送剤の含有量は、バインダ樹脂100質量部に対して、5〜500質量部であることが好ましく、25〜200質量部であることがより好ましい。さらに、正孔輸送剤と電子輸送剤との総量、すなわち、上記電荷輸送剤の含有量は、バインダ樹脂100質量部に対して、20〜500質量部であることが好ましく、30〜200質量部であることがより好ましい。
【0060】
また、上記単層型感光体の感光層の厚さは、感光層として充分に作用することができれば、特に限定されず、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることが好ましい。
【0061】
次に、上記積層型感光体の製造方法について説明する。
【0062】
上記積層型感光体は、以下のような方法等によって、製造することができる。
【0063】
具体的には、まず、上記電荷発生剤、ベース樹脂、及び必要に応じて各種添加剤等を溶剤に溶解又は分散させた電荷発生層形成用塗布液と、上記電荷輸送剤、バインダ樹脂、及び必要に応じて各種添加剤等を溶剤に溶解又は分散させた電荷輸送層形成用塗布液とを調製する。そして、上記電荷発生層形成用塗布液及び上記電荷輸送層形成用塗布液のいずれか一方の塗布液を、塗布等によって、上記導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、上記電荷発生層及び上記電荷輸送層のいずれか一方を形成させる。その後、他方の塗布液を、上記電荷発生層又は上記電荷輸送層が形成された導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、他方の層を形成させる。このようにして、上記積層型感光体を製造することができる。上記塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、ディップコート法等が挙げられる。
【0064】
上記積層型感光体において、上記電荷発生剤、上記電荷輸送剤、上記ベース樹脂及び上記バインダ樹脂の各含有量は、適宜選定され、特に限定されず、上記電荷発生剤の含有量は、上記電荷発生層を構成するベース樹脂100質量部に対して、5〜1000質量部であることが好ましく、30〜500質量部であることがより好ましい。
【0065】
また、上記電荷輸送剤の含有量は、上記電荷輸送層を構成するバインダ樹脂100質量部に対して、10〜500質量部であることが好ましく、25〜100質量部であることがより好ましい。
【0066】
また、上記電荷発生層及び上記電荷輸送層の各層の厚さは、それぞれの層として充分に作用することができれば、特に限定されない。上記電荷発生層の厚さは、0.01〜5μmであることが好ましく、0.1〜3μmであることがより好ましい。また、上記電荷輸送層の厚さは、2〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。
【0067】
また、上記塗布液に含有される溶剤としては、上記各成分を溶解又は分散させることができれば、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン(例えば、o−キシレン)等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、1,4−ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの中でも、トルエン、1,4−ジオキサン、o−キシレンが特に好ましい。これらの溶剤は、上記例示した溶剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
上記電子写真感光体は、電子写真方式の画像形成装置の像担持体として用いることができる。また、この画像形成装置としては、電子写真方式のものであれば、特に限定されない。上記電子写真感光体は、例えば、画像形成装置の像担持体として用いることができる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0070】
〔正孔輸送剤の合成〕
上述の正孔輸送剤の合成に準じて、下記式(HTM−1)〜(HTM−9)で示される化合物をそれぞれ合成した。また、比較例で使用する正孔輸送剤として、(HTM−8)及び(HTM−9)で示される化合物をそれぞれ合成した。
【0071】
【化10】
【0072】
〔バインダ樹脂の合成〕
下記式(R−1)〜(R−4)で示されるバインダ樹脂をそれぞれ合成した。
【0073】
【化11】
【0074】
〔電子輸送剤の合成〕
下記式(ETM−1)〜(ETM−11)で示される電子輸送剤をそれぞれ合成した。
【0075】
【化12】
【0076】
〔実施例1〕
(下引き層)
アルミナとシリカとで表面処理した後、湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンにて表面処理した酸化チタン(テイカ社製、試作品SMT−A(数平均一次粒子径10nm))2質量部と、6,12,66,610−四元共重合ポリアミド樹脂(東レ社製、アミランCM8000)1質量部とを、メタノール10質量部、ブタノール1質量部及びトルエン1質量部をビーズミルを用いて5時間分散させ、下引き層用塗布液を調製した。得られた下引き層用塗布液を、5ミクロンのフィルタにてろ過した後、導電性支持体であるアルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長246mm)上に、ディップコート法にて塗布し、130℃で30分間熱処理して、膜厚2μmの下引き層を形成した。
【0077】
(電荷発生層)
チタニルフタロシアニン1.5質量部、バインダ樹脂としてポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業社製、エスレックBX−5)1質量部、分散媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル40質量部、テトラヒドロフラン40質量部を混合し、ビーズミルにて2時間分散させ、電荷発生層用塗布液を調製した。得られた電荷発生層用塗布液を、3ミクロンのフィルタにてろ過した後、上記で作製した下引き層上にディップコート法にて塗布し、50℃で5分間乾燥して、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0078】
(電荷輸送層)
正孔輸送剤として上記式(HTM−1)で示される化合物45質量部と、添加剤としてイルガノックス1010 0.5質量部、電子輸送剤として上記式(ETM−1)で示される化合物2質量部、レベリング剤としてジメチルシリコーンオイル(信越化学工業製、KF−96−100CS)0.1質量部、バインダ樹脂として上記ポリカーボネート樹脂(R−1、粘度平均分子量50,500)100質量部、溶剤としてテトラヒドロフラン500質量部及びトルエン200質量部を混合溶解して、電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた電荷輸送層用塗布液を、3ミクロンのフィルタにてろ過した後、上記電荷発生層上に塗布し、120℃で40分間乾燥して、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。このようにして、導電性支持体上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層が順次形成されてなる積層型電子写真感光体を作製した。
【0079】
〔実施例2〜6、比較例1,2〕
正孔輸送剤として上記式(HTM−1)で示される化合物に代えて、下記表1及び表2に示す式(HTM−2)〜(HTM−8)で示される化合物をそれぞれ使用した以外は、実施例1に準じて、導電性支持体上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層が順次形成されてなる積層型電子写真感光体を作製した。
【0080】
〔実施例7〜9〕
バインダ樹脂として上記式(R−1)で示されるポリカーボネート樹脂に代えて、下記表1に示す式(R−2)で示されるポリカーボネート樹脂、もしくは式(R−3)、(R−4)で示されるポリアリレート樹脂をそれぞれ使用した以外は、実施例1に準じて、導電性支持体上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層が順次形成されてなる積層型電子写真感光体を作製した。
【0081】
〔実施例10〜19〕
電子輸送剤として上記式(ETM−1)で示される化合物に代えて、下記表1及び表2に示す式(ETM−2)〜(ETM−11)で示される化合物をそれぞれ使用した以外は、実施例1に準じて、導電性支持体上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層が順次形成されてなる積層型電子写真感光体を作製した。
【0082】
〔実施例20〜22、24〕
上記式(HTM−1)で示される正孔輸送剤と、(R−1)で示されるポリカーボネート樹脂との重量比率を、下記表2に示す値にそれぞれ変更した以外は、実施例1に準じて、導電性支持体上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層が順次形成されてなる積層型電子写真感光体を作製した。
【0083】
〔実施例23〕
電子輸送剤を配合しなかった以外は、実施例1に準じて、導電性支持体上に、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層が順次形成されてなる積層型電子写真感光体を作製した。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
≪評価≫
実施例及び比較例の電子写真感光体を用いて、下記の基準に従い、各種評価を行った。これらの結果を、上記表1及び表2に併せて示した。
【0087】
(電気特性評価)
作製した電子写真感光体を、電気特性試験機(GENTEC社製)を用いて、以下の条件にて帯電能及び感度を測定した。
測定環境:10℃×15%
帯電:回転数:31rpm ドラム流れ込み電流:−10μA時の表面電位(V
0)
感度:帯電450V時 露光波長:780nm 露光量:0.20J/cm
2
露光後時間40msec後の表面電位(V
L)
【0088】
(摩耗評価試験)
実施例及び比較例の電子写真感光体用に調製した、それぞれの電荷輸送層用塗布液を用いて、摩耗評価を行った。
【0089】
まず、調製した電荷輸送層用塗布液を、φ78アルミパイプに巻きつけたPP(ポリプロピレン)シート(厚さ0.3mm)に塗布し、120℃にて40分間乾燥し、膜厚30μmの摩耗評価用のシートを作製した。
【0090】
このPPシートから電荷輸送層を剥離し、ウイールS−36(テーバー社製)に貼り付け、サンプルを作製した。このサンプルをロータリーアブレージョンテスタ(東洋精機製作社製)を用いて、摩耗輪C−10(テーバー社製)、荷重500gf、回転速度60rpmにて1000回転摩耗試験を実施し、摩耗試験前後のサンプルの重量変化(摩耗減量)にて摩耗性を評価した。
【0091】
上記表1及び表2の結果から、実施例1〜24は、正孔輸送剤として上記式(HTM−1)〜(HTM−6)で示される化合物を含有するため、上記式(HTM−7)又は(HTM−8)で示される化合物を含有する比較例1,2と比較して、電気特性に優れていた。また、実施例1〜24は、結晶化せずドラム外観も良好で、耐摩耗性にも優れていた。
【0092】
また、実施例1〜23は、HTM/バインダ樹脂比が0.55以下であるため、HTM/バインダ樹脂比が0.65である実施例24と比較して、耐摩耗性がさらに優れていた。