特許第6175405号(P6175405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6175405
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
   E02F9/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-112942(P2014-112942)
(22)【出願日】2014年5月30日
(65)【公開番号】特開2015-227555(P2015-227555A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2016年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100079441
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 和彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健
(72)【発明者】
【氏名】吉田 新一郎
(72)【発明者】
【氏名】納谷 到
(72)【発明者】
【氏名】吉原 重之
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−107230(JP,A)
【文献】 特開2012−202066(JP,A)
【文献】 特開2002−227241(JP,A)
【文献】 特開平07−245089(JP,A)
【文献】 特開2000−142127(JP,A)
【文献】 特開2012−041819(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0012337(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
E02F 9/08
E02F 9/20
H01M 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前側に設けられ油圧アクチュエータによって駆動される作業装置と備えられ
前記上部旋回体は、
支持構造体を形成する旋回フレームと、
該旋回フレームの後部側に位置して該旋回フレーム上に設けられたエンジンと、
該エンジンによって駆動され前記油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプと、
前記エンジンと前記油圧ポンプとに連結され発電機作用と電動機作用とを行うアシスト発電・電動機と、
外部の空気を冷却風として吸込みつつ、前記エンジンに向けて該冷却風を供給する冷却ファンと、
該冷却ファンよりも前記冷却風の流れ方向の上流側に位置して前記旋回フレーム上に設けられ前記冷却風によって流体を冷却する熱交換器と、
該熱交換器よりも前記冷却風の流れ方向の上流側に位置して前記旋回フレーム上に配設され前記アシスト発電・電動機による発電電力を充電し、または充電された電力を放電する蓄電装置と備えられた建設機械において、
前記蓄電装置は、外殻を構成する箱状のケーシングと、該ケーシングの内部に設けられ電解液が収容された電池モジュールとを有し、
前記ケーシングには、前記電池モジュールの異常時に該電池モジュールから噴出した電解液ミストおよび/または電解液を前記上部旋回体の外部へと排出する電解液排出管路設けられ、
前記電解液排出管路は、基端側が前記蓄電装置の前記ケーシングに接続され、先端側が前記旋回フレームの下面側に向けて開口することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前側に設けられ油圧アクチュエータによって駆動される作業装置と備えられ
前記上部旋回体は、
支持構造体を形成する旋回フレームと、
該旋回フレームの後部側に位置して該旋回フレーム上に設けられたエンジンと、
該エンジンによって駆動され前記油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプと、
前記エンジンと前記油圧ポンプとに連結され発電機作用と電動機作用とを行うアシスト発電・電動機と、
外部の空気を冷却風として吸込みつつ、前記エンジンに向けて該冷却風を供給する冷却ファンと、
該冷却ファンよりも前記冷却風の流れ方向の上流側に位置して前記旋回フレーム上に設けられ前記冷却風によって流体を冷却する熱交換器と、
該熱交換器よりも前記冷却風の流れ方向の上流側に位置して前記旋回フレーム上に配設され前記アシスト発電・電動機による発電電力を充電し、または充電された電力を放電する蓄電装置と備えられた建設機械において、
前記蓄電装置は、外殻を構成する箱状のケーシングと、該ケーシングの内部に設けられ電解液が収容された電池モジュールとを有し、
前記ケーシングには、前記電池モジュールの異常時に該電池モジュールから噴出した電解液ミストおよび/または電解液を前記上部旋回体の外部へと排出する電解液排出管路設けられ、
前記旋回フレームには、前記エンジンの下方に位置して前記上部旋回体内に導入された前記冷却風を前記旋回フレームの下方へと排出する排出口が形成され、
前記電解液排出管路は、基端側が前記蓄電装置の前記ケーシングに接続され、先端側が前記エンジンを避けた位置で前記排出口内に配置されることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前側に設けられ油圧アクチュエータによって駆動される作業装置と備えられ
前記上部旋回体は、
支持構造体を形成する旋回フレームと、
該旋回フレームの後部側に位置して該旋回フレーム上に設けられたエンジンと、
該エンジンによって駆動され前記油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプと、
前記エンジンと前記油圧ポンプとに連結され発電機作用と電動機作用とを行うアシスト発電・電動機と、
外部の空気を冷却風として吸込みつつ、前記エンジンに向けて該冷却風を供給する冷却ファンと、
該冷却ファンよりも前記冷却風の流れ方向の上流側に位置して前記旋回フレーム上に設けられ前記冷却風によって流体を冷却する熱交換器と、
該熱交換器よりも前記冷却風の流れ方向の上流側に位置して前記旋回フレーム上に配設され前記アシスト発電・電動機による発電電力を充電し、または充電された電力を放電する蓄電装置と備えられた建設機械において、
前記蓄電装置は、外殻を構成する箱状のケーシングと、該ケーシングの内部に設けられ電解液が収容された電池モジュールとを有し、
前記ケーシングには、前記電池モジュールの異常時に該電池モジュールから噴出した電解液ミストおよび/または電解液を前記上部旋回体の外部へと排出する電解液排出管路設けられ、
前記旋回フレームには、前記電解液ミストおよび/または電解液を前記旋回フレームの外部に排出するための排出口が設けられ、
前記電解液排出管路は、基端側が前記蓄電装置の前記ケーシングに接続され、先端開口が前記排出口の近傍に配置され、
前記旋回フレームには、前記電解液排出管路の先端開口を取囲むと共に前記排出口のみに開口し、内部に電解液排出室を形成する閉塞箱体が設けられることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
前記蓄電装置の電池モジュールは、リチウムイオン電池として構成してなる請求項1,2またはに記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばエンジンとアシスト発電・電動機との2種類の動力源を有し、この2種類の動力源を状況に応じて適宜に使用するようにしたハイブリッド式の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の代表例である油圧ショベルは、燃費の向上、排気ガスの清浄化等を図るために、エンジンと、該エンジンの駆動をアシストするアシスト発電・電動機との2種類の動力源を備えることによりハイブリッド化されている。
【0003】
このハイブリッド化された油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体とにより車体が構成され、上部旋回体の前側には、油圧アクチュエータによって駆動される作業装置が設けられている。
【0004】
そして、上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、該旋回フレームの後部側に位置して該旋回フレーム上に設けられたエンジンと、該エンジンによって駆動され前記油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプと、前記エンジンと前記油圧ポンプとに連結され発電機作用と電動機作用とを行うアシスト発電・電動機と、前記エンジンを動力源として回転することにより外部の空気を冷却風として吸込みつつ、前記エンジンに向けて冷却風を供給する冷却ファンと、該冷却ファンよりも前記冷却風の流れ方向の上流側に位置して前記旋回フレーム上に設けられ前記冷却風によって流体を冷却する熱交換器と、該熱交換器よりも前記冷却風の流れ方向の上流側に位置して前記旋回フレーム上に配設され前記アシスト発電・電動機による発電電力を充電し、または充電された電力を放電する蓄電装置とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−327461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来技術による油圧ショベルでは、蓄電装置の温度上昇を抑えるために、蓄電装置を熱交換器よりも冷却風の流れ方向の上流側の高温になりにくい場所に配置することが提案されている。一般的に、油圧ショベルに用いられる蓄電装置は、外殻を構成する箱状のケーシングと、該ケーシングの内部に設けられた複数の電池モジュールとを有している。この電池モジュール内には、電解液が収容された複数の電池セルが配設されている。また、ケーシングには、該ケーシング内の気圧変化を抑えるために安全弁が設けられている。
【0007】
この場合、例えば蓄電装置の過充電等により、蓄電装置の電池モジュール(電池セル)から電解液が高温のミスト状となってケーシング内に噴出されると、ケーシングの安全弁から排出された電解液ミストは、冷却風の流れに乗って熱交換器、エンジン、発電・電動機、油圧ポンプ等に接触して発錆、損傷の原因となることがあり、これにより、これら機器の寿命が低下するという問題がある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、蓄電装置から放出された電解液ミストおよび/または電解液が他の機器に接触するのを低減させることができる建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため本発明は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前側に設けられ油圧アクチュエータによって駆動される作業装置と備えられ、前記上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、該旋回フレームの後部側に位置して該旋回フレーム上に設けられたエンジンと、該エンジンによって駆動され前記油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプと、前記エンジンと前記油圧ポンプとに連結され発電機作用と電動機作用とを行うアシスト発電・電動機と、外部の空気を冷却風として吸込みつつ、前記エンジンに向けて該冷却風を供給する冷却ファンと、該冷却ファンよりも前記冷却風の流れ方向の上流側に位置して前記旋回フレーム上に設けられ前記冷却風によって流体を冷却する熱交換器と、該熱交換器よりも前記冷却風の流れ方向の上流側に位置して前記旋回フレーム上に配設され前記アシスト発電・電動機による発電電力を充電し、または充電された電力を放電する蓄電装置と備えられた建設機械に適用される。
【0010】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記蓄電装置は、外殻を構成する箱状のケーシングと、該ケーシングの内部に設けられ電解液が収容された電池モジュールとを有し、前記ケーシングには、前記電池モジュールの異常時に該電池モジュールから噴出した電解液ミストおよび/または電解液を前記上部旋回体の外部へと排出する電解液排出管路設けられ、前記電解液排出管路は、基端側が前記蓄電装置の前記ケーシングに接続され、先端側が前記旋回フレームの下面側に向けて開口する構成としたことにある。
【0012】
請求項の発明が採用する構成の特徴は、前記蓄電装置は、外殻を構成する箱状のケーシングと、該ケーシングの内部に設けられ電解液が収容された電池モジュールとを有し、前記ケーシングには、前記電池モジュールの異常時に該電池モジュールから噴出した電解液ミストおよび/または電解液を前記上部旋回体の外部へと排出する電解液排出管路が設けられ、前記旋回フレームには、前記エンジンの下方に位置して前記上部旋回体内に導入された前記冷却風を前記旋回フレームの下方へと排出する排出口形成され、前記電解液排出管路は、基端側が前記蓄電装置の前記ケーシングに接続され、先端側が前記エンジンを避けた位置で前記排出口内に配置される構成としたことにある。
【0013】
請求項の発明が採用する構成の特徴は、前記蓄電装置は、外殻を構成する箱状のケーシングと、該ケーシングの内部に設けられ電解液が収容された電池モジュールとを有し、前記ケーシングには、前記電池モジュールの異常時に該電池モジュールから噴出した電解液ミストおよび/または電解液を前記上部旋回体の外部へと排出する電解液排出管路が設けられ、前記旋回フレームには、前記電解液ミストおよび/または電解液を前記旋回フレームの外部に排出するための排出口設けられ、前記電解液排出管路は、基端側が前記蓄電装置の前記ケーシングに接続され、先端開口前記排出口の近傍に配置され、前記旋回フレームには、前記電解液排出管路の先端開口を取囲むと共に前記排出口のみに開口し、内部に電解液排出室を形成する閉塞箱体設けられる構成としたことにある。
【0014】
請求項の発明は、前記蓄電装置の電池モジュールは、リチウムイオン電池として構成したことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1ないし3の発明によれば、蓄電装置は、熱交換器よりも冷却風の流れ方向の上流側の高温になりにくい場所に配設されているので、蓄電装置の劣化を抑制することができる。また、例えば蓄電装置の過充電等の異常時に、蓄電装置の電池モジュールから電解液ミストおよび/または電解液(以下、電解液成分という)が噴出した場合でも、この電解液成分は、蓄電装置のケーシングに設けられた電解液排出管路により上部旋回体(車体)の外部へと排出される。これにより、電解液成分が、熱交換器やエンジン等に接触するのを抑制することができるので、熱交換器やエンジン等の機器の寿命が低下するのを抑制することができる。
【0016】
特に、請求項の発明によれば、電解液排出管路の先端側を旋回フレームの下面側に向けて開口しているので、建設機械が旋回しても電解液成分が周囲に飛散されるのを抑制することができる。従って、例えば建設機械の周囲にある機器や作業している作業者等に、電解液成分が接触するのを抑制することができる。
【0017】
また、請求項の発明によれば、電解液排出管路の先端側は、冷却風の排出口内に配置されているので、電解液成分は、電解液排出管路の先端開口で上部旋回体(車体)内から外部へと流れる冷却風の流れに乗せて排出することができる。これにより、電解液成分は、電解液排出管路の先端開口で留まることを低減させることができ、効率よく排出させることができる。また、排出される電解液成分は、冷却風の流れに沿って拡散された状態で外部へと排出されるので、電解液成分を希薄化させることができる。これにより、建設機械の周囲に与える影響を低減させることができる。
【0018】
さらに、請求項の発明によれば、旋回フレームには、旋回フレームの排出口に開口した閉塞箱体が設けられており、電解液排出管路の先端開口は、内部に電解液排出室が形成された閉塞箱体に取囲まれている。これにより、電解液排出管路の先端開口から排出された電解液成分は、閉塞箱体の電解液排出室を介して排出口へと導かれるので、熱交換器やエンジン等の機器に接触したり、電解液成分が排出口から熱交換器やエンジン等の機器に向けて逆流したりするのを抑制することができる。さらに、電解液成分は、電解液排出管路から直接外部に排出されないので、建設機械の周囲に与える影響を低減させることができる。
【0019】
請求項の発明によれば、蓄電装置をリチウムイオン電池とすることにより、大容量とすることができるので、蓄電装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態による油圧ショベルを示す正面図である。
図2】旋回フレーム上にエンジン、アシスト発電・電動機、油圧ポンプ、熱交換器、蓄電装置等を取付けた状態を示す平面図である。
図3】エンジン、アシスト発電・電動機、油圧ポンプ、熱交換器、蓄電装置等を図2中の矢示III−III方向からみた断面図である。
図4図3中の蓄電装置を拡大して示す拡大図である。
図5】蓄電装置、熱交換器を図3中の矢示V−V方向からみた断面図である。
図6】ハイブリッド式油圧ショベルの動作系統を示す構成図である。
図7】本発明の第2の実施の形態による油圧ショベルを示す図2と同様の平面図である。
図8図7中の矢示VIII−VIII方向からみた図3と同様の断面図である。
図9】本発明の第3の実施の形態による油圧ショベルを示す図2と同様の平面図である。
図10図9中の矢示X−X方向からみた図3と同様の断面図である。
図11図10中のエンジンマウントを取外し閉塞箱体を拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を、エンジンとアシスト発電・電動機とを併用したハイブリッド式油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0022】
まず、図1ないし図6は、本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は建設機械の代表例としてのハイブリッド式油圧ショベルを示している。このハイブリッド式油圧ショベル1(以下、油圧ショベル1という)は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4とにより車体が構成されている。そして、上部旋回体4の前部側には作業装置5が俯仰動可能に設けられ、この作業装置5によって土砂の掘削作業等を行うものである。
【0023】
下部走行体2は、トラックフレーム2Aと、該トラックフレーム2Aの左,右両側に設けられた駆動輪2Bと、該駆動輪2Bと前,後方向の反対側に位置して前記トラックフレーム2Aの左,右両側に設けられた遊動輪2C(いずれも左側のみ図示)と、前記駆動輪2Bと遊動輪2Cとの間に巻回された履帯2Dとを含んで構成されている。左,右の駆動輪2Bは、油圧モータからなる左,右の走行用モータ2E,2F(図6参照)によって回転駆動され、これにより、下部走行体2は自走可能となっている。一方、トラックフレーム2Aの中央部の上側には、大径で短尺な筒体2Gが設けられ、該筒体2G上には、旋回装置3が取付けられている。
【0024】
作業装置5は、後述する旋回フレーム6に俯仰動可能に取付けられたブーム5Aと、該ブーム5Aの先端部に俯仰動可能に取付けられたアーム5Bと、該アーム5Bの先端部に回動可能に取付けられたバケット5Cと、これらを駆動する油圧アクチュエータとしての油圧シリンダからなるブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5Fとにより構成されている。
【0025】
上部旋回体4は、下部走行体2上に旋回可能に設けられ、後述の旋回フレーム6、キャブ7、カウンタウエイト8、建屋カバー9、エンジン10、油圧ポンプ11、アシスト発電・電動機12、冷却ファン17、熱交換器18、蓄電装置19等により構成されている。
【0026】
6は上部旋回体4のベースとなる旋回フレームで、該旋回フレーム6は、支持構造体として形成されている。そして、旋回フレーム6は、図2に示すように、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板6Aと、該底板6A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板6B,右縦板6Cと、該各縦板6B,6Cの左,右に間隔をもって配置され、前,後方向に延びた左サイドフレーム6D,右サイドフレーム6Eと、底板6Aおよび各縦板6B,6Cから左,右方向に張出し、その先端部に左,右のサイドフレーム6D,6Eを支持する複数本の張出しビーム6Fと、底板6Aと各サイドフレーム6D,6Eとの間、底板6Aの後側で左縦板6Bと右縦板6Cとの間に設けられた複数枚のアンダカバー6Gとにより大略構成されている。このアンダカバー6Gは、底板6Aと共に旋回フレーム6の下面を構成している。
【0027】
7は旋回フレーム6の左前側に搭載されたキャブ(図1参照)で、このキャブ7は、オペレータが搭乗するものである。また、キャブ7の内部には、オペレータが着座する運転席、各種操作レバー、空調装置の室内機等(いずれも図示せず)が配設されている。また、8は旋回フレーム6の後端部に取付けられたカウンタウエイト(図1参照)で、該カウンタウエイト8は、重量物として形成され、作業装置5との重量バランスをとるものである。
【0028】
9はキャブ7とカウンタウエイト8との間に位置して旋回フレーム6上に設けられた建屋カバーを示している。この建屋カバー9は、図3に示すように、旋回フレーム6の左,右両側に位置して前,後方向に延びた左側面板9A,右側面板9Bと、該各側面板9A,9Bの上端部間を水平方向に延びた上面板9Cと、該上面板9Cの開口部を覆うエンジンカバー9Dとにより大略構成されている。また、建屋カバー9の左側面板9Aには、後述の熱交換器18に供給する冷却風Fを流入させる流入口9Eが形成され、右側面板9Bには、後述のエンジン10等を通過した冷却風Fを外部に流出させる排出口9Fが形成されている。そして、建屋カバー9は、後述のエンジン10、油圧ポンプ11等を収容する機械室を画成している。
【0029】
10はカウンタウエイト8の前側に位置して旋回フレーム6の後部側に配設されたエンジンで、該エンジン10は、旋回フレーム6の左,右の縦板6B,6C上を左,右方向に延び、エンジンマウント10A上に防振マウントを介して横置き状態に配置されている。エンジン10には、排気ガスを排出するための排気管10Bが設けられ、該排気管10Bには、エンジン10の右側に位置して排気ガス後処理装置10Cが設けられている。この排気ガス後処理装置10Cは、エンジン10から排出される排気ガス中の有害物質を除去することができる。
【0030】
11はエンジン10の右端側に接続された油圧ポンプで、この油圧ポンプ11は、入力軸がエンジン10の出力軸と同軸に設けられ、該エンジン10によって駆動されるものである。これにより、油圧ポンプ11は、下部走行体2の各走行用モータ2E,2Fと作業装置5の各シリンダ5D,5E,5Fに圧油を供給するものである。即ち、油圧ポンプ11は、下部走行体2の各走行用モータ2E,2Fと作業装置5の各シリンダ5D,5E,5Fを駆動するための動力源として、作動油を昇圧して吐出するものである。
【0031】
12はエンジン10の右側に位置して該エンジン10と油圧ポンプ11とに連結されたアシスト発電・電動機で、このアシスト発電・電動機12は、エンジン10の出力軸と油圧ポンプ11の入力軸とに接続され、発電機作用と電動機作用とを行うものである。即ち、アシスト発電・電動機12は、エンジン10によって回転駆動することにより発電し、またはエンジン10に加えて油圧ポンプ11の駆動を補助するものである。アシスト発電・電動機12は、三相交流ケーブル13を介してアシスト用インバータ14に電気的に接続されている(図6参照)。
【0032】
15は旋回装置3の動力源を構成する旋回用発電・電動機を示している。この旋回用発電・電動機15は、旋回フレーム6の底板6Aのほぼ中央部に取付けられた電動モータからなり、減速機構15Aを介して旋回装置3に噛合する歯車(図示せず)を有している。旋回用発電・電動機15は、後述の蓄電装置19からの給電によって前記歯車を回転駆動することにより、旋回装置3を介して下部走行体2上で上部旋回体4を旋回動作させるものである。一方で、旋回用発電・電動機15は、旋回動作を減速するときに発生する回生エネルギを蓄電装置19に蓄えることができる。旋回用発電・電動機15は、三相交流ケーブル13を介して旋回用インバータ16に電気的に接続されている(図6参照)。
【0033】
この場合、油圧ショベル1は、その動作に応じてエンジン10やアシスト発電・電動機12および旋回用発電・電動機15を選択して駆動する。例えば、掘削時等の重負荷状態では、エンジン10の出力で油圧ポンプ11を駆動すると共に、後述の蓄電装置19の電力でアシスト発電・電動機12を駆動してエンジン10をアシストする。一方、例えば軽負荷状態では、エンジン10の余剰分の出力をアシスト発電・電動機12により電力に代えて、蓄電装置19に蓄電する。
【0034】
なお、旋回用発電・電動機15に加えて旋回油圧モータを併用してもよい。また、旋回用発電・電動機15に代えて旋回油圧モータのみで上部旋回体を旋回動作させてもよい。
【0035】
17はエンジン10の左側に設けられた冷却ファンで、この冷却ファン17は、エンジン10の出力軸(クランク軸)に連結され、エンジン10を動力源として回転駆動される。これにより、冷却ファン17は、建屋カバー9の左側面板9Aに設けられた流入口9Eを通じて建屋カバー9(上部旋回体4)内に外気を吸込み、この外気を冷却風Fとしてエンジン10、後述の熱交換器18に供給するものである。
【0036】
18は冷却ファン17よりも冷却風Fの流れ方向の上流側に位置して旋回フレーム6上に設けられた熱交換器で、この熱交換器18は、支持枠体18Aおよび該支持枠体18Aに支持されたラジエータ18B、オイルクーラ18C等からなる1つのユニットとして形成され、旋回フレーム6に着脱可能に取付けられるものである。熱交換器18は、冷却ファン17に対面して設けられ、エンジン冷却水、作動油等の加熱された液体(流体)を冷却するものである。
【0037】
具体的には、ラジエータ18Bは、エンジン10のウォータジャケットとの間で循環するエンジン冷却水の熱を冷却風F中に放熱することにより、加熱されたエンジン冷却水を冷却するものである。オイルクーラ18Cは、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータから後述の作動油タンク33に環流する作動油(戻り油)の熱を冷却風F中に放熱することにより、加熱された作動油を冷却するものである。
【0038】
次に、第1の実施の形態による蓄電装置19について説明する。
【0039】
19は熱交換器18よりも冷却風Fの流れ方向の上流側に位置して旋回フレーム上に配設された蓄電装置を示している。即ち、蓄電装置19は、建屋カバー9の左側面板9Aと熱交換器18との間に位置している。この蓄電装置19は、例えば水冷式または空冷式の蓄電装置で、アシスト発電・電動機12および旋回用発電・電動機15による発電電力を充電し、または充電された電力を放電するものである。そして、蓄電装置19は、ケーシング20、バッテリコントロールユニット25、ジャンクションボックス26、電池モジュール29等により構成されている。
【0040】
20は蓄電装置19の外殻を構成する箱状のケーシングで、該ケーシング20は、旋回フレーム6のアンダカバー6G上に位置する下箱体21と、該下箱体21の上側に位置する上箱体22とにより、上,下2段状に形成されている。そして、ケーシング20は、例えば鉄材、アルミニウム材等の金属材料により強固に形成されている。
【0041】
下箱体21は、底部を構成する矩形状の下板21Aと、該下板21Aの前端側から上方に向けて立設された前板21Bと、該前板21Bと対面し下板21Aの後端側から上方に向けて立設された後板21Cと、下箱体21の左,右方向の両側を閉塞する左側板21D,右側板21Eとにより上方が開口した前,後方向に長いボックス状に形成されている。そして、下箱体21の内部空間は、中間板21Fにより上,下2段に画成され、上側の室が後述の電池モジュール29が配設される電池室Aとなり、下側の室が電池モジュール29等を冷却する液体や冷却風等の冷却媒体が流通する冷却室Bとなっている。
【0042】
下板21Aには、複数個(例えば6個)の防振部材23が設けられている。そして、下箱体21は、この防振部材23のおねじ部23Aにナット24を螺着することにより、旋回フレーム6のアンダカバー6G上に取付けられている。また、後板21Cの上端側には、後板21Cの厚さ方向に貫通する貫通孔21Gが穿設されている。この貫通孔21Gには、後述の電解液排出管路30が取付けられる構成となっている。なお、この貫通孔21Gをケーシング20内の気圧(内部圧力)が上昇したときに開弁する安全弁としてもよい。
【0043】
一方、下箱体21の上側に位置する上箱体22は、下箱体21の上端に載置される下板22Aと、該下板22Aの中央部よりもやや前側から上方に向けて立設された前板22Bと、該前板22Bに対面し下板22Aの後端側から上方に向けて立設された後板22Cと、上箱体22の左,右方向の両側を閉塞する左側板22D,右側板22Eと、前板22Bと後板22Cと左側板22Dと右側板22Eとの上端に載置される上板22Fとにより下箱体21よりも小さなボックス状に形成されている。そして、上箱体22の内部空間は、後述する電池セル29Aの電力の入出力を制御するバッテリコントロールユニット25と、各種の配線が接続されるジャンクションボックス26等が配設される制御室Cとなっている。
【0044】
上箱体22の下板22Aは、下箱体21の下板21Aよりも若干大きく形成され、下箱体21の上端側の開口を塞ぐ蓋体となっている。即ち、上箱体22の下板22Aを図示しないボルト・ナット等により下箱体21の上端側に螺着することにより、下箱体21の電池室Aは密閉される構成となっている。また、上板22Fは、上箱体22の上端側の開口を塞ぐ蓋体となっている。即ち、上板22Fを図示しないボルト・ナット等により前板22Bと後板22Cと左側板22Dと右側板22Eとの上端側に螺着することにより、上箱体22の制御室Cは密閉される構成となっている。
【0045】
下板22Aの中央部よりもやや前側から上方に向けて立上る前板22Bの中央部には、コネクタ27が設けられている。蓄電装置19は、コネクタ27に接続されたケーブル28を介してアシスト用インバータ14や旋回用インバータ16と電気的に接続されている(図6参照)。
【0046】
29はケーシング20の下箱体21内の電池室A内で中間板21F上に配設された複数の電池モジュールで、これら電池モジュール29は、例えばリチウムイオン電池として構成され、電気的に直列状態に接続されている。そして、各電池モジュール29内には、複数の電池セル29Aが電気的に直列状態で接続されている(図5参照)。各電池セル29Aは、例えば筒状のアルミニウム合金により形成された筒体と、該筒体の内部に電極群や電解液(いずれも図示せず)等を備えている。この場合、電池セル29Aの筒体は、内部の電解液が外部に漏れないように密閉されている。また、電池セル29Aの筒体には、過充電等により内部圧力が上昇したときに開弁する安全弁(図示せず)が設けられている。なお、電池モジュール29をリチウムイオン電池に代えて他の電池、例えばニッケル水素電池等としてもよい。
【0047】
次に、第1の実施の形態による電解液排出管路30について説明する。
【0048】
30は基端側が蓄電装置19のケーシング20に接続され、先端側が旋回フレーム6のアンダカバー6G側(下方)に向けて開口する電解液排出管路で、該電解液排出管路30は、例えば金属材料や樹脂材料等により略L字状のパイプにより形成されている。具体的には、電解液排出管路30は、下箱体21の後板21Cから後方に向けて延びる水平管路30Aと、該水平管路30Aからアンダカバー6G側(下方)に向けて屈曲する垂直管路30Bとにより略L字状に形成されている。水平管路30Aの基端側には、フランジ部30A1が設けられ、垂直管路30Bの先端側には、フランジ部30B1が設けられている。
【0049】
そして、電解液排出管路30は、基端側が水平管路30Aのフランジ部30A1を下箱体21の後板21Cに当接させてボルト31等によりケーシング20(下箱体21)に取付けられ、先端側が垂直管路30Bのフランジ部30B1を蓄電装置19を載置している旋回フレーム6のアンダカバー6Gに当接させてボルト32等により取付けられる。この場合、垂直管路30Bの先端側は、アンダカバー6Gを貫通し、その先端開口30Cは下方に向けて開口している。
【0050】
これにより、電解液排出管路30は、下箱体21の電池室Aに配設された電池モジュール29(電池セル29A)の異常時(例えば、過充電時)に、電池セル29Aから噴出した電解液成分を上部旋回体4(車体)の外部へと排出することができる。なお、電解液排出管路30の先端開口30Cに、電解液成分の濃度を低減する濃度低減フィルタ(図示せず)を取付けてもよい。
【0051】
なお、図6に示す33は油圧ポンプ11に供給する作動油を貯える作動油タンクで、34は下部走行体2の走行用モータ2E,2F、作業装置5の各シリンダ5D,5E,5Fを制御する複数個の方向制御弁により構成されたコントロールバルブを示している。コントロールバルブ34は、油圧ポンプ11から供給される圧油を作業用の操作レバー(図示せず)の操作に応じ、走行用モータ2E,2F、作業装置5の各シリンダ5D,5E,5Fに対する圧油の給排、停止を制御するものである。
【0052】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、この油圧ショベル1は、下部走行体2によって作業現場まで自走し、旋回装置3によって上部旋回体4を旋回させつつ、作業装置5を用いて土砂の掘削作業を行う。
【0053】
この場合、油圧ショベル1を稼働しているときには、エンジン10により駆動される冷却ファン17が建屋カバー9の左側面板9Aに設けられた流入口9Eから外気を流入させ、この外気を冷却風Fとして熱交換器18(ラジエータ18B、オイルクーラ18C等)に供給することにより、それぞれの冷却すべき流体(液体)を冷却することができる。また、熱交換器18を通過した冷却風Fは、エンジン10側に導かれ、該エンジン10、油圧ポンプ11、アシスト発電・電動機12等の周囲を通って右側面板9Bに設けられた排出口9Fを通じて外部に流出する。
【0054】
また、アシスト発電・電動機12は、エンジン10により回転駆動され電気エネルギを発生する。また、旋回用発電・電動機15は、旋回動作を減速するときに電気エネルギ(回生エネルギ)を発生する。この電気エネルギは、ケーブル13、28を介して蓄電装置19に蓄えられる。そして、蓄電装置19に蓄えられた電気エネルギは、旋回用発電・電動機15やアシスト発電・電動機12に供給され、旋回装置3やエンジン10を駆動するときの補助動力として用いられる。
【0055】
ところで、蓄電装置19は、耐熱温度が低く、高温時での使用や保管は寿命を低下させるという問題がある。このため、蓄電装置19の温度上昇を抑えるために、蓄電装置19を熱交換器18よりも冷却風Fの流れ方向の上流側の高温になりにくい場所に配置されている。
【0056】
この場合、例えば蓄電装置19の過充電等による異常時に、蓄電装置19の電池モジュール29(電池セル29A)の安全弁から電解液が高温のミスト状となって噴出される場合がある。この噴出された電解液成分がケーシングの安全弁から排出されると、電解液成分は、冷却風Fの流れに乗って熱交換器18、エンジン10、アシスト発電・電動機12、油圧ポンプ11等に接触する虞があり、これにより、これら機器の寿命が低下するという問題がある。
【0057】
そこで、本実施の形態では、蓄電装置19のケーシング20に電解液排出管路30を設けている。この電解液排出管路30は、電池モジュール29(電池セル29A)の過充電等による異常時に、電池モジュール29から噴出した電解液成分を上部旋回体4(車体)の外部へと排出する(導く)構成としている。
【0058】
電解液排出管路30は、水平管路30Aと垂直管路30Bとにより略L字状に形成され、基端側が蓄電装置19を構成するケーシング20の後板21Cに設けられた貫通孔21Gに接続され、先端側が旋回フレーム6のアンダカバー6Gを貫通している。即ち、電解液排出管路30は、ケーシング20内の複数の電池モジュール29が配設された電池室Aと車体の外部とを連通している。
【0059】
かくして、第1の実施の形態によれば、蓄電装置19の電池モジュール29から電池室A内に電解液成分が噴出した場合でも、この電解液成分は、蓄電装置19のケーシング20に設けられた電解液排出管路30により上部旋回体4(車体)の外部へと排出される。従って、電解液成分が、熱交換器18やエンジン10等に接触するのを抑制することができるので、熱交換器18やエンジン10等の機器の寿命が低下するのを抑制することができる。
【0060】
しかも、電解液排出管路30の先端開口30Cは、車体の下方(地面側)に向けて開口しているので、油圧ショベル1が旋回しても電解液排出管路30の先端開口30Cから排出された電解液成分が周囲に飛散されるのを抑制することができる。従って、例えば油圧ショベル1の周囲にある機器や作業している作業者等に、電解液成分が接触するのを抑制することができる。
【0061】
次に、図7および図8は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、エンジンの下方に位置するアンダカバーに設けられた排出口に、電解液排出管路の先端側を配置したことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0062】
41はエンジン10の下方に位置してアンダカバー6Gに設けられた排出口としての複数の冷却風排出口である。これら冷却風排出口41は、建屋カバー9の左側面板9Aに設けられた流入口9Eから上部旋回体4内に導入された冷却風Fを旋回フレーム6の下方へと排出するものである。
【0063】
即ち、冷却ファン17の駆動により流入口9Eから流入した冷却風Fは、熱交換器18を通過してエンジン10側に導かれ、アンダカバー6Gに設けられた冷却風排出口41と右側面板9Bに形成された排出口9Fとから外部へと排出される。従って、冷却風排出口41内では、上部旋回体4内から外部に向けて冷却風Fが流れている。そして、左縦板6Bと右縦板6Cとの間に設けられた冷却風排出口41内には、後述の電解液排出管路42の先端開口42Dが配置されている。
【0064】
42は第1の実施の形態による電解液排出管路30に代えて用いられる電解液排出管路で、この電解液排出管路42は、基端側が蓄電装置19のケーシング20に接続され、先端側がエンジン10を避けた位置で冷却風排出口41内に配置されている。具体的には、ケーシング20の下箱体21の後板21Cに設けられた貫通孔21Gから後方に向けて延び、途中部位が屈曲して左,右方向の右側(左縦板6B)に向けて延びる第1の管路42Aと、該第1の管路42Aから上方に向けて延びると共に略逆U字状に屈曲して左縦板6Bの上方を跨ぐ第2の管路42Bと、該第2の管路42Bから左,右方向の右側に向けて延びると共にエンジン10を避けつつエンジンマウント10Aの前側を横切り、冷却風排出口41に対応する位置で下方に向けて屈曲する第3の管路42Cとにより構成されている。
【0065】
この場合、第1の管路42Aの基端側には、フランジ部42A1が設けられ、第3の管路42Cの先端側には、フランジ部42C1が設けられている。また、第1の管路42A、第2の管路42B、第3の管路42Cの途中部位には、それぞれ各管路42A,42B,42Cを旋回フレーム6上に支持する図示しない支持ブラケットが設けられている。
【0066】
そして、電解液排出管路42は、第1の管路42Aのフランジ部42A1を下箱体21の後板21Cに当接させてボルト等によりケーシング20(下箱体21)に取付けられ、第3の管路42Cのフランジ部42C1をエンジン10の下方に位置している旋回フレーム6のアンダカバー6Gに当接させてボルト等により取付けられる。この場合、第3の管路42Cの先端側は、排出口41内に配置されその先端開口42Dは下方(地面)に向けて開口している。
【0067】
これにより、蓄電装置19の電池モジュール29(電池セル29A)から噴出した電解液成分は、電解液排出管路42内を流通して、冷却風排出口41内に配置された第3の管路42Cの先端開口42Dまで達する。この場合、冷却風排出口41内では、上部旋回体4内から車体の下方に向けて冷却風Fが流れているので、第3の管路42Cの先端開口42Dまで達した電解液成分は、冷却風Fの流れに乗って車体の外部へと排出される。なお、電解液排出管路42の先端開口42Dに、電解液成分の濃度を低減する濃度低減フィルタ(図示せず)を取付けてもよい。
【0068】
かくして、このように構成された第2の実施の形態では、電解液排出管路42の先端側は、冷却風Fの冷却風排出口41内に配置されているので、電解液成分は、電解液排出管路42の先端開口42Dで上部旋回体4(車体)内から外部へと流れる冷却風Fの流れに乗せて排出することができる。これにより、電解液成分は、電解液排出管路42の先端開口42Dで留まる(滞留する)ことを低減させることができるので、電解液成分の温度上昇を抑制することができる。また、冷却風排出口41内では、上部旋回体4内から車体の下方に向けて冷却風Fが流れているので、冷却風排出口41から排出された電解液成分が逆流して熱交換器18やエンジン10等に接触するのを抑制することができる。
【0069】
また、電解液排出管路42の先端開口42Dを冷却風Fの流入口9Eから離れた位置に設けられている冷却風排出口41内に配置しているので、排出された電解液成分が流入口9Eから入り込むのを低減させることができる。また、排出される電解液成分は、冷却風Fの流れに沿って拡散された状態で排出されるので、電解液成分を希薄化させることができる。これにより、油圧ショベル1の周囲に与える影響を低減させることができる。さらに、電解液排出管路42は、第1の管路42Aと第2の管路42Bと第3の管路42Cとにより屈曲した管路により形成されているので、ケーシング20から噴出した電解液成分が先端開口42Dから勢いよく噴出するのを抑制することができる。
【0070】
次に、図9ないし図11は本発明の第3の実施の形態を示している。第3の実施の形態の特徴は、アンダカバーの排出口に対応する位置に電解液排出室を形成する閉塞箱体を設け、電解液ミストおよび/または電解液は、電解液排出室を介して排出口から外部に排出される構成としたことにある。なお、第3の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0071】
51はエンジン10の下方に位置するアンダカバー6Gに設けられた複数の冷却風排出口である。これら冷却風排出口51は、建屋カバー9の左側面板9Aに設けられた流入口9Eから上部旋回体4内に導入された冷却風Fを旋回フレーム6の下方へと排出するものである。即ち、冷却ファン17の駆動により流入口9Eから流入した冷却風Fは、熱交換器18を通過してエンジン10側に導かれ、アンダカバー6Gに設けられた冷却風排出口51と右側面板9Bに形成された排出口9Fとから外部へと排出される。
【0072】
ここで、冷却風排出口51のうち左縦板6Bと右縦板6Cとの間に形成された冷却風排出口51の後端側には、該後端側を覆うようにして後述の閉塞箱体53が設けられている。即ち、この冷却風排出口51のうち後端側は、電解液成分が外部に排出される排出口としての電解液排出口51Aとなっている。なお、冷却風のFの冷却風排出口51を利用せずに、アンダカバー6Gに電解液成分が外部に排出される専用の排出口を別に設けてもよい。
【0073】
52は第1の実施の形態による電解液排出管路30に代えて用いられる電解液排出管路で、この電解液排出管路52は、基端側が蓄電装置19のケーシング20に接続され、先端開口52C1が電解液排出口51A側の近傍、例えば電解液排出口51Aの直上方に配置されている。具体的には、ケーシング20の下箱体21の後板21Cに設けられた貫通孔21Gから後方に向けて延び、途中部位が屈曲して左,右方向の右側(左縦板6B)に向けて延びる第1の管路52Aと、該第1の管路52Aから上方に向けて延びると共に略逆U字状に屈曲して左縦板6Bの上方を跨ぐ第2の管路52Bと、該第2の管路52Bから左,右方向の右側に向けて延びると共にエンジン10を避けつつエンジンマウント10Aの前側を横切り、先端開口52C1が電解液排出口51Aの近傍、例えば電解液排出口51Aの直上方に配置される第3の管路52Cとにより構成されている。
【0074】
そして、電解液排出管路52は、第1の管路52Aのフランジ部52A1を下箱体21の後板21Cに当接させてボルト等によりケーシング20(下箱体21)に取付けられる。一方、第3の管路52Cの先端側は、後述の閉塞箱体53の電解液排出室D内で管路支持板53B上に配置されている。
【0075】
53は電解液排出管路52の第3の管路52Cとアンダカバー6Gに形成された電解液排出口51Aとの間に設けられた閉塞箱体で、この閉塞箱体53は、電解液排出口51Aと右縦板6Cとの間でアンダカバー6G上から上方に向けて立設された縦板53A1と該縦板53A1の上端から左,右方向の左側に向けて延びる横板53A2とにより形成された断面L字状の外側板体53Aと、該外側板体53Aの内部に位置し、電解液排出口51Aの左側の近傍位置でアンダカバー6G上から上方に向けて立設された縦板53B1と該縦板53B1の上端から左,右方向の右側に向けて延び、電解液排出口51Aの上方を覆う横板53B2とにより形成された断面L字状の管路支持板53Bと、外側板体53Aと管路支持板53Bとの前端側と後端側とを閉塞する前板53C,後板53Dとにより構成されている。
【0076】
この場合、閉塞箱体53の左端側開口は、電解液排出管路52の第3の管路52Cが挿入される管路挿入口53Eとなり、第3の管路52Cの先端側は、管路支持板53Bの横板53B2上に配置される。また、閉塞箱体53の下面側開口は、電解液排出口51Aに連通する連通口53Fとなっている。そして、閉塞箱体53の内部で管路挿入口53Eと連通口53Fとの間は、断面略U字状に屈曲した電解液排出室Dとなっている。
【0077】
これにより、閉塞箱体53は、第3の管路52Cの先端開口52C1を取囲むと共に、電解液排出口51A側のみに開口している。そして、蓄電装置19の電池モジュール29(電池セル29A)から噴出した電解液成分は、電解液排出管路52内を流通して、第3の管路52Cの先端開口52C1から閉塞箱体53の電解液排出室D内に排出された後、電解液排出口51Aから車体の外部に排出される。
【0078】
この場合、電解液排出室Dは、断面略U字状に屈曲しているので、第3の管路52Cの先端開口52C1から排出された電解液成分は、外側板体53Aの縦板53A1に衝突して拡散された状態で電解液排出口51Aから車体の外部に排出される。なお、電解液排出管路52の先端開口52C1や電解液排出室D内に、電解液成分の濃度を低減する濃度低減フィルタ(図示せず)を取付けてもよい。
【0079】
かくして、このように構成された第3の実施の形態では、旋回フレーム6には、旋回フレーム6の電解液排出口51Aに開口した閉塞箱体53が設けられており、電解液排出管路52の先端開口52C1は、内部に電解液排出室Dが形成された閉塞箱体53に取囲まれている。これにより、電解液排出管路52の先端開口52C1から排出された電解液成分は、閉塞箱体53の電解液排出室Dを介して電解液排出口51Aへと導かれるので、熱交換器18やエンジン10等の機器に接触するのを抑制することができる。また、電解液排出口51Aには、閉塞箱体53が設けられているので、電解液排出口51Aから排出した電解液成分が逆流しても閉塞箱体53により妨げられ、熱交換器18やエンジン10等の機器に電解液成分が接触するのを抑制することができる。
【0080】
また、電解液成分は、電解液排出管路52から直接外部に排出されずに、電解液排出室D内に排出され、外側板体53Aの縦板53A1に衝突して拡散された状態で電解液排出口51Aから車体の外部に排出されるので、電解液成分が勢いよく噴出されるのを抑制することができると共に、電解液成分を希薄化させることができる。これにより、油圧ショベル1の周囲に与える影響を低減させることができる。
【0081】
なお、上述した第1の実施の形態では、蓄電装置19をアンダカバー6G上に防振部材23を介して載置した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば旋回フレームの下面側にアンダカバーとは異なる蓄電装置用の支持部材を設け、これらの部材上に蓄電装置を設ける構成としてもよい。このことは、第2,第3の実施の形態についても同様である。
【0082】
また、上述した第1の実施の形態では、蓄電装置19の電池モジュール29および電池セル29Aを電気的に直列状態で接続した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば電池モジュールおよび/または電池セルを電気的に並列状態で接続させてもよい。このことは、第2,第3の実施の形態についても同様である。
【0083】
また、上述した第1の実施の形態では、電解液排出管路30を下箱体21の後板21Cに取付けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば電解液排出管路を下箱体の前板や左,右の側板等、即ち蓄電装置の電池モジュールが配設された電池室に連通させることができればケーシングの何れに取付けてもよい。このことは、第2,第3の実施の形態についても同様である。
【0084】
また、上述した第1の実施の形態では、冷却ファン17をエンジン10により回転駆動した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、冷却ファン17をエンジン10と別個の電動モータ、油圧モータ等により回転駆動させてもよい。このことは、第2,第3の実施の形態についても同様である。
【0085】
また、上述した第1の実施の形態では、電解液排出管路30の先端開口30Cを蓄電装置19の下方に位置するアンダカバー6Gを貫通させた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば電解液排出管路をエンジンや油圧ポンプ側まで延ばし、その先端開口をエンジンや油圧ポンプの下方に位置するアンダカバーや底板に貫通させてもよい。
【0086】
また、上述した第2の実施の形態では、左縦板6Bと右縦板6Cとの間の形成された冷却風排出口41に、電解液排出管路42の先端開口42Dを配置させた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば右サイドフレーム側に位置する冷却風排出口に電解液排出管路の先端開口を配置させてもよい。
【0087】
また、上述した第2の実施の形態では、電解液排出管路42の第2の管路42Bを左縦板6Bの上方を跨いで形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば電解液排出管路の第2の管路を左縦板に貫通させてもよい。このことは、第3の実施の形態についても同様である。
【0088】
また、上述した第3の実施の形態では、左縦板6Bと右縦板6Cとの間に閉塞箱体53を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば蓄電装置の下方や右サイドフレーム側のアンダカバー上に閉塞箱体を設けてもよい。
【0089】
また、上述した実施の形態では、建設機械として、キャブ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばキャノピ式の油圧ショベルに適用してもよい。
【0090】
さらに、上述した実施の形態では、建設機械として、クローラ式の下部走行体2を備えたハイブリッド式油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば自走可能なホイール式油圧ショベル、移動式クレーン等、各種のハイブリッド式建設機械に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
4 上部旋回体
5 作業装置
6 旋回フレーム
10 エンジン
11 油圧ポンプ
12 アシスト発電・電動機
17 冷却ファン
18 熱交換器
19 蓄電装置
20 ケーシング
29 電池モジュール(リチウムイオン電池)
30,42,52 電解液排出管路
30C,42D 先端開口
41 冷却風排出口(排出口)
51A 電解液排出口(排出口)
53 閉塞箱体
D 電解液排出室
F 冷却風
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11