(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動二輪車では、エンジンと燃料タンクとの間の空間が限られているため、吸気チャンバを配置する分、車体が大型化し易い。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決すべくなされたものであり、車体の大型化を防ぐことができる、過給機付き自動二輪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る過給機付き自動二輪車の一態様は、吸気を圧縮する過給機と、前記過給機の下流側に設けられ、前記過給機で圧縮された吸気を貯留し、貯留した吸気をエンジンの燃焼室に導く吸気チャンバと、前記エンジンの上方に配置された燃料タンクとを備え、前記吸気チャンバは、前記燃料タンクと前記エンジンとの間に設けられ、前記燃料タンクは、底面側に前記吸気チャンバを避けるような窪みが設けられた窪み形成部を有するものである。
【0008】
上記構成によれば、過給機および吸気チャンバを自動二輪車に搭載した際に、吸気チャンバの少なくとも一部が燃料タンクの窪み形成部の窪み内に位置する。このため、自動二輪車が大型化することを防ぎつつ吸気チャンバおよび燃料タンクの容積を大きくすることができる。
【0009】
前記燃料タンクは、前記窪み形成部の前記窪みに前記吸気チャンバを配置した状態で、平面視において前記吸気チャンバの全周を覆うように形成されていてもよい。これにより、燃料タンク搭載位置の高さを抑えつつ、吸気チャンバおよび燃料タンクの容積を大きくすることができる。
【0010】
前記燃料タンクは、前記窪み形成部より後方かつ下方へ延出する後方延出部を有し、前記後方延出部は、前記自動二輪車の着座シートの下方に配置されてもよい。これにより、自動二輪車を大型化させることなくチャンバ空間の容積を大きくするともに、燃料タンクの容量も大きくすることができる。
【0011】
前記過給機は、前記後方延出部より前方に位置してもよい。これにより、自動二輪車における各装置のレイアウトを適正化することができ、自動二輪車の大型化を防止することができる。
【0012】
前記燃料タンク内の燃料を汲み出す燃料ポンプを備え、前記燃料ポンプは、前記燃料タンクの前記過給機より後方に位置する領域かつ前記燃料タンクの内部に配置されてもよい。これにより、燃料ポンプが過給機と干渉するのを防止しつつ、燃料タンク内の上下寸法を大きくできる箇所に燃料ポンプを配置することができる。
【0013】
前記燃料ポンプは、前記過給機に対して車両前後方向に間隔を空けて配置され、前記燃料ポンプと前記過給機との間に、前記燃料ポンプよりも耐熱性が高い高耐熱性装備品が配置されてもよい。燃料ポンプを過給機から離間した位置に配置することにより、過給機で生じた熱が燃料ポンプに及ぶことを抑制することができる。また、燃料ポンプと過給機との間のスペースに耐熱性の高い装備品を配置することにより、スペースの有効利用を図ることができる。
【0014】
前記燃料タンクは、前記窪み形成部より前方に位置する前方領域の下面と前記窪み形成部の前記窪みより左右方向少なくとも一方側に位置する側方領域の下面とが連続しており、前後方向において前記前方領域の下面から前記側方領域の下面へ向かうに従って前記燃料タンクの下面が下方に位置するように傾斜していてもよい。これにより、燃料ポンプの容積を確保しつつ前方領域に燃料が残ることを防止することができる。
【0015】
前記窪み形成部の前記窪みにおいて、前記燃料タンクと前記吸気チャンバとの間には所定の空隙が設けられてもよい。これにより、走行時において燃料タンクと吸気チャンバとの間の空隙に空気の層が生じ、吸気チャンバからの熱が燃料タンクへ伝わるのを防止することができる。
【0016】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、および利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以上に説明したように構成され、車体の大型化を防ぐことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、以下の説明で用いる方向の概念は、自動二輪車に騎乗した運転者から見た方向を規準とする。
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係る自動二輪車を示す左側面図である。また、
図2は
図1に示す自動二輪車の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、自動二輪車1は、路面R上を転動する前輪2および後輪3を備えている。後輪3が駆動輪であり、前輪2が従動輪である。前輪2は上下方向に延びるフロントフォーク4の下端部にて回転自在に支持されており、該フロントフォーク4は、ステアリングシャフトに支持されている。該ステアリングシャフトは、ヘッドパイプ5によって回転自在に支持されている。アッパーブラケットには、左右へ延びるバー型のハンドル6が取り付けられている。
【0021】
ハンドル6の運転者の右手により把持される部分に設けられたスロットルグリップ7(
図2参照)は、手首のひねりにより回転させることで後述するスロットル装置16を操作するためのスロットル入力手段である。運転者は、ハンドル6を回動操作することにより、ステアリングシャフトを回転軸として前輪2を所望の方向へ転向させることができる。
【0022】
ヘッドパイプ5からは左右一対のメインフレーム9が下方に傾斜しながら後方へ延びており、該メインフレーム9の後部に左右一対のピボットフレーム10が接続されている。該ピボットフレーム10には、略前後方向に延びるスイングアーム11の前端部が枢支されており、該スイングアーム11の後端部に後輪3が揺動軸11a回りに揺動可能に軸支されている。スイングアーム11の揺動軸11aは、エンジンEの後端部より後方に配置される。ハンドル6の後方には燃料タンク12が設けられており、該燃料タンク12の後方側に運転者騎乗用の着座シート13が設けられている。
【0023】
前輪2と後輪3との間には、エンジンEがメインフレーム9およびピボットフレーム10に支持された状態で搭載されている。
図1には、エンジンEとして気筒が車幅方向に並んだ並列四気筒エンジンが例示されている。エンジンEの出力軸には変速装置14(
図2参照)が接続されており、この変速装置14から出力される駆動力がチェーン15を介して後輪3に伝達される。エンジンEおよび変速装置14は、エンジンEのクランクケースの後方に変速装置14のミッションケースが位置するように一体形成されている。側面視において、シリンダの軸線は、上方に進むに従って前方に傾斜している。側面視において、エンジンEのクランクケースおよび変速装置14のミッションケースは、全体として略L字状に形成される。言い換えると、エンジンEおよび変速装置14は、L字状ケースを備える。エンジンEの吸気ポート(図示せず)にはメインフレーム9の内側に配置されたスロットル装置16が接続されている。
【0024】
スロットル装置16の上流側には燃料タンク12の下方に配置された吸気装置36が設けられている。吸気装置36は、吸気を圧縮する過給機32と、当該過給機32の下流側に設けられた吸気チャンバ33とを含む。過給機32の上流側には、前方からの走行風を導入する吸気ダクト34と、吸気ダクト34と過給機32との間に配置されたエアクリーナ19とが設けられる。吸気ダクト34から導入された吸気は、エアクリーナ19を介して過給機32に送られる。すなわち、過給機32は、エアクリーナ19の下流側に配置される。過給機32は、歯車およびチェーン等の動力伝達機構を介して伝えられるエンジンEの動力によって駆動され、送られてきた吸気を圧縮する。過給機32は、遠心式ポンプおよび遊星歯車機構を有し、エンジンEの動力を増速するように構成される。遠心式ポンプおよび遊星歯車機構は、同軸に形成される。遠心ポンプおよび遊星歯車機構は、ミッションケースの上壁部に軸支される。過給機32が設けられることにより、自動二輪車1の出力の向上を図ることができる。過給機32で圧縮された吸気は、吸気チャンバ33に送られる。吸気チャンバ33は、過給機32で圧縮された吸気を貯留し、貯留した吸気をスロットル装置16を介してエンジンEの燃焼室に導く。吸気チャンバ33は、吸気経路内の圧力変化を抑えるために設けられている。吸気チャンバ33の容量が大きいほど、自動二輪車1の出力は向上する。なお、過給機32を駆動する動力として、エンジンEの動力を用いる代わりに、別途モータ等の駆動源を設けてその動力を用いて過給機32を駆動してもよいし、排気エネルギから動力を取り出すこととしてもよい。
【0025】
スロットル装置16は、吸気管20の途中に配置されたスロットルバルブ21を有している。スロットルバルブ21は、スロットルグリップ7とスロットルワイヤ23を介して接続されており、運転者によるスロットルグリップ7の操作に連動して開閉するように構成されている。また、スロットル装置16には、吸気管20に繋がる吸気通路に燃料を噴射する燃料噴射装置が設けられている。本実施形態において、燃料噴射装置は、スロットルバルブ21より下流側に配置された主インジェクタ31と、スロットルバルブ21より上流側に配置された副インジェクタ40とを備えている。主インジェクタ31および副インジェクタ40には、燃料タンク12に貯留された燃料が燃料ポンプ18を介して送られる。副インジェクタ40は、吸気チャンバ33内に燃料を噴射するように構成されている。変速装置14は、エンジンEの動力を変速して後輪3に伝達する。変速装置14には、動力を伝達または遮断するための
クラッチ(図示せず)が設けられている。
【0026】
エンジンEで燃焼に使用された空気は、排気管37を通じて排出される。排気管37内には、排気バルブ38が設けられる。排気バルブ38は、エンジンECU(図示せず)で制御されるモータからなる排気バルブアクチュエータ39に接続されており、該排気バルブアクチュエータ39によって駆動され、開閉するように構成されている。
【0027】
エンジンECUは、バッテリ(図示せず)から供給される電力によって、各センサおよびスイッチから入力される信号に基づいてエンジン制御に関する演算を行い、各電動装置に制御指令を行う。エンジンECUは、フロントカウル内に設置される。センサおよびスイッチは、例えばスロットルポジションセンサ、クラッチスイッチ、ギヤポジションセンサ、およびエンジン回転数センサ等である。
【0028】
以下、本実施形態における吸気装置36および燃料タンク12のより具体的な配置例について説明する。
図3は本実施形態における自動二輪車の吸気装置近傍の概略配置例を示す部分左側面図である。また、
図4は本実施形態における自動二輪車の吸気装置近傍の概略配置例を示す部分平面図である。
図3および
図4には以下で説明する主要な構成要素以外の構成は図示を省略している。
【0029】
図3に示すように、燃料タンク12は、一部がメインフレーム9よりも上方に配置されている。燃料タンク12は、ヘッドパイプ5の近傍から着座シート13付近まで前後方向に延びている。燃料タンク12の最上部は、車両前後方向の中間部に配置される。すなわち、燃料タンク12の最上部は、燃料タンク12の前端部よりも後方かつ燃料タンク12の後端部よりも前方に配置される。燃料タンク12の最上部は、吸気チャンバ33の最上部位置に対応する位置に形成される。燃料タンク12の上面は、最上部から車両前方および車両後方に向かうにつれて下方に傾斜する傾斜面を有するように形成される。燃料タンク12の上面は、最上部から下方に向かうに従って前後左右方向に傾斜している。燃料タンク12の前端部は、吸気チャンバ33の前端部より前方に位置する。燃料タンク12は、吸気チャンバ33よりも後方において、エンジンEのシリンダヘッドよりも下方に位置する部分を有する。当該部分は、ミッションケースの後端部より後方に位置する。
【0030】
吸気チャンバ33は、エンジンEの上方に配置された燃料タンク12と、エンジンEとの間に配置される。吸気チャンバ33は、車両前後方向および上下方向のそれぞれにおいて、燃料タンク12とエンジンEとの間に配置される。エンジンEおよび変速装置14のL字状ケースは、クランクケースの後方かつミッションケースの上方に空間が設けられるように配置される。また、燃料タンク12は、燃料タンク12の前端部より下方かつ後端部より前方に空間が生じるように円弧状に形成される。L字状ケースおよび燃料タンク12は、それぞれの空間を避けてかつそれぞれの空間が共通の空間となるように配置される。すなわち、ミッションケースの上方かつ燃料タンク12の前端部より下方かつクランクケースの後方かつ燃料タンク12の後端部より前方に空間が設けられるように、L字状ケースおよび燃料タンク12が配置される。この空間は、下方に行くに従って後方に位置するような後下がりの形状を有している。この空間には、吸気領域として、吸気チャンバ33、過給機32およびスロットル装置16が配置される。吸気領域のうちの下方領域には、過給機32およびスロットル装置16が配置される。より具体的には、下方領域の前方にスロットル装置16が配置され、下方領域の後方に過給機32が配置される。吸気領域のうちの上方領域には、吸気チャンバ33が配置される。吸気チャンバ33は燃料タンク12の下面形状に合わせて湾曲した形状を有している。
【0031】
燃料タンク12は、下面が吸気チャンバ33の上面に沿う形に窪むように形成されている。すなわち、燃料タンク12は、吸気チャンバ33を避けるような窪み12dが設けられた窪み形成部12aを有している。このような構成を有することにより、過給機32および吸気チャンバ33を自動二輪車1に搭載した際に、吸気チャンバ33の少なくとも一部が燃料タンク12の窪み形成部12aの窪み12d内に位置する。このため、自動二輪車1を大型化させることなく燃料タンク12および吸気チャンバ33の容積を大きくすることができる。
【0032】
自動二輪車1は、車幅方向寸法および前後方向寸法が四輪車に比べて小さく、過給機32を備えていない構成であっても、搭載する機器の配置スペースが限定的である。すなわち、自動二輪車1は、搭載する機器の配置設計の自由度が小さいと言える。特に、車体の大型化を抑えたい場合には、配置設計の自由度がより小さくなる。このような配置設計の自由度が小さい自動二輪車1においても、本実施形態のような構成とすることにより、車体を大型化させることなく燃料タンク12および吸気チャンバ33の容積を大きくすることができる。また、もともと過給機を備えていない自動二輪車においても、上記構成を適用することにより、過給機32および吸気チャンバ33を備えた構成に設計変更することを容易に行うことができる。
【0033】
また、燃料タンク12および吸気チャンバ33は、前後方向においてハンドル6と着座シート13との間の領域に配置される。このため、運転者が騎乗した状態において、運転者の上半身は、この領域に対向する。したがって、この領域における車体上面を高い位置とするには限度がある。つまり、吸気チャンバ33の容積確保のために、吸気チャンバ33の上下寸法を大きくすると、平面視において吸気チャンバ33とオーバラップする箇所における燃料タンク12の上下寸法を小さくする必要がある。
【0034】
そこで、本実施形態においては、燃料タンク12に吸気チャンバ33を避けるような窪み12dを設けることにより、燃料タンク12の吸気チャンバ33に隣接する領域の少なくとも一部が吸気チャンバ33の上面よりも下方に延出されている。これにより、運転者の上半身が対向する領域の車体上面位置を高くすることなく、燃料タンク12および吸気チャンバ33の容積を大きくすることができる。したがって、自動二輪車1の出力を向上させつつ、無給油での航続距離をより長くすることができる。
【0035】
燃料タンク12の吸気チャンバ33の上面よりも下方に延出した領域は、窪み12d(および窪み12d内に位置する吸気チャンバ33)の前方、後方、左方および右方の少なくとも何れか一方に形成される。本実施形態において、燃料タンク12は、
図4に示すように、窪み形成部12aの窪み12dに吸気チャンバ33を配置した状態で、平面視において吸気チャンバ33の全周を覆うように形成されている。これにより、燃料タンク12の搭載位置の高さを抑えつつ、吸気チャンバ33および燃料タンク12の容積を確保することができる。また、吸気チャンバ33が外部に露出することを防止することができる。
【0036】
窪み形成部12aにおける窪み12dは、窪み12d内に位置する吸気チャンバ33に沿った形状を有している。さらに、窪み形成部12aの窪み12dにおいて、燃料タンク12と吸気チャンバ33との間には所定の空隙Sが設けられている。これにより、走行時において燃料タンク12と吸気チャンバ33との間の空隙Sに空気の層、好ましくは空気の流れ(走行風)が生じ、吸気チャンバ33からの熱が燃料タンク12へ伝わるのを防止することができる。これに加えてまたはこれに代えて、燃料タンク12と吸気チャンバ33との間に断熱材を介装してもよい。この場合、当該断熱材は、例えば燃料タンク12側に取り付けられる。
【0037】
図3および
図4に示すように、本実施形態において、燃料タンク12は、窪み形成部12aより後方かつ下方へ延出する後方延出部12bを有している。後方延出部12bは、自動二輪車1の着座シート13の下方に配置されている。すなわち、燃料タンク12の後端部は、着座シート13の前端部よりも後方かつ下方に位置する。これにより、自動二輪車1を大型化させることなく吸気チャンバ33の空間容積を大きくするとともに、燃料タンク12の容量も大きくすることができる。すなわち、吸気チャンバ33が大きく形成された場合であっても、吸気チャンバ33の後方において燃料タンク12の容量を大きくすることができる。また、後方延出部12bは、燃料タンク12の最下部として構成される。したがって、平面視において自動二輪車1の運転者騎乗位置が燃料タンク12の最下部とオーバラップする。このため、燃料タンク12内の燃料の残量の変化に拘わらず燃料タンク12の重心が、運転者騎乗位置付近に位置することとなり、自動二輪車1の重心を燃料タンク12内の燃料の残量によらず安定させることができる。さらに、走行時において自動二輪車1の前後方向への荷重がかかっても、燃料が常に燃料タンク12の最下部となる後方延出部12bに溜まる(燃料の水平方向への移動が少ない)。このため、走行時においても重量バランスを良好に維持することができ、優れた運動性を確保することができる。また、燃料タンク12の最下部は、水平面を有するように形成されている。吸気チャンバ33の上面は、燃料タンク12の最下部よりも上方に位置する。燃料タンク12の最下部は、吸気チャンバ33よりも後方に配置される。このため、吸気チャンバ33の形状に依らず燃料タンク12の底面形状を設定することができ、燃料タンク12の最下部に水平面を容易に形成することができる。さらに、燃料タンク12の最下部は、エンジンEのシリンダヘッドおよび吸気チャンバ33の下端部よりも下方に位置する。燃料タンク12の最下部の水平面は、ミッションケースの後方において、ミッションケースの上面高さ位置近傍に位置する。
【0038】
燃料タンク12には、燃料を汲み出す燃料ポンプ18が設けられる。燃料ポンプ18は、燃料タンク12の過給機32より後方に位置する領域かつ燃料タンク12の内部に配置される。具体的には、燃料ポンプ18は、燃料タンク12の後方延出部12bの下端部に設けられる。つまり、燃料タンク12の燃料排出口12f(後述する
図5参照)は、後方延出部12bの下端部の水平面(最下面)に設けられる。このように、燃料ポンプ18は、過給機32に対して車両前後方向に間隔を空けて配置される。これにより、燃料ポンプ18が過給機32と干渉するのを防止しつつ、燃料ポンプ18を燃料タンク12内の上下寸法を大きくできる(エンジンEおよび吸気装置36から離間した)箇所に配置することができる。さらに、燃料ポンプ18を過給機32から離間した位置に配置することにより、過給機32で生じた熱が燃料ポンプ18に及ぶことを抑制することができる。また、燃料ポンプ18は、後方延出部12bの下方に位置することにより、燃料ポンプ18は、着座シート13の下方に配置される。これにより、燃料ポンプ18が運転者の騎乗位置に近づくため、運転者騎乗時における自動二輪車1の重量バランスを安定化させることができる。燃料ポンプ18は、スイングアーム11の揺動軸11aより後方に位置している。
【0039】
さらに、燃料ポンプ18と過給機32との間に、燃料ポンプ18よりも耐熱性が高い高耐熱性装備品が配置される。例えば、高耐熱性装備品は、排気バルブアクチュエータ39等のアクチュエータまたは各種のセンサ等である。燃料ポンプ18と過給機32との間のスペースに耐熱性の高い装備品を配置することにより、スペースの有効利用を図ることができる。本実施形態において、排気バルブアクチュエータ39は、平面視において、スイングアーム11の揺動軸11aにオーバラップするように配置される。また、排気バルブ38(
図2)は、車両前後方向においてスイングアーム11の揺動軸11aの近傍に設けられる。これにより、排気バルブアクチュエータ39と排気バルブ38とを繋ぐワイヤの長さを短くすることができる。
【0040】
図4に示すように、本実施形態において、左右一対のメインフレーム9は、ヘッドパイプ5から当該メインフレーム9の最大拡幅領域に向けて斜め後方に拡がるような拡幅領域を有している。この拡幅領域内に、エンジンE、燃料タンク12、過給機32および吸気チャンバ33が配置される。このように、車両左右方向中央部に形成される大きい空間に吸気チャンバ33および燃料タンク12を配置することにより、吸気チャンバ33および燃料タンク12を、メインフレーム9と干渉するのを防止しつつ、容易に配置することができ、その容積を大きくすることができる。さらに、左右一対のメインフレーム9がエンジンEの左右両側に配置されるため、メインフレームが車体内部を通過する場合に比べて燃料タンク12および吸気チャンバ33の容積を大きくすることができる。なお、電装品間または電装品とエンジンECU17との間を電気的に接続するワイヤハーネスの一部が、左右一対のメインフレーム9間に配設され、当該ワイヤハーネスの一部は、燃料タンク12によって覆われる。同様に、過給機32の余剰圧力を解放するための経路(ブローオフ経路)の一部が燃料タンク12によって覆われてもよい。
【0041】
図1および
図4に示すように、本実施形態における吸気ダクト34は、車両左右方向一方側(
図4に示す例では左側)にオフセットして配設される。具体的には、吸気ダクト34は、エンジンEの側方を通過するように配設される。これに伴い、吸気ダクト34の入口(空気取り入れ口)自体が車両左右方向一方側にオフセットした状態で設けられる。これにより、吸気ダクトをエンジンEの上方を通過させる構成に比べて、運転者の上半身が対向する領域の車体上面位置を高くすることなく、エンジンEの上方において吸気チャンバ33および燃料タンク12を配置するスペースを大きくすることができる。
【0042】
また、比較例として、車両左右方向中央部に吸気ダクトが配置される構成では、燃料タンクとヘッドパイプとの間に吸気ダクトおよびエアクリーナを配設するスペースが必要となる。このため、このような比較例の構成では燃料タンクの前方を吸気ダクトおよびエアクリーナを避けるように窪ませる必要があった。このような構成では、燃料タンクの容積を大きくすることができない。
【0043】
これに対し、本実施形態においては、吸気ダクト34は、車両左右方向において燃料タンク12の外側から燃料タンク12の下方へ迂回するように配設されている。このため、吸気ダクト34のために燃料タンク12を窪ませる必要がなく、燃料タンク12の容積を大きくすることができる。
【0044】
エアクリーナ19は、吸気チャンバ33とは別に設けられる。具体的には、前述したように、過給機32の上流側(側方)に設けられる。このため、
図3に示すように、エアクリーナ19は、燃料タンク12の下面よりも下方に配置される。このため、エアクリーナ19のために燃料タンク12を窪ませる必要はない。なお、これに代えて、エアクリーナ19を吸気ダクト34の内部に設けてもよいし、吸気ダクト34の上流側に設けてもよい。
【0045】
過給機32は、燃料タンク12の後方延出部12bより前方かつ窪み形成部12aの下方に配置されている。さらに、過給機32は、エンジンEの後方に配置される。より具体的には、過給機32は、エンジンEのクランクケースより後方かつミッションケースより上方に位置されている。過給機32は、エンジンEの上端部(シリンダヘッドカバー)よりも下方に配置される。さらに、過給機32は、ミッションケースの後端部より前方に配置される。より具体的には、過給機33は、ミッションケースの上壁部に支持される。過給機32とクランクケースとの間には、車両前後方向に所定の間隔が設けられる。これにより、自動二輪車1における各装置のレイアウトを適正化することができ、自動二輪車1の大型化を防止することができる。さらに、過給機32は、車幅方向中央部に配置される。これにより、燃料タンク12および吸気チャンバ33の車幅方向寸法の大型化を防止することができる。また、過給機32をエンジンEのクランクケース近傍に配置することにより、エンジンEの回転動力を利用するための動力伝達機構を単純化および短く構成することができる。過給機32の出口は、上方を向いている。本実施形態においては、前述のように、エンジンEの回転動力を用いるため、過給機32がエンジンEの近傍に設けられる。このため、過給機32に後続する吸気チャンバ33は、車体の比較的高い位置に配置される。このような場合であっても、燃料タンク12の下面を窪ませることにより、燃料タンク12と吸気チャンバ33とを側面視においてオーバーラップさせることにより、車体の大型化を防止しつつ、燃料タンク12および吸気チャンバ33の容積を大きくすることができる。
【0046】
過給機32の出口に接続される吸気チャンバ33の入口は、吸気チャンバ33の下端部かつ後端部に設けられる。吸気チャンバ33は、入口から前方かつ上方へ向けて吸気が導入されるように構成されている。すなわち、吸気チャンバ33は、過給機32の上方から前方かつ上方に延びるように配置される。このため、過給機32および吸気チャンバ33の接続部分における空気の経路は、過給機32から出力される空気の向き(上方向)が吸気チャンバ33内に入ると斜め上方に変化するような構造となっている。これにより、過給機32をエンジンEの下部のクランクケースに近づけつつ、エンジンEの上方に容量の大きい吸気チャンバ33を容易に設けることができる。吸気チャンバ33の出口は、前方の下面に設けられ、吸気管20に接続される。吸気チャンバ33は、スロットル装置16の上方に配置される。吸気チャンバ33は、車体の車幅方向中央部に配置される。
【0047】
また、吸気装置36を、エンジンEの後方から吸気を導入するように配置することにより、エンジンEの上方に吸気チャンバ33および燃料タンク12の配置空間を確保することができる。すなわち、吸気装置36および燃料タンク12についてレイアウトを適正化することにより、自動二輪車1の大型化を防止することができる。
【0048】
過給機付き自動二輪車1は、吸気チャンバ33の容積が大きいほど出力の向上が期待できる。例えば、吸気チャンバ33の容積は、出力の観点では、エンジンEの排気量の2倍以上の容積に形成され、より好ましくは、5倍以上の容積に形成される。
【0049】
本実施形態における吸気チャンバ33は、前方に向かうに従って上下寸法が大きくなるような形状を有している。また、吸気チャンバ33は、出口領域における内部空間幅(吸気チャンバ33内の車両左右方向における内壁間の距離)が入口領域における内部空間幅よりも大きい。これに合わせて、吸気チャンバ33の外形および燃料タンク12の窪み形成部12aの外形は、
図4に示すように、車両後方に行くに従って車両左右方向寸法(幅)が小さくなるような扇形形状を有している。これにより、騎乗時において運転者の膝前部分の車幅を狭めることができ、車体を膝で保持すること、いわゆる、ニーグリップを容易に行うことができる。
【0050】
図5は本実施形態における燃料タンク12を、自動二輪車搭載時における下方から見た図であり、
図6は
図5に示す燃料タンク12を、自動二輪車搭載時における車両左側方から見た図である。
図5および
図6の何れにおいても図面に向かって左が車両前方側となる。
【0051】
本実施形態において、燃料タンク12は、
図3から
図6に示すように、窪み形成部12aより前方に延出された前方延出部12cを有している。前方延出部12cの前端部は、下面がヘッドパイプ5の近傍に位置している。このように、吸気ダクト37およびエアクリーナ19を車両左右方向側方側に配置することにより空いたスペースに、前方延出部12cが設けられる。これにより、燃料タンク12の容積をより大きくすることができる。前方延出部12cの底面の少なくとも一部の領域(下方延出領域)12gは、窪み形成部12aの窪み12dにおける底面よりも低い位置に下面が位置する膨出形状を有している。すなわち、下方延出領域12gは、前方延出部12cにおける車両左右方向中央部において、下方延出領域12gのその他の領域の底面より下方に膨出するように形成される。
図3および
図4に示すように、吸気チャンバ33の前方および後方は、燃料タンク12の前方延出部12cおよび後方延出部12bにより覆われる。
【0052】
図5に示すように、燃料タンク12の窪み形成部12aにおける窪み12dの車両左右方向の少なくとも何れか一方には、非窪み領域12eが形成される。本実施形態においては、窪み12dの車両左右方向の両側に非窪み領域12eが形成される。非窪み領域12eは、少なくとも一部が吸気チャンバ33の上面よりも下方に位置する。さらに、燃料タンク12は、窪み形成部12aより前方に位置する前方領域(前方延出部12c)の下面と窪み形成部12aの窪み12dより左右方向少なくとも一方側に位置する側方領域(非窪み領域12e)の下面とが連続している。そして、
図6に示すように、前後方向において前方延出部12cの下面から非窪み領域12eの下面へ向かうに従って燃料タンク12の下面が下方に位置するように傾斜している。
【0053】
後方の燃料が前方延出部12cへ移動することは、窪み形成部12aの窪み12dの存在により抑制される。一方、窪み形成部12aにおける窪み12dの側方には、流路Fが形成されるため、前方延出部12cから後方への燃料の良好な流れを確保することができる。このため、前方延出部12cに燃料が残ることを防止することができる。なお、
図5に示すように、平面視において、窪み12dの前端部と前方延出部12cの前端部との間の車両前後方向の長さL1は、窪み12dの車両左右方向における非窪み領域12e形成側端部と非窪み領域12eの外端部との間の車両左右方向の長さL2に比べて長い。このことによっても、前方延出部12cの容積を大きくすることができる。さらに、前方延出部12cから後方への燃料の良好な流れを確保しつつ、前方延出部12cへの逆流を防止する効果を高めることができる。
【0054】
燃料タンク12の窪み形成部12aの窪み12d内には、吸気チャンバ33以外の機器が配置されてもよい。例えば、窪み12d内に吸気チャンバ33内の気圧を検出する吸気圧センサが配置されてもよい。また、
図3に示すように、窪み12d内の吸気チャンバ33より前方に副インジェクタ40が配置されてもよい。副インジェクタ40は、吸気チャンバ33に支持される。例えば、副インジェクタ40は、吸気チャンバ33の上面に支持される。吸気チャンバ33の上面は、窪み12d内に配置される所定の位置から前方に向かうに従って窪み12dから離間するような傾斜面が形成される。副インジェクタ40は、窪み12dと傾斜面との間に形成された空間に配置されるように、当該傾斜面に取り付けられる。副インジェクタ40は、吸気チャンバ33の傾斜面に支持された状態で燃料排出口の軸線が傾斜面に垂直となるように配置される。これにより、副インジェクタ40は、軸線が鉛直軸に対して傾斜して配置される。したがって、副インジェクタ40における車両上下方向の高さを抑えることができる。これにより、副インジェクタ40のために形成される燃料タンク12の窪み12dの容積を低減することができ、燃料タンク12の容積を大きくすることができる。
【0055】
窪み形成部12aの窪み12dの形状は、窪み12dに配置される吸気チャンバ33を含む機器の形状に沿った形状を有している。窪み形成部12aの窪み12dの後端部は、吸気チャンバ33と過給機32との間の接続部の形状に沿った形状を有している。また、窪み12dの後端部は、過給機32の上部(ケーシング)の形状に沿った形状を有している。これにより、燃料タンク12を過給機32および吸気チャンバ33のより近くに配置することができ、燃料タンク12の高さを抑えることができる。
【0056】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。