(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6175575
(24)【登録日】2017年7月14日
(45)【発行日】2017年8月2日
(54)【発明の名称】人工湿地による汚水処理装置及びこれを用いた汚水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/32 20060101AFI20170724BHJP
【FI】
C02F3/32
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-568989(P2016-568989)
(86)(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公表番号】特表2017-506580(P2017-506580A)
(43)【公表日】2017年3月9日
(86)【国際出願番号】CN2014093083
(87)【国際公開番号】WO2015139484
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2016年8月15日
(31)【優先権主張番号】201410107296.7
(32)【優先日】2014年3月21日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516245287
【氏名又は名称】ナンジン ユニバーシティー エコロジカル リサーチ インスティチュート オブ チャンシュ
【氏名又は名称原語表記】NANJING UNIVERSITY ECOLOGICAL RESEARCH INSTITUTE OF CHANGSHU
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アン シュチン
(72)【発明者】
【氏名】シュ デェァリン
(72)【発明者】
【氏名】レン リージュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン タンウー
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第103274529(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第101671096(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第101693588(CN,A)
【文献】
特開昭58−070891(JP,A)
【文献】
特開2008−068211(JP,A)
【文献】
特開平09−047779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00−3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部及び周囲が閉鎖され、上部が開口している垂直流型人工湿地槽本体(1)と、
前記垂直流型人工湿地槽本体(1)に設けられている垂直流型汚水処理人工湿地(2)と、
処理待ちの汚水を前記垂直流型汚水処理人工湿地(2)まで引き込むため、前記垂直流型人工湿地槽本体(1)の一端に設けられ、当該一端の幅方向の中間に位置する引水路(3)と、
前記垂直流型汚水処理人工湿地(2)によって処理された汚水を引き出すため、前記垂直流型人工湿地槽本体(1)の他端に設けられ、当該一端の幅方向の中間に位置する排水路(4)と、
前記垂直流型人工湿地槽本体(1)の長手方向の中間位置に設けられ、前記垂直流型汚水処理人工湿地(2)を第1湿地ユニット(21)及び第2湿地ユニット(22)に分離し、その長手方向の中間位置に前記引水路(3)と前記排水路(4)との間に対応するボックスカルバート(51)が設けられている仕切り(5)と、
水平状態で前記垂直流型汚水処理人工湿地(2)内に敷設され、前記垂直流型汚水処理人工湿地(2)の上部に位置し、一端が前記引水路(3)内に延在し、当該一端に上取水管給水バルブ(61)が配置され、他端が前記排水路(4)内に延在し、当該他端に上取水管排水バルブ(62)が配置され、中間部が前記ボックスカルバート(51)を経由し、前記ボックスカルバート(51)内に対応する部位に上取水管制御バルブ(63)が配置され、長手方向に上取水管の分岐管(64)が間隔をなして配置され、前記分岐管(64)と十字形状を形成している上取水管(6)と、
水平状態で前記垂直流型汚水処理人工湿地(2)内に敷設され、前記垂直流型汚水処理人工湿地(2)の下部に位置し、一端が前記引水路(3)内に延在し、当該一端に下取水管給水バルブ(71)が配置され、他端が前記排水路(4)内に延在し、当該他端に下取水管排水バルブ(72)が配置され、中間部が前記ボックスカルバート(51)を経由し、前記ボックスカルバート(51)内に対応する部位に下取水管制御バルブ(73)が配置され、長手方向に下取水管の分岐管(74)が間隔をなして配置され、前記下取水管の分岐管(74)と十字形状を形成している下取水管(7)とを備えていることを特徴とする人工湿地による汚水処理装置。
【請求項2】
前記汚水は、都市生活汚水又は低濃度の工業廃水であり、前記低濃度の工業廃水は、COD<350mg/L、NH3−N<30mg/L、SS<200mg/L、TN<35mg/Lかつ/又はTP<5mg/Lの汚水であることを特徴とする請求項1に記載の人工湿地による汚水処理装置。
【請求項3】
前記垂直流型人工湿地槽本体(1)は鉄筋コンクリートから構成され、前記垂直流型人工湿地槽本体(1)の長さ、幅及び高さの比率は1:0.5:0.1であることを特徴とする請求項1に記載の人工湿地による汚水処理装置。
【請求項4】
前記第2湿地ユニット(22)の構造と前記第1湿地ユニット(21)の構造とは互いに同じであり、
前記第1湿地ユニット(21)は、排水層(211)、下層(212)、下遷移層(213)、中間遷移層(214)、上遷移層(215)及び上層(216)を含み、
前記排水層(211)は前記垂直流型人工湿地槽本体(1)の底部に位置し、前記下層(212)は前記排水層(211)の上部に位置し、前記下遷移層(213)は前記下層(212)の上部に位置し、前記中間遷移層(214)は前記下遷移層(213)の上部に位置し、前記上遷移層(215)は前記中間遷移層(214)の上部に位置し、前記上層(216)は前記上遷移層(215)の上部に位置し、
前記上取水管(6)は前記分岐管(64)と一緒に前記上遷移層(215)と前記中間遷移層(214)との間に敷設され、前記下取水管(7)は前記下取水管の分岐管(74)と一緒に前記排水層(211)内に敷設されていることを特徴とする請求項1に記載の人工湿地による汚水処理装置。
【請求項5】
前記排水層(211)、前記下層(212)、前記下遷移層(213)、前記中間遷移層(214)、前記上遷移層(215)及び前記上層(216)の厚さの和は、前記垂直流型人工湿地槽本体(1)の高さより小さいことを特徴とする請求項4に記載の人工湿地による汚水処理装置。
【請求項6】
前記排水層(211)は前記垂直流型人工湿地槽本体(1)の底部に敷設された直径が20〜30mmの砂利から構成され、前記下層(212)は前記排水層(211)の上部に敷設された直径が15〜20mmの砂利から構成され、前記下遷移層(213)は前記下層(212)の上部に敷設された直径が12〜15mmの砂利から構成され、前記中間遷移層(214)は前記下遷移層(213)の上部に敷設された直径が8〜12mmのゼオライトから構成され、前記上遷移層(215)は前記中間遷移層(214)の上部に敷設された直径が5〜8mmの砂利から構成され、前記上層(216)は前記上遷移層(215)の上部に敷設された直径が3〜5mmの砂利から構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の人工湿地による汚水処理装置。
【請求項7】
前記上層(216)に抽水植物が栽培され、前記抽水植物はヨシ又はショウブであることを特徴とする請求項6に記載の人工湿地による汚水処理装置。
【請求項8】
前記上取水管の分岐管(64)の長手方向に、前記上取水管の分岐管排水孔(641)が間隔をなして設けられ、前記上取水管の分岐管排水孔(641)の孔口は下向きであり、
前記下取水管の分岐管(74)の長手方向に、前記下取水管の分岐管排水孔(741)が間隔をなして設けられ、前記下取水管の分岐管排水孔(741)の孔口は下向きであることを特徴とする請求項1又は4に記載の人工湿地による汚水処理装置。
【請求項9】
処理待ちの汚水を前記引水路(3)まで引いた状態において、前記上取水管給水バルブ(61)、前記上取水管排水バルブ(62)及び前記下取水管制御バルブ(73)を開け、同時に、前記上取水管制御バルブ(63)、前記下取水管給水バルブ(71)及び前記下取水管排水バルブ(72)を閉め、前記引水路(3)内の汚水は、前記上取水管給水バルブ(61)を経て前記第1湿地ユニット(21)エリア内に位置する前記上取水管(6)に流入し、前記上取水管の分岐管(64)によって前記第1湿地ユニット(21)の上部まで引き出され、前記第1湿地ユニット(21)の上部に流入した汚水は、自然垂直下排水の状態で前記第1湿地ユニット(21)の下部に到達し、次に、前記下取水管制御バルブ(73)を経て前記第2湿地ユニット(22)エリア内に位置する前記下取水管(7)に流入し、前記下取水管の分岐管(74)によって前記第2湿地ユニット(22)の下部まで引き込まれ、前記第2湿地ユニット(22)の下部に入り且つ前記第1湿地ユニット(21)によって処理された水は、垂直上方排水の状態で前記第2湿地ユニット(22)の上部に到達し、前記第2湿地ユニット(22)のエリア内に位置する前記上取水管の分岐管(64)を経て前記上取水管(6)に流入し、前記上取水管排水バルブ(62)によって排水路(4)まで引き込まれるという、順流洗浄モードによる給水処理のステップAと、
処理待ちの汚水を前記引水路(3)まで引いた状態において、前記上取水管制御バルブ(63)、前記下取水管給水バルブ(71)及び前記下取水管排水バルブ(72)を開け、同時に、前記上取水管給水バルブ(61)、前記上取水管排水バルブ(62)及び前記下取水管制御バルブ(73)を閉め、前記引水路(3)内の汚水は、前記下取水管の給水バルブ(71)を経て前記第1湿地ユニット(21)エリア内に位置する前記下取水管(7)に流入し、前記下取水管の分岐管(74)によって第1湿地ユニット(21)まで引き出され、前記第1湿地ユニット(21)の下部に流入した汚水は、垂直上方排水の状態で前記第1湿地ユニット(21)の上部に到達し、次に、前記上取水管制御バルブ(63)を経て前記第2湿地ユニット(22)エリア内に位置する前記上取水管(6)に流入し、前記上取水管の分岐管(64)によって前記第2湿地ユニット(22)の上部まで引き込まれ、前記第2湿地ユニット(22)の上部に入り且つ前記第1湿地ユニット(21)によって処理された水は、自然垂直下排水の状態で前記第2湿地ユニット(22)の下部に到達し、次に、前記第2湿地ユニット(22)のエリア内に位置する前記下取水管の分岐管(74)を経て前記下取水管(7)に流入し、前記下取水管排水バルブ(72)によって前記排水路(4)まで引き込まれるという、逆流洗浄モードによる給水処理のステップBとを含み、
前記順流洗浄モードによる給水処理のステップAと前記逆流洗浄モードによる給水処理のステップBとが交替で行われることを特徴とする請求項1に記載の人工湿地による汚水処理装置を用いた汚水処理方法。
【請求項10】
前記交替のタイミングは、汚水が前記引水路(3)に引き込まれる単位時間あたりの流量及び処理水が前記排水路(4)から引き出される単位時間あたりの流量により確定され、又は、前記上取水管(6)に配置された圧力流量計と前記下取水管(7)に配置された圧力流量計との圧力差により確定されることを特徴とする請求項9に記載の人工湿地による汚水処理装置を用いた汚水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境工学における汚水処理技術分野に関し、特に人工湿地による汚水処理装置及びこれを用いた汚水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、中国の都市汚水処理工場では、従来の二段活性汚泥法処理工程を採用して汚水処理を行うのが一般的である。汚水処理量の増加に従って、処理能力を向上させるための改革が必要である。しかしながら、従来の工程(即ち、前述した二段活性汚泥処理法)を採用して改革すれば、工程の投資が高額になる。また、エネルギー消費量が莫大になり、運行管理の要件が厳格になり、二次汚染が生じやすく、持続可能な発展の要件を満たさない。従来の生物学的曝気槽技術を採用する場合は、汚水内の有機物を効果的に除去することができるが、窒素・リンに対する除去能力が低い。膜バイオリアクタ技術(即ち、膜分離技術)を採用する場合は、放流水質が高いが、投資・実行費用が高額になるため、当該技術の広範な応用が大幅に制限される。他の物理化学的処理技術を採用する場合は、投資費用が高額になり、放流水質が不安定や二次汚染等のような問題が発生する。
【0003】
人工湿地技術は、20世紀70年代に台頭した汚水処理技術である。当該技術は、建設投資及び運営管理コストが低く、エネルギー消費量も低く、運営期間が長く、運営効果が安定する等のメリットを有することから、多くの中小都市及び農村地区の生活汚水処理に徐々に応用されている。人工湿地技術を利用して生活汚水を処理する技術が知られている(例えば特許文献1の"汚水処理方法及び装置"参照)。特許文献1の技術的解決手段によれば、まず、汚水を沈殿池に引き入れ、沈殿させることにより大粒径の粒子及び浮遊物質を除去する。次に、水位が傾斜するプラグフロー式槽に汚水が入ることにより水中の浮遊物質及びCOD(化学的酸素要求量)がさらに低減され、その後汚水は、ダウンフロー式人工湿地槽(特許文献1ではダウンフロー式人工湿地と称される。)に入り、最後にアップフロー式人工湿地槽(特許文献1ではアップフロー式人工湿地と称される。)に入る。特許文献1の第2ページ21行〜27行に、従来の二段活性汚泥処理法と比較した技術的効果が客観的に示されている。しかしながら、特許文献1の発明に係る解決手段は、以下の欠陥を有する。1つ目は、プラグフロー式槽内の水は、垂直流ではなく、水平流の流れ方式でダウンフロー式人工湿地槽に流れるため、汚水処理の効率が限られている。2つ目は、脱窒が先で、硝化作用が後のため、脱窒反応に不利である。3つ目は、汚水が沈殿池へ流れてからアップフロー式人工湿地槽までのステップが多く、また、各ステップが全体として1つのまとまった有機的なステップを形成するわけではないため、汚水処理の過程が長い。また、特許文献2は、"複合垂直流型人工湿地の寿命を延長する装置及び方法"を提供している。特許文献2によれば、汚水が垂直流の方式で人工湿地槽(特許文献2では"人工湿地ユニット"と称される。)に流れ込み、前述した特許文献1の水平流と比較すると、汚水処理の効率が向上し、特許文献2の段落0013に記載された技術的効果を客観的に奏する。しかしながら、特許文献2の発明では、湿地ユニット本体が穿孔仕切りを介して2つの湿地ユニットに分割され、2セットの独立した配水システム及び集水システムを介して汚水の循環処理を実現するため、構造が複雑で、コストが高く、操作が煩雑であるという欠点がある。
【0004】
上記の既存技術に鑑みて、本出願人は、長期且つ有益な探求を続け、実験を繰り返した結果、以下の技術的解決手段を完成させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公告第1163427号明細書
【特許文献2】中国特許出願公告第103274529号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、都市生活汚水及び低濃度の工業廃水に対するエコ処理に役に立ち、水流の流況を周期的に変更する要件を満たすことで、蓄積された汚染物質の分解・転化を促進し、詰まりが回避されることにより、システムの使用寿命が延長され、さらに、汚水に対する浄化機能の向上及び表面層基質の再生利用に有益であり、構造の簡潔化により、設備投資のコストが軽減され、操作、管理及び保護が便利な人工湿地による汚水処理装置を提供することである。
【0007】
本発明のもう1つの課題は、水流の流況を周期的に変更することを確保することで、人工湿地の継続的な自己洗浄効果を奏する人工湿地による汚水処理装置を用いた汚水処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、以下のような手段によって解決される。本発明に係る人工湿地による汚水処理装置は、垂直流型人工湿地槽本体、垂直流型汚水処理人工湿地、引水路、排水路、仕切り、上取水管及び下取水管を備えている。前記垂直流型人工湿地槽本体は、底部及び周囲が閉鎖され、上部が開口している。前記垂直流型汚水処理人工湿地は、前記垂直流型人工湿地槽本体に設けられている。前記引水路は、処理待ちの汚水を前記垂直流型汚水処理人工湿地まで引き込むため、前記垂直流型人工湿地槽本体の一端に設けられ、当該一端の幅方向の中間に位置する。前記排水路は、前記垂直流型汚水処理人工湿地によって処理された処理水を引き出すため、前記垂直流型人工湿地槽本体の他端に設けられ、当該他端の幅方向の中間に位置する。前記仕切りは、前記垂直流型人工湿地槽本体の長手方向の中間に設けられ、前記垂直流型汚水処理人工湿地を第1湿地ユニット及び第2湿地ユニットに分離している。前記仕切りの長手方向の中間位置には、ボックスカルバートが設けられている。前記ボックスカルバートは、前記引水路と前記排水路との間に対応している。前記上取水管は、水平状態で前記垂直流型汚水処理人工湿地内に敷設され、前記垂直流型汚水処理人工湿地の上部に位置する。前記上取水管の一端は前記引水路内に延在し、当該一端に上取水管給水バルブが配置され、前記上取水管の他端は前記排水路内に延在し、当該他端に上取水管排水バルブが配置されている。前記上取水管の中間部が前記ボックスカルバートを経由し、前記上取水管における前記ボックスカルバート内に対応する部位に上取水管制御バルブが配置され、前記上取水管の長手方向に上取水管の分岐管が間隔をなして配置され、前記上取水管の分岐管と前記上取水管とが十字形状を形成している。前記下取水管は、水平状態で前記垂直流型汚水処理人工湿地内に敷設され、前記垂直流型汚水処理人工湿地の下部に位置する。前記下取水管の一端は前記引水路内に延在し、当該一端に下取水管給水バルブが配置され、前記下取水管の他端は前記排水路内に延在し、当該他端に下取水管排水バルブが配置されている。前記下取水管の中間部が前記ボックスカルバートを経由し、前記下取水管における前記ボックスカルバート内に対応する部位に下取水管制御バルブが配置され、前記下取水管の長手方向に下取水管の分岐管が間隔をなして配置され、前記下取水管の分岐管と前記下取水管とが十字形状を形成している。
【0009】
本発明に係る1つの具体的な実施形態において、前記汚水は、都市生活汚水又は低濃度の工業廃水であり、前記低濃度の工業廃水は、COD<350mg/L、NH
3−N<30mg/L、SS<200mg/L、TN<35mg/L及び/又はTP<5mg/Lの汚水である。
【0010】
本発明に係るもう1つの具体的な実施形態において、前記垂直流型人工湿地槽本体は鉄筋コンクリートから構成され、前記垂直流型人工湿地槽本体の長さ、幅及び高さの比率は1:0.5:0.1である。
【0011】
本発明に係るもう1つの具体的な実施形態において、前記第2湿地ユニットの構造と前記第1湿地ユニットの構造とは互いに同じである。前記第1湿地ユニットは、排水層、下層、下遷移層、中間遷移層、上遷移層及び上層を含む。前記排水層は前記垂直流型人工湿地槽本体の底部に位置し、前記下層は前記排水層の上部に位置し、前記下遷移層は前記下層の上部に位置し、前記中間遷移層は前記下遷移層の上部に位置し、前記上遷移層は前記中間遷移層の上部に位置し、前記上層は前記上遷移層の上部に位置する。前記上取水管は前記上取水管の分岐管と一緒に前記上遷移層と前記中間遷移層との間に敷設され、前記下取水管は前記下取水管の分岐管と一緒に前記排水層内に敷設されている。
【0012】
本発明に係るもう1つの具体的な実施形態において、前記排水層、前記下層、前記下遷移層、前記中間遷移層、前記上遷移層及び前記上層の厚さの和は、前記垂直流型人工湿地槽本体の高さより小さい。
【0013】
本発明に係るもう1つの具体的な実施形態において、前記排水層は、前記垂直流型人工湿地槽本体の底部に敷設された直径が20〜30mmの砂利から構成されている。前記下層は、前記排水層の上部に敷設された直径が15〜20mmの砂利から構成されている。前記下遷移層は、前記下層の上部に敷設された直径が12〜15mmの砂利から構成されている。前記中間遷移層は、前記下遷移層の上部に敷設された直径が8〜12mmのゼオライトから構成されている。前記上遷移層は、前記中間遷移層の上部に敷設された直径が5〜8mmの砂利から構成されている。前記上層は、前記上遷移層の上部に敷設された直径が3〜5mmの砂利から構成されている。
【0014】
本発明に係る更なるもう1つの具体的な実施形態において、前記上層に抽水植物が栽培され、前記抽水植物はヨシ又はショウブである。
【0015】
本発明に係る更なるもう1つの具体的な実施形態において、前記上取水管の分岐管の長手方向に、上取水管の分岐管排水孔が間隔をなして設けられ、当該上取水管の分岐管排水孔の孔口は下向きである。前記下取水管の分岐管の長手方向に、下取水管の分岐管排水孔が間隔をなして設けられ、当該下取水管の分岐管排水孔の孔口は下向きである。
【0016】
本発明のもう1つの課題は、以下のような手段によって解決される。本発明に係る人工湿地による汚水処理装置を用いた汚水処理方法は、以下のステップを含む。
【0017】
ステップA:順流洗浄モードによる給水処理。処理待ちの汚水を前記引水路まで引いた状態において、前記上取水管給水バルブ、前記上取水管排水バルブ及び前記下取水管制御バルブを開け、同時に、前記上取水管制御バルブ、前記下取水管給水バルブ及び前記下取水管排水バルブを閉める。前記引水路内の汚水は、前記上取水管給水バルブを経て前記第1湿地ユニットエリア内に位置する上取水管に流入し、且つ前記上取水管の分岐管によって前記第1湿地ユニットの上部まで引き込まれる。前記第1湿地ユニットの上部に流入した汚水は、自然垂直下排水の状態で前記第1湿地ユニットの下部に到達し、次に、前記下取水管制御バルブを経て前記第2湿地ユニットエリア内に位置する下取水管に流入し、前記下取水管の分岐管によって前記第2湿地ユニットの下部まで引き込まれる。前記第2湿地ユニットの下部に入り且つ前記第1湿地ユニットによって処理された水は、垂直上方排水の状態で前記第2湿地ユニットの上部に到達し、次に、前記第2湿地ユニットのエリア内に位置する前記上取水管の分岐管を経て前記上取水管に流入し、前記上取水管排水バルブによって前記排水路まで引き込まれる。
【0018】
ステップB:逆流洗浄モードによる給水処理。処理待ちの汚水を前記引水路まで引いた状態において、前記上取水管制御バルブ、前記下取水管給水バルブ及び前記下取水管排水バルブを開け、同時に、前記上取水管給水バルブ、前記上取水管排水バルブ及び前記下取水管制御バルブを閉める。前記引水路内の汚水は、前記下取水管給水バルブを経て前記第1湿地ユニットエリア内に位置する下取水管に流入し、前記下取水管の分岐管によって前記第1湿地ユニットの下部まで引き込まれる。前記第1湿地ユニットの下部に流入した汚水は、垂直上方排水の状態で前記第1湿地ユニットの上部に到達し、次に、前記上取水管制御バルブを経て前記第2湿地ユニットエリア内に位置する前記上取水管に流入し、前記上取水管の分岐管によって前記第2湿地ユニットの上部まで引き込まれる。前記第2湿地ユニットの上部に入り且つ前記第1湿地ユニットによって処理された水は、自然垂直下排水の状態で前記第2湿地ユニットの下部に到達し、次に、前記第2湿地ユニットのエリア内に位置する前記下取水管の分岐管を経て前記下取水管に流入し、前記下取水管排水バルブによって前記排水路まで引き込まれる。
【0019】
前記順流洗浄モードによる給水処理のステップAと前記逆流洗浄モードによる給水処理のステップBとは、交替で行われる。
【0020】
本発明に係る更なるもう1つの具体的な実施形態において、前記交替のタイミングは、汚水が前記引水路に引き込まれる単位時間あたりの流量及び処理水が前記排水路から引き出される単位時間あたりの流量により確定され、又は、前記上取水管に配置された圧力流量計と前記下取水管に配置された圧力流量計との圧力差により確定される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る技術的解決手段の技術的効果の1つとして、垂直流型人工湿地槽本体に第1湿地ユニット及び第2湿地ユニットから構成された垂直流型汚水処理人工湿地が配置されているため、生活汚水及び低濃度の(即ち、汚染度が軽い)工業廃水に対するエコ処理を行うことができる。2つ目の効果として、上取水管の管路に上取水管給水バルブ、排水バルブ及び上取水管制御バルブが配置され、下取水管に下取水管給水バルブ、排水バルブ及び下取水管制御バルブが配置されている。そのため、対応するバルブを制御することにより、水流の流況を周期的に変更する要件が満たされ、汚染物質の削減に有益であり、垂直流型汚水処理人工湿地の使用寿命が保障され、管路の詰まりが回避される。3つ目の効果として、垂直流型汚水処理人工湿地は、再生機能を有するため、汚水に対する持続的な浄化処理能力が得られる。4つ目の効果として、全体の構造が簡単で且つ全体のモジュール化構造として表現されることから、製造コストが低く、操作、管理及び保護が便利である。5つ目の効果として、本発明に係る方法によって、水流の流況を周期的に変更することを十分に確保することができ、これによって、システム全体の持続的且つ安定した使用効果が具現化される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る人工湿地による汚水処理装置の実施形態の概略図である。
【
図3】
図1及び
図2に示される上取水管及び下取水管の詳細構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
特許庁の審査官、特に公衆が本発明の技術的実質及び有益な効果をより明白に理解するために、本出願人は、以下の実施形態について詳細に説明する。しかしながら、実施形態についての説明は、本発明の技術的解決手段を限定するものではない。本発明の思想に基づいて成された形式上(非実質的な)の同様の効果を奏する変換は、本発明の技術的解決手段の範囲内である。
【0024】
<実施形態1>
図1及び
図2に示すように、実施形態1に係る垂直流型人工湿地槽本体1は、鉄筋コンクリートを使用して流し込んだ(即ち、鉄筋コンクリートから構成された)ものであることが好ましい。垂直流型人工湿地槽本体1の長さ、幅及び高さは、実施形態1において特別に限定する必要がない。なぜなら、汚水に対する処理量又は処理能力に基づいて、垂直流型人工湿地槽本体1の容積を増大又は縮小するような適当な調整を行うことができるからである。しかしながら、垂直流型人工湿地槽本体1は、容積の変化に応じて寸法が変化するが、長さ、幅及び高さの比率が1:0.5:0.1であることが好ましい。例えば、長さは、15mであれば、幅は、7.5mであり、高さは、1.5mである。
【0025】
図1及び
図2に示すように、垂直流型人工湿地槽本体1は、底部及び周囲が閉鎖され、上部が開口しているため、全体として池又は槽のような形状である。
【0026】
垂直流型汚水処理人工湿地2は、垂直流型人工湿地槽本体1(具体的には、垂直流型人工湿地槽本体1内)に配置されている。処理待ちの汚水を垂直流型汚水処理人工湿地2まで引き込むための引水路3は、垂直流型人工湿地槽本体1の一端(
図1及び
図2に示される位置状態の左端)に直接設けられ、当該一端の幅方向の中間に位置する。垂直流型汚水処理人工湿地2によって処理された汚水を引き出すための排水路4は、垂直流型人工湿地槽本体1の他端(
図1及び
図2に示される位置状態の右端)に直接設けられ、当該他端の幅方向の中間に位置する。仕切り5は、垂直流型人工湿地槽本体1の長手方向の中間位置に設けられ、垂直流型汚水処理人工湿地2を仕切り5の左側に位置する第1湿地ユニット21及び仕切り5の右側に位置する第2湿地ユニット22に分離している。仕切り5の長手方向の中間位置には、ボックスカルバート51が設けられている。ボックスカルバート51は、引水路3と排水路4との間に対応している。即ち、引水路3、ボックスカルバート51及び排水路4は、一直線状に配置されている。上取水管(PVC管が好ましい。)6は、水平状態で垂直流型汚水処理人工湿地2内に敷設され、垂直流型汚水処理人工湿地2の上部に位置する。上取水管6の一端(左端)は引水路3内に延在し、当該一端に上取水管給水バルブ61が配置されている。上取水管6の他端(右端)は、排水路4内に延在し、当該他端には上取水管排水バルブ62が配置されている。上取水管6の中間部は、ボックスカルバート51を経由している。上取水管6におけるボックスカルバート51内に対応する部位には、上取水管制御バルブ63が配置されている。上取水管6の長手方向には、上取水管の分岐管(PVC管が好ましい。)64が間隔をなして配置されている。分岐管64と上取水管6とは、十字形状を形成している。下取水管(PVC管が好ましい。)7は、水平状態で垂直流型汚水処理人工湿地2内に敷設され、垂直流型汚水処理人工湿地2の下部に位置する。下取水管7の一端(左端)は引水路3内に延在し、当該一端に下取水管給水バルブ71が配置されている。下取水管7の他端(右端)は排水路4内に延在し、当該他端に下取水管排水バルブ72が配置されている。下取水管7の中間部は、ボックスカルバート51を経由している。下取水管7におけるボックスカルバート51内に対応する部位には、下取水管制御バルブ73が配置されている。下取水管7の長手方向には、下取水管の分岐管(PVC管が好ましい。)74が間隔をなして配置されている。分岐管74と下取水管7とは、十字形状を形成している。
【0027】
上述した汚水は、都市生活汚水及び低濃度の(即ち、汚染度が軽い)工業廃水という2種類であるが、当該2種類に限定されない。ここで、低濃度の工業廃水は、COD<350mg/L、NH
3−N<30mg/L、SS<200mg/L、TN<35mg/L及び/又はTP<5mg/Lの工業廃水である。
【0028】
上述した第2湿地ユニット22の構成及び機能等は、第1湿地ユニット21と完全に同じで、仕切り5により分離されているだけであるため、以下、第1湿地ユニット21のみについて詳細に説明する。
【0029】
図1及び
図2に示すように、第1湿地ユニット21は、排水層211、下層212、下遷移層213、中間遷移層214、上遷移層215及び上層216を含む。排水層211は垂直流型人工湿地槽本体1の底部に位置し、下層212は排水層211の上部に位置し、下遷移層213は下層212の上部に位置し、中間遷移層214は下遷移層213の上部に位置し、上遷移層215は中間遷移層214の上部に位置し、上層216は上遷移層215の上部に位置する。上取水管6は、上取水管の分岐管64と一緒に上遷移層215と中間遷移層214との間に敷設され、下取水管7は、下取水管の分岐管74と一緒に排水層211内に敷設されている。
【0030】
好ましくは、排水層211、下層212、下遷移層213、中間遷移層214、上遷移層215及び上層216の厚さの和は、垂直流型人工湿地槽本体1の高さより小さい。
【0031】
排水層211は、垂直流型人工湿地槽本体1の底部に敷設された直径が20〜30mmの砂利から構成されている。下層212は、排水層211の上部に敷設された直径が15〜20mmの砂利から構成されている。下遷移層213は、下層212の上部に敷設された直径が12〜15mmの砂利から構成されている。中間遷移層214は、下遷移層213の上部に敷設された直径が8〜12mmのゼオライトから構成されている。上遷移層215は、中間遷移層214の上部に敷設された直径が5〜8mmの砂利から構成されている。上層216は、上遷移層215の上部に敷設された直径が3〜5mmの砂利から構成されている。
【0032】
上層216には、抽水植物が栽培されている。当該抽水植物は、ヨシ又はショウブであることが好ましい(不図示)。
【0033】
実施形態1において、垂直流型人工湿地槽本体1は、長さ15m、幅7.5m、高さ1.5mであるのに対し、排水層211の厚さは20cmであり、下層212の厚さは20cmであり、下遷移層213の厚さは30cmであり、中間遷移層214の厚さは40cmであり、上遷移層215の厚さは20cmであり、上層216の厚さは10cmである。また、技術常識に基づいて、排水層211、下層212、下遷移層213、中間遷移層214、上遷移層215並びに上層216の長さ及び幅は、それぞれ垂直流型人工湿地槽本体1の長さ及び幅に対応している。
【0034】
図1及び
図2と併せて
図3を参照されたい。上取水管の分岐管64の長手方向に、上取水管の分岐管排水孔641が間隔をなして設けられ、上取水管の分岐管排水孔641の孔口は下向きである。下取水管の分岐管74の長手方向に、下取水管の分岐管排水孔741が間隔をなして設けられ、下取水管の分岐管排水孔741の孔口は下向きである。
【0035】
<実施形態2>
排水層211の厚さは25cmであり、下層212の厚さは25cmであり、下遷移層213の厚さは30cmであり、中間遷移層214の厚さは35cmであり、上遷移層215の厚さは25cmであり、上層216の厚さは10cmである。ほかは、実施形態1の説明と同じである。
【0036】
使用例:
本発明に係る人工湿地による汚水処理装置を用いた汚水処理方法は、以下のステップで実現される。
【0037】
ステップA:順流洗浄モードによる給水処理。処理待ちの汚水を引水路3まで引いた状態において、上取水管給水バルブ61、上取水管排水バルブ62及び下取水管制御バルブ73を開け、同時に、上取水管制御バルブ63、下取水管給水バルブ71及び下取水管排水バルブ72を閉める。引水路3内の汚水は、上取水管給水バルブ61を経て第1湿地ユニット21エリア内に位置する上取水管6に流入し、第1湿地ユニット21エリア内に位置する上取水管の分岐管64の上取水管の分岐管排水孔641によって第1湿地ユニット21の上部まで引き出される。第1湿地ユニット21の上部に流入した汚水は、自然垂直下排水の状態(下方排水方式ともいう)で第1湿地ユニット21の下部に到達し、次に、下取水管制御バルブ73を経て第2湿地ユニット22エリア内に位置する下取水管7に流入する。汚水は、さらに、第2湿地ユニット22内に位置する下取水管の分岐管74の下取水管の分岐管排水孔741によって、第2湿地ユニット22の下部まで引き込まれる。第2湿地ユニット22の下部に入り且つ第1湿地ユニット21によって処理された水は、垂直上方排水の状態(上方排水方式ともいう)で第2湿地ユニット22の上部に到達し、第2湿地ユニット22のエリア内に位置する上取水管の分岐管64の上取水管の分岐管排水孔641を経て上取水管6に流入し、上取水管排水バルブ62によって排水路4まで引き込まれる。
【0038】
ステップB:逆流洗浄モードによる給水処理。処理待ちの汚水を引水路3まで引いた状態において、上取水管制御バルブ63、下取水管給水バルブ71及び下取水管排水バルブ72を開け、同時に、上取水管給水バルブ61、上取水管排水バルブ62及び下取水管制御バルブ73を閉める。引水路3内の汚水は、下取水管給水バルブ71を経て第1湿地ユニット21エリア内に位置する下取水管7に流入し、第1湿地ユニット21内に位置する下取水管の分岐管74の下取水管の分岐管排水孔741によって第1湿地ユニット21の下部まで引き出される。第1湿地ユニット21の下部に流入した汚水は、垂直上方排水の状態で第1湿地ユニット21の上部に到達し、次に、上取水管制御バルブ63を経て第2湿地ユニット22エリア内に位置する上取水管6に流入し、第2湿地ユニット22内に位置する上取水管の分岐管64の上取水管の分岐管排水孔641によって第2湿地ユニット22の上部まで引き込まれる。第2湿地ユニット22の上部に入り且つ第1湿地ユニット21によって処理された水は、自然垂直下排水の状態で第2湿地ユニット22の下部に到達し、次に、第2湿地ユニット22のエリア内に位置する下取水管の分岐管74の下取水管の分岐管排水孔741を経て下取水管7に流入し、下取水管排水バルブ72によって排水路4まで引き込まれる。
【0039】
ここで、前述した順流洗浄モードによる給水処理のステップAと前述した逆流洗浄モードによる給水処理のステップBとは、交替で行われる。
【0040】
交替のタイミングは、汚水が引水路3に引き込まれる単位時間あたりの流量及び処理水が排水路4から引き出される単位時間あたりの流量により確定され、又は、上取水管6に配置された圧力流量計と下取水管7に配置された圧力流量計との圧力差により確定される。