(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6175689
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】ダクト
(51)【国際特許分類】
F16L 59/06 20060101AFI20170731BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20170731BHJP
F16L 59/147 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
F16L59/06
F24F13/02 H
F16L59/147
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-49293(P2013-49293)
(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-173704(P2014-173704A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】河合 清隆
(72)【発明者】
【氏名】谷 奈央人
【審査官】
渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−199896(JP,A)
【文献】
特開平11−099579(JP,A)
【文献】
特開2003−042389(JP,A)
【文献】
特開2002−181372(JP,A)
【文献】
特開2008−201371(JP,A)
【文献】
特開2001−246922(JP,A)
【文献】
国際公開第94/07733(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/06
F16L 59/147
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路を形成する筒状のブロー成形体からなるダクト本体を備えるダクトであって、
前記ダクト本体と一体成形され且つ前記ダクト本体の表面に環状に設けられる枠体と、
前記ダクト本体と一体成形され且つ前記ダクト本体の表面のうち前記枠体で囲われる領域に設けられる凸部と、
前記ダクト本体の表面に設けられる断熱部と、を有し、
前記断熱部は、
前記枠体の先端及び前記凸部の先端に接着されるとともに、前記ダクト本体の表面を部分的に覆う被覆層と、
前記ダクト本体の表面および前記被覆層の間に形成される空気層と、
を有し、
前記空気層は、前記枠体が前記被覆層で塞がれることで形成されるとともに、前記凸部によって複数の空気室に区画される、
ことを特徴とするダクト。
【請求項2】
前記凸部は、前記ダクト本体の表面に沿って延びる複数のリブであり、
前記複数のリブは、格子状に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のダクト。
【請求項3】
隣り合う2つの前記リブの間隔は、5〜15mmの範囲から設定される、
ことを特徴とする請求項2に記載のダクト。
【請求項4】
前記リブの高さは、1mm以上に設定される、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のダクト。
【請求項5】
前記被覆層は、吸音作用を備える材料で構成される、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダクト。
【請求項6】
前記ダクト本体は、下流側の端部に開口部を有し、
前記断熱部は、前記開口部の近傍に配置される、
ことを特徴とする請求項5に記載のダクト。
【請求項7】
前記ダクト本体は、前記流路を屈曲させる屈曲部を有し、
前記断熱部は、前記屈曲部において外側に膨らむ凸状の表面に設けられ、且つ、下流寄りに配置される、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のダクト。
【請求項8】
前記断熱部は、前記流路の軸線方向における中央位置が、前記流路の軸線方向における前記屈曲部の中央位置よりも下流寄りに配置される、
ことを特徴とする請求項7に記載のダクト。
【請求項9】
前記ダクト本体は、下方に凹む部分を有し、
前記断熱部は、前記下方に凹む部分の下側に形成される凸状の表面に配置される、
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のダクト。
【請求項10】
前記ダクト本体は、発泡剤によって樹脂を発泡させて成形した発泡成形体である、
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクトに関し、より詳細には、ダクトの断熱技術に関する。
【背景技術】
【0002】
冷房、暖房、換気などに用いられるダクトは、外気や室内などの雰囲気温度と異なる温度の流体を流通させることが多い。このため、ダクトには、熱損失の防止や結露の防止の観点から断熱性が求められる。従来、ダクトを断熱する各種の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のダクトは、流体の流路を形成するダクト本体の外周面に熱収縮性発泡樹脂シートを被覆したものである。ダクト本体の外周面と熱収縮性発泡樹脂シートとの間には、閉じた空隙が形成され、この閉じた空隙によって、ダクトに断熱性が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−42389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のダクトでは、筒状のダクト本体の外周面全体(表面全体)に亘って熱収縮性発泡樹脂シートを被覆する。このため、大きな面積の熱収縮性発泡樹脂シートが必要であり、より少ない材料でダクト本体を効果的に断熱できる技術が要望されている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より少ない材料で断熱性を効果的に向上できるダクトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明は、流体の流路を形成するダクト本体を備えるダクトであって、前記ダクト本体の表面に設けられる断熱部を有し、前記断熱部は、前記ダクト本体の表面を部分的に覆う被覆層と、前記ダクト本体の表面および前記被覆層の間に形成される空気層と、を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ダクト本体の表面を部分的に覆う被覆層によって断熱部を構成したので、ダクト本体において、断熱が必要な部分のみに断熱部を設けることができる。これにより、ダクト本体の外周面全体を熱収縮性発泡樹脂シートで被覆する従来のダクトに比べ、より少ない材料で断熱性を効果的に向上させることができる。
【0009】
(2)本発明では、(1)の構成において、前記断熱部は、前記ダクト本体の表面に環状に設けられると共に前記被覆層で塞がれて、前記空気層を形成する枠体と、前記ダクト本体の表面のうち前記枠体で囲われる領域に設けられ、前記空気層を複数の空気室に区画する凸部と、を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、空気層の空気は、区画された複数の空気室の各々に閉じ込められる。すなわち、隣接する2つの空気室の間では、空気が移動しない。これにより、空気層において空気の移動による熱漏れを防止することができ、断熱性をより向上させることができる。
【0011】
(3)本発明では、(2)の構成において、前記凸部は、前記ダクト本体の表面に沿って延びる複数のリブであり、前記複数のリブは、格子状に配置される、ことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、格子状に規則的に配置した複数のリブにより、被覆層を安定的に支持することができる。また、複数の空気室を略同一の容積で形成することができるので、断熱性の均一化を図ることができる。
【0013】
(4)本発明では、(3)の構成において、隣り合う2つの前記リブの間隔は、5〜15mmの範囲から設定されることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、隣り合う2つのリブの間隔を5〜15mmの範囲から設定することで、空気層の断熱性向上および被覆層の形態安定化を図ることができる。これに対して、隣り合う2つのリブの間隔を5mm未満に設定すると、空気層の容積が小さくなり、十分な断熱性が得られないおそれがある。一方、隣り合う2つのリブの間隔を15mmよりも大きく設定すると、隣り合う2つのリブの間で被覆層が撓み易くなるため、被覆層の形態が不安定になるおそれがある。
【0015】
(5)本発明では、(3)または(4)の構成において、前記リブの高さは、1mm以上に設定されることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、リブの高さを1mm以上に設定することで、空気層の容積を増やして、高い断熱性を空気層に付与することができる。
【0017】
(6)本発明では、(1)〜(5)のいずれかの構成において、前記被覆層は、吸音作用を備える材料で構成されることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、被覆層において吸音作用を得ることができるので、ダクトにおける防音性を高めることができる。
【0019】
(7)本発明では、(6)の構成において、前記ダクト本体は、下流側の端部に開口部を有し、前記断熱部は、前記開口部の近傍に配置される、ことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、送風音が発生し易い開口部付近において、吸音作用を得ることができる。これにより、ダクトにおける防音性を効果的に高めることができる。
【0021】
(8)本発明では、(1)〜(7)のいずれかの構成において、前記ダクト本体は、前記流路を屈曲させる屈曲部を有し、前記断熱部は、前記屈曲部において外側に膨らむ凸状の表面に設けられ、且つ、下流寄りに配置される、ことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、冷たい流体が流路を流れる場合、ダクト本体における結露の発生を効果的に抑制することができる。すなわち、屈曲部では、外側に膨らむ壁部の裏面(内面)に流体が当たり易いため、この外側に膨らむ壁部の凸状の表面(外面)に結露が発生し易い。本発明では、このように結露が発生し易い凸状の表面に断熱部を設けたので、結露の発生を効果的に防止することができる。また、屈曲部では、外側に膨らむ壁部の裏面の特に下流側に、冷たい流体が当たり易い。本発明では、屈曲部において断熱部を下流寄りに配置したので、より効果的に結露の発生を防止することができる。
【0023】
(9)本発明では、(1)〜(8)のいずれかの構成において、前記ダクト本体は、下方に凹む部分を有し、前記断熱部は、前記下方に凹む部分の下側に形成される凸状の表面に配置されることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、結露が集まり易い表面に断熱性を付与することができるので、結露の発生を効果的に抑制することができる。すなわち、下方に凹む部分の下側に形成される凸状の表面には、結露が集まり易く、場合によっては凸状の表面から結露が垂れてしまう。本発明では、このように結露が集まり易い凸状の表面に断熱部を設けたので、結露の発生を効果的に防止することができる。
【0025】
(10)本発明では、(1)〜(9)のいずれかの構成において、前記ダクト本体は、発泡剤によって樹脂を発泡させて成形した発泡成形体である、ことを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、柔らかい発泡成形体でダクト本体を構成した場合であっても、ダクト本体が断熱部によって補強される。したがって、発泡成形体からなるダクト本体の剛性を断熱部によって高めることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、より少ない材料で断熱性を効果的に向上できるダクトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図6】
図1のB部の水平断面を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(実施形態)
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)について詳細に説明する。実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。また、図面は、符号の向きに見るものとする。
【0030】
(ダクト10の全体構成)
ダクト10の全体構成を
図1に基づいて説明する。
図1に示すように、ダクト10は、車両のインストルメントパネル(図示省略)の裏側に設けられる空調用ダクトであり、空気(本発明にいう「流体」の一例)の流路11A,11Bを形成するダクト本体20と、このダクト本体20において断熱が必要な箇所に設けられる複数の断熱部30A,30B,30Cとを有する。
【0031】
(ダクト本体20の構成)
ダクト本体20は、例えば、ブロー成形によって成形される合成樹脂製の成形体であって、基部21と、この基部21から分岐する分岐管である複数の筒部22A,22Bとによって構成される。ダクト本体20の成形材料には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を含む各種の樹脂を用いることができる。また、ダクト10は、軽量性などを考慮すると、発泡剤によって樹脂を発泡させて成形した発泡成形体であることが好適である。発泡剤には、物理発泡剤、化学発泡剤およびその混合物を用いることができる。
【0032】
基部21は、ダクト10の左右方向の中央部に形成される。基部21には、導入口23が設けられる。この導入口23は、流路11A,11Bの上流側の端部であり、車両用空調装置(図示省略)に接続される。
【0033】
筒部22A,22Bは、左右一対の筒部22Aと、これら一対の筒部22Aよりも外側に設けられる左右一対の筒部22Bとで構成される。左右の筒部22Aは、平面視において基部21からハの字状に外側に開いて延びた後、流路11Aを屈曲させる屈曲部25Aによって内側に曲がり互いに平行に延びる。筒部22Aの下流側の端部は、開口部26Aを有し、この開口部26Aは、車室に空気を吹き出す吹き出し口を構成する。
【0034】
一方、左右の筒部22Bは、基部21から左右両側方に延びた後、流路11Bを屈曲させる屈曲部25Bによって内側に曲がる。筒部22Bの下流側の端部は、開口部26Bを有し、この開口部26Bは、車室に空気を吹き出す吹き出し口を構成する。また、筒部22Bは、基部21と屈曲部25Bの間に谷状部27を有する。この谷状部27は、本発明にいう「下方に凹む部分」に相当するものであり、筒部22Bを上下方向に屈曲させる。
【0035】
(断熱部30A〜30Cの基本構成)
次に、断熱部30A〜30Cの基本構成および作用・効果を
図2、
図3に基づいて説明する。なお、断熱部30A〜30Cのそれぞれの構成および作用・効果については、後述する。
【0036】
この基本構成の説明では、断熱部30A〜30Cをまとめて「断熱部30」と記載する。また、筒部22A,22Bをまとめて「筒部22」と記載し、流路11A,11Bをまとめて「流路11」と記載する。
【0037】
図2に示すように、断熱部30は、筒部22の表面33に設けられる枠体31および凸部32と、枠体31の開放側を塞いで筒部22の表面33を部分的に覆う被覆層35と、筒部22の表面33および被覆層35の間に形成される空気層36とを主要素とする。断熱部30は、筒部22の表面33の形状に応じて、平面状、曲面状など任意の形状に形成可能であるが、ここでは、横断面が長方形状の筒部22の表面33のうち、比較的広い長辺側の面37に沿って平面状に形成される断熱部30を例示する。
【0038】
図3に示すように、枠体31は、長辺側の面37に設けられる環状(この例では、四角形状)の突起であり、被覆層35で塞がれて空気層36を形成する。枠体31の幅は、長辺側の面37の幅と同程度の大きさに設定される。枠体31の形状は、長方形状や正方形状などの四角形状の他、円形状、楕円形状、多角形状でもよい。
【0039】
凸部32は、長辺側の面37のうち枠体31で囲われる領域に設けられる。この例では、長辺側の面37に沿って延びる複数のリブ32aで凸部32を構成する。複数のリブ32aは、格子状に配置される。また、複数のリブ32aおよび枠体31の高さは、同程度の大きさに設定される。
【0040】
空気層36は、枠体31で囲われる断熱空間であり、格子状に配置される複数のリブ32a(凸部32)によって、四角形状の複数の空気室36aに区画される。
【0041】
図4に示すように、被覆層35は、枠体31の外形形状に合わせた形状(この例では、四角形状)に形成されるシール材であって、枠体31の開放側を塞ぐようにして、筒部22の表面33(例えば、短辺側の面38)、枠体31の先端、リブ32aの先端に接着される。これにより、複数の空気室36aは、各々の開放側が被覆層35で塞がれて密閉される。
【0042】
被覆層35の構成材料は、任意であるが、ダクト10の防音性を考慮すると、吸音作用を備える材料で被覆層35を構成することが好適である。吸音作用を備える材料としては、不織布、織布、連続気泡発泡シート(例えば、発泡ウレタンシートなど)、微細な孔を有する非通気性シートなどが挙げられる。なお、被覆層35の構成材料や、空気室36aの形態を調整することで、特定周波数の音を選択的に吸音できるようにしてもよい。
【0043】
ここで、断熱部30におけるリブ32aの好適な寸法について述べる。
本発明者は、リブ32aの寸法と断熱部30の性能との関係を調査した結果、隣り合う2つのリブ32aの間隔P(
図3参照)を5〜15mmの範囲から設定し、リブ32aの高さHを1mm以上に設定することが好適であることを見出した。
【0044】
すなわち、隣り合う2つのリブ32aの間隔Pを5mm未満に設定すると、空気層36の容積が小さくなり、十分な断熱性が得られないおそれがある。一方、隣り合う2つのリブ32aの間隔Pを15mmよりも大きく設定すると、隣り合う2つのリブ32aの間で被覆層35が撓み易くなるため、被覆層35の形態が不安定になるおそれがある。したがって、隣り合う2つのリブ32aの間隔Pを5〜15mmの範囲から設定することにより、空気層36の断熱性向上および被覆層35の形態安定化を図ることができる。
【0045】
また、リブ32aの高さHを1mm以上に設定することで、空気層36の容積を増やして、高い断熱性を空気層36に付与することができる。
【0046】
以上、説明したダクト10によれば、筒部22の表面33を部分的に覆う被覆層35によって断熱部30を構成したので、ダクト本体20において、断熱が必要な部分のみに断熱部30を設けることができる。これにより、ダクト本体の外周面全体を熱収縮性発泡樹脂シートで被覆する従来のダクトに比べ、より少ない材料で断熱性を効果的に向上させることができる。
【0047】
また、空気層36の空気は、区画された複数の空気室36aの各々に閉じ込められる。すなわち、隣接する2つの空気室36aの間では、空気が移動しない。これにより、空気層36において空気の移動による熱漏れを防止することができ、断熱性をより向上させることができる。
【0048】
また、格子状に規則的に配置した複数のリブ32aにより、被覆層35を安定的に支持することができる。また、複数の空気室36aを略同一の容積で形成することができるので、断熱性の均一化を図ることができる。
【0049】
さらに、吸音作用を備える材料で被覆層35を構成すれば、ダクト10における防音性を高めることができる。例えば、通気性を備える材料で被覆層35を構成した場合、ダクト本体20の内部(流路11)からの音を、通気性を有する被覆層35に当てることで、音のエネルギーを減衰させることができる。
【0050】
加えて、柔らかい発泡成形体でダクト本体20を構成した場合であって、ダクト本体20がリブ32aによって補強される。また、被覆層35によってもダクト本体20が補強される。したがって、発泡成形体からなるダクト本体20の剛性を断熱部30によって高めることができる。
【0051】
続いて、断熱部30A〜30Cのそれぞれの構成および作用・効果を
図5〜
図7に基づいて説明する。
【0052】
(断熱部30Aの構成)
図5に示すように、断熱部30Aは、断熱部30(
図3参照)を基本構成としたものであり、筒部22Aにおける開口部26Aの近傍に設けられる。より具体的には、筒部22Aの表面33において、開口部26Aから距離L(例えば、10cm程度)だけ離れた位置に断熱部30Aの中央部を位置させ、且つ、吸音作用を備える材料で被覆層35を構成する。
【0053】
この断熱部30Aによれば、送風音が発生し易い開口部26A付近において、吸音作用を得ることができる。これにより、ダクト10における防音性を効果的に高めることができる。
【0054】
(断熱部30Bの構成)
図6に示すように、断熱部30Bは、断熱部30(
図3参照)を基本構成としたものであり、屈曲部25Bにおいて外側に膨らむ凸状の表面41Bに設けられ、且つ、下流寄りに配置される。より具体的には、凸状の表面41Bの曲率に合わせて断熱部30Bを曲面状に形成すると共に、矢印Fで示す流路11Bの軸線に沿う方向において、断熱部30Bの中央位置P1を、屈曲部25Bの中央位置P1に対して下流寄りに配置する。
【0055】
この断熱部30Bによれば、冷たい空気が流路11Bを流れる場合、筒部22Bにおける結露の発生を効果的に抑制することができる。すなわち、屈曲部25Bでは、白抜きの矢印で示すように、外側に膨らむ壁部42の裏面(内面)43に冷たい空気が当たり易いため、この外側に膨らむ壁部42の凸状の表面(外面)41Bに結露が発生し易い。したがって、このように結露が発生し易い凸状の表面41Bに断熱部30を設けることで、結露の発生を効果的に防止することができる。また、屈曲部25Bでは、外側に膨らむ壁部42の裏面43の特に下流側に、冷たい空気が当たり易い。このため、屈曲部25Bにおいて断熱部30を下流寄りに配置することで、より効果的に結露の発生を防止することができる。
【0056】
(断熱部30Cの構成)
図7に示すように、断熱部30Cは、断熱部30(
図3参照)を基本構成としたものであり、谷状部27の下側に形成される凸状の表面41Cに設けられる。より具体的には、谷状部27の最下端45を含む凸状の表面41Cに、凸状の表面41Cの曲率に合わせて曲面状に形成された断熱部30Cを配置する。
【0057】
この断熱部30Cによれば、結露が集まり易い凸状の表面41Cに断熱性を付与することができるので、結露の発生を効果的に抑制することができる。すなわち、谷状部27においては、凸状の表面41Cの最下端45付近に結露が集まり易く、場合によっては最下端45付近から結露が垂れてしまう。したがって、このように結露が集まり易い凸状の表面41Cに断熱部30を設けることで、結露の発生を効果的に防止することができる。
【0058】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0059】
例えば、実施形態では、本発明のダクトを車両用の空調ダクトに適用した例を示したが、本発明のダクトは、車両用の空調ダクトの他、流体の流路を形成するダクト本体を備えた各種のダクトに適用可能である。
【0060】
また、実施形態では、断熱部30A〜30Cを有するダクト10を示したが、本発明にいう断熱部は、断熱部30A〜30Cを適宜組み合わせたものでもよい。また、本発明のダクトは、断熱部30A〜30Cを選択的に有するものでもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 ダクト
11A 流路
11B 流路
20 ダクト本体
25A 屈曲部
25B 屈曲部
26A 開口部
26B 開口部
27 谷状部(下方に凹む部分)
30A 断熱部
30B 断熱部
30C 断熱部
31 枠体
32 凸部
32a リブ
33 筒部の表面(ダクト本体の表面)
35 被覆層
36 空気層
36a 空気室
41B 凸状の表面
41C 凸状の表面
H リブの高さ
P リブの間隔