(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6175874
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F01L 13/00 20060101AFI20170731BHJP
F01L 1/245 20060101ALI20170731BHJP
F01L 1/255 20060101ALI20170731BHJP
F01L 3/24 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
F01L13/00 302F
F01L13/00 301H
F01L1/245 A
F01L1/255 G
F01L3/24 C
F01L13/00 301N
F01L13/00 302D
F01L13/00 302E
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-83599(P2013-83599)
(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公開番号】特開2014-206087(P2014-206087A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】角田 宏
【審査官】
石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−267248(JP,A)
【文献】
特開昭59−023019(JP,A)
【文献】
特開平06−229216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 13/00
F01L 1/245
F01L 1/255
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側にロッカーアームの傾動の支点となる傾動軸を有し、他端側に機関弁を押圧する機関弁押圧部材を有し、中央部に内燃機関のクランク軸の回転に応じて回転するカムとの作用面を有するロッカーアームと、このロッカーアームの一端側よりも下方に配置されて上下方向に伸縮自在に構成された油圧タペットとを備えた内燃機関において、
平面視で、前記傾動軸が前記ロッカーアームの側方からその傾動軸の軸方向に突出し、前記油圧タペットが前記傾動軸から前記ロッカーアームの一端側から他端側へ向かう方向と反対方向に離間すると共に前記傾動軸の軸方向にずれた位置に配置され、
前記ロッカーアーム及び前記油圧タペットとは別体に構成された支持部材を備え、
その支持部材の一端部が前記ロッカーアームの側方から突出した前記傾動軸を支持し、他端部が前記油圧タペットの上端に接合されたことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記機関弁を休止させるときに、前記油圧タペット内に設けた逆止弁を開放するニードルを有した電磁弁を備えると共に、
前記油圧タペットを前記支持部材に対して気筒側に、前記電磁弁を前記支持部材に対して気筒側の反対側にそれぞれ配置して、前記支持部材を前記油圧タペットと前記電磁弁で挟持して構成することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
複数の前記ロッカーアームが一つの前記傾動軸を共有することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記油圧タペット内に供給される作動油を貯蔵する貯蔵槽を、シリンダヘッドの外側に備え、該貯蔵槽と前記油圧タペットを該シリンダヘッドに設けた油通路で接続することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一端側にロッカーアームの傾動の支点となる傾動軸を有し、他端側に機関弁を押圧する機関弁押圧部材を有し、中央部に内燃機関のクランク軸の回転に応じて回転するカムとの作用面を有するロッカーアームを備えた内燃機
関に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンバルブ(機関弁;以下、バルブという)は、エンジンのシリンダヘッドに設けられ、エンジンのクランク軸の回転に応じて回転するカムシャフトによって開閉する。吸気バルブは吸気行程で開いて、燃焼室に吸入空気を送り、排気バルブは排気行程で開いて、燃焼室から排気ガスを排出している。
【0003】
一般に、可変排気量式のエンジンは、エンジンの運転状況によって燃料が供給される気筒数を減らして作動排気量を少なくすると共に、燃料供給が停止された気筒に対応するバルブの作動も停止させ、燃料消費量を低減させている。
【0004】
バルブの作動を停止させる機構として、ロッカーアーム自体にバルブの停止装置を組み込み、油圧シリンダでバルブの作動を停止させる装置が提案されている。しかし、ロッカーアームに停止機構を組み込むと機構が複雑になるため、装置の信頼性や耐久性に問題がある。
【0005】
一方、バルブクリアランスを調節する油圧タペットのチェックボールを、ソレノイドバルブにより押し下げ、カムによるリフトを吸収することで、バルブを休止させる装置もある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この装置に関しては、高圧部下方からシールを通してソレノイド軸によりチェックボール押付けスプリング座を移動させるものであるが、高圧下でソレノイドを作動させる難しさ、また、スプリング座との連結で構造が複雑となる問題がある。
【0007】
そこで、油圧タペットをロッカーアームの上部に配置して、油圧タペットの上部からチェックボールを押し下げるように構成した装置も提案されている。この装置について、
図5を参照しながら説明する。このエンジン1Xは、シリンダブロック2に設けられた各気筒3と連通するポート(吸気ポート、又は排気ポート)4を開閉するバルブ5を、シリンダヘッド6に設けている。このバルブ5は、バルブスプリング7により閉方向に付勢されると共に、カム8により傾動するロッカーアーム9により押圧され開方向に動作する。
【0008】
また、このエンジン1Xは、カム8のリフトをロッカーシャフト10で吸収し、バルブ5を停止させる機構として、油圧タペット13とソレノイドバルブ(電磁弁)14とを備える。
【0009】
このエンジン1Xによれば、ソレノイドバルブ14に通電し、ソレノイドバルブ14に設けたニードル25を駆動して、油圧タペット13のチェックボール(逆止弁)17を押し下げれば、高圧室21と油リザーバー23との連通部分であるオリフィス20が開放される。この状態で、カム8が作用してロッカーアーム9が傾動しようとすると、ロッカーアーム9から荷重を受けた高圧室21から油リザーバー23にオイルが流出し、油圧タペット13の全体の長さが縮む。このように、シリンダヘッドカバー26に対して油圧タペット13が上下に可動することで、カム8のリフトを吸収し、バルブ5を休止することができ、気筒休止運転が可能となる。これにより、燃料消費量が低減し、燃費が向上する。
【0010】
しかしながら、
図5に示すように、このエンジン1Xは、油圧タペット13の油リザーバー23に絶えずオイルを供給するために、シリンダヘッドカバー26に油通路を設ける必要がある。シリンダヘッドカバー26は本来防音のためのものであり、耐久性などは低く、そのため、衝突時などに油通路22からオイルが流出する可能性があり、危険である。
【0011】
また、そのシリンダヘッドカバー26に油圧タペット13やソレノイドバルブ14が取り付けられるため、シリンダヘッドカバー26の防音効果も低くなり、異音が発生する。
【0012】
加えて、油圧タペット13とソレノイドバルブ14の高さだけ、エンジン1Xの全高も高くなるという問題がある。油圧タペット13はその原理上、下側に高圧室21、その高圧室21の上部に油リザーバー23が配置され、且つチェックボール17は逆止弁となるので、そのチェックボール17を押し下げてオリフィス20を開放するためには、油リザーバー23側からチェックボール17を押し下げる必要がある。そのため、油圧タペット13の上部にソレノイドバルブ14を配置するので、全高が高くなる。
【0013】
さらに、組み付けの際には、シリンダヘッドカバー26に油圧タペット13とソレノイドバルブ14が取り付けられているため、シリンダヘッドカバー26からロッカーアーム9をぶら下げた状態で組み付けることになり、組み付け作業が難しいという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開昭59−023018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、機関弁を休止させる機構をシリンダヘッド内に収めることができると共に、容易に組み付けることができる内燃機関を提供することである
。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を解決するための本発明の内燃機関は、一端側にロッカーアームの傾動の支
点となる傾動軸を有し、他端側に機関弁を押圧する機関弁押圧部材を有し、中央部に内燃機関のクランク軸の回転に応じて回転するカムとの作用面を有するロッカーアームと、このロッカーアームの一端側よりも下方に配置されて上下方向に伸縮自在に構成された油圧タペットとを備えた内燃機関において、平面視で、前記傾動軸が前記ロッカーアームの側方からその傾動軸の軸方向に突出
し、前記油圧タペットが
前記傾動軸から前記ロッカーアームの一端側から他端側へ向かう方向と反対方向に離間すると共に前記傾動軸の軸方向にずれた位置に配置され、前記ロッカーアーム
及び前記油圧タペットとは別体に構成された支持部材を備え、その支持部材の一端部が前記ロッカーアームの側方から突出した前記傾動軸を支持し、他端部が前記油圧タペット
の上端に接合されたことを特徴とする。
【0017】
なお、ここでいう油圧タペットとは、従来技術と同様にオリフィスが開放されていない場合には、バルブクリアランスを調節する所謂ラッシュアジャスタとしての役割を有し、オリフィスが開放された場合には、カムの作用を吸収して、機関弁を休止させる装置のことをいう。
【0018】
この構成によれば、カムがロッカーアームに作用したときに、油圧タペットにより支持部材が移動し、それと共にロッカーアームの傾動軸も移動して、カムの作用を吸収して、
機関弁を休止させるように構成しても、ロッカーアームに対して油圧タペットを傾動軸の軸方向にずらした位置に配置させたことで、油圧タペットをシリンダヘッド内に収めることができ、内燃機関の全高を、低くすることができる。これにより、車両への搭載性を向上することができる。
【0019】
また、油圧タペットがシリンダヘッド内に収まっているので、油圧タペットにオイルを供給する油通路をシリンダヘッドカバーに設ける必要が無くなり、衝突時などにその油通路からオイルが流出する可能性がなくなり、安全性を向上することができる。
【0020】
加えて、機関弁を休止する機構を設けても、その機構の全高を低くすることができ、その機構がシリンダヘッドカバーを侵食することが無くなるので、シリンダヘッドカバーの遮音性を阻害せず、防音効果を向上することができる。
【0021】
さらに、シリンダヘッドカバーと油圧タペットが、及び油圧タペットとロッカーアームとが直接接合されていないので、先に油圧タペットを配置してから支持部材とロッカーアームを取り付けることが可能となり、油圧タペット及びロッカーアームをシリンダヘッドに容易に組み付けることができる。
【0022】
また、上記の内燃機関において、前記機関弁を休止させるときに、前記油圧タペット内に設けた逆止弁を開放するニードルを有した電磁弁を備えると共に、前記油圧タペットを前記支持部材に対して気筒側に、前記電磁弁を前記支持部材に対して気筒側の反対側にそれぞれ配置して、前記支持部材を前記油圧タペットと前記電磁弁で挟持して構成することが望ましい。
【0023】
電磁弁は油圧タペットの高圧室を形成する逆止弁を油リザーバー側から押し下げるように、油圧タペットの油リザーバーの上部に設けられると、高圧室のオリフィスを開放する機構が複雑にならずに、容易に組み立てることができる。
【0024】
その上、従来技術のように、ロッカーアームに油圧タペットを直接取り付ける場合に比べ、油圧タペットと支持部材とが相対的に動かないため、電磁弁に設けたニードルが油圧タペットの逆止弁を容易に開放することができる。
【0025】
加えて、上記の内燃機関において、複数の前記ロッカーアームが一つの前記傾動軸を共有するように構成すると、油圧タペットによりカムの作用を吸収すると、複数のロッカーアームにより動作しているそれぞれの機関弁を一度に休止させることができる。
【0026】
これにより、例えば、4バルブエンジンでは、一つの気筒に対して排気用と吸気用の二つの油圧タペットを設ければよく、また、2バルブエンジンでは、二つの気筒に対して排気用と吸気用の二つの油圧タペットを設ければよく、部品点数を低減すると共に、搭載性を向上することができる。
【0027】
なお、好ましくは、油圧タペットを二つのロッカーアームの真ん中の、それぞれのロッカーアームに対して傾動軸の軸方向にずらした位置に配置することが好ましい。
【0028】
さらに、上記の内燃機関において、前記油圧タペット内に供給される作動油を貯蔵する貯蔵槽を、シリンダヘッドの外側に備え、該貯蔵槽と前記油圧タペットを該シリンダヘッドに設けた油通路で接続するように構成すると、ヘッドカバーに油通路を設けずに、シリンダヘッドに油通路を設けることで、車両の衝突時に内燃機関の外へ作動油が漏れて火災が発生するなどの事故を防止することができる。また、シリンダヘッドカバーに油通路がないため、シリンダヘッドカバーの遮音性も低くならずに、防音性を向上することができ
る。
【0029】
その上、上記の目的を解決するための本発明の内燃機関の組立方法は、一端側にロッカーアームの傾動の支点となる傾動軸を有し、他端側に機関弁を押圧する機関弁押圧部材を有し、中央部に内燃機関のクランク軸の回転に応じて回転するカムとの作用面を有するロッカーアームを備えると共に、前記ロッカーアームの前記傾動軸に作用する油圧タペットを設けて、該油圧タペットの動作により前記カムが作用した前記ロッカーアームで前記機関弁を動作させたり、前記カムが作用した前記ロッカーアームの動作を吸収し前記機関弁を休止させたりするように構成した内燃機関の組立方法において、前記ロッカーアームに対して、前記油圧タペットを前記傾動軸の軸方向にずらした位置に配置してシリンダヘッドに組み付け、前記油圧タペットをシリンダヘッドに組み付けた後に、前記ロッカーアームの前記傾動軸を支持するように接合された支持部材を、前記油圧タペットに取り付けることを特徴とする方法である。
【0030】
この方法によれば、ロッカーアームと油圧リフトとが直接接合されていないため、容易に内燃機関の内部に組み付けることができる。
【0031】
なお、電磁弁は、油圧タペットと支持部材を取り付けるまえに、支持部材に取り付け、電磁弁が取り付けられた支持部材を、電磁弁が油圧タペットの内部に設けた逆止弁を開放又は閉鎖するように、油圧タペットに取り付けるようにすることが望ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、油圧タペットと電磁弁とを組み合わせた機関弁を休止させる機構を備えた内燃機関において、ロッカーアームに対して油圧タペットを傾動軸の軸方向にずらした位置に配置することで、機関弁を休止させる機構をシリンダヘッド内に収めることができる。これにより、内燃機関の全高を低くすることができ、車両への搭載性を向上することができる。また、衝突時の安全性と、防音効果を向上することができる。
【0033】
さらに、ロッカーアームと油圧リフトとが直接接合されていないため、容易に内燃機関の内部に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明に係る実施の形態の内燃機関のロッカーアームと油圧タペットの位置関係を示す上面図である。
【
図2】本発明に係る実施の形態の内燃機関の組立方法を示す図である。
【
図3】本発明に係る実施の形態の内燃機関を示す断面図であり、機関弁が開いた状態を示す。
【
図4】本発明に係る実施の形態の内燃機関を示す断面図であり、機関弁が休止した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る実施の形態の内燃機
関について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態では、一つの気筒に対して吸気バルブ(機関弁)と排気バルブ(機関弁)をそれぞれ複数設けたマルチバルブエンジン(4バルブエンジン)を例に説明するが、本発明はこれに限定されずに、一つの気筒に対して吸気バルブと排気バルブを一つずつ設けたものにも適用することができる。また、カムシャフトについても、一つのカムシャフトで全てのバルブを開閉するSOHC(シングル・オーバーヘッド・カムシャフト)や、吸気側と排気側で別々のカムシャフトを用いるDOHC(ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト)に適用することができる。
【0036】
図面においては、ロッカーシャフトの軸方向(カムシャフトの軸方向)をx方向、ロッカーアームの長手方向をy方向、及び、鉛直方向をz方向とする。また、
図2〜
図4の断面図において、シリンダブロック、シリンダヘッド、及びシリンダヘッドカバーについては、図面が見難くなるため斜線を引いていない。
【0037】
まず、本発明に係る実施の形態のエンジン(内燃機関)1について、
図1及び
図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、本発明のエンジン1は、ロッカーアーム9が、一端側にロッカーアーム9の傾動の支点となるロッカーシャフト(傾動軸)10を有し、他端側にバルブ(機関弁)5を押圧するアジャストスクリュー(機関弁押圧部材)11を有し、中央部にエンジン1のクランク軸(図示しない)の回転に応じて回転するカム8との作用面であるロッカーローラー12を備えて構成される。
【0038】
そして、ロッカーアーム9のロッカーシャフト10を支持するロッカーシャフトブラケット(支持部材;以下、BRKTという)27を備えると共に、ロッカーアーム9に対して、油圧タペット13をロッカーシャフト10の軸方向であるx方向にずらした位置に配置して、BRKT27に接合して構成される。以下、このx方向にずらした位置に配置することをオフセットするという。
【0039】
また、
図3に示すように、油圧タペット13をBRKT27に対して気筒3側に、ソレノイドバルブ14をBRKT27に対してシリンダヘッドカバー26側(気筒3側の反対側)にそれぞれ配置して、BRKT27を油圧タペット13とソレノイドバルブ14で挟持して構成される。
【0040】
加えて、
図1に示すように、このエンジン1は、複数のロッカーアーム9が一つのロッカーシャフト10を共有して構成される。
【0041】
さらに、
図3に示すように、油圧タペット13内に供給されるオイル(作動油)を貯蔵する貯蔵槽28を、シリンダヘッド6の外側に備え、貯蔵槽28と油圧タペット13をシリンダヘッド6に設けた油通路22で接続するように構成される。
【0042】
油圧タペット13は、ボディ15とプランジャ16の上下に分割されており、その内部にチェックボール(逆止弁)17とスプリング18とスプリング座19を備え、チェックボール17がプランジャ16のオリフィス20を塞いで高圧室21が形成される。また、プランジャ16の内部に油通路22からオイルが供給される油リザーバー23が形成される。
【0043】
従来技術では、ロッカーアーム9に直接接合されていたが、本発明の油圧タペット13は、
図1に示すように、アジャストスクリュー11の中心からロッカーアーム9の長手方向であるy方向に延びる中心線L1に対して、油圧タペット13の中心からy方向に延びる中心線L2がオフセットされると共に、BRKT27に接合される。また、この油圧タペット13はBRKT27に対して、気筒3側に配置される。
【0044】
ソレノイドバルブ14は、ソレノイド24とニードル25から構成される。油圧タペット13のチェックボール17を単純な構造で開放及び閉鎖するには、油圧タペット13の油リザーバー23の上部に、このソレノイドバルブ14を設けて、ソレノイドバルブ14のニードル25が油リザーバー23側からチェックボール17を押し下げるように構成することが好ましい。よって、このソレノイドバルブ14は、BRKT27に対して、シリンダヘッドカバー26側に配置される。
【0045】
油圧タペット13とソレノイドバルブ14とを組み合わせた構成とすることで、ソレノイドバルブ14が油圧タペット13のチェックボール17を押し下げ、オリフィス20を開放しない場合には、油圧タペット13は、バルブクリアランスを調節する、所謂ラッシュアジャスタとして動作し、ソレノイドバルブ14が油圧タペット13のチェックボールを押し下げ、オリフィス20を開放した場合には、カム8の作用を吸収し、バルブ5を休止させる装置として動作させることができる。
【0046】
また、
図3に示すように、この油圧タペット13の油リザーバー23にオイルを供給する油通路22は、シリンダヘッド6内に設けると共に、そのオイルを貯蔵する貯蔵槽28がシリンダヘッド6の外側に設けられる。この構成によれば、従来技術では、シリンダヘッドカバー26に設けていた油通路22が、シリンダヘッドカバー26よりも剛性の高いシリンダヘッド6に設けられるので、車両の衝突時にエンジン1の外へオイルが漏れて火災が発生するなどの事故を防止することができる。また、シリンダヘッドカバー26に油通路22がないため、シリンダヘッドカバー26の遮音性も低くならずに、防音性を向上することができる。
【0047】
なお、この実施の形態では、シリンダヘッド6の外側に貯蔵槽28を設ける構成を例に説明したが、本発明はこれに限定されずに、例えば、シリンダヘッド6内に貯蔵槽28を設ける構成としてもよい。
【0048】
BRKT27は、
図1及び
図2に示すように、ロッカーシャフト10を支持する支持部27aと、油圧タペット13とソレノイドバルブ14に挟持され、接合される接合部27bとを備える。支持部27aはロッカーシャフト10を挿通可能に形成され、接合部27bは、ソレノイドバルブ14のニードル25が挿通可能な挿通孔27cが形成される。
【0049】
また、このBRKT27の接合部27bは、このBRKT27に対して気筒3側に配置された油圧タペット13と、このBRKT27に対してシリンダヘッドカバー26側(気筒3側の反対側)に配置されたソレノイドバルブ14で挟持されている。
【0050】
上記の構成によれば、ロッカーアーム9に対して、油圧タペット13をオフセットして、BRKT27と接合させること、及び、BRKT27の接合部27bを挟持するように、油圧タペット13をBRKT27に対して気筒3側に、ソレノイドバルブ14をシリンダヘッドカバー26側にそれぞれ配置することで、油圧タペット13とソレノイドバルブ14をシリンダヘッド6内に収めることができる。
【0051】
これにより、エンジン1の全高を低くして、車両への搭載性を向上することができる。
【0052】
また、油圧タペット13とソレノイドバルブ14がシリンダヘッド6内に収まっているので、油圧タペット13にオイルを供給する油通路22をシリンダヘッドカバー26に設ける必要が無くなり、衝突時などにその油通路22からオイルが流出する可能性がなくなり、安全性を向上することができる。
【0053】
加えて、バルブ5を休止する機構である油圧タペット13とソレノイドバルブ14を設けても、シリンダヘッドカバー26を侵食することが無くなるので、シリンダヘッドカバー26の遮音性を阻害せず、防音効果を向上することができる。
【0054】
さらに、複数のロッカーアーム9が一つのロッカーシャフト10を共有し、そのロッカーシャフト10を支持するBRKT27に一つの油圧タペット13とソレノイドバルブ14を設けることで、複数のロッカーアーム9を一度に休止させることができる。
【0055】
これにより、この実施の形態のように4バルブのエンジン1では、一つの気筒3に対して排気用と吸気用の二つの油圧タペット13を設ければよく、部品点数を低減すると共に、搭載性を向上することができる。
【0056】
その上、従来技術のように、ロッカーアーム9に油圧タペット13を直接取り付ける場合に比べ、油圧タペット13とBRKT27とが相対的に動かないため、ソレノイドバルブ14で油圧タペット13のオリフィス20を容易に開放することができる。
【0057】
次に、このエンジン1の組立方法について、
図2を参照しながら説明する。まず、油圧タペット13を、ロッカーアーム9に対してx方向にオフセットするように、シリンダヘッド6の取付部6aに組み付ける。次に、BRKT27の挿通孔27cにソレノイドバルブ14のニードル25を挿通して、BRKT27にソレノイドバルブ14を接合する。
【0058】
次に、ソレノイドバルブ14と取り付けたBRKT27を、油圧タペット13の上部に取り付ける。次に、BRKT27の支持部27aにロッカーシャフト10を挿通すると共に、ロッカーシャフト10にロッカーアーム9を取り付ける。その後、シリンダヘッドカバー26を取り付けて組立は完了する。
【0059】
なお、この実施の形態では、ロッカーアーム9とロッカーシャフト10を、BRKT27を油圧タペット13に接合してから取り付けたが、予めBRKT27にロッカーアーム9とロッカーシャフト10を取り付けておき、そのBRKT27を油圧タペット13と接合してもよい。
【0060】
この組立方法によれば、シリンダヘッドカバー26と油圧タペット13が、及び油圧タペット13とロッカーアーム9とが直接接合されていないので、先に油圧タペット13を配置してからBRKT27とロッカーアーム9を取り付けることが可能となり、シリンダヘッド6に容易に組み付けることができる。
【0061】
このように、油圧タペット13をロッカーアーム9に対してオフセットすることで、且つBRKT27に対して気筒3側に配置し、その油圧タペット13に、ソレノイドバルブ14を組み付けたBRKT27を接合することで、油圧タペット13とソレノイドバルブ14をシリンダヘッド6内に収めることができる。
【0062】
次に、このエンジン1の動作については、
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3に示すように、ソレノイドバルブ14のニードル25が、チェックボール17を押し下げていない状態では、カム8が作用してロッカーアーム9が傾動しようとすると、ロッカーアーム9から荷重を受けた高圧室21の圧力が高くなりチェックボール17がプランジャ16のオリフィス20を塞ぐため、高圧室21の内部のオイルが漏れだすことがなく、油圧タペット13は一塊の部材となる。これにより、ロッカーアーム9がロッカーシャフト10を支点に傾動し、アジャストスクリュー11がバルブ5を開方向に押圧して、バルブ5を開く。
【0063】
また、油圧タペット13のボディ15とプランジャ16の側面にはオイルが流入する孔が設けられていて、プランジャ16内には油通路22を経由して送り込まれたオイルが満たされる。満たされたオイルはプランジャ16の孔から流出し、その際の流体抵抗によりエンジン1Xの運転中はプランジャ16内に圧力が加えられている。バルブ5とアジャストスクリュー11との間に、或いはロッカーアーム9やカム8との間にバルブクリアランスが発生すると、プランジャ16内の油圧によりチェックボール17が押されて、高圧室21にオイルが送り込まれて容積が大きくなる。これによって油圧タペット13の全体の
長さが押し伸ばされて、バルブクリアランスを埋める。この動作は、所謂ラッシュアジャスタと呼ばれる装置と同様である。
【0064】
次に、
図4に示すように、制御装置29によりソレノイドバルブ14のニードル25が、チェックボール17を押し下げると、高圧室21と油リザーバー23との連通部分であるオリフィス20が開放され、油圧タペット13は、ラッシュアジャスタとしての機能が完全に喪失する。この状態で、カム8が作用してロッカーアーム9が傾動しようとすると、ロッカーアーム9から荷重を受けた高圧室21から油リザーバー23にオイルが流出し、油圧タペット13の全体の長さが縮むことで、カム8のリフトを吸収し、バルブ5を停止させる。
【0065】
これにより、アイドリング時や低回転、あるいは低負荷時に一部の気筒3を休止させるときに、バルブ5を休止させて燃焼効率を向上させ、ポンプ損失を小さくして、熱効率を向上させることができる。
【0066】
本発明によれば、上記のように、バルブクリアランスの調整を行うと共に、バルブ5を休止する油圧タペット13とソレノイドバルブ14を備え、バルブ5の動作を制御可能とする構成としても、その油圧タペット13とソレノイドバルブ14をロッカーアーム9に対してオフセットすることで、シリンダヘッド6内に収めることができるので、車両への搭載性を向上すること、防音性を向上すること、及び安全性を向上することができる。
【0067】
なお、この実施の形態では、バルブ5がz方向に動作するものを例としたが、ペントルーフ型のように、バルブ5が鉛直方向に対して斜めに動作するものにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の内燃機関は、ロッカーアームに対して油圧タペットを傾動軸の軸方向にずらした位置に配置することで、機関弁を休止させる機構をシリンダヘッド内に収めることができるので、バルブクリアランスを調節すると共に、機関弁を休止させる機構を設けたエンジンを搭載したトラックなどの車両に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1、1X エンジン(内燃機関)
3 気筒
5 バルブ(機関弁)
6 シリンダブロック
7 バルブスプリング
8 カム
9 ロッカーアーム
10 ロッカーシャフト(傾動軸)
11 アジャストスクリュー(機関弁押圧部材)
12 ロッカーローラー(作用面)
13 油圧タペット
14 ソレノイドバルブ(電磁弁)
22 油通路
26 シリンダヘッドカバー
27 BRKT(ロッカーシャフトブラケット;支持部材)
28 貯蔵槽