(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6175887
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】高炉操業方法
(51)【国際特許分類】
C21B 5/00 20060101AFI20170731BHJP
【FI】
C21B5/00 301
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-100460(P2013-100460)
(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公開番号】特開2014-218725(P2014-218725A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】岸野 友泰
(72)【発明者】
【氏名】井上 恭男
【審査官】
藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−243703(JP,A)
【文献】
特開昭60−138010(JP,A)
【文献】
特開平08−143134(JP,A)
【文献】
特開2010−181055(JP,A)
【文献】
特開平01−242727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 3/00−5/06
C21B 11/00−15/04
C22B 1/00−61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結機から直接搬送される直送焼結鉱と、所定の高さを有し、かつ粒度が小さい焼結鉱の存在割合が上段部分で高いとともに粒度が小さい焼結鉱の存在割合が下段部分で低いヤード山としてヤードに備蓄された後に搬送されるヤード備蓄焼結鉱とを、高炉に投入する高炉投入燒結鉱として併用することにより焼結鉱を高炉へ装入する高炉操業方法において、
前記高炉における前記ヤード備蓄焼結鉱の使用比率が全高炉焼結使用量の10%未満である場合には、前記ヤード山の全高の上部の30〜50%までである部分のヤード備蓄焼結鉱を前記高炉へ装入し、
前記高炉における前記ヤード備蓄焼結鉱の使用比率が全高炉焼結使用量の10%以上である場合には、前記ヤード山の全高の下部の70〜50%である部分のヤード備蓄焼結鉱を前記高炉へ装入すること
を特徴とする高炉操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤード備蓄焼結鉱を使用する高炉操業方法に関し、具体的には、高炉持込み焼結粉量の低下を図ることができる高炉操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉を始めとする堅型炉による製鉄プロセスにおいては、充填層内に還元ガスを流通させて鉄鉱石を還元するため、効率的な操業を行うために、還元ガスが流通可能な空隙を確保する必要があり、鉄鉱石,コークス,焼結鉱等の高炉装入原料は、事前に微粉を除去しておくことが望ましい。各製鉄所では、これらの製鉄用原料から微粉を除去するための各種の篩設備を有する。また、焼結鉱は、鉄鉱石に比べて還元性等の性状がよい利点を有することから、高炉投入鉄源の70%以上を占める。
【0003】
図5は、焼結鉱の高炉への搬送の概要を模式的に示す説明図であり、焼結機1から高炉6までの焼結鉱の流れを示す。
【0004】
図5に示すように、高炉6に搬送されて使用される焼結鉱(「高炉投入燒結鉱」という)2−1には、基本的に焼結製造工場の焼結機1から直接搬送される焼結鉱2a(以下「直送焼結鉱」という)を用いることが多い。しかし、高炉6の焼結鉱使用量に比べて焼結機1の焼結鉱生産量が不足する場合があり、この場合には、ヤード7に備蓄してある焼結鉱2b(以下「ヤード備蓄焼結鉱」という)を使用する。例えば保全日や突発トラブル発生時といった焼結工場停機時は、高炉使用焼結鉱比率を維持するためにヤード備蓄焼結鉱2bを多量に使用する必要が生じる。
【0005】
すなわち、高炉6で使用する焼結鉱2は、基本的には、焼結機1からベルトコンベア3で直接高炉6の焼結原料槽4まで搬送される直送焼結鉱2aである。高炉6の焼結原料槽4に搬送された焼結鉱2は、焼結篩5で通常は−5mm程度の微粉を除去された後に高炉6に装入される。
【0006】
高炉6での焼結鉱使用量に対して直送焼結鉱2aの量が不足する場合には、高炉休風などの高炉6の焼結鉱使用量が減少するタイミングでヤード7に備蓄しておいたヤード備蓄焼結鉱2bを使用することにより高炉6の焼結使用比率を確保する。ヤード備蓄焼結鉱2bを使用する場合は、高炉6の焼結原料槽4に搬送する前にヤード備蓄焼結鉱2bをヤード篩(篩網目8mm)8にかける。すなわち、この場合、高炉投入焼結鉱2−1には、直送焼結鉱2aとヤード備蓄焼結鉱2bとが併用される。
【0007】
前述したように、高炉投入焼結鉱2−1は、焼結篩5で微粉を除去されたものである。しかし、焼結篩5により全ての微粉が除去される訳ではない。焼結篩5の特質上、微粉を除去し切れずに粗粒内(篩上)に微粉が混入することが多い。焼結鉱2に含まれる微粉のうち焼結篩5により除去される比率を焼結篩効率という。操業の指標としては高炉投入焼結鉱2−1中の微粉比率が重要であり、一方で焼結篩効率は、測定がやや煩雑であるので必ずしも測定値を伴わないが、制御の考え方としては重要である。一般的な篩設備においては処理量や微粉量(特に篩目に近い粒径の微粉)が多い場合には、焼結篩効率が低下する。
【0008】
ヤード備蓄焼結鉱2bは、通常直送焼結鉱2aに比べて粒径が小さく微粉(−5mm)比率も高いため、焼結鉱2の粒度が低下する。このため、ヤード備蓄焼結鉱2bを多量に使用すると、高炉6の焼結篩5の焼結篩効率が低下し、微粉焼結が高炉6に投入され、高炉6の炉内における通気性を阻害する。
【0009】
高炉6に投入される投入焼結鉱2−1中の微粉比率の低減のためには、焼結篩5の篩網目増加などの手段が一般的であるが、高炉6で使用可能な焼結鉱、通常は5mm篩のため+5mmの焼結鉱は高炉6で使用できるものの、例えば篩目を5mmから6mmへと増加すると、増加前には使用可能であった5〜6mmの焼結鉱も篩下となってしまうため、高炉6で使用できない。この場合に、高炉6の焼結使用比率を確保するためには、この篩下増加分を補うために焼結機1による焼結鉱の生産量を増加しなければならず、使用可能な焼結鉱の歩留まりが大幅に低下する。
【0010】
図6は、ヤード備蓄焼結鉱2bの粒度分布の概要を示した説明図である。
ヤード7への焼結鉱の積み付け方法としては、スタッカーのブーム先端をヤード幅方向のほぼ中央に位置させ、高さ約16mの大きな山を形成しつつスタッカーをヤードの長さ方向に移動させて断面三角状の縦長の焼結鉱のヤード山9を作ることにより備蓄する。これにより、
図6に示すように、ヤード山9の下部に粒径の大きな焼結鉱2b−1が偏析し、ヤード山9の上部に粒径の小さい焼結鉱2b−2が偏析する。
【0011】
図7は、ヤード備蓄焼結鉱2bのヤード山9の概要と、払出時の段数を示す概要図であり、
図7中の四角囲み数字1〜8は払い出し時のホイルローダーの段数を示す(例えば四角囲み数字4は4段目を示す)。最上段の6段目から下段の1段目までが払い出され、最下段の8段目はホイルローダーによる払出が不可能な部分である。
【0012】
図8は、ヤード備蓄焼結鉱2bの従来の払出順の概要を示した説明図であり、ヤード備蓄焼結鉱2bの従来の払い出し方法を示す。
【0013】
図8において、丸囲み数字1から丸囲み数字2は、ホイルローダーの払い出す軌跡を示す。まず丸囲み数字1のようにヤード備蓄焼結鉱2bのヤード山9の端の上段部分(
図7における6段目)から払出し、順次下段部分(
図7における5〜1段目まで)を払い出す。その後、
図8における丸囲み数字2に示すようにホイルローダーをヤード山9の長手方向へ移動してから
図7における6段目から1段目にかけて払い出す。このように、
図8における丸囲み数字1⇒丸囲み数字2の作業を繰り返すことによりヤード山9の端から順次ヤード備蓄焼結鉱2bを払い出す。
【0014】
しかし、ヤード備蓄焼結鉱2bのこの払出方法には、ヤード備蓄焼結鉱2bの粒度の時間的変化が大きいために高炉6への操業変動の要因となるとともに、ヤード備蓄焼結鉱2bを多量に使用すると焼結篩効率の低下による高炉投入焼結鉱2−1中の微粉比率が増加して高炉6の炉内通気性が悪化するという課題がある。
【0015】
特許文献1には、水分吸着材等を添加して付着粉を低下させることによって高炉使用原料における持込み粉量を低減する発明が開示されている。
【0016】
また、特許文献2には、直送焼結鉱の一部をヤードに備蓄する際に、ヤード備蓄の際の積み付け方法を変更して焼結鉱の小山を形成しながら大山を作ることにより、ヤード山の上下方向に関する粒度偏析を無くす発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2009−114516号公報
【特許文献2】特開平3−243703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献1により開示された発明は、水分吸着材が必要となるために処理コストが嵩む。また、特許文献2により開示された発明は、ヤード備蓄焼結鉱の粒度の時間的変化の低減を図ることはできるものの、ヤード備蓄焼結鉱を多量に使用した際には、焼結篩効率が低下して高炉投入焼結鉱2−1中の微粉比率も増加するため、この発明の効果には限界がある。
【0019】
以上のように、高炉の焼結鉱の使用量に比べて焼結生産量が不足している場合にヤード備蓄焼結鉱を使用するが、焼結工場停機時は使用量のバランスが大きく崩れ、ヤード備蓄焼結鉱を多量に使用する必要を生じる。しかし、ヤード備蓄焼結鉱は通常焼結鉱に比べて粒径が小さいため高炉の篩設備効率が低下し、微粉焼結が高炉に投入されて高炉投入焼結鉱2−1中の微粉比率が上昇し、高炉炉内における通気性が悪化する。
【0020】
本発明の目的は、上記の従来の技術が有する上記の課題に鑑みてなされたものであり、焼結篩効率を高く維持しながら高炉投入焼結鉱中の微粉比率の上昇を抑制してヤード備蓄焼結鉱を使用することができる高炉操業方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、(i)ヤード備蓄焼結鉱の使用量が少ない場合には、粒度が小さい焼結鉱の存在割合が高いヤード備蓄焼結鉱のヤード山の上段部分を使用するとともに(ii)ヤード備蓄焼結鉱の使用量が多い場合には、粒度が小さい焼結鉱の存在割合が低いヤード備蓄焼結鉱のヤード山の下段部分を使用することにより、高炉の焼結篩効率の低下を抑制しながら高炉投入焼結鉱中の微粉比率を低下させることができることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0022】
本発明は、焼結機から直接搬送される直送焼結鉱と、所定の高さを有
し、かつ粒度が小さい焼結鉱の存在割合が上段部分で高いとともに粒度が小さい焼結鉱の存在割合が下段部分で低いヤード山としてヤードに備蓄された後に搬送されるヤード備蓄焼結鉱とを、高炉に投入する高炉投入燒結鉱として併用することにより焼結鉱を高炉へ装入する高炉操業方法において、高炉におけるヤード備蓄焼結鉱の使用比率が全高炉焼結使用量の10%未満である場合には、ヤード山の全高の上部の30〜50%までである部分のヤード備蓄焼結鉱を高炉へ装入し、高炉におけるヤード備蓄焼結鉱の使用比率が全高炉焼結使用量の10%以上である場合には、ヤード山の全高の下部の70〜50%である部分のヤード備蓄焼結鉱を高炉へ装入することを特徴とする高炉操業方法である。
【0023】
本発明における「上部の30〜50%までである部分」とは、ヤード山の高さ方向に全高の頂点位置から、ヤード山の高さ方向に全高の30%~50%低下した高さ位置までの部分を意味し、「下部の70〜50%である部分」とは、ヤード山の高さ方向に全高の下端から50%~70%上昇した高さ位置までの部分を意味する。
【0024】
図1は、本発明によるヤード備蓄焼結鉱2bの払出の概要を模式的に示す説明図であり、
図1(a)は高炉6におけるヤード備蓄焼結鉱2bの使用比率が全高炉焼結使用量の10%未満である場合の払出を示し、
図1(b)は高炉6におけるヤード備蓄焼結鉱2bの使用比率が全高炉焼結使用量の10%以上である場合を示す。
【0025】
図1(a)に示すように、高炉におけるヤード備蓄焼結鉱2bの使用比率が全高炉焼結使用量の10%未満と、ヤード備蓄焼結鉱2bの使用量が少ない時には、事前に
図7に示す6〜4段目に存在する、粒径の小さいヤード備蓄焼結鉱2b−2のみ払出す。すなわち、ホイルローダーが、
図1(a)における丸囲み数字1及び4の動きにより
図7に示す6段目を払出し、続いて
図1(a)における丸囲み数字2及び4の動きにより
図7に示す5段目を払い出し、さらに、
図1(a)における丸囲み数字3及び4の動きにより
図7に示す4段目を払い出す(丸囲み数字1⇒丸囲み数字4⇒丸囲み数字2⇒丸囲み数字4⇒丸囲み数字3⇒丸囲み数字4)。これにより、
図1(b)に示すように6〜4段目の粒径の小さいヤード備蓄焼結鉱2b−2がないとともに3〜1段目の粒径の大きなヤード備蓄焼結鉱2b−1のみからなる台形断面のヤード山9’となる。
【0026】
その後、
図1(b)に示すように、高炉におけるヤード備蓄焼結鉱2bの使用比率が全高炉焼結使用量の10%以上と、ヤード備蓄焼結鉱2bの使用量が多い時には、
図1(a)における丸囲み数字5及び6の動きにより、ヤード山9’の3〜1段目の粒径の大きなヤード備蓄焼結鉱2b−1を払い出す(丸囲み数字5⇒丸囲み数字6⇒丸囲み数字5⇒丸囲み数字6⇒・・・丸囲み数字5)。
【発明の効果】
【0027】
高炉等で使用している篩設備は、一般的に、篩処理速度(切出し速度)を低下すると焼結篩効率が向上することが知られている。しかし、連続的な高炉操業においては、各原料を秤量する時間に上限がある。換言すると、切出し速度には下限が存在する。高炉では、ヤード備蓄焼結鉱の使用量を管理するためにヤード備蓄焼結鉱用の焼結原料槽を準備する。通常、直送焼結鉱槽として使用している槽(通常10槽)の内の数槽(通常1〜4槽)をヤード備蓄焼結鉱用槽とし、各槽毎に搬送する焼結鉱銘柄を分けて使用する。
【0028】
ヤード備蓄焼結鉱の使用量が低い場合は、ヤード備蓄焼結鉱槽の切出し速度を下げることができる。そのため、粉の存在比率が高いヤード備蓄焼結鉱の上段部分をヤード備蓄焼結鉱の使用比率が低い場合に使用することにより、焼結篩効率が向上し高炉への粉の持込み比率を低減できる。
【0029】
ヤード備蓄焼結鉱の使用量が多い場合は、前述した秤量時間の上限があるため切出し速度を下げることができない。しかし、本発明を用いれば、篩に投入する焼結鉱の微粉比率が低下しているために焼結篩効率の向上を図れる。このため、ヤード備蓄焼結鉱を多量に使用する場合においても焼結篩効率を高位に保つことができる。
【0030】
本発明は、ヤード備蓄焼結鉱のヤード山において使用量に応じて、ヤード備蓄焼結鉱のヤード山における払い出し部位を変更することにより、高炉の焼結篩効率を高位に維持でき、高炉投入焼結鉱中の微粉比率を低下でき、これにより、ヤード備蓄焼結鉱の使用による高炉通気性の悪化を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明によるヤード備蓄焼結鉱の払出の概要を模式的に示す説明図であり、
図1(a)は高炉におけるヤード備蓄焼結鉱の使用比率が全高炉焼結使用量の10%未満である場合の払出を示し、
図1(b)は高炉におけるヤード備蓄焼結鉱の使用比率が全高炉焼結使用量の10%以上である場合を示す。
【
図2】
図2は、ヤード山の上段40%部分の高炉通気性に与える影響を示すグラフである。
【
図3】
図3は、本発明を実施した場合の高炉持込み粉率の低減効果を示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明によるヤード備蓄焼結鉱の使用による高炉上部の通気性の影響を示すグラフである。
【
図5】
図5は、焼結鉱の高炉への搬送の概要を模式的に示す説明図である。
【
図6】
図6は、ヤード備蓄焼結鉱の粒度分布の概要を示した説明図である。
【
図7】
図7は、ヤード備蓄焼結鉱のヤード山の概要と、払出時の段数を示す概要図である。
【
図8】
図8は、ヤード備蓄焼結鉱の従来の払出順の概要を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を実施するための形態を説明する。
表1には、ヤード備蓄焼結鉱のヤード山の高さ方向における−5mmの分布割合を示し、サンプリング結果より得られたヤード備蓄焼結鉱のヤード山の全−5mm量に対する各段数(高さ方向)における−5mmの存在比率を示す。
【0034】
表1に示すように、ヤード備蓄焼結鉱中の−5mm比率分布としては、
図7に示す6段目に全−5mm焼結鉱の内16.0%が存在し、
図7に示す5段目には22.5%が存在し、
図7に示す4段目には38.7%が存在する。すなわち、4段目以上に大部分の−5mmが存在する。
【0035】
この結果より、ヤード備蓄焼結鉱の多量使用時における−5mm比率を低減させるには、事前に払い出す段数が多いほど有効であることが分かる。
【0036】
ヤード備蓄焼結鉱の多量使用時における払い出し高さが上部30%より小さいと、ヤード備蓄焼結鉱の多量使用時における−5mm比率を十分に低減させることができない。
【0037】
また、払い出し高さが上部50%より大きいと、ヤード備蓄焼結鉱の多量使用時における−5mm比率を低減させることは可能であるものの、その効果が次第に飽和してくるとともに、通常時に使用するヤード備蓄焼結鉱が多くなる。このため、ヤード備蓄焼結鉱の多量使用時に対応できるためには、ヤードの置場の広さが大きくなり、ヤードを圧迫する。
【0038】
このため、高炉におけるヤード備蓄焼結鉱の使用比率が全高炉焼結使用量の10%未満である場合には、上部の30〜50%までである部分、すなわち、ヤード山の高さ方向に全高の30%低下した高さ位置から、ヤード山の高さ方向に全高の50%低下した高さ位置までの部分に存在する、粒径の小さいヤード備蓄焼結鉱2b−2を払い出して高炉へ装入する。
【0039】
表2には、ヤード備蓄焼結鉱を30%使用した時のハツリを実施した部分の割合と、ヤード備蓄焼結鉱中の−5mm比率、高炉投入焼結鉱の中の−5mm比率を示しており、高炉でのヤード備蓄焼結鉱の使用比率が高炉焼結使用量の20%以上である時に本発明を用いて上段部分を事前に払い出した場合における、各事前払出段数を変えた場合のヤード備蓄焼結鉱中の−5mm存在比率を示す。
【0041】
表2に示すように、上段部分に−5mm比率が多く存在していることから、
図7に示す5段目まで(
図7の5,6段目)を払い出した場合は−5mm比率を平均3.4%まで低減できており、さらに段数を4段目まで(
図7の4,5,6段目)払出すことによりヤード備蓄焼結鉱中の−5mm比率を平均1.3%まで低減できる。これにより、高炉投入焼結鉱の−5mm比率も低減できる。
【0042】
次に、ヤード山の上部40%の細粒部分を使用する場合の影響を把握するために、ヤード備蓄焼結鉱として上部40%を用いてその使用比率を変更した。
【0043】
図2は、ヤード山の上段40%部分の高炉通気性に与える影響を示すグラフである。
図2のグラフに示すように、使用比率が10%を超えると高炉通気性指数の増加が顕著化していることが分かる。
【0044】
したがって、ヤード備蓄焼結鉱のヤード山の上段部分を使用する場合は、使用焼結鉱全体に対するヤード備蓄焼結鉱比率が10%以下であることが望ましい。
【実施例】
【0045】
表3に実施例の概要をまとめて示す。
【0046】
【表3】
【0047】
表3に示すように、ヤード備蓄焼結鉱の多量または少量の閾値は、前述したように10%とした。表3におけるベースケースは、ヤード備蓄焼結鉱の従来の使用方法であり、ヤード備蓄焼結鉱の使用比率や時期を問わず全ヤード山を順次使用する場合である。
【0048】
5段目までハツリしたケースは、焼結停機前1カ月でヤード備蓄焼結鉱の使用比率が期間平均8.6%でヤード備蓄焼結鉱のヤード山の上部6,5段目を払出して高炉で使用し、焼結停機時1日間のヤード備蓄焼結鉱の使用比率が36%の場合に残りのヤード山の下段部分を払い出して使用した。
【0049】
また、4段ハツリしたケースは、停機前1カ月でヤード備蓄焼結鉱の使用比率が期間平均9.0%でヤード備蓄焼結鉱のヤード山の上部6,5,4段目を払出して高炉で使用し、焼結停機時1日間のヤード備蓄焼結鉱の使用比率37%時に残りのヤード山の下段部分を払い出して高炉で使用した。
【0050】
図3は、本発明を実施した場合の高炉持込み粉率の低減効果を示すグラフであり、各ケースにおける焼結鉱全体の高炉持込み粉率(上段部分使用時と下段部分使用時を合わせた評価)を示す。
【0051】
図3にグラフで示すように、ベースケースに比べ、本発明を実施することで同じヤード備蓄焼結鉱のヤード山を使用した場合でも、高炉投入の粉率を低減することができることが分かる。これは、ヤード備蓄焼結鉱のヤード山の下段部分の使用時での粉率低減効果だけではなく、上段部分の使用時もヤード備蓄焼結鉱の使用比率が10%以下である場合に使用することにより焼結篩効率を高位に維持できたという効果が重畳したためである。
【0052】
図4は、本発明によるヤード備蓄焼結鉱の使用による高炉の上部通気性の影響を示すグラフであり、ベースケースに対する各ケースの高炉上部の通気性の影響を示す。
【0053】
図4にグラフで示すように、ヤード備蓄焼結鉱の運用方法を変更することにより高炉投入粉率を低減できるため、高炉の上部通気性も良好である。同じヤード備蓄焼結鉱のヤード山を使用した場合、ベースに比べて最大4%程度低減でき、高炉の安定操業に寄与することができた。
【符号の説明】
【0054】
1 焼結機
2 焼結鉱
2a 直送焼結鉱
2b ヤード備蓄焼結鉱
2b−1 粒径の大きな焼結鉱
2b−2 粒径の小さい焼結鉱
2−1 高炉投入燒結鉱
3 ベルトコンベア
4 焼結原料槽
5 焼結篩
6 高炉
7 ヤード
8 ヤード篩
9,9’ 焼結鉱のヤード山