(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
指紋画像内の特徴点について隆線に沿ったそれぞれの特徴点方向に基づき算出される特徴量を比較することにより、データベースに予め設定された複数の指紋画像(データベース画像)から、外部入力される特定の指紋画像(外部入力画像)との照合対象となる候補画像を抽出する特徴量比較処理部を備えた照合対象抽出システムであって、
前記特徴量比較処理部は、
前記各指紋画像中に予め設定された基準点に対する前記各特徴点の特徴点方向に基づき指紋隆線上の各特徴点の前記特徴量を算出する特徴量情報算出部と、
前記外部入力画像とデータベース画像とにおける前記基準点を基準とした同一対応領域(マーキング領域)の特徴量を比較しその差分が一定値以下となるデータベース画像を前記外部入力画像に対する候補画像として決定する照合対象候補決定部とを備え、
前記特徴量情報算出部は、
前記外部入力画像およびデータベース画像における隆線を芯線化する処理を行って芯線画像を生成する細線化処理部と、この生成された前記芯線画像における特徴点の抽出を行うマーキング処理部と、前記芯線画像における特徴点の特徴量を、その特徴点方向が前記基準点に対して時計回り方向の場合に最大値(例えば255)とすると共に、その特徴点方向が前記基準点に対して反時計回り方向の場合に最小値(例えば0)とする機能とを備えていることを特徴とする照合対象抽出システム。
指紋画像内の特徴点について隆線に沿ったそれぞれの特徴点方向に基づき算出される特徴量を比較することにより、データベースに予め設定された複数の指紋画像(データベース画像)から、外部入力される特定の指紋画像(外部入力画像)との照合対象となる候補画像を抽出する特徴量比較処理部を備えた照合対象抽出システムにあって、
前記各指紋画像における予め設定された基準点に対する前記各特徴点に、当該特徴点の指紋隆線上における特徴点方向に基づき所定の特徴量を設定し、
前記外部入力画像およびデータベース画像における前記基準点を基準とした対応位置の特徴量を比較しそその差分を算出し、
その差分が一定値以下となるデータベース画像を前記外部入力画像に対する候補画像として決定し、
前記特徴量の設定に先立って、
前記外部入力画像およびデータベース画像における隆線を芯線化する処理を行い、次いで当該芯線化された画像における特徴点の抽出を行いその位置を特定する構成とし、前記芯線化された画像における特徴点の特徴量を、その特徴点方向が前記基準点に対して時計回り方向の場合に最大値(例えば255)とすると共に、その特徴点方向が前記基準点に対して反時計回り方向の場合に最小値(例えば0)とし、
これらの各工程内容を、前記特徴量比較処理部が順次実行することを特徴とした照合対象抽出方法。
指紋画像内の特徴点について隆線に沿ったそれぞれの特徴点方向に基づき算出される特徴量を比較することにより、データベースに予め設定された複数の指紋画像(データベース画像)から、外部入力される特定の指紋画像(外部入力画像)との照合対象となる候補画像を抽出する特徴量比較処理部を備えた照合対象抽出システムにあって、
前記各指紋画像における予め設定された基準点に対する前記各特徴点に、当該特徴点の指紋隆線上における特徴点方向に基づき所定の特徴量を設定する特徴量設定処理機能、
前記外部入力画像およびデータベース画像における前記基準点を基準とした対応位置の特徴量を比較しその差分を算出する差分算出処理機能、
およびこの算出した差分が一定値以下となるデータベース画像を前記外部入力画像に対する候補画像として決定する候補画像決定処理機能、
前記特徴量の設定に際し、予め前記外部入力画像およびデータベース画像における隆線を芯線化する処理を行う隆線芯線化処理機能、および当該芯線化された画像における特徴点を抽出しその位置を特定する特徴点抽出処理機能、前記芯線化された画像の前記特徴点の特徴量を、その特徴点方向が前記基準点に対して時計回り方向の場合に最大値(例えば255)とすると共に、その特徴点方向が前記基準点に対して反時計回り方向の場合に最小値(例えば0)とする処理機能、
を設け、これらの各処理機能を、前記特徴量比較処理部が備えているコンピュータに実現させるようにしたことを特徴とした照合対象抽出プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に、第1実施形態では、本発明にかかる照合対象抽出システムの基本的な構成内容を説明し、次に、第2実施形態では、本発明にかかる照合対象抽出システムの具体的な構成内容を説明する。
【0017】
[実施形態1]
まず、本発明にかかる照合対象抽出システムの第1実施形態を
図1乃至
図2に基づいて説明する。
【0018】
この第1実施形態において、照合対象抽出システム100は、指紋画像内の特徴点それぞれの方向(特徴点方向)に基づき算出した特徴量を比較することにより、外部入力された特定の指紋画像(例えば
図14参照)との照合対象となる候補画像を、選別対象である異なる複数の指紋画像(データベース画像)から抽出する特徴量比較処理部10を備えている。この特徴量比較処理部10はCPU(中央演算処理装置)を母体として構成されている(
図2)。
【0019】
また、照合対象抽出システム100は、上記特徴量比較処理部10を実現させるためのプログラムが格納された第1記憶部22と、特徴量比較処理部10の各構成部分の動作や機能の実現に必要な具体的なデータおよび動作の結果物を記憶する第2記憶部23と、特徴量比較処理部10の動作状態を外部に出力表示する出力表示部24と、特徴量比較処理部10での処理データを外部出力する処理データ出力部25を備えている。
【0020】
ここで、符号24Aは、表示画像を必要に応じて記憶する表示画像記憶部を示し、符号10Aは画像データおよび外部からの動作指令を含むその他必要な情報を入力する入力回路部を示す。又、符号10Bは照合対象となる複数の候補画像が予め格納されたデータベースを示す。
【0021】
前述した特徴量比較処理部10は、各指紋画像における特徴点及びそれぞれの特徴点方向(
図11参照)に基づき指紋隆線上の特徴量を算出する特徴量情報算出部11を備えている。
【0022】
この特徴量比較処理部10は、外部から入力された特定の指紋画像(以下「外部入力画像」という)と選別対象の指紋画像であるデータベース画像のそれぞれの画像内における基準点に対する対応位置の特徴量を比較し、その差分が一定値以下となるデータベース画像を、上記外部入力画像に対する照合対象の候補画像として決定する照合対象候補決定部12を備えている。
【0023】
即ち、特徴量比較処理部10では、予めデータベース10Bに格納された選別対象である指紋画像(データベース画像)および外部から別に設定入力された特定指紋画像である外部入力画像それぞれにおける指紋の特徴量を、特徴量情報算出部11で算出しておき、照合対象候補決定部12が、特定指紋画像(外部入力画像)に対するデータベース画像の対応する位置の特徴量の差分を累積し、その値が一定値を超えているデータベース画像は前述の外部入力画像に対する非照合対象、一定値以下のデータベース画像は前述の外部入力画像に対する照合対象の候補画像と決定する。
【0024】
このため、特徴量比較処理部10では、大量に保持されたデータベース画像から外部入力画像に対する指紋照合の対象となり得る候補画像を迅速に抽出することができ、これにより、指紋照合対象の指紋画像が限定され、照合速度がより迅速になる。
【0025】
次に、上記第1実施形態の動作を説明する。
まず、データベース10Bに予め格納された指紋画像である複数のデータベース画像、および外部から新たに設定入力された指紋画像(外部入力画像)に対して特徴量情報算出部11が稼働し、各指紋画像における予め設定された基準点に対する前記各特徴点の特徴点方向に基づき指紋隆線上の各特徴点の位置に対応した特徴量を算出する(特徴量情報算出工程)。この特徴量の算出については後述する第2実施形態の場合と同様である。
【0026】
ここで、算出されたデータベース画像および外部入力画像それぞれの特徴量を特徴量比較処理部10の照合対象候補決定部12が取得保持する(特徴量取得保持工程)。
【0027】
次いで、照合対象候補決定部12は、外部入力画像およびデータベース画像に予め設定された基準点を基準とした対応位置の特徴量を比較し、対応位置の特徴量の差分が一定値以下となるデータベース画像を、前述の外部入力画像に対する指紋照合の候補画像として決定する(照合対象候補決定工程)。
【0028】
ここで、上記特徴量情報算出工程、特徴量取得保持工程、及び照合対象候補決定工程については、その実行内容をプログラム化し、コンピュータに実行させるように構成してもよい。
また、本プログラムは、非一時的な記憶媒体、例えば、DVD、CD、フラッシュメモリなどに記録されてもよい。その場合、本プログラムは、記録媒体からコンピュータによって読み出され、実行される。
【0029】
このように、照合対象抽出システム100は、上述したようにその主要部である特徴量比較処理部10が有効に機能して、指先が大きく押捺された指紋画像(
図14参照)がデータベース画像として大量に記憶されている場合でも、外部入力画像に対する指紋照合の対象となり得る候補画像を多数のデータベース画像から迅速に抽出することを可能としている。
【0030】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を、
図3乃至
図12に基づいて説明する。
ここで、前述した第1実施形態と同一の構成部材については同一の符号を用いるものとする。
【0031】
この第2実施形態において、照合対象抽出システム300は、前述した第1実施形態の場合と同様に、指紋画像内の特徴点それぞれの方向(特徴点方向)に基づき算出した特徴量を比較することにより、外部入力された特定の指紋画像との照合対象となる候補画像を、予め設定された異なる複数の指紋画像(データベース画像)から抽出する特徴量比較処理部30を備えている(
図3)。この特徴量比較処理部30は、CPU(中央演算処理装置)を母体として構成されている(
図4)。
【0032】
また、この照合対象抽出システム300は、
図4に示すように、上記CPU上で特徴量比較処理部30を実現させるためのプログラムが格納された第1記憶部42と、特徴量比較処理部30の各構成部分の動作や機能の実現に必要な具体的なデータおよび動作の結果物を記憶する第2記憶部43を備えている。
【0033】
この照合対象抽出システム300は、
図3に示すように、グレースケール(例えば、255階調とする)の指紋画像を取得する入力回路部30Aを有している。
【0034】
又、前述の特徴量比較処理部30は、各指紋画像における特徴点それぞれの特徴点方向に基づき、指紋隆線上の各特徴点の位置に対応した特徴量を算出する特徴量情報算出部31を備えている。
【0035】
更に、特徴量比較処理部30は、前述した第1実施形態の場合と同様に、外部から入力された特定の指紋画像(外部入力画像)および、データベース画像それぞれの画像内における基準点に対する対応位置の特徴量を比較し、その差分が一定値以下となるデータベース画像を、上記外部入力画像に対する照合対象の候補画像として決定し抽出する照合対象候補決定部32を備えている。この候補画像の決定,抽出は、照合対象候補決定部32の候補画像抽出処理機能32Aが実行するようになっている。
【0036】
この内、特徴量情報算出部31,照合対象候補決定部32は、前述した第1実施形態における特徴量情報算出部11,照合対象候補決定部12と、それぞれ同等に機能する内容のものとなっている。
【0037】
また、特徴量情報算出部31は、入力回路部30Aを介して取得した指紋画像における隆線を芯線化する処理を行い、これにより芯線画像の生成を行う細線化処理部33と、生成された芯線画像における特徴点の抽出を行うマーキング処理部34を備えている。
【0038】
尚、芯線化された画像(芯線画像)も255階調のグレースケール画像であり、指紋画像内の隆線が細線化(芯線化)された芯線部分の色深度を、(例えば64)のグレーとする。ここでは、白画素の色深度を0、黒画素の色深度を255とする。
【0039】
特徴量情報算出部31は、隆線を芯線化することにより、指紋画像内における特徴点をより正確に抽出することが可能となる。
【0040】
ここで、上記特徴点方向の定義について、
図11(A),(B)に基づき説明する。
まず、
図11(A)に示すように、2本の隆線(芯線でもよい)g1、g3の間において、特徴点のp1を端点とする隆線が存在する場合、この特徴点p1の方向(特徴点方向)は、特徴点p1から隆線g2が発生する方向(つまり矢印d1の示す方向)と定義する。
【0041】
また、
図11(B)に示すように、隆線g4が特徴点(分岐点p2)で2本の隆線g41,g42に分岐している場合、このp2の方向(特徴点方向)は、特徴点p2から2本の隆線の間(ベクトルの中間)を進行する方向(つまり、矢印d2の示す方向)と定義する。
【0042】
更に、特徴量情報算出部31は、芯線画像内の各特徴点を含む一定領域をそれぞれ特徴点領域として設定し、この各特徴点領域に含まれる芯線部分の画素を対象として、各特徴点領域内の特徴点からの距離に対応して段階的に特徴量の値を設定する特徴量計算部35を備えている。
【0043】
ここで、特徴量計算部35が特徴量の値を設定(計算)する対象となる部分(画像領域)を、上記マーキング処理部34が予めマーキング処理するものとする。
具体的には、マーキング処理部34は、芯線画像に対して各特徴点(芯線の終点(端点)、および分岐点)に対応した特徴点領域に含まれる芯線部分を濃い黒色(例えば、色深度255)にマーキングし、これによって特徴量濃度画像が生成される(
図6(B))。
【0044】
即ち、このマーキング処理部34は、細線化処理部33により生成された芯線画像の特徴点領域に含まれる芯線部分を、黒色マーキングすることにより、特徴量濃度画像を生成する特徴量濃度画像生成機能34Aを備えている。
【0045】
尚、特徴量計算部35は、前記特徴点の種別である分岐点、または端点に対応してそれぞれに異なる特徴量の値を設定するようにしてもよい。
これにより、指紋照合の候補画像を抽出する際の精度をより一層高めることが可能となる。
【0046】
尚、画像端領域や芯線の不明瞭な部分はマーキング対象としないものとする。また、上記特徴点領域としては、例えば、特徴点に対する両隣の芯線(隆線)までとする。
このとき、特徴量計算部35は、マーキングされた部分の特徴量を計算する。
【0047】
具体的には、
図7に示すように、まず特徴量計算部35は、芯線画像内におけるマーキングされていない部分(画像領域)の特徴量としては全て128を設定する。
【0048】
また、特徴量計算部35は、本第2実施形態にあっては、マーキングされている特徴点領域の芯線部分の特徴量を255もしくは0に設定する。
【0049】
このとき、特徴量計算部35は、特徴点における特徴点方向が予め設定された各指紋画像内の基準点に対して時計回りなら特徴量として255を、反時計回りなら特徴量として0を各特徴点の位置に対して設定する。
【0050】
更に、特徴量計算部35は、上述のように、上記特徴点位置の周囲(即ち、特徴点領域)の芯線部分について、特徴点位置からの距離に比例して特徴量128まで段階的に特徴量の値を減少、又は増加させて設定する。
【0051】
即ち、特徴点方向が時計回りの特徴点に対応する特徴点領域の芯線部分の各画素に対しては、特徴点位置から遠ざかるにつれて設定する特徴量の値を減少させる。また、特徴点方向が反時計回りの特徴点に対応する特徴点領域の芯線部分の各画素に対しては、特徴点位置から遠ざかるにつれて設定する特徴量の値を増加させる。
【0052】
この
図7に示す特徴量濃度画像では、特徴点方向が時計回りの特徴点の周囲の芯線は白(色深度255)からグレー(色深度128)までのグラデーションで、特徴点方向が反時計回りの特徴点の周囲の芯線は黒(色深度0)からグレー(色深度128)までグラデーションで示される。
【0053】
また、前述した特徴量情報算出部31は、芯線画像に対して基準点から放射状に一定角度毎の直線を設定し、この各直線と芯線との交点の位置をサンプリング位置として得るサンプリング位置決定部36を備えている(
図8参照)。
【0054】
具体的には、サンプリング位置決定部36は、
図8に示すように、芯線画像に対して基準点から放射状に一定角度毎の直線を引き、この各直線と芯線との交点(ここでは、大小の黒点)の位置を示す情報をサンプリング位置情報として得る。
【0055】
このとき、サンプリング位置決定部36は、各サンプリング位置情報を「線番号−交点番号」として定義するものとする。これにより、サンプリング位置決定部36はサンプリング位置情報を一意に決めることができる。
【0056】
更に、特徴量情報算出部31は、特徴量濃度画像に基づきサンプリング位置それぞれに対応するサンプリング位置特徴量を決定する指紋画像特徴量決定部37を備えている。
【0057】
この指紋画像特徴量決定部37は、サンプリング位置決定部36で得られたサンプリング位置情報を取得し保持すると共に、特徴量計算部33で上述のように生成された特徴量濃度画像を取得し、特徴量濃度画像上におけるサンプリング位置情報で示される位置の特徴量を上記サンプリング位置特徴量として決定する。
【0058】
これにより、特徴量情報算出部31は、各指紋画像に対応した特徴量を決定することができる。即ち、特徴量情報算出部31は、特徴量計算部33で計算した指紋画像全体の画素に対応した特徴量の内、指紋画像特徴量決定部37で決定したサンプリング位置特徴量だけを各指紋画像の特徴量とする。
【0059】
このとき、指紋画像特徴量決定部37は、
図10に示すように、サンプリング位置とそれぞれに対応する特徴量とのテーブル化したサンプリング位置特徴量テーブルを各指紋画像に対応して生成してもよい。
【0060】
これにより、照合対象候補決定部32は外部入力画像およびデータベース画像それぞれに基づき生成したサンプリング位置特徴量テーブルの各項の値を比較することにより、容易に且つ迅速に候補画像となるデータベース画像を特定することができる。
【0061】
また、指紋画像特徴量決定部37は、サンプリング位置特徴量を累積加算することにより各指紋画像それぞれに対応した特徴量の累積値を算出する機能(特徴量累積算出機能)を備えている。
【0062】
具体的には、1箇所のサンプリング位置特徴量が1バイト、放射状に設定した直線が9本、芯線との交点がそれぞれ8箇所とすると、この指紋画像の特徴量の累積値は72バイト(8×9)となる。
【0063】
これにより、照合対象候補決定部32は、外部入力画像およびデータベース画像それぞれに対応した累積特徴量値を一対一対応で比較するだけで、候補画像を抽出することができる(累積値比較処理機能)。すなわち、累積値が一致する指紋画像を候補画像として抽出する。このため、指紋照合のための候補画像をより迅速に限定抽出することが可能となる。
【0064】
照合対象候補決定部32は、外部入力画像およびデータベース画像それぞれのサンプリング位置特徴量(
図10:サンプリング位置特徴量テーブル)を記憶保持する特徴両情報記憶手段(図示せず)を備えている。また、この照合対象候補決定部32は、サンプリング位置特徴量を比較し、外部入力画像の特徴量との差分が一定値以下の特徴量のデータベース画像を、該外部入力画像に対する照合対象の候補画像として決定する。
【0065】
ここで、
図9(A)及び
図9(B)に、本第2実施形態で特定された特徴画像の一例を示す。この内、
図9(A)は外部入力画像の特徴量濃度画像を、
図10(B)は照合対象の候補画像として抽出されたデータベース画像の特徴量画像を、それぞれ示す。
【0066】
図9(A)及び
図9(B)では、画像内の同一位置領域に同様な特徴量が設定されていることが示されている(
図9(A),(B)内の各楕円領域参照)。
【0067】
以上のように、本第2実施形態では、大量のデータベース画像から外部入力画像との指紋照合対象となる照合候補画像を迅速に限定抽出することができるので、指紋照合にかかる時間(照合時間)を有効に短縮することが可能となる。
【0068】
[第2実施形態の動作]
次に、本発明の第2実施形態における照合対象抽出システムの動作を
図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0069】
まず、細線化処理部33は、入力回路部30Aから入力された特定の指紋画像(
図6(A)の外部入力画像)および選択対象である複数のデータベース画像のそれぞれに、予め共通の基準点を設定し、続いて、画像内の隆線を芯線化する処理を行う(
図5:ステップS101/芯線画像生成工程)。
これにより、まず、芯線画像が生成される(
図6(B)参照)。
【0070】
次に、マーキング部34が、芯線画像における特徴点の抽出を行うと共に、各特徴点の特徴点方向を特定し、その位置情報を特定する(
図5:ステップS102/特徴点情報取得工程)。
【0071】
ここで、芯線化された画像(芯線画像)も255階調のグレースケール画像であり、指紋画像内の隆線が細線化(芯線化)された芯線部分の色深度を(例えば64)のグレーとする。ここでは、白画素の色深度を0,黒画素の色深度を255とする。
【0072】
次に、マーキング部34は、各特徴点の周囲一定領域(特徴点領域)に含まれる芯線部分を濃い黒色(例えば、色深度255)にマーキングする処理を行う(
図6(B))と共に、マーキングされた芯線画像(マーキング画像)内におけるマーキングされていない部分(画像領域)の特徴量としては全て128を設定する。
【0073】
次に、特徴量計算部35は、黒色にマーキングされている特徴点領域の芯線部分について、対応する特徴点における特徴点方向が予め設定された各指紋画像内の基準点に対して時計回り(右回り)なら特徴量として255を、反時計回り(左回り)なら特徴量として0を各特徴点の位置に対して設定する(
図7参照)。
【0074】
更に、特徴量計算部35は、上述のように、上記特徴点位置の周囲(即ち、特徴点領域)の芯線部分について、特徴点位置からの距離に比例して特徴量128まで、上述したように段階的に特徴量の値を減少させ、又は増加させて設定する(
図5:ステップS103/特徴量設定工程)。
【0075】
ここで、特徴量計算部35は、
図7に示すように、マーキング画像に対して各特徴量の値に対応した濃色マーキングを行うことにより特徴量濃度画像を生成する(特徴量濃度画像生成工程)。
【0076】
この
図7の特徴量濃度画像では、特徴点方向が時計回りの特徴点の周囲の芯線は白(色深度255)からグレー(色深度128)までのグラデーションで、特徴点方向が反時計回りの特徴点の周囲の芯線は黒(色深度0)からグレー(色深度128)までグラデーションで示されている。
【0077】
次に、サンプリング位置決定部36が、芯線画像に対して基準点から放射状に一定角度毎の直線を設定し、この各直線と芯線との交点の位置をサンプリング位置として得る(
図8参照)。
【0078】
ここで、サンプリング位置決定部36は、
図8に示すように、芯線画像に対して基準点から放射状に一定角度毎の直線を設定すると共に、この各直線と芯線との交点(ここでは、大小の黒点)の位置を示す情報を、サンプリング位置情報として設定する(
図5:ステップS104/サンプリング位置決定工程)。
【0079】
次に、画像特徴量決定部37は、特徴量濃度画像に基づきサンプリング位置それぞれに対応するサンプリング位置特徴量、および特徴量計算部33で生成された特徴量濃度画像を取得し、特徴量濃度画像上におけるサンプリング位置情報で示される位置の特徴量をサンプリング位置特徴量として決定する(
図5:ステップS105/画像特徴量決定工程)。
【0080】
これにより、特徴量情報算出部31は各指紋画像に対応した特徴量を決定する。この場合、特徴量情報算出部31は、指紋画像全体の画素に対応した特徴量の内、画像特徴量決定部35で決定したサンプリング位置特徴量だけを各指紋画像の特徴量とする(ステップS101〜S105は特徴量情報算出工程に対応)。
【0081】
このとき、画像特徴量決定部37は、サンプリング位置とそれぞれに対応する特徴量とのテーブル化したサンプリング位置特徴量テーブルを、各指紋画像に対応して生成してもよい(
図10参照)。
【0082】
最後に、照合対象候補決定部32は、外部入力画像およびデータベース画像それぞれのサンプリング位置特徴量(
図10:サンプリング位置特徴量テーブル)を取得すると共に、サンプリング位置特徴量を比較し、外部入力画像(特定指紋画像)との比較で、その特徴量との差分が一定値以下のデータベース画像を、照合対象の候補画像として決定する(
図5:ステップS106/照合対象候補決定工程)。
【0083】
以上のように、本第2実施形態では、外部入力画像およびデータベース画像が指先が大きく押捺された指紋画像(例えば、
図13)である場合でも、外部入力画像(特定指紋画像)に対する指紋照合対象となる照合候補画像を複数のデータベース画像から迅速に限定することができ、これにより、指紋照合にかかる時間(照合時間)を有効に短縮することが可能となる。
【0084】
上述した各実施形態については、その新規な技術的内容の要点をまとめると、以下の「付記」ようになる。尚、この付記については、新規な技術的内容の要点をまとめたものであり、本発明をこれに限定するものではない。
【0085】
〔付記1〕
指紋画像内の特徴点について隆線に沿ったそれぞれの特徴点方向に基づき算出される特徴量を比較することにより、データベースに予め設定された複数の指紋画像(データベース画像)から、外部入力される特定の指紋画像(外部入力画像)との照合対象となる候補画像を抽出する特徴量比較処理部を備えた照合対象抽出システムであって、
前記特徴量比較処理部10,30は、
前記各指紋画像中に予め設定された基準点に対する前記各特徴点の特徴点方向に基づき指紋隆線上の各特徴点の前記特徴量を算出する特徴量情報算出部11,31と、
前記外部入力画像とデータベース画像とにおける前記基準点を基準とした同一対応領域(マーキング領域)の特徴量を比較しその差分が一定値以下となるデータベース画像を前記外部入力画像に対する候補画像として決定する照合対象候補決定部12,32とを備えたことを特徴とする照合対象抽出システム。
【0086】
〔付記2〕
付記1に記載の照合対象抽出システムにおいて、
前記特徴量情報算出部31は、
前記外部入力画像およびデータベース画像における隆線を芯線化する処理を行って芯線画像を生成する細線化処理部33と、この生成された前記芯線画像における特徴点の抽出を行うマーキング部34とを備えていることを特徴とした照合対象抽出システム。
【0087】
〔付記3〕
付記2に記載の照合対象抽出システムにおいて、
前記特徴量情報算出部31は、
前記芯線画像における特徴点の特徴量を、その特徴点方向が前記基準点に対して時計回り方向の場合に最大値(例えば255)とすると共に、その特徴点方向が前記基準点に対して反時計回り方向の場合に最小値(例えば0)とする機能を備えていることを特徴とした照合対象抽出システム。
【0088】
〔付記4〕
付記2に記載の照合対象抽出システムにおいて、
前記特徴量情報算出部31は、
前記芯線画像内の各特徴点を含む一定領域をそれぞれ比較対象領域とすると共に、当該各比較対象領域に含まれる特徴点周囲の特徴量の値を、当該各比較対象領域内の特徴点からの距離に対応して一定値(例えば128)まで可変設定する特徴量計算部35を備えていることを特徴とする照合対象抽出システム。
【0089】
〔付記5〕
付記4に記載の照合対象抽出システムにおいて、
前記特徴量計算部35は、前記比較対象領域に含まれる特徴点周囲の特徴量の値を、当該比較対象領域内の特徴点からの距離に対応して、時計回りなら減少させる方向で、又反時計回りなら増加させる方向で、それぞれ算定するようにしたことを特徴とする照合対象抽出システム。
【0090】
〔付記6〕
付記4に記載の照合対象抽出システムにおいて、
前記マーキング処理部34は、
前記芯線画像に対して前記設定した各特徴量の値に対応した濃色マーキングを行うことにより特徴量濃度画像を生成する特徴量濃度画像生成機能34Aを備えると共に、
前記芯線画像に対して前記基準点から放射状に一定角度毎の直線を設定し当該各直線と芯線との交点の位置をサンプリング位置として得るサンプリング位置決定部36と、
前記特徴量濃度画像に基づき前記サンプリング位置それぞれに対応するサンプリング位置特徴量を得る指紋画像特徴量決定部37とを備えていることを特徴とした照合対象抽出システム。
【0091】
〔付記7〕
付記6に記載の照合対象抽出システムにおいて、
前記指紋画像特徴量決定部37は、
対応する位置の前記サンプリング位置特徴量の差分を累積加算することにより各指紋画像に対応した特徴量の差分累積値を算出する特徴量差分累積算出機能37Aを備え、
前記照合対象候補決定部32は、
前記特徴量差分累積算出機能により算出された特徴量の差分累積値が予め設定された一定値以下の場合に照合対象の前記候補画像として抽出する候補画像抽出処理機能32Aを備えていることを特徴とした照合対象抽出システム。
【0092】
〔付記8〕
付記1に記載の照合対象抽出システムにおいて、
前記特徴量情報算出部31は、前記特徴点の種別である分岐点と端点とについては、それぞれに異なる値の特徴量を設定することを特徴とした照合対象抽出システム。
【0093】
〔付記9〕
指紋画像内の特徴点について隆線に沿ったそれぞれの特徴点方向に基づき算出される特徴量を比較することにより、データベースに予め設定された複数の指紋画像(データベース画像)から、外部入力される特定の指紋画像(外部入力画像)との照合対象となる候補画像を抽出する特徴量比較処理部を備えた照合対象抽出システムにあって、
前記各指紋画像における予め設定された基準点に対する前記各特徴点に、当該特徴点の指紋隆線上における特徴点方向に基づき所定の特徴量を設定し(特徴量設定工程)、
前記外部入力画像およびデータベース画像における前記基準点を基準とした対応位置の特徴量を比較しそそ差分を算出し(差分算出工程)、
その差分が一定値以下となるデータベース画像を前記外部入力画像に対する候補画像として決定する構成とし(候補画像決定工程)、
これらの各工程内容を、前記特徴量比較処理部31が順次実行することを特徴とした照合対象抽出方法。
【0094】
〔付記10〕
付記9に記載の照合対象抽出方法において、
前記特徴量を算出に先立って、
前記特徴量比較処理部31が、
前記外部入力画像およびデータベース画像における隆線を芯線化する処理を行い、次いで当該芯線化された画像における特徴点の抽出を行いその位置を特定する構成としたことを特徴とする照合対象抽出方法。
【0095】
〔付記11〕
指紋画像内の特徴点について隆線に沿ったそれぞれの特徴点方向に基づき算出される特徴量を比較することにより、データベースに予め設定された複数の指紋画像(データベース画像)から、外部入力される特定の指紋画像(外部入力画像)との照合対象となる候補画像を抽出する特徴量比較処理部を備えた照合対象抽出システムにあって、
前記各指紋画像における予め設定された基準点に対する前記各特徴点に、当該特徴点の指紋隆線上における特徴点方向に基づき所定の特徴量を設定する特徴量設定処理機能、
前記外部入力画像およびデータベース画像における前記基準点を基準とした対応位置の特徴量を比較しその差分を算出する差分算出処理機能、
およびこの算出した差分が一定値以下となるデータベース画像を前記外部入力画像に対する候補画像として決定する候補画像決定処理機能、
を設け、これらの各処理機能を、前記特徴量比較処理部10,30が備えているコンピュータに実現させるようにしたことを特徴とした照合対象抽出プログラム。
【0096】
〔付記12〕
付記11に記載の照合対象抽出プログラムにおいて、
前記特徴点の特定に際し、予め前記外部入力画像およびデータベース画像における隆線を芯線化する処理を行う隆線芯線化処理機能、および当該芯線化された画像における特徴点を抽出しその位置を特定する特徴点抽出処理機能を設け、
これらの各処理機能を前記コンピュータに実現させるようにしたことを特徴とする照合対象抽出プログラム。