特許第6176003号(P6176003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6176003
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/00 20060101AFI20170731BHJP
   H02H 5/04 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   H02H7/00 F
   H02H5/04
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-184155(P2013-184155)
(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-53761(P2015-53761A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2015年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】古戸 健
【審査官】 坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−130944(JP,A)
【文献】 特開2012−124982(JP,A)
【文献】 特開2013−229964(JP,A)
【文献】 特開2013−229966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H5/04
7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の周囲温度と前記電線の温度との温度差を経時的に算出する算出手段を備え、前記電線を流れる電流の供給/遮断を行い、前記算出手段が算出した温度差を前記周囲温度に加えた温度合計が第1閾値以上である場合に前記電流を遮断する制御装置において、
前記電流を遮断している期間を計時する計時手段と、
前記算出手段が算出した温度差が第2閾値未満であるか否かを判定する第1判定手段と、
前記計時手段が計時した期間が所定期間を超えているか否かを判定する第2判定手段と、
前記第1判定手段によって、前記温度差が前記第2閾値未満であると判定されたか、又は、前記第2判定手段によって、前記計時手段が計時した期間が前記所定期間を超えていると判定された場合に前記算出手段の算出を休止する休止手段と
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記電線に流れる電流を検出する検出手段を備え、
前記算出手段は、前記温度差を、前記検出手段が検出した電流値と、前回算出した温度差とを用いて算出するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
複数の電線夫々について、電線の周囲温度と電線の温度との温度差を経時的に算出する算出手段を備え、前記複数の電線夫々について電線を流れる電流の供給/遮断を行い、該算出手段が算出した温度差を前記周囲温度に加えた温度合計が第1閾値以上である場合に、前記複数の電線の中で前記温度合計が前記第1閾値以上である電線に流れる電流を遮断する制御装置において、
前記複数の電線夫々について、電線に流れる電流を遮断している期間を計時する計時手段と、
前記算出手段が算出した温度差が第2閾値未満であるか否かを判定する第1判定手段と、
前記計時手段が計時した期間が所定期間を超えているか否かを判定する第2判定手段と、
前記複数の電線夫々について、前記第1判定手段によって、前記温度差が前記第2閾値未満であると判定されたか、又は、前記第2判定手段によって、前記計時手段が計時した期間が前記所定期間を超えていると判定された場合に前記算出手段の前記複数の電線に係る算出を休止する休止手段と
を備えることを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線に流れる電流の供給/遮断を行うと共に電線の温度を算出し、算出した温度が閾値以上である場合に電線に流れる電流を遮断する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、バッテリ及び負荷間に接続される電線の中途に設けられたスイッチをオン/オフすることによって、電線を流れる電流の供給/遮断を行う制御装置が提案されている。電線に電流が流れた場合、電線はジュール熱を発生する。そして、電線に過電流が流れない場合であっても、ジュール熱が電線の放熱量を超える可能性がある。ジュール熱が電線の放熱量を超える場合、電線に電流が流れる期間が経過するにつれて電線の温度が上昇し、電線の温度が一定の温度を超えた場合に発煙する。
【0003】
電線の発煙を防止するため、電線を流れる電流の供給/遮断を行う従来の制御装置の中には、電線の温度を算出し、算出した温度が所定温度を超えた場合に電線を流れる電流を遮断する制御装置(例えば、特許文献1参照)がある。
【0004】
特許文献1に記載の制御装置は、所定の第1周期で電線を流れる電流を検出し、検出した電流値に基づいて電線の温度を算出する。特許文献1に記載の制御装置は、算出した電線の温度が発煙温度に近い所定の第1温度を超えた場合に電線に流れる電流を遮断する。これにより、電線の発煙が防止される。
【0005】
更に、特許文献1に記載の制御装置は、算出した電線の温度が、第1温度よりも低くて電線の周囲温度に近い所定の第2温度を下回った場合、第1周期よりも長い所定の第2周期で電線を流れる電流を検出し、検出した電流値に基づいて電線の温度を算出する。このように、特許文献1に記載の制御装置では、電線の温度が第2温度を下回った場合に、電線の温度の算出回数を低減し、低消費電力を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−124982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の制御装置において、電線の温度の算出に用いられるプログラムに不具合又は誤り等の所謂バグがある場合、又は、電線の温度の算出器が故障している場合、誤った電線の温度が算出される虞がある。この場合、実際の電線の温度が第2温度を下回っているにも関わらず、算出した電線の温度が第2温度を下回らず、電線の温度の算出回数が低減されない可能性がある。
【0008】
算出した電線の温度が第2温度を下回らない場合、電線の温度の算出回数が低減されないため、特許文献1に記載の制御装置には、低消費電力を実現することができないという問題がある。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、誤った電線の温度を算出している場合であっても低消費電力を実現することができる制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る制御装置は、電線の周囲温度と前記電線の温度との温度差を経時的に算出する算出手段を備え、前記電線を流れる電流の供給/遮断を行い、前記算出手段が算出した温度差を前記周囲温度に加えた温度合計が第1閾値以上である場合に前記電流を遮断する制御装置において、前記電流を遮断している期間を計時する計時手段と、前記算出手段が算出した温度差が第2閾値未満であるか否かを判定する第1判定手段と、前記計時手段が計時した期間が所定期間を超えているか否かを判定する第2判定手段と、前記第1判定手段によって、前記温度差が前記第2閾値未満であると判定されたか、又は、前記第2判定手段によって、前記計時手段が計時した期間が前記所定期間を超えていると判定された場合に前記算出手段の算出を休止する休止手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、電線に流れる電流の供給/遮断を行うと共に、電線の周囲温度と電線の温度との温度差を経時的に算出し、算出した温度差を電線の周囲温度に加えた温度合計が第1閾値、例えば145℃以上である場合に電流を遮断する。更に、電流を遮断している期間を計時している。算出した温度差が第2閾値未満であるか否かの判定と、計時した期間が所定期間を超えているか否かの判定とを行う。そして、算出した温度差、即ち、電線の温度と電線の周囲温度との温度差が第2閾値、例えば5℃未満であると判定したか、又は、計時した期間が所定期間を超えていると判定した場合に温度差の算出を休止する。
【0012】
このため、温度差の算出に用いられるプログラムのバグ、又は、温度差を算出する算出器の故障等によって、誤った温度差が算出され、算出された温度差が第2閾値未満にならない場合であっても、電線に流れる電流を遮断している期間が所定期間を超えた場合には、温度差の算出が休止され、低消費電力が実現される。
【0013】
本発明に係る制御装置は、前記電線に流れる電流を検出する検出手段を備え、前記算出手段は、前記温度差を、前記検出手段が検出した電流値と、前回算出した温度差とを用いて算出するように構成してあることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、電線に流れる電流を検出し、電線の周囲温度と電線の温度との温度差を、検出した電流値と前回算出した温度差とを用いて算出する。このため、容易に、かつ、正確に温度差が算出される。
【0015】
本発明に係る制御装置は、複数の電線夫々について、電線の周囲温度と電線の温度との温度差を経時的に算出する算出手段を備え、前記複数の電線夫々について電線を流れる電流の供給/遮断を行い、該算出手段が算出した温度差を前記周囲温度に加えた温度合計が第1閾値以上である場合に、前記複数の電線の中で前記温度合計が前記第1閾値以上である電線に流れる電流を遮断する制御装置において、前記複数の電線夫々について、電線に流れる電流を遮断している期間を計時する計時手段と、前記算出手段が算出した温度差が第2閾値未満であるか否かを判定する第1判定手段と、前記計時手段が計時した期間が所定期間を超えているか否かを判定する第2判定手段と、前記複数の電線夫々について、前記第1判定手段によって、前記温度差が前記第2閾値未満であると判定されたか、又は、前記第2判定手段によって、前記計時手段が計時した期間が前記所定期間を超えていると判定された場合に前記算出手段の前記複数の電線に係る算出を休止する休止手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、複数の電線夫々について、電線に流れる電流の供給/遮断を行うと共に、電線の周囲温度と電線の温度との温度差を経時的に算出する。複数の電線夫々について、算出した温度差を電線の周囲温度に加えた温度合計が第1閾値、例えば145℃以上である場合に電流を遮断する。更に、複数の電線夫々について、電流を遮断している期間を計時している。算出した温度差が第2閾値未満であるか否かの判定と、計時した期間所定期間を超えているか否かの判定とを行う。そして、複数の電線夫々について、算出した温度差が第2閾値、例えば5℃未満であると判定したか、又は、計時した期間が所定期間を超えていると判定した場合、複数の電線に係る温度差の算出を休止する。
【0017】
このため、例えば、複数の電線中の1つについて、温度差の算出に用いられるプログラムのバグ、又は、温度差を算出する算出器の故障等によって、誤った温度差が算出され、算出された温度差が第2閾値未満にならない場合であっても、温度差の算出を休止することが可能であり、低消費電力が実現される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電流を遮断している期間を計時し、計時した期間が所定期間を超えている場合に温度差の算出を休止することが可能であるため、誤った電線の温度を算出している場合であっても低消費電力を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る制御装置の要部構成を示すブロック図である。
図2】制御装置の状態遷移図である。
図3】制御装置が負荷制御状態である場合に制御部が実行する動作の手順を示すフローチャートである。
図4】制御装置が負荷制御状態である場合に制御部が実行する動作の手順を示すフローチャートである。
図5】制御装置が負荷遮断状態である場合に制御部が実行する動作の手順を示すフローチャートである。
図6】制御装置が負荷遮断状態である場合に制御部が実行する動作の手順を示すフローチャートである。
図7】制御装置が自己遮断状態である場合に制御部が実行する動作の手順を示すフローチャートである。
図8】制御装置が自己遮断状態である場合に制御部が実行する動作の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る制御装置の要部構成を示すブロック図である。この制御装置1は、好適に車両に搭載され、バッテリ2の正極端子及び負荷3aの一端夫々に電線4aによって接続され、バッテリ2の正極端子及び負荷3bの一端夫々に電線4bによって接続されている。バッテリ2の負極端子及び負荷3a,3b夫々の他端は接地されている。
【0021】
制御装置1は、外部から負荷3a,3b夫々の作動又は停止を指示する作動/停止指示を受け付け、受け付けた作動/停止指示が指示する内容に基づいて、電線4a,4b夫々に流れる電流の供給/遮断を行う。また、制御装置1は、電線4a,4bの周囲温度と、電線4a,4b夫々に流れる電流とを検出し、検出した周囲温度及び電流値に基づいて電線4a,4b夫々の温度を算出する。
【0022】
制御装置1は、電線4a(又は電線4b)について、検出した電流値、又は、算出した電線4a(又は電線4b)の温度等に基づいて、外部から受け付ける作動/停止指示の内容に無関係に電線4a(又は電線4b)を遮断する。
【0023】
負荷3a,3b夫々はヘッドライト又はワイパー等の電気機器である。負荷3aは、制御装置1が電線4aに流れる電流の供給を行った場合、バッテリ2によって給電されて作動し、制御装置1が電線4aに流れる電流の遮断を行った場合、バッテリ2から給電されずに停止する。負荷3bも、負荷3aと同様に、制御装置1が電線4bに流れる電流の供給を行った場合に給電されて作動し、制御装置1が電線4bに流れる電流の遮断を行った場合に給電されずに停止する。
【0024】
制御装置1は、IPD(Intelligent Power Device)11a,11b、AD(Analog/Digital)変換回路12a,12b、温度検出部13及びマイクロコンピュータ(以下ではマイコン)14を有する。IPD11aは、バッテリ2の正極端子と負荷3aの一端との間に電線4aによって接続され、IPD11bは、バッテリ2の正極端子と負荷3bの一端との間に電線4bによって接続されている。IPD11a,11b夫々はAD変換回路12a,12bに接続されている。IPD11a,11b及びAD変換回路12a,12b夫々は更にマイコン14に各別に接続されている。マイコン14は温度検出部13にも接続されている。
【0025】
IPD11aは、Nチャネル型のFET(Field Effect Transistor)51a、電流検出部52a及び制御回路53aを有する。FET51aについて、ドレインは、電線4aによってバッテリ2の正極端子に接続され、ソースは電線4aによって負荷3aの一端に接続され、ゲートは制御回路53aに接続されている。制御回路53aは、FET51aのゲートの他に、電流検出部52aとマイコン14とに接続されている。電流検出部52aは更にAD変換回路12aに接続されている。
【0026】
FET51aは、スイッチとして機能し、ゲートに一定の電圧以上の電圧が印加された場合、ドレインからソースに電流が流れてオンとなり、ゲートに印加されている電圧が一定の電圧未満である場合、ドレインからソースに電流が流れずオフとなる。FET51aのゲートに印加されている電圧は制御回路53aによって調整され、FET51aは、制御回路53aによってオン/オフされる。
【0027】
電流検出部52aは、電線4aに流れる電流を検出し、検出した電流値を示すアナログの電流値データを制御回路53a及びAD変換回路12a夫々に出力する。
【0028】
制御回路53aは、マイコン14から、電線4aに流れる電流の遮断を指示する遮断指示、又は、電線4aに流れる電流の供給を指示する供給指示が入力される。制御回路53aは、マイコン14から供給指示が入力された場合、FET51aをオンにし、電線4aに流れる電流の供給を行い、負荷3aを作動させる。また、制御回路53aは、マイコン14から遮断指示が入力された場合、FET51aをオフにし、電線4aに流れる電流を遮断し、負荷3aを停止させる。
【0029】
制御回路53aは、更に、電流検出部52aから入力された電流値データが示す電流値が所定電流値以上である場合に、マイコン14から入力される供給指示又は遮断指示に無関係に、FET51aをオフにする。このとき、制御回路53aは、制御回路53aが自らの判断で電線4aに流れる電流を遮断したことを示す遮断信号をマイコン14に出力する。
【0030】
また、制御回路53aは、自らの判断で電線4aに流れる電流を遮断している状態で、所定の条件、例えば、電線4aの近傍の温度を検出する図示しない温度センサが検出した温度が所定温度未満であることを満たした場合、マイコン14から入力される供給指示又は遮断指示に従って、FET51aをオン/オフする。このとき、制御回路53aは、自らの判断で行っていた電流の遮断を解除したことを示す解除信号をマイコン14に出力する。更に、制御回路53aが自らの判断で電線4aに流れる電流を遮断している状態で、マイコン14から制御回路53aに遮断指示が入力された場合も、制御回路53aが電流を遮断している状態が解除される。
【0031】
AD変換回路12aは、IPD11aの電流検出部52aから入力されたアナログの電流値データをデジタルの電流値データに変換し、変換した電流値データをマイコン14に出力する。
なお、制御装置1は、AD変換回路12aがマイコン14に内蔵される構成であってもよい。この場合、AD変換回路12aは、電流値データをマイコン14の入力部61に出力する。
【0032】
IPD11bは、Nチャネル型のFET51b、電流検出部52b及び制御回路53bを有する。電線4bと、IPD11bのFET51b、電流検出部52b及び制御回路53bと、AD変換回路12bとは、電線4aと、IPD11aのFET51a、電流検出部52a及び制御回路53aと、AD変換回路12aと同様に接続される。
【0033】
電線4b、FET51b、電流検出部52b、制御回路53b及びAD変換回路12b夫々は、電線4a、FET51a、電流検出部52a、制御回路53a及びAD変換回路12aに対応し、これらと同様に作用する。電流検出部52a,52b夫々は検出手段として機能する。
【0034】
従って、制御回路53bは、マイコン14から入力される電線4bについての供給指示又は遮断指示に基づいて、FET51bをオン/オフし、電線4bに流れる電流の供給/遮断を行い、負荷3bの作動/停止を行う。
【0035】
また、制御回路53bは、電線4bについて電流検出部52bが検出した電流値が所定電流値以上である場合に、マイコン14から入力される供給指示又は遮断指示に無関係にFET51bをオフにし、電線4bについての遮断信号をマイコン14に出力する。
【0036】
更に、制御回路53bは、制御回路53bが自らの判断で電線4bに流れる電流を遮断している状態で、所定の条件を満たした場合、マイコン14から入力される供給指示又は遮断指示に従って、FET51をオン/オフする。このとき、制御回路53は、電線4bについての解除信号をマイコン14に出力する。また、制御回路53bは、制御回路53bが自らの判断で電線4bに流れる電流を遮断している状態で、マイコン14から制御回路53bに遮断指示が入力された場合も、制御回路53bが電流を遮断している状態が解除される。
なお、制御装置1は、AD変換回路12aと同様に、AD変換回路12bがマイコン14に内蔵される構成であってもよい。この場合、AD変換回路12bは、電流値データをマイコン14の入力部61に出力する。
【0037】
温度検出部13は、電線4a,4bの周囲温度を検出し、検出した周囲温度を示す温度データをマイコン14に出力する。温度検出部13は、電線4a,4bに共通する周囲温度を検出する。
【0038】
マイコン14は、入力部61、出力部62、記憶部63及び制御部64を有する。制御部64は、バス65によって入力部61、出力部62及び記憶部63に接続されている。入力部61は、更に、IPD11aの制御回路53a、AD変換回路12a、IPD11bの制御回路53b及びAD変換回路12bに各別に接続されている。出力部62は、IPD11aの制御回路53a及びIPD11bの制御回路53bに各別に接続されている。
【0039】
入力部61には、制御装置1の外部から作動/停止指示が入力され、入力部61は、入力された作動/停止指示の内容を制御部64に通知する。また、入力部61には、IPD11aの制御回路53a及びIPD11bの制御回路53b夫々から遮断信号及び解除信号が入力される。
【0040】
入力部61は、制御回路53a(又は制御回路53b)から遮断信号が入力された場合、制御回路53a(又は制御回路53b)が電線4a(又は電線4b)に流れる電流を遮断している旨を制御部64に通知する。更に、入力部61は、制御回路53a(又は制御回路53b)から解除信号が入力された場合、制御回路53a(又は制御回路53b)が自らの判断で行っていた電流の遮断を解除した旨を制御部64に通知する。
【0041】
また、入力部61には、AD変換回路12a,12b夫々からデジタルの電流値データが入力され、入力部61は、入力された電流値データが示す電流値を制御部64に通知する。
更に、入力部61には、温度検出部13から温度データが入力され、入力部61は、入力された温度データが示す電線4a,4bの周囲温度を制御部64に通知する。
【0042】
出力部62は、制御部64の指示に従って、電線4aについての供給指示又は遮断指示をIPD11aの制御回路53aに出力し、電線4bについての供給指示又は遮断指示をIPD11bの制御回路53bに出力する。
記憶部63は不揮発性のメモリであり、記憶部63に記憶してある内容の読み出し又は書込みは制御部64によって行われる。
【0043】
制御装置1は下記の5つの状態中のいずれか1つの状態をとる。
1つ目の状態は、図示しない制御装置1の電源が投入されておらず、停止している停止状態である。
2つ目の状態は、制御装置1が外部から入力される作動/停止指示に従って、電線4a(又は電線4b)に流れる電流の供給/遮断を行い、負荷3a(又は負荷3b)の作動/停止を制御する負荷制御状態である。
【0044】
3つ目の状態は、外部から入力される作動/停止指示に無関係に出力部62が制御回路53a(又は制御回路53b)に遮断指示を出力して電線4a(又は電線4b)に流れる電流を遮断している負荷遮断状態である。
【0045】
4つ目の状態は、IPD11aの制御回路53a(又はIPD11bの制御回路53b)が自らの判断で電線4a(又は電線4b)に流れる電流を遮断している自己遮断状態である。
5つ目の状態は、制御部64が動作を休止している休止状態である。
【0046】
制御装置1は、停止状態及び休止状態を除く、負荷制御状態、負荷遮断状態及び自己遮断状態については、電線4a,4b夫々について異なる状態を取り得る。制御装置1は、例えば、電線4aについては負荷制御状態であり、電線4bについては負荷遮断状態であることも可能である。
【0047】
制御部64は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等の演算処理装置で構成されるものであり、記憶部63に記憶してあるプログラムを読み出して実行することによって、制御処理及び演算処理等を行う。
【0048】
制御部64は、入力部61から取得した電線4aの周囲温度及び電線4aの電流値を用いて、電線4aの温度と周囲温度との温度差を経時的に算出する。同様に、制御部64は、入力部61から取得した電線4bの周囲温度及び電線4bの電流値を用いて、電線4bの温度と周囲温度との温度差を経時的に算出する。制御部64は算出手段として機能する。制御部64は、電線4a,4b夫々について算出した温度差を記憶部63に記憶する。
【0049】
制御部64は、制御装置1が負荷制御状態及び負荷遮断状態である場合、電線4a,4b夫々についての温度差を下記の(1)式及び(2)式を用いて算出する。
【0050】
ΔT2=ΔT1×exp(−Δt/τ)+Rth×R1
×I12 ×(1−exp(−Δt/τ))・・・(1)
R1=Ro×(1+κ×(Ta+ΔT1−To))・・・(2)
【0051】
以下に、(1)式及び(2)式で用いられている変数及び定数を説明する。変数及び定数の説明では、変数又は定数の単位も併せて示している。ΔT1は、前回に算出した温度差(℃)であり、ΔT2は、算出した温度差(℃)である。Δtは温度差ΔT2を算出する間隔(s)であり、τは電線4a(又は電線4b)の電線放熱時定数(s)である。
【0052】
Rthは、電線4a(又は電線4b)の電線熱抵抗(℃/W)であり、R1は、電線4a(又は電線4b)の温度が前回算出した電線4a(又は電線4b)の温度である場合における電線4a(又は電線4b)の電線抵抗(Ω)である。Toは所定の温度(℃)であり、Roは温度Toにおける電線抵抗(Ω)である。Taは、温度検出部13が検出した周囲温度(℃)であり、κは電線4a(又は電線4b)の電線抵抗温度係数(/℃)である。I1は、電流検出部52a(又は電流検出部52b)が検出した電流値(A)である。ΔT1、ΔT2、I1及びTaは変数であり、Δt、τ、Rth、Ro、κ及びToは、予め設定されている定数である。
【0053】
制御部64は、(2)式に前回算出した温度差ΔT1と、入力部61から取得した周囲温度Taとを代入することによって、電線抵抗R1を算出する。更に、制御部64は、算出した電線抵抗R1と、前回算出した温度差ΔT1と、入力部61から取得した電流値とを(1)式に代入することによって温度差を算出する。制御部64は、算出した温度差を、入力部61から取得した周囲温度Taに加えることによって電線4a,4b夫々の温度を算出する。
なお、初回の温度差の算出では、記憶部63に予め記憶してある温度差、例えばゼロをΔT1に代入する。制御装置1は、後述するように、停止状態から負荷制御状態に遷移し、休止状態から負荷制御状態に遷移する。前述した初回の温度差の算出には、制御装置1が停止状態から負荷制御状態に遷移した後に最初に行う温度差の算出と、休止状態から負荷制御状態に遷移した後に最初に行う温度差の算出とが含まれる。
【0054】
以上のように、制御部64は、電線4a(又は電線4b)の周囲温度と電線4a(又は電線4b)の温度との温度差を、電流検出部52a(又は電流検出部52b)が検出した電流値と、前回算出した温度差とを用いて算出する。このため、制御部64は、電線4a(又は電線4b)の周囲温度と電線4a(又は電線4b)の温度との温度差を容易に、かつ、正確に算出することができる。
【0055】
(1)式の(右辺)は第1項と第2項との和によって構成されている。exp(−Δt/τ)は、温度差の算出間隔Δtが長い程小さくなるため、第1項は電線4a(又は電線4b)の放熱を表す項である。また、(1−exp(−Δt/τ))は、温度差の算出間隔Δtが長い程大きくなるため、第2項は電線4a(又は電線4b)の発熱を表す項である。
【0056】
制御部64は、制御装置1が自己遮断状態である場合、電線4a,4b夫々についての温度差を下記の(3)式を用いて算出する。
【0057】
ΔT2=((Tth−Ta)/16)+ΔT1・・・(3)
ここで、Tthは、電線4a(又は電線4b)に流れる電流を遮断するか否かを判定するための閾値(℃)であり、例えば145℃である。
【0058】
制御部64は、制御装置1が停止状態又は休止状態である場合、電線4a,4b夫々について温度差を算出しない。
【0059】
制御部64は、電線4a,4b夫々について、算出した温度が所定の閾値Tth以上であるか否か、IPD11a(又はIPD11b)が自らの判断で電線4a(又は電線4b)に流れる電流を遮断しているか否か、及び、算出した温度差が所定の閾値ΔTth未満であるか否か等を判定する。制御部64は、これらの判定結果に応じて、供給指示又は遮断指示を出力部62に出力させる。
閾値Tth及び閾値ΔTthは予め記憶部63に記憶されている。閾値Tthは第1閾値に該当し、閾値ΔTthは第2閾値に該当する。
【0060】
また、制御部64は、制御装置1が負荷制御状態又は負荷遮断状態である場合に、電線4a,4b夫々について連続して電流を遮断している遮断期間を計時しており、記憶部63は遮断期間の計時に用いられる変数CNT及び定数値Cpを記憶している。
【0061】
記憶部63は、更に、電線4a,4b夫々について、温度の算出を休止することを禁止すべきか否かを示す休止禁止フラグと、制御装置1が負荷遮断状態である場合に入力部61に入力される作動/停止指示が停止を指示したか否かを示す変数Tとを記憶している。
【0062】
休止禁止フラグが1である場合に電線4a(又は電線4b)の温度の算出を休止してはいけないことを示し、休止禁止フラグがゼロである場合に電線4a(又は電線4b)の温度の算出を休止してもよいことを示す。また、変数Tがゼロである場合、制御装置1が負荷遮断状態となってから作動/停止指示が電線4a(又は電線4b)について停止を指示していないことを示し、変数Tが1である場合、制御装置1が負荷遮断状態となってから作動/停止指示が、電線4a(又は電線4b)について、少なくとも1度、停止を指示したことを示す。
【0063】
制御部64は、電線4a,4b夫々について、入力部61から通知される電流値が所定の閾値Ith未満であるか否かも判定し、閾値Ithは記憶部63に記憶されている。
【0064】
以下では、制御装置1の各状態において制御部64が電線4aについて実行する動作の手順を説明する。制御装置1の各状態において制御部64が電線4bについて実行する動作の手順は、以下に説明する電線4aについて実行する動作の手順と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0065】
図2は制御装置1の状態遷移図である。制御装置1が停止状態である場合、制御部64が動作を停止しており、電線4a,4b夫々について温度を算出していない。停止状態にある制御装置1は、電源が投入された場合、制御部64は、変数CNT,T夫々をゼロに設定し、休止禁止フラグをゼロに設定する。制御装置1の状態は、停止状態から負荷制御状態に遷移し、制御部64は処理を負荷制御状態の処理へ移行する。
【0066】
図3及び図4は、制御装置1が負荷制御状態である場合に制御部64が実行する動作の手順を示すフローチャートである。制御部64は、まず、温度検出部13が検出した周囲温度を入力部61から取得し(ステップS1)、電流検出部52aが検出した電流値を入力部61から取得し、(ステップS2)、前回算出した温度差を記憶部63から読み出す(ステップS3)。ここで、ステップS3が、制御装置1が停止状態又は休止状態から負荷制御状態へ遷移した後に最初に実行するステップS3である場合、記憶部63に予め記憶してある初回の温度差ΔT1の値を読み出す。
【0067】
次に、制御部64は、ステップS1,S2夫々で取得した周囲温度及び電流値と、ステップS3で読み出した温度差とを(1)式及び(2)式に代入することによって、電線4aの温度と電線4aの周囲温度との温度差を算出する(ステップS4)。制御部64は、ステップS4で算出した温度差を記憶部63に記憶し(ステップS5)、ステップS1で取得した周囲温度にステップS4で算出した温度差を加えた温度合計、即ち、電線4aの温度を算出する(ステップS6)。
【0068】
制御部64は、ステップS6を実行した後、記憶部63に記憶してある変数CNTがゼロであるか否かを判定する(ステップS7)。制御部64は、変数CNTがゼロではないと判定した場合(S7:NO)、ステップS6で算出した電線4aの温度が閾値Tth以上であるか否かを判定する(ステップS8)。
【0069】
制御部64は、電線4aの温度が閾値Tth、例えば145℃以上であると判定した場合(S8:YES)、休止禁止フラグを1に設定し(ステップS9)、出力部62に指示してIPD11aの制御回路53aに遮断指示を出力させる(ステップS10)。これにより、制御回路53aはFET51aをオフにし、電線4aに流れる電流は遮断される。
【0070】
以上のように、制御部64は、ステップS6で算出した電線4aの温度が閾値Tth以上である場合に、遮断指示を制御回路53aに出力することによって電線4aに流れる電流を遮断する。
これにより、制御装置1の状態は、図2に示すように、負荷制御状態から負荷遮断状態へ遷移する。
【0071】
制御部64は、ステップS10を実行した後、処理を負荷遮断状態の処理へ移行し(ステップS11)、制御装置1が負荷制御状態である場合における処理を終了する。
【0072】
制御部64は、変数CNTがゼロであると判定した場合(S7:YES)、又は、電線4aの温度が閾値Tth未満であると判定した場合(S8:NO)、IPD11aが自らの判断で電線4aに流れる電流の遮断を実施しているか否かを判定する(ステップS12)。ここで、制御部64は、IPD11aの制御回路53aから入力部61に遮断信号が入力された場合にIPD11aが遮断を実施していると判定し、制御回路53aから入力部61に遮断信号が入力されていない場合にIPD11aが遮断を実施していないと判定する。
IPD11aが自らの判断で電線4aに流れる電流の遮断を実施した場合、図2に示すように、制御装置1の状態は負荷制御状態から自己遮断状態へ遷移する。
【0073】
なお、IPD11aが自らの判断で遮断を実施しているか否かの判定は、入力部61に遮断信号が入力されたか否かに基づいて行われなくてもよい。例えば、制御部64は、出力部62に供給指示を出力させた後、入力部61から電線4aに流れる電流の値を取得し、取得した電流値がゼロであるか否かに基づいてIPD11aが遮断を実施しているか否かを判定してもよい。このとき、制御部64は、入力部61から取得した電流値がゼロである場合、IPD11aが遮断を実施していると判定し、入力部61から取得した電流値がゼロでない場合、IPD11aが遮断を実施していないと判定する。
【0074】
制御部64は、IPD11aが遮断を実施していると判定した場合(S12:YES)、温度差の演算に用いる演算式を(1)式及び(2)式から(3)式に切り替え(ステップS13)、休止禁止フラグを1に設定する(ステップS14)。このとき、制御装置1の状態は、図2に示すように、負荷制御状態から自己遮断状態へ遷移している。制御部64は、ステップS14を実行した後、処理を自己遮断状態の処理へ移行し(ステップS15)、制御装置1が負荷制御状態である場合における処理を終了する。
【0075】
制御部64は、IPD11aが遮断を実施していないと判定した場合(S12:NO)、入力部61に入力されている作動/停止指示が電線4aについて作動を指示しているか否かを判定する(ステップS16)。制御部64は、作動/停止指示が作動を指示していると判定した場合(S16:YES)、出力部62に指示して、供給指示をIPD11aの制御回路53aに出力させる(ステップS17)。これにより、制御回路53aは、FET51aをオンにし、電線4aに流れる電流の供給を行う。
【0076】
次に、制御部64は、変数CNTを定数Cp、例えば12000に設定し(ステップS18)、休止禁止フラグを1に設定する(ステップS19)。制御部64は、ステップS19を実行した後、処理をステップS1に戻し、再び、電線4aの温度を算出する。
【0077】
制御部64は、作動/停止指示が作動を指示していない場合、即ち、停止を指示している場合(S16:NO)、出力部62に指示して、遮断指示をIPD11aの制御回路53aに出力させる(ステップS20)。これにより、制御回路53aは、FET51aをオフにし、電線4aに流れる電流を遮断する。
【0078】
次に、制御部64は変数CNTがゼロであるか否かを判定する(ステップS21)。制御部64は、変数CNTがゼロではないと判定した場合(S21:NO)、変数CNTを1だけデクリメントする(ステップS22)。制御部64は、変数CNTがゼロであると判定した場合(S21:YES)、又は、ステップS22を実行した後、ステップS4が算出した温度差が閾値ΔTth、例えば5℃未満であるか否かを判定する(ステップS23)。
【0079】
制御部64は、温度差が閾値ΔTth以上であると判定した場合(S23:NO)、変数CNTがゼロであるか否かを判定する(ステップS24)。制御部64は、変数CNTがゼロではないと判定した場合(S24:NO)、休止禁止フラグを1に設定し(ステップS25)、処理をステップS1に戻し、電線4aの温度を再び算出する。
【0080】
制御部64は、作動/停止指示が電線4aについて停止を指示して出力部62に遮断指示を出力させている間、ステップS4で算出した温度差が閾値ΔTth未満となるか、又は、変数CNTがゼロとなるまで、電線4aの温度の算出を定期的に繰り返し、変数CNTを1ずつデクリメントし続ける。このように、制御部64は、変数CNTを1ずつデクリメントすることによって、電線4aに流れる電流を遮断している期間を計時する。制御部64は、電線4bについても同様に電線4bに流れる電流を遮断している期間も計時し、計時手段としても機能する。
【0081】
制御部64は、温度差が閾値ΔTth未満であると判定した場合(S23:YES)、又は、変数CNTがゼロであると判定した場合(S24:YES)、休止禁止フラグをゼロに設定する(ステップS26)。次に、制御部64は、記憶部63に記憶してある全ての休止禁止フラグ、即ち、電線4a,4b夫々についての休止禁止フラグがゼロであるか否かを判定する(ステップS27)。制御部64は、全ての休止禁止フラグがゼロではないと判定した場合、即ち、電線4bについての休止禁止フラグが1であると判定した場合(S27:NO)、処理をステップS1に戻し、再び電線4aの温度を算出する。
【0082】
制御部64は、全ての休止禁止フラグがゼロであると判定した場合(S27:YES)、電線4a,4bの温度の算出を休止する(ステップS28)。これにより、制御装置1は、図2に示すように負荷制御状態から休止状態へ遷移する。制御部64は休止手段としても機能する。制御部64は、ステップS28を実行した後、処理を休止状態の処理へ移行し(ステップS29)、制御装置1が負荷制御状態である場合における処理を終了する。
【0083】
制御装置1が負荷制御状態である場合における制御部64の処理では、電線4aの温度と電線4aの周囲温度との温度差が閾値ΔTth未満であるか、又は、変数CNTがゼロである場合に休止禁止フラグがゼロとなる。前述したように、電線4bについても制御部64は同様の処理を行うので、電線4bの温度と電線4bの周囲温度との温度差が閾値ΔTth未満であるか、又は、変数CNTがゼロである場合に休止禁止フラグがゼロとなる。そして、電線4a,4bについて休止禁止フラグが共にゼロである場合に電線4a,4bの温度の算出が休止される。
【0084】
従って、制御部64は、電線4a,4b夫々について、算出した温度差が閾値ΔTth未満であるか、又は、電流の遮断を行っている期間が所定期間を超えた場合に温度差の算出を休止する。制御部64は休止手段としても機能する。
【0085】
図5及び図6は、制御装置1が負荷遮断状態である場合に制御部64が実行する動作の手順を示すフローチャートである。制御部64の処理が負荷遮断状態の処理に移行した場合、出力部62から遮断指示が制御回路53aに出力されおり、電線4aの電流が遮断されている。制御装置1が負荷遮断状態である間、出力部62から制御回路53へ遮断指示が出力されたままである。
【0086】
制御部64は、まず、電線4aに流れる電流を遮断している期間を計時するため、変数CNTを定数Cpに設定し(ステップS31)、変数Tをゼロに設定する(ステップS32)。次に、制御部64は、入力部61に入力されている作動/停止指示が電線4aについて停止を指示しているか否かを判定する(ステップS33)。制御部64は、停止を指示していると判定した場合(S33:YES)、制御装置1が負荷遮断状態となってから作動/停止指示が少なくとも1度、電線4aについて停止を指示したとして変数Tを1に設定する(ステップS34)。
【0087】
制御部64は、停止を指示していないと判定した場合(S33:NO)、又は、ステップS34を実行した後、変数CNTがゼロであるか否かを判定する(ステップS35)。制御部64は、変数CNTがゼロではないと判定した場合(S35:NO)、変数CNTを1だけデクリメントする(ステップS36)。
【0088】
制御部64は、変数CNTがゼロであると判定した場合(S35:YES)、又は、ステップS36を実行した後、温度検出部13が検出した周囲温度を入力部61から取得し(ステップS37)、記憶部63から前回算出した温度差を読み出す(ステップS38)。ここで、記憶部63から読み出す温度差は、制御装置1が負荷遮断状態である場合に算出した温度差に限定されず、例えば、制御部64は、制御装置1が負荷制御状態である場合に算出した温度差を読み出すこともある。
【0089】
次に、制御部64は、ステップS37で取得した周囲温度と、ステップS38で読み出した温度差とを(1)式及び(2)式に代入することによって、電線4aの温度と電線4aの周囲温度との温度差を算出する(ステップS39)。制御装置1が負荷遮断状態である場合、電線4aに流れる電流は遮断されているため、電線4aに流れる電流の値はゼロである。従って、制御部64は、ステップS39で、(1)式におけるI1にゼロを代入する。これにより、(1)式の(右辺)は電線4aの放熱を示す項のみで表されるので、ステップS37で算出される電線4aの温度は、前回算出した電線4aの温度よりも低くなる。
【0090】
次に、制御部64は、ステップS39で算出した温度差を記憶部63に記憶し(ステップS40)、変数Tが1であるか否か、即ち、制御装置1が負荷遮断状態になった後に、入力部61に入力されている作動/停止指示が少なくとも1度、電線4aについて停止を指示したか否かを判定する(ステップS41)。制御部64は、変数Tが1ではない、即ち、変数Tがゼロであると判定した場合(S41:NO)、処理をステップS33に戻し、作動/停止指示が電線4aについて停止を指示するまで温度差の算出を定期的に繰り返す。
【0091】
制御部64は、変数Tが1であると判定した場合(S41:YES)、ステップS39で算出した温度差が閾値ΔTth未満であるか否かを判定する(ステップS42)。制御部64は、温度差が閾値ΔTth以上であると判定した場合(S42:NO)、変数CNTがゼロであるか否かを判定する(ステップS43)。制御部64は、変数CNTがゼロではないと判定した場合(S43:NO)、処理をステップS33に戻し、ステップS39で算出した温度差が閾値ΔTth未満になるか、又は、変数CNTがゼロとなるまで、温度差の算出を定期的に繰り返す。
【0092】
制御部64は、変数Tが1となって、ステップS39で算出した温度差が閾値ΔTth未満となるか又は変数CNTがゼロとなるまで、電線4aの温度の算出を定期的に繰り返し、変数CNTを1ずつデクリメントし続ける。このように、制御部64は、変数CNTを1ずつデクリメントすることによって、電線4aに流れる電流を遮断している期間を計時する。制御部64は、電線4bについても同様に電線4bに流れる電流を遮断している期間も計時する。制御部64は、制御装置1が負荷制御状態である場合だけではなく、負荷遮断状態である場合においても電線4a,4b夫々に流れる電流が遮断している期間を計時する。
【0093】
制御部64は、温度差が閾値ΔTth未満であると判定した場合(S42:YES)、又は、変数CNTがゼロであると判定した場合(S43:YES)、休止禁止フラグをゼロに設定する(ステップS44)。そして、制御部64は、処理を負荷制御状態の処理へ移行し(ステップS45)、制御装置1が負荷遮断状態である場合における処理を終了する。その後、制御部64は、前述したように、作動/停止指示が電線4aについて作動を指示しているか、又は、停止を指示しているかに基づいて、出力部62に供給指示又は遮断指示を出力させ、電線4aに流れる電流の供給/遮断を行う。制御装置1の状態は、図2に示すように、負荷遮断状態から負荷制御状態へ遷移する。
【0094】
制御装置1が負荷遮断状態である場合における制御部64の処理では、電線4aの温度と電線4aの周囲温度との温度差が閾値ΔTth未満であるか、又は、変数CNTがゼロである場合に休止禁止フラグがゼロとなり、処理を負荷制御状態の処理へ移行する。制御部64が処理を負荷制御状態の処理へ移行した場合において、入力部61に入力されている作動/停止指示が電線4aについて停止を指示しているとき、ステップS4で算出した温度が閾値ΔTth未満であるか又は変数CNTがゼロである。このとき、電線4bの休止禁止フラグがゼロであれば、制御部64は、電線4a,4bの温度の算出を休止する。
【0095】
図7及び図8は、制御装置1が自己遮断状態である場合に制御部64が実行する動作の手順を示すフローチャートである。制御部64の処理が自己遮断状態の処理に移行した場合、電線4aの温度と電線4aの周囲温度との温度を算出するための演算式は(3)式に切替えられている。
【0096】
制御部64は、まず、変数CNTを定数Cpに設定する(ステップS51)。制御部64は、ステップS51以降の処理では変数CNTの値を変更することはなく、変数CNTの値は定数Cpのままとなる。
【0097】
制御部64は、ステップS51を実行した後、電流検出部52aが検出した電流値を入力部61から取得し(ステップS52)、取得した電流値が閾値Ith未満であるか否かを判定する(ステップS53)。制御部64は、電流値が閾値Ith未満である場合(S53:YES)、IPD11aが電線4aに流れる電流の遮断を解除したか否かを判定する(ステップS54)。ここで、制御部64は、IPD11aの制御回路53aから入力部61に解除信号が入力された場合にIPD11aが遮断を解除したと判定し、制御回路53aから入力部61に解除信号が入力されていない場合にIPD11aが遮断を解除していないと判定する。
【0098】
制御部64は、IPD11aが遮断を解除していないと判定した場合(S54:NO)、入力部61に入力されている作動/停止指示が電線4aについて停止を指示しているか否かを判定する(ステップS55)。制御部64は、停止を指示していると判定した場合(S55:YES)、出力部62に指示して、遮断指示をIPD11aの制御回路53aに出力させる(ステップS56)。制御部64は、IPD11aが遮断を解除したと判定した場合(ステップS54:YES)、又は、ステップS56を実行した後、処理を負荷制御状態の処理へ移行し(ステップS57)、制御装置1が自己遮断状態である場合における処理を終了する。制御装置1の状態は、図2示すように、自己遮断状態から負荷制御状態へ遷移する。
【0099】
制御部64は、電流値が閾値Ith以上である場合(S53:NO)、又は、停止を指示していないと判定した場合(S55:NO)、温度検出部13が検出した周囲温度を入力部61から取得し(ステップS58)、記憶部63から前回算出した温度差を読み出す(ステップS59)。ここで、記憶部63から読み出す温度差は、ステップS38と同様に、制御装置1が自己遮断状態である場合に算出した温度差に限定されない。
【0100】
次に、制御部64は、ステップS58で取得した周囲温度と、ステップS59で読み出した温度差とを(3)式に代入することによって、電線4aの温度と、電線4aの周囲温度との温度差を算出し(ステップS60)、算出した温度差を記憶部63に記憶する(ステップS61)。制御部64は、ステップS61を実行した後、ステップS58で取得した周囲温度にステップS60で算出した温度差を加えた温度合計、即ち、電線4aの温度を算出する(ステップS62)。
【0101】
次に、制御部64は、ステップS62で算出した電線4aの温度が閾値Tth以上であるか否かを判定する(ステップS63)。制御部64は、電線4aの温度が閾値Tth未満であると判定した場合(S63:NO)、処理をステップS52に戻す。制御部64は、IPD11aが電流の遮断を解除していない、かつ、作動/停止指示が電線4aについて作動を指示している場合において、算出した電線4aの温度が閾値Tth未満である間、電線4aの温度の算出を定期的に繰り返す。(3)式では、前回算出した温度差ΔT1に、(Tth−Ta)/16を加算することによって温度差ΔT2を算出する。従って、少なくとも16回、ステップS62の算出が繰り返された場合、電線4aの温度と電線4aの周囲温度との温度差はTth−Ta以上であり、この温度差に周囲温度Taを加えた電線4aの温度は閾値Tth以上となる。
【0102】
制御部64は、電線4aの温度が閾値Tth以上であると判定した場合(S63:YES)、温度差の演算に用いる演算式を(3)式から(1)式及び(2)式に切り替え(ステップS64)、休止禁止フラグを1に設定する(ステップS65)。次に、制御部64は、出力部62に指示して、遮断指示をIPD11aの制御回路53aに出力させ(ステップS66)、処理を負荷遮断状態の処理へ移行し(ステップS67)、制御装置1が自己遮断状態である場合における処理を終了する。制御装置1の状態は、図2示すように、自己遮断状態から負荷遮断状態へ遷移する。
【0103】
制御装置1が休止状態である場合、入力部61に入力される作動/停止指示が電線4a,4b夫々について停止を指示しており、制御部64は、電線4a,4b夫々の温度の算出を休止している。このため、制御装置1では低消費電力が実現されている。制御部64は、負荷3a又は負荷3bについて、入力部61に入力されている作動/停止指示が作動を指示した場合に、変数CNTをゼロに設定した後、処理を負荷制御状態の処理に移行し、電線4a,4b夫々の温度の算出を再開する。
【0104】
前述したように、制御装置1の各状態において制御部64が電線4bについて実行する動作の手順は、以下に説明する電線4aについて実行する動作の手順と同様である。電線4a、IPD11a、AD変換回路12a、FET51a、制御回路53a及び電流検出部52a夫々は、電線4b、IPD11b、AD変換回路12b、FET51b、制御回路53b及び電流検出部52bに対応する。また、電線4bについての説明では、電線4aについての説明で記載した電線4bは電線4aに置き換わる。
【0105】
以上のように構成された制御装置1では、電線4a,4b夫々について、算出した温度差が閾値ΔTth未満であるか、又は、変数CNTがゼロである場合に休止禁止フラグがゼロとなり、電線4a,4b夫々についての休止禁止フラグが共にゼロである場合、温度差の算出を休止する。
【0106】
このため、制御部64が、電線4a,4b夫々の温度を算出するためのプログラムのバグ、又は、温度差を算出する制御部64の算出部分の故障等によって、誤った温度差を算出し、算出した温度差が閾値ΔTth未満にならない場合であっても、温度差の算出を休止することが可能である。制御部64が誤った温度差を算出している場合であっても、変数CNTがゼロとなれば電線4a,4b夫々の温度の算出が休止するため、低消費電力が実現される。
【0107】
このため、制御装置1がバッテリ2によって給電されている場合において、制御部64が前述したように誤った温度差を算出し続けたときであっても制御部64は電線4a,4b夫々の温度の算出を休止するため、バッテリ上がりを防止することができる。
【0108】
なお、制御部64が電線4aの温度を算出する構成は、前回算出した温度差と、電線4aに流れる電流の値とを用いて算出する構成に限定されず、電線4aの周囲温度と電線4aの温度との温度差を経時的に算出する構成であればよい。制御部64が電線4bの温度を算出する構成も、同様に、前回算出した温度差と、電線4bに流れる電流の値とを用いて算出する構成に限定されない。
【0109】
また、制御部64が電線4a,4b夫々について電流を遮断している期間を計時する構成は、変数CNTを定数Cpから1ずつデクリメントする構成に限定されない。制御部64は、変数CNTをゼロから1ずつインクリメントする構成でもよい。更には、制御装置1がタイマーを有し、制御部64は、タイマーを用いて、電流が遮断されている期間を計時してもよい。
【0110】
また、制御装置1が電流の供給/遮断を行う電線の本数は2本に限定されず、1本、又は、3本以上であってもよい。電流の供給/遮断を行う電線が電線4aだけである場合では、制御部64は、制御装置1が負荷制御状態であるとき、ステップS26を実行した後、ステップS28を実行する。制御部64は、電線4aについて、算出した温度差が閾値ΔTth未満であるか、又は、変数CNTがゼロでる場合に休止禁止フラグがゼロとなり、電線4aの温度の算出を休止する。
【0111】
この場合であっても、電線4aの温度を算出するためのプログラムのバグ、又は、温度差を算出する制御部64の算出部分の故障等によって、誤った温度差を算出し、算出した温度差が閾値ΔTth未満にならないとき、温度差の算出を休止することが可能である。制御部64が誤った温度差を算出している場合であっても、変数CNTがゼロとなれば電線4aの温度の算出が休止するため、低消費電力が実現される。
【0112】
電流の供給/遮断を行う電線の本数が3本以上である場合においては、各電線について、制御部64は電線4aについて行った同様の処理を行い、全ての電線についての休止禁止フラグがゼロである場合に全ての電線について温度の算出を休止する。
【0113】
また、FET51a,51b夫々はスイッチとして機能すればよいため、FET51a,51b夫々は、Nチャネル型のFETに限定されず、Pチャネル型のFET又はバイポーラトランジスタ等であってもよい。
【0114】
開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0115】
1 制御装置
4a,4b 電線
52a,52b 電流検出部(検出手段)
64 制御部(算出手段、計時手段、休止手段)
図1
図2
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図8