(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る回転体、定着装置、及び画像形成装置の一例について説明する。
【0021】
なお、以下の説明では、
図1に矢印Yで示す方向(Y方向)を装置高さ方向、矢印Xで示す方向(X方向)を装置幅方向とする。また、Y方向及びX方向のそれぞれに直交する方向(Z方向)を装置奥行き方向とする。さらに、X方向、Y方向、Z方向のそれぞれ一方側と他方側を区別する必要がある場合は、画像形成装置10を正面視して、上側をY側、下側を−Y側、右側をX側、左側を−X側、前側を−Z側、奥側をZ側と記載する。
【0022】
<全体構成>
図1には、第1実施形態の一例としての画像形成装置10が示されている。画像形成装置10は、記録媒体の一例としての記録用紙Pが収容される用紙収容部12と、用紙収容部12のY側に設けられ、用紙収容部12から供給される記録用紙Pに画像形成を行う画像形成部14とを有している。また、画像形成装置10は、画像形成部14の−X側に一体的に設けられ、画像形成された記録用紙Pを排出する排出部16と、排出部16のY側に設けられ、読取原稿Gを読み取る原稿読取部18とを有している。さらに、画像形成装置10は、画像形成部14内に設けられ画像形成装置10の各部の動作を制御する制御部20を有している。
【0023】
(用紙収容部)
用紙収容部12は、サイズの異なる記録用紙Pが収容される第1収容部22、第2収容部24、第3収容部26、及び第4収容部28がY方向に並んで設けられている。第1収容部22、第2収容部24、第3収容部26、及び第4収容部28には、収容された記録用紙Pを画像形成装置10内に設けられた搬送路30に送り出す送出ロール32が設けられている。
【0024】
(搬送路)
搬送路30における記録用紙Pの搬送方向で送出ロール32よりも下流側には、記録用紙Pを一枚ずつ搬送するそれぞれ一対の搬送ロール34及び搬送ロール36が設けられている。また、搬送路30における記録用紙Pの搬送方向で搬送ロール36よりも下流側には、記録用紙Pを一旦停止させると共に、決められたタイミングで二次転写部37(後述する)へ送り出して位置合せをする位置合せロール38が設けられている。
【0025】
搬送路30を挟んで第4収容部28の搬送ロール36側とは反対側には、画像形成装置10の−X側に設けられた折り畳み式の手差給紙部39から、搬送路30へ記録用紙Pが搬送される予備搬送路40が設けられている。予備搬送路40には、手差給紙部39の記録用紙Pを予備搬送路40に送り出す送出ロール42と、送出ロール42よりも下流側に設けられ記録用紙Pを一枚ずつ搬送する複数の搬送ロール44とが設けられている。そして、予備搬送路40の下流側端部は、搬送路30に接続されている。
【0026】
(画像形成部)
画像形成部14は、装置本体である筐体14Aを有している。筐体14Aは、排出部16の筐体と一体化されている。そして、排出部16のY側端部には、原稿読取部18の−X側端部が結合されている。これにより、画像形成装置10には、画像形成部14の上面、原稿読取部18の下面、及び排出部16の右側面で囲まれた排出領域19が形成されている。排出領域19では、排出部16からの記録用紙Pの排出及び積載が行われる。
【0027】
また、画像形成部14内の搬送路30における二次転写部37よりも下流側には、定着装置100が設けられている。なお、定着装置100の詳細については後述する。一方、画像形成部14の中央には、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のトナーを組合せて記録用紙Pにトナー像(現像剤像の一例)を形成する現像剤像形成手段の一例としての画像形成ユニット60が設けられている。
【0028】
画像形成ユニット60は、潜像を保持する潜像保持体としての感光体62K、62Y、62M、62Cが、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のトナーに対応して設けられている。なお、以後の説明では、K、Y、M、Cを区別する必要がある場合は、数字の後にK、Y、M、Cのいずれかの英字を付して説明し、同様の構成でK、Y、M、Cを区別する必要がない場合は、K、Y、M、Cの記載を省略する。
【0029】
感光体62K、62Y、62M、62Cは、この順番で図示の右斜め上方に向けて並んでおり、それぞれ図示の反時計回り方向に回転すると共に、光照射によって形成される静電潜像を外周面に保持するようになっている。また、各感光体62K、62Y、62M、62Cの周囲には、回転方向に沿って順に、帯電ロール66、露光ユニット68、現像器72、中間転写ベルト64(一次転写ロール74)、及びクリーニングロール76が設けられている。
【0030】
帯電ロール66は、外周面が感光体62の表面層と接触して従動するように軸が回転可能に設けられている。また、帯電ロール66は、電圧印加部(図示省略)から電圧が印加され、接地された感光体62との電位差により生じる放電により、感光体62の外周面を帯電させるようになっている。
【0031】
露光ユニット68は、帯電ロール66により帯電された感光体62の外周面に各トナー色に対応した光を照射(露光)して、静電潜像を形成するようになっている。なお、感光体62への露光手段として、K、Y、M、Cの4色共通でレーザ光をポリゴンミラーで走査する方式を用いてもよい。
【0032】
現像器72は、感光体62に形成された潜像へ現像剤を供給してトナー像を形成するようになっている。なお、現像剤としては、トナーとキャリアを含む二成分現像剤、トナーを主成分とする一成分現像剤のいずれを用いても良い。
【0033】
中間転写ベルト64は、無端状に形成されている。また、中間転写ベルト64は、二次転写部37に設けられた対向ロール82と、対向ロール82の右下方に設けられた搬送ロール84と、対向ロール82の右斜め上方に設けられモータ(図示省略)で駆動される駆動ロール86とに巻き掛けられている。そして、中間転写ベルト64は、図示の時計回り方向に周回移動可能に支持されている。中間転写ベルト64の外周面は、トナー像が転写される被転写面とされており、中間転写ベルト64の駆動ロール86から搬送ロール84までの転写面に感光体62K、62Y、62M、62Cの外周面が接触している。
【0034】
中間転写ベルト64を挟んで感光体62K、62Y、62M、62C側とは反対側には、それぞれ、一次転写ロール74が設けられている。一次転写ロール74は、中間転写ベルト64の内周面に接触しており、電圧印加部(図示省略)から電圧が印加されることで、接地された感光体62との電位差により、感光体62のトナー像を中間転写ベルト64の被転写面へ一次転写させるようになっている。これにより、中間転写ベルト64が1周する間に、中間転写ベルト64上に各トナー像が重ねて転写される。
【0035】
また、中間転写ベルト64を挟んで搬送ロール84側とは反対側には、トナー濃度検出センサ88が設けられている。トナー濃度検出センサ88は、中間転写ベルト64の被転写面に転写されたトナー像の濃度を検出する機能を有している。さらに、中間転写ベルト64を挟んで駆動ロール86側とは反対側には、二次転写後の中間転写ベルト64の転写面に残留したトナーなどを清掃する清掃部材92が設けられている。
【0036】
二次転写部37は、中間転写ベルト64が巻き掛けられた既述の対向ロール82と、中間転写ベルト64を挟んで対向ロール82側とは反対側に設けられた二次転写ロール89とを含んで構成されている。対向ロール82又は二次転写ロール89には、電圧印加部(図示省略)から電圧が印加されるようになっており、対向ロール82と二次転写ロール89との電位差により、中間転写ベルト64上のトナー像が記録用紙P上に二次転写されるようになっている。
【0037】
画像形成部14の清掃部材92よりもX側には、各トナーを収容するトナーカートリッジ77K、77Y、77M、77Cが交換可能に設けられている。また、画像形成部14の搬送路30よりも−X側には、記録用紙Pの両面に画像形成を行うために記録用紙Pが搬送及び反転される両面搬送路94が設けられている。
【0038】
両面搬送路94は、搬送路30における記録用紙Pの搬送方向で定着装置100よりも下流側に設けられた搬送ロール95と、搬送ロール95よりも下流側に設けられ回転方向が切り換え可能とされた搬送ロール96との間に一端が接続されている。また、両面搬送路94の他端は、位置合せロール38の上流側に接続されている。
【0039】
さらに、両面搬送路94には、搬送ロール96から送り込まれる記録用紙Pを位置合せロール38へ向けて搬送する複数の搬送ロール97が設けられている。これにより、両面画像形成時には、表面側にトナー像が定着された記録用紙Pが、搬送ロール96の逆回転及び経路切り替え部材(図示省略)の移動により、両面搬送路94内に進入する。そして、両面搬送路94内に進入した記録用紙Pが、再度、位置合せロール38に進入することで、記録用紙Pの表裏が反転されるようになっている。
【0040】
(排出部)
排出部16は、搬送ロール95よりも下流側で、搬送路30から排出領域19側へ分岐された搬送路31を有している。搬送路31には、画像形成部14の上部に設けられた下置台52へ記録用紙Pを排出する下排出ロール54が設けられている。そして、下排出ロール54に隣接する位置には、下置台52上に積載された記録用紙Pの積載高さを検知する下検知部55が設けられている。
【0041】
また、排出部16における搬送ロール95よりも下流側の搬送路30には、下置台52の上方に設けられた上置台56へ記録用紙Pを排出する上排出ロール57が設けられている。そして、上排出ロール57に隣接する位置には、上置台56上に積載された記録用紙Pの積載高さを検知する上検知部58が設けられている。
【0042】
(原稿読取部)
原稿読取部18は、読取原稿Gを1枚ずつ搬送する原稿搬送装置45と、原稿搬送装置45の下側に配置され1枚の読取原稿Gが載せられるプラテンガラス47と、読取原稿Gを読み取る原稿読取装置49とが設けられている。原稿搬送装置45は、一対の搬送ロール46が複数配置された自動搬送路48を有している。そして、自動搬送路48の一部は、記録用紙Pがプラテンガラス47上を通るように配置されている。原稿読取装置49は、プラテンガラス47の−X側の端部に静止した状態で原稿搬送装置45によって搬送された読取原稿Gを読み取り、又はX方向に移動しながらプラテンガラス47に載せられた読取原稿Gを読み取るようになっている。
【0043】
(画像形成工程)
次に、画像形成装置10における画像形成工程について説明する。
【0044】
図1に示すように、画像形成装置10が作動すると、画像処理装置(図示省略)又は外部から、各色の画像データが露光ユニット68に出力される。続いて、露光ユニット68から画像データに応じて出射された光は、帯電ロール66により帯電された感光体62の外周面を露光する。これにより、各感光体62の表面には、各色の画像データに対応した静電潜像が形成される。さらに、各感光体62の表面に形成された静電潜像は、各現像器72によってトナー像として現像される。そして、各感光体62の表面のトナー像は、一次転写ロール74によって中間転写ベルト64に順次、多重転写される。
【0045】
一方、用紙収容部12から送り出され、搬送路30を搬送されてきた記録用紙Pは、位置合せロール38により、中間転写ベルト64への各トナー像の多重転写とタイミングを合わせて二次転写部37に搬送される。そして、中間転写ベルト64上に多重転写されたトナー像は、二次転写部37に搬送されてきた記録用紙P上に二次転写ロール89によって二次転写される。
【0046】
続いて、トナー像が転写された記録用紙Pは、定着装置100へ搬送される。そして、定着装置100では、トナー像が加熱、加圧されることで記録用紙Pに定着される。さらに、トナー像が定着された記録用紙Pは、排出部16から下置台52又は上置台56へ排出される。なお、記録用紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着装置100で表面に画像定着が行われた後、この記録用紙Pの下端が搬送ロール96から両面搬送路94に送り込まれる。そして、記録用紙Pが、再度、位置合せロール38へ送り出されることで、記録用紙Pの先端と後端が入れ替わり、記録用紙Pの裏面の画像形成及び定着が行われる。
【0047】
<要部構成>
次に、定着装置100について説明する。
【0048】
図2に示すように、定着装置100は、記録用紙Pの進入又は排出を行うための開口が形成された筐体101を有している。筐体101の内部には、周回部材の一例としての定着ベルト102と、定着ベルト102と共に記録用紙Pを加圧する回転体の一例としての加圧ロール104と、定着ベルト102を加熱する加熱手段の一例としてのハロゲンヒータ109とが設けられている。なお、定着ベルト102と加圧ロール104とで記録用紙Pが挟まれ、記録用紙Pへのトナー像Tの定着が行われる部分をニップ部Nとする。定着ベルト102は、相手部材の一例でもある。
【0049】
また、筐体101の内部には、定着ベルト102を挟んで加圧ロール104と対向するパッド部材103と、定着ベルト102の外周面の温度を測定する温度センサ112とが設けられている。記録用紙Pをニップ部Nに案内するガイド部材、及び定着ベルト102から記録用紙Pを剥離させる剥離部材については、図示及び説明を省略する。
【0050】
〔定着ベルト〕
図3に示すように、定着ベルト102は、無端状に形成された基材102Aと、基材102Aの外周面に形成された離型層102Bとを有している。
【0051】
基材102Aは、一例として、ポリイミド製であり、厚みは200[μm]となっている。基材102Aの厚みは30[μm]以上300[μm]以下で設定することが望ましい。離型層102Bは、特定材料の一例として、フッ素樹脂系のテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)製であり、厚みは100[μm]となっている。離型層102Bの厚みは30[μm]以上300[μm]以下で設定することが望ましい。
【0052】
定着ベルト102の移動方向と交差する軸方向(Z方向)の両端部には、樹脂製のキャップ部材114が取り付けられている。キャップ部材114は、円環状に形成されており、定着ベルト102の軸方向両端部のX−Y断面形状を円形状に保持する。なお、本実施形態では、一例として、加圧ロール104の回転駆動に合わせて、定着ベルト102と加圧ロール104との間で駆動力の伝達が行われ、定着ベルト102が従動回転(周回移動)するようになっている。
【0053】
(パッド部材)
パッド部材103は、一例として、Z方向を長手方向とする直方体状の部材であり、ウレタンゴム製となっている。また、パッド部材103のX側の面は、アルミニウム製の支持部材116の−X側の面に接着剤で固定されており、パッド部材103の−X側の面は、定着ベルト102の内周面と接触している。支持部材116は、Z方向の両端部が、ブラケット(図示省略)を介して筐体101(
図2参照)に固定されている。
【0054】
〔加圧ロール〕
図3に示すように、加圧ロール104は、芯金105と、芯金105を被覆する本体部の一例としての被覆部106と、芯金105の軸方向(Z方向)で被覆部106の両端部に露出して設けられた膨張部110とを有している。そして、加圧ロール104は、全体が円筒状に形成されている。また、加圧ロール104は、一例として、モータ(図示省略)により回転駆動されるようになっている。
【0055】
なお、定着装置100において、Z方向の幅が最大の記録用紙Pにトナー像T(
図2参照)を定着するとき、この記録用紙Pは、定着ベルト102と被覆部106とで形成されるニップ部Nを通り、定着ベルト102と膨張部110とが接触する部位は通らない。
【0056】
(芯金)
芯金105は、Z方向を軸方向とする円筒状の部材である。また、芯金105は、軸方向の両端部が軸受部材(図示省略)により回転可能に支持されている。さらに、芯金105は、一例として、ステンレス製となっている。
【0057】
(被覆部)
被覆部106は、一例として、芯金105の外周面に形成された弾性層107と、弾性層107の外周側に形成された円筒状(チューブ状)の離型層108とを有しており、芯金105の軸方向(Z方向)両端部を除いて芯金105の外周側を被覆している。弾性層107は、一例として、シリコーンゴムで構成されており、厚みは6[mm]となっている。離型層108は、一例として、PFA製であり、厚みは50[μm]となっている。離型層108の厚みは12[μm]以上100[μm]以下で設定することが望ましい。
【0058】
(膨張部)
図5(A)に示すように、膨張部110は、被覆部106の離型層108よりも定着ベルト102に対する動摩擦係数が大きい材料で構成されている。膨張部110は、一例として、シリコーンゴムで構成されており、離型層108と軸方向(Z方向)で並んで露出され、弾性層107と一体で形成されている。膨張部110のZ方向の露出幅は、一例として、両端部でそれぞれ5[mm]となっている。また、膨張部110の外径は、一例として、非加熱状態において、予め定められた公差内で、Z方向に沿って揃えられている。具体的には、各膨張部110の−Z側の外径をd1、Z側の外径をd2とすると、d1=d2となっている。
【0059】
ここで、非加熱時における被覆部106の外径をd3とすると、d1=d2<d3である。即ち、膨張部110は、加圧ロール104が定着ベルト102を加圧した状態において、非加熱時(室温(例えば25[℃]))には、被覆部106の外径d3よりも小さい外径となって、定着ベルト102と非接触状態となっている。また、膨張部110は、定着設定温度(例えば160[℃])となるまでの加熱時には、被覆部106の外径d3よりも大きい外径となるまで膨張して、定着ベルト102の離型層102Bと接触するようになっている。
【0060】
なお、膨張部110の膨張量は、離型層108の厚みによって制御可能である。即ち、離型層108の厚みを厚くするか薄くするかによって、離型層108による弾性層107の拘束状態が変わる。これにより、弾性層107に対する膨張部110の膨張量が制御可能となる。
【0061】
〔ハロゲンヒータ〕
図2に示すように、ハロゲンヒータ109は、一例として、2本設けられており、後述する温度センサ112の測定温度と定着設定温度との差に基づいて通電又は通電停止が行われるようになっている。また、ハロゲンヒータ109は、内部にタングステンワイヤ(図示省略)が設けられており、通電によってタングステンワイヤが発光することで、定着ベルト102を加熱すると共に、加圧ロール104を間接的に加熱するようになっている。
【0062】
図4(B)に示すように、ハロゲンヒータ109と定着ベルト102とが対向する範囲内において、ハロゲンヒータ109の軸方向(Z方向)位置をA、B、C、Dとする。また、位置Aと位置Bとの間を区間AB、位置Bと位置Cとの間を区間BC、位置Cと位置Dとの間を区間CDとする。区間AB及び区間CDは、Z方向において、膨張部110とほぼ同じ配置区間となっており、区間BCは、被覆部106とほぼ同じ配置区間となっている。
【0063】
ここで、ハロゲンヒータ109は、タングステンワイヤ(図示省略)について、区間AB及び区間CDにおける線密度が、区間BCにおける線密度よりも密となっている。そして、タングステンワイヤの線密度が密の方が、疎の方に比べて単位長さ当りの加熱量が多い。即ち、ハロゲンヒータ109は、
図4(A)に示すように、膨張部110に対応する部位(区間AB及び区間CD)の単位長さ当りの加熱量QAが、膨張部110と対応しない部位(区間BC)の単位長さ当りの加熱量QBよりも多くなっている。
【0064】
(温度センサ)
図2に示すように、温度センサ112は、定着ベルト102をZ方向に見て、定着ベルト102の回転方向でニップ部Nよりも下流側の位置に、定着ベルト102の外周面と間隔をあけて設けられている。また、温度センサ112は、一例として、定着ベルト102のZ方向中央部と対向する位置に1箇所設けられている。
【0065】
さらに、温度センサ112は、測定した温度データが制御部20(
図1参照)に送られるようになっている。そして、制御部20は、予め設定した定着ベルト102の定着設定温度と、温度センサ112で測定された温度との差を0に近づけるように、ハロゲンヒータ109への通電又は通電停止を行うようになっている。
【0066】
[作用]
次に、第1実施形態の作用について説明する。
【0067】
図5(A)に示すように、室温(25[℃])では、定着ベルト102及び加圧ロール104の回転、非回転に関わらず、膨張部110は、定着ベルト102と非接触となっており、被覆部106は、定着ベルト102と接触してニップ部Nを形成している。
【0068】
続いて、
図2に示すように、定着装置100が作動されると、ハロゲンヒータ109が定着ベルト102を加熱する。このとき、加圧ロール104がモータ(図示省略)により回転駆動されることで、定着ベルト102が従動回転する。なお、ハロゲンヒータ109が定着ベルト102を加熱することで、間接的に加圧ロール104も加熱される。これにより、被覆部106及び膨張部110(
図3参照)が膨張を開始する。
【0069】
PFA製の離型層108の熱膨張率は、シリコーンゴム製の膨張部110の熱膨張率よりも小さい。このため、加圧ロール104の温度が定着の設定温度(定着温度)に近くなるとき、被覆部106における弾性層107の膨張は、離型層108で拘束される。一方、加圧ロール104の温度が定着温度に近くなるとき、膨張部110は拘束されていないため、膨張部110の外径が離型層108の外径よりも大きくなる。これにより、
図5(B)に示すように、膨張部110が定着ベルト102と接触する。なお、膨張部110のZ方向の膨張については、図示を省略している。
【0070】
ここで、膨張部110の定着ベルト102に対する動摩擦係数は、離型層108の定着ベルト102に対する動摩擦係数よりも大きい。このため、定着ベルト102には、膨張部110との接触により、Z方向両端部で中央部よりも大きい摩擦力が作用するので、加圧ロール104との間の駆動力の伝達が安定する(定着ベルト102が滑りにくい)。また、定着ベルト102の離型層102BがPFA製であり、シリコーンゴムに比べて離型性がよいだけでなく耐熱性もよいので、定着ベルト102と加圧ロール104との間の駆動力の伝達が長期間で安定する。
【0071】
さらに、既述のように、定着ベルト102及び加圧ロール104の非加熱時には、膨張部110が定着ベルト102と接触しない。このため、定着装置100では、加圧ロール104が定着ベルト102を加圧している状態で非加熱時から定着ベルト102と膨張部110とが接触して回転する構成に比べて、接触による膨張部110の摩耗が抑制される。これにより、定着装置100では、膨張部110の表面の劣化が長期間で抑制されるので、定着ベルト102と加圧ロール104との間の駆動力の伝達が長期間で維持される。
【0072】
また、定着装置100では、
図3に示すように、膨張部110が弾性層107と一体化されているので、膨張部110が弾性層107と別体となっている構成に比べて、簡単な構成となる。
【0073】
さらに、定着装置100では、
図5(A)に示すように、膨張部110の外径がZ方向に沿って揃えられているので、膨張部110の外径がZ方向で異なる構成に比べて、膨張部110による定着ベルト102の両端部の加圧状態が、Z方向の各部で同程度となる。これにより、定着装置100では、定着ベルト102と膨張部110との接触状態が安定する。また、膨張部110が膨張して定着ベルト102と接触した以後は、加圧ロール104が回転している。このため、膨張部110が膨張して定着ベルト102と接触した以後に加圧ロール104が停止する場合と比べて、膨張部110と定着ベルト102との接触による膨張部110の永久変形が抑制される。
【0074】
加えて、
図4(A)に示すように、定着装置100では、ハロゲンヒータ109による加圧ロール104の加熱について、膨張部110に対応する部位の単位長さ当りの加熱量が、膨張部110と対応しない部位の単位長さ当りの加熱量よりも多くなっている。このため、膨張部110の単位時間当りの温度上昇率が、被覆部106の単位時間当りの温度上昇率よりも大きくなるので、膨張部110と定着ベルト102とが短時間で接触する。
【0075】
また、
図1に示す画像形成装置10では、定着装置100において、加圧ロール104と定着ベルト102との間の駆動力の伝達が長期間で安定するので、定着ベルト102への駆動力の伝達状態に起因する画像不良(例えば、画像乱れなど)が抑制される。
【0076】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る回転体、定着装置、及び画像形成装置の一例について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部材及び部位には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0077】
図6には、第2実施形態の定着装置120が示されている。定着装置120は、回転体の一例としての定着ロール122と、相手部材及び周回部材の一例としての加圧ベルト124と、定着ロール122を加熱するハロゲンヒータ109とを有している。
【0078】
定着ロール122は、一例として、第1実施形態の加圧ロール104(
図2参照)と同じ構成となっており、Z方向両端部には、膨張部110(
図3参照)が露出している。また、芯金105の内側には、ハロゲンヒータ109が非接触状態で配置されており、定着ロール122の温度は、温度センサ112で測定されるようになっている。さらに、定着ロール122は、モータ(図示省略)により回転駆動されるようになっている。
【0079】
加圧ベルト124は、一例として、第1実施形態の定着ベルト102(
図2参照)と同じ構成となっている。また、加圧ベルト124の内側には、加圧ベルト124を定着ロール122に押し付けてニップ部Nを形成するためのパッド部材103が設けられている。これにより、定着ロール122は、加圧ベルト124と共に記録用紙Pを加圧する。
【0080】
ハロゲンヒータ109は、第1実施形態と同様に、膨張部110(
図3参照)に対応する部位の単位長さ当りの加熱量が、膨張部110と対応しない部位の単位長さ当りの加熱量よりも多くなっている。
【0081】
[作用]
次に、第2実施形態の作用について説明する。
【0082】
定着装置120では、ハロゲンヒータ109が定着ロール122の内側にあるので、定着ロール122が直接、ハロゲンヒータ109で加熱される。これにより、定着ロール122を間接的に加熱する構成に比べて、定着ロール122の膨張部110(
図3参照)が、短時間で加熱される。
【0083】
また、定着装置120では、加圧ロール104の直接加熱に加えて、膨張部110に対応する部位の単位長さ当りの加熱量が、膨張部110と対応しない部位の単位長さ当りの加熱量よりも多いので、膨張部110と加圧ベルト124とが短時間で接触する。
【0084】
さらに、定着装置120では、加圧ベルト124に対して、膨張部110との接触により、Z方向両端部で中央部よりも大きい摩擦力が作用するので、定着ロール122との間の駆動力の伝達が安定する(加圧ベルト124が滑りにくくなる)。
【0085】
加えて、定着装置120では、定着ロール122及び加圧ベルト124の非加熱時には、膨張部110が加圧ベルト124と接触しない。このため、定着装置120では、加圧ベルト124が定着ロール122を加圧している状態で非加熱時から加圧ベルト124と膨張部110とが接触して回転する構成に比べて、接触による膨張部110の摩耗が抑制される。これにより、定着装置120では、膨張部110の表面の劣化が抑制されるので、定着ロール122と加圧ベルト124との間の駆動力の伝達が長期間で維持される。
【0086】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されない。
【0087】
図7(A)、(B)には、第1実施形態の第1変形例としての定着装置130のニップ部N周辺が示されている。定着装置130は、第1実施形態の定着装置100(
図2参照)において、加圧ロール104(
図2参照)に換えて、回転体の一例としての加圧ロール132が設けられている。
【0088】
加圧ロール132は、加圧ロール104の膨張部110(
図2参照)に換えて、膨張部134が設けられている。膨張部134は、弾性層107と同じ材質で一体化されている点は膨張部110と同様であるが、Z方向で外径が変わる点が膨張部110とは異なる。
【0089】
具体的には、膨張部134の外径は、−Z側の外径をd4、Z側(−Z側よりも被覆部106に近い側)の外径をd5とすると、d4>d5となっている。なお、外径d5は、外径d1(
図5(A)参照)とほぼ同じ大きさである。即ち、膨張部134は、Z方向端部に近づくほど外径が大きくなっている。このように、Z方向端部側の外径を大きくした膨張部134を用いてもよい。
【0090】
また、第2変形例として、離型層108による弾性層107の拘束力が強い場合は、
図8(A)に示すように、d4<d5<d3となる膨張部144を有する加圧ロール142を用いてもよい。加圧ロール142では、加熱により、拘束力の弱い−Z側が拘束力の強いZ側に比べて大きく膨張するため、膨張部144が二点鎖線RAで示すように膨張し、定着ベルト102と接触する。
【0091】
さらに、第3変形例として、
図8(B)に示すように、離型層108の内径をd6として、d6<d4=d5<d3となる膨張部148を有する加圧ロール146を用いてもよい。加圧ロール146では、加熱により−Z側とZ側が同様に膨張するため、膨張部148は、二点鎖線RBで示すように膨張し、定着ベルト102と接触する。
【0092】
定着ベルト102は、基材102Aがポリイミド製のものに限らず、ニッケルやステンレスなどの金属製の基材を用いたものであってもよい。また、定着ベルト102は、Z方向を軸方向とする複数のロールに巻き掛けられていてもよい。特定材料は、PFAに限らず、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やFEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)といったフッ素系樹脂材料や、他の樹脂材料であってもよい。
【0093】
膨張部110、134、144、148は、弾性層107と一体化されたものに限らず、弾性層107と別体とされていてもよい。また、膨張部110、134、144、148の材質は、離型層108に比べて相手部材に対する動摩擦係数が大きいものであれば、シリコーンゴムとは異なるものであってもよい。
【0094】
芯金105は、金属製に限らず、樹脂製であってもよい。また、芯金105は、円筒状(中空)のものに限らず、円柱状(中実)のものであってもよい。
【0095】
回転体は、加熱が行われるものであれば、搬送ロールなど、他の回転する部材であってもよい。
【0096】
加熱手段は、ハロゲンヒータ109に限らず、定着ベルト102の内周面に接触する面状発熱体であってもよい。また、加熱手段は、定着ベルト102に銅などからなる発熱層を形成し、コイルに電流を流して、発生した磁界の電磁誘導作用によって発熱層を加熱するものであってもよい。さらに、ハロゲンヒータ109は、定着ベルト102及び加圧ロール104の両方に設けられていてもよく、定着ロール122及び加圧ベルト124の両方に設けられていてもよい。