特許第6176098号(P6176098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6176098
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】センターベアリングサポート
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/24 20060101AFI20170731BHJP
【FI】
   B60K17/24
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-253972(P2013-253972)
(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公開番号】特開2015-112892(P2015-112892A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100090343
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 百合子
(74)【代理人】
【識別番号】100192474
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 健次
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(72)【発明者】
【氏名】須山 和俊
(72)【発明者】
【氏名】秋元 康博
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−012833(JP,U)
【文献】 特開2013−142434(JP,A)
【文献】 特開2007−100180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円環状のサポートラバーと、前記サポートラバーの内周面に圧入固定される略円筒状の内環と、前記内環の内周面に内嵌される転がり軸受と、を備えるセンターベアリングサポートであって、
前記内環の外周面にサビ防止用の被膜が形成され、
前記被膜の平均膜厚が4〜10μmに設定され、前記被膜の表面粗さ(Rz)が5〜40μmに設定されることを特徴とするセンターベアリングサポート。
【請求項2】
前記被膜は、燐酸塩被膜処理により成膜されることを特徴とする請求項1に記載のセンターベアリングサポート。
【請求項3】
前記内環の外周面に複数の凹部が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンターベアリングサポート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のプロペラシャフトなどの回転軸を弾性的に支持するセンターベアリングサポートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のセンターベアリングサポートとしては、弾性体である略円環状のサポートラバーと、このサポートラバーの内周面に装着される略円筒状の内環と、この内環の内周面に内嵌される転がり軸受と、を備え、転がり軸受の内輪に回転軸が内嵌され、その回転軸を弾性的に支持するものが知られる(例えば、特許文献1、2参照)。なお、センターベアリングサポートは、サポートラバーが一対のブラケットに径方向内方で挟み込まれ、この一対のブラケットを介して自動車などの車両本体に取り付けられる。
【0003】
この種のセンターベアリングサポートでは、内環をサポートラバーに装着する際、サポートラバーの内周面と内環の外周面を加硫接着により固定することや、その各周面にそれぞれ対応する凹凸部を設け内環をサポートラバーに圧入して固定することが一般的に行われている。特に、圧入により固定するタイプのセンターベアリングサポートでは、サビの発生を防止するために内環の外周面に成膜処理が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−238010号公報
【特許文献2】特開2007−238011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、圧入により固定するタイプのセンターベアリングサポートにおいては、そのサビ防止のための被膜の厚さが薄かったり、被膜の表面粗さが過度に良好であったりすると、内環とサポートラバーとの係合面での摩擦抵抗が小さくなって、例えば、回転軸が傾く又は回転軸に軸方向の荷重が伴った回転が加わると、内環がサポートラバーから抜け出てしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転軸が傾く又は回転軸に軸方向の荷重が伴った回転が加わったとしても、内環がサポートラバーから抜け出てしまうのを防止することができるセンターベアリングサポートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)略円環状のサポートラバーと、サポートラバーの内周面に圧入固定される略円筒状の内環と、内環の内周面に内嵌される転がり軸受と、を備えるセンターベアリングサポートであって、内環の外周面にサビ防止用の被膜が形成され、被膜の平均膜厚が4〜10μmに設定され、被膜の表面粗さ(Rz)が5〜40μmに設定されることを特徴とするセンターベアリングサポート。
(2)被膜は、燐酸塩被膜処理により成膜されることを特徴とする(1)に記載のセンターベアリングサポート。
(3)内環の外周面に複数の凹部が形成されることを特徴とする(1)又は(2)に記載のセンターベアリングサポート。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内環の外周面にサビ防止用の被膜が形成され、被膜の平均膜厚が4〜10μmに設定され、被膜の表面粗さ(Rz)が5〜40μmに設定されるため、サポートラバーと内環との間の摩擦力を適度に保って、サポートラバーと内環の係合を強固にすることができる。このため、回転軸が傾く又は回転軸に軸方向の荷重が伴った回転が加わったとしても、内環がサポートラバーから抜け出てしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るセンターベアリングサポートの一実施形態を説明する要部断面図である。
図2】センターベアリングサポートの第1変形例を説明する一部切欠図である。
図3】センターベアリングサポートの第2変形例を説明する一部切欠図である。
図4】センターベアリングサポートの第3変形例を説明する一部切欠図である。
図5】センターベアリングサポートの第4変形例を説明する一部切欠図である。
図6】センターベアリングサポートの第5変形例を説明する一部切欠図である。
図7】センターベアリングサポートの第6変形例を説明する一部切欠図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るセンターベアリングサポートの一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
本実施形態のセンターベアリングサポート10は、図1に示すように、略円環状のサポートラバー11と、サポートラバー11の内周面に圧入固定される略円筒状の一対の内環20と、一対の内環20の内周面に内嵌される転がり軸受30と、を備える。
【0012】
転がり軸受30は、内周面に外輪軌道面31aを有する外輪31と、外周面に内輪軌道面32aを有する内輪32と、外輪31の外輪軌道面31aと内輪32の内輪軌道面32aとの間に転動可能に配置される複数の玉33と、複数の玉33を転動可能に保持する保持器34と、外輪31の内周面の軸方向両端部に取り付けられる一対のシール装置35と、を備える。そして、転がり軸受30の内輪32の内周面には、例えば、車両のプロペラシャフトなどの回転軸12が内嵌される。
【0013】
サポートラバー11は、例えば、ゴム素材やウレタン素材などの弾性体により構成され、内環20及び転がり軸受30で構成される組立体を主に径方向で弾性的に支持することにより、回転軸12を回転可能に弾性的に支持する。また、サポートラバー11の内周面には、一対の内環20を圧入する圧入溝11aが全周に亘って形成されている。
【0014】
内環20は、金属板にプレス加工などを施すことにより成形され、大径円筒部21と、大径円筒部21の軸方向外端部から径方向内側に延びる第1連結部22と、第1連結部22の径方向内端部から軸方向外側に延びる小径円筒部23と、小径円筒部23の軸方向外端部から径方向内側に延びる第2連結部24と、第2連結部24の径方向内端部から軸方向外側に延びる湾曲環部25と、を有し、断面略階段状に形成されている。そして、一対の内環20は、大径円筒部21同士が軸方向に対向する状態で組み合わされ、この状態でサポートラバー11内に圧入され、軸方向中心位置で対称となるようにサポートラバー11内に配置される。
【0015】
また、転がり軸受30の外輪31は、一対の内環20の大径円筒部21の内周面に内嵌される。また、外輪31の軸方向両端面は、一対の内環20の第1連結部22,22間に挟み込まれる。また、小径円筒部23の内周面にはグリースなどの潤滑剤が塗布されている。
【0016】
そして、本実施形態では、内環20の外周面にサビ防止用の被膜26が形成されており、この被膜26の平均膜厚は4μm以上に設定され、被膜26の表面粗さ(Rz)は5μm以上に設定されている。また、生産上の被膜時間やコストを考慮した場合、被膜26の平均膜厚を4〜10μmに設定し、被膜26の表面粗さ(Rz)を5〜40μmに設定する方が好ましく、被膜26の平均膜厚を6〜8μmに設定し、被膜26の表面粗さ(Rz)を10〜26μmに設定する方がより好ましい。また、被膜26は、燐酸塩被膜処理(Zn系)により成膜されている。また、被膜26は、サポートラバー11内に圧入される内環20の大径円筒部21、第1連結部22、及び小径円筒部23の外周面に形成されている。なお、被膜26は、内環20の外周面の全面に形成されていてもよい。
【0017】
以上説明したように、本実施形態のセンターベアリングサポート10によれば、一対の内環20の外周面にサビ防止用の被膜26が形成され、この被膜26の平均膜厚が4〜10μmに設定され、被膜26の表面粗さ(Rz)が5〜40μmに設定されるため、サポートラバー11と内環20との間の摩擦力を適度に保って、サポートラバー11と内環20の係合を強固にすることができる。このため、回転軸12が傾く又は回転軸12に軸方向の荷重が伴った回転が加わったとしても、内環20がサポートラバー11から抜け出てしまうのを防止することができる。
【0018】
次に、本実施形態の第1変形例として、図2に示すように、内環20の大径円筒部21の外周面に、周方向に延びる複数の線条である平目状ローレット21aを形成した後、内環20の外周面に上記被膜26を形成してもよい。この場合、内環20がサポートラバー11に圧入されることにより、サポートラバー11の一部が平目状ローレット21aの凹状部分に入り込むので、サポートラバー11と内環20の係合をより強固にすることができる。また、平目状ローレット21aは、例えば、大径円筒部21の外周面に、加工したい形状と同じ模様のコマやロールを押し付けることにより形成される。
【0019】
次に、本実施形態の第2変形例として、図3に示すように、内環20の大径円筒部21の外周面に、網目状ローレット21bを形成した後、内環20の外周面に上記被膜26を形成してもよい。この場合、内環20がサポートラバー11に圧入されることにより、サポートラバー11の一部が網目状ローレット21bの凹状部分に入り込むので、サポートラバー11と内環20の係合をより強固にすることができる。また、網目状ローレット21bは、例えば、大径円筒部21の外周面に、加工したい形状と同じ模様のコマやロールを押し付けることにより形成される。
【0020】
次に、本実施形態の第3変形例として、図4に示すように、内環20の大径円筒部21に径方向に貫通する複数の円形穴21cを千鳥状に形成した後、内環20の外周面に上記被膜26を形成してもよい。この場合、内環20がサポートラバー11に圧入されることにより、サポートラバー11の一部が円形穴21cに入り込むので、サポートラバー11と内環20の係合をより強固にすることができる。また、円形穴21cは、内環20を成形するプレス加工時に同時に加工されるので、新たに加工工程を設ける必要はない。また、円形穴21cを形成することにより、大径円筒部21の強度が低下するが、この大径円筒部21は軸受30の外輪31に嵌合されて外輪31と一体となるので、上記強度低下は問題とならない。また、内環20の大径円筒部21は、圧入後サポートラバー11により全外周面が覆われるので、円形穴21cから異物が浸入することはない。
【0021】
次に、本実施形態の第4変形例として、図5に示すように、内環20の大径円筒部21に径方向に貫通する複数の矩形穴21dを千鳥状に形成した後、内環20の外周面に上記被膜26を形成してもよい。この場合、内環20がサポートラバー11に圧入されることにより、サポートラバー11の一部が矩形穴21dに入り込むので、サポートラバー11と内環20の係合をより強固にすることができる。また、矩形穴21dは、内環20を成形するプレス加工時に同時に加工されるので、新たに加工工程を設ける必要はない。また、矩形穴21dを形成することにより、大径円筒部21の強度が低下するが、この大径円筒部21は軸受30の外輪31に嵌合されて外輪31と一体となるので、上記強度低下は問題とならない。また、内環20の大径円筒部21は、圧入後サポートラバー11により全外周面が覆われるので、矩形穴21dから異物が浸入することはない。なお、上記円形穴21c及び矩形穴21dは、貫通穴ではなく円形又は矩形の凹部とすることもできる。これにより、サポートラバー11の一部がその凹部に入り込むので、サポートラバー11と内環20の係合をより強固にすることができる。
【0022】
次に、本実施形態の第5変形例として、図6に示すように、内環20の大径円筒部21に径方向外側に突出する複数の円形膨出部21eを千鳥状に形成した後、内環20の外周面に上記被膜26を形成してもよい。この場合、内環20がサポートラバー11に圧入されることにより、円形膨出部21eがサポートラバー11に食い込むので、サポートラバー11と内環20の係合をより強固にすることができる。また、円形膨出部21eは、内環20を成形するプレス加工時に同時に加工されるので、新たに加工工程を設ける必要はない。
【0023】
次に、本実施形態の第6変形例として、図7に示すように、内環20の大径円筒部21に径方向外側に突出する1本の波形膨出部21fを全周に渡って形成した後、内環20の外周面に上記被膜26を形成してもよい。この場合、内環20がサポートラバー11に圧入されることにより、波形膨出部21fがサポートラバー11に食い込むので、サポートラバー11と内環20の係合をより強固にすることができる。また、波形膨出部21fは、内環20を成形するプレス加工時に同時に加工されるので、新たに加工工程を設ける必要はない。
【0024】
なお、本発明は、上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、転がり軸受として玉軸受を採用したが、これに限定されず、円すいころ軸受、円筒ころ軸受など種々の転がり軸受を採用することができる。
また、上記実施形態では、内環を軸方向で2分割する構成としたが、これに限定されず、内環を一体で構成してもよい。
【符号の説明】
【0025】
10 センターベアリングサポート
11 サポートラバー
12 回転軸
20 内環
21 大径円筒部
21a 平目状ローレット
21b 網目状ローレット
21c 円形穴
21d 矩形穴
21e 円形膨出部
21f 波形膨出部
22 第1連結部
23 小径円筒部
24 第2連結部
25 湾曲環部
26 被膜
30 転がり軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7