特許第6176246号(P6176246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6176246-固形医薬錠剤およびその製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6176246
(24)【登録日】2017年7月21日
(45)【発行日】2017年8月9日
(54)【発明の名称】固形医薬錠剤およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/40 20060101AFI20170731BHJP
   A61K 31/4422 20060101ALI20170731BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20170731BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170731BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20170731BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20170731BHJP
   A61K 9/32 20060101ALI20170731BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20170731BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20170731BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20170731BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20170731BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20170731BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20170731BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20170731BHJP
【FI】
   A61K31/40
   A61K31/4422
   A61K9/20
   A61P43/00 121
   A61K47/02
   A61K47/32
   A61K9/32
   A61K47/36
   A61K47/26
   A61K47/12
   A61K47/04
   A61K47/38
   A61P9/12
   A61P3/06
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-522568(P2014-522568)
(86)(22)【出願日】2013年6月19日
(86)【国際出願番号】JP2013066873
(87)【国際公開番号】WO2014002851
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年3月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-142439(P2012-142439)
(32)【優先日】2012年6月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163647
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100123489
【弁理士】
【氏名又は名称】大平 和幸
(72)【発明者】
【氏名】城 尭彬
(72)【発明者】
【氏名】八柳 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】片山 直久
【審査官】 中尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/077843(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/070248(WO,A1)
【文献】 特表2008−519835(JP,A)
【文献】 特表平08−505640(JP,A)
【文献】 萩原俊男,"アムロジピンベシル酸塩/アトルバスタチンカルシウム水和物配合錠(カデュエット1番/2番/3番/4番)",血圧,日本,2009年12月,Vol.16,No.12,P.1112-1115
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/40
A61K 9/20
A61K 9/32
A61K 31/4422
A61K 47/02
A61K 47/04
A61K 47/12
A61K 47/26
A61K 47/32
A61K 47/36
A61K 47/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アトルバスタチン、その塩、またはその水和物およびアムロジピンまたはその薬学的に許容し得る塩を含有する固形医薬錠剤であって、
該アトルバスタチン、その塩、またはその水和物と金属塩とを含有する造粒物、ならびに該アムロジピンまたはその薬学的に許容し得る塩を混合物の形態で含有し、
該金属塩が、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムである、固形医薬錠剤。
【請求項2】
前記金属塩の含有量が、前記固形医薬錠剤の質量を基準として5質量%から30質量%である、請求項1に記載の固形医薬錠剤。
【請求項3】
前記炭酸カルシウムおよび前記炭酸マグネシウムの混合比が、質量を基準として5:1から20:1である、請求項1または2に記載の固形医薬錠剤。
【請求項4】
前記混合物が、ポリビニルアルコールおよび/またはビニルアルコール系共重合体を含有するコーティング剤でフィルムコーティングされている、請求項1からのいずれかに記載の固形医薬錠剤。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコールおよび/またはビニルアルコール系共重合体が、ポリビニルアルコール−アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体である、請求項に記載の固形医薬錠剤。
【請求項6】
前記造粒物が、クロスポビドン、カルボキシスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプン、部分α化デンプン、コーンスターチ、乳糖、クエン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシピロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルスターチからなる群から選択される少なくとも1種の崩壊剤を含有する、請求項1からのいずれかに記載の固形医薬錠剤。
【請求項7】
前記造粒物が、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、およびカルメロースからなる群から選択される少なくとも1種の崩壊剤を、固形医薬錠剤の質量を基準として、多くても3質量%含有する、請求項1からのいずれかに記載の固形医薬錠剤。
【請求項8】
固形医薬錠剤の製造方法であって、
アトルバスタチン、その塩、またはその水和物および金属塩を含む造粒物を得る工程;ならびに
該造粒物とアムロジピンまたはその薬学的に許容し得る塩とを混合し、一緒に打錠して素錠を得る工程;
を包含し、
該金属塩が、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムである、方法。
【請求項9】
さらに、前記素錠を、ポリビニルアルコールおよび/またはビニルアルコール系共重合体を含有するコーティング剤でフィルムコーティングする工程を包含する、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形医薬錠剤およびその製造方法に関し、より詳細にはアトルバスタチンとアムロジピンとの2種類の有効成分を配合した固形医薬錠剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、同様または異なる薬効を有する成分を1つの固形製剤に配合することが行われている。これは、複数成分の組み合わせによって、単剤よりも効果を高め、副作用を抑え、医師の処方を軽減するなどのメリットが多いからである。
【0003】
例えば、高脂血症用剤として用いられるアトルバスタチンカルシウム水和物、および降圧剤として用いられるアムロジピンベシル酸塩を配合した固形製剤が知られている(特許文献1および非特許文献1)。
【0004】
しかし、アトルバスタチンカルシウム水和物は、塩基性環境下で保存されないと分解を受けてアトルバスタチン類縁物質が生成することが知られている。また、アムロジピンベシル酸塩は、光により分解を受けてアムロジピン類縁物質が生成することが知られている。このような類縁物質の生成を抑えることが所望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2005−501051号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「カデュエット(登録商標)配合錠」添付文書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、アトルバスタチン、その塩、またはその水和物とアムロジピンまたはその薬学的に許容し得る塩との2種類の有効成分を含有し、各成分の類縁物質の生成が低減された、安定性に優れた固形医薬錠剤およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、アトルバスタチンの造粒物を調製する際に、着色剤を含有するフィルムコーティングを行い、必要に応じて各種他成分を含有させることにより、アトルバスタチンおよびアムロジピンの分解を抑制し、かつ当該固形医薬錠剤としての安定性を向上させ得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、アトルバスタチン、その塩、またはその水和物およびアムロジピンまたはその薬学的に許容し得る塩を含有する固形医薬錠剤であって、
該アトルバスタチン、その塩、またはその水和物と少なくとも2種の金属塩とを含有する造粒物、ならびに該アムロジピンまたはその薬学的に許容し得る塩を混合物の形態で含有する、固形医薬錠剤である。
【0010】
1つの実施態様では、上記少なくとも2種の金属塩は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、および水酸化マグネシウムアルミニウムからなる群より選択される。
【0011】
1つの実施態様では、上記少なくとも2種の金属塩の少なくとも1種はマグネシウム塩である。
【0012】
さらなる実施態様では、上記金属塩は、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムである。
【0013】
1つの実施態様では、上記混合物は、ポリビニルアルコールおよび/またはビニルアルコール系共重合体を含有するコーティング剤でフィルムコーティングされている。
【0014】
さらなる実施態様では、上記ポリビニルアルコールおよび/またはビニルアルコール系共重合体は、ポリビニルアルコール−アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体である。
【0015】
1つの実施態様では、上記造粒物は、クロスポビドン、カルボキシスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプン、部分α化デンプン、コーンスターチ、乳糖、クエン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシピロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルスターチからなる群から選択される少なくとも1種の崩壊剤を含有する。
【0016】
1つの実施態様では、上記造粒物は、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、およびカルメロースからなる群から選択される少なくとも1種の崩壊剤を、固形医薬錠剤の質量を基準として、多くても3質量%含有する。
【0017】
本発明はまた、固形医薬錠剤の製造方法であって、
アトルバスタチン、その塩、またはその水和物および少なくとも2種の金属塩を含む造粒物を得る工程;ならびに
該造粒物とアムロジピンまたはその薬学的に許容し得る塩とを混合し、一緒に打錠して素錠を得る工程;
を包含する、方法である。
【0018】
1つの実施態様では、本発明の製造方法は、さらに、前記素錠をポリビニルアルコールおよび/またはビニルアルコール系共重合体を含有するコーティング剤でフィルムコーティングする工程を包含する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、アトルバスタチンおよびアムロジピンを含有する固形医薬錠剤として、分解による類縁物質の生成が低減された、安定性に優れた固形医薬錠剤を提供することができる。特に、本発明の固形医薬錠剤は、従来のアトルバスタチンカルシウム水和物およびアムロジピンベシル酸塩を含有する固形医薬錠剤と比較して長期間の保管が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施例1〜3および比較例1および2で得られた固形医薬錠剤および比較例1の従来の錠剤を一定条件下で保存した際の、アトルバスタチンカルシウム水和物およびアムロジピンベシル酸塩の類縁物質の含有率(%)の合計量について保存期間にわたる経時変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(固形医薬錠剤)
本発明の固形医薬錠剤について説明する。
【0022】
本発明の固形医薬錠剤は、アトルバスタチン、その塩、またはその水和物と、アムロジピンまたはその薬学的に許容し得る塩との混合物(以下、アトルバスタチンとアムロジピンとの混合物ということがある)を含有する。
【0023】
本発明に用いられるアトルバスタチン、その塩、またはその水和物は、(3R,5R)−7−[2−(4−フルオロフェニル)−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−(フェニルカルバモイル)−1H−ピロール−1−イル]−3,5−ジヒドロキシヘプタン酸(以下、アトルバスタチンという)、その塩、またはその水和物であり、高脂血症用剤として有用である。好ましくは、例えば、アトルバスタチンカルシウム水和物である。
【0024】
本発明に用いられるアムロジピンまたはその薬学的に許容し得る塩は、3−エチル5−メチル(4RS)−2−[(2−アミノエトキシ)メチル]−4−(2−クロロフェニル)−6−メチル−1,4−ジヒドロピリジン−3,5−ジカルボキシレート(以下、アムロジピン)またはその薬学的に許容し得る塩であり、降圧剤として有用である。好ましくは、例えば、降圧剤として有用なアムロジピンベシル酸塩である。
【0025】
本発明に用いられるアトルバスタチン、その塩、またはその水和物と、アムロジピンまたはその薬学的に許容し得る塩との混合比は、特に限定されないが、各々の質量を基準として、例えば、1:4から4:1、好ましくは1:1から3.2:1の範囲に設定され得る。
【0026】
本発明においては、上記アトルバスタチンとアムロジピンとの混合物は、アトルバスタチン、その塩、またはその水和物および少なくとも2種の金属塩を含有する造粒物と、アムロジピンまたはその薬学的に許容し得る塩との混合物である。すなわち、アトルバスタチン、その塩、またはその水和物が、少なくとも2種の金属塩とともに造粒物として一旦別に造粒され、そして当該造粒物とアムロジピンまたはその薬学的に許容し得る塩とが一緒になって1種の混合物を構成する。
【0027】
上記造粒物を構成する金属塩の例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、および水酸化マグネシウムアルミニウムからなる群より選択される少なくとも2種である。本発明においては、このような少なくとも2種の金属塩のうち、少なくとも1種がマグネシウム塩であることが好ましい。
【0028】
さらに当該金属塩のうち、2種類の金属塩を使用する場合、好ましい組み合わせの例としては、炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムとの組み合わせが挙げられる。炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムとの混合比は、当業者によって適宜設定可能であり特に限定されないが、質量を基準として、例えば、5:1〜20:1、好ましくは1.5:1〜15:1、より好ましくは2:1〜10:1である。
【0029】
本発明の固形医薬錠剤において、上記造粒物中に含まれる金属塩は、当該錠剤の質量を基準として、例えば5質量%〜30質量%である。
【0030】
上記造粒物は、上記アトルバスタチン、その塩、またはその水和物および少なくとも2種の金属塩以外に、例えば、賦形剤、崩壊剤、および結合剤を含有していてもよい。
【0031】
造粒物が含有し得る賦形剤は、薬学的に許容され得る一般的な賦形剤である。賦形剤の例としては、特に限定されないが、結晶セルロース、ブドウ糖、果糖、乳糖、白糖(精製白糖を包含する)、還元麦芽糖、デキストラン、糖アルコール(例えば、D−マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、トレハロース、マルチトール、ラクチトール)、グリセリン脂肪酸エステル、無機粉体(例えば、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト)、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。賦形剤の含有量は、当業者によって適宜設定され得る。
【0032】
造粒物が含有し得る崩壊剤は、薬学的に許容され得る一般的な崩壊剤である。崩壊剤の例としては、クロスポビドン、カルボキシスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプン、部分α化デンプン、コーンスターチ、乳糖、クエン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシピロピルセルロース、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルメロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。崩壊剤の含有量は、当業者によって適宜設定され得る。
【0033】
なお、本発明の別の実施態様においては、造粒物が含有し得る崩壊剤には、特定の崩壊剤の使用を極力回避することが望ましい。すなわち、上記崩壊剤のうち、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルメロースなどの特定の崩壊剤を造粒物中で使用しないか、あるいは使用するとしても、微量に留めておくことにより、造粒物中のアトルバスタチン、その塩、またはその水和物の分解による類縁物質の生成をさらに抑制することができる。このような特定の崩壊剤を造粒物中で微量に含有させる場合の含有量の例としては、固形医薬錠剤の質量を基準として、多くても3質量%である。
【0034】
造粒物が含有し得る結合剤としては、薬学的に許容され得る一般的な水溶性物質が挙げられる。結合剤の例としては、特に限定されないが、ゼラチン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、デキストリン、キタンサンガム、アラビアゴム末、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、部分けん化ポリビニルアルコール、メチルセルロース、プルラン、部分α化デンプン、糖類、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。結合剤の含有量は、当業者によって適宜設定され得る。
【0035】
このような成分を含有する造粒物は、固形医薬錠剤の品質を安定させるために、例えば、予め篩過することで粒径が一定範囲に制御された粒子で構成されていることが望ましい。造粒物は、例えば、目開き500μmの篩を通過させて粒径が整えられる。
【0036】
1つの実施態様においては、本発明の固形医薬錠剤は、上記造粒物およびアムロジピンまたはその薬学的に許容し得る塩以外に、他の添加物を含有していてもよい。このような他の添加物の例としては、当業者に周知の薬学的に許容され得る賦形剤、崩壊剤、および滑沢剤が挙げられる。他の添加剤の含有量もまた当業者によって適宜設定され得る。
【0037】
なお、他の添加物として含有されていてもよい崩壊剤の例としては、特に限定されないが、薬学的に許容され得る一般的な崩壊剤が挙げられ、例えば、クロスポビドン、カルボキシスターチナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、デンプン、部分α化デンプン、コーンスターチ、乳糖、クエン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシピロピルセルロース、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルメロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
さらに、本発明の固形医薬錠剤では、このアトルバスタチンとアムロジピンとの混合物が、着色剤ならびにポリビニルアルコールおよび/またはビニルアルコール系共重合体を含有するコーティング剤でフィルムコーティングされている。
【0039】
このコーティング剤に含有される着色剤の例としては、食用黄色5号、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄(赤色)、オレンジエッセンス、褐色酸化鉄、カラメル、軽質無水ケイ酸、食用青色5号、食用黄色4号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用青色2号、タルク、フルオレセインナトリウム、緑茶末、ビタミンC、食用レーキ色素、カロチノイド系色素、フラボノイド系色素、キノン系色素ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
さらに、コーティング剤に含有されるポリビニルアルコールおよび/またはビニルアルコール系共重合体の例としては、ポリビニルアルコール−アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールグラフト共重合体およびそれらの組み合わせが挙げられる。ポリビニルアルコール−アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体が好ましい。
【0041】
コーティング剤は、必要に応じて、薬学的に許容され得る第三成分(例えば、酸化チタンなどの顔料および滑沢剤)を含有していてもよい。当該第三成分の種類および含有量は当業者によって適宜選択され得る。
【0042】
本発明において、上記アトルバスタチンとアムロジピンとの混合物をフィルムコーティングするのに必要なコーティング剤の量は、服用後の体内において、有効成分であるアトルバスタチン、その塩、またはその水和物およびアムロジピンまたはその薬学的に許容し得る塩の放出性を阻害せず、制御し得るような量で当業者が任意に設定することができる。使用され得るコーティング剤の量は、固形医薬錠剤の質量全体に対して、例えば1質量%〜10質量%である。
【0043】
本発明の固形医薬錠剤は、円盤状、レンズ状、キャプレット状などの任意の形態を有していてもよい。
【0044】
(医薬錠剤の製造方法)
次に、本発明の固形医薬錠剤の製造方法の一例について説明する。
【0045】
本発明の製造方法では、まず、アトルバスタチン、その塩、またはその水和物および少なくとも2種の金属塩を含む造粒物への造粒が行われる。
【0046】
この造粒にあたっては、例えば、上記アトルバスタチン、その塩、またはその水和物と、上記少なくとも2種の金属塩、賦形剤、崩壊剤、結合剤等とが所定量の水または水溶液で加水混合され造粒機にて所定の大きさに整えられる。その後粒子は適宜乾燥され、所望のメッシュで篩過することにより、粒径が整えられた造粒物を得ることができる。
【0047】
次いで、この造粒物とアムロジピンまたはその薬学的に許容し得る塩とが、必要に応じて他の添加物とともに混合され、一緒に打錠して素錠の形態に加工される。
【0048】
打錠は、当該分野において周知な打錠機を用いることができる。打錠にあたり、得られる素錠の径やその厚み等の条件は、当業者によって適宜選択され得る。
【0049】
その後、素錠は、必要に応じて着色剤を含有するポリビニルアルコールおよび/またはビニルアルコール系共重合体を含有するコーティング剤でフィルムコーティングされる。
【0050】
本発明において採用されるコーティング方法は、特に限定されないが、例えば、当該分野において周知なコーティング剤を水などの溶媒に溶解または分散させてコーティング液を調製し、得られたコーティング液を素錠にスプレーコートすることによって行うことができる。
【0051】
このようにして、本発明の固形医薬錠剤を製造することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
アトルバスタチンカルシウム水和物5.42g、沈降炭酸カルシウム32.0gおよび炭酸マグネシウム2.0g、結晶セルロース23.58g、部分α化デンプン10.0g、クロスカルメロースナトリウム3.0gおよびヒドロキシプロピルセルロース2.0gをメカノミル(岡田精工(株)製MM−40N)に投入し、さらに精製水30.0gを加えて造粒した。得られた造粒物78.0gを流動層造粒乾燥機((株)パウレック製MP01)で乾燥後、500μmの篩により篩過した。その後、この篩過した造粒物に、さらにアムロジピンベシル酸塩3.47g、結晶セルロース26.28g、クロスカルメロースナトリウム1.50gおよびステアリン酸マグネシウム0.75gを添加・混合し、ロータリー打錠機((株)菊水製作所製VIRG0512SS1AY)にて打錠圧6kNで直径6.5mmに打錠して、総量110gの素錠を製造した。
【0054】
この素錠110gに、プラセボ錠(実薬を含まない錠剤)約440gを混合してフィルムコーティング機(フロイント産業(株)製HCT−30N)へ投入した。一方で、POVACOAT(登録商標)(大同化成工業(株)製ポリビニルアルコール−アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体)12.5g、タルク10.0g、酸化チタン2.5g、食用黄色5号0.03gを、精製水157.5gとエタノール17.5gの混合溶媒に溶解させて、コーティング液(固形分濃度12.5%w/w)を調製した。その後、この素錠およびプラセボ錠に、このコーティング液をフィルムコーティング機内で噴霧し、そして乾燥させた。得られた錠剤から実薬入りの錠剤のみを選別し、総量114g(1錠あたり114mg)の固形医薬錠剤を得た。
【0055】
(実施例2)
表1に示されるように、造粒にあたり造粒物中に使用した金属塩として沈降炭酸カルシウム30.0gおよび炭酸マグネシウム4.0gを用いたこと以外は実施例1と同様にして、総量114g(1錠あたり114mg)の固形医薬錠剤を得た。
【0056】
(実施例3)
表1に示されるように、造粒にあたり造粒物中に使用した金属塩として沈降炭酸カルシウム34.0gおよび炭酸マグネシウム4.0gを用い、崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウムを使用せず(0g)(なお、後末添加した崩壊剤クロスカルメロースの量は変更せず)、他の崩壊剤である部分α化デンプンの量を5.0gとし、かつ賦形剤である結晶セルロースの量を27.58gに変更した(なお、後末添加した賦形剤結晶セルロースの量は変更せず)こと以外は実施例1と同様にして、総量114g(1錠あたり114mg)の固形医薬錠剤を得た。
【0057】
(比較例1)
表1に示されるように、造粒にあたり造粒物に使用した金属塩である沈降炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの代わりに34.0gの沈降炭酸カルシウム単独を使用したこと以外は実施例1と同様にして、総量114g(1錠あたり114mg)の固形医薬錠剤を得た。
【0058】
(比較例2)
表1に示されるように、造粒にあたり造粒物中に使用した、金属塩である沈降炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの代わりに34.0gの沈降炭酸カルシウム単独を使用し、崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウムの量を1.5gに変更し(なお、後末添加した崩壊剤クロスカルメロースの量は変更せず)、かつ賦形剤である結晶セルロースの量を25.08gに変更した(なお、後末添加した賦形剤結晶セルロースの量は変更せず)こと以外は実施例1と同様にして、総量114g(1錠あたり114mg)の固形医薬錠剤を得た。
【0059】
【表1】
【0060】
(試験例:固形医薬錠剤の安定性評価)
実施例1〜3および比較例1および2で製造した直後の錠剤をそれぞれアルミニウム袋に入れて密封し、この袋を温度60℃、湿度75%の環境下にて14日間保存した。
【0061】
保存開始時、保存開始から7日目および14日目の各錠剤について、アトルバスタチンカルシウム水和物の分解産物であるアトルバスタチン類縁物質およびアムロジピンベシル酸塩の分解産物であるアムロジピン類縁物質の合計量を、それぞれHPLCにて定量した。結果を表3および図1に示す。なお、HPLC分析条件は以下の通りであった。
【0062】
(HPLC分析条件)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に、粒径5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填して作製した:
・溶媒:(移動相A)リン酸二水素カリウム4.1gを水1000mLに溶かした液に、リン酸水素二ナトリウム十二水和物5.4gを水500mLに溶かした液を加えてpH6.0に調整する。この液500mLにメタノール500mLを加えて調製した。
(移動相B)リン酸二水素カリウム4.1gを水1000mLに溶かした液に、リン酸水素二ナトリウム十二水和物5.4gを水500mLに溶かした液を加えてpH6.0に調整する。この液50mLにメタノール950mLを加えて調製した。
・送液:移動相Aおよび移動相Bの混合比を下記表2のように濃度勾配を制御して送液した。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
表3に示すように、第1に、アトルバスタチンカルシウム水和物を含有する造粒物中の金属塩の含有量を変化させた実施例1および比較例1について、7日間保存後および14日間保存後の類縁物質含有率を比較すると、造粒物中に含有させる金属塩を1種類とするよりも2種類とした方が、より低い類縁物質含有率を示していたことがわかる。
【0066】
第2に、アトルバスタチンカルシウム水和物を含有する造粒物中の金属塩の含有量を変化させた実施例1および2を比較すると、金属塩として添加した合計量は同じ(34.0g)であっても、炭酸マグネシウムをより多く添加した実施例2の固形医薬錠剤が、より低い類縁物質含有率を示していたことがわかる。
【0067】
第3に、アトルバスタチンカルシウム水和物を含有する造粒物中の金属塩とクロスカルメロースナトリウムの含有量を変化させた実施例2および3を比較すると、当該造粒物中に含まれる金属塩の合計量を38.0gに増加させ、当該金属塩を構成する炭酸マグネシウムの含有量を4.0gに増加させ、かつ当該造粒物中に含める崩壊剤としてのクロスカルメロースナトリウムを用いなかった実施例3の固形医薬錠剤が最も低い類縁物質含有率を示していたことがわかる。
【0068】
さらに図1に示すように、上記実施例1〜3および比較例1および2について得られた類縁物質含有率に関する表3の結果を、保存期間(日)に対する類縁物質含有率(%)の経時変化のグラフとしてプロットすると、各結果とも保存期間に比例して類縁物質含有率が増加していることがわかる。ここで、実施例1〜3の結果を示すグラフと、比較例1および2の結果を示すグラフとを比較すると、実施例1〜3の各グラフの傾きが比較例1のものと比較して著しく小さいことがわかる。すなわち、実施例1〜3に示されるような造粒物中に少なくとも2種の金属塩を含有させた固形医薬錠剤は、当該造粒物中に1種類の金属塩しか含有させなかった錠剤と比較して、時間(日数)経過に対する類縁物質の増加が少ないことを示しており、実施例1〜3で得られた固形医薬錠剤は、長期保存における類縁物質含有量の増加が小さく、アトルバスタチンカルシウム水和物およびアムロジピンベシル酸塩の分解が著しく抑制されていることがわかる。
【0069】
このように、表3および図1から明らかなように、本発明の固形医薬錠剤は、当該アトルバスタチン類およびアムロジピン類の安定性がともに向上することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、例えば、高脂血症用剤として有用なアトルバスタチンカルシウム水和物と、降圧剤として有用なアムロジピンベシル酸塩の2種類の有効成分を含有し、かつ分解による類縁物質の生成が低減された、安定性に優れた固形医薬錠剤を提供することができる。
図1